「そうですか…どうしても、というなら別の条件でも良いですよ?」

「? 別の、条件??」

「はい………例の貸しポイント一気に五つで す」

「なッ!? 何故ソレヲ!!(汗)




「聞きましたよ? ………ラピスに」


何故かルリは、ちょっと拗ねたような顔をしている。

ラピスとだけそんな約束をしたのが、仲間はずれのようで気に入 らないのだろうか?

そしてアキトは………


「ゴメンナサイソレダケハカンベンシテクダサーーーーイッ(泣)」

ダダダダッッ!!!!

マジ泣きながら今出せる限りの速度で医務室に戻っていった…


「冗談だったんですが…ちょっと……残念でしたかね?」


首を傾げ、そう誰にともなく呟いてその場を去るのだった。








一方、その頃コーラルは………


「びぇぇぇええええ〜…ご・ご主人様のお出迎えが出来ないなんて………

 私…私……メイド失格ですううぅぅぅぅぅぅ!!」


………いつかの様に、艦内を彷徨(さまよ)っていた。












機動戦艦ナデシコ
〜光と闇に祝福を〜





第十一話 「さらりと出来る『運命の選択』」その5


―― ナデシコ医務室 ――

現在は重症患者がいない為、三交代制で常勤している看護士が一人いるだけ…

…な筈のこの部屋で、煩くかけられているホロディスクがあった。


『くそ〜う! 地球人め! 憶えておれぇ!』


ホログラムではビックアカラスペシャルが撃破され、脱出ポッドで逃げ出すアカラ王子のシーンが映っている。


「うぅ、やっぱ良いよな〜ゲキガンガー」

「あぁ…まぁ」


俺は戸惑っていた…昔と変わらずゲキガンガーの好きなガイを見て心のどこかで安心しつつ、少し引いてしまう。

俺も一度は燃えたのだが、流石にゲキガンガーを正面きって見直そうとか、熱血しようとかと言うのは願い下げだ。

しかし、ガイがラピスの事で一緒に医務室で寝ている以上、付き合わないわけには行かない。

そんな訳で仕方なく鑑賞している……


「どうしたんだ? まさかゲキガンガーの良さが分からないとか言うつもりじゃないだろな!?」

「いや、分かるよ…まぁ(汗)」

「煮え切らない奴だな。お前、もしかして…………ホモか!?」

「違う!!」


俺はガイの論理の飛躍に思わず殴りかかりそうになる。

しかし、直前でどうにか怒りを鎮めガイに向き直る。


「ガイ、昼のラピスの件すまなかったな」

「ん、あの事か…まあ過ぎた事だ、俺は気にしてないぜ」

「腹は大丈夫か?」

「うっ、まあな…流石にもう出すもんもねぇ…」

「ははは…そうだろうな…(汗)」

「笑い事じゃねぇ! あれのお陰で死ぬ思いしたんだ俺は!」


メグミちゃん 特性 特製ドリンク…あっさりと骨折を治すような超回復力を持つこいつにも、効果は激大だったようだ(汗)


「すまん」

「まあ良い、さあ次行くぞ! スゥイッチウォン!」

「あぁ」


ガイは会話の事を忘れたかのごとく、またホロウィンドウに目を移して続きを見始める…

俺もまたゲキガンガーに視線を戻そうとしたが、医務室の入り口から人影が飛び込んできた。


「ご様 〜!! 大丈です ぁ!? うぅ…えっぐ」 


最近艦内で迷う事は殆ど無くなっていたのだが、今回は特別らしい…気が動転している。

まともな行動が出来る精神状態ではなかった…


「コーラル…一体どうしたんだ?」

「ご主人様をお迎えにあがろうとして迷いました〜!! メイド失格ですぅ!

 しかも、途中でご主人様が担ぎ込まれたって聞いて私…私……うぁ〜ん!!」

「分かった、分かった、よしよし」

「うぅ…子供扱いしないでくださぃ」


ミニスカートのメイド服で胸は不自然なまでに大きいが、見た目は16…というかさらに幼く見える。

正直、ここまで来るとコーラルが子犬か何かに見えてくる…しかし、

これでアイドクレーズ家の現当主なのだ。一体俺はどうすれば良いのか…

それに、いつの間にか俺もご主人様と言われても文句を返せなくなっていた。

ナデシコクルーに知られてからと言うもの、否定すれば俺が周りからブーイングを喰らうのだ。




……むしろ俺が泣きたい(泣)




ふと、ゲキガンガーの音がないことに気付いて見回すと、いつの間にかガイが医務室を出ようとしている。

俺が呼び止めようとした時、ガイは顔だけ振り向いて白い歯をみせ、親指をぐっ!と立てた…


おい…ガイ! なに気を使ってんだ! というか、何でそんな事に気がつく!?

そのやたら爽やかなサムズアップをやめろ〜!! いや、そんな事よりも…こういう場面で俺を置き去りにしないでくれー!!







……俺の魂の迸り(心 の叫び )も虚しく、ガイは扉を閉めて出て行ってしまった。

はぁ……まあ、ここにいるのがシェリーじゃないだけマシか。

幾ら神出鬼没でも流石にナデシコまでは来ないだろうし…

「クシュン」

「あら、珍しい♪ シェリーも風邪ひくのね♪」

「私だって人間ですから…ですが、これは誰かに噂されている様な気がします」

「そうなの。な〜んだ、やっぱり風邪ひいた訳じゃないんだ」

「いや、その…ひかないと言う訳ではなくてですねー!」

悪寒が走った気もしたが、気にしないでおこう。

兎も角、泣いているコーラルを宥め、看護士に頼みココアを入れてもらう…

看護師は年配の女性で人の良さそうな顔をしている。

無茶な頼みかとも思ったが快く引き受けてくれた…ゲキガンガーの事も目をつぶってくれたし、大物だなこの看護師は。

コーラルは息を吹いて冷ましつつココアを飲み、少しづつ心を落ち着けていく。

俺はなんとなく子犬っぽいコーラルの頭を撫ぜながら、オメガのことを考えていた。


(オメガ……俺の被害者…俺の<業>か……多分、俺はヤツの思いを受け止めて、乗り越えるべきなんだろう。

 だが…怒りに捕らわれていてはそんな事は到底…それに、万一<昔の俺>に戻ってしまうような事があれば……

 オメガの狙いが俺である以上、ヤツとの戦いは避けられない…どうすればいい? どうするべきなんだ、俺は……

 ………俺に残された道は一つ、か……分かってはいる。分かってはいるがな………)


最近思い悩むのが癖になっているな……かなり長い間頭を撫でていたらしい………

コーラルはココアを飲み終わる頃になって、どうにか話が出来そうなくらい落ち着いた様だ。

……何故か少し顔が赤いが。

「ハッ! なにか、嫌な予感が…」

「アキト…またなの?」

@地球・某戦艦ブリッジ

今度はリンク越しに何か聞こえたような気がするが……

きっと気のせいだろう。うむ、そうに違いない。そう決めた。

俺は取り敢えず、混沌とし始めた思考をうち切ってコーラルに話しかけた。


「少しは落ち着いたか?」

「はいぃ、ご迷惑をおかけしましたぁ」

「では、仕事に戻れ」

「えぅ…ご主人様は私の事いらないんですかぁ!?」


ああ、コーラルがまた泣きそうな顔を…

看護士の視線も痛い(汗)

はぁ…何でこうなるんだか。


「…そんな事は無いぞ」

「じゃあコーラルはぁ、ご主人様のそばに居て良いんですか?」

「むむっ……分かった…」

「では、頑張りますぅ! 先ずは汗を拭かなくてはいけません! ご主人様服を脱いでくださ いぃ!」


急に元気になった…流石コーラル、現金な物だ。

俺は促されるままシャツを脱ごうとして…


「ちょっと待て、何で栄養失調の俺が体を拭いてもらう必要がある?」

「うぅ、違ってましたかぁ?」

「別に必要ない。点滴も打ってあるから、あと必要なのは安静にしている事位だ」

「そうなんですかぁ…だったら私、歌を歌いますぅ!」

「…分かった、好きにしてくれ…」


正直少し疲れたので俺は投げやり気味にコーラルの行動を黙認する事にした。

まあ、歌くらいは良いだろう…どうせ戦闘が始まるまではここを離れる事も出来ないからな。

そう思い俺は目を閉じる…



中 一 あ〜な姿 〜

  ただ こ  抜出〜した〜くて

いか  きっといつか れ合える〜

い ここにる  全て

きっと 心は あなたに 届く 心に強くえが

扉 いていくわ…

「ちょっと待てい!」

「なんですかぁ? 今いい所なんですぅ」

「誰が自作のラブソング歌えと言った!」

「ふぇ? 良く自作だと分かりましたですぅ、結構自信あったんですけどぉ」

「自信…(汗)」


言っちゃなんだが…と、とてつもない音痴だ………いや、本人には言わないが…

更にこの歌詞…聞いてるだけでこっ恥ずかしい…こんなのを歌われても困るぞ(汗)

この際大人しくしていてもらおうかとも思ったのだが、流石にさっきの話を蒸し返すのも面倒だな。

結局付き合うしかない訳か…そう思い、暫く話し相手になってもらうという事で落ち着いたのだが。

その後もコーラルの勘違いに引き回され、結局安眠は出来なかったのだった…(泣)




テンカワアキト……やはりナデシコの中ではシリアスに決まらないらしい。
















―― ナデシコブリッジ ――


現在ここではアキト達が持ち帰ってきた情報を元に、ユートピアコロニーにいる生き残りをどうするのかが話し合われている…

プロスは一通り話を聞くと渋い顔になって自前の計算機を叩き、何やらぶつぶつつぶやいてからおもむろにラピスに話しかけた。


「ラピスさん、今のお話は本当ですか?」

「うん。ユートピアコロニーには1000人以上の生き残りがいる…

 でも、罠も張られていると思う。周辺のチューリップが活性化していたし……」

「困りましたなぁ…我が社としましては自ら罠に飛び込む等という、採算の取れない作戦には賛同出来そうにありません」

「ちょっと待てよ! 見捨てるつもりか!? ナデシコはここに救出をする為に来たんだろ!」

「とは申しましてもねぇ…我々が死んでしまっては、結局彼らも助けられませんし」


淡々とした口調で冷たいことを言うプロスにリョーコが食って掛かるが、プロスはメガネを直しながら冷ややかに現実を突き付ける。


「そりゃ、そうだろうけど、でもよ!」

「分かっております。確かにここで見捨てたとあっては、我が社も非人道的と後ろ指を差されるでしょう。

 …しかし現状では手の打ちようがありませんので、ハイ」

「艦長、何か手は無いのかね?」

「う〜ん……あくまで仮定ですけど、それでも良ければ」

「かまわん。今は一つでも打てる手を見つけておきたい」

「じゃあ、聞いてください。私達は……ユートピアコロニーに向かうしか無いと 思います。

 その理由は多分すぐに…ルリちゃん、一瞬だけレーダーをアクティブに切り替えてくれた?」

「…はい」

「じゃあ皆さん、スクリーンに映像が出ます。よく見てください」


ユリカはまだ少し心ここにあらずなルリに指示を与えて、ブリッジ正面のメインモニターに表示させる。

すると、レーダーの表示で半径百キロ圏が映し出された。

しかし、それは………






「なっ!」

「これは…」

「半包囲で後ろから迫っている…」


ゴート、フクベ、ジュンが同時に驚く。

チューリップクラスの質量が10、鶴翼の陣を組み後方から迫っている…

と、ほぼ同時にエスカロニアからの通信が入る。


『上方よりチューリップ10、熱圏到達…』

「艦長! 一体どうなっているんだ!?」

「それは多分、木星トカゲの目的が私達の…ううん<ナデシコ>の撃沈にあるからだと思う」


その言葉を聴き周囲が沈黙する。

皆がじれ始めた頃、フクベが先を促す言葉を言う。


「続けたまえ。何故そう思うのかね?」

「それは、今までの木星トカゲの動きを見ていれば分かります」

「どういう事? 今までの戦いが何かおかしかったの?」

「サセボドックが襲撃された理由、何故だと思います?」

「え? 偶々なんじゃないの? 連合軍の基地が上にあったし」

「そうかも知れません、でもサツキミドリ2号での戦いはどうでしょう?

 一度目、二度目共に、私達を奇襲しようと考えていた様に見えます。

 一度目なんかエスカロニアが来なかったら補給出来なかったし、サツキミドリは落ちていたでしょう」

「ちょっと、待て! 俺達が負けてたって言うのか!?」

「なら聞きますが、あの時エスカロニアが来ていなかったら…戦闘、間に合いましたか?」

「……くそ!」

「リョーコ、熱くならないならない。艦長が言いたいのはその事じゃないんだからさ」

「そうそう、アツイのはここにはいないアイツとすれば良い」

「ぶっ!」

「ほへ? なんです?」

「いや、何でも無い! 何でも無いんだ艦長! 早く続きを聞かせてくれ!」

「いやー今日も良い星空! 天のか…むご! うぐ!」


リョーコは不穏な台詞を言おうとしたヒカルの口をふさぎ、必死で証拠隠滅を計ろうとする…

周囲から激しいいぶかしみの視線を貰いつつも、リョーコは話を促す事で何とかこの話題から離れようとする。


「兎に角! 木星トカゲをどうするか! って言うのが、議題だろ!」

「ええ、まあ…でもそのままじゃ、アマノさん死んじゃいますよ?」

「えっ!? ああ! すまん!」

「ゴボゴボゴボ…」


リョーコはヒカルを放したが、ヒカルは既に泡を吹いて気絶していた。

リョーコに奇異の視線が集まる中、ユリカが話の続きを話し始める…


「ここでプロスさんにお聞きしたい事は、ナデシコ出航とサセボでの補給を知っている者がいたのかどうかです」

「そうですな〜。ナデシコの出航日を知っている者は<軍関係者>や明日香やクリムゾンに代表される<大企業>

 それに、それらの企業と結びつきの強い<政治家>等多数存在します。

 ただ、サツキミドリでの補給は極秘で進めていましたから…我が社の人間か、

 我が社が及びも付かないハッキング能力を持つ方位でしょうな、知りえたのは…」

「いえ、そんな事はありません。サツキミドリに関しては、ネルガルの所有する資源採掘コロニーの内

 ナデシコの経路上にあるものを調べれば、叩けるんじゃないか…って思うんです」

「もしかして…」

「うん、多分ジュン君の考えている通りだよ」


ユリカはジュンが気付いた事をうれしそうに見ている。

ジュンは少しほほを染めたが、心の中は乱れていた……

ユリカの言いたい事は何となく分かったが、気持ちが付いていかない。

つまり、地球にも木星トカゲの支援者がいる…という事なのだ。

ジュンは今でも連合宇宙軍にそれなりの正義があると信じているが、ユリカの推論を聞くとそれも疑わしくなってくる。

なぜなら、利害関係からトカゲに協力しそうなのは、クリムゾンと宇宙軍なのだ…


「でも…宇宙軍がナデシコの性能を知ったのは出航後だし、一度はミスマル提督まで出張って来てるんだ。

 宇宙軍が協力している可能性は無いよ!」

「う〜ん、今その事はおいて置くね。だって直接は関係ないし…

 重要なのは、木星トカゲがそういう行動を取る事。

 つまり、<心理戦を仕掛けられる相手>という事だよ」

「心理戦ですか? しかし既に半包囲されていますし、上空も固められています。今更心理戦と言いましても…」

「そうだよ。もしかしたらその通りなのかも知れないけど…心理戦が通用するのはあくまで戦術レベルの話だろ、

 戦闘そのものは無人兵器なんだから心理戦なんて効かないはずだよ!」

「うん、そうだよね。だから、戦いの始まる前に心理戦を仕掛けないと…脱出出来なくなってからじゃ遅いよね」


ユリカはそう言うと、声を潜めクルー達に作戦を話し始める…


………………

………


危険だが…これをやらなければ、生き残るのもおぼつかないだろう。

ユリカはいつに無く真剣に作戦を語った。

ユリカは作戦の全容を語り終えると一息つく。


「ふう、これが作戦の全容です、質問はありますか?」

「それじゃあ、聞くけど、それの取り付けは一体誰がやるの?」

「みんなでやります♪ 待機状態のクルーを総動員して、ウリバタケさん達のお手伝いをしてもらいます」

「はぁ。でもぉ、ブリッジクルーは免除よね♪」

「いえ! オペレーター以外は強制参加です!」

「「「ええ〜!?」」」


ユリカの発言に女性クルーの一部が嫌そうな声を上げる。

しかし…今は猫の手も借りたい状況だ。生き残るために全力でかかるのは当然のこと。


「プロスさん、一番近いネルガルの施設はどこですか?」

「はい、エリシウム平原中央部のエリシウム山にある研究所が一番近いでしょうな…

 あそこなら、何か兵器の一つくらいは残っているかもしれません」

「そうなんですか。じゃあ、直ぐに行きましょう! それと…ウリバタケさん、

 ここで失敗すればそれで終わりです! 一時間以内に仕上げてください!」

「そいつは、無理な相談だ! と普段なら言う所だが、状況が状況だ……調整は出発後に回して、一気にしあげてやらぁ!」

「はい! ではナデシコ、エリシウム山に向かっちゃってください!」

「はいは〜い。肉体労働はちょ〜っと嫌だけど、仕方ないわね♪」


こうして、ナデシコはエリシウム山のネルガル研究施設に向かう事となった。
















「ガハッ! ハア…ハア…ハア…


薄暗い部屋で俺は目を開く。

体力は回復していない。傷は多少ふさがった様だが…

俺の体内のナノマシンは限界を超えて増殖している。

既に体の5%を超える部分を、ナノマシンとそれに制御される細胞で補っている。

俺には時間が無い…俺の目的はテンカワ・アキトへの復讐…その為に強くなった……

体の限界なぞとうに過ぎている。

精神でどうにか生き続けているだけだ。

こんな俺を……閣下は笑うだろうか…?

…いや、悲しむだろうな。

閣下は復讐や権力への妄執、金銭に関する強欲等を事の外嫌うお方だった…

俺は閣下のそう言う所にほれ込んで、部下にしてもらったのだ。


「それが今や…この有様…ククク……閣下には何と言ってお詫びすれば良いのか…」


俺は結局復讐にとらわれこの場にいる…あの方が…閣下が自分の命を大切にしろと言ったのにも関わらず…

やはり、見てしまった所為だろう…望んでも表舞台に立つ事さえままならなかった閣下と正に<対極>の位置にいたあの男、

自らは望みもしないのに常に世界の中心にあり、歴史に介入し続ける男、テンカワ・アキトを…


その姿を見た時、嫉妬した! そして同時に恐怖を抱いた…

…あの男は、世界を憎み復讐に生きていたにも拘らず、それでもなお世界に愛されていた。

そう、狂気に走ってもまだあの男に追いつけない俺とは違って…


しかし…俺はもう止まれない。

たとえあのお方が止めたとしても。

俺には最早こうする事でしか、生きた証を残せないのだから…







俺はテンカワ・アキトを…いや<Prince O Darkness>を倒し、成り代わる!

一瞬でも良い、到達したいのだ。世界の中心に・・・







「結局は俺も…俺も表舞台に憧れる、ただの愚物だったと言う事か…ハハハ…ハァーハッハッハ!


無機質なアジトの部屋の中、ベッドの上で俺は…

虚しさを歌うように狂気の笑いを響かせた………







様々な想いが溢れ、ベッドに零れ落ちた透明なそれは…彼のナノマシンであったのか。

或いは別のナニカであったのか……それは誰にもわからない。

















「ドッキング終了だ! さあ、急げ! チューリップ共に追いつかれる前にやんねーと意味ねーからなぁ!」


ナデシコがドッキングを終了し、クルーがナデシコ内に引き上げていく中、ウリバタケと整備班はドッキング部位の調整を行っている。

そして、ナデシコのいるドック……の隣のドックには旧式の宇宙船が係留してある。

調整してみた結果、動く事が判明した。

そして、現在その船をどう使うかについて検討している訳である…


「やっぱり、この船だと囮が限界じゃないかな?」


ジュンは船の武装の無さと、大きさからそれを判断する。それに対しゴートが


「救助した避難民を乗せるのに丁度良い。ただその場合は、ナデシコを盾にする事になるが…」

「う〜…取りあえずは囮と言う事にして…」

「どう言う事だい? 艦長」

「だから最初は囮に使って、後で救出に使うの、でも…難しいかも…う〜ん、何とかならないかな〜」

「いや、囮に使ったら直ぐに撃沈されると思うけど…」

「…そうだね、でも、保険をかけておかなきゃ…このままじゃ決め手が足りない……」


ユリカはなにやらまた考え込んでいる様だ。

ドック内でむ〜む〜唸り始めるユリカを前に、ジュン達は呆然と見守っている。

しかし、そんな事をしている内にも時間は過ぎる…

フクベはその事を嫌ったのか、ユリカに話しかけた。


「こうしてはどうかね…私があの船を動かして囮を引き受ける。民間人の方は上手く行くかわからんが…」

「提督…我々も民間人なのです、お忘れなく」

「そうだったな。私も退役軍人、軍人では無かった…言い換えよう。

 避難民に関しては保障できないが、囮としてはいいやり方がある…」

「提督、何かお考えがあるのですか?」

「いやなに、考えと言うほどのものでは無いよ、ただ囮となるのでは意味が無い…少しは敵を減らしてやれそうな手があると言う事だ」

「まさか…提督……!」

「心配しなくても良い、私は死ぬつもりは無い…まだ<やるべき事>が幾つか残っているのでな」

「はい、それを聞いて安心しました。

 では提督、囮の件よろしくお願いします。後で必ず迎えに来ますから…ジュン君、しっかり提督のサポートしてね♪」

「うん、っていつの間にそんな話に!?」


提督の話を聞いて、ジュンも何かしなければとは考えていたが…ユリカにいつの間にか決められてしまっていた。

……相変わらず報われない男である。


「ルリちゃん、周辺状況はどうなってる?」

「レーダーには何も映ってません」

「やっぱりか〜。うん! だったら問題ありません! ミナトさん、ナデシコ発進カウントダウン開始してください!」

「りょ〜か〜い♪ 相転移エンジンリンク順調…出力60%まで上昇、

 艦内圧力及び姿勢制御用重力バランサー、全部まとめてオールオッケイ!

 エンジンカウントダウン5…4…3…2…1…」

「ナデシコ発進してください!」

「ナデシコ発進!」


ユリカがてきぱきとした指示でナデシコを出航させていく。

エリシウム山のネルガル研究所を後にして、チューリップに追い立てられる様に、ユートピアコロニーへと進路を取るナデシコ…

しかし、この状況下でも艦内の士気は高い。


「では、皆さん! 頑張っていきましょう!」

「「「「は〜い!」」」」」




一人艦内の状況に付いて行けないルリが


「バカ」



と、そっぽを向いて呟いた。その隣では


「バカ」


ラピスが同じ台詞を言っている。が、何故か嬉しそうだ。


「…心配したんだから……で・も♪ アキトを助けたんだから、これも貸しね♪」


またしても増えてしまった例の貸しポイント。

アキトの明日は………どっちだ!?











なかがき5


話がようやくインターバルを抜けた……長!

いつもながら馬鹿ですね…いい加減、展開を加速させれば良いのに…

いや、ルリちゃん…そうは言っても、ここは二回目の山場だしね…みんな活躍させたいんだよ。

そういう割には、が出ていないじゃないですか! それに、またちゃん付けしましたね!

ヒィ! ごめんなさい! ルリ様! いや、ほら、活躍はもう少し後と言う事で! それで、今回からゲストを呼ぶことになっていたんだけど…呼んでもいいか な?

そう言えば、そんな事を言ってましたね…で誰です?

今日はコーラルに来てもらった…

コーラル…あのお邪魔虫ですか…

お邪魔虫はひどいですぅ! これで も一生懸命なんですよぉ!

何を言っているんですか! 告白をフイにしてくれた事、まさか忘れたとは言わせませんよ(怒)

ああ、少し落ち着いて! 最初からこれじゃあ、話が進まない(汗)

何を言っているんですか! 元々は貴方の 責任でしょう!

すいません! 謝りますから! 今回は穏便に!

そうですぅ、いきなりぶっ飛ばされて帰って行ったんじゃ、読者さんも混乱し ますぅ。

…そうですね、分かりました…今回は目をつぶりましょう…それで?  今回コーラルを呼んだ理由は何ですか?

この後、出番がいつ来るか分からないから。

ええー! そうなんですかぁ!?  うぅ…脇キャラの悲哀ですぅ!

また、元も子もない事を…そんなだから読者に 引かれてしまうんじゃないですか!

うう…そうかも…

そうですぅ!  どうせなら作者を変えてもらえば良いですぅ! こんな駄目作家じゃ 続きが不安ですぅ!

酷い(泣)

…まあ、駄目作家は放って置く事にして、コーラルの名前はどういった理由でついたんですか?

それはぁ、コーラルは珊瑚の事なんですぅ、でもぉ、私はそれだけでもないんですよぉ!  ファミリーネームの方もアイドクレーズはべズビアナイトと呼ば れる宝石の別名なんですぅ!

そうなんですか、つまりの名前をくっつけただけですね。

ちっ、違いますよぉ! コーラル・ド・マロネージュ・アイドクレーズっていう名前なんですからぁ!

マロネージュって何です?

うぅ、実は分かりません…作者が語呂で つけたんですぅ! 適当作家のせいですぅ!

はあ、やっぱりそうですか…

私は完全無視ですかい…

何を言ってるんですか!  コーラルの意見を聞いていると、貴方は適当に作っていると言う 話じゃないですか!

いや、その通りなんだけど…(汗)

やっぱり駄目作家ですぅ! 家出してやるですぅ!

ちょっと! 待ってくれ! っていうか、他の作家さんがお前の事を使ってくれる訳ないだろうが! お〜い!

はあ、収拾もつかなくなった事ですし、この辺でお開きとします。

え〜!? こんな終わり方でいいのか!?

 


押していただけると嬉しいです♪

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