「ちょっと待ってくれ!」

「なんでしょう?」

「俺の契約、パイロットじゃないのか!?」

「いえ、契約時に確かに<コック兼パイロット>と登録されておりますが…」

「…まさか!?」


そもそも、俺は今回きちんと契約を交わした覚えが無い。

だが…そんな事をしそうな人物と、それが出来る人物を知っている。

ルリとカグヤちゃんだ…


「それを、書いたのは…」

「はい。明日香インダストリー社長代理、オニキリマル・カグヤ嬢ですが…

 何か問題でもありましたかな?」

「…いや…」


完全にはめられてしまったと言うわけか…

複雑な思いはあるが、みんな俺を心配してくれているのだろう。




俺は、その想いに応える事が出来るのだろうか…?



だが…



ここまで来た以上、逃げ出す事は出来ない。



俺はどれくらいの人々を救う事が出来るのか…



そして、どれだけの人々を苦しめる事になるのだろうか…




複雑な思いを胸に、俺はナデシコへと歩き出した・・・









機動戦艦ナデシコ
〜光と闇に祝福を〜





第六話 初めらしく でいこう」後編


「ちょっとそれどういう事!? 言うに事欠いてアタシ達 はいらない!?」


ブリッジの壇上でゴートにムネタケ達がくってかかっている…彼らは実質、これは軍の為に用意された船だと思っていた。

しかし…ネルガルは独自に人員を確保し、自ら飛ばすと言ってきたのだ…

ムネタケはまさか、あの女の言っていた事が本当になるのかと内心焦っていた。

その交渉にもならない怒鳴り散らしを背後に聞きつつ、ブリッジ要員として着任した女性達はそれぞれの感想を漏らす…


「バカバッカ」

「あの人達ですよね、火星で直ぐに尻尾巻いて逃げ帰ったのって…

 軍じゃ英雄って呼ばれてるみたいだけど、

 あの人達がもう一日粘ってくれれば、後何十万人かは助けられた…って、よく言われてますよ」

「まあ、仕方ないんじゃない? 軍ってそういう所らしいし」

「…でも、火星から四十万人の人達を脱出させたのも事実です。彼らをそう責めるものでもありませんよ」

「そうかもしれませんけどぉ」


因みに…心底あきれたルリ、義憤を感じてるのか少々過激な言動のメグミ、

悟った様なことを言うミナト、温和になだめる月の巫女リトリアの順である…


「彼らは各分野のエキスパートです。そして艦長は地球連合大学在学中、

 <統合的戦略シミュレーション>の実習において無敗を誇った逸材です」

「その逸材はどこなの!?」

「いえそれが…」


それには、ゴートとしても言いよどむしかなかった。まだ来ていないとしか言えないのだから…

その時ゴートの背後にある扉が開き、二人の人間が滑り込んでくる…


「あ〜、ここだ ここだ! 皆さ〜ん私が艦長でーす。ぶい!」

「「「「「「「ぶい?」」」」」」」

「またバカ?」


(これでみんなのハートをキャッチ!)


ユリカは、これで遅刻しそうになったマイナス印象をプラスに変えられたと思っていた。

…まぁ、場が和んだのも事実ではある。

しらけたとも言うが…







プロスに先導されながら、俺とコーラルはナデシコの方へと向かう…


「では、どうしましょうか?」

「そうだな…やはり艦内を見て回りたいんだが」

「そうですな。パイロットは三日後ですが、コックはそろそろ必要ですし…

 それで、案内は必要ですかな?」

「いや、いい…艦内の配置図は大体頭に入っている」

「それは助かります。では」


ナデシコの入り口となるタラップを上がり、艦内に入った所でプロスと別れる。

俺は急いでエステの格納庫に向かった…

しかし、既にガイが骨折へと至る一連のドタバタはもう始まっていた。

…許せよガイ、お前が骨折する所を黙って見ている事を…


「プッ」

「あの〜、何か面白い事でもあったんですかぁ?」

「いや、笑っちゃ悪いんだが…まあ下を見ていてくれ」

「はあ?」


下ではエステバリスが奇妙な踊りの様に見える動きをしつつ絶叫していた…


「レッツゴー! ゲキガンガー!!

 飛べー!! スペースガンガー!!

 トドメは必殺ぅ ゲキガンブレード!!」


そこにセイヤさんがメガホンを持って止めに入る…


「ちょっとちょっと! アンタ! 何なんだよ?! パイロットは三日後に乗艦だろ!」


エステは器用に頭を掻きつつ、言い訳とも言えない事をいった。


「だっははははは! いや、ほんまもんのロボットに乗れるって聞かされたらも〜、

 一足先に来ちまいました。いやん、バカン、あドッカー ン!」

「何だ何だ? 何のまねだ!?」


問われて名乗るも…と言うわけでもあるまいが、ガイはサービス精神旺盛に必殺技の披露に入る。

アメジストがいたら手を叩いて喜びそうだ…


「諸君だけにお見せしよう、このガイ様の超スーパーウル トラグレ〜ト必殺技!

 人呼んでー!!」

「「あ〜!」」

「ガァ〜イ! スーパ〜! ナッパァー!!」

          ザッパーン・・・


オモイカネが気を利かせたのだろうか…エステの背後に荒波が浮かび上がる。


「って、あれ?」


       ガゴーン!!


「だっはっはっは、スゲーよな〜! ロボットだぜー!

 手があって足があって思った通りに動くなんて、何か凄 すぎってかよ!」


エステに乗ったまま倒れたくせに、異常に元気なガイはセイヤさんに自らの喜びを語り始める…


「最新のイメージフィードバックだからさ、これさえありゃ子供だって動かせるけどね」


しかし、セイヤさんはイヤミっぽく言い返した。

まあ、戦闘前にエステを傷つけた訳だから、機嫌が良い筈もないと思うが…


「俺はガイ! ダイゴウジ・ガイ。まっ、ガイって呼んでくれ」


セイヤさんは携帯ディスプレイを使って乗組員情報を引き出す…


「あれ? ヤマダ・ジロウってなってるけど?」

「そりゃ、仮の名前。ダイゴウジ・ガイは魂 の名前! 真実の名前なのさ。

 ん〜! 木星人め、来るなら来い! あれ?


ガイの体勢が傾く…やっぱり骨折したみたいだな。


「どしたの?」

「いやその…足がね…痛かったりするんだなこれが…がははは…」

「あ、おたく、折れてるよこれ」

「何だとー!!? あー痛たたたたたた!!

 そこの少ね〜ん!!」


ガイがタンカで運ばれながら俺に呼びかけてくる。

セイヤさんは俺が居る事に目をむいている様だったが…

まあいつもみたいに気を張ってないから、ただの少年にしか見えないしな。


「ああ」

「そのロボットのコックピットに、俺の大事な宝物がある んだ!

 スマ〜ン! 取ってきてくれー!!」


俺の答えも聞かず、ガイはタンカで運ばれて行った。

入れ替わりにラピスが入ってくる…


「何だか騒がしかったけど、どうしたの?」

「凄かったですぅ! お一人で百人分くらい騒いでおられました!」

「ははは…」


ガイの奴…やっぱり評価はそんなもんか…

でも、アイツはきっと助けてみせる。


「コーラル。俺はエグザの方に行ってるから、アイツのDX超合金ゲキガンガー取って来てやってくれ」

「凄いですぅ。何で宝物が何だか分かるんですか?」


既に“知っている”事が裏目に出てしまった…ちょっとうかつだったか。

今後はこういう言動にも気を付けないとな…


「いや…あいつの言動見てれば分かるって」

「はあ、そんなものでしょうか?」


コーラルはまだ疑問に思っているようだったが、俺は無視してエグザに向かう…

そこへ、先程は気付かなかったがナデシコの制服を着たラピスが追いかけて来た。


「はあ、はあ…歩くの早いよアキト」

「ん? どうかしたのか? 俺はもう直ぐ出撃なんだが…」

「うん、これ」


ラピスが差し出したのは、以前ハロン島に行った時に使った黒い戦闘服だ。

一瞬、これが何を指すのか分からなかった…


「……まさか、これを着て乗れと?」

「うん、だって正体を隠すんでしょ?」

「まあ、今はあまり知られたくないが…これを着てもごまかせるとは思えないんだが…」

「それは試してみないと分からないよ」

「いや…分かると思うが…どの道遺伝子データを見れば分かる事だし、プロスさんが説明するだろ…(汗)」

「それも大丈夫。パイロットの時は<ジョー>って呼ぶように頼んであるから」

「まさか…」


つまり、元々ラピスはこのためにプロスさんと行ったという事か…

まあ確かに、今俺が表に出るのはなるべく避けた方が良い。

それは間違い無いんだが…


「うん、だからはい!」

「うぅ…(汗)」


結局、押し切られる形で戦闘服を使う事を了承した…






           ドゴーン!!


艦内に衝撃が走る――

オモイカネの出してくるデータを見てルリは現状を読み、ブリッジクルーに告げた。


「敵襲、ナデシコ頭上のサセボ宇宙軍基地。数はバッタ・ジョロ、合せて約三百」


その言葉を聞き、戦闘等は初めての筈のクルーは直ぐに配置に着いた。

関係各所への通達、艦内報告をそれぞれメグミとゴートが行う…

通達が一段落ついたところで、フクベは会議を開くと言ってきた。

それを聞き、ブリッジクルーがブリッジ下部の戦闘艦橋へと集合する…

戦闘艦橋中央に位置する大型スクリーンに現在の戦況が映し出され、

それを見ながらゴートが口を開く…


「敵の攻撃は我々の頭上に集中している」

「敵の目的はナデシコか」

「そうと分かれば反撃よ!」

「どうやって?」

「ナデシコの対空砲火を真上に向けて、敵を下から焼き払うのよ!」

「上の軍人さんとか吹き飛ばすわけ?」

「どっ、どうせ全滅してるわ…」

「それって、非人道的って言いません?」

「ギィヒィーーー!!」


ムネタケの強引な作戦にブリッジクルーは難色を示す…

ムネタケは思い通りに行かない事に苛立ちの雄たけびを上げたが、

フクベはそれを無視して話を続ける…


「艦長は、何か意見があるかね?」

「海底ゲートを抜けていったん海中へ、その後浮上して敵を背後より殲滅します!」


毅然とした態度で方針を示すユリカ。初めての指揮とは思えない落ち着きぶりである…

その言葉を継ぐようにガイが雄たけびをあげる…


「そこで俺の出番さー!!

 俺様のロボットが地上に出て、囮となって敵をひきつけ る!

 その間にナデシコは発進!

 ッカ〜! 燃えるシュチエーションだ〜!!」

「おたく、骨折中だろ?」

「しまったー!」


パイッロトがまだ来ていない、と言うような状態で攻められるのは問題だが、

居る以上は彼の場合、その性格からして既に飛び出しているはずだろう…

ブリッジにいる時点で彼は駄目駄目だった…


「囮なら出てるわ。今、エレベーターにロボットが…」


スクリーンにエレベーターシャフト内を上昇していくロボットが映し出されている…


「ちょっと、なにこれ? 私は聞いてないわよ!

 この船に乗せてるロボットって、エステバリスだけじゃなかったの!?」

「あのロボットに通信を繋ぎたまえ」

「あっ、はい!」


フクベがメグミに通信回線を繋ぐよう言う。

それを受けてメグミは通信のコードを探ろうとしたが、既に登録されている事に気付く…


「エレベータ上のロボット…エグザバイトへ通信開きます!」


その言葉が終わると同時に、通信モニターに漆黒のバイザーをした黒尽くめの男が大写しになった。

ブリッジ内がどよめく……変態か? と思う者と、何か曰くありげに 見つめる者、半々だ…


「…バカ?」


ルリの氷の突込みにも男は眉一つ動かさない…

最初に口を開いたのはフクベだった。


「な…お前は! ジョー!」


その言葉を聴き、黒尽くめの男はニヤリと口元を歪める…


『どうやら、覚えていたようだな…』

「忘れるものか! お前がいなければ、あの時ワシは卑怯者として一生消えない “烙印”を押される所だった!」

『フン…俺にとって貴様などどうでもいい。軍の自己満足に火星の住民を巻き込んで欲しくなかっただけだ』

「だが、ワシは…いや、今言うべき事ではなかったな。それよりお前、若返っていないか?」

『まあ、俺も色々あったからな…』


黒尽くめの男は少し懐かしむような顔をする…

フクベは“色々あったら若返るのか”と思わないでもなかったが、あえて口を閉ざした。

そこに、ユリカがおずおずと割り込んできた…


「あの、ぶしつけな質問で申し訳ありませんが、貴方どこかでお会いしました? 何かそんな気がするんですけど」

「ユリカ!?」


ジュンがユリカの唐突な行動に驚いている…

しかし、黒尽くめの男は表情を一瞬緩めかけたものの直ぐまた元に戻り、冷たく言い放つ…


『…さあな。俺は知らん』

「そうですか…」


逆にユリカは落胆した様子で、何かが心に引っかかっている感じだった。

その状況を察したのか、プロスが黒尽くめの男の解説を始める…


「皆さんもご存知かと思いますが、彼が火星から特殊な輸送船一隻で

 十万人の人間を助け出した“あの”海燕・ジョーさんです!」

「「「「「えー!?」」」」」


確かに、海燕・ジョーは<漆黒のマントとバイザー>をしていた、と言うのは有名な話だ。

今、巷では<海燕ファッション>と言うのが流行る位に…

だから、彼もそのファッションをしているだけだと、誰もが思っていた。

しかしプロスは“本物”であると言うのだ…皆一様に驚いている。

もちろんプロスは本当は彼がジョーではないと思っているが、

フクベとの会話に怪しさを感じてもいた…


「ではジョーさん、よろしくお願いします」

『ああ』


ユリカは釈然としないものを感じながらも、ジョーに作戦を任せた。

そうしている間にもエレベーターは昇り続ける…


「エレベーター停止、地上に出ます」

「がんばってください!」

「俺より先に目立つなよな!」


エレベーターが地上に到達し、上部のハッチが開く…

ジョーはエレベーターが停止するのを待たずに飛び上がり、周辺のジョロをラピッドライフルで掃討する。

その直後、ゴートがジョーに作戦目的を告げた…


「作戦は十分間、兎に角敵を引き付けろ。健闘を祈る」


周辺のジョロを駆逐しつつ、海岸方面に誘導する。

作戦はうまくいくかに思えた…

しかし突然…追いかけて来たジョロのうち数機が、ライフルの射程に飛び込んで自爆し た!

エグザバイトが一瞬動きを止め…そこにエグザを追っていた全てのジョロが飛び込み、自爆する…

エグザは爆風に巻き込まれたかに見えたが、次の瞬間には爆風の後方に退避していた…

そのシーンをブリッジのモニターを通して見ていたムネタケは、気勢をあげて命令する。


「ぜんぜん駄目じゃない! 所詮民間のパイロットじゃ駄目なのよ! 今すぐ対空砲火よ!」

「彼は良くやってます。それに“飛びついて自爆する”等という攻撃方法は今まで無かったパターンです」


そのモニターを必死の表情で見つめるユリカ…

(あの姿・あの格好は知らないけど、私は彼を知っている…)

そう思いつつも、同時に艦内把握を行っていた…


「注水八割方終了。ゲート開く」

「エンジン、いいわよ」


ルリがドック内情報を読み上げ、それに合せてミナトがOKを出す。

ユリカは待ちかねたように言葉を発した…


「ナデシコ発進です!」

「ナデシコ発進」


ユリカの号令に合せ、ルリが艦の制御をオモイカネと繋ぐ。

ナデシコは海底ゲートをゆったりと進み始めた…







十数機のジョロが一斉に自爆をするとは…

俺は一瞬早くバックステップで脱出し、一機を爆破。

誘爆を誘いそのまま離脱した為、それ程被害は受けなかったが…

額をしたたかぶつけたせいで、バイザーにひびが入っていた。


「くそ! ホクシンめ! 無人機にエグザ相手の時は自爆しろと命令を送ったな!」


もちろん、正確にはホクシンの報告を受け取った誰かがだろうが…

(アキト、大丈夫? 何なら私が“介入”してジョロやバッタの動きを止めようか?)

どうやらラピスにも心配をかけてしまったようだ…

(いや、それよりも艦内スキャンを優先してくれ。今はそっちの方が重要だ)

(…うん、わかった)

この場を切り抜ける事はさほど難しい事ではない。しかし今、あまり奥の手を見せるのは得策ではないだろう…


――ホクシンやオメガに情報が漏れるのは願い下げだ。


考えつつも、ラピッドライフルで掃討しつつ海の近くまで来ていたが…

自爆して、その粉塵の中から次の機体が来る…と言う状況はかなり戦いにくい。

今まで落としただけでも五十近い筈だが、一向に纏い付いてくる数が減らない…


それからわずか十秒ほどの間に、ライフルの弾丸が尽きてしまった。

仕方なく俺はイミテッドナイフを二本とも抜き放ち、

接近してくるジョロやバッタを接触前に切り裂き、あるいは叩き壊した…

それでも爆発は防ぎきれず、機体に傷を付ける。


そして徐々に、バイザーのひびが大きくなっていく…


数分後、海中から重力波ウエーブの反応が来ているのを感知し海に向かって飛びのく…

すると、海中から巨大な物体が浮上してきた…俺はそのブリッジ部分の上にそっと着地する。


『お待たせしました、ジョーさん』


ユリカが俺に向かって、普通に話しかけてくる…

その事自体が俺に取って寂しい事だが、

木連やクリムゾンの目に留まらせない為にも、今は…


「随分早く来たな」

『はい、急いできました』

「では頼む」

『はい!』


ナデシコが浮上しきると、前面の砲塔があらわになった…

俺に向かって敵機が集まってくる…


『敵残存兵器、有効射程内に殆ど入っている!』

『目標・敵まとめてぜ〜んぶ! ってー!!』

          ドギューーー!!
                      ドドドドドドドドドドン・・・・!!


バッタやジョロらがきれいに片付いていく…

跡に残されたのは、焼け跡くすぶるサセボ基地だけだった。

考えている内にも、艦内ではあわただしく作業が続けられている様だ…


『戦況を報告せよ!』

『バッタ・ジョロとも残存ゼロ! 地上軍の被害は甚大だが、戦死者数は3!』

『そんな、偶然よ偶然だわ!』

『認めざるを得まい。よくやった艦長!』

『まさに逸材!』


ユリカが、俺に何か言いたそうな目で見ている…


「どうした?」

『あの、そのバイザーの下見せてくれませんか?』

「駄目だ。俺は…」

         ピキ……


俺が話そうとした時、バイザーに致命的なひびが入った…


『あっ!』


俺は直ぐに手で押さえたが、もう遅かったらしい…

彼女は何か思い出そうとしている…


『……アキト…だよね…』

「さあ…な…」

『何で!? 何で隠すの!?』


それは、俺が君の知るアキトではなくなってしまったから。

融合した俺達の、二人の記憶の重なった部分は殆ど同じ…

そして、重ならなかった部分は…

――そう、俺は逆行者なのだ。


「俺は…お前に…」

『分かった! 久しぶりに会うから照れてるんだね!

 相変わらず照れ屋さんなんだから!!』

「ぶっ…いやあのな…」

『私の事を心配してきてくれたんだよね!ユリカ感 激!!』

『ちょ、ちょっとユリカ、あいつ誰なの!?』

『うん、私の王子様! ユリカがピンチの時いつも駆けつ けてくれるのよ!』


唐突に始まった俺達のかみ合わない会話に、周囲の空気がしらけていくのが分かる。

俺は、こんな事をする為に来たんじゃないんだが…

それでも、ユリカとの会話にどこか安心感を覚える俺がいる。

…そして、そんなことは許されないと苛む俺も…

ブリッジ下部では、ルリちゃんの周りにミナトさんとメグミちゃん、

そして巫女服を着た灰色の髪の少女が集まって、現状を批評しているようだ…


『ちょっと、先行き不安です』

『えー? 結構面白そうじゃん』

『はい。きっと皆さん楽しくやれます』


そんな会話がなされている前で、俺はひたすら会話を続けようとしていたのだが・・・


「ちょっと待て! だから」

『うん、ずっと待ってた! きっと来てくれるって!』


ううう、やっぱり会話が成立しない…


『お前あの時の少年だな?! ゲキガンガーどこにやった!』


ガイが俺に聞いてくる…コーラルに頼んでおいたはずなんだがな(汗)


「コーラルは…」

「ふぇぇん! ここどこでしょうか? 誰か教えてくださぁい!!」


別にニュ○タイプという訳でもないが、なんとなく解ってしまった。

…まぁ、ここで考え込んでても仕方が無い。兎に角一度ユリカを静めないと…


「兎に角、俺はお前に…」

『好きなんでしょ!』

「そうじゃなくて!」

『大好き!!』

「いや、あのな…」

『バカばっか』


ああ、やっぱり言われた…


『大大だ〜い好き!!』

「人の話を聞けー!!」


結局最後は、以前と同じ言葉を叫んでいたのだった…(泣)





次回予告

号砲一発ナデシコ発進!

とうとう動き出したネルガルのプロジェクトを前に、宇宙軍が策動する!

先手を打つアキトだが、果たして効果はあるのか!?

そして、ゲキガンガーは話にでてこれるのか!?

緊張感があるんだかないんだが分からない話が続く事になりそうな不安をはらみつつ

次回 機動戦艦ナデシコ〜光と闇に祝福を〜

”「緑の地球」に思い出を”をみんなで見よう!






あとがき


うん、今回は割りとすっきり終わった。

あれのどこがすっきりですか!? アキト さんバイザーした意味ないじゃないですか!!

うう…あれは何となくやりたかっただけのコネタなんだよう…

アキトさんにあんまりバカな事させないで 下さい!!

ふっふっふ、アキトにはこれからもバカな事をしてもらう予定だ!

何言ってるんですか! ただでさえこの話変なところが多いんですから! これ以上へんなところを増やしてどうするんです!!

いや、まあそうなんでけど…

大体、話自体はまじめな方向に進む予定な んでしょう!

最後の方はさすがにね…

だったら、あんまりアキトさんに変な事を やらせていると、真面目な所で決め損ねますよ!

うぅ確かに…でもうかつにやめれば話が…私はどうすればいいんだー!!?

まあ、一生悩んでいる事ですね、私は次の モノローグを考えておきます。

ギヨエー!?グフイカ!!

人間やめましたね…



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