ルリはそういうと俺を車椅子に座らせてから、アルフレートの状態をチェックする。

テキパキとそれらを確かめている様は看護婦めいているな……

多分軍に入ってから学んだんだろうが、的確な動きをしている。


「でも、アキトさんが私の事を心配してしてくれた事なら少し嬉しいです」

「あ……いや、それはそうなんだが……(///)

「ふふふ、照れてるアキトさんも可愛いです♪

 特に異常は無いみたいですね。

 数分で目を覚ますでしょう。

 行きましょうか?」

「目を覚ますまでついてなくていいのか?」

「というか、彼も車椅子生活者に倒されたと言うのは恥ずかしいでしょうし。悪い夢とでも思ってもらえればいいんじゃないですか?」

「うっ……(汗)」


ルリの笑顔は透き通るように綺麗だが、コメカミには血管が浮いている……

やはり、車椅子を卒業できた訳でもないのにケンカをした事を根に持っているらしかった……(汗)



機動戦艦ナデシコ
〜光と闇に祝福を〜





第十六話「いつもの『自分』に休息を」その5





私は考える、この先どうすればいいのだろう……



いっそ全て打ち明けてしまうべきかも知れない……



でも、そうしたら私は……



私がいた意味はどうなるの?



だって、それは偶然という名の奇跡。



そして、必然という名の呪い。



全ては歯車が咬み合わさるまでの少しの時間……



終末は動き出そうとしているのだから……







最近紅玉と会うことが多い……

ラピスは明日香インダストリー・オオサカシティ・ラボラトリィの方に行っているから、

実質こっちの部屋に残っているのは私だけなんだよね。

そして、紅玉は真実に近づいてきているのを感じる。

私は、出来れば伏せておきたかった事実の一端を明かさなければいけないのかもしれない。

せめて、戦争が終わるまでは話したくなかったんだけど……


「ねぇ、アメルちゃん。教えてくれないかな?」

「何をですか?」


私の目の前には紅玉がいる。

紅玉はいつものナース服に身を包みいつものナースキャップを頭の上にのせている。

少しだけ小柄な紅玉の身長は、最近私とそれほど変わらない程度しか無いようにも見える。

それだけ私も背が伸びていると言う事。

これは喜んでいいのか、難しい所なんだけどね。


「何を考えているのかなー?」

「え? あっ、うぅ……」

「ふふふ、別にいいのよ。でもねー背は気にしてるんだけどなー」

「そっ、そんなわけじゃなくて……」

「やーいひっかかった♪ ひっかっかった〜♪」


子供みたいにはしゃいでみせる紅玉。

でも、こういう駆け引きは上手いから……

少しお返しをしてあげたくなった。


「でも紅玉、髪伸びたね」

「えっ、そうかな?」

「うん、前は肩より上までだったと思うけど、今は背中の中ほどまであるよ?」

「うーん、いつか切ろうとは思っているんだけどねーでももう少し伸ばしてみたいかなーって思うのよ」

「もしかして、願掛け?」

「あっー分る? 少しねー……」


やっぱり……

赤い髪の毛は珍しいけど目立つからって最初は切っていたけど、最近はロングヘアが板についてきたね。

でも願掛け……かぁ、多分医療の事だよね。


「って、もう……話をそらさないー」

「でも、髪の毛の事が興味あったのは本当だけど?」

「そうじゃなくて、教えて欲しいの」

「はい、何をです?」

「貴女のナノマシンについて……アメルちゃん、本当は知っているんだよね?」

「何故そう思うの?」


私は疑問に疑問で返す。

出来れば話したくない、もう、それほど時間が残っていないのだとしても……

私は……


「貴女のナノマシン……うんうん、大きさから言えばフェムトマシンかな?

 分子機械じゃなくて素粒子機械とでも言うべき物だと思う。

 私たちじゃ本当にそうなのか判別できないんだけどね。

 あれ、人類に作り出せる技術じゃないのよ」

「そうなんだ……」

「明日香インダストリーが調べた所によると、

 メイドさん達がいたあの島にあった宇宙船は、宇宙船そのものの崩れ具合からは何も分らなかったけど、

 土の積もり具合からみて100万年ほど前の産物らしいと結論が出たみたい」

「……」

「あの中で崩れ去ったって言う貴女とよく似た少女達……

 崩れた時にそこにいた男が研究していたフェムトマシンも失われているんだけど、

 周りにいた人たちの話を聞くとフェムトマシンらしきものが貴女に入り込んだらしいわね」

「結局何が言いたいの?」

「アメルちゃん、貴女は唯一フェムトマシンに犯されても被害が無いまま能力が使える。

 更に、貴女は使用目的に応じてフェムトマシンの特性を変えることが出来る。

 フェムトマシンについて知っている事があるんじゃないかな?」


そうか、そうだよね……

今までの情報を整理するだけでも、私がどのくらい怪しいのかは分るか……


「……でも、私は実験材料として使われていただけだよ?

 フェムトマシンの使い方は実験の中で身についたものだし」

「本当に?」

「それはどういう意味?」

「貴女は古代の船の培養層に浮いていた所を発見されて、火星に持ち去られた。

 だから古代の船の培養層は10あったにもかかわらず、3つしか使われていなかった」

「酔狂だね、誰がそんな事をするの?」

「私の父はね、ラネリーと言う男にその研究を任せていたんだけど。

 彼がナノマシン開発の担当者になった時に、運び込まれたものがあるのよ……」

「……そっか、同じ病院内だもんね、知っていてもおかしくないか」

「あまりにもおかしな荷物だから憶えていた、貴女たちを直接見たことは無かったけど、彼らがあんな研究をしていたなんて!」


そう、あの人たちによって私の姉妹は6人も殺されてしまった。

もっとも、私たちには感情……ううん、能動的な思考すらなかったから、実験動物程度にしか思われてなかったんだろうけど……

地球にいた姉妹も、いろいろな物を抜き取られボロボロになっていた。

でも、彼女達にも能動的な思考は無いから、悲しまないで置こうと思っていた……

まだ、生まれていなかったんだから。


「ありがとう、紅玉、私の姉妹の為に憤ってくれて……」

「……感謝してもらうようなことじゃないわ、ただ、不甲斐無い自分が許せなかっただけ」

「でも、だからどうしたの?」

「それは……」

「私は確かに不審な点が多いかもしれない、でも、それらを私自身が記憶していなければ聞いても無駄でしょ?」

「そうね……」


そう、私が怪しい事は知っていても、決定的なものは無い筈、できれば暫くそっとしておいて欲しい。


「じゃあ、最後に一言だけ。

 多分アキトさんは喜ばないよ……?」

「……っ!!!」


それは、私にとっては致命的な言葉。

分ってはいたけど、できれば考えたくなかった。

私はずっとアキトの近くにいたかった……

でも……

出来れば、そうなる事は避けたかった……


「知って、いるの?」

「うーん、少しだけね。詳しい事情は知らないけど、巻き込みたくなかったんでしょう?」

「……うん」

「貴女の生い立ち随分変わったものじゃないかなと思うしね」

「紅玉には敵わないね……」

「貴女の事は伏せるから……だからお願い、フェムトマシンの制御法を教えて……」


本当は、この事を教えることそのものが、結果を招き寄せる可能性がある事は知っていた。

でも、その時私はこうも思った、皆なら乗り越えていけるかもしれない……

漠然と、私はそう思った。


「うん、教えるよ。制御法……」

「ありがとう!」


そう言って、私に抱きつく紅玉は本当に嬉しそうだった。
























あれから一週間ほど俺たちは例の倉庫に通っていた、

特に用件があったわけではないのだが、プロペラ機の整備と言うものにも興味があったし、

空を飛んでいるところも見てみたかったと言う事もある。

もっとも、幾ら大きく見えても所詮はコロニーだ、高度2000mで天井にぶつかる。

そんな低高度までしか飛べない以上まともに操縦できるのか怪しい。

もっとも、複葉機そのものがそれほど高空を飛ぶようには出来ていないから何とかなるかもしれないが。

それでも重力変動に巻き込まれる可能性もある。


「よくそんな複葉機を飛ばそうなんて思ったもんだな」

「ふん、所詮東洋人には空の魅力は分からん」


俺が独り言をぼそりと言ったのを聞きとがめたらしい、アルフレートが反論してきた。

金髪碧眼な黙っていれば格好いい男で通るだろうその男は、

あの時以来ずっとルリにモーションをかけている。

もっとも、あの時の事で身にしみたのか強引な手法は取っていないので取り合えず俺も静観していた。

まあ、この倉庫に来ているのも実のところアルフレートに拉致されたようなものだが(汗)


「しかし、派手な飛行機だな……」

「何を言ってやがる!

 この情熱を表す真っ赤なフォッカー Dr.1!

 ご先祖様もやるねーって感じさ!」

「フォッカー Dr.1ですか?」

「この飛行機の機種名ですよ、ルリさん」

「由来のある機体なんですよね?」

「いや……その……実は違うんです」

「ん?」


アルフレートは俺たちの前で自慢を続けていたが、由来に関しては途端に口をつぐむ。

しかし、コイツも二重人格な奴だな、俺とルリで対応が全然違っている(汗)


「この複葉機ご先祖様……マンフレート・フレイヘル・フォン・リヒトフォーフェンが使っていたものじゃないんだ」

「それはそうでしょうね、新品同様のつやのようですし」

「そういう意味でもないんですよルリさん。本来のフォッカー Dr.1は3対の翼を持つ優美な機体なんですが……」

「二対しかありませんね?」

「はい、このフォッカー Dr.1はフォッカーDZの改装タイプなんです。結局我が家には Dr.1は残されていませんでした……」

「そうですか、残念ですね」


ルリはどうやら社交辞令を交わしているらしい、

 Dr.1だろうとDZだろうとそれほど知っている訳でもないルリには変わらない筈だしな……

そういう部分が成長してくれているのは喜ばしいな。

そう考えていると、ふとルリが複葉機そのものへと視線を移す。


「それにしても、彼女は熱心ですね……」

「……それは ああ、べスの事ですかルリさん好く見ていますね」


アルフレートは言われて始めて気付いたように、べスと呼ばれた整備士の女性に目を向ける。


「なぜかは分かりませんが、ああして日がな一日飛行機のメンテナンスをやっているんです。

 このフォッカーは私の物なんですが、古すぎて飛ばせる状態ではなかったんです。

 でも、彼女は少しずつ整備をしているようですね」

「お前はやらないのか?」

「俺もやっていたんだが、何ていうかあいつテリトリーを気にするタイプみたいで最近はさわらせてくれないんだ」

「それは……」

「勝手言わないで」


俺達が話し込んでいると、ひと段落ついたのだろう、先ほどから話題になっていたべスという女性がやってきた。

機械油を全身に浴びている所為で薄汚れているが、白人女性だということは分かる。

つなぎを着て作業用の手袋とゴーグルを付けている。

髪の毛は赤い帽子のせいできっちりとは分からないが白っぽい色合いだ。

肌は健康そうではあるが黄人の俺と比べれば白いだろうか……

ただまあ、少し神経質そうな目で俺達を睨んでいた。


「貴方たち、今週に入ってから何度か見かけたけど、入部希望なの?」

「入部?」

「ああ、サークル活動だったんですね」

「サークル……確かにまともに部費は出ていないけど、一応は正式な部よ。この軽飛行機部は」

「ああ、このアルフレート様が部を立ち上げたんだが、意外にも誰も入ってこなくてな」

「単に部長がまともな宣伝も、活動報告も行っていないだけです」

「あーなるほど」

「納得ですね」


べスが言った言葉は的を得ている事がよく分かる、アルフレートは管理業務のできるタイプじゃない。

多分飛行機の事以外は殆ど何も手を付けていないに違いない。

それも、整備をべスに任せてしまったならコイツは何をしているんだ?


「ちょっと待て、俺はエースパイロットなんだ。そもそも、飛べないままじゃ出番が無いってだけさ」

「そうなんですか」

「ルリさんにも見せてあげたいですよ、大空はいつも新しい姿を見せてくれます。俺とタンデムで乗ってくれたならいつでもお見せしますよ?」

「完成してないけどね」

「ふふっ」


途中からまた口説きに入ったアルフレートをべスが冷ややかにつっこむ。

そういうさまを見てルリも何か思い当たるものがあったようだ、口元で笑いをこらえている。


「部員は他にいないのか?」

「いる事はいるんだけどね、名義だけの幽霊部員が4人と、後は……」


そう言っていると、二人分の気配が近づいてくる。

一人は知っている気配だ……


「あ、リョウジにワガン、久しぶりね」

「よぉ、相変わらずだな」

「お、ってルリさん達、どうしたんだ?」

「複葉機を見せてもらっていました」


やって来たのはぽっちゃり系の日系リョウジと、浅黒い肌をした長身の大男だった。

大男がワガンというのだろう。

アフリカ系を思わせるドレッドヘアだ。

取り合えず挨拶を交わしてから経緯をかいつまんで話した。


「ふーん、なるほどねー……じゃあアキトも興味あるんだな?」

「まあ、無い事も無いな」

「俺達も飛行機の復元なんて初めてだから色々期待してるんだせ?」

「確かに、飛ばしたら面白そうだとは思うが……」


そうは言っても、現状部品のサビ取りに、使用不能部品の交換。

そもそも、使用不能部品の予備パーツが残っている場合の方が少ないので、殆どの部品を削り出しで補っている。

しかし、削り出し部品が必ずしも正しい組み合わせになっているとは言えず、エンジンをかけてもまともに飛ばなかったり。

翼のバランスを組み直さなければならなかったりするらしい。


「大変なんだな……」

「それもこれも、部長が下手な手出しで余計に壊す所為ですけどね」

「うっ、何を言っているのかな? 俺は整備に関しては間違いなどしていないが?」

「サビた部品をそのまま取り付けようとしたり。

 削り出しに失敗した変な形の部品を取り付けて他の部品までだめにしたり。

 色々やってくれましたけどね……」

「ふふふ、それは大変ですね」

「待ってくださいルリさん! これは陰謀です! 元々愚痴っぽい女なんですよ、彼女は!」


……ギロ


ああ、やってしまったみたいだな……

アルフレートはルリの気を引こうとするあまり、べスの怒りを買ってしまった様子だ。

悪い奴じゃないんだろうが、お調子者だな(汗)


「まったく、いつもああだからな……」

「ほう、そうなのか?」

「ああ、アイツいつも女の子にコナをかけようとして失敗してる。なまじっか顔がいいだけにもったいない気はするけどな」


ワガンとか言う大男がアルフレートについて言って来た。

どうやら、かなり前からの知り合いらしい。


「ん? ああ、俺は大学に入ってからの知り合いだが、三年間これを見せ付けられてるからな……」

「……それは、ご愁傷様だな」


一通り怒鳴り終わったべスが俺達に向き直る。

そして、一言付け加えた。


「でもね、もう殆ど完成してはいるの。この飛行機に足りないのはエンジンの強度ね……」

「エンジンの強度? 乗せ変えられないのか?」

「この複葉機のエンジンは旧式すぎてどこでも扱っていないの、何度か補強を試してみたんだけど……やっぱり素人じゃここまでね」

「なるほどな……」


複葉機のエンジンは確かにもう置いている場所はクラシックのレシプロ機専門店くらいだろう。

しかも、そういう所ですら飛行機とセット販売が限界だ。

そもそも飛ばすために置いていない以上、部品などは整備用ではなく、製品の見栄えをよくする程度にしか考えられていない。


「現在では用途がまるでない骨董品だから……」

「じゃあここまでなのか?」


エンジンがまともに動かないのでは整備しても置物にしかならない、最近のエンジンに換装した方がまだマシだろう。

俺はその事を聞いて、べスが整備を休み無くやっている理由が分からなくなった。


「そうでもないの」

「何かあるんですか? 飛行機を飛ばす方法が」


流石に興味を惹かれたらしく、ルリも会話に参加する。


「うん、私の知り合いがエンジンの都合をつけてくれると言ってくれてるから……」

「そうなんですか、ではもう少しで出来上がりますね」


ルリの言葉にべスも頷き返す。

だがその言葉リョウジが首を振った。


「いや、残念だけど……多分届かないと思うぜ?」

「何? どういうこと?」

「聞いた限りじゃ、そのエンジン既に届いているみたいなんだが……

 途中で臨検に会って止められているって話だ」

「そんな!?」


臨検? 複葉機のエンジンなんて戦争に使えるような代物じゃない。

骨董品に過ぎないそれを臨検にかけるというのはおかしい、

そもそも、この複葉機は臨検を通っているのだ、今回だけというのは……

戦争の緊張状態の所為だとしても、無人兵器相手に臨検は関係ない。

とすれば……何かきな臭い物を感じるな……


「まさか……な……」

「アキトさん……」


俺とルリは目配せを交わす。

確信は持てない……しかし、確実に何かが動き出しているのを感じていた。













なかがき

いやー、今回は遅れたうえに、お話短いはなかがき適当だわで申し訳ない(汗)

もらった逆転裁判1〜3にハマってクリアするまで動けなかったもので(爆)

取り合えず、一本上げてしまえな感じででっち上げております(汗)

いや、ネタはあっても時間が遅れすぎなんでね(汗)

次はもう少し余裕を持って作りたいと思います。

でも次は棄てプリかな〜〜〜〜
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WEB拍手いただきありがとう御座います。

今後もがんばって行きます。

〜光と闇に祝福を〜が最後まで続けられるかは、気力次第ですので……

出来れば感想下さいね〜〜


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