仇はV!/刃【ふくしゅう】


ディアンの正体が闇の書・防衛プログラム。
その事実を突き付けられたヴィータは、

「ふざけんのもいい加減にしやがれ!!」

と激怒する。

「信じられないのも無理はない。なにしろ我自身、どうやって人型で蘇ったのかすらわからんからな」

悟ったかのような表情でディアンは言った。

「それにしてもディアン。何故貴様は復讐などという下らぬことをしている?」
「下らぬ?」

その瞬間、ディアンの雰囲気が変わった。

「お前に何がわかる!?我の心の内が読めるとでも言うのか!?」

豹変したディアンはゼロの胸倉を掴んで叫ぶ。

「落ち着け!…話してくれ、貴様の身に何が起こったのかを」
「私からも頼む」

ゼロが説明を頼むと、リインフォースも魔法陣と共に現れた。





*****

一方、高層の廃ビルの屋上に二人の女性が居た。
一人は眼鏡をかけ、茶髪を両サイドで結い、白いローブを纏っている。
もう一人は長い髪をリボンで結んでマントを身に着け、さらに自身以上に大きい長い筒のようなものに布をかぶせている。

「ディエチちゃん、ちゃんと見えてる?」
「あぁ、遮蔽物もないし、空気も澄んでる。…よく見えるよ」

ディエチは左目に搭載されている望遠レンズの機能で遠くにある…レリックを持った少女の乗ったヘリを捕捉した。

「でもいいのかいクアットロ、撃っちゃって?ケースは残せるだろうけど、マテリアルのほうは破壊しちゃうことになる」
「ドクターとウーノ姉さま曰く、あのマテリアルが当たりなら、本当に”聖王の器”なら、砲撃くらいじゃ死なないから大丈夫、だそうよ」

ディエチはそれを聞くと、手に持っていた物と、自分にかけていた布を投げ捨てた。
マントのしたには身体にフィットした青いボディスーツ。それを身につけているのはクアットロも同じだが。そして長い筒の正体は大きな狙撃砲。

するとクアットロのところにウーノからモニター通信が来た。

「クアットロ。ルーテシアお嬢様とアギト様が捕まったわ」
「あ〜、そういえば例のチビ騎士に捕まってましたね〜」

クアットロはノリの軽い声で返事する。

「今はセインが様子を見ているけど…」
「フォローします?」
「お願い」

ウーノが通信を切ると、クアットロは念話で…。

(セインちゃん)
(あいよ〜クア姉)

呼び掛けられたセインは自身の能力で地面から人差し指を立てた右手だけを出していた。

(こっちから指示を出すわ。お姉さまの言う通りに動いてね?)
(ん〜了解)

返事をしたセインは完全に地面の中に潜った。





*****

「蘇ったものの、我は人間の常識など殆ど知らず、ただただ行く当てもなく彷徨う日々を送っていた。だがそんなある日、とある家族が見ず知らずの我を…家族の一員として迎え入れてくれた。我は其の家族の人間としての暖かさが嬉しかった」

幸せそうに語るディアン。しかし、

「だが去年、我がその家族の一員となった記念日に!」

ディアンの記憶のなかには、家の中が血で赤く染め上げられ、瀕死の重傷を負った家族の父と母、兄弟がいた。

――お、おじさん!一体何があったんだ!?――
――でぃ、ディアン…!――
――ど、どうしたんだ?――

凄惨極まる光景に目を白黒させるディアンに一家の家主がディアンにかすれるような声を出した。

――怪人…Vのガイアメモリとベルトで変身した、怪人が…――
――何なんだそれは?おじさん!――

ディアンが家主に触れた時、彼を含めた家族全員はもう既に息絶えていた。

「それが全ての始まりだった!!」

壁を思い切り素手で殴るディアン。

「…そんな貴様が何故、ネイルに変身していた?」
「その時、彼女が現れた…!」

ディアンが家族を失って間もないころ、彼の目の前にはある一人女性がやってきた。

――あんたは…?――
――私の名は”プレシア”…貴方と同じ、家族を失う悲しみを味わったもの。…貴方には倒したい者が居るのでしょう?力を授けるわ――

プレシアの指さした方向には、ネイルの変身ツール一式が置いてあった。

(私が…貴方の願いを叶えましょう。
それから私の生き別れの愛娘・フェイトに運よく会えたらこう伝えて頂戴。…”辛い思いを一杯させてごめんなさい。せめて、貴女の幸せを祈っているわ”…とね)

プレシアと言う名を聞くと、皆はこれまた信じられないと言った表情をした。

「その女が何者かは知らん。だが構わない、我から幸せを摘み取った仇に復讐できるのなら!!」
「それが貴様の…」
「ビギンズナイト…」

ディアンの背負うものの重さ。それは想像より重いものだった。

「我はこの街を愛している。だが奴の穢れた力の恩恵を得た者達によってこの街まで穢れようとしている!そんなことが許されてなるものか!」

激情するディアンにゼロは、

「一つ聞くが、その言いぶりだと仇を討つべき相手のことは分かっているようだな?」
「…察しが良いな。そう、我の幸せを摘み取ったのは、夜天の書を闇の書に改竄した男……ヘル!!」





*****

その場の皆がディアンの話に聞きいっているとき、

(はぁ〜い、ルーお嬢様♪)
(クアットロ)

クアットロからの念話を受けたルーテシア。

(なにやらピンチの様で…。御邪魔でなければクアットロがお手伝いいたします♪)
(…お願い)

其の時、クアットロは腹黒く口元に笑みを浮かべる。

(はい〜。ではお嬢様?クアットロの言う通りの言葉を近くにいる赤い騎士に♪)





*****

同時刻、ロングアーチでは…。

「市街地に、エネルギー反応。…大きい!」
「そんな、まさか!?」

管制室のモニターに映し出されていたエネルギーの大きさは異常だった。

「砲撃のチャージ確認。物理破壊型、推定Sランク!」





*****

「インヒューレントスキル。ヘビィバレル、発動」

ディエチが刻々と砲撃準備を進める中、

「逮捕は良いけど…」





*****

「逮捕は、良いけど…」

ディアンの話があらかた済んだ頃にクアットロの言葉をルーテシアはそのまま複写(トレース)する。

「…大事なヘリは…放っておいて良いの?…」

ルーテシアの言葉に皆はハッとなる。

――パチッ!――

其の時、ゼロは指を鳴らしてこう言った。

「小娘、向こうの腹黒眼鏡とリボンにこう伝えろ…。面白いものを拝ませてやるとな!」

ゼロの言葉をルーテシアを通して聞いたクアットロは、

「そんな!こんな遠距離から、望遠も無しに捕捉できる訳…」

できる。何しろゼロは人間の常識を超えた魔人。
例え数キロメートル先にあるモノの姿や物音すら拾うことができる。

――ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!――

「え?地震?」
「違うな。…私の”魔帝7ッ兵器”だ」

ティアナの言葉に対してゼロは魔界の奥義の発動を物語る。
街のアスファルトの地面には幾つもの地割れが発生していた。

「ちょっと、いくらなんでもこれはやり過ぎじゃ!?」
「確かに、魔界王の護身兵器を発動させるほどではないが…」
「魔界王の護身兵器!?」

一方ディエチは砲撃のカウントを終えて、

「発射!」

――ズガアァーーーーーー!!――

特大サイズの砲撃がヘリに直撃するかと思われたが、

「魔帝7ッ兵器…朽ちる世界樹<イビルツリー>」

アスファルトをも突き破って来た巨大な樹木は、ヘビィバレルの砲撃にもビクともせずにヘリを守った。

皆はイビルツリーを見て、大いに驚く。

「ゼロさん…貴方本当に何者なんですか?」
「あんな凄いもの召喚しちゃうなんて…」

エリオとキャロはそう言ってイビルツリーに視線を釘付けにする。

「エリオ君!足元に何か!」

突然ギンガがエリオに呼びかけると、

コンクリートの中から水色の髪に青いボディスーツを着た女性がエリオからケースを奪った。

「頂き♪」

そして再び潜った、

(ルーお嬢様、ナンバーズ6番セインです。私のIS、ディープダイバーでお助けします。フィールドとバリアをオフにして、じっとしててくださいね?)

ルーテシアが指示に従うと、セインは即座にディープダイバーで表に出てくると同時にルーテシアを抱え、再び潜って橋の下へ。

「アギトは…?」
「あ〜、アギトさんなら、さっきの一瞬で離脱しました。流石、良い判断です」

そういうとセインはルーテシアごと、地中に潜って行った。

一方、

「あらー、なんなのかしら?あのデッカイ樹?」
「こっちもフルパワーじゃないとはいえ、あの砲撃喰らっても平気だなんて…マジで?」

クアットロとディエチがそんな事言ってると、上空から金色の魔力弾が無数二人に襲いかかり、二人はそれを避けて別の建物の屋上に飛び移る。

「見つけた」
「こっちも!?」
「速い…!」

フェイトが登場の早さに驚きながらも、二人は逃げる。

「止まりなさい!市街地での危険魔法使用、及び殺人未遂の現行犯で、逮捕します!」
「今日は遠慮しときますーーー!」

フェイトの通告にクアットロは抵抗の意思と受け取られる言葉を口にする。

「IS発動、シルバーカーテン」

クアットロのISによって二人の姿が見えなくなると、

「はやて!!」
「位置確認。詠唱完了。発動まであと四秒!」
「了解!」

クアットロの行動を予想していたかのように、はやては広域魔法をスタンバイしていた。

「離れた、なんで?」
「まさか?」

IS解除によって姿を現した二人が見たのは、

「広域、空間攻撃!」
「嘘ー!?」

はやての魔法によって発生した黒い塊を見た二人は驚く。

「遠き地にて、闇に沈め。デアボリック・エミッション!!」

魔法の発動によって、クアットロとディエチは必死になって逃げる。

『投降の意思なし…逃走の危険性ありと認定』

バルディッシュの言葉の直後、フェイトとなのははクアットロとディエチを挟み込むようにして砲撃魔法を準備する。

『砲撃で昏倒させて捕えます』

絶体絶命のナンバーズの二人に、

「ディエチ、クアットロ。じっとしてろ!」
「「…?」」
「IS発動、ライドインパルス!」

助け船がやってきた。

「トライデント・スマッシャァー!!」

バルディッシュにカートリッジをロードしてフェイトは三叉にわたる雷の砲撃、

「エクセリオン・バスタァーーー!!」

同じようにレイジングハートにカートリッジをロードさせ、なのはお得意の砲撃をお見舞いする。

双方からの砲撃魔法は互いにぶつかって壮絶な爆発を起こした。
だが、なのはとフェイトは直前に避けられたことを悟り、ロングアーチに追跡を頼む。





*****

「ふ〜、トーレ姉様〜、助かりました」
「感謝…」

二人を助けたのはナンバーズの3番ことトーレ。先程の高速移動を可能にするISによってクアットロとディエチを助けたようだ。

「ぼーっとするな。さっさと立て。バカ者どもめ。監視目的だったが、来ていて良かった。…セインはもう、お嬢とケースの確保を完遂したそうだ、合流して戻るぞ」


トーレはそう言ったあと、少し難しい表情でこうつぶやく。

「それにしても、無限ゼロ。噂以上の実力だ。ドクターやあいつの障害になることは間違いないな」





*****

其のころスカリエッティのアジトでは。

「素晴らしい、なんとも素晴らしい力だ。無限ゼロ君。君とは敵でなければ、気の合う良き友人になれたかもしれないな…残念だよ」

スカリエッティはモニターに映ったゼロの魔界能力や魔帝兵器を見て凶喜の笑顔になった。
そこへ…。

「ほほ〜、君が気が合うなんて発言するとは、やはりあの御方は相当見込みがありそうだ」

現れたのは布製の黒いシャツにズボン。そして両手や顔を包帯で巻いた、奇妙な男だった。
其の腰には、メモリドライバーのプロトタイプ…ガイアドライバーが装着されている。

「あ〜君か。そうとも、彼は強い。いっその事解剖して身体の構造を隅々まで調べたい」

とうとうマッドなことを言い出す。

「君も楽しみにしているといいよ”ヘル”…。きっと大きくて愉快な宴となるだろう!」
「フフフ♪言われずとも、ボクもその日を心待ちにしているよ♪」

ヘルは懐からガイアメモリを取り出して起動させた。

【VANITY】





*****

その後、フォワード一同のひと工夫でレリックは敵側に渡らなかったことが分かり、任務は事実上完遂という形になった。ディアンも一応は機動六課に連行された。

少女は聖王教会の病院にひとまず搬送されて眠っている。

その少女のもとにゼロとリインフォースは立っていた。

「この娘が、聖王…か」
「…とりあえず引き取り先は難儀しそうですね」

二人は夕日の黄昏時、少女の不安げな寝顔を見て、そう呟いた。

運命の歯車は、幾つもの欲望によって、もう回り始めている。
誰にも気付かれることもなく、誰にもわからぬように、ゆっくりと回り始めていた。
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次回、仮面ライダーイーヴィル

Cの預言書/未【みらい】

「この『欲望』はもう、私の手中にある…」


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