天我

(ここは…?)

此処は病院のベッドの上、そこに横たわっていたのは、

「お目覚めか昇君?」

ベッドの横には廻がいた。

「俺は、どうして…此処に?」
「…あの後、お前が気を失った後にお前のバイク…イエガンつったけ?兎に角、それがカブトムシみたいな形態になって、お前を脚に引っ掛け、空飛んでこの病院に運んで来たんだ。」

昇はそれ聞き頷くと、ある話をしだした。

「…俺の腹ん中にあるベルト…ソールンって言うんだけどさ。こいつ、俺がテンガに変身してるときに…俺がスンゴい怒ってる時とかに俺を気絶させるらしいんだよな…」

「……」

「医者から検査受けて初めてそれ聞いたときさ、俺そんなことにならないように意気込んでたけど…結局のところはこの様だ」

「そうか」
「俺…弱いな」

空気は沈んでいた。

「それは兎も角、お前はまた戦わなくてはならない。命ある限り、守りたいモノや信念の為に戦う、それが…仮面ライダーだ」
「俺さ…もう駄目かもしんね」

廻の言葉が突き通っていくかの如く、昇にその言葉は聞こえていないに等しかった。

「ならば…ここでガタガタと震えている気か?」

それを聞いて昇は表情を変えた。

「お前はなんの為に仮面ライダーテンガになった?お前には守りたいものが有る筈だ」
「……」
「違うのか?」
「俺は…俺は…」

必死に言葉を探す昇。
廻は昇が言葉を見つけられない内から病室から出て行った。



***

「どうだった?」

聞いてきたのは加島。

「俺はもうだめかも…とまで言っていた」
「…そうか…」

少し長い沈黙が流れた。

「あいつが…仮面ライダーになったのは…俺が原因してるんだ」

廻はその話を黙って聞いている。

「数か月前、あいつは俺のちょっとした知り合いってだけの…普通って言葉の総天然色見たいな感じでな。
だが、ある日突然未確認が現れたのを境に…あのベルトが見つかったんだ。発掘された遺跡の古代文字を解析してみたら、それがあの化け物共と戦う力だとわかった。
警察ではそいつを使えそうなやつを徹底的に探した。でも、見つからなかった。」
「そんな時…か」

黙って聞いていた廻は口を開いた。

「あぁ。偶然俺のところに来たときベルトの話を聞いたら、あいつ自分から志願してな。
俺は冗談だと思ったが、奴の眼は冗談をいう目じゃなかった。俺はあいつにベルトを装着させてしまい……」
「昇はテンガになった」

昇がテンガとなった訳を洗いざらい聞くと、語った加島は手で自分の顔を覆った。

「俺のせいだ…全部…」
「俺はそう思わない。奴には奴なりに守りたいものがあるのかもしれんしな」

そう言うと、廻はそこから立ち去った。



***

翌日のこと。

「廻!」
「ちょっと、来てくれ!」
「何だよ二人とも?」

信彦と流姫に引っ張られた廻はある場所に連れてかれた。

そこは、

「ここは…?」
「此処はグロンギ達の遺跡さ」
「此処の場所警察で聞いて、実際来てみたら古代文字があってね。解読したらトンデモナイことが書いてあったよ」

流姫の言うトンデモナイとは?と、思う廻。

「全人類を殺し合わせる。それこそが…」
「…究極の闇…」

二人が暴いた事柄に廻は驚いた。

「でも、どうやって?」
「奴らなら不可能じゃないはずよ。特に…”ン”の位にあるものはね」

三人は一旦遺跡から出た。

「そう言えば、昇君は…」
「今のところ、戦える…とは対極の状態」
「今連中が動いたら最悪ね」
「その時は俺達で何とかするしかないだろ」

話し合った三人はそのまま(ねぐら)に帰った。



***

その同時刻。

『フフフ…』

薄暗い場所でガンドは微笑んでいた。
目の前には大層な石造りの祠がある。

『ヅギビ ザジラス…!(遂に始まる…!)』

この上なく嬉しそうにガンドは言った。

『ギラボゴ キュグキョブン ジャリガ!!(今こそ、究極の闇が!!)』

ガンドは大音量で声を発し、手からは奇妙なエネルギーが祠に発せられると、祠からは”邪気”と言った言葉が相応しいものが溢れてくる。



***

その翌日、この世界の人々には忘れることのできない日になっただろう。

『大変です!人が人を襲っております!どういうことでしょうか!?昨晩、街に発生した霧のような物を吸い込んだ後に突如にも人々が暴挙に出たこの大事件に警察では未確認生命体の首領と思われる存在が引き起こしたものではないかという発表がありました!』

テレビのどのチャンネルでも同じような内容が報道されている。

「殺し合わせる…こういうことか」
「面倒極まりないわね…」
「……」

テレビを見ていた三人はこの上なく顔を険しくしている。
すると、廻は扉の前に立った。

「どこ行くの?」
「ちょっとした用事」

それだけ答えて廻は行ってしまった。

その頃病院、昇の病室では。

「俺は、もう…」

未だに立ち直れていない昇。
頭の中には廻が自分に向けて言い放ったことが離れない。

その時、偶然ついていたテレビの音声が耳に入った。

『え?、現在の状況で局には天我(テンガ)を応援する声がドシドシ、送られています』

リポーターの解説で様々な応援メッセージが表示されていった。

―私は以前に未確認に襲われたとき、天我(テンガ)に助けてもらったことがあり、あの日から彼は私にとっての忘れることのできない英雄です!―

天我(テンガ)の正体は人間かもしれない、という噂があるのを耳にしたことがあります。
それが真実だと言うのならば、彼は本物のヒーローです!!―

「………」

一つ一つのメッセージは昇の心に何か明るいものを灯していった。



***

『全ては闇に包まれる…リントもグロンギも等しく』

暴れまわっている人々の中心に堂々と仁王立ちするガンド。

「ギギバゲビギソ!!(いい加減にしろ!!)」

と怒鳴って登場したのはマシンディローダーに乗って現れたディロード。

『…テンガ以外にも我等に刃向う力を持つ存在が居ようとはな』
「フン!お前に知られても全然嬉しくない…。とっとと片づけさせてもらう!」

そう宣言してディロードはライドセイバーをセイバーモードに変形させてガンドに向かって言った。

ガンドはそれを素手で受けとめた。
だがディロードはその瞬間に全力でガンドを押し切り、建物の壁に押し付ける。

『…やるな…』
「ありがと…よ!」

最後の文字にデカイ声で言うディロード。
ガンドは戦いがいのある相手に会えたことが嬉しいのか、動きに躍動感を感じる。

『お前の相手はとても面白い。だけど、お前一人に時間を食わされる気もない』

ガンドは周りに居る暴走した人間たちを操ってディロードに向かわせる。

「セコイことしやがって…!」

流石に敵には無慈悲に戦うディロードも人間相手では素手で戦う他無かった。
だが、暴走人間の一人はディロードライバーを外したせいで変身が解けてしまう。

『このような時に我と出会ったことを後悔するのだな』

ガンドがそう言うと暴走人間たちは廻に止めを刺そうと近寄って来る。

「くっ…!」

廻も一瞬、もはやこれまでかと思った時。

「………止まってる?」

そう自分に襲いかかってくるはずの人間達の動きが止まっているのだ。

『……貴様ァ!』

ガンドが声を上げた方向に佇んでいたのは、

「…やっぱり来たか、テンガ」
「俺は戦ってみせる…。全てが終わるその時まで」

ゆっくりと止まった人間達の中を歩み、廻に近づく。

「これはお前がか?」
「あぁ、一種の超能力…サイコキネシスとかいうのでここにいる連中の動きを無理やり止めている」

テンガはそういうとアースフォームになって傷を受けた廻の身体に生命エネルギーを送り込む。すると、傷はたちまち治って行った。

「ほら、お前のだろ」
「当然」

テンガは先程弾き飛ばされたディロードライバーを拾って渡した。

『友情ごっこに浸っているところを恐縮だが、人間は我らグロンギ同様に…貴様らの言う無益な争いをしてきた。それはもはやこの時代だけでなくあらゆる時代でも…。そんな者共のために戦うのはただ同じ人間だからではないのか?
単純に自分の居場所だけを守りたいからじゃないのか?』

「ハンッ!何言ってんだテメーは?
こいつが戦っていたのはそんなんじゃない!」
『何が言いたい…?』

質問するガンドに廻ははっきりと答えた。

「こいつは顔すら知らない人間の死を悲しみ、涙を悲しみ、そしてお前らみたいな外道をこころから許してはならないと…。そんな暖かい心を秘めている」
「………」

自分が戦っていた本質を短い間で感じ取っていた廻にテンガ=昇は心になにかを感じていた。

「だからこそ戦ってこれた。人々の悲しみを無くして、幸せを守る為!」
『……お前は、一体…?』

そう聞かれた廻はディロードライバーを装着し、ライダーカードを左手に持ち、ガンドに突きつけるように構えてこう言った。

「最強最悪の仮面ライダーだ」
『!!?』
「くたばっても覚えてろ!変身ッ!!」

≪KAMEN RIDE…DEROAD≫

変身した廻。その直後にライドセイバーからはテンガ関連のライダーカードが飛び出してきた。そのカードには絵柄が取り戻されている。

「…昇、守るぞ」
「…皆の幸せの為に…」

短い二返事でテンガはクウガの変身ポーズとは鏡映しの如くポーズをとって、

「凄変身ッ!」

アトミックフォームへと姿を変える。
だがそこへ人間たちが一気に意識を失って倒れると、代わりにグロンギ群が現れる。
だが二人は絶妙なコンビネーションで蹴散らしていく。

≪ATTACK RIDE…EXTRA SLASH≫

そして、”ディロードエクストラスラッシュ”で周囲の敵を一気に片付けた。
二人が背中を合わせた状態になると、ディロードはカードを一枚装填した。

≪FINAL FORMRIDE…TE・TE・TE・TENGA≫

「堪えろよ」
「は?」

ディロードの言ったことが理解できずにテンガは戸惑ったが、ディロードはお構いなしにテンガの背中を触った。

「ドオォ!アァァ!!」

テンガの身体は変形して行き、彼のマシン・イエガンの飛行形態を模した”テンガイエガン”となった。

『これって…?』

あまりの出来事にテンガは困惑する。

「なに、ライダーの力が合わさればこれくらいは造作もない」

そうディロードが言うと、テンガイエガンは『良しッ!』と言ってグロンギ達に突っ込み自慢の角で蹴散らしていく。

『調子付くな!』

ガンドは怒鳴ってテンガイエガンに拳を放つも、

『無駄だ!』

効かないどころか角で突かれた揚句、飛行する際の勢いでガンドは捕縛されたも同じ身になる。
ディロードはそこを狙ってカードを新たに装填する。

≪FINAL ATTACKRIDE…TE・TE・TE・TENGA≫

電子ボイスがすると、テンガイエガンはディロード目掛けて飛行し、ディロードもテンガイエガンに捕まっているガンドに向かってキックする。

『ダアァァァアァァァ!!』
「「オリャァァァアァァァ!!」」

テンガのFFR(ファイナルフォームライド)での必殺技”ディロードジール”が炸裂する。

テンガイエガンは元の姿に戻り、苦しんでいるガンドをディロードと共に見つめている。

『クウゥ…』
「お前たちグロンギは、生きるやり方を間違えただけなのかもな…」
『だったらお前はどう生きてきた?』
「ただ、俺のやりたいように…。仮面ライダーとして」

その言葉にガンドは呆れたような口調でこう言い残した。

『ならば…リントが我らと違う道を歩むことを祈ろう…』

―ドガアァァアァァン!!―



***

「もう行くのか?」
「あぁ、俺達にはまだ使命が残されている」

戦いを終え、帰るべき場所に帰って来た廻。
勝手に戦ってきたと言うことで流姫に叱られたりしたが、適当な口説き文句で誤魔化した。

「また、会える良いな…」
「縁があったらな」
「さようなら♪」
「さよなら!」

別れを告げ、三人は家へと戻った。

「この世界はあいつがいれば安心だろう。幸せに為に戦うあいつなら」
「…廻も随分と良い言葉吐くようになったね♪」
「兎に角、次に世界に行こう。救済の為に」

信彦がそう言うと、家は三人の意思に呼応するように出現した次元の壁に包まれた。



***

その頃、とある世界で死神の如く姿をした紫色スーツとダークグレーの鎧を纏ったライダーが白い怪物共と戦っていた。この世界は…?




次回、仮面ライダーディロード

「また団体さんとお相手か…」
「あのライダー達は!?」
「クレスト…か」
「面白い、一発やるか!」

”死神、封印の紋章”

全てを救い、全てを砕け!

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