今回は短めの番外編。
しかし、新たな仮面ライダーが登場します!

復讐鬼N/爪【ネイル】

あれから数日後、なのはとの話し合いの甲斐あってティアナの心に巣くっていた何かは消えたようで、訓練中は勿論のこと日常生活においても彼女はいつも通りに自分になって戻って絶好調の最中だ。

そして、訓練を終えた時にゼロが口にした一言からこの一件は始まった。

「良し!リインフォースよ、海にでも行くか?」

なんて言い出したのである。海に関する旅行パンフレットを片手に。
リインフォースはこれといって抵抗すること無く素直に其の意見に賛同した。
ただし、条件があった。その条件とは…。





*****

とある無人世界の海辺。

「海に来たのっていつぶりだろう?」
「子供のころに来て以来じゃなかな?」
「なにはともあれ、楽しい一日の始まりやで♪」

六課の隊長陣を一緒に連れてくることだった。
本来なら副隊長やフォワード陣も一緒に連れてきたところだったが、流石に六課を留守にするのは拙いので隊長陣の三人だけとなった。

「にしてもこんな楽しい休日過ごせるのも、リインフォースがゼロさんに頼んでくれたお陰や」

三人はそれぞれのパーソナルカラーと同じ色をしたビキニを着て海を楽しく満喫していた。

「かつての主人や友たちに休日を与えようとはな…」
「良いじゃないですか。…あの三人はただでさえ働き過ぎなんですから」

ゼロの言葉に対するリインフォースの意見も御尤もだった。

なにせあの三人は訓練の時やデスクワークの際、他の隊員たちより遥かに多い仕事量をこなしている。
十九歳という若さでそれだけのことを任されてるんだと言う表れでもあるのだが、それでもたまには休まないと過労で倒れかねないと危惧したからこそリインフォースはこのような進言をしたのだ。

「あの…それで、ゼロ。私は、どうですか…?///」

顔を赤らめながらセクシーな黒ビキニを着たリインフォースはゼロに尋ねる。

「まあ、悪くない。良い目の保養だ」

と、ゼロも満更でもなさ気に答えた。
そう答えられると、リインフォースは笑顔になってゼロの腕を引っ張り、一緒に泳ごう?と誘った。

「フン、助手の分際で主人を急かせるな」

とは言っていたものの、ゼロは薄らと笑っていた。

なお、ゼロが一旦リインフォースと離れてなのは達と一緒に泳いでたりしていると、
リインフォースは何故か不機嫌そうな顔をしていた。

(…何故でしょうか?ゼロが私以外の女性と親しそうにしていると…なんだかモヤモヤとした…嫌な気持ちにある。この気持ちは一体?)

察しの良い皆さまならもうわかるだろう。
現在は無自覚でも、リインフォースはゼロに惚れていると言うことに。
そして彼女自身が今感じている気持とは嫉妬であることに、いずれは彼女自身が気付くであろう。





*****

数十分後、泳ぎ疲れたなのは・フェイト・はやて・リインフォースは浜辺で日光浴をしていた。

「にゃはは♪こんなに泳いだの久しぶり♪」
「でも、ちょっと泳ぎ方の細かいとこ忘れちゃってたね?」
「仕方あらへんよ。わたしら滅多に水の中に何か入らへんから」

他愛もなく話をする三人を見て、リインフォースは優しく微笑む。

「おいおい、随分とたるんでいるな」

そこへゼロが余裕の表情で登場してくる。

「なんや〜?ゼロさん表情はそんなんでも、内側は疲れてるんとちゃうん?」
「そんなわけあるか。魔界でも地上同様、運動というものは奨励されていたからな」
「ちなみに…どんな運動が?」

フェイトが聞くと、

「魔界ラジオ体操は第一から第六億まである長丁場。それを朝の五分で終わらせる為、皆光速レべルになるまで自然と体を鍛えられるぞ♪」
「「「「我々人間には到底及ばない領域なんですけど!!」」」」

ゼロの魔界トークに四人はツッコム。

(ハッ!好い気になってられるのも今のうちだぜ)

そんな五人を狙う怪しき影が…どこかで息を潜めていた。





*****

夕方となり、私服に着替えた五人は帰る準備をしていた…が。

『お命、頂戴するぞ!!』
「「「「「!!?」」」」」

突然聞こえてきた濁った声に五人は降りかると、そこには此方に向かって鮫の記憶を宿した怪人・シャーク・ドーパントが二本の鋸状の太刀を両手に向かってくる。

「…折角のリゾート気分を台無しにしおって。お仕置きだな」

ゼロは殺る気満々でそう言った。
しかしながら、隊長陣の三人は休日のこんな時に戦闘がおこるなどとは夢にも思わなかったため、デバイスを置いてきてしまったのだ。結果…。

「「変身!」」

【MAGICAL/LEADER】

戦う術を持つのはイーヴィルだけだった。

『悪いがあんたに用事はない。俺はそこの御三方にお目見えしに来たのよ!』

なのは達を指さしながらそう宣言する。

「い、一体どうして?」
『それが俺のところに来た依頼だからに決まってんじゃん』
『所謂、殺し屋という奴ですか?』

なのはの質問にシャークが答えると、そのままイーヴィルを無視して三人に襲いかかろうとするも…。

「私を無視するな」

イーヴィルが立ち塞がる。

『鬱陶しいな』

そう言うとシャークは海中に飛び込んだ。

「逃げられたか…。イビルホイーラーを持ってくるんだったな」

イーヴィルはサブマリンモードを使えば追いつけたかもしれないシャークを逃がしてしまったことに悔しそうな声を出す。

『誰が逃げたって?』
「なに…?」

――バシャッ!――

逃げたと思われたシャークはイーヴィルの後方にいるなのは達の真横に来ていた。

『そんじゃ、これで依頼達成』

シャークは三人に達を振り下ろそうとした瞬間、

【THUNDER】

――バリバリバリバリ!ビリビリビリビリ!――

『うあぁぁぁぁぁぁ!!』

突然聞こえてきたガイアウィスパーと共にシャークを襲った雷撃。
三人はその光景に、誰がその攻撃を放ったのかを確認すべく周りをキョロキョロと見渡すが、

「今が好機!」

【TRICK】
【BLASTER】
【TRICK/BLASTER】

イーヴィルは右半身が灰色、左半身が緑色の”トリックブラスター”にハーフチェンジ。

――ズバン!ズバン!ズバン!――

ブラスターキャノンから発射された一発のエネルギー弾は目標に到達する直前に質量を損なわずに十発分のエネルギー弾へと分裂すると同時にホーミング弾のように複雑な動きで、シャークの身体中に攻撃を浴びせる。

『な、なんだ今の銃撃は!?』

シャークは予測不能な攻撃をされたことに混乱する。
イーヴィルはそんなシャークの混乱をさらなる好機としてメモリをマキシマムスロットにセット。

【EVIL/BLASTER・MAXIMUM DRIVE】

「『ブラスターガンショット…!!』」

両手でブラスターマグナムを構えると、引き金を引いた。

――ズガァーーーーー!!――

発射された大量のエネルギー弾は分裂を重ねてシャークへと一直線に向かっていく。
そして、全弾命中によって起こった爆煙が晴れると、そこにはメモリブレイクによってシャークメモリを失った殺し屋の姿があった。

「クソッ!覚えて居やがれ!!」

捨て台詞を吐いて逃げ去ろうとする殺し屋。

――バッ!!――

「「「「『…?』」」」」
「だ、誰だテメー?」

殺し屋の目の前に現れたのはアルファベットのNを模ったメモリドライバーを身に着け、爬虫類をモチーフにした茶色の装甲に黄色い複眼。さらには左腕に二本の刀を連結させて組み上げた鉤爪を装備した戦士の姿だった。

「さあ、断罪の時間だ」

謎の戦士は決め台詞を言うと、右腕に装着された鉤爪を殺し屋に振り下ろし…。

――ザシュッ!!――
――ブシューーーーー!!――

殺し屋の身体を切り裂いた。
死体からは夥しい量の血液が溢れ出し、謎の戦士の装甲を赤黒く染め上げる。
なぞの戦士は殺し屋の死がもうや決定しているのにもかかわらず、まだ生きている内に更なる攻撃を重ねて………その肉体を…人間としての原形すらとどめていない、ただの肉塊へ変えた。

その余りに残酷でエグい場面を見た、なのは・フェイト・はやての三人は思わず目を瞑ってしまう。

「貴様、何者だ?」
「………ネイル」

イーヴィルの質問に謎の戦士は自らの名を明かす。

「仮面ライダーネイル」

謎の戦士・仮面ライダーネイルは一同に背を向けると、足元に漆黒の魔法陣を展開してその場から消え去ってしまう。

『…ネイル…』
「どうかしたか?」
『いえ、あの者からは…何か他人とは思えないものを感じて…』

リインフォースの意思はそう答えた。

こうして、隊長陣三人に海水浴を堪能して貰おうと用意した休息の締めくくりは、新たな戦士の登場によって血生臭いものとなった。





*****

後に、なのは・フェイト・はやてが恐怖によって動けなくなってしまったことにより機動六課の副隊長の二人に迎えに来てもらった。そして二人は殺し屋の無残な死体と言う名の肉塊を見て言葉を失った。

「酷い…」
「ここまでやるのかよ…」

シグナムとヴィータはそういって嫌悪感をあらわにする。

そして、この惨劇を作り上げた仮面ライダーネイルは機動六課に置いて第一級捜索人物に認定され、発見次第確保して事情聴取を取る体制を取ることとなった。





*****

とある別に無人世界。
仮面ライダーネイルは…。

「我は許さない。ガイアメモリを…そして、それを用いて悪事なすもの全てが…”夜天を闇に染めた奴”の恩恵を受ける我の敵だ…!!」

地の底から響くような重低音ボイス。
爪の名を冠する一人の仮面ライダーは今この時…刻々と復讐の刃を研いでいた。



ガイアメモリ解説

トリックメモリ
「奇術の記憶」が刻み込まれた灰色のガイアメモリ。
Wのルナメモリと似通った点のあるメモリで、アメイジング属性を加える機能があるほか、分身能力をも与える。その特性上、アビリティメモリの中で応用の利く使い方ができる。

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