Dとの連携/絆【きずな】


聖王教会におけるカリムの預言書の一件から数日後、
ドーパント…次元犯罪者とはいえ法で裁くべき人間を私怨で惨殺してきた仮面ライダーネイル=ディアンは、機動六課のある一室に半ば幽閉されていた。

流石に一度は第一級捜索人物に指定された男を野放しにするわけにはいかないというのが現状だ。
闇の書事件に関わった者、特にフェイトとはやてとヴォルケンリッターは彼の素性とヘルに家族を殺された悲劇、そして死んだと思われていたプレシアの存在。

どれもこれも機動六課からすれば見過ごすことなど、決してあってはならないことだ。

事情聴取の際、プレシアの言伝を聞いたフェイトが

「母さん…、母さん……母さん」

とプレシアのことを想いながら涙を流した際、そのような場面に居合わせた経験の無いディアンはどうすればよいか分からずにパニくったのは別の話。

そして、はやてが担当した時は…。

「ごめんな…。本当に、ごめんな…」

十年も前のこととはいえ、自分達が防衛プログラムを破壊したことでディアンには希望を打ち砕かれた絶望を間接的に与えたという自責の念に涙を流し、これまたディアンはどうすればよいか分からなくなった。

しかし、暫らくして漸く話が纏まった際、
ディアンの身柄は機動六課で預かり、無闇矢鱈にドーパントを殺さないと約束させた。

だが、ディアン本人は「ヘルだけには必ず復讐を果たす。これは我の家族と、闇の書によって命を失った人々への償いだ。たとえ神であっても止められんぞ」と言って、ヘルに対する復讐を諦める説得は頑として聞かなかった。故に半ば幽閉される身の上になっていたのだ。

しかしながら、はやてはある時にディアンを仮初ながら自由の身にする方法を思いついた。

今回の話は、ディアン=仮面ライダーネイルに携わる物語である。





*****

「機動六課への民間協力者になれ?」
「そうや。…そのヘルって奴が極悪人っちゅうのはよ〜くわかった。せやから、ディアン独りだけじゃなくて、皆一緒に立ち向かおう?…都合に良いことかもしれんけど…」

取調室ではやてはディアンを自由の身にするための取引をしていた。
機動六課の民間協力者とすることで、仮初ながらもディアンを自由にする。
今のはやて達がディアンの為にできる手段はこれしかなかった。

「………わかった。嘗ての主のたっての頼み、聞き入れよう」

少々長い間の後、ディアンはその申し出を受け入れた。

「ホンマか!?せやったら、早速六課の皆にディアンのこと紹介しないと!」

返事を聞いた途端、はやては水を得た魚のようにテンションを上げた。
こうして、ディアンは二人目の仮面ライダーとして機動六課の一員となった。






******

数日後、その日ははやてとティアナは本局に向かい・副隊長はオフシフト・ライトニング分隊はルーテシアやナンバーズ達と戦った場所での現場調査。よって今日の機動六課にいる有効戦力はスバルとなのは、仮面ライダーはイーヴィルとネイル、この四人となっていた。まあ、この布陣なら大抵のことには確実に対応出来るというのは誰の目から見ても明白だったが。

「で、何故こうなる?」
「文句なら、あの狸娘に言うことだな」

イーヴィルとネイルの変身者は訓練場に居た。
理由は勿論、模擬戦である。

「折角仲間になったんや。同じカメンライダー同士、お互いの力見とくのもええと思わへん?」

というはやての余計な御世話から始まったのだが…。

「「「変身ッ!」」」

【MAGICAL/LEADER】
【NAIL】

二組が変身すると、構えをとった。

「オラアァァァ!!」

先に動いたのはネイル。
ネイルカリバーを振り回して一気にイーヴィルに迫っていく。

【TRICK】
【TRICK/LEADER】

イーヴィルは余裕をもってトリックリーダーにハーフチェンジ。
その勢いのまま本体含め三人に分身すると、その内二体が腕を伸ばしてネイルの両腕と両脚を捕えた。

「なに!?この、放せ!」

そう叫べど、イーヴィルが手を放すわけがない。
何故なら(ゼロ)は………。

「クッハッハハハハハハ♪」
『ごめんなさい、私には止められません』

――バシン!バシン!バシン!バシン!!――

「痛ッ!っていうか止めろ!その姑息なまでに細々とした攻撃!」

だってゼロはドS。
手を鞭のようにしてネイルの身体を何度も引っぱたいていた。

「ウーッジ虫♪ウッジ虫♪ ウーッジ虫♪ウッジ虫♪ ウーッジ虫♪ウッジ虫♪」

しかも言葉責めを兼ねた鼻歌を歌いながらで。
こうして模擬戦と言う名の嫌がらせオンパレードは、姑息かつ地味に責めていったイーヴィルの勝利に終わった。模擬戦終了後のディアンは肉体的・精神的に疲労困憊の状態となり、それ以降はゼロに突っ掛かった発言や行動を取らなくなったとか…。

「はやて………恨むぞ」





*****

ランチタイムを終えて食堂を出たディアンは、バッタリとゼロと出くわした。

「お?昼飯を食っていたのか…」
「あぁ」

ゼロはこれと言って普通の雰囲気だった。

「魔界では昼飯(ランチ)を喰うのすら一働きだったな」
「そりゃあ、飯をつくるんだからな…」

ディアンがそう言うとゼロは…。

「いんや、そうではない。…魔界の太陽は明るいところが大嫌いでな、激怒でもせん限り輝やくことはないのだ。故に光が欲しくなった時は皆で寄って集って血祭りにあげたものだ♪」

「リンチよって始まるランチ!!?」
「いや〜、私が趣味の一環でそれに加わってとうとう記念すべき一万回目。太陽の泣きっ面と来たら……ククク!」

ドSな表情で笑いを堪えるゼロ。

(魔人ってのはサディストしかいないのか…?)






*****

昼過ぎ。

「あ〜疲れた」

ゼロのサディスト的引っ掻き回しでいい加減辛くなってきたディアンは自室に戻ろうとした。

「あの、ディアン…」
「…祝福の風…」

リインフォースに呼び止められたディアンは彼女と一緒に六課の休憩室に居た。

「すいません。私の主人が…」
「別に構わん。あいつの性格は今日一日で大体わかった。…そして生涯直ることもないであろうと言うことにもな…」

悟りを開いたかのように遠くを見つめるディアン。
死人のように乾いたその眼からは何も窺い知ることは出来ない。

すると、リインフォースは突然にもディアンに対して深々と頭を下げてきた。
眼の端には薄っすらと涙を浮かべている。

「すいません。ずっと、何百年も同じ場所に居て…ずっと一緒に主と共にいた筈なのに気付けなくて…。それどころか私達はかつての貴方を…「もう良い…、もう良いんだ」…ディアン…」

自分たちとはある意味同志とも言えたディアンを十年前、完全なる厄介者として完膚なきまでに叩きのめした事実。そしてディアンが人型になってからの凄惨なる悲劇。
それらは決して覆らない過去。はやてが謝ったように、リインフォースも涙しながら謝った。

祝福の風の名に恥じることの無い心優しさを秘めた彼女は何者よりも、人々の幸せを祈ることには真摯である。故にこその謝罪と涙だった。

「我は、お前達やはやてを恨んでなどいない。むしろ感謝しているんだ。我はあの日を境に闇の書からの呪縛から解き放たれたんだ。…片時と言えども、幸せな時間を過ごすこともできた。それを得られたのだから、十年前の総攻撃は怪我の功名だと思っている」

本当に邪気の無い笑顔でディアンは本音を語った。

「…それに我は勿論、死んで行ったものが恨むべきなのはヘルだ!奴のせいで夜天は闇へと汚され、長き時の間に多くの命が潰えて逝った。さらに奴はそれだけじゃなく、我の家族を殺し、この街の人々までもを犠牲にしている!例え神が許そうとも、奴だけは人として許してはならんのだ!!」

いつもと違った気迫、ディアンの中に秘められた優しさを垣間見たリインフォースは心の内のどこかが暖かくなあるのを感じた。

「リインフォースよ。お前達や機動六課にはこれから随分と迷惑をかけるやもしれん。だが、我の一生に一度の頼みを聞いてほしいのだ」
「…皆分かってますよ、ディアン。貴方の悲しみも怒りも、決意も全て。…だからこそ一緒に戦うんです。…はやてもそう言っていたじゃないですか?」

優しい微笑みをしてリインフォースはそう言った。

(フッ、美しき絆…か)

そんな絆深まる光景を、ゼロは壁を床のようにして立ちながら見ていた。





******

ディアンとの話が済むと、日はすっかり暮れて夜になっていた。

「パパと…ママ?」
「そうですよ。私とゼロが、一時的かもしれませんが、ヴィヴィオの両親になるということになったんです」

自室でヴィヴィオにそう説明するリインフォース。隣にはゼロもいた。

「まあ、貴様に色々と教えておきたいこともあるしな」
「言っておきますけどサディスティック関係なことは一切ダメですからね…!」

断言されたゼロは陰で「チッ!」と舌打ちをしたとか。

「ゼロパパとリインフォースママ?」
「あぁ」
「えぇ」

ヴィヴィオにパパとママと呼ばれると二人は満更でもなさそうにヴィヴィオの手をとった。

「パパ、ママ」
「はい、ヴィヴィオ」
「呼んだか、ヴィヴィオ?」

呼び掛けると、ゼロとリインフォースが笑いながら反応を返したのが嬉しかった様で、ヴィヴィオも自然に明るい笑顔を見せていた。





*****

「それにしても、ゼロさんとリインフォースさんがパパとママって…」
「ヴィヴィオ、物凄い無敵な感じ…」
「まあ、確かに魔人(ゼロ)さんがパパっていうのが一番大きいね…」

食堂で夕食を頂いているスバル・エリオ・キャロ。

「まあ、でもこれだけは言えるよ」

次の瞬間、三人の台詞はハモった。

「「「ヴィヴィオが…Sになりませんように…」」」

ドSなゼロを親に持つことで影響を受けるかもしれない。
そんな不安感が生み出したハモりだった。


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次回、仮面ライダーイーヴィル

Eの娘はヴィヴィオ/姉【ギンガ】

「この『欲望』はもう、私の手中にある…」


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