注意:”君が主で執事が俺で”をナデシコキャラでやってみようかなというものです。
単発コワレギャグですので、あまりにキャラがかけ離れているのが嫌な方はご遠慮ください。
ついでに、配役も無茶苦茶です(爆)

1500 万HIT記念作品

『執事始めました』






「ラピス姉いいのか?」

「大丈夫! 家事洗濯は昔から得意だったでしょ?」

「うん、まあ……」



突然の事なんだと思う方も多いだろうが、俺、テンカワ・アキトには姉がいる。

ラピス姉は見た目は11歳前後にしか見えないが立派に20歳を越えている。

運転免許なんかも持っていたりするので警察に補導されそうな時も安心だ。


それでまあ、何をしているのかというと……家出だ。

それも良くある一般的な親とソリが合わないとかいうのではなく、家庭内暴力最近はDVとか言うんだっけ。

外面がいい親父は俺達への体罰を外に漏らさない事にかけては天才的だった、お陰でその手の相談はことごとく失敗に終わっている。

仕方ないので要約まともに働けるような年齢に達した俺は家出を決意した。

その事に賛同して、ラピス姉も一緒に付いてきてくれた。


それで羽陽曲折あって、今住み込みで働かせてくれるというお屋敷にやってきたわけだ。



「ワシが執事長のミスマル・コウイチロウである! 尊敬をこめて中将と呼ぶがいい」

「はっ、はい中将」



その執事は60代一歩手前という感じの年齢だったが、筋骨粒々でまともにケンカしたら一発でノックダウンさせられそうなほど強面だ。

今日から俺が働く職場ではご主人様方の次に偉いということになる。



「じゃ、アンタはアタシの下で働くんだよ。料理の経験はあるんだろうね?」

「はい、家族の料理は私が作ってました」



大柄な女性、ホウメイとかいう人についていくラピス姉を見ながら思う。

ラピス姉……本当に大丈夫だろうか……料理は下手ってわけじゃないんだが、体が小さいからキッチンが危ないんだよな。

皿とか大量に洗おうとして洗面所に顔を突っ込んで溺れたのは結構記憶に新しい。



「大丈夫、それよりアキトちゃんもしっかりね♪」

「ああ、ラピス姉……俺がんばるよ」

「さて、お前の職場なんだが……」

「はい!」

「特にない」

「は!?」

「あえていえば遊撃だ、他の使用人の手が足りない所を手伝ってくれ」

「え、でも……」

「お前の適正が分からないからな、試用期間だと思えばいい」

「わかりました!」



そうと決れば早速仕事だ、とはいえ執事の仕事なんて良く分からない。

とりあえず使用人としては、最初に掃除から始めるのがいいかなと思い、表を掃除すべく庭に出てみるが……。



「うっ……一体どれくらい広いんだ……」



そう、庭は表側だけでも軽く200m四方くらい、学校とかの運動場が100mちょいだから4面分くらいはある。

裏は見える範囲でその倍、さらに所有している森なんかも合わせると、もう見当が付かないくらいの広さがある。

思わず俺は呆然としてしまった。



「一体どこまでやればいいんだ……」

「君が新入りのテンカワ君かい」

「ああ、お前は?」

「お前って…まあいいか、僕はアオイ・ジュンよろしく」

「ああ、よろ……!?」



その時、邸内からご主人様の一人である、ユリカ様が出てきた、中将を従えてリムジンへと向かう。

彼女はオーケストラの指揮者をしているそうだが、この館のレベルを考えるとそれだけで大丈夫なのかと少し思う。

とはいえ、俺なんかでは絶対不可能な職業だし、凄いとは思うが。

彼女は朗らかな表情で頭を下げる俺に声をかける。



「今日入った新人さんだね?」

「はい、テンカワ・アキトといいます」

「アキト……んーどっかで聞いたことがあるような?」

「そうですか?」

「うーん……」

「ご主人様、そろそろ時間が」

「あ中将、わかったじゃあ留守をよろしくね」

「わかりました、いってらっしゃいませ」



リムジンの去っていくのを見て、ふと隣に人がいた事を思い出す。

アオイ・ジュン存在感のない奴だな……。

兎にも角にも、効率的な掃除を教わりつつノルマとして決めている所までを終えた俺は邸内に戻る。

昼食の時間だった。

そうそう、ユリカ様の直後、三女のイツキ様も学校に行かれたのを追記しておく。



そして、昼食は外に出ていない皆が揃ってのものとなった。



「さあ、頂きましょう」

「あの……」

「なんですか?」

「いや、使用人はご主人様の後で食事をするのではないんですか?」

「ああ、そういうしきたりはありません、そもそも、昼食を一人でとるなんて寂しいじゃないですか」

「はあ……」



次女のルリ様は自宅のパソコンからIT業者を立ち上げてかなり大規模なものにしているそうだ。

だけど、逆に殆ど外に出無い生活になっているらしく、こうして使用人と話す事も多い。

自作した小型のロボット98を連れ歩き、何かとこまごましたことをさせている。

とはいえ、あんなに口が悪いロボットを作るのは何か意図があってのものだろうか……。



「さて、午後はどうするかな……」

「暇なんですか? ならイツキの迎えに行ってあげてください」

「あ、ルリ様。ですが、送り迎えは専属のイズミさんの仕事では?」

「専属についてもう知っているのですか、でも、色々な仕事をしておくほうがいいですよ。もしかしたら貴方が専属になるかもしれませんし」

「え?」

「貴方も最終的には誰かの専属になってもらうということです」

「わかりました」



俺は、ルリ様の言葉に頷き、イツキ様を迎えに行く事にした。

イツキ様の学校はかなりの規模の学校ではあったが、お嬢様学校というわけでもないらしい。

本人の希望でそうしているらしいが、どういうことなのだろう?

そういう風に考えていると、門の前で人が立っているのが分かる。

俺と同じ執事服、偉い暑苦しそうな風貌だが、恐らく向かえなのだろう。



「ん? 今日はイズミじゃねえのか?」

「ああ、というかお前誰だ?」

「なっ!? 俺の事を聞いてないのか!?」

「まあ、新人なもので」

「俺の名はダイゴウジ・ガイ! 執事の中の執事さ! 今はこんなだが、いずれ世界を救う主人に仕えている!

 その時は俺もあの人を守って世界のヒーローさ!! ッかー!! 燃えるぜ!!」

「……」



この男頭は大丈夫だろうか……。

とはいえ、いくら他人のフリで誤魔化そうにも校門から離れるわけにも行かず、暫くわけのわからない事を聞かされる羽目になった。



「ああ!? リョーコ様!!」

「ああ? お前また待ってたのか……」

「お迎えに上がりました!! さあ、今日もロボッ「うっとおしんだよ!このバカ山田が!」グハァーーーーーー!!!??」



そうして執事をアッパーカットで星にしつつ、緑の髪の勝気そうな少女がやってきた。

しかしアイツ、本名は山田なんだな……。



「ん、見ない顔だなお前は?」

「はい、この度イツキ様の家で執事見習いとして雇ってもらいました、テンカワ・アキトです」

「ふーん、イツキの家の執事ね、アイツならもうちょっとしたら来るんじゃねえの?」

「ありがとうございます」



対外的に執事は慇懃でなくてはならない事くらい俺だって知っているので、とりあえず付け焼刃の敬語で話す。

しかし、リョーコとかいう多分金持ちの少女は俺をうろんげに見ていた。



「お前、敬語なれてねえだろう? それよりフランクに話したほうがいいんじゃねぇか?」

「……そうですか?」

「ああ、なんか寒気がするつーか、イツキだってもっと親しみやすいほうがいいと思うぞ」

「はあ」

「あ、アキトさーん。待っててくれたんですね」

「はい」

「ああ、畏まらなくていいですよ。私そういうの苦手だし、もっと気楽に話してください」

「それではお言葉に甘えまして」

「って、俺の話は無視かい!」

「いえいえ、リョーコさんのいや、リョーコちゃんに言われた事が本当だなと思っただけだよ」

「うっ……」



少し赤い顔でリョーコちゃんが動きを止める、イツキちゃんもははは……となぜか言葉を濁した。

フランクにして欲しいというからそうしただけなのだが、何か問題があったのだろうか……。



「じゃあアキトさん行きましょうか?」

「ああ、イツキちゃんはこういう呼ばれ方で構わない?」

「はい、様付けで呼ばれるより親しい感じがしていいと思います」

「ははは、イツキちゃんは気さくなんだね」

「いえ、そんなわけじゃ……単に堅苦しいのが苦手なだけです」



楚々とした感じの少女なのだが、割と話しやすい。

だが聞いていると、彼女は彼女でコンプレックスがあるらしい。

姉二人がある種の天才であり、強烈な個性を持っているのに対し、自分は個性が無く影が薄いのが気になるのだそうだ。

俺にはそういった悩みはわからない。

そもそも、個性を問われる立場ではなかったし、親の暴力の前にはむしろ影が薄いことが必要だった。



「まあ、そういった悩みは時間が解決してくれる事もある」

「そうでしょうか?」

「俺なんか親から逃げてきた口だから、おこがましいけど。それでも個性だけはそこそこ……ね?」

「そうですね♪」



俺は少しシスコン気味だが、それもまあ親父のせいでもある。

元々親父の暴力は俺に向かう事が多く、ラピス姉は俺を庇って同様に殴られたり蹴られたりした事がある。

あまりほめられた理由からのものではないが、こういう形で人格形成した以上シスコン気味なのは否定できない。

ソレが個性というのも事実なのでそう告白していた。


そうこう話しているうちに屋敷に戻ってきた。

彼女はリムジンなどを使うのはあまり好きではないらしく、こうして歩いて帰ることが多いそうだ。

とはいえ、金持ちの家であるし、誘拐の可能性を考えると一人で返すわけにも行かない、それで執事が迎えに行く事になっていた。

まあ、そういうわけもあって一仕事終えた俺は、次の仕事へと向かう事にする。

帰ったらルリ様の部屋を掃除するように頼まれていたのだ。


俺はルリ様の部屋をノックし返事を待って入室する。

ルリ様の声は篭っていて、不思議に感じたがとりあえず入室する。



『タオルを取ってくれませんか?』

「はいってああ!?」



ルリ様は見事なまでのすっぽんぽんであった、俺は思わず目を押さえながらもう片方の手でバスタオルを差し出す。

彼女はそれを体にまき、そして頭のうえのタオルを解いて一通り水分を吸わせると俺に渡す。



「ドライヤーをかけてくれますか?」

「えっ、あっはい……」



俺はルリ様の銀髪を手で持ち上げながら丹念にドライヤーをかけていった。

確かに王族とかの身だしなみを整えるのは使用人の仕事だったように思う。

もっとも、現在日本のしかも見習い執事がやる事なのかは疑問だが……。



「次は着替えです。用意しなさい」

「はい、お待ちください」



俺はクローゼットにある部屋着の一つを取り出し、ルリ様のところに持っていく。

俺は部屋を出るべきじゃないかと思っていたのだが、許可をもらわない事には使用人は退出も許されない。



「着替え、お願いしますね」

「えー、あの……そういうのは女性の使用人でないと問題が……」

「何を言っているんですか、他の人は今別の仕事を頼んでいます。ですからこの場には貴方しか使用人はいません」

「あっ……はあ」

「照れるのは構いませんが、仕事が出来ないなら出て行ってもらうことになるかもしれませんよ?」

「もっ、申し訳ありませんでした!」



まさか女性の着替えを手伝う羽目になるとは思わなかった。

ルリ様の透き通るように白い肌が目に焼きつく、しかし、ルリ様は頬を染める事も無くひたすらされるがままに着替えを受け入れた。

どうにか着替えを終わる頃には俺はつかれきっていた。

人の着替えを手伝うという行為自体初めてだったせいで手間取ったし、やはり女性の着替えをするという事に後ろめたさを覚えていた。



「次からはもっと素早くなさい、いつもこうでは先が思いやられます」

「はい、以後気をつけます」



ルリ様の部屋から退出するともう日が傾き始めていた。

そろそろ夕食の準備に取り掛からないと。

実際に作るのはラピス姉とホウメイさんだが、俺もテーブルメイクや食器の出し入れもろもろのゴミだしなどそれなりに手伝う事は多い。

そうやって、準備が整う頃には完全に日が沈んでおり、仕事を終えたユリカ様が帰ってくる時間となった。


俺達使用人は並んでユリカ様のお帰りを待つ。

全員ではないが仕事が詰まっていない者は全員参加する。

まあ、恒例行事みたいなものらしい。



「「「「お帰りなさいませ、ご主人様」」」」

「ご苦労様、シャワー浴びたら夕食にするから。二人には少し待つように伝えてね」

「はっ」



シャワーの着替えなどを用意して持って行き、後で夕食の時間に間に合うように呼びに行く。

ユリカ様は長風呂をしやすく、のぼせて気絶していることすらあるらしい。

俺は初めてなので良く分からないが、今回はそういうことはなかったようだ。

そうして、時間になってユリカ様が食卓につく。



夕食もまた全員でとり、その後片付け、戸締りと順を追ってこなしていく。

俺達の風呂は基本的に女性陣が終わってからという事になっている。

まあ、この屋敷には風呂もくつかあり、個別に簡易のシャワー室まであるのだから、無理に入る事も無いのだが。

やはり湯船でつかるというのは日本人として当然というか、俺は大浴場の方に行く事にした。



「ん? 誰かいるのか……」

「おお、テンカワお前も入るのか」

「中将でしたか、一体何をされているので?」



中にいたのは中将らしい、なんというか、鏡に向かってポージングを取っている。

真っ裸のままであり、とっても近付きたくないのはありありと感じる。

というか、出来ればこの場を一目散に去りたかった、しかし、走り去ればそれはそれで不味そうだ。



「フム、ナイスな男はこうやって日々自らを高めねばならん。ハァッ! フンッ! これらの努力こそ、私が日々ダンディに生きるコツよ」

「そっ、そうなんですか……」

「どうだ、お前もやってみるか?」

「いえ、私はこれから風呂に入るので……」

「そうか、仕方ないな……」



俺はどうにかその場を脱した後、もう二度と大浴場にはくるまいと心に誓った。

そして、最後に見回りがてら、鍵のチェックをして部屋に戻る事にする。

そうやって、台所の近くまで来たときふと明かりが漏れていることに気付いた。

侵入者かと思い、足音を忍ばせて台所を覗く……。

そこにいたのは、パックから直接牛乳を飲んでいるユリカ様だった。



「あ、アキトか、はは、格好悪い所見られちゃったね。この事は他言無用だよ?」

「えっええ、何でしたら夜食作りましょうか?」

「ううん、ちょっと喉が渇いただけだから。私は辺で失礼するね。ととっ!?」

「ユリカ様、あぶない!」



パックをゴミ箱に放り込んだ後、方向転換をする際にスリッパがずれたらしい、

かしいだ体制を立て直そうとして失敗、そのまま俺の方に倒れこんできた。

俺はなんとか体制を維持して受け止めたが、かなりの衝撃だったのだろう、ユリカ様は頭を押さえていた。



「あはは……どうも、急ぐといけないわね」

「ユリカ様、お部屋までお送りいたします」

「えっ、うーん、それじゃお願いするね」



足は捻ってなかったようだが、まだ少し痛むようだったのでユリカ様を部屋まで送っていく。



「ねえ、ここに来て良かった?」

「はい、このままじゃ野垂れ死にしてもおかしくない所でしたし。拾ってもらえた事は感謝しています」

「うーん、そういう意味じゃないんだけど」

「といいますと?」

「まー、まだいいや。それより試用期間頑張ってね。誰の専任になるのか楽しみにしてるよ?」

「あ、はい」

「それじゃ、見回りに戻って。今日はありがとうね」

「おやすみなさいユリカ様、それでは失礼いします」



こうして俺の初仕事の一日は暮れて言った。


転がり込んだ先でいきなり執事なんて仕事になってしまったが、これから先どうなるのだろう?


不安はぬぐえないが、いろいろな事が待っていそうな予感だけはいつも胸の中にあったんだ……。













あとがき


ええ、まさに山なし、オチなし、意味なしなSSであります。

最近妄想力がおちてるのかしらん?

とはいえ、めでたい席ですし、全力で作らせて頂きました!

一応作品は”君が主で執事が俺で”の配役をナデシコメンバーに入れ替えたらというものです。

正直イベントとかやったらとても終わらせられそうに無かったので初日の風景だけでw

少しでも面白いと思っていただければ幸いです。







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