人として…

『ウオォアァァァ!!』

我を失って咆哮を続ける彼に二人の仮面ライダーは戸惑った。

「これは…」
「元の正体が怪人…」

二人にとって別にこのように怪人にあたる存在が仮面ライダーをやっているなんてことはあったが、いきなり暴走するなんてケースは初めてだった。

『ウゥゥ…!』

唸り声を上げてディロードとディガイドを狙う。

「仕方ない、俺が…」
「待って。あんただとうっかり倒しちゃうかもしんないから…」

ディガイドはディロードを下がらせると、カードを一枚ディガイドライバーへと。

≪KAMEN RIDE…KAIXA≫

引き金を引くと銃口から三つの像が現れ、一つに重なると仮面ライダーカイザとなって元の変化した怪人に向かっていく。

「ハアァァ!」

カイザブレイガンを手にガンモードとブレ?ドモードを器用に使い分けて徐々に追い詰めていく。

するとディガイドはトランスドライバーにカードを装填。

≪FORM RIDE…GILLS EXCEED≫

すると鈍い光がバックルから発せられると同時にディガイドのアーマーは生々しく変化していくと同時に腕や脚、肩から刃と間違えそうなほどに立派で鋭い刺が生えてくると”Dエクシードギルス”へと変貌する。

そして、向こうでカイザが時間稼ぎをしている内にさらにカード装填。

≪ATTACK RIDE…GILLS STINGER≫

電子ボイスがするとDエクシードギルスの背中の突起物から触手が飛び出して来て、怪人に巻きついた。

「捕まえた」

捕縛された怪人は色々と抵抗したが、それすらも拒むように触手…ギルススティンガーはさらにきつく締めあげられる。

そして、とうとう怪人は意識を失ったのか、動かなくなった。

「元、お前は…」





世界の救済者、ディロード。九つの世界を巡り、その心は何を映す?





数分後、人間の姿に戻った元は意識を取り戻した。

「兎に角、話聞かせて貰うぜ」
「……わかった。ただし俺の指定する場所でな」
「いいわ」

条件をのむと、三人はその場所へ向かった。

そこは何の変哲もない一軒家に見える。

「ここだ」

元はそう言って家の扉の前に立って呼び鈴を鳴らした。

「はいは?い!」

出てきたのは首には四つのトランプスートの形をしたペンダントをした人の良さそうな若い女性だった。怪我をしているのか、頭や腕に包帯をしている。

「あれ、元?この人たちは?」
「俺の知り合いだ。上がらせてもいいか?伊崎?」
「良いけど」

どうやらこの女性の名は伊崎と言うらしい。
快く家に上がらせて貰えた二人は元の部屋で話を聞くことになった。

「さて、話してもらおうか。お前のこと」
「……わかっている。俺の正体から話すとするか…」

ため息を出しながらそう言った。

「俺の正体は”トライアルA(エース)”。対アンデッドトライアルだ」
「対アンデッドトライアル…A(エース)!?」

流姫は驚きの声を出す。

「そう、人間達は封印から解き放たれて暴れ出したアンデッド53…いや、54体を封印する為に俺を造った。五十三番目、ジョーカーの能力を基にして」

アルビノの存在を思い出したのか、言葉の一部を訂正する。

「成程、ジョーカーは自分自身の力としてアンデッドを封印できる。全アンデッドが逃れた状態でアンデッドを封印する為にはジョーカーと同じだけの力を持つ存在が必要だった」

上手い具合に元が存在することとなった訳を理解した廻。

「…余計なことを聞くようだけどさ、あの伊崎って誰?」

さっきから気になっていたのか質問する流姫。

「あいつは俺を造った研究者達の一員で、俺の監視役だ」
「そう、ならわかるわね」

まあ、人間を越えた存在を造り上げた以上、それを見張るのは当然かもしれない。

「それより、お前なんでさっき暴れた?」
「……俺はジョーカーと同じ能力を持ったトライアル。だがそれと同時にジョーカーが持ちあわせている獰猛な闘争本能も内包している。一度でもそれに火がつけば、落ち着くまで暴れまわる」

「そうだったの…」

元のおかれている状況を完全に把握した。

「所詮…俺は…」
「それがどうした?トライアルだろうが、お前はこうして生きている。その事実は変わらない。そうだろ?」
「……ありがとよ」

「で、どうする?アルビノ、取り逃がしちゃったけど」
「それを言うな…取り敢えずは信彦にも連絡入れとくか」

といって携帯を出した廻は信彦の携帯の番号にかけて事情を説明した。

「良し、一応連絡の方は済んだし。俺達は退散と行くか」
「はいはい」

流姫と廻は帰った。
その後、元は…。

「帰ったか…」

廻らが帰ったのを窓から見届けた元は寝台で横になった。
頭の中には…。

(俺は、諦めるわけにはいかない。俺には…)



***

朝となり、一日の始まりがやって来た。

だが、その暁光を浴びようなどと思う者は殆ど居ない。
何しろ、外を出歩こうものならば、

『ギヂュウゥゥゥ!!』

アルビローチが待ち受けているのだから。
そんな街で平然と歩きまわるのはただのバカか、それとも………。

≪CHANGE≫

仮面ライダーか。

「出て来い、アルビノ!決着をつけようじゃねえか!!」

叫び散らすクレスト。

『……随分と今日は張り切っているな』
「当たり前だ」
『お前たちを葬れば、世界が終る』
「簡単にくれてやるほど、安っぽくなった覚えはない」

登場してきたアルビノにクレストシックルの鎖で捕縛する。
そんな光景をバイクに跨って見ていた一人の男が居た。

「あいつ…?」

戦いを陰から見ていた男は携帯電話の電源を入れた。
かけられた電話先は?


―ピリリリリ!ピリリリリ!―

「はい、もしもし」

流姫の携帯電話だった。
ということはかけてきたのは当然…。

「流姫、前の戦いでアルビノのどこら辺に怪我負わせた?」
「え?…確か”頭”と”腕”じゃなかった?」
「…お前がこの世界に来た時の格好は”科学者”だったな」
「それが何?」

流姫は廻の意図が掴めなかった。

「俺達の”クレストの世界”でやることはアルビノジョーカーを倒すこと。そこから科学者とアルビノのことを”一緒”にして考えてみろ」
「はい…?」

一瞬何を言ってるんだと思ってしまうが、声があまりにシリアスなので流姫もうっかり耳を貸してしまう。

(アルビノを倒す…倒す…科学者…この世界の科学者はトライアルを………ッ!!)

流姫は悟った。

「そういうことだったのね」
「そういうことだ」

話を一旦クレスト対アルビノに戻そう。

「ハアァァァ!」
『セオォォォ!』

見事なまでに互角の勝負を展開する。
武器が鎌ということもあってか、攻撃のパターンもある程度一致していたからだろうか。

「はあ、はぁ…」
『ふう、ふぅ…』

先程までに激しい戦いに浸っていたので両者の体力は削られていた。
その時、アルビノが前振り無しで苦しみ出した。

『き、貴様!何故!?この状態で貴様は何もできないはず!!』
「一体何だ?」

その時、アルビノはアンデッドとしての姿から、人間の姿に豹変する。
だが、その姿…その人物は元には信じ難いものだった。

「何で…何でお前が…。伊崎!!」
(やはりな…)

叫ぶクレストとは裏腹に、廻は冷ややかな態度だった。

「ごめんね、元。今まで…私…。」
「何が、何がどうなってんだよ!?」

必死に叫ぶクレストに伊崎はこう話した。

「私は、アンデッドが解放されたあの日に一度死んだ。…いえ殺されたの、アルビノジョーカーに。アルビノジョーカーは上級アンデッドのように人化可能な個体だったと研究データや資料で知っていたけど、あの時に奴は私を人化のモデルなんて生易しいものでは飽き足らずに……私の身体そのものを取り込んだ。あなたの監視役になっていた私が一番都合がいいと踏んでね」

「!!?…それじゃ、今までのお前は…」

「今まであなたと接してきた私の気持ちは本物。でも、アルビノジョーカーによって戦いに駆り出されるとき、私の意志は奥底へと幽閉されていた」

そう伊崎が説明すると、

「そういうことか」
「…砕谷」

「砕谷さんだったかしら…?あなた達が負わせた傷のおかげで…私は一時的とはいえアルビノジョーカーの意識に反抗して、今こうして話せている。でも…それももうすぐ終わる。……早く、!!?」

突然苦しみ出すと伊崎はアルビノジョーカーに変貌する。

『全く、人間と言うのは厄介だ。反抗する度に抑えつけても雑草の如くまた刃向かってくる』
「……だと」
『ん?』

アルビノジョーカーはクレストから呟きを聞いた。

「雑草だと!!」

怒り狂ったように大きかったクレストの声。
それと同時にクレストシックルとクレストラウザーをコネクトさせると、

≪FINISH≫

「セアアァァァァ!!」

強烈なエネルギーを纏った必殺の跳び蹴りをアルビノめがけて飛ばした。

『!!?』

アルビノは身を守るためにアルビローチを前方に出現させてクレストの一撃盾にする。
だが、その一撃はあまりに強烈だったのか、幾体ものアルビローチを消して尚、アルビノジョーカーに向かって行くと…。

『ドゥオワ!?』

その蹴りでアルビノは吹っ飛ばされた。

『何故だ!?何故なんだ!?』
「お前には永遠に理解はできない、こいつの魂が」

先程から傍観していた廻は喋り出した。

「こいつは確かに以前お前が言ったとおり、目的の為造り出された人形だとしても!こいつには人形では持ち得ない物を持っている!」
『何だそれは!?』
「さっきも言ったとおり、魂…己の意志だ」
「俺の…意思」

それを言われたクレストは何かを感じた。

「こいつは人間に造られた異形であろうとも、他人のことを思いやれる奴だ少なくともお前なんかでは持ち得ない、大切なものを…!それにな、創造なくして破滅はない!創られた者は何時か壊れるのだとしても、破滅した後の世界に、きっと何かが・・・自らが刻んだモノが残る!」

『何者だ!貴様!?』

それを聞いた廻は待ってましたとでも言うようにディロードライバーを装着、カードを取り出した。

「最強最悪の仮面ライダーだ。…変身!」

≪KAMEN RIDE…DEROAD≫

変身が完了すると、クレストに関わるカード全てが力を取り戻しながらディロードの手に収まる。

『アンデッドを…嘗めんじゃねえぇ!』

ブチ切れたアルビノはディロードに向かっていく。
だが、そこへ…。

『ガ…何故だ!?』
「二人とも、今です!」

伊崎がアルビノを内側から抑え込んでいた。
それを理解したディロードは新たな力を使う。

≪FINAL FORMRIDE…C・C・C・CREST≫

「堪えろよ」
「?…ウオォォ!?」

ディロードはクレストに触り、巨大な大鎌。
”クレストデスサイズ”に変形させる。

『貴様等アァァ!!』

アルビノジョーカーの憎しみこもった言葉など当然耳に入れること無く、ディロードは次なるカードを装填する。

≪FINAL ATTACKRIDE…C・C・C・CREST≫

すると、クレストデスサイズには大気も歪んで見えるほどのエネルギーが集束し、ディロードはそれを力の限り振るった。放たれた光の刃"ディロードリッパ?”はアルビノジョーカーを両断する。

それと同時にクレストのFFRを解除したディロード。
クレストは元の姿に戻った瞬間に、その言葉を聞いた…。

『さようなら、愛しい人、そして…私を愛してくれた人…』

―ズドォ――――ンッ!!―

凄まじい爆発音がすると、街を蹂躙していたアルビローチは霧のように消えて行った。

「………」

クレストはアルビノジョーカーが爆発したところにいくと、そこには伊崎が何時もしていたペンダントがあった。

クレストはそれを拾うと、そのままそれを見続けていた。

「ディロード」
「…何だ?」

クレストが次に言った台詞はこうだった。

「……ありがとう」
「…あぁ」

この世界での使命は終わった。

だが、今この光景を眺める一人の人影があった。

「やはり、この程度では駄目か。…だが諦めない、絶対にお前を葬ってやる”仮面ラ?イダディロード”…」

そう言うと、それは次元の壁によって別の世界へと消えた。



***

「この世界も大丈夫だよね」
「大丈夫よ。元はきっと戦ってける、想いを胸に」

信彦と流姫は語り合っていた。
廻は…。

「悪くないな」

その手には”お互いに真逆の方向を向くクレストとアルビノジョーカーを背景に、元と伊崎が微笑み合っていた写真”だった。

「さあ、次の世界へ。」

流姫がそう言うと、また次元の壁が家を覆っていた。



***

そして、それと同じ時。
薄暗い道を歩く、複雑極まりないラインをアーマーにあしらえ、悪魔のように凶暴な鋭い眼光をしたライダーがいた。



次回、仮面ライダーディロード

「人間とオルフェノクの共存か」
「コロシアム…ってやつね」
「私が選手!?」
「流石はこの世界のライダーだな」

”暗黒のベルト”

全てを救い、全てを砕け!

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