〜トビウメ 応接室〜


「ほらユリカ、おなか空いたろう?好きなものをお食べなさい」

「ありがとうございます、お父様。しかし今はこのようなことをしてるときではあり
ません。ナデシコの包囲を解いてください・

「しかしなユリカ、これも仕事なんだよ(泣)だからお詫びにこうやってるパパの気
持ちがわか「わかりません!」ユリカぁ〜(泣)」

「とにかく、ナデシコを開放してください!」

「落ち着きなさいユリカ。艦長たるものこの程度のことで、声を荒げてはならん
よ?」

「・・・・・・わかりましたわ」

「よろしい。さて、話し合いはまだ終わらんのかね?」


コンコン・・・・
「入れ」

「失礼いたします」

その声と同時にプロスが応接室に入ってくる。

「決まったかね?」

「はい」

「プロスさん…」

「聞かせてもらおうか」

「はい。ナデシコはあくまでネルガルの私有物であり、あくまでその行動に制限を受
ける必要なし、です。はい」

「キサ・・・」

コウイチロウがそう叫ぼうとした瞬間通信が入る。


ピピッ・・・
『提督!活動停止していたチューリップが活動を再開しました!』

「なにっ!!状況は!?」

『現在クロッカスとパンジーがつかまりました!』

通信士の声に反応し外を見たユリカたちの目に映ったものはチューリップに飲み込ま
れていく二隻の護衛艦だった…。

機動戦艦ナデシコ


〜For Dearest Sister〜



第七話
「それは舞い散る花のように」







「ムネタケ!キサマァァ!!」

アキトが獣のような雄叫びをあげ、ムネタケにせまる。

「うわぁぁぁ!!」

「ひいっ…」

アキトは目にもとまらぬ速さで10数メートルあったムネタケとの間隔を一瞬にして ゼロにし、ムネタケの目前に現れる。

ガッ…

息つく暇もなくムネタケの胸ぐらを掴み軽々とその体を持ち上げるアキト。

「キサマが!キサマが!!」

「く、苦しい…」

ムネタケの顔色が青色に染まりつつあった。

「う…うぅん…」

「えっ……」

そのときルリからうめき声が上がる。アキトは手に持つムネタケを壁に投げつけルリ の元へ駆けつける。

ドカン!!

「ギャ!!」

ムネタケが壁に体を激しく打ちつけ、気を失って崩れ落ちた。

「ルリちゃん!!」

「アキトさん……あれ?キノコさんはどうしました?」

「そんなことよりルリちゃん、体は!?」

そんなことで片づけられたムネタケ、哀れだ。

「私…ですか?っ…痛い…。あ、でもかすっただけみたいです」

「えっ……?俺には…。まぁ、いいや。ルリちゃんが無事なら」

運のいいことに銃弾はルリの脇の間をすり抜けていったようで、服が少し破けている だけだった。

「よし、ブリッジも取り返したしあとは……ルリちゃん?」

そのときアキトはルリの様子がおかしいことに気づいた。その小さな二つの腕で自ら の両肩を握りしめ、その両肩は小刻みに震え、顔面蒼白になりその場にへたり込む。

「あ…あ……」

「ルリちゃん…」

アキトは腰を下ろしそのルリの肩を一回り大きな腕で包み込み、ルリが安心できるよ うにルリの頭を優しくなでる。

「怖かったんだね。でも、もう安心だよ。俺がついてるから、ね?」

「あぁ…うぁ…」

「ルリちゃん、ゴメン…また守ってあげられなかったみたいだ。ゴメン、ゴメンよル リちゃん…」

アキトはルリを抱きしめる腕に少し力を込める。自分の存在を強く訴えかけるよう に。ありったけの優しさを込め、ルリが安心できるように……。

「ゴメン、ゴメンよ。守るって約束したのに…俺に力が足りなかったから、またルリ ちゃんをこんな目にあわせてる」

アキトは謝罪の言葉を続ける…何度も何度も……。





次第にルリが落ち着きを取り戻し、体の震えが徐々になくなっていく。

「ア、アキトさん……」

「大丈夫?ルリちゃん?」

「はい、ありがとうございます」

「よかった…」

アキトはほっと胸をなで下ろす。

「あの…アキトさん…その…うれしいんですが…

「なんだい?ルリちゃん?……っ!!ゴメン!ルリちゃん!」

アキトはルリを抱き続けていたことに今更ながら気づき、あわててルリとの距離をと る。

ちなみにアキトの顔は真っ赤である。

「あっ……」

ルリからそんな声が漏れたが、気の動転しているアキトの耳には入らなかった。

ルリが名残惜しそうな様子を見せるがアキトは気づかなかった。

顔を真っ赤にしたままルリとは反対の方向み向いている。このアキトが先ほど大人を 片手で投げ飛ばした青年だと誰が気づくであろうか。

ピピッ…

『ブリッジ、聞こえますか?』

格納庫より通信が入る、メグミであった。

『アキトさん。…何かありましたか?顔が真っ赤ですよ?』

「えっ…な、何でもありませんよ、レイナードさん(汗)」

『……(何かありましたね。後で映像チェックしないと)えっと、ヤマダさんがエス テバリスで出るそうです』

「え?ガイが出るの?何かあったの?」

『気づいてないんですか?海中で活動停止していたチューリップが活動再開したんで すよ』

「なんだって!?くそっ!!俺もエステで出ます!」

『しかしテンカワ、ブリッジは誰に任せるのだ?おまえがそこから動けばホシノだけ になるのではないのか?』

同じようにゴートからも通信が入る。

「あっ…」

そう言ってアキトは自分の後ろにいるルリに目をやる。

ルリは落ち着いたとはいえ、まだ不安げな表情は抜けきっていなかった。

「ルリちゃん……。ゴートさん、格納庫の制圧が終わり次第こっちに人を…」

『もうやっている、以上だ』

それを聞いたアキトの顔がほころぶ。そしてルリと向かい合い腰を下ろす。

「ルリちゃん、もうすぐゴートさんたちがきてくれる。それまでは俺がルリちゃんの そばに「イヤです」…え?」

アキトの言葉を遮りルリが言葉を続ける。

「私はもう大丈夫です。だからアキトさんはエステに向かっていただいてかまいませ ん」

「ルリちゃ「行ってください!」……うん、わかった。ここは任せるよ。後ちょっと の辛抱だから」

「はい。アキトさんお気をつけて」

「うん。行ってくるよルリちゃん」

アキトは立ち上がりそう言ってルリを優しくなで、ブリッジを出ていった。

プシュー…

ブリッジの扉が閉じ、ブリッジにはルリと気を失ったままのムネタケだけとなった。

「(アキトさん。わがままでごめんなさい。でも私、守られるだけじゃイヤなんで す。アキトさんの…)」

プシュー

「大丈夫か!?ホシノ!」

「ルリルリ、大丈夫だった?」

「ホシノさん、けがはないかい?」

ゴート、ミナト、ジュンがそう言いながらブリッジに入ってくる。

「はい、みなさんありがとうございます」

ルリは三人にお辞儀をしながら返す。

「(アキトさんの隣に立ちたいから…後ろはもうイヤなんです…)」





〜トビウメ 船内〜


「お父様たち行っちゃいましたね…」

「ええ…」

「ナデシコに帰っちゃいましょうか?」

「…いいんですか?」

「いいんです!今の私は、お父様の娘じゃなくて、機動戦艦ナデシコ艦長のミスマル ・ユリカです!」

「わかりました”艦長”」





〜ナデシコ 格納庫〜


「レッツゴー!ゲキガンガー!」

ヤマダ「ガイ!」……ガイが、エステに乗り発進準備に取り掛かっていた。

『ヤマダさん発進準備はいいですか?』

「ダイゴウジ・ガイだ!」

『……うるさいですよ?ヤマダさん?(後でどうにか修正しないといけませんね …)』

メグミの額に青筋が浮かんでいたのは想像するにはたやすいいことだろう。

『エステバリス…発進』

ギュイーン

「のわぁぁぁぁ!!」

メグミの一声により問答無用で発進された、ガイのエステバリス。

『ちょっと待てー!!』

発進されたと同時にウリバタケからの通信が入る。

『どうしました?ウリバタケさん?』

『それは陸専用なんだよ!こないだのと同じや

つなん だー!』


『…あ』



〜海上〜


「いくぞぉぉ!!ゲキガンジャーンプ!」

ガイがバーニアをふかしエステを上昇させる。

バシュー……フッ

「なんだこりゃぁぁぁぁ!!」

突如エステのバーニアがきれエステはまっさかさまに海へとダイブした。

「ちくしょぉぉぉ!!この程度でこのガイ様の熱血は消えたりしないのだ!!と べぇぇ!ゲキガンガー!」

再びバーニアを吹かせ上昇するエステ…しかし、数秒後には落下、この繰り返しをし つつ、チューリップの攻撃をかわすガイ…。

「くそっぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

ガイの間抜けな声はブリッジに響く。

これを見たミナトが「カエルみたいと思ったのは仕方のないことだろう」


〜ナデシコ 格納庫〜

「ガイの奴…なにやってんだ?」

『アキト〜何とかしてくれ〜』

「自分で出ておいてよくいうよ、ウリバタケさん、このエステで空中換装します」

『おいアキト、お前はどうすんだ?』

「俺のフレームも後で出してください。同じく空中換装しますから」

『わかった、タイミングはお前に任せる。しくじるなよ』

「ウリバタケさんこそ」

『誰にもの言ってんだ?』

そう言って二人は苦笑する。お互いの能力を認めていないとこんなことは言えないだ ろう。

「テンカワ・アキト、エステバリス出ます!」


〜トビウメ ヘリポート〜

「では艦長、まいりましょうか」

「はい、お願いします」

ピピッ…

ヘリにより脱出しようとするユリカたちに通信が入る。

『ユリカ、どこへ行くつもりだ!?』

「ナデシコですわ、お父様。艦長たるもの自分の艦は見捨てるようなことはしませ ん。そう教えてくださったのはお父様です。プロスさん出してください」

ユリカの一声でヘリはナデシコ向かって発進する。

『しかしユリカ、今ナデシコは我々が制圧しているんだぞ!そんなところに戻ってな にができる!?』

「心配いりませんわお父様。だってあの船には…私の王子様が乗ってるんですもの… (赤)」

『のぉぉぉぉぉ!!(号泣)』


〜海上〜

チューリップの目の前で相変わらず、飛び跳ねているガイのエステバリス。

「だあぁぁぁぁ!どうにかしてくれぇぇぇ!」

そのときアキトからの通信がガイに入る。

「ガイ…後でお仕置きだな…」

「んなことより、なんとかしてくれぇぇぇ」

「はいはい…ガイ、空中換装するぞ」

「む、ついにアレか、アレをやるんだな?」

「俺はやなんだけどな…」

「俺はアレでしやらねぇぞ」

ピピッ…

『アレってなんですか?』

そのときユリカからの通信が入る。皆驚きは隠せない。

「ユリカ!?お前どうしてそんなとこに!?」

「艦長!あぶねぇから早くナデシコに戻れ!」

アキト、ガイである。

ユリカを乗せたヘリがチューリップの真横を通過しているときである、ガイのいうこ とはもっともだった。

『えーと、パイロットの二人は私たちが帰還するまでの時間稼ぎお願いします』

「了解した」

「戦うすべをもたない艦長をかばう…くぅ〜燃えるシチュエーションだぁ」

『では、お願いします。私たちは急いで艦に戻り、チューリップを殲滅します』

「ああ、頼んだぞユリカ」

「こっちは任せろ!」

二人の声を聞きながらヘリはナデシコへと帰還していった。

「で、アキトよ…アレやるんだろ?」

「しょうがない、今回だけだぞ。ウリバタケさん換装フレーム射出準備いいです か?」

『任せろ。いつでもいけるぜ』

『ナデシコ、援護射撃行います』

「ルリちゃん、ありがとう」

二人からの通信を聞きアキトが号令を下す。

「ガイ、準備いいぞ」

「わかった、そっちで頼む。こっちは回避で精一杯だ。すまん」

「了解。予定時間は10秒後だ、ウリバタケさん射出お願いします。いくぞ」

『了解!』

「おう!」

「「クロス・クラッシュ!!」」

かけ声と同時にナデシコから換装フレームが射出され、アキトのエステのコクピット が射出されフレームがガイのエステの真下へと移動する。

ガイのエステからも同じようにコクピットが射出される。

射出されたコクピットがアキトのフレームとドッキングする。

換装完了である。

「よっしゃぁ!こっちは完了したぞ!そっちはどうだ!?って終わってやがんのかよ …」

ガイが換装完了するのと同時にアキトも換装完了していた。

「いくぞ!ガイ!」

「おう!」

二機のエステバリスはチューリップに向かい飛び立った。


〜ナデシコ ブリッジ〜

「帰還しました〜」

「「「「「艦長!?」」」」

「ルリちゃん、ナデシコはいける?」

ユリカの声にルリがすばやく反応する。

「いつでもいけますよ、艦長」

「では、チューリップ目指して全速前進♪」

「「「「ええっ!?」」」」

ブリッジの全員が目を丸くする。

「聞こえませんでした?全速前進ですよ♪あ、ルリちゃんグラビティブラストは チャージしておいてね♪」

「わかりました、ナデシコ前進」

「ルリルリ!?」

「ミナトさん、操舵任せます。お願いします」

「もう…わかったわ。ナデシコ前進」

ミナトの声でナデシコは前進を開始する。


〜海上〜

「ゲキガンフレアー!!」

アキト、ガイの二人はチューリップの攻撃に当たっていた。

「いいぞ、ガイ。あとは、ナデシコに…って、なんでチューリップ向かっているん だ!?」

アキトがナデシコを確認すると、チューリップと目と鼻の先にまで到達していた。

「おいユリカ!何考えてんだ!死ぬ気か!?」

『そんなことしないよ〜、まぁ、見ててよアキト♪』

ナデシコはユリカの言葉を残しチューリップへと飲み込まれていった。

「おいアキト、大丈夫なのか?」

「…ユリカを、ナデシコを信じるしかない」

アキトがそう言った瞬間にチューリップから光が漏れ始める。

「なんだありゃ?」

ガイが驚きの声を上げる。

「……そうか!内側から…」

アキトがユリカの意図に気づいたときにはナデシコはチューリップを破壊しその姿を アキトとガイの前に現した。

「ったく、無茶しやがるぜ、うちの艦長はよ」

そう言ってガイは苦笑する。

「ああ、まったくだ」

アキトもつられて苦笑する。

「さあ、帰還するぞ。ガイ」

「了解だ」

そういい残し、二機のエステバリスは仲間の待つナデシコへと戻っていった。




続く








あとがき

紅「長い間更新できずにいた紅です、お久しぶりです」
ルリ「…………」
紅「あの…ルリちゃん?」
ルリ「あなた、何考えてるんですか?(怒)最後に投稿したのいつだと思ってるんで すか!」
紅「はい…およそ3ヶ月前です…」
ルリ「それは短編でしょう!連載のほうを聞いているんです!」
紅「もう、言葉もありません」
ルリ「当たり前でしょう!読んでくださっていたかもしれない方々になんていうんで すか!!」
紅「申し訳ございませんでした」
ルリ「ほとほとあきれさせてもらいましたよ、あなたの馬鹿さかげんには!」
紅「言い訳のしようもないね」
ルリ「次こそちゃんと書きなさい、それが懺悔でもありますから!」
紅「了承…」






ほんとのあとがき

連載4ヶ月もほったらかしておいてなにやってんの?と思われるかもしれません。
大変申し訳ありませんでした。
これを読んでいてくれた方、ならびに管理人の黒い鳩様、深くお詫び申し上げます。


感想
紅さん投稿再開です♪
今回はアキトの役どころがガイに(爆)
アキトは守りたい人だというのはTV劇場版一致のキャラ特性であると私は考えております。
ただ、劇場版は順序をつける事を覚えていますがね。
だから、このアキトはそういった分だけ劇場版に近いのかもしれませんね。
そういえば、今回ゲキガンガーの扱いはどうなるのか楽しみな気がしますね♪
何と 言っていいかは分りませんが、出番少な目です。
私としては決意の私といさめるアキトさんでもつれ合ううちに…(///)

とか、期待してたんです!!
ははは…
まあ、ヒロインなのは間違いないんだし。
ゆっくりやっていったほうがいいって。
ま あ、それはそうですが…
確かにあそこの私は10歳ですから…恋愛には微妙な年齢ではあります。
でも、好きになるのは自由だと思うんです。
…そういう話を論議していたんじゃないと思う(汗)

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