犯人はI/謎【ネウロ】


事件現場の部屋。

「ねえ、ネウロ。今回の『謎』って、今までのとは何か違う気がするんだけど…」
「ほう。少しは分かってきたなヤコ。確かに現場に残されているものは何もない。近くには窓ガラスを破る程の凶器を設置・発射できる環境もない」

弥子の発言にネウロは珍しく褒めた。

「しかし、唯一残ったものがある。…床に飛び散っているこの液体だ」
「その液体の正体は何なの?」
「今調べる。魔界777ッ能力…形無の水銀(イビルクレイム)

ネウロは懐から不気味な銀色の紙を取り出して、床の液体を染み込ませる。

「これって…」
「魔界の脂取り紙だ。染み込んだ液体の成分を分析して、その正体を突き止める」





*****

「唾液だと?」
「ああ。分析の結果、床に飛び散っていたのは古代生物の唾液だとわかった」

ゼロの部屋に来た探偵コンビ。

「…となると、ガイアメモリってことか」
「だからこそ、その線では専門家の貴様に頼んでいる」
「わかった。…リインフォース」
「はい。次元書庫にアクセスします」

リインフォースは精神を次元書庫に集中させる。

「リインフォースさん、何やってるの?」
「こいつにはな、この世の全てと言って良い程の情報が詰まった、超巨大データーベースが存在する。だから次元書庫と呼んでいるんだ」

『検策開始。キーワードは”古代生物”と”唾液”。ここまではいいですね』

次元書庫のデータはキーワード入力によって一気に減ったが、まだ本棚一つ分のデータが残っている。

『他にキーワードはありませんか?』
「そういえば、あの部屋からは大きな湖が見えたよね?」

弥子が何気なくそう言うと、

『そうか!弥子さん、貴女冴えてますよ!』
「え、本当?」
「…我が輩が留守にしていた三年間は、無駄ではなかったようだな」

ネウロは弥子がほんの少しずつながらも成長していることを感じる。

『残ったデータの内、陸上と空に生息する生物を取り除けば…』

次元書庫では、一冊の本のみが残った。

『イクチオサウルス。メモリのタイプはイクチオサウルスで確定。どうやら奴は唾液を弾丸にして、ライフルのようなスピードで狙撃したようですね』

トントン拍子にメモリを突き止める。

「ゼロ。良い相棒を持ったな」
「貴様もな、ネウロ」

魔人二人は互いの相棒の長所を見合った。

『続いて、被害者と我々を除いた宿泊客のことを調べます』

そうして、調べ上げられた情報を手にしたネウロは…。

「この『謎』はもう、我が輩の舌の上だ…」





*****

旅館のロビー。
六課メンバーや高町家、なのはらの友人を含めた者達以外にそこに呼ばれたのは、

被害者の秘書・水川辰雄(みずかわ たつお)
被害者の部下・林原茂(はやしばら しげる)

死亡推定時刻にアリバイの無いこの二人だった。

「では皆さん。これから先生が殺人犯を指さします」

ネウロがそう言った瞬間、弥子の手は糸で引っ張られているかのように持ち上げられる。

「犯人は…お前だ!」

指さしたのは水川だった。

表向きには代弁者役のネウロが言うには、
死亡推定時刻にアリバイが無いのは水川も林原も一緒だが、水川だけは死亡推定時刻の三十分前に一度旅館に外に出ているところを従業員が目撃しているらしい。
林原は夜間一度も部屋から出ていない上に、部屋の窓は一切開かない通気性の悪い部屋。これによって容疑は水川に絞られた。

「だ、だから何だと言うんですか?大体僕のような非力な男で窓をぶち破れるような凶器は現場には無かったんですよ!」

と、反論するも…。

「いいえ。凶器は固形物などでは必要ありません」

そしてネウロはイクチオサウルスメモリの特性を教えた。

「おまけに貴方は東さんから退職を迫られていたらしいですし、動機も十分です。彼が死ねば貴方が経営者になれるチャンスが巡って来る。それに特殊なケースを除いて、ガイアメモリで変身するには生体コネクタと言うものが必要なはず。今すぐにでも調べてもらえば…」

「…もういいですよ」
「み、水川さん。いくら退職を迫られてたからって…」

「だって、どうしても辞めたくなかったんだ。守ちゃんと僕が創った会社を」
「え?会社は東さんだけで創ったと…」
「そう言うことにする約束で、僕は彼の秘書になったんだ」

だんだんと水川は動機を明らかにする。

「それが少し経営が苦しくなったからって、いきなり辞めろと来たもんだ。ホント、怒りを通り越して呆れ果てたよ…」

「話は署で聞きます」
「一緒に来てもらうぞ」

石垣と等々力が水川の肩に触れると、

「もう僕は、あの時から自分を抑え込めない」

【ICHTHYOSAURUS】

メモリを起動させ、ガイアターミナルを手首のコネクタの挿入し、水川はイクチオサウルス・ドーパントに変貌する。

「ドーパント!」

ヴィヴィオが声を上げると、ライダー二組が前に出る。

「良し。とっとと倒して食事と行くか」
「頼むぞ。我が輩の食糧もかかっているからな」

ゼロはイーヴィルドライバーを装着し、リーダーメモリを構える。
リインフォースの手元にもダークネスメモリが呼び出される。

【LEADER】
【DARKNESS】

「「変身ッ!」」

【DARKNESS/LEADER】

変身する場面を直面した一般人同様の方々は驚く。

「オー!スッゲェー!写真撮って良いですか?」
『邪魔だ』

――バギッ!――

「ダァァァ!!」

マニア・野次馬根性丸出しにした石垣はイーヴィルの姿を写真に収めようとするも、イーヴィルの左腕にカメラを壊された。

「さあ、貴様の欲望を差し出せ…!」

イーヴィルがイクチオを指さしながら決め台詞を口にする。

――ガシャン!――

【TALON DARKNESS】

そして、キックとパンチでイクチオを屋外に吹っ飛ばした。

『ッガアァァァァァ!!』

イクチオは咆哮を上げると、巨大化した。その姿はまさしくイクチオサウルス。
イクチオは大ジャンプして湖の中に入ってしまう。

それを見たイーヴィルはターミナルアイを光らせてイビルホイーラーを呼んで跨る。

『ポチっとな』

【EVIL WHEELER・SUBMARINE MODE】

サブマリンモードに変形したマシンに跨って、湖の中に入って行った。

「逃がしませんよ」

リインフォースがそう言うと、右腕を動かしてスイッチを押し、水中型ホーミングミサイルを車体から発射する。

「まだまだ…!」

もう一度発射すると、さっきの倍の量のホーミングミサイルが撃ちだされ、イクチオは水中から姿を見せざるを得なくなった。

『メモリブレイクだ』

ゼロがそう言うと、イーヴィルは水中から一気に空中に躍り出る。

――ガシャン!ガシャン!ガシャン!――

【DARKNESS・MAXIMUM DRIVE】

「『ダークネスデストロイヤー!!』」

マシンから飛び降りると同時に必殺技(メモリブレイク)を発動し、イクチオは爆発した。
爆煙が晴れると、そこには水上にプカプカと浮かぶ水川の姿。

イーヴィルが陸に水川を運んで変身を解くと、ネウロがゼロの肉体を抱えて現れる。
そして…。

『『いただきます』』

――ガブッ!――
――ゴクッ!――

「ふ〜、薄味の『謎』だな」
「こっちの『欲望』も量が少ない」

「「究極はまだまだ遠い」」

魔人コンビは自らが求める食糧の奥深さをより一層知ったのだった。





*****

昼ごろ、

「朝は『謎』解きで朝風呂は無理でしたけど…」
「昼時にお風呂ってのもいいかもね」
「この展開…前にどっかで…」

と、弥子以外の女性陣が期待を胸に露天風呂に入ろうとすると、

『………』

湯船にはゼロらが逃がしてしまった魔界魚の一匹が…。

――ガララララ――

当然、女性陣はなにも見なかったとでも言いたげな表情で露天風呂をあとにした。弥子に至っては「またか…」といったことを呟いていた。
余談だが、魔界魚のせいで温泉目当てではなく、魔界魚の見たさに客足が微妙に増えたことを皆は知らない。以前ネウロが腐蒲温泉で話した魔界魚に比べると、気性は大人しめだったかららしい。





*****

帰り道。

「あ〜あ、ゼロさん達のせいで二度目の温泉に入れなかったよ」
「まあまあ、フェイト。これでも喰って元気出せよ」

落ち込むフェイトにディアンが魚の刺身を差し出す。

「ありがとう………この魚ってなに?」

食べたことの無い味故に質問する。

「あー、今日湯船につかってたら妙な魚が入って来たんで、変身してぶっ飛ばして「もういい!聞きたくないから!!」…そうか?案外美味いんだぞ」

刺身に使われたのはもう一匹の魔界魚の様である。

「あれ?想像より美味しい」

弥子もある程度は気に入ったようだ。
ゲテモノほど美味しいとはよく言ったものである。





*****

アルハザード。
通称”忘れられし都”と呼ばれ、古代ベルカの遥かに旧き時代にあったとされる次元世界。
時を操り、死者をも復活させる秘術があるとされたが、次元断層に沈み、今までは伝説上の存在=実在しないと通説されてきた。

そう、今までは…。

「もう直ぐ、もう直ぐ出来上がるわ。新たな仮面ライダー…」

暗闇に閉ざされた世界。
そこに一つの光があった。その光の中には一人の女性の姿。
プレシア・テスタロッサが居た。

「アリシア…ごめんなさい。私は貴女を蘇らせることもできず、幸せに眠らせることもできず、あの子…フェイトに辛い思いをさせてしまった。その罪は償わなければならない」

アルハザードの何処とも言えぬ場所で、魔法陣を展開してメモリドライバーとガイアメモリを製作している。其の最中に懺悔の言葉を呟いていた。

「ディアン…すまなかったわ。冥府で安らかに眠っていた貴方の魂を呼び戻し、無理矢理肉体を与えた果てに希望から絶望へと誘った」

プレシアは涙を流しながら、自分の犯してきた罪の重さを重々感じていく。

「記憶の魔導書。…私がアルハザードで掻き集めた全次元世界の過去・現在・未来を記した魔導書。…リインフォース、こんな罪人(つみびと)の償いの為に…巻き込んでごめんなさい…」

たった独り…。
たった独りで、罪を背負うその背中は、
とても儚く、とても悲しく、とても小さく、そして虚しげに見えた…。



次回、仮面ライダーイーヴィル

Gの住宅/室【すまい】

「この『欲望』はもう、私の手中にある…」



形無の水銀(イビルクレイム)
不気味な銀色をした魔界の脂取り紙。染み込んだ液体の成分を分析することで、染み込んだ液体の詳細を突き止める。染み込んだ液体の成分によって色が変化するというリトマス試験紙のような働きがある。

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