みなさんお久しぶりです…

それとも始めましてでしょうか…

ホシノ・ルリです…


私にとっての大切な人…

家族…

アキトさんを救うために、私達はボソンジャンプしました…


でも、今私の近くにアキトさんはいません…

私は…

私は如何するべきだったのでしょう…


ユリカさんの変わりに撃たれるべきだったのでしょうか…

その時はユリカさんと同じ位心配してもらえたのでしょうか…

こんな事を考える自分が嫌いになりそうで…

前の時は…

これ程心細く無かったのに…


でも…

きっとアキトさんは来てくれます…

いえ、

私が探し出してみせます…


もし諦めたら…

何もかも崩れてしまいそうだから…






機動戦艦ナデシコ
〜光と闇に祝福を〜





第五話 「それは、今だけしか言えない言葉」その1



私は、ボソンの光が薄れていく中で、ただ立ち尽くしていました…

ユリカさんが撃たれた瞬間にボソンジャンプが起こった事は分かります。

でも、何故一人だけになっているのかが分かりません。

恐らくあの場に居た人は、全員ボソンジャンプした筈…

アキトさん、ユリカさん、ラピス、イネスさん、私、そしてあの敵兵士…

六人のボソンジャンプが同時に起こった筈。

でも、この場には私しか居ない…



私だけ、置いて行かれてしまったのでしょうか…?

…まさか、アキトさん達はそんな事をする人では…

いえ、前例がありましたね…

でも、私が安全かどうかも分からない内から行ってしまうほど、薄情では無い筈です。

だとすると…

余り考えたくないのですが…

別々の場所にジャンプアウトしたとしか思えません。


だとしたら…私がみんなを探さなくては…

アキトさんはまともに動ける状況では無いでしょうし、

ユリカさんは現在どの様な状態なのか分かりません。

イネスさんはそれなりに頼りになる筈ですが、

ラピスは自分で考えて行動する事さえ苦手としている様でした…


私はまず周囲を見渡してみる事にしました。

ここは、何処でしょう…?

知っている様な…



……ああ、ここは…

オオイソシティーの、アキトさんのアパート。

やはり、ここは私の“最も行きたかった場所”と言う事なのでしょうか…

それとも、誰か別の人の意志?

兎に角、私はアパートの扉を開けようとしました…

でも、鍵がかかっています。

いつもアキトさんが鍵を置いておく郵便受けの中にも鍵はありません…

二人が誘拐された後も私が同じ場所に置き続けていたので、変わってない筈なのです。

その事から時間を飛ぶ事には成功したことが分かります…



この場でただボーっとしてても仕方ないですし、町へ出てみる事にしました。

どうも注目されているみたいです…

やはり、この髪と目のせいでしょうか…

それとも、宇宙軍の士官服が問題なのでしょうか…?

どちらにしても目立ってしまうのは仕方ないのでしょうが、

まだここでの通貨すら分かっていませんし、変装するという訳にもいきませんね…





情報を仕入れる為、売店のおばちゃんの目を盗んで新聞を立ち読みしてみます。

そこで分かった事は……

今は“2196年2月23日”…つまり私は、過去に飛んできたと言う事。

ですが、新聞には更に不思議な事が書かれています。

それは、火星からの脱出者が大量に宇宙軍に入隊していると言うもの…


確か、火星からの脱出者は千人に満たない数だった筈…

なのに、ここに書かれている入隊者の数は、一万三千人となっています。

更に、フクベ提督が退役直前に中将に任じられるという記事の所に、

<火星入植者40万人を救った英雄>とあります。

これは、歴史に介入があった証…そしてそれをしそうな人には心当たりがあります。

アキトさん…

この時代に来ているんですね……



新聞に集中していて気付きませんでしたが、

ふと視線を上げると、売店のおばちゃんと目が合いました。

私は財布から150円取り出しおばちゃんに渡しました。

この時代のお金なら少々持ち合わせがあります…

六年の内に変わったのは500円玉と2000円札だけだった筈ですので、

それを除けば三万円分ほど財布に残っています…

でも、これじゃ三日で浮浪者ですね…(汗) (※ 物価は三倍程度としています)


一通り記事を見て、次に行くべき所を考えてみました。

アキトさんが行きたい所…

先ず火星…既にやれる事はやったみたいです…

次に木星…可能性は低いでしょう。まだ戦争は続いている訳ですし…

ネルガルか、クリムゾンは…新聞を見る限り、どちらも特に変わった事が起きている訳では無いようです。

サイゾーさんの店は味覚が回復しないと行けません。それに、この時代のアキトさんがいるでしょうし…

後はミスマル邸…敷居高いでしょうね…

だとすると、何処かでナデシコに乗るために潜んでいるというのが妥当…ん?

気になる記事があるのを見つけました。

明日香インダストリー? 確かこの企業は、一月末の緊急株主総会で解体が決まった筈…

世界情勢はホシノ博士の研究所で暇つぶしに見ていたので憶えています。

なのにこうやって存在していると言う事は…ここには誰か<介入者>がいると言う事…


行き先が決まりましたね。本社…と行きたい所ですが、持ち合わせを考えると少し不安です。

明日香インダストリーナガサキ支社、そこに行けば何か分かるかもしれません…

そうして私はナガサキシティーまでの新幹線の切符を買う事にしたのです…













クリムゾン家の屋敷の一つ、シチリア内タオルミナ別邸…

ここに、アクア・クリムゾンが滞在している事は余り知られていない。

元々マフィアとの繋がりのために作られた物だが、シチリア島内のマフィアはもう二十年近く前に壊滅していた…

クリムゾンとしても今更特に必要性も無いため放置されていた物だが、アクアは好んでこの別邸に住み着いた…

彼女は天才といって良い知能を持っていたが、十歳の頃もう既に“普通の事”に飽きてしまっていた。

姉のシャロンが帝王学や社交界での礼儀作法等を学んでいる頃、

彼女は既にそれらを完璧にこなし、そして毎日悪戯を考えては実行していた…

自分の為だけの少女漫画を描かせるために漫画家の誘拐事件を起したり、

パティシエの免許を実力で取得し<等身大・爺ケーキ>を作って総帥の誕生日に送りつけたり、

金に飽かせて金の宮殿を造りながら、一日で爆破したり…

しかし、彼女は自身の才能や地位を疎ましく思っていた。

その最終的な思いは悲劇的な二人の死…

恋をして、死んで永遠に結ばれる事…

不幸や悲劇は彼女にとって最も甘美な事だった。

だから、常にクリムゾンにとって益にならない事を続けていると言って良い。

いつの間にか<クリムゾン家の唯一の汚点>と呼ばれ始めている事を彼女は知っていた…


「シェリー…いる?」

「はい、アクア様…」


バルコニーで紅茶の香りを楽しむアクアの背後に、シェリーがスーっと現れる。

だがアクアは驚きもしない。彼女にとって自らの危険は驚くに値しないのだ…

それに、彼女は総帥から警護のために送られてきた<クリムゾンの朱姫>と呼ばれる最強の使い手。

そして、ここ数年は彼女のボディガード兼メイドとして悪戯に協力している…

例えそれがクリムゾンの不利益になろうとも、彼女は平然とこなす。

アクアが訳を聞いてみると『それがメイドの務めですから』との事。

つまり、アクアにとって最も気を許せる存在であると言う事だ。


「私の社交界デビューの準備、進んでる?」


茶器をテーブルに置きながらシェリーに聞くアクア


「はい。きっとご満足頂ける物になる事でしょう」

「では、そこにアキトさんも連れてきてくださいな」

「ふふ、アクア様…もしやあれをなさるおつもりですか?」

「ええ。ですからエサも忘れないよう」

「承知致しました」


二人は朗らかな空の下、まるで今日の天気の話をするように悪戯を話し合っていた…













俺はその日…どうにか食べきったチョコレートのせいで胃腸がおかしくなり、トイレに駆け込む事を繰り返していた。

トイレの中で考えに沈む…

あの後、カグヤちゃんには<ナデシコ級戦艦>の建造を行ってくれる様に頼んでおいた。

エステバリスのIFS強化版である<エグザバイト>という機体の方は、もう試作段階まで来ている様だ…

俺はそのテストパイロットを引き受ける事にした。

それと平行して、世界の情報をラピスとアメジストに探ってもらっている。

ユリカやルリちゃん、イネスさんが現れたら直ぐに見つけられる様に…

オペレーターIFS端末は明日香インダストリーの物を使っている。カグヤちゃんがデータを取りたいと言ったのだ。

もちろん断ったが、それなら端末を預けるから好きに使ってくれ、と渡された…

多分データは取られている事だろうが、直接どうこうされないのなら問題ない。

何故なら明日香インダストリーが取得するデータは、全てラピスとアメジストの目を通した物となるからだ。


コーラルの事はかなりカグヤちゃんを激怒させたが、俺も手伝ってどうにか隣の部屋という事で落ち着いた…

その後紅玉も同じアパートに引っ越してきたり、毎日往診されたりという事もあった。

ネオス達の担当も紅玉が引き受け治療を行っているらしい。

現在はネオスの能力を抑制する事によって、ネオスからある程度元に戻ってきているそうだ…

しかし、紅玉は一体いつ寝てるんだ…(汗)


アイちゃんとのデートは、カグヤちゃんが睨みを効かせているので行っていない…

アイちゃんはまだ六歳なのだから、そんなに気にしなくても良いと思うのだが…


そして2月14日、十一個ほどチョコレートをもらった。

ホウショウちゃんにタカチホさんやムラサメ、サチコさんにツバキさんは義理と分かる板チョコ、

紅玉とコーラルはかなりの出来の手作りチョコを、

アイちゃんやラピス・アメジストは、形はいびつなものの普通の手作りチョコを作ってくれた。

しかし、カグヤちゃんのは一味違った…

というか、ユリカ並だった。しかも、量が尋常じゃなく…

俺は意を決して一口食べたが、気絶してしまった程だ。

兎に角、こっそりそれを捨てたのだが…何処で見ているのか

カグヤちゃんは更にパワーアップしたチョコレートを持ってきた。

最早チョコレート等とはお世辞にも言えない代物となっていたが、

カグヤちゃんの事だ、食べなければ 第三段階に進化したナニカ

持ってきかねないので、無理に全て食べる事となった…

その結果が現在の状況と言う訳だ。


「ふぅ…そういや、今日はセイヤさんに会いに行くんだっけ」


俺はトイレから出て、手を洗いながら呟く。

玄関では既に準備を済ませたラピスとアメジスト…

それに何故か、コーラルと紅玉が待っていた。


「何でお前らがここにいる…それも出かける準備までして…」

「ご主人様の行く所コーラルありですぅ」

「アキトさんはまだ治療が終わってないんですよ?

 ナノマシンの検査とかもありますし、それに今は下痢みたいですから〜」


コーラルは相変わらず不穏当な台詞を…紅玉、恥ずかしげも無く下痢言うな。


「一寸出かけるだけだ、半日もすれば戻ってくる」

「絶対お供します!」

「私は前回連れて行ってもらってないから〜。いいでしょー?」


如何してそんなに頑固なんだか…(汗)

そう考えているとふと、紅玉が耳元まで近付き小声で言った…


「あのネオスとかって言う強化人間達、一寸不味い事になってるんです。

 そのままでは半年と持たない所でした…抑制剤の効果で二年は持つでしょうが…」


「何!? 本当かそれは!」

「はい。ですから行き返りの道を利用して、その事を一寸話し合いませんか?」

「そうだな、分かった…」


紅玉のこれから言う事はかなり深刻な事だと予想できる。

だからこそ、余り一箇所で話し続けたくないのだろう…

紅玉を連れて行くことを決めると、コーラルは如何して自分だけ連れて行ってくれないのかとごねる…

俺は、必死に諭したが無駄だった。

結局俺は四人を連れて出かける事となった…












世界有数の資本力を持つ資本家クリムゾン家――その資本システムはかなり変わっている。

普通個人資産で起した会社であろうとも、株式の公開に踏み切れば

資本力を大きくする為、本人の株式が100%のままという事はない…

しかし、クリムゾン関連企業の殆どはクリムゾン家の個人所有となっている…特に総帥の資本で作られた会社は全てそうだ。

そんなクリムゾン家の持つ企業の内の一つ、アカデミックケミカルの本社ビル

120階建のビルの32階…

一般の社員が働くその場所に、鳥打帽を目深に被り口元をマフラーで隠した小男がやって来ていた…

<総務課> 部屋の前のプレートにはそう書かれている。

課長や係長らを素通りし、オメガは歩き続ける…

その行く先には、眼鏡をかけた気弱そうな、同じくらいの背の男が居た。


「雪谷・進一…お前に話がある」

「な、何でしょう…」


オメガの出す気迫に押され、進一と呼ばれた気弱げな男は一歩下がる…

オメガは頓着する事無く進一の目の前まで近付き、


「これを持っておけ。お前が<本当に必要な時>それは役に立ってくれる」

「なッ何ですかこれは!」


進一がオメガに渡された袋を開け中を見てみると、

そこには一枚の紙と黒い布着れ、そして不思議な文様の入ったプレートが入っていた…

進一は問い詰めようとオメガを振り向くが、もう既にオメガの姿は何処にも無く、

ただぽつねんとした進一と、驚きを顕わにする課の人々がいるのみだった…











新幹線に乗り、外の風景を見ながら考えます…

前は電車の中でアキトさんとすれ違いました…でも今回はあの時と同じ様には行かないみたいです。

そういえば、今まで電車に乗った事は数えるほどしか無いです…

ナデシコに乗るまでは移動する事自体無かったですし、

ナデシコを降りてからは徒歩による移動(チャルメラを吹きながらとか…)が多かったです。

(お金がありませんでしたから)買い物も殆ど歩いていける範囲でしたし…

良く考えてみると私、かなりおかしな生活を送っていた事になりますね。

まあ、ナデシコBに乗るようになってからは何度か電車にも乗りましたが、そもそも船から下りる機会が少なかったですし…


そんな訳で、私はボーっと電車に揺られながらナガサキシティまでやって来ました。

しかし、何と言って取り次いでもらいましょう…?

今はこの時代のアキトさんも居るわけですから、何か偽名を名乗っている筈です…

考えられるのは“テンカワ・アキト”の名前をもじったもの、ブラックサレナ――つまり黒百合関係、

ネルガルにいた頃のコードネーム<プリンスオブダークネス>

それから、ゲキガンガーのキャラ名といった所でしょうか…

でも、それらだけでも数十種類位あります。

それに、アキトさんと決まったわけではありません。ユリカさんかイネスさんかも…

受付の人も三人位までは何とか聞いてくれても、それ以上は不審者扱いで警備員を呼ばれかねません…

しかし、そんな事を考えているうちにも明日香インダストリーナガサキ支社が見えてきました。

出島の中の駅からですので、ほんの数分歩くだけでした。


近くで見ると変な形をしています。ビルの上に飛行場を作って何か良い事があるんでしょうか?

そんな事を考えながら、ビルの中へと入りました…


入り口近くに有るカウンターの方に向かい、受付の女性に話しかけます。


「あの…人を探しているんですが」

「はい、どなたでしょう?」


受付の女性が営業スマイルで聞いてきます。

さて…どの名前から言いましょうか?

余り考えている時間もありませんので、思いついた名前から言ってみる事にしました。


「テンカワ・アキトという人ですが…」

「少々お待ち下さい…」


そう言って受付の女性が検索を始めます。

ああ! 思い付きって…そのまんまじゃないですか!

アキトさんがそのままの名前でいる確立なんて1%以下なのに…!


「はい、現在は出ておりますが」

「出ている? つまり居るんですね!」

「ええ、まあ…」


これは、ラッキーだと思って良いんでしょうか?

いえ、まだ本人を確かめた訳ではありません。

同姓同名の別人という事もありえますし…


「あのっ! 住んでいる所は分かりますか?」

「ええっと…そう言う事には答えられない事になっております。

 用件がおありでしたら、伝えておきますが?」

「……」


手強いですね…でも確かに個人情報の漏洩とかはよく問題になりますし。

こんな時にIFS端末でもあれば直ぐに分かる筈なんですが…

まさか、使わせてくださいとも言えませんし…


「あの…アキトさんを知っている方と会わせてもらえないでしょうか?」

「はあ、余り期待しないで下さいね…お忙しい方が多いので…」


そう言いつつも、受付の女性はアキトさんの知り合いを探してくれる様です。

しかしお忙しい方が多いという事は、やはりアキトさんはこの会社の中枢近くまで入り込んでいるという事でしょうか?

アキトさんに会って聞こうと思う事がまた増えました…


「カグヤ社長代理がお会いになるそうです」

「社長代理ですか? 支社長ではなく?」

「はい。社長代理は本社とナガサキ支社を往復していらっしゃいますので」

「はあ、変わった人ですね…」

「兎に角、こちらにいらっしゃるとの事ですので、少々お待ち下さい」

「分かりました」


私は二階にある客間に通され、少しの間待つ事になりました。

出されたお茶を、手に持って考えます…

そう言えば私ネコ舌ですので直ぐには飲めません…ですが

今日はなにも食べていないので少しお腹が空いています。

…あ、お茶請けにおせんべいも出してくれていましたね…

お茶につけて食べるおせんべいはわりと好きなんですが…

これもやはり、アキトさんやユリカさんと屋台を引いていたころに憶えた事です。

私は今、こんな事ばかり考えるようになってしまいました…

いえ、貧乏性の事ではなく…

アキトさん…貴方が居ないと、私の中に大きな穴がぽっかりと開いてしまった様で…

胸が苦しくなります…


「はあ…」


考えに沈んでいた私は、自然と溜息が零れ出ていました…

ノックの音がして、私はビクリとなりました。まだ私はくつろげる様な状態ではありません…

ましてため息など…

ガチャッと扉の開く音がしたので、私は慌てて口元を隠し立ち上がります。

扉から入ってきたのは、私と同じか少し年上の少女が二人…


一人は目元で刈り揃えた黒髪をストレートに垂らし、腰の辺りまで伸ばしています…

ユリカさんは見方によって青みがかって見えるのに対し、この人は青紫の光沢を放っています。

服はいわゆるブランド物のスーツ、色は群青色です。

着こなしもかなり堂に入ったもので、多分同じ服を着たらユリカさんの負けですね…

表情も自信にあふれた物ですし、多分こちらが社長代理でしょう。


もう一人もスーツの着こなしでは負けていませんが、こちらの方は随分と静かな印象を受けます。

常に影に徹していると言うか…

髪の色は白銀、髪型はオールバックで、肌は病的なほどの白。

表情と相まって、私達と同じ様な遺伝子操作を受けていると言われても信じてしまいそうです…


兎に角、そんな二人が入ってきて挨拶をしてくれます。


「初めまして。私は明日香インダストリーの社長代理で、カグヤ・オニキリマルと申します。

 この子は、秘書のホウショウ…」

「よろしく御願いします」

「はい、ありがとう御座います。私はルリと言います」


そう言えば、ホシノ・ルリは今はホシノ夫妻と研究所に居る筈ですから

私がホシノ・ルリと名乗るには問題がありますよね…

そうですね…どうせなら…いえ、まあ、言われなければそれで良いのですし…


「それで、連合宇宙軍の少佐殿がアキトさんに何の用ですの?」

「あ…」


不味いですね…

着ていた服がこんな所で問題になるとは予想できませんでした。

まあ、私の年齢ならコスプレで通らなくも無いですが…

ただ、近年美男美女の艦長が増えているので、十六の少佐位はいても可笑しくないと思うでしょうね。

それに、連合宇宙軍にいたころの物腰が身についていますから…


……でも、カグヤさんの口振り…もしかして…

アキトさんはまた女性を無意識に落としてしまったんでしょうか…

メグミさんといい、リョウコさんといい…果てはエリナさんやサユリさんまで……

あの頃のアキトさんは女性にモーションをかける事無く、あれだけの女性を落としています。

つまり、そんなことが起こっても不思議ではない…と言うか自然です。


「私は個人的な用件でここに来ています。アキトさんの住所を教えて頂けませんか?」

「言葉では何とでも言えますわ…何を持って私達に信用しろと言いますの?」

「オペレーターIFSの使い手、必要有りませんか?」

「なっ…」


二人は話し合いを始めた様です…

余りに無謀な賭けと言わざるを得ませんが、ここで諦めたら全て終わりです。

少しの間二人が話し終わるのを待ちました…

そしてカグヤさんは私を振り返り、


「丁度アキトさんに相談しようと考えていた件が有りましたの。貴女が協力してくれるのなら教えて差し上げますわ」

「新しい戦艦の建造ですね?」

「な…?」

「大丈夫です、私はもう宇宙軍の人間ではありませんから」

「なら、何故仕官服を?」

「ただ、着替えている時間が無かっただけです」


二人は私の言葉を聞き、ぽかんとしています。嘘は言ってないのですが…

しかし、本当にアキトさんはナデシコ級をこの会社でも生産させるつもりでいるみたいですね。

これで、ここに居るアキトさんが<私の知っているアキトさん>だという確信が持てました。

私はつい、口元がほころんでしまいます。


「所で、一つ聞きたいのですけど…ルリさん、貴女も…」

「はい」

「うっ…(汗)」

「企業人が約束を破ってはいけませんよ」

「そ…そうですわね、仕方ありません。ですが今日から私達はライバルですわ」

「ええ、手加減はしませんよ」


私も本当は自覚が無い訳ではないんです。

アキトさんに直接言えるほどじゃ無いですけど…

それは、彼女も同じ様ですし…

最もユリカさんは告白する事無く迫り続けると言う 荒業を持っていましたが…


「それではホウショウ、彼女をアキトさんのアパートに案内して差し上げて」


そう言ってカグヤさんは部屋から出て行きました。

多分、かなり忙しいのでしょう。本社とナガサキ支社を往復しているのですから当然ですが…

ホウショウさんはカグヤさんが出て行くのを確認した後、私のほうを向き、


「それでは、参りましょうか」

「はい」


私はホウショウさんに付いてアキトさんのアパートに向かう事になったのです…










なかがき


さて、どうしたもんかな、今回も少し長くなりそうだ…

その言い訳のためのその1と言う事ですか。

いや、別にそう言う訳じゃ…

でもまあ、今回だけは許してあげます。

おお、ルリちゃん意外に優しい…

ぐっ…私の事はどう呼ぶんでしたっけ?

はっ…ルリ様(機嫌が悪化した…)

まあ、今回は私オンリーのお話の様ですし、潰すのだけはかんべんしてあげま す。

いや、別にそんなつもりじゃないよ、

それは一体どういう事です?

もちろん、ルリちゃんがメインだけど、アクアの社交界デビューも一緒にやってしまうつもりだし…

アクアですか?あの性格が地球の裏側まで行っている?

そうだけど…

料理はそこそこ出来るけど、アキトさんと一緒に死のうなんて世界を敵に回す ような事をかんがえてたあの?

うん…まあ…

ふう…やっぱりおしおきが必要なようですね…

ええー、何で…いや考えるまでも無いか…でもだな、話を面白くするにはただラブラブってわけには…

問答無用! 四流作家の貴方なんかにまともな話なんてだれも期待していません。喰らいなさい!

うお、前回からアルター出しっ放しか!

金色のォ セカンドブリッドォー!!

      ドッグァーン!!

なんで一々色をつけるん だー!?

そんなの決まってます、私の色だからです…

そりゃ…よーござんしたね…グフ…



押していただけると嬉しいです♪

<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.