最後のV/次【つぎ】


聖王のゆりかごから脱出した機動六課メンバー。

無人となったゆりかごが宇宙空間に出てくるのを先回りしてスタンバイする本局の主力艦隊。
それらが主砲から一斉にゆりかごへ砲撃を浴びせた。



しかし



『無駄だよ』

突然ミッドの空や艦隊の乗員にも聞こえてきたバニティーの声。

艦隊の砲撃によって発生した眩い光。
それが晴れた時、ゆりかごは無事だった。

「なんだこれは!?」

クロノはどう考えてもあり得ない光景に叫ぶ。

『ボクの能力は、簡単に言うと無機物にボクが理想とする特性を追加させる。今のところはゆりかごに”絶対防御と自立稼働の理想”を描いたんだ』

バニティーに秘められた超絶的能力。

『…まあ、兎に角。もうゆりかごに何しようが意味無いから。もう直ぐ軌道ポイントにつくんで、あとは自動的にミッドチルダを適当に攻撃させてもらうよ』

尚、この最後の台詞はミッド地上の一般人全員にも聞こえる音量だった。
当然大混乱は必至。

「もう終わりだぁー!!」
「せめて!せめて死ぬ時は家族と一緒にー!!」
「助けてくれー!!」
「管理局ーーー!!」

叫び散らす人々。

バニティーはゆりかごのコンピューターを使ってミッド中の公共テレビに自分自身の姿を映し出す。

『ゼロ……仮面ライダーイーヴィルとネウロ様。見てますよね?あんたらのいつかは食糧になる連中見殺しにしたくないなら、このボクを倒すしかありませんよ…!場所は管理外世界の53番目』

それだけ言ってバニティーは画面から消えた。

「我が輩等に喧嘩を売るとはいい度胸だ」
「まったくだ。ちょいときついお灸をすえてやるとしよう」

バニティーの宣戦布告に、ゼロとネウロは笑っているような怒っているような表情である。





*****

アースラ会議室。
そこに勢揃いした機動六課メンバー。
モニターにはヘルが指定した世界の詳細が映っている。

管理外世界53番、名称は”シイル”。
数千年前には人類を含む様々な生物が暮らしていた緑豊かな世界であったが、千年前に文明が突如滅んでしまい、現在では当時の名残である古代遺跡と、森林地帯に生息する巨大で凶暴な生物の棲む無人世界と化している。

ただしヘルが決戦の場に選んだ世界だ。確実に何かあるのは明白である。

最初はメンバーの殆どがそこへ向かうことに反対した。

「奴の策略に乗る必要はない。もう一度ゆりかごに乗り込んで、メインシステムそのものを直に壊せばいい」
「そうだよ。あいつの手の平で踊る必要なんかない」

ディアンとフェイトは口を揃えて言った。

「確かにテスタロッサ達の意見には、私も賛成だな」

シグナムも二人の意見に賛成する。

「でも、今あいつがどこにいるのかがハッキリしているんだから、叩くならいまがチャンスなんじゃねえか?」

とヴィータは反論する。

「そうだね。それにゆりかご内部の機械にだって絶対防御の理想っていうのが働いてるかもしれないし…」

なのはもそう論ずる。

機動六課の面々の意見は半々状態となり、行動決定が未だ下されないその時…アースラの乗員から。

「大変です!ヴィヴィオちゃんが何者かに連れ攫われました!!」

それを聞いた皆の表情は戦々恐々としたものになった。
なにせやっとの思いで助け出したヴィヴィオが再び攫われたのだから。

其の時、会議室のモニターが開かれ…。

「ヘルッ!!」

ヘルの変身したバニティーが居たのは、なにやら古びた神殿の中のような場所。
画面の隅には鎖で縛られ、吊るし上げられているヴィヴィオの姿があった。

『ゼロ様、ネウロ様。用件は分かっているでしょうが、早く来ないとこの娘がどんな結末迎えようが、ボクは責任持てませんので。それとシイルにはお二人だけで来て下さいね。そうしなかったら、その時もこの娘の安否は保証しませんので』

それだけいうと、バニティーはモニター通信を切った。
これにより、六課メンバーはシイルに行くことが決定した。





*****

シイルの古代遺跡内部。

「………ン?」
「やっとお目覚めかい?」

ヴィヴィオが目を覚ますと、ヘルが現れる。

「また会ったね。レリック移植の時以来かな?」
「…なんで私を此処に?」
「なんでだって?…此処だよ、此処」

二人のいるこの神殿のような場所。長い階段を降りると、
周囲には古代文字が刻まれ、中央には奇妙な装飾、四隅には石像が置かれている巨大な石板が置かれている場所。

「この遺跡はね、古来より化物の力を抑え込むために造られたって言われているんだ。そればかりじゃない。特殊な磁場が魔人の肉体を蝕む。ここの遺跡のこと、ジェイルと協力してようやく突き止めたんだ。…だからこそ、ゼロ様との決着の場としてここを選んだんだ」

ヴィヴィオをそれを聞いてを眼を見開く。

「卑怯だって言いたいのなら好きなだけ言うと良いよ。
今は真正面から向かって行っても返り討ちだからね。頭脳(ここ)を使わないとさ。ボク、どうしても上級魔人(ゼロさま)を越えたいんだ」

少年のような口調で語るヘル。

「そんなことして何になるの?パパが何をしたって言うの?」
「何もしていないさ。単純なるボクのエゴイズムだよ。…それに急がなきゃいけないからね。この遺跡はね、今ボクらのいる本塔と周囲にある四つの支塔から成っていてね。当時の建築技術の未熟さからか、地盤が脆くなってしまっている」

そうヘルが説明している間にも遺跡内部には地響きの音が聞こえてくる。

「まあ昔ことだからどうでもいいんだけど。…兎に角君をここの連れてくれば、ゼロ様は否が応でも来ざるを得なくなる」

「でも、パパじゃなくて別の人が来るかもしれない」
「それじゃあ、困るんだよね。最後の最後に残ったシナリオとはいえ、ボクが遺跡のことを調査するのにどれだけ苦労したか…」

溜息混じりにヘルが喋る。

「そんな………貴方なんか、パパやネウロさんが来るまでもない!自分の身くらい、自分で守る!私があなたと闘って勝てたら、素直に自首して!」
「…君は自分が何言ってるのかが理解してるんだよね?だったらやめた方が得策だ。いくら聖王といえどもボクには勝てない。……にしても、遅いなぁ!」

ヘルは突然大声を上げる。

「わかるんだよね。ボクが使ってるこの身体が、もう直ぐ朽ちてしまうのが。…胸のあたりが妙に痛むんだ…。大体一年に一回は交換しないと…」
「一年?…それじゃ、ディアンさんの家族を皆殺しにしたっていうのは…」

ヴィヴィオがヘルの持つ能力の欠陥を知り、ディアンのビギンズナイトのことを口にする。

「あれは当時、手に入れたばかりだったバニティーメモリの性能を試したんだ。
兎に角、今日が終わるころにはボクは新しい身体に乗り移らないと死ぬ。その前にゼロ様を倒して、上級魔人の強靭な身体を貰いたいんだ。あの人の身体なら最低数十年・数百年は上手いことやってけるだろうし」

ゼロを殺そうとしていた真の目的を語る。

「でもパパ達は来ないかもしれない」

ヴィヴィオがそういうと、ヘルは軽くヴィヴィオをにらんだ。

「…あと一時間から二時間くらいしか待てないな。でなきゃ、君には新しい器になってもらうだけだ」

――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…ッ!!――

「またか地響きか…。この音だと地盤に致命的なダメージが行ったみたいだね。このままじゃ、ゼロ様達が来る前に生き埋めになるかも?フフフフフ♪」

まるで他人事のようにヘルは平然としている。





*****

「…やはりここでは、この程度の効果か」
「…もう少しかかるか…?」

襲い掛かる猛獣どもを蹴散らしてきた二人の魔人。
ゼロとネウロの視界には、五つの塔によって形成された魔法陣に似たモノが映っていた。

「…時間切れ、か」





*****

一方、ゼロ達とは別のルートでヴィヴィオの救出に向かっていたリインフォース達は遺跡内部に入り込み、通路でリインフォースがヴィヴィオの髪飾りを見つけた。
前線メンバー全員で来れば感づかれる恐れもあったので、ここに来ているのはディアンとリインフォースだけだった。

「ヴィヴィオ…」

そして皆は通路に光を射す大きな部屋…ヘルが決着の場に選んだ部屋に足を踏み入れる。

「ヴィヴィオ!?」

吊るし上げられているヴィヴィオを見つけた。

「大丈夫ヴィヴィオ?」
「いま下ろしてやるからな」

「ッ!!」

ヴィヴィオは鋭い目つきで目を開けた。

「「「ッッ!!?」」」

三人は一瞬何があったかわからなかった。
ヴィヴィオは自力で鎖を引きちぎり、三人を吹っ飛ばしたのだ。

「な〜んだあんたらか?…招待もしてないのに図々しいな〜」

”本当”のヴィヴィオならこんなことは言わない。
二人を蹴り飛ばすと、変身魔法を解除してヘルの姿に戻る。

「やっときてくれたね!」

ヘルが天井を見上げると、そこにはゼロとネウロが居た。

「パパ!ネウロさん!」

すると魔法で透明にされていたヴィヴィオの姿が見え、二人のことを叫ぶ。

「今年最後の晩餐に間にあったよ」
「己の器を越えたモノを飲み込もうとすれば、内側から腹が裂ける」
「覚悟しているんだろうな?私とネウロを敵に回して生きて帰れると思うな」

ゼロとネウロの尊大な物言いにもヘルは屈しない。

「あんたらの身体を得ることが、ボクの器を越えているとでも言いたいのですか?」
「それに人質とは情けない、挑戦してくるならもっと知的な作戦があるかと思ったがな」
「おまけに人質の人選を誤ったな。私をこれでもかと言うくらいコケにする人選を」

「時間が無いんだ。能書きなんてどうでもいい。…あんたらを殺そうと思えば思う程、ボクの何かは人間離れする一方だ」

【VANITY】

『つまり、ボクの器と力は底知れないってことさ!』

バニティーはエネルギーと魔力を複合させて造った刃で二人に襲いかかり、二人はそれをかわす。しかし、その動きは少々ぎこちないものがある。

『フフ、魔界に居たころとは違う。やっぱり魔力が上手く使えないんですね?』

バニティーが巨大石板の上に立つと、ネウロは手袋を外して魔人の手を剥き出しにした。

「リインフォース、行くぞ」
「…はい!」

【LEADER】
【MAGICAL】

「「変身!」」

【MAGICAL/LEADER】

ゼロもイーヴィルへと変身する。

『かかって来いよ!無限ゼロォー!脳噛ネウロォー!』

二人はジャンプして巨大石板へと降り立つ、そしてイーヴィルがアビリティメモリを取り変えようとマジカルメモリを外した瞬間、

――バゴッ!!――

二人は巨大石板に仕掛けられた罠を踏んでしまった。

――ザシューッ!!――

四隅に設置された石像の両手から二本ずつ、鋼鉄の槍が凄まじい勢いで発射された。

「「グハァッ!!」」
「パパァーーー!!」



次回、仮面ライダーイーヴィル

解き放たれたD/魂【こころ】

「この『欲望』はもう、私の手中にある…」


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