コガラシに案内されて到着した場所は研究施設然とした廊下ばかりの場所だ。

いくらコガラシがメイドガイの力で無理やりエレベーターを動かしていたとしても、警備はかなりの数が集まっているはずである。

それなのに、ここには研究員しかいない。

数人が横切っていくのが見えたが、俺達には無関心だった。

しかし、一人だけ俺達を認めて歩いてくる男がいた。

それは、黒ずくめのボディスーツの上から黒のマントを羽織り、目元には大きなバイザーをしたぼさぼさの髪の男。

俺と良く似た男、海燕ジョーを名乗る……。



「来たか……北辰達もいきまいていた割にはたいしたことが無いな。


 だが、来てしまった以上お前達を案内しなければなるまい。


 テンカワ・アキト。お前は……知らねばならない」



それは、俺が俺に告げたが如く違和感のある申し出。



男は俺にそのことを告げた後、きびすを返して俺に背中を見せる。



それでも俺にはついていく以外の道はなかった。



なぜなら、男の背には隙と呼ぶべきものが感じられなかったのだから……。





機動戦艦ナデシコ
〜光と闇に祝福を〜



第十七話「それぞれにある『正義』」その7



作戦開始が押し迫ったフタバアオイ周辺宙域。

現在火星の後継者及び第五艦隊対策艦隊の指揮についてカイオウは地球から上がってきた人質護衛艦隊と交渉していた。



「指揮権は私に下さると……」

『確かにミスマル中将からの要請は承っている、しかし、一介の中佐程度にこの指揮を委ねていいものかは審議中だ』

「ミスマル中将からの要請ですか?」

『命令だといいたいのか?』

「自分はそう聞いていますが」

『確かに命令権は彼にある、しかし、私はミスマル中将の直接の部下ではない』

「それは……協力できないという解釈でいいのですね?」

『私は上層部からの命令ならば受けると言っているだけだ』

「……」


護衛艦隊は連合宇宙軍とはいえミスマル中将の指揮下の兵ではない、

ミスマル中将指揮下の第三艦隊は現在月面攻略に出ているため逆位置であるコロニーフタバアオイ方面には殆どいない。

彼らは中国を主導とした第四艦隊アジア方面軍である、そのため利害がぶつかる事が多く、

当然のように今回も渋ってきているのだ。

もちろん、ミスマル中将はその事も見越して圧力をかけているし、他の軍にも動いてもらうように働きかけてはいる。

しかし、アジア方面軍は主導を極東方面軍に握られているのがよほど立腹なのだろう。

それに交渉している人間もよくないのかもしれない、期待の新鋭とはいえ中佐でしかないカイオウでは、

曲がりなりにも准将の階級をつけている人間を指揮するというのは軍部としても承服しかねるだろう。

通信を落としたカイオウは、悔しさに震えながら壁にこぶしを叩き付ける。

ガンッ、ガンッと金属に拳を叩き込む嫌な音が響く中、コミュニケの画面が唐突に開き、



『壁を破壊しないでください』

「!?」



突然少女がカイオウの正面に大写しになる。

カイオウは驚き一歩下がってその姿を良く見る。

そこに映っているのは紫色の髪をポニーテールに纏めた少女だ。

無表情なのか、自分に向けるまなざしが冷ややかに見えるが、別に悪意があるようには見えない。



「すまない」

『連合宇宙軍との交渉が上手く行くとは思っていませんでした、落ち込む事はありません』



今度は別のコミニュケが開きカグヤ・オニキリマルが言う。

カイオウは瞬間恥ずかしくなり、そして一言。



「軍用通信への盗聴は犯罪ですよ」

『あら、個人的な通信ではありませんの?』

「それでも個人情報保護法に抵触します」

『まあ構わないじゃないですか、元々私達の決めた作戦ですし』

「くっ、貴方達は! ……いや、今はそんな事を云々している暇はありませんね」

『はい、至急ブリッジに戻ってきてくれますか?

 私達なりに動きたいと思っていますので、それにそろそろアキトさんが戻ってこられます。

 その時にはもう少しあちら側の全貌が明らかになると思いますわ』

「信じて……いるのですね」

『ええ、私が選んだ人ですもの当然ですわ』

『私を通して無事だって知ってるだけ』

『ちょ、ソレは言わない約束でしょ!』

『別に、そんな約束した覚えはないよ』

『むむむむ!!』



カグヤは頬を膨らましてアメジストを睨みつける。

アメジストは確かにアキトと繋がっており、今もアキトが無事である事を常に把握している。

ラピスとアメジストから近況を聞くことでカグヤもアキトの無事を疑わずに済んでいる。

とはいえ、ルリがどれくらいアキトと接近しているのかについてやきもきもしていたが。



カイオウがブリッジに戻ってくるとそこには既にブリッジメンバーが集結していた。

敵の規模が予測できず、戦力比は1対1000以上。

だが、どの顔にも不安そうなものはない。

それは、目的意識がそうさせているのか、それともアキトという人物のお陰なのか。

ただ、ブリッジにいる人間は不安を押し殺しているという感じでもなく、適度な緊張感につつまれていた……。















「へーそれじゃマスターは政治的に追い落とすつもりなんだ」

「ああ、できれば穏便に行きたいと思っているよ」

「でも、草壁って人そんな簡単に行くかな?」

「彼は正義の代弁者さ、彼の言っている事は間違いじゃない。木連は地球に虐げられてきた歴史を持つ。その復讐を正義というならばね」

「では、マスターはどうしたいんですか?」



ウノに促され現在までの状況を話していた神崎だが、トゥレの言葉に足を止める。

彼らは今カグラヅキへと戻ってきていた。

仕込みが終了して仕上げに向かう最中だ。



「ふむ、私が求める正義は、割と単純な物でね。皆が笑って暮らせるといいと思っている」

「笑って暮らせる?」

「ああ、戦争、飢え、事故、色々な要因で人は死ぬ。でも、それら全てに答えを出すことは出来ない。人間は一度しか死ね無いしね」

「そりゃそうだな」

「だけど、戦争は無くせるし、飢えは上手く食料を配分すればかなり減らせる、事故はまあシステムと個人個人の心がけ次第だけど」

「でも今までそれを出来た人はいない……」

「だからさ、夢想家と思うかもしれないが私はそんな平和な世界を作りたい」



神崎は三人を前に微笑みながらその目標を語った。

他の人間なら笑い飛ばされても仕方ないような世迷いごと。

しかし、神崎の目は真剣だった、草壁のやっている事は正義という名の断罪、しかし、断罪するものはいつか断罪される事になる。

そんな事は神崎も分かっていた、だからこそ、そんな事を言わなくていい世界にしたいと考えている。

それは目下雪谷進一にしか語っていない彼の本心だ。



「なるほど、確かに聞かせてもらったぜ」

「ええ、私もやはりマスターで正解だと思います」

「(コクリ)」



三人は神崎を見つめながら言う。

それは、ラネリーが神崎に渡した人造人間のようなものであるはずだった。

ラネリー自身は思考が極端で、倫理観が無い、しかし、この娘達は倫理観のようなものを備えているようだ。

これは一体どういう事だろうと不思議に思い、そして、彼女らに試されていた事を神崎は知る。



「なるほど、では改めて宜しく。我が忠実なる部下達」

「はい、マイマスター」

「これからもよろしく!」

「(コクリ)」



神崎は考えを改めた、確かに彼女らはラネリーの製作だが、感情などはラネリーのプログラムでは無いのではないかという事を。

それはつまり、何か運命的なものが彼を支援しているという事であり、また、オメガという存在がただの復讐者ではなかったという事でもある。

神崎にとってレールを歩かされている感は否めない所だったが、それでも今はその事をありがたく思っておく事にした。
















あれから、更に下へとくだり、多分第四階層の天井へと突き抜けているだろう、ビルの最下層フロア。

あの”火星の後継者”を名乗るばかりではなく、俺の使った偽名海燕ジョーをも名乗るクーデター首謀者。

姿すら昔の俺を思わせる黒いマントとボディスーツそして大きなバイザーをつけている。

髪型や体格すら似ているといわれれば似ている、ある意味吐き気を催す男ではる。

そんな存在に先導されて俺とルリ、コガラシは歩いていく。



「テンカワ・アキト。お前はこの世界の成り立ちを知っているか?」

「世界の成り立ち? 火星の後継者の総帥がえらく文学的な話をするんだな」

「文学的、そうかもしれないな……だが」



男は大きな扉の前で立ち止まる、そして俺達を振り向き言葉をつむぐ。



「ここにあるのは、世界の秘密の一端だ」



そこは、格子状の光が走る、異文化の遺跡。

火星の極冠遺跡と同じ古代火星文明を思わせるもの。

いや、そのものではないのか?

これでは、まるで……。

遺跡と思しきその場所に案内した男は、感慨にふけるでもなく、ただただたたずむ。

しかし、無言にみえてその唇は何かをつぶやいているように見える。



「遺跡がここにあったのには驚いたが……なるほど、ジャンプ施設はここか」

「ああ、そういう使い方も出来る。だが、ここはそれだけの場所じゃない」

「確かにな、コロニー内とは思えないほど遺跡そのもので出来たような部屋だな。

 それに、この場所何か気配がする……」

「アキトさん……」

「クククッ、ここのコロニーはな、実の所核配備のための施設であると同時に、

 一番最初に発見された遺跡を管理研究するための場所でもあったのだ」

「なん……だと?」

「そんな場所だからこそ、多額の資金を投じて巨大なコロニーにしたてた。

 これだけ大規模なコロニーが実は資源コロニーの一種だなどと誰も思うまい?」

「……なるほどな」

「だが、そんな事はたいした事ではない。ここは火星の遺跡のテストタイプだった事までは判明しているのだからな」

「!?」



ルリが心配そうに俺を見る、それは俺の身を案じているのか、それとも俺の違和感にどこか不安があるのか。

確かに、俺自身この部屋に来てから少しおかしい、元々敵の本拠地のはずだ、警戒心があるのは当然だが、

それとは別に違和感のようなものを感じている。

まるで、ここは別世界だとでもいうような……。



「忘れていないか? テンカワ・アキトの両親は研究者だ。それもC・Cのな」

「何が言いたい」

「C・Cとはボソンジャンプのトリガー。だが、そんなものが自然に存在するはずも無い」

「それがどうしたんだ! 古代火星人が作ったんだろう?」

「火星にはC・Cが溢れていた。その理由は火星こそが古代火星人のいたはずの場所だからと言われている。

 だが、C・Cそのものについての研究は進んでいない」

「いい加減にしろ、そんな言葉で俺を惑わすつもりならお門違いだ」



俺は半場威嚇をこめて言う、実際ジャンプ施設を見つけたのだ、もう無理に付き合う必要も無い。

ボソンジャンプで逃げるのも首魁を倒すのも自在だとすらいえた。

しかし、男は落ち着いたままニヤリと口元を歪め俺を見つめ返す。



「C・Cとはフェムトマシンの集合体だ」

「ッ!?」

「それゆえ、遺跡そのものの構造体もC・Cで出来ている」

「……」

「フェムトマシンは全ての構造を記録し、過去へ送り込み、また送り返す。

 だが、それだけの目的で作られた物じゃない。

 過去未来全ての種族の身体的特徴、またどんな文明を築いたか、どうして滅びたのかすら記録している」

「それは……」

「遺跡とは未来を記録し過去に送る記録装置なのだ、ボソンジャンプなどはオマケに過ぎない」

「そんなものを見て一体何になるというんだ!?」

「恐らく、古代火星人は知りたかったのだ、未来どんな文明が生まれ消えていくのか。

 事実としてこの装置には何万という種族の勃興が記録されている。

 しかし、その中には当然自らの滅びも含まれていた」

「俺達には関係ないだろう!?」

「いや、関係ないとはいえない。古代火星人が多数の遺跡を残した理由……それは。

 種族の保存だからだ……」



その言葉の終わると同時、その遺跡らしきものにはいくつもの顔が浮かび上がる。

もちろん、きっちりその姿を取っているわけではない。


うめき声、いや、ささやき声か……。


まるで部屋全体が生きているような……。


壁や床、あらゆる場所に浮かび上がった顔は、俺達に呪詛でも向けるように。


ただただ、何事かささやき続ける。


ルリがぎゅっと服の裾をつかむのが分かる。

何か聞こえているのだろう、無表情の仮面の下に不安が見え隠れしている。

コガラシは……なんか嬉しそうだな……。


俺が正面に向き直ると、男は待っていたかのようにバイザーを外す。

その下から浮かび上がったのは……。



「ヒッ!?」



俺の顔と全く同じ姿、しかし、目だけが違う、いや違うんじゃない、がらんどうなのだ。

目の場所にあるのはただの空洞、その奥から得体の知れない赤い光が指している。

もしや……人ではないのか?



「この体は、かつてテンカワ・アキトの物だった」

「……あの時のか……」

「そうだ、お前の記憶の全てはこの中にある。そして、私は……」

「お前は!?」

「残りかすだった私を拾ったのは、ネルガル、そして更に横から奪ったのはラネリーといったか。

 そして、私はフェムトマシンの実験台となった」

「まさか……古代火星人の意思というのは……」

「そうだ、俺は遺跡内に残されていた古代火星人のデータと貴様の記憶の残りかすによって出来た存在」

「……」

「そして……」



呆然とする俺達を尻目に淡々と作業を進めるかのように何かを動かす。

すると、そこから何かせりあがってくる。

その大きさだけでも数メートル、これは極冠遺跡の……演算装置!?

だがこの姿は……いや、いくらなんでも……。

花のように何枚にも折り重なったものが開き、徐々にその内部がせり出してくる。

その中から姿を現したのは……まさか!?



「そう、貴様の妻だった女だ」

「まさか、まさかまさかまさか!?」

「クククっ……どうした?」

「貴様ぁ!!!!」



俺はがらんどうの目をした男に飛び掛る、しかし、男に届く寸前で鉄でも殴ったような感触とともに引き下がる。

この手ごたえは……。

ディストーションフィールド!?



「携帯用のを一つ用意してもらってな」

「くっ!!」



俺は袖に仕込んでいたデリンジャーを抜き放ち二発づつ、左右4発を叩き込む、しかしディストーションフィールドはびくともしない。

しかし、俺はその事を無視して男を通り過ぎる、そして演算装置に向かって……。

だが、その俺の動きも演算装置の手前で止まる。



「そちらには炉からエネルギーをとっている大物を使っている。さて、話が途中だったな」

「もう話すことはっ!もがっ!?」

「ご主人、今突っ込んでも無駄だ、奴には切り札があるがこちらにはない。

 メイドガイへヴンでもあのバリアーはかなり骨だろうしな、ご主人の玉砕する姿はビデオにとって閲覧するのも悪くないが」

「……」

「そっ、そうです……まだ諦めるには早いです、体制を整えなおすのが先だとアキトさんも言ったはずです」

「そう、だったな……」



ユリカ……またとらわれていたのか。

今すぐ救い出してやりたい所だが……確かに今の状態ではなんともならないのかもしれない。

しかし、直に、直に助け出してやる!

そのためなら……くそ!!

アイツは絶対消してやる。



「さて、落ち着いたかな? 私からいう事は一つだけだ」

「何だ?」

「死ね、そうすれば最悪の事態は回避される、そうなれば私もユリカを解放しよう」

「……どういう意味だ?」

「世界が終わろうとしていると言っているのだ」

「世界が終わる……?」

「突拍子もない言い回しで煙に巻こうとしても無駄です! 私達はユリカさんを助けますし、平和な時間を取り戻して見せます!」

「貴様の考えも同じか?」

「薄汚い貴様にユリカを呼び捨てにされるいわれはない! 必ず殺してやる、覚悟しろ!」

「フンッ、そうなるのではないかと思っていた」



いつの間にか北辰と北辰衆が部屋に入り込んでいた。

既に攻撃を仕掛けてきている者もいたが、コガラシが肉弾戦で止めている。

頭に血が上っていたせいで整理できていない事も多いが。

この状況はかなり不味いな……。



「くっ、ボソンジャンプで逃げる、ルリ、コガラシもっと近くに来い!」

「わかりました!」

「フンッ、やっと当初の予定通りか」

「させると思うてか!」

「ジャンプ!」

「ブロック」



突然その言葉と共にジャンプフィールドが中和される。

一瞬目を疑った、ボソンジャンプに干渉する方法があるなど初めて知った。

しかし、驚いている暇はない。

北辰衆が既に間合いまで来ていた。



「くっ!!」

「アキトさん伏せて!」



ルリがマシンガンを連射する。

そういえば持ってきていたんだったな、だがそのお陰で一瞬北辰衆の動きが止まった。

俺はその隙に壁の一部を硬気功の一種<(あらがね)>を発動して抉 り取る。

そのまま、滑り込むようにルリを伴い移動、コガラシの牽制のお陰で随分楽が出来ているな。



「ふん、その程度の攻撃、ご主人は殺せてもこのメイドガイコガラシの前には木っ端同然よ!」

「この化け物め!」

「メイドガイウイング!!」

「げっ、空を飛びやがった!?」

「メイドガイカッター!!」

「ぐあ!? なんだそのスカートは!?」



いや、逆に北辰衆が翻弄されてるな……(汗)

スカートで空を飛んで相手を切り裂くってもう何がなんだか……。

お陰で心理的なゆとりは出来たが、とはいえ北辰は俺の意図に気付いているらしく出入り口を動かない。

俺は奴を見る、奴を殺したい、それは変わらない……。

奴は同じ存在ではない、しかし、このまま生かしておけば……だが。



「北辰……」

「今回は狂乱せんのだな?」

「ふんっ、いつまでも貴様一人にかかずらってられないからな」

「だが、貴様にはここで死んでもらう、閣下の敵になる以上はな……」

「いけ好かない貴様だが、その忠誠心だけは認めてやるよ」

「ククッ」

「ははは」



笑いの衝動のまま俺は弾込めをし終わっていたデリンジャーを撃つ。

北辰はそれを察して錫杖で受ける。

その瞬間には<纏(まとい)>を発動、自己暗示により数倍の身体能力を得て一気に間合いをつめる。

北辰もそれは分かっていたのか、同じように間合いを詰めるため一瞬溜めを作った。

俺はその瞬間飛び上がり、射線を確保されたルリのサブマシンガンが火を噴く。



「チィッ!!?」



北辰はそのマシンガンの掃射をも錫杖で防ぐが、当然上への警戒が薄くなる。

俺は飛び込みざま北辰の首を足で挟みこみ、そのまま首をひねる。

グキリという音がするのをそのまま逆方向へ向けてひねろうと体を返すが、そこに錫杖から匕首へと持ち替えた北辰が俺の太ももに叩き込む。

俺は血を撒き散らしながらそれでも首を返した。

泡を吹いて気絶する北辰。

止めを刺すなら今だが、北辰衆が気付いた、それにあの男も不気味な空洞の目で俺を見ている。

仕方なく俺はルリを引っ張り駆け出す。



「アキトさん大丈夫ですか!?」

「なんとかな……血はかなり出ているが、<纏>によって血流が加速されているからにすぎない。

 ただ急いで奴から離れないとジャンプを邪魔されれば次はない」

「え!?」

「構造体の一部を貰ってきた。コイツがあればジャンプは出来る」

「分かりました、後は……」

「まああんな奴でも置いていくわけには行かない、それに今回はかなり活躍してくれているからな」

「それは……そうですね」



ルリが複雑そうな表情で言う。

確かに、少し困った奴ではあるが、仕事はきっちりとする奴だ。

やりすぎではあるんだが……。



「あの部屋がいいか」

「わかりました」



俺達はとりあえず人のいない部屋に入り込む。

少し暗い部屋だったが、そこには円筒状の何かが多数しつらえてある。

円筒の中には水が蠢いていてそして人の出来損ない達が浮かんでいる……。



「ひどい……ですね」

「ああ……」



しかし俺はこの円筒型の培養層を何度か見たことがある。

これはIFS強化体質、いわゆるマシンチャイルドの培養層ではない。

これは……。



「ご主人、待たせたな」

「良く北辰衆を振り切ってこれたな」

「当然だ、このメイドガイに不可能なご奉仕はない!」

「いや、むしろそれは怖いんだが……」

「だが、あまり時間はないぞ、奴らは既に立ち直っている頃だろう、数分も時間はあるまい」

「はは、はははは……」



立ち直るという事は、茫然自失になるような何かをやったと言う事か。

あまり深く考えないほうがいいな……これは。



「では、俺の周りに集まってくれ」

「はい、所でアキトさん場所は大丈夫なんですか?」

「ああ、あの戦艦のブリッジならアメジストの状態で確認している」

「それは……」

「いや、自分の意識が飛ぶのはああいう時だけだから」

「……」



いや、白い目で見られてもな……。

そこでいかめつらしくコガラシが言う。



「痴話喧嘩は向こうに着いてからにするがいい、危機感ゼロご主人」

「べっ、別に痴話喧嘩なんかじゃ……」

「ああ、そうだな。急ぐ事にする」

「ちょっとま……」



兎に角、俺はルリとコガラシを伴いボソンジャンプを行った。



「ジャンプ」











次回予告

火星の後継者の最後通告まで24時間。

人質交換を強行する機動戦艦エウクロシア。

しかし、その作戦の裏で蠢く影が……。

次回 機動戦艦ナデシコ〜光と闇に祝福を〜

「『南』よりきたる者」をみんなで見よう!











あとがき


相変わらず、間が開きまくりですね(汗

まー忘れた頃に更新という感じのペースで続けております。

でも、ネタがないわけじゃなくて、終わりまで殆ど考えてはあります。


そして、今頃になってようやく全ての逆行者が出揃いました。

逆行ユリカは結構辛い役どころになってしまいましたが、

ナデシコのユリカやあるキャラが既に活躍していますので、まーお許しを。


それから、ようやく十八話、戦闘開始です。

世界観は無理やりながらも古代火星人の謎っぽいものを用意して加速して行きます。

後は偽アキトとぶつかるだけですが、まだちょこちょこコネタを仕込んでいくかと。(だから進まない)

それでは、また気力が回復した折 にw


WEB拍手ありがとうございます♪
いつもコメントには力を頂いております!
一年以上待った頂いていたことに感謝しておりま す!


10月1日
22:30 久々の更新ですね! 待っていましたよー♪ アキトが迫られる選択とか、海燕ジョーの正体とその決着、 
22:31 続きがとても楽しみです! 無理せず頑張ってくださいー。 
はいなー、また二ヵ月半ほどあいてしまいました、月日がたつのは早いです(汗)
まー他のも更新しながらなんで……お許しを。


22:32 再開楽しみにしていました。 
ありがとうございます、今後もまったりと続けて行きますのでw

22:53 更新待っていました ぜひともアメジストの活躍を
アメジストの活躍ですかー、徐々に増えていくかと思います。
なにせ、フェムトマシンの種明かしが近付いてきていますからね。

23:22 お久しぶりの更新ですね〜。待ってたものがやってきました。 
ありがとうございますー♪ 今後もスローペースながらリハビリ的にがんばりますねw
後は人気次第(爆)


10月2日
0:02 ガイ(山田では無い)万世! 
ははは、メイドガイは今回も活躍してますw
ガイとはガイどうし息が合うかな?(爆)

1:00 続き楽しみにしてます 
ありがとうございます。ようやくまた続きを書くことが出来ました。
次回がいつかは明言できませんがようやくやる気が回復してきた感じではあります。
人気次第では月一程度はできるかな?

2:55 一年ぶり。毎回感想は書かなくとも楽しみにしていると私は言った。
2:56 イツキがなんでアスカに居るかなんて忘れちまったよぅ。(碧羽)
碧羽さんお久しぶりですー。
いつも誤字報告いただいていたこと覚えておりますよw
ただまあ、コメントがないと私は悲しくなってしまうんです。
やはり、寂しがりやなんですかねー。
イツキですか……まあ脇なキャラですしw
単にカイオウについて連合軍士官として乗船してるだけです。

20:39 あはは(苦笑 本当にお久しぶりですね〜まぁ存在が忘れられていなくて何よりですw 
ははは。自分の作品ですし、忘れはしませんが作っている過程で伏線を幾つも忘れている事があるかもw
まーゆったりすぎて困るかもですが、今後も時々更新予定ですw

23:30 早く続きが読みたいです!!
とりあえず更新しましたー。
ようやく17話完結です。

10月4日
23:11 待ってました!続き気になります!!
ありがとうございます。今後も続けていきますねーw
 
10月5日
21:09 密かに更新を待ち望んでました。ナデシコssの中でも結構好きな作品なので完結まで行ってくれると嬉しいな
完結までですかー、最低限後30話程度は必要かなー。神崎編がどれくらいの長編になるかにもよりますが。
まー何年かかるか分かりませんが完結を目指して頑張ります。

10月9日
8:11 更新を待ちに待っていました!アキトVS偽アキトを楽しみにしています。 
ははは、申し訳ないです。次回からようやくそういった感じで話をつくっていきます。
艦隊戦とかも出来るようにしてみたいですし、いろいろ頑張らねばなー。

19:34 久々に更新されていてうれしいです。これからもがんばってください。 
ありがとうございます、今後も待ったり更新ですが、頑張って行きたいと思います!


10月20
14:55 最初から読むのに1週間ほど掛かってしまいました・・・ 続きが待ちどうしいです。
おおー読んでくださりありがとうございます。
この作品は私なりに思い入れがありますのでやる気が出てきたらかなりのペースでいけるかも?


10月25日
16:39 懐かしいと、久しぶりに来て思いました。アキトたちの脱出を一年待ってたかいあります。 
ありがとうございます! 一年以上たっているのに読んで頂けて嬉しいです♪ 頑張らねばならないなー。


10月27日
1:39 続きを楽しみにしています。頑張ってください。 
ありがとうございます、続きスローペースではありますがまた書いていこうと思います。
今後も何とかできるよう支えてくださると嬉しいです。


11月13日
3:19 ルリちゃんバンザーイ
ははは、今のところ出番は多めですが今一活躍の場がないですね、でも船に戻ればかなり戦えますから今後は活躍するかも?

11月14日
8:08 いや、面白いと思いますよ。ただ、感想がマンネリ化しそうだったので余り書きたくなかっただけです 
マンネリでも良いですよー、コメントないと泣きそうになりますしorz
少しでも書いてくだされば私は幸せです。

11月26日
15:05 半日以上かけて最初から最後まで読破。あれ?字が二重に見える・・・ 
15:06 次回の更新楽しみにしてますが、強いて言うならアイちゃんのでちゅ語はそろそろ治して欲しいです
おおう、なんとまー一気に読破とは……ありがたい限りです!
今後も読んでいただけるように頑張らねばなりませんね。

12月14日
22:40 最近たどり着いたwilhelmといいます。余り見なかった舞台設定。続きも楽しみに待っています。 
wilhelmさん始めまして、設定に関してはかなり捻ったつもりですがあまりないと言い切れるかは微妙ですねw
ただ、アキトにはいろんなことをさせてみたいと思ってまして、それをやっているうちに話が進まなくなってしまった感はありますね。
続き何とか書いていこうと思います、がんばりますね!

12月24日
1:09 普通に面白いです。最近は更新されてないようですけど続きを気長に待ってます(笑) 
あははは、まー時々更新ですのでこれからも時々読んでくださいなw
頑張りますー♪


1月10日
2:00 続きをお待ちしています。 
ありがとうございます。何とか書き上げましたw


1月13日
14:07 続きが読みたいです!!! 
ははは、私も何とか書き上げましたがこれって言えるのがなかなかないのが私らしく直凹んで別のSSに逃げてますorz



次回も頑張りますのでよろしくお願いします!



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