この作品はRiverside Holeの500万ヒット記念用に送った作品です。

また焼き増しかい、と思われるかもしれませんが、ご容赦を(汗)



何時の世も戦争が続いている。


何時の世も戦争によって残されるのは無人の荒れ野だけだ。


そして、刻まれた傷は時の流れと共に消えていく…


その傷を目撃し記憶しているのは満天に輝く星の群れかもしれない。


その星すら、いつか流れ星の様に消え去る運命にある…


これは、そんな星々の間で何時の日か語られた人間たちの今はもう忘れかけている戦いの記憶である。


…のだろうか?



天河英雄伝説
イゼルローン攻略戦


前編「十三艦隊結成」





俺の名はテンカワ・アキト自由惑星同盟の士官だ。

別段なりたくてなった訳じゃ無い。

軍の学校は他と比べて格段に安くいけたから、親の借金でヒーヒー言っていた俺には渡りに船だっただけだ。

出来れば、卒業後は早く学費を返済して、唯一の趣味である料理の世界に身を投じたいと思っているのだが…

そんな俺がいつの間にか准将なんて呼ばれるようになっているのだから、世の中分らないものである。


しかも、最近は先の敗戦の目をくらませるため、大々的に俺をピエロの役回りとして担ぎ出すつもりらしい。

あんまりあからさまなその状態が続いてうんざりしていた所に、今日草壁国防委員長が演説にゲストとして呼ぶなんてバカな事を言い出すもんだから。

俺は急に腹が痛くなった事にして、不貞寝を決め込んだ…


しかし、我等が同僚、ウリバタケ・セイヤ先輩には丸分りのようだ…

通信で、いきなり元気そうだな、と言われたのには噴出した。

そのご、色々話していたが。

話が国宝委員長閣下の事に及ぶ…まあ、当然なんだが…


『ミスマル本部長は兎も角、草壁閣下は不愉快かも知れんな、アスターテの英雄にすっぽかされたんだからな…』

「英雄? 俺は敗軍の将ですよ?」

『だからこそ英雄が必要なんだろう。民衆の目をそらす為の…そんなのが嫌なら出席拒否もやむ終えずだが…

 もっとも、あの男の下品なアジ演説を聞かされたらこっちまで病気になりそうだがね…それじゃ…』


やれやれ、セイヤ先輩も大変そうだが俺としては出来るだけああいうのとは係りたくないんでね。

出来れば、軍を退役してラーメン屋でも開きたい所だが…


「提督、紅茶入れる?」

「ああ、頼むよラピス。出来ればブランデーも入れて」

「朝からブランデーなんて、身体に良くないよ」


そうは言いながらもラピスは紅茶にブランデーを入れてくれている、最も比率は大分少なそうだが…

ラピスは国の制度で引き取る形になった戦災孤児だ。

元は先輩の部下の子供だったらしい、よくは知らないのだが…


「さて、国民の義務として放送ぐらいは聴いてやるか」


TVをつけありがたい国防委員長閣下の番組にチャンネルをあわす。

もっとも、アジテーションの為、殆どの局がこの放送を行っているようだが…

見てみると、丁度草壁国防委員長がアジ演説を始めている最中だったらしい。


『市民諸君! 私はあえて問う! 150万の将兵はなぜ死んだのか!?』

「首脳部の作戦指示が不味かったからさ」


流石にここまでやられると清々しい気さえしてくる…

こんな状態で戦争をして勝った国が殆ど無いと言うことは歴史が証明している筈なのに。

軍国主義へとひた走っているこの国の未来を思うと目の前が暗くなるのを憶えた…












統合作戦歩本部、本部長室。いかめし雰囲気の部屋なので普段は入りたくないのだがご指名とあらば行かねばならない。

軍人の辛い性と言う奴だな…仕方ないと心を決めて部屋にはいり、部屋を見回す。

中にいるのは、ミスマル本部長とカザマ大将の二人だ。


「まあ、座けたまえ」


カザマ大将に進められるまま俺は本部長の机の正面にあるソファーに腰を下ろす。

ミスマル本部長は俺が座ろうとするのを確認してから、話し始める。


「ところで、だね、アキト少将」

「昇進ですか?」


相変わらずいきなりだな、このカイゼルヒゲのオッサンは…

だが、昇進となれば…また何か厄介ごとなんだろうな(汗)


「そうだ、そして新たに編成される第十三艦隊の司令官に就任してもらう」

「艦隊司令は中将を持って当たるのでは」

「アスターテ出生き残った艦隊のと新兵の部隊だ、艦定数6400、人員約70万人と通常の約半分なのでね…」

「その最初の任務はイゼルローン要塞の攻略」

「寄せ集めの半個艦隊であのイゼルローン要塞を落とせと?」


案の定無理難題だな…

ミスマル本部長は言いたい事が分りやすいのは良いんだが…無茶にも限度がある。


「そうだ」

「可能だと考えますか?」

「君に出来ねば、誰にも出来ない。これに成功すれば国防委員長の感情は兎も角、才能を認めざるをえんだろう」

「…分りました」


全く、国防委員長への発言権を振ってくるとは…

ミスマル本部長も喰えないオッサンだ。

だがやらないわけにも行かないな…さて、どうやるか…頭の使いどころだな…











「諸君等第十三艦隊はわが軍の精鋭部隊である、アスターテ会戦を生き抜いた古強者と新進気鋭の若者とが…」

「なにが精鋭だよ、ようは敗残兵と新兵の寄せ集めって事じゃねえか」


草壁国防委員長が、相変わらずのアジ演説で部隊の士気を盛り上げようとしているようだが、部隊は厭戦気分が蔓延していた…

そもそも、今まで何個艦隊つぎ込んでも出来なかったイゼルローン要塞攻略を半個艦隊でやろうというのだ、それも当然だろう。

さらには、艦隊司令官が遅刻して来ていた…


「ハァ! ハァ!」

「おお! 来たかったく遅いぞアキト!」

「すいません…先輩」

「直ぐ出番だ…」


アキトは息を整えつつ着込んでいる服を直しながら、舞台袖に移動した、草壁はそれを見咎め、演説を終わらせる。


「では、第十三艦隊初代司令官、テンカワ・アキト少将を紹介しよう」


草壁はそう言うと、演説台から脇に移動しアキトに譲ったのだが…アキトはそれを受けて壇上に移動する物の、ぎこちなくマイクの前で硬直する。

周囲がシーンと見守る中、アキトはどうにか言葉を紡ぎだす。


「あの…えっと、こういう場は苦手なんだけど…ほら、料理って熱い内に食べないと美味しくないよね。料理を食べる為には生きて帰らなきゃならない訳で…そ の為に皆でがんばろう」


アキトは自分でも、何が言いたいのか半場良く分かっていなかったが、先ほどのアジテーションにうんざりしていた兵士達には、以外に受けたらしく、


「意外に話せるじゃないか、あの司令官」

「寄せ集めの艦隊を精鋭呼ばわりする国防委員長よりは信用できそうだな」


との好評価を受ける事になる、だが、それを聞いていた草壁が顔をしかめたのは言うまでも無かった。



















「ところで、どうなんだ? 勝算はあるのか?」


セイヤ先輩に誘われて、軍の仕官が好く利用する喫茶店に入り、話をしていた。

しかしまあ結成式の後ということもあって、セイヤ先輩も色々気になっているらしい。

だがまあ、そういう事は頭の中からもれた瞬間意味を失う事も多いので、今すぐ明かす訳にも行かない。


「まあ、あるような、ないような…」


そういって、お茶を濁す。


「おいおい、俺にも秘密かよ?」

「こういったことは後から分った方がありがたみがあるんですよ」

「ふん、まあ良い。必要な物があれば言えよ、特別に袖の下無しで用意してやろう」

「ははは…頼りにしてますよ」


おどけてはいるが、本当の事だ、実際必要な物は結構多い。

秘密裏にセイヤ先輩に用意してもらわなければいけなくなるだろう。

そうして、頭を悩ませていると。下の席で騒ぎが持ち上がっていた。

どうやら、ウェイトレスが士官の一人にコーヒーをこぼしてしまったらしい。


「すみません、申し訳ありません!」

「わが軍服を汚すとは、わが軍を汚すのと同義だぞ!」


ウェイトレス相手に凄む軍服の男…

見ていて情け無いものがある、多分ああ言うやからは弱い物をいじめて強くなったつもりになるタイプだ…

見てみぬフリをするのは簡単なんだが…さて、どうしたものか…

そう考えていると、突然男の背後から声がした。


「少女を相手に恫喝とは情け無い限りですね」


騒ぎの中、二人の男を(一人は少年か?)従えた少女が歩いてくる。

周りの兵士達は動揺しているらしい…彼女は青みがかった銀髪をツインテールにしている。

ウエイトレスの少女よりも幼く見える少女は無表情に目の前の軍人を見ている。


「…なんだ貴様!?」

「(ダイアンサスリッター)撫子の騎士連隊、聞き覚えがありませんか?」

「なに!?」


男が横から耳打ちを受けている。

多分男は知らないのだろう…彼女達の知名度が低いのでは無く男が無知であるのは、周囲を見ていれば分かる。

微妙に間抜けな空気だな…(汗)


「貴方は、随分と軍服を大切にされているようですが、これならどうします?」


そう言って少女は、男に給仕用のコーヒーポットを投げつけた。

ポットは狙いたがわず男の顔に叩きつけられる。

つられて周囲の兵士達がざわめきだす。


「貴様! 軍法会議にかけられたいのか!? 私は草壁閣下直属の将校なのだぞ!」

「どうぞ、ご勝手に。但しその時は民間人に暴行を働いた事が明るみに出るだけですが…」

「くっ!」


正論を言われて腹を立てた男が殴りかかるが、男の拳は平手であっさりと受け止められてしまった。

少女は見かけによらず、かなり戦いに慣れているらしかった。

はっきり言って、男では相手になりそうに無い。

男も悟ったのだろう、捨て台詞を残し去っていった。






「撫子の騎士か、帝国からの亡命者の子弟で構成された部隊だが、どの艦隊も扱いかねている」


なるほど…作戦にうってつけの人材だな。

何とかしたい所だが…そうだ、早速たのんでみるか。


「先輩、さっきの物資なんですがね」

「ああ、何だ? 言ってみろ」

「実は……」

「何!? お前、無茶な事やらかすつもりなんじゃね〜だろうな?」

「多少無茶やらなきゃ、こんな作戦おぼつきませんて」

「それはそうだが…」


確かに不安要素は多い、だがそもそも作戦立案からして無茶なのだ。

本来なら、最低でも敵の六倍の戦力をだし、そして相手に奇策を使わせない完全な形の戦術を持って当たるべきだ。

しかし、今回のような場合それは不可能だしな…俺は細かな事を、セイヤ先輩とつめる事にした。


















「どうしたカイト?」

「そういえば先輩知ってますか? 先輩が酒の肴にされてたの、ホウメイのおばちゃんが一発で黙らせたらしいですよ」

「おばちゃんは酷いな、だが、まああの人らしい」

「今夜俺達もどうです? アキト先輩も酒の肴にされてるばかりじゃなくて、自分も飲んでみては?」

「あ〜、いや、やめておくよ。今は艦隊編成でてんてこ舞いなんだ」

「それは残念です。では帰還後に誘わせていただきますよ」

「それも、おぼつかないんだがね〜(汗)」


俺は頭を掻きながら、執務室に戻る。

まあ、少将ともなればそれなりの部屋を与えられているのでその辺は良いのだが…

艦隊編成の事務処理ははっきり言って骨が折れた。

元々理数系の苦手な俺なので、事務処理のスピードは並かそれ以下だ…

だが、生きて帰るためにも手を抜く事はできない、人事は申請の形でセイヤ先輩に送ってあるが…さてどうなる事やら。

事務処理全般を任せられる人材と軽く言っても人材難のこのご時勢、どういった人間が回ってくるか…セイヤ先輩の能力に期待って所か。


そんな時先輩から通信が入った。相変わらず難しそうな顔をしているが、何か良いことがあったのだろう、口元が少し緩んでいる。


『よう、艦隊司令官の椅子の座り心地はどうだ?』

「最悪、ここ三日ほど寝てないんだ、やる事終わらせ無いと出せないから、艦隊出発まで寝れないかもな…」

『そんなお前に良いニュースだ、優秀な若手をなんて無茶な注文にぴったりの奴を送っといた、まっうまくやってくれや』

「上手く?」


セイヤ先輩のこの目は、何か企んでいる時の目だ…

嫌な予感がする…だが、俺が言い返そうとする前にセイヤ先輩は通信を切ってしまった。

先輩の通信が切れるとほぼ同時に、インターホンがなる。


「どうぞ」


俺は山積する資料に目を通しながら、誰かが入ってくる足音を聞いた。

ふと目をあげてそちらを見る。

その女性は、長い黒髪を揺らしながら俺の前に立つ。

士官服をびしっと着こなし、完璧な軍人然とした女性だった、やる気の無い俺とは対照的な凛とした美人だ。

その女性は俺の正面に立つと、無駄の無い動きで敬礼をし、自己紹介を始める。


「申告します、この度アキト少将の副官を拝命しました。イツキ・カザマ中尉であります」

「イツキ…カザマ…イツキ大将閣下の…」

「はい、少将の噂は父から良く伺っております」

「やられた…」

「はい?」


やられた、セイヤ先輩この場をお見合いかなんかと勘違いしているんじゃあるまいな…

30も近いんだから結婚しろとか煩いからな…自分が結婚してるからって。

俺はもう少し自由でいたいんだ。

まあいい、セイヤ先輩がよこしてきたんだ本当に優秀なんだろう。

俺は、着任早々イツキ・カザマをこき使ってみる事にした…(汗)








当日になり、どうにか出発準備を整えた俺は、先輩やカイト、ラピスに見送られながらシャトルへと向かう事となった。








宇宙暦796年4月27日…


自由惑星同盟軍第十三艦隊は…


テンカワ・アキト少将の指揮下…


帝国軍イゼルローン要塞攻略に旅立った。










あとがき

あほうなSSで申し訳ない(汗)

しかも、リバホに送ったやつを今頃こっちにもUPして稼ごうっていう姑息な手段だし(爆)

後編は今のところ出す予定はありません。

来年なら何とかなるかな…





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