完全なる不完全

グライズの世界を離れた一行。
次なる世界の地平に足を踏み入れる。

「で、早速流姫の職業チェックだ」
「私はRPGのキャラですか?」

なんでか敬語になっている。
おそらくそれ位にテンション的なものの低くなっているんだろう。

話を戻すが、この世界での流姫の服装は、ラフな格好にカバンを持っている。
中を見てみると、

「身分証明書っていうか生徒手帳?」

そこにはとある大学の生徒手帳が入っていた。ちなみに流姫はその学校の一年生と言うことになっているようだ。

「大学生かぁ」
「何か問題があるの?」

と信彦は問う。

「いや、アタシさ。大学には半年しかいなかったらから、…ライダーになっちゃったし…大学自体、影も形も無くなったし…」
「……ごめん」

暗い空気を漂わせる流姫に信彦は謝罪する。

「とりあえずはその大学に行ってみろ。何か有力な情報があるはずだ」
「そうね。そうしましょ」

場の空気を切り替える為に廻が流姫にそう促した。



***

流姫を見送った後、前回のように廻と信彦は街を巡りに巡って情報を集めることとなった。

「まただな」
「まただね」

結果、グライズの世界のように情報収集は捗らず、また適当な公園のベンチで項垂れることとなった。

「なあ、俺ら何やりたいんだろ?」
「さあねぇ…」

とうとう自分たちの使命に対する疑念すら抱き始める。
それを気にしたら限りが無いのではないだろうか…。

そこへ、

「ギャアァァァ!!」
「「!!!!」」

悲鳴を聞いた瞬間にやる気も無く、死んだ魚みたいな目をしていた二人の表情はキリリと引き締まった。
現場へと駆ける二人。そこで目にしたのは、

「あれは…」

そこにいたのはアンノウンと呼ばれる怪人と、龍や飛蝗の意匠を漂わせ、六本の角を生やした異形の戦士だった。

「アギト…!?」





世界の救済者、ディロード。九つの世界を巡り、その心は何を映す?





廻が”アギト”と呼んだ者。それは正確に言うと”アナザーアギト”と呼ばれる仮面ライダーであった。

アナザーアギトは持ち前の高い身体能力でアンノウンを圧倒する。
するとアナザーアギトは敵が弱って来たタイミングで閉じられた口部のクラッシャーを開放、中からは歯や牙と言えるものが見えている。

「シイィィィ…!」

それと同時に足元にはアギトの紋章型のエネルギーが浮かび、アナザーアギトが身を少し低くして構えると同時に彼の足に吸収される。

「トオォ!」

掛け声とともにアナザーアギトはジャンプしてアンノウン必殺の”アサルトキック”を喰らわせた。

「シィィィ…!!」

特徴的かつ静か息をするアナザーアギトは爆炎を背景に構えていた。

「まさか、アナザーアギトがこの世界の?」
「いや、違う」

反論した廻の手にはこの世界の要として存在するライダーのブランクカメンライドカードがあった色は消えているものの、そのシルエットはアナザーアギトとは確実に違っていた。

『ギガァァァァ!!』

その時、他のアンノウン達が現れる。
アナザーアギトは再び構えを取った瞬間。

≪KAMEN RIDE…DEROAD≫

響いてくる電子音。それに合わせたタイミングで現れたディロード。

「…お前は…?」

いきなり現れたディロードにアナザーアギトは困惑気味。

「俺のことより、あいつらの始末が先じゃないのか?」

それを言われたアナザーアギトは気を引き締めなおしてアンノウンにパンチやキックをお見舞いしていく。

「かったるい、新しい力で片を付けるか。変身」

≪KAMEN RIDE…GRAIZ≫

カメンライドカードの力でDグライズに姿を変える。

≪ATTACK RIDE…CLOCK UP≫

その瞬間に彼の時間は他の者たちの生きる時間のそれを越えた。

「たまには技名でも言うか!」

≪FINAL ATTACKRIDE…G・G・G・GRAIZ≫

Dグライズは最初に拳を一体のアンノウンに飛ばす。

「ライダーパンチ!」

吹っ飛ばされたアンノウンは粉々になった。

「お次だ!ライダァーーキィーック!!」

追撃のライダーキックを何度も何度も空中反転によって連続で決めて行き、残りのアンノウン達は通常時間からすれば、五秒とたたずにアンノウン達がいきなり爆発したように見えた。

「ふ?、こんなものか」

ディロードに戻って、癖の肩回しをする。

「お前は誰だ!」
「仮面ライダーディロード」
「仮面ライダー?……新たなる敵か!」

アナザーアギトがいきなり怒鳴り込んできた。
まあ、いきなり登場してよくもわからない力を使えば誰でも怪しむだろうが。

「……」
「答える気がないなら行くぞ!」

何故か沈黙するディロードにアナザーアギトは突っ込んでいく。

「この世界の奴はせっかちだな」

≪ATTACK RIDE…INVISIBLE≫

効果発動と同時に”ディロードインビジブル”で姿を透明にする。

「何!?」
「ちょっとは頭を冷やせ」
「うるさい!ならば姿を見せてお前が何者かを話せ!」
「……いいだろう」

といってディロードは姿を現す。



***

一応姿を現し、素性を簡潔に話した廻と信彦。

「にわかに信じ難いが……信じよう。俺は金上仙寺(かながみ せんじ)。アギトとしてアンノウンと戦っている」
「俺は最強最悪の仮面ライダー、ディロード。砕谷 廻」
「僕は秋月 信彦。仮面ライダーSHADOW RX」

ちなみに、兎にも角にもこの世界の住人たるライダーに会えたことでことの進展を心の中で望んでいた二人でした。



***

方や、流姫はと言うと。

「このクラスに新しい仲間となった、彩条流姫君だ。皆、仲良くな」
「「「「「は?い!」」」」」

とこのような感じで転校生として大学に来ていた。
先生が教室から居なくなると、転校生には必ずは来るであろう質問ラッシュだった。

質問そのものは大したものではなかったので流姫は適当にはぐらかしたり曖昧な答えでその場をやり過ごした。

「ねえ、この大学で妙な噂のある人って知らないかな?」
「え?どうしてそんなことを?」

近くにいた女学生に聞いてみる。

「だって友達つくるなら面白い奴の方がいいでしょ♪」
「…そうね?、そういうなら神宮(かんのみや)君なんかが良いんじゃないかな?」
「神宮?」
「うん、神宮光介(かんのみや こうすけ)。何か昔から妙な力持ってるって噂だよ。クジとかも必ずってほど良い結果になるの引いてたり、箱の中にある物を100%の確率で見抜いてたり。もう超能力者だって入学当初は結構人気者だったけど」

神宮という生徒の大まかな情報を教えてもらった流姫はそこでさらに、

「それじゃ、その神宮君のいる教室ってどこ?」
「神宮君はこのクラスの生徒だけど」

それを聞いた時に流姫は一瞬顔をニヤリとさせた。

「でも、彼…ここのところ大学に顔見せることが少ないんだよね」
「え?」
「皆には言えない大事な用事っていってるけど…その用事ってのもわからないし…」
「そう…ありがとう。教えてくれて」
「どういたしまして」

流姫は教室から出ると軽く腕を組んで少し考えていた。



***

夕方、流姫はとある一軒家の前に立っていた。家の表札には”神宮”と書かれている。

「先生から聞いた住所通りね」

ピンポ?ン♪

呼び鈴を押した。

「……どなたですか?」

無愛想な感じの男がドアを開けた。

「アタシは今日、あなたのクラスに転校してきた彩条流姫。挨拶にちょっと…」
「そうか、じゃあ明日な」

と言って光介はドアを閉めた。
と思われたが、

――ガヂャン!!――

「な、何?いきなり?」

光介はドアを乱暴に開けて家から出てきた。

「お前、彩条っつったな。今すぐここから失せろ」
「…どういう意味かしら?」

流姫は高圧的な態度をとられたのが気に入らなかったので機嫌を悪くしながら問う。

「説明してる暇はない」
「アンノウン」

流姫の口にした単語を耳にした途端、光介は表情を強張らせる。

「お前、どこで奴らのことを…?」
「それよりも、お客さんみたいね。ユニークな」

そう言って流姫が指さした方向には、

『スゥゥゥ!!』

アンノウンが二体現れていた。

「お前は逃げろ。こいつらの相手は俺がやる」
「そんなの真平御免こうむるわね」

流姫はそう言ってディガイドライバーを取り出した。

「変身!」

≪KAMEN RIDE…DI‐GUIDE≫

ディガイドへの変身と姿を見た光介は驚く。

「そうか、ならば俺も遠慮無く殺るか。
化け物なんだから荒々しく戦ってやる!」

そう言った光介は両腕をクロスさせると、一度斜め上に開いた。すると、異形なベルト”コパーリンク”が鈍い光と共に現れる。
光介はベルトが現れたと同時に両腕を再びクロスさせこう言った。

「変身ッ!」

両腕を宣言と同時に開き、光介の肉体は急激に変化していく。
姿形はエクシードギルスに類似するものがあったが、一番の違いは体色が銅色、複眼は黄色、膝や肘から伸びる赤黒い刃などであった。

「あれがこの世界の仮面ライダー」

ディガイドは獣性感溢れる、完全なる不完全な狂戦士”仮面ライダーリュ?ド”に向かってそう呟いていた。




次回、仮面ライダーディロード

「強い…!」
「所詮俺は化け物だ」
「アギトであろうとなかろうと、俺は金上 仙寺として生きていくだけだ」
「これより、アンノウンを撃退する」
「まさか…G4!?」

”軍神G4”

全てを救い、全てを砕け!

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