BLUE AND BLUE

 第10 話

作者 くま

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

意識を取り戻した私の目に写るのはいつもとは違う天井だった。

けれどその天井に見覚えが無いわけじゃない。

ここはユーチャリス内に在るあの人用の治療室だ。

ただ覚えているものとは違って、随分と暗い感じがする。

わざわざ照明を落としているのだろうか?

私ははっきりとしない頭でぼんやりとそんな事を考えていた。

襲いくる眠気を誤魔化しながら、何とか起き上がろうと努力してみる。

が、私の身体は鉛でも詰め込まれたように重く、

意思に反して力がまるで入らなくて、ちっとも動こうとしない。

つまりこれは、何時か何所かで読んだことのある金縛りというやつなのだろうか?

その実、意識は半ば覚醒していて、身体はまだ覚醒していない状態らしいが・・・。

なるほど、こういう状態をそういうのだろう。と私は妙なところで感心していた。

やはりまだ、私自身が覚醒し切っていない所為かもしれない。

 

「ラピス、目を覚ましましたか?」

 

と私の耳に届いたのはトゥリアのいつもの合成声。

成熟した男性の声なのだが、声からしていかにも執事然としていて、

耳には届くがあまり頭に響かない声だ。

そして私の目の前に表示されるいつもの老執事の姿。

 

「ふむ、起き上がれないようですね。

 無理もない、貴女は血を流しすぎましたからね。

 何にせよ、計画は順調に推移しています。

 貴女は、もう少し休むと良い」


「わかった」

 

トゥリアの提案を認める言葉を答える私。

その私の声は私の意に反してほとんど響くことは無かったが、

トゥリアはいつもの仰仰しさで、私に向けて頭を垂れるてみせた。

そのトゥリアの老執事の様子を見届けながら、

私は先ほどから抵抗していた眠気に飲み込まれ、再び意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、意識を覚醒させた私。

目の前に浮かぶのはトゥリアの老執事の姿。

ただやはり視界は暗く、いつもよりもトゥリアの老執事の姿も色彩を欠いて見える。

 

「トゥリア、あまり起き抜けに見たい姿ではないでしょう。

 引っ込めてもらえるかしら?

 

トゥリアにそう告げながら、自分の状態を確認してみる。

先に起きた時と違い頭はすっきりしているし、

身体の重さも幾分和らいでいるように思える。

だが、まだ感覚が随分と鈍い。

身体全体がどうにもあやふやな感じで、はっきりとしない。

その他の感覚はましなのだが、触覚が上手く働いていないのだろうと推測する。

何か麻酔のようなものを使われているのかもしれない。

そして視覚の暗さの原因に気が付いた。

左目が利いてないのだ。

見えていないという訳ではなく、何かに覆われていて、暗闇しか映し出していないのだ。

そしてその分、普段より視界全体が暗く感じたのだろう。

 

「まったく、ヤレヤレですね。

 起き抜けの言葉がそれですか?

 まあ、貴女の言うことにも一理ありますし、この姿は消しておきましょう」

 

私が自身の左目の異常に気がついた頃、

トゥリアはそう返事を返し、私の目の前から老執事の姿を消した。

もちろんユーチャリスのAIであるトゥリアが、この部屋からいなくなった訳ではない。

この部屋のトゥリアの目や耳は生きているだろうし、

呼べば直ぐにでもその姿を見せるだろう。

老執事に消えてもらったのも、

目の前にその姿が無い方が楽だという、私の気分の問題でしかない。

トゥリアの姿が消えた後、私はもう一度自分の状態を確認してみた。

感覚ははっきりしないままだが、とりあえず四肢に力を入れてみる。

右腕、右足、左足、左腕。

順番に右回りに力を入れていったが、やはり感覚はぼやけたままだ。

しかも、左手に力を入れたときには、カキンという耳慣れない金属音がした。

その異音が引っかかり、もう一度左腕に力を込める。

カキン。

再び響く金属音。

その原因を突き止めるべく左腕を持ち上げようとするが、

やはりカキンと音がするだけで、ぼやけた感覚の左腕は上手く動かない。

しかも、左目が塞がれている事もあり、

私自身の目で、どういう状況なのか確認することも出来なかった。

 

「トゥリア、状況を教えて」

 

私の声に応え、目の前には幾つモノウインドウが展開される。

そこに表示されるのは幾つもの表やグラフ。

当然ながら私が意識を手放している間にも状況は動いていた。

木星トカゲこと木連の侵攻は止まらなかった。

ユートピアコロニーのみならず、各地にチューリップが打ち込まれ、火星のほぼ全域を制圧。

点在するコロニーやシティは、木星トカゲの無人兵器により灰燼と化したらしい。

そして火星の衛星軌道上に展開していた連合の駐留軍は撤退済み。

地球ヘ向けて転進中らしい。

一方、ユートピアコロニーの市民達はようやくシェルターでの避難生活に慣れてきた様子だ。

市長を始めに、行政に携わった人間が思いの他生き残ったらしく、

彼等を中心に離れたシェルター間にも関らず、一つのコミュニティを形成しているとの事だった。

もちろん、青いバッタをコントロールしているトゥリアと言う存在が無ければ、

通信も出来ない状況ではあるのだが。

が、市民にとって、幸運なことばかりあるわけではない。

コロニー守備隊の一部が幾つかのシェルターを支配下に置き、独立を気取っているとのことだ。

市長等のグループと対立し、アクティブステルスを搭載したトゥリアのバッタすら拒否しているらしい。

随分と馬鹿な事をする輩どもだと思った。

今はまだ、そう木連の注意が他のコロニーやシティを落とす方に向いている内は、良いだろう。

だがそれらが押し並べて終わった時、次に木連が注意を払うのはユートピアコロニーだろう。

チューリップ一つと、そこから吐き出されたレーザー駆逐艦を含む無人兵器を壊滅させたのだ。

いくらアクティブステルスで偽装したとはいえ、木連が何に感づくのは想像に難くない。

もっとも、無人兵器のみの判断で、ユートピアコロニーに押し寄せるかは不明だとは思う。

この時期の木連のAIの判断基準まで私は知らないし、トゥリアにもそのデータが残ってないようだ。

たとえ無人兵器が押し寄せようと、アクティブステルスで誤魔化しきれるとは試算結果が出てはいる。

が、それを受け付けない彼等がいると言うことは、

人が必死に身を隠している直ぐ隣で狼煙を上げるバカがいると言うことだ。

そうなると隠れる意味が無くなる公算も高いのも確かなことだ。

折を見て、いや早急に排除すべきだろう。

私は連中の排除プランを考え始めてようやく気が付いた。

知りたかったのは火星の現在の状況ではなく、自分自身の状況だったと。

まあ、思いかけず、火星の状況がわかったのは良しとし、再びトゥリアを呼び出すことにする。

 

「トゥリア、火星の状況は掴めた。今度は私の身体の状況を表示して」


「御意」

 

ウインドウを消し、老執事の姿を見せると、

わざとらしく大げさな仕草で頭を垂れるトゥリア。

そして表示される私の身体のデータ。

色々な数値に混じって、顔の左側と左腕、

2箇所の問題の箇所が赤い色で塗りつぶされている。

その横に付けられている注釈を読み、自身の状態をようやく把握できた。

私の左半分の額から左頬にかけて、まばらにV度の火傷を負っており、

その治療の為に包帯が巻かれている。

運良く失明こそしなかったが、火傷の跡は残るらしい。

皮膚移植という手段もあるが、

現況のユーチャリスの設備で施術することは不可能であり、

ユートピアコロニーの各シェルター内にもその様な設備はないらしい。

次に目を移したのは左腕についての注釈だった。

あの時、銃弾を受けぼろぼろになった私の左腕の一部は、

治療が不可能なほど損壊しており、

結局、腐り始めたことも相まって、

手首と肘の中間辺りで腕を切断し、義手を取り付けたらしい。

その義手も上等なものではなく、フックの様な鉤爪がついているだけの簡易なもの。

力を入れるとカキンカキンとなるのは、

左腕の筋肉と接着された義手のワイヤーにより鉤爪が動くからだ。

ユーチャリスには義手の在庫が無く、

格納庫から代わりに成りそうなもの探し出してきてくっつけたそうだ。

精巧な精度の高いIFS制御の義手なども存在するが、

高価なそれはユーチャリスに積んではいないのだ。

そして今の木連の侵攻を受けている火星では、

その義手は手に入らないのも当然の事だった。

簡易なとはいえ、義手を取り付けたと言うことは、その施術を私に施したと言うことだ。

今在るこの身体のだるさなどはそれが原因だろう。

一度目が覚めたときに聞いた出血云々による身体機能の低下により、

施術時にかけられた麻酔が分解されきっていないのだろう。

 

「流石に、ショックでしたか?」

 

問いかけてきた老執事のトゥリアの言葉に私は一瞬考える。

そして改めて自分がショックを受けている事に気がついた。

自身の状態を確認してから感じていた何時もとは違う身体の状態は、

何も出血によるものだけではなかったようだ。

目が覚めて気が付いたら、

身体の一部が鋼鉄製の、しかも元の形とは似ても似つかぬそれに変わっていたのだから。

 

「それでトゥリア、これになった事による計画への影響はどうなの?」

 

カキンカキンと左手を鳴らし、私は最も問題であろう疑問を口にする。

私にとって自分の左腕が、鋼鉄製のそれに代わろうが、

木製のそれに代わろうがどうでも良いことだと気が付いた。

今在るこの状態は私の慢心が招いた結果であり、

それを反省こそすれ嘆いたりする必要はまったく無い。

それよりも重要なのはこの状態が与える計画への、

あの女への復讐に対する影響だ。

今回の失態がどれほどのマイナス要因になるのかは、早急に検討しなければならない。

既に事は動き出している。

計画に修正が必要ならば、今すぐにでも動き出さねばならないだろう。

私達にとっても時間は有限なものだ。

結果として間に合いませんでしたなどと言うことは、私には到底認められないのだから。

 

「ふむそうですね、片腕でのIFS使用になりますから、稼動レベルに制限があるでしょうな。

 以前と現況の対比で言えば40%ほどに落ち込むでしょう。

 慣れれば60%ぐらいまではリカバリー出来るかと。

 ま、現況でもユーチャリスの運営に支障はなレベルです。

 ただ、ナデシコCから移植したハッキングシステムについては、

 貴女が従来どおりに使用する事は難しいかと」

 

トゥリアの答えに少しだけ私は安堵した。

とりあえずユーチャリスが問題なく運航できるのなら、

多少のことならフレキシブルに対応できるだろう。

が、こちらの隠し玉であるハッキングシステムが使えないのはかなりの痛手だ。

この時代にはオーバーテクノロジ気味のユーチャリスとて、

木連との真正面からの殴り合いでは数で負けるだろうし、

策で対応するにも限界はある。

大をもって小に当たるという向こうの基本的な策に、

何時かは飲み込まれるだろうからだ。

こちらの戦力の充実を図るのが残された道だが、

計画にも含まれているそれがどの程度になるのか、

相手に左右される要素を含む以上、まだ不明確な部分が残されている。

それを覆す為の、新たなハッキングシステムだったのだ。

 

「まあ、そちらはホシノルリに任せておけば事が足りますよ。

 そういう訳で、計画にはなんの支障もないというのが私の計算です。

 と言いたいところですが、一つ問題が…」

 

前半の言葉に安堵したところで、不安をかき立てる様に続くトゥリアの言葉。

それがどのような問題なのか、私にはまったく想像できなかった。

 

「そのホシノルリですが、今、自室に篭っていましてね。

 私がいくら呼びかけても、無駄なんですよ。

 自分のベッドの上で何をするわけでもなく居るだけで、食事なども取ろうとしない。

 ああ、無論、彼女のパートナーであるオモカネにも説得させましたが、無駄でした。

 というわけで、ラピス、貴女がホシノルリを説得してください」

 

そんな状態だとは、当然にして私は想像してなかった。

何故にルリがそういう態度をとるのか、私にはまるで理解が出来ない。

ただ、ルリがその様な状態なのは、私にとっても不利益をもたらす事になる。

私が人を説得するなどというのは、どう考えても向かないとは思うのだが、

今は私がそれをやるしかないのも、確かなことだ。

 

「解ったわ、トゥリア。

 でも身体が動かないから直ぐに行動を起こすのは無理ね。

 資料を読みたいわ。

 今のルリに似た状態に対応するためのデータがあるなら出しなさい」

 

身体が動かないのも確かなことで、その間に資料を読むこと思いつく。

何事も知識が必要なのだし、その為の指示を私はトゥリアに出した。

 

「御意」

 

トゥリアは相変わらずのうやうやしさを見せ、老執事の姿でそう頭を下げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが天岩戸だといういのなら、この前で面白おかしく踊り、笑って見せれば良いんだろう。

だが、現実はそんな大層ななものでもなく、内側からロックされたルリの部屋の扉でしかない。

そのロックとて、ユーチャリスを管理するトゥリアに命じれば解除できるだろう。

ただ、そうした所で問題の解決には至らないと私は思っている。

トゥリアから示されたデータベースによれば、

そういう状態に必要な対処法は 『意見交換による外界との断絶の緩和』 らしい。

まあ、それを私がやるかどうかは別問題であるし、

私がそれをやるのは無理であると自覚している。

結局、私は私のやり方をするしかないのだ。

全身に効いていた麻酔が切れ、

身体の感覚を取り戻した私はルリの部屋の前に来ていた。

トゥリアを通じ、ルリの部屋の中と私のいる廊下とをウインドウ越しに繋ぎ、ルリに呼びかける。

ベッドの中でシーツを被ったルリは、私の声に一瞬反応を示した。

が、それだけだった。

シーツを被ったままルリは、ベッドから一歩も出ることは無かった。

 

「ルリ、動きたくなければ好きにしなさい。

 ただ私は、アナタがそこから出てくるまでこの扉を叩き続けるわ。

 アナタと私の根競べね」

 

私はルリに一方的にそう宣言して、行動を開始する。

行動と言っても、ルリの部屋のドアを叩き続けるだけのことだ。

ガキン、ガキン

叩きつけるのは生身の右手ではなく、金属製のフックがついた左腕。

故に、ドアと鋼鉄製の義手が奏でる耳障りな金属音が響いている。

生身で無いから痛みも無いだろう、と高をくくっての事だったが、正直失敗だった。

確かに叩きつけた義手は、何の痛みも生みだしはしなかった。

が、取り付けたばかりの義手は身体に馴染まず、

ルリの部屋のドアに叩きつける度に、その付け根がズキズキと痛んだ。

およそ30回も打ち付けた頃、痛みばかりでなく熱も伴うようになり、その感覚もぼやけてきた。

巻かれている包帯には、血が滲み出てきている。

さらに義手を叩き付け、その回数も50を超えた頃だろうか。

施術の時に縫い付けたであろう傷口は、完全に開いてしまったようだ。

辺りには鉄錆にもにた匂いが充満し、

義手も流れ出した血に濡れて、

ドアに叩きつける度に滴が撥ね、周りを汚していった。

時折、私の顔にも飛んで来る血を拭いながらも、

私はただひたすらに、ドアを叩き続ける。

叩き付けた回数が100を越えた頃、

目の前が急に暗くなり、全身の力が抜けていく感覚に囚われる。

周りを汚す黒く変色した血痕の多さに、私は状況を理解した。

どうやら私はまた血を流しすぎたようだ。

そう理解したのを最後に、

力なくドアに義手を叩きつけた私は、脱力感に飲まれるまま、再び意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に目が覚めるとやはり見覚えのある天井だった。

言わずもがな、あの人の為にユ−チャリスに設置されたメディカルルーム。

やれやれまったく貴女には困ったものですよ。

そんなトゥリアのぼやきを予想して視線を廻らすが、

私の目はトゥリアの老執事ではない別のものを捕らえていた。

義手の無い右側からベッドの上の私に抱きついてくるルリだった。

ぎゅっと私にしがみついてくるルリになすがままにさせ、

ああどうやら根競べには勝ったのだと私は理解した。

 

「お姉様、もう止めましょう」

 

私の右腕にしがみついたルリからの言葉を、

その真意を、私は直ぐに理解出来ないでいた。

ルリは一体何を止めろというのだろうか?

 

「私はお姉様が傷付くのをこれ以上見たく無いんです。

 だから復讐なんてもう止めてください。

 私はただお姉様と」

 

そして私は右腕でルリを跳ね除けていた。

けだるさの残る身体を叱り飛ばし、上半身を起き上がらせると、

振り払われ尻餅をつき呆然としているルリを、残っている右目で睨み付ける。

 

「ルリ、お前が私を止めると言うのなら、お前は私の敵だ。

 くびり殺される前に、直ぐにでも去ね」

 

頭では、そう理性では、言いすぎだと理解していた。

けれど、私は感情に突き動かされ、怒気を伴う刃のような言葉をルリにぶつけてしまう。

自分自身、理解できていないが、何故だか無性に腹が立ったのだ。

そして、そんな感情の揺らぎぶつけられたルリは、

表情を歪め、しゃがみ込んだまま泣き出してしまった。

大声を上げる訳でもなく、ぐずぐずと泣くルリの姿に、

私の中にあった感情の昂ぶりは、急激に冷めていく。

冷めてしまった胸中に残るのは、後味の悪いわだかまり。

罪悪感とも取れる心のしこりに促され、私は言い訳じみた言葉を並べていく。

 

「ルリ、前にも言ったけれど、私にとってあの女への復讐は全てなの。

 あの人の言葉を守ることが出来ない私に、唯一残された道が復讐。

 だから私は、それをするわ。

 それこそ、私の手足の一本や二本失うことになろうとも」

 

正直私の言葉がルリに届くかどうかは解らない。

たかが10才程度のルリにとって、

己を賭してまでやるべき事などあろうはずが無いからだ。

が、それでも一度は敵と言ってしまったルリを、

やはり味方に引きずり込まないといけないと、頭の冷えた私は理解していた。

 

「だからルリ、私はアナタにはそういうことを言って欲しくない。

 私の身体はこんな風だし、今まで以上にルリのことが必要なの」

 

カチカチと左腕の義手を鳴らし、ルリに呼びかける私。

それが先ほどルリに投げつけたものと、まるで違う言葉なのは私も理解している。

手のひらを返したような都合の良い物言いには、正直自分でも呆れてしまうほどだ。

だが、それでも私はルリを何とかして懐柔すべきなのだ。

 

「お姉様は…私を…嫌いになったのでは…無いのですか」

 

しゃくりあげながら、私に問い返してくるルリ。

私はそのルリの言葉に、安堵していた。

もしルリが、私を止めるために敵になるとか言い出したのなら、

今の随分と不自由な私に、勝ち目は無い。

先ほど口にしたように、ルリをくびり殺すなど出来ないだろうし、

そんな事をしようとすれば、逆にくびり殺されるのが落ちだ。

だから私は、安心して言葉を続けることが出来た。

 

「私はルリを嫌いになんてならないわ。

 ただ、私がどういう在り様をしているか。

 それを納得はしなくても理解はしてもらいたいの」

 

一旦そこで言葉を切り、私はルリに視線を投げかける。

まだ多少ぐずりながらも、ルリは座り込んだまま私を見上げてくる。

 

「だからルリ、前と同じに…。

 いえ、それ以上に、私に力を貸してもらえるかしら?」

 

ベッドに上半身だけ起こした姿勢のまま、

言いながら右手をルリに向けて差し出す私。

しばらくは差し出された私の右手を見つめていたルリだったが、

おずおずと立ち上がると私の右手を取った。

 

「……解りました、お姉様。

 私、頑張ります」

 

泣いていた跡を拭いもせず、私の右手を両手で握ったルリが力強くそう告げてくる。

 

「ありがとう、ルリ。

 これからもよろしく」

 

私はルリに笑顔を向けてそう答える。

そして私の言葉に嬉しそうに頷くルリを見て、

自分が作った笑顔が、不自然なものにはならなかったのだと安堵した。







 

続く


あとがき

という訳で、今回はラピスの側の話でした。

正直、如何だろうかと、自分でも思います。

まあ、ラピスが主人公ですからね…。

義手のラピスのイメージとしては、アーヴィング・ナイトウォーカーです。

彼と違って、Eマグは持ってないけれど…。

今後も読んでやっていただければ、幸いに思います。

出来れば感想などもいただけると、かなり嬉しかったりします。

ではまた


グリフォンさんに代理感想を依頼しました♪


代理感想人

グリフォンのどうでもいいような感想コーナー(汗)

 

ルリとラピス…ご注文はどっちっっ!!(オイ)

まあ、こんなスタートですが、この作品を一言で言ったらこうなるんじゃないかなぁ…と思いまして。

逆行して来たルリ、それとも逆行してきたラピスか…二人とも正しく、そして間違っているのかもしれないが思ったことをしている…

だから正直言えば、くま師匠の文章能力に文句を付ける必要性はないでしょう。それ以前に凄い出来ですし。

キャラが全員美しいといえばいいのでしょうか?

キャラがキャラとして成り立つには『そのキャラの行動』が大きな意味を持ちますからね。

現存のキャラと被らないかも同じくです。

この時代のルリが大きく変わっているため、未来からのルリと重なる部分がないせいか、キャラの個性が生かされていますね。

 

この場合は対比するルリとラピスが、大切なのですがこの話の『テーマ』こそが最大の必要性を訴えています。

この小説のテーマがルリとラピスの対比を要求しているわけですね。

大胆に言ってしまえば

『地球がどうしようが、木連がどうしようが、はたまたどこかにいる落ち目のスケコマシさんがどうなろうが

テーマと、それに沿ったルリとラピスの対比さえうまく出来ていればどうでもいい』わけですから。

ただ、火星存続というのは少しばかり内容が深くなりますね…

そこは師匠のお手並み拝見です(汗)

 

更に一つ深く入れておきましょう…

 

『あなたは、なぜ、ここに、どういう目的でいるのですか?』

 

別にくま師匠のことを言っているわけでは決してありませんよ?

キャラの必要性との重ね合いになりますが、キャラにはこれが決まっていてキャラなのだと思っています。

現時点で未来から来たルリ、ラピス、この世界のルリの三人に限って言えばすでに確立しつつあります。

ですが、これは完全に『未来のルリ』『ラピス及びこの世界のルリ』の二極化です。

はっきり言うと木連やっぱりどうでもいいのかなぁ〜〜と感じました(笑)

 

まあ、キャラ増やすとその分、そのキャラの人生構築しないといけないわけですから、そのことからも増やすのは得策ではないと思いますけど。

こんなところで言うのもなんですが、むやみにオリキャラを増やして収集がつかなくなるSSは多いですからね。

そもそもナデシコには相当数のキャラがいますし…くま師匠のようにキャラを少数精鋭にすることで感情に訴えかけてくるのは納得です。

 

ともわれ、ちょうど中間テスト期間に入って(注意 私は学生です)実はこんな感想に時間をかけている余裕もなかったりするグリフォンよりでした。


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