本当の始まり


そう、それは避けては通ることのできなかった運命の日。
全ての起源の代名詞・ビギンズナイト・・・・・・。

魔人(バケモノ)と相乗りする覚悟、あるか?」

そこで私とリインフォースは・・・。

【MAGICAL/LEADER】

初めて変身した。

『この姿は、この力は・・・?私達はどうなったというんだ?』
「・・・何も知らんようだな」

右複眼を点滅させるリインフォースに、ゼロは呆れ気味に呟く。

しかし、このイーヴィル誕生を探知していた者達がいた。





*****

「大変です!実験体が何者かとトリプルドライブギアを使用!現在変身状態にあります!」
「なに!?あのイーヴィルメモリと適合する者がいたのか!?」

違法研究所から約3km辺り離れた場所で、研究員達はイーヴィルの変身反応をキャッチして驚いた。

「如何なさいますか?」
「・・・捕らえろ!アレを易々と渡すわけにはいかん!なにより、イーヴィルメモリを扱える者がいたとしたら、一緒に捕らえて研究対象とする」

研究員チーフと思われる男はメガネの研究員に命じた。

「了解。早速”マスカレイド”を送り込みます」

眼鏡研究員はコンピューターのキーボードを叩いた。





*****

『一体お前は何者だ?我等は何故このような姿に?』
「質問は一つずつにしろ」

リインフォースは問うも、ゼロは冷えた相槌しか打たない。

――ビーーー!ビーーー!ビーーー!――

うるさく鳴る警報。

「どうやら、奴さんがお見えのようだな」
『?・・・・・・ッ』

ゼロの言っていることが理解できず、疑問を抱くリインフォースだが、すぐさま一瞬にして理解することができた。イーヴィルとなったことで大幅に向上した視力が、敵群の軍勢を見つけたのだから。

「成る程、一度捨てた物でも、使い物になると判明した途端に再び欲しくなったか」
『あの化け物は一体?』
「あれらはドーパント。貴様に宿りし力”次元書庫”の記憶を引き出したことで生産される物、”ガイアメモリ”によって人間が変貌を遂げた存在」

ゼロは無骨に答えた。

『私に宿った力で・・・だと?』

リインフォースは言葉を失った。

「・・・丁度良い。このイーヴィルの力、存分に振るわせて貰おう!」

ゼロはそう告げ、イーヴィルは颯爽と”仮面舞踏会の記憶”とを宿した戦闘員的ドーパントこと、マスカレイド・ドーパント達であった。

その数は約百体余り。

『・・・・・・本当に勝てるのか?』
「勝てるか?だと?・・・フンッ、この私を誰だと思う?・・・魔界の『欲望』を喰らい尽くした男だぞ』
『・・・『欲望』?』
「話は後だ」

敵軍に突っ込むイーヴィルの二人は短く会話を終え、マスカレイド達に攻撃を仕掛ける。

――バキッ、バキッ!ボキッ、ボガッ!――

次々と殴られ蹴られ、消滅していくマスカレイド達。

「メモリチェンジだ」

【KNIGHT】
【SONIC】

イーヴィルは青と金色のガイアメモリを起動。

【SONIC/KNIGHT】

イーヴィルは”音速の騎士”・ソニックナイトになった。
背中に背負う薙刀・ナイトグレイブを手に、勢いを増長させて戦う。

――ザシュッ、ズバッ!!――

斬り捨てられるドーパントに構わず、イーヴィルはメモリをマキシマムスロットへ。

【EVIL/KNIGHT・MAXIMUM DRIVE】

「ナイトゲイルスラッシャー」

イーヴィルはナイトグレイブを構え、一瞬だけながらも蒼金の流星となった。

『『『『『グアアアァァァァァアア!!』』』』』

刹那の時で死に逝くマスカレイド。
それを見てリインフォースは、平気で命を毟り取るゼロをこう捉えた。

(この男は、嘗ての主達と同じだ)

夜天の魔導書の管制人格であった彼女は、その力を利用して闇の書へ改竄した者や、以降もその強大なる力を欲した者が主となり、己の欲に忠実となって非道な行いをしてきた光景を見てきた。

強大な力に喜び、実際に振るい、命を奪っていく。
当時のリインフォースはゼロに愛情どころか、僅かな嫌悪感すら抱いていた。

【BLASTER】
【TRICK】

今度は緑と灰色のメモリを起動。

【TRICK/BLASTER】

奇術の砲撃手・トリックブラスターになると、今度はエネルギー銃・ブラスターキャノンの引き金を引いた。

――バンバンバンバン!バンバンバンバンッ!!――

銃口から撃ち出されたビームタレットは自由自在な軌道を描いたり途中で分裂したりしてマスカレイド達に有無を言わさぬ恐怖を与えた。

【EVIL/BLASTER・MAXIMUM DRIVE】

「ブラスターガンショット」

――バキューーン!!――

『『『『『グゥゥオオオオオぁぁぁぁぁぁ!!!』』』』』

マキシマムによって増幅された二本のガイアメモリの力は通常より遥かに大きく強化されたビームは、雑魚という言葉が相応しいマスカレイド達全てを消し飛ばした。





*****

一方、このイーヴィルの圧倒的勝利を遠くから観察する者がいた。

「ゼロ、御主もとうとう・・・」

白髪頭、キセルを銜えた口、身に纏った和服。
こういった様相の男は、黒いメモリドライバーこと・デュアルドライバーを装着し、緑色のバイクに跨ってエンジンを起こした。





*****

「チ、チーフ!」
「なんだ?」
「マスカレイド隊・・・・・・全滅です・・・」
「バ、バカな!?」

遠方で戦いをモニタリングしていた研究員は主任(チーフ)に戦況を報告する。

「・・・”アント”を出せ」
「了解、しました」





*****

「ほう・・・!データ以上の戦闘力だ。素晴らしい・・・!」

イーヴィルはライトスロットにあるトリックメモリを外して変身を解除した。
無論、それに合わせてリインフォースの精神も肉体に戻った。

リインフォースは無言のまま、魔方陣を展開してゼロのもとに移動する。

「ほう、それが魔法か。情報通りだ」
「教えてくれ。お前は誰なんだ?」
「誰?・・・あぁそうか、人間は名乗らねばわからんのだったな」

ゼロは一人で勝手に納得する。

『私の名は無限ゼロ。『欲望』を喰って生きる、魔界の生物だ・・・!』

ゼロは魔人態となって自分の正体を明かした。

(ッ!?・・・・・・これが夢か現実かはわからない。だが、今目の前に存在するこの男は、間違いなく人間ではない)

『・・・・・・ン』

ゼロは何かに気づき、人間態となる。

「なかなか香ばしい気配だ。地上に来て最初の『欲望』としては・・・、合格点だ」

垂涎しながら笑うゼロ。

――グオオオ!グォォォォ!!――

すると、リインフォースの肩に一個の黒い邪龍型ガジェットが留まる。

「これはなんだ?」
「ダークネスメモリ。貴様の物だ」
「私の物だと?」

リインフォースが首を傾げていると、地平線の向こうから述べ三百体の怪人がこちらに向ってくる。

これらの名前は”アント・ドーパント”。”群体蟻の記憶”を宿した大量生産型のガイアメモリ=ドーパントである。
ただし、こちらの場合はマスカレイドメモリと違って、一本一本が通常のガイアメモリと同格かそれ以上のパワーを備えている。

「丁度良い。イーヴィルの狂化形態の力、試すとしよう」

【LEADER】

ゼロはリーダーメモリをスロットにさし、ダークネスメモリをガジェットモードからメモリモードに変形させ、スタートアップスイッチを押した。

【DARKNESS】

「これを持って”変身”と言え」
「変身?」

ダークネスを触れた瞬間に呟いたためか、メモリとドライバーが反応し、ゼロのドライバーにインサートされていたイーヴィルメモリとリーダーメモリがリインフォースのドライバーに転送され、ゼロの精神が肉体を離れる。

リインフォースは少々戸惑うが、メモリをスロットに推し込み、最後にダークネスメモリをスロットに射し込み、開かれたスロットを横倒しになったE字型になるよう閉じ、余剰パーツはスロットの上に置くことで額に角の生えた龍の頭部の如き形となる。


【DARKNESS/LEADER】


暗黒の記憶と支配者の記憶が暗く激しいデュエットを奏で。リインフォースの肉体は暗黒の統率者・ダークネスリーダーに変身する。

「うおぉぉぉぉ!!うああぁぁぁぁぁ!!」

野獣のような雄叫びを天空にあげ、イーヴィルはアントの群勢に突貫していく。

――ガシャン!――

【TALON DARKNESS】

イーヴィルの右腕に堅固な篭手・タロンブラッカーが形成される。

「うぇあああああ!!」



咆哮、咆哮、咆哮、咆哮、咆哮、咆哮、咆哮、咆哮、咆哮、咆哮。
殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る、殴る。
殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す。
断末魔、断末魔、断末魔、断末魔、断末魔、断末魔、断末魔、断末魔。
血飛沫、血飛沫、血飛沫、血飛沫、血飛沫、血飛沫、血飛沫、血飛沫。

――ガシャア!――

壊す。


三百体近くいたアント・ドーパント達は、残り二百体となっていた。

しかし、イーヴィルの余りに残虐な戦いは勿論、返り血を浴びまくったイーヴィルの姿は誰にでも狂気と殺気を知らしめることのできる圧倒的な威圧感があった。

故、約半分のアントはイーヴィルに対して底知れない恐怖を抱かざるを得ない。

――ガシャン!ガシャン!――

【ARROW DARKNESS】

フィストブラッカーが消えると、今度はブーメラン型の弓・アローブラッカーが出現する。

「ハゥッ!!」

――ビュン!!――

投げられたアローブラッカーはブーメランとは思えない複雑な軌道を描き、次々とアント達を切り裂いていった。

『『『ギャアアアァァァァァ!!!!』』』
『た、助けて――――ンァァァーー!!』

悲鳴と戦慄。
残る体数は、百未満。

イーヴィルはアローブラッカーをガシっと掴むと、地面に刺してダークネスメモリのブラッドアントラーを三回連続で弾く。

【DARKNESS・MAXIMUM DRIVE】

「ヴォオオオオ・・・!ハァ!!」

イーヴィルの右足に闇エナジーが集結。
空高く跳躍し、空中で右足を突き出しながらドリル回転する。

「ヴォオオオオアアアアアアァァァ!!!!」

イーヴィル・ダークネスロードのマキシマムドライブ、ダークネスデストロイヤーが炸裂!

これにより、残りのアント・ドーパント全てが消し飛んだ。

「うぅおおおあああああああ!!」

しかし、イーヴィルは未だに咆え続ける。

「やはりこうなったか」
「ヴアッ!?」

そこへ聞こえる男の声に、イーヴィルは振り向く。
そこにはスーパーバイク・”デモンスプリンター”に乗った無限レイズの姿。

【WARRIOR】
【MULTI】

「変身」

二本のメモリをスロットにインサートして、二つのスロットを展開した。

【MULTI/WARRIOR】

レイズは仮面ライダーデュアル・マルチウォリアーに変身した。

「さあ、覚悟を決めな」

決め台詞を呟き、デュアルはイーヴィルに拳を突き立てる。
無論イーヴィルも反撃してくるが、理性を失った単調な攻撃だったので、デュアルは冷静に攻撃を避けた。

「ハッ!フンッ!トオォ!!」
「ウォウ!ガルゥ!!」

例えるなら人と獣の闘いといっても過言ではなかった。
デュアルはあくまで理性的なバトルスタイルでいるが、イーヴィルはトコトン野生的に動き続けた。

「好い加減目を覚ませ!阿呆ども!魔界777ッ能力・・・無意味な抗い(イビルバウンド)

魔界能力発動と共に、イーヴィルの体に毒々しい色をした鎖が巻きつき、動きを封じる。

【WARRIOR・MAXIMUM DRIVE】

デュアルはウォリアーメモリをベルトのマキシマムスロットにインサートすることでメモリの力を増幅、その力を両足に伝達した。

「トオッ!」

デュアルはジャンプして両足キックの姿勢となる。

「ウォリアーエクステンダー!!」


――ドガァーーーーン!!――


デュアルの必殺キックは見事イーヴィルに命中した。

「これで決まりだ」

そして締め括りに決め台詞を述べると、ダークネスメモリが自分の意思でドライバーから離れ、変身が解除されてしまう。

「う・・・っ、あぁ・・・」

多少痛みに表情を歪めるリインフォースと、何食わぬ表情で意識が戻ってこちらに来たゼロ。

「兄上・・・?兄上か!久しいな!」

ゼロは一年ぶりに会えた兄に歩く、が。

――バキっ!!――

「ッッ!!?・・・兄上、なんのつもりだ?」
「今やった通りだ」

レイズはゼロを殴ったのだ。

「ゼロ、御主随分と女子(おなご)の扱いが手酷いのぉ」
「フン、私の所有物をどう扱おうと、私の自由だ」
「その者は物に非ず。さらに御主は、自分の中途半端な覚悟で、トンデモない事態を招いたのだぞ」
「トンデモない?」

ゼロが問うと、リインフォースが目を覚ました。

「もう一人の、仮面の戦士」

するとデュアルはリインフォースに顔を向けた。

「・・・ワシの名は無限レイズ。今の姿はデュアル。この愚弟の兄じゃよ」

デュアルが自己紹介し終えると。

――ゴゴゴゴゴゴ・・・!――

地響きの音と振動がする。

「遂に、始まったか」

デュアルは呟く。

「一体なにが始まる?」
「御主らが暴れ回った時、”御神体”を壊した」

ゼロは言われて思い出す。
ダークネスロードが戦っていた時、敵と一緒に妙な置物を粉砕していたことに。

「あれは只の置物ではなかったのか」
「当たり前だ、うつけ者。あの御神体は”邪神獣”を封印する要でもあったのだ」
「邪神獣?」

「邪神獣とは、此の世の創世記において魔界王が命懸けで闘い、封印した伝説の魔物。
その封印を永久のモノとするため、魔界王はこの辺境の地に御神体を造り設置した。
さらに邪神獣は魔界王を後一歩の処にまで追い詰める程の力量と凶暴性を秘めておるのじゃ」

デュアルは邪神獣の詳細と危険性を説明する。

「それが現在、私のせいで解き放たれ様としている、か?」

そう言われると、デュアルは変身を解いてこう返答する。

「ハッキリ言ってしまえばそうじゃな。しかし、だからこそ・・・・・・御主らは寝ておれ」

レイズはゼロの腹に全力のボディブロウをきめた。
ついでに、リインフォースにも。

「グッ・・・!」
「兄上・・・!」

想像以上にダメージがあるのか、ゼロはフラつく。
リインフォースは直ぐに気絶した。

「ゼロ、スマンな。ワシはこんな形でしか、兄らしいことをしてやれない。弟の間違いを叱責し、その後始末をする。そんな、兄らしいことのマネゴトをしたかったのかもしれん」

レイズは慈愛と哀愁溢れる表情となる。

「・・・御主、昔からそのマフラーを気に入ってくれていたのぉ」
「それ、は・・・兄上が私に、贈ってくれた最初の・・・・・・」

言葉までツギハギになる。

「そうか。喜んでくれていたのなら、ワシも嬉しいぞ」



――ボガァーーーーン!!――



突如として地割れが起こり、その境目からは恐ろしくおぞましい存在・邪神獣が這い出て来ようとしている。

「次に会うときには・・・」

レイズはデュアルドライブギアを装着。

「マフラーの似合う男になれよ・・・・・・ゼロ」
「兄上ェェェーーーーー!!!!」

【MULTI/WARRIOR】

「魔帝7ッ兵器・・・二次元の刃(イビルメタル)





*****

「こうして私と相棒はイーヴィルとなった」

語られた”ビギンズナイト”。
その陰には弟を愛して已む無い兄、レイズの活躍があった。

「しかしゼロ、私は貴方の知らない”隠されたビギンズナイト”を知っている」
「隠されたビギンズナイト?」
「そう。それは今、私が貴方の傍らに身を置く最大の理由となった」





*****

魔界における最強にして絶対無敵の兵器・二次元の刃<イビルメタル>によって邪神獣を倒した無限レイズ。凄まじい魔力消費によって、彼の命が風前の灯火にある時、リインフォースはゼロより一足先に目を覚ましていた。

「・・・全て、終わってしまった。私はまた、なにもできなかった」
(そんなことはない)
「ッ!」

リインフォースは驚いた。
目の前で倒れているデュアルが、念話で話かけてくるのだから。
しかし、その念話も音声が異常なまでに擦れている。

リインフォースはデュアルドライバーに触ると、レイズの精神は彼女の精神世界=次元書庫にダイブしたのだ。



リインフォースが初めて見る次元書庫の光景に唖然としていると、レイズはこう質問する。

「御主は今迄、どれ程の可能性(みらい)を信じてきた?」
可能性(みらい)・・・」

リインフォースは一つだけ心当たりがあった。
それは、先代の主・八神はやて。さらにはなのはやフェイト達といった魔導師のことであった。

「ワシは同郷の者より、人間が秘める底知れぬ可能性(かのうせい)と、それが人間の未来(あした)を繋ぐのだと聞いた。そして実際にこの地上で人間を観察し、ワシはこの可能性(みらい)を信じ、守護(まもり)たいと願い、デュアルとなった」

レイズは一言一言を揺ぎ無い口調で話す。

「御主の名は?」
「リインフォースだ」
「美しい名だ。名付け親の優しさが手にとってわかる」

そしてレイズは真っ直ぐにリインフォースの瞳を見てこう話す。

「リインフォース、これからもあの愚弟と共にあるのなら・・・・・・覚悟を決めな」
「覚悟・・・・・・?」

「・・・覚悟ほど、最も強く、最も歪み易いものはない。だからこそ、常に戦う者は心に留めておかなければならん、自分の戦う理由を。そして御主らには、それができると信じている。確固たる覚悟のある御主らなら・・・!例えそれが、どんな理由であっても」

「私の、覚悟・・・」



呟いた直後に意識は現実に戻った。
リインフォースは急いで回復魔法による応急処置をしようとしたが、


――ガシャーーン!!――


邪神獣が出て来ようとした地割れが一気に広がり、デュアルは奈落の底へと転落していった。

「デュアル・・・!」

リインフォースが急いで助けようとした時、精神に直接語りかけて来る声を聞いた。

(時代が望む時、仮面ライダーは必ず甦る。・・・何時の日か、新たな志秘めた者によって・・・)





*****

「私達には彼から託されたモノが二つある。人間の可能性(みらい)を”守護(まも)る”ことと、人間の可能性(みらい)を”信じる”こと。それがあの言葉の中に隠された願いと言うなの覚悟」

リインフォースは淡々と喋る。

「私達にはコレを託した彼の”覚悟”を引き継ぐ責務がある」
「その為にイーヴィルとなって戦ってきた」

今ここに、全てのビギンズナイトが語られた。

「お二人とレイズさんに、そんなことが・・・・・・」
「・・・・・・」

弥子は辛そうな表情。ネウロは無言。

「無限、お前にも辛い・・・始まりの夜があったのか」
「僕たちが鳴海壮吉に導かれたように、君達も・・・」

Wコンビも何か共感するものを感じた。

(二人が背負っているものがコレほど重く、険しいモノだったとはな)

照井もイーヴィル誕生の為、偉大な戦士の願いと覚悟があったことを痛感する。

「相棒、かつての言葉・・・また言わせてくれないか?」
「えぇ」
「これからも・・・魔人(バケモノ)と相乗りする覚悟、あるか?」

ゼロが手を差し出すと、リインフォースはその手を優しく握った。

「貴方となら、地獄の底まで・・・!」

それを見て皆は、互いに顔を見合わせ、頷き合った。

「相棒、検索だ」

リインフォースは次元書庫にアクセスする。

『検索開始。調査項目は、堺の潜伏場所』
「ファーストキーワードは、海鳴市。セカンドキーワードは、デュアル。サードキーワードは、操作」

キーワードの入力によって情報数が半分になる。

『キーワードが足りない』
「ならば追加だ。フォースキーワードは、医者」

すると、情報は残り本棚一つとなる。

『後一つで特定できる』
「あのー、ちょっと良いですか?」
『はい?』
「そのレイズさんって死んでいるんですか?」
『生きていたとしても、植物状態寸前だろう』
「だったら、その体を保存する環境が必要なんじゃ・・・?」

その言葉でハッとした。

『そうか・・・!ファイナルキーワード、保存』

そしてとうとう、本は一冊に絞りこまれた。

「場所がわかった。”HOSPITAL(びょういん)”という題名(タイトル)だった。海鳴市の病院では最近、遺体保存安置室ができたらしく、堺は井坂内科医院副院長だった経歴を活かして、今はそこに籍をおいている」

「行くぞ、相棒」
「えぇ!」
「よっしゃ、俺たちも行くぜ」
「我が輩も、奴にお灸を据えに行くとしよう」





*****

海鳴市総合病院。
遺体安置室。

「ハハハ♪見ていろ、仮面ライダー。この上級魔人(デュアル)の力で、お前ら全員を血祭りにあげて・・・・・・フフフフフフ!」

堺は冷凍装置のような物で安置されたレイズを見ながら、不気味に笑っている。
そこへ、


【STAG】
【BEETLE】
【WYVERN】


翔太郎のスタッグフォン、照井のビートルフォン、ゼロのバニティーボックス・ワイバーンモードが堺に体当たりをする。

――バァン!――

「見つけたぞ、このケシクズ野郎」

ゼロ、リインフォース、翔太郎、フィリップ、照井、ネウロが一斉に入ってくる。

「おやおや、バレテいましたか。ならば、このボクが新たに手に入れたメモリの力を眼に焼き付けるといい」

堺は懐から、純正化メモリと同等の形状をし、ガイアターミナルが青く染まった黒いメモリを取り出す。


【JOINT】


ガイアメモリを起動させると、堺はコネクタすらない二の腕にメモリの直挿しを行い、”接続の記憶”を宿したジョイント・ドーパントに変貌する。

ジョイント・ドーパントは早速レイズの体に入り込む。

ジョイントに入り込まれたレイズは糸で吊られた操り人形のように置き上がる。

「兄上・・・」
「レイズ・・・」
「この男はお前たちにとって掛け替えの無い存在の筈。さーて、どう出るかな」

ジョイントが腹の立つ口調で話していると、レイズはデュアルドライバーを装着し、メモリをスタンバイ。

「変身」

【MULTI/WARRIOR】

変身したレイズ。

ゆっくりと前に進み、ゼロの前で立ち止まる。

「さあ、どうします?自慢の兄を傷つけられますか?それと――ドゥガ!!――ッ!!?」

ジョイントは驚いた。
ゼロが喋っている途中でデュアルを殴ったのだから。

「私は自分の覚悟を貫く為に戦う。誇りの全てを賭けて、兄上が貫こうとした覚悟を・・・!それを妨げるのであれば、誰であろうと倒す!」
「バカな・・・・・・お前は何者だ!?」

「私は・・・もとい、私達は無限レイズの忘れ形見だ。・・・二人で一人のユニット、仮面ライダーだ!」

【LEADER】

「相棒!」
「あぁ!」

【MAGICAL】

二人はメモリを起動させる。
そして並び立ち、構えた。

「「変身ッ!」」

マジカルメモリはゼロのドライバーに転送され、リインフォースの体が倒れる瞬間にロードメモリとマジカルメモリをインサートした。

【MAGICAL/LEADER】

仮面ライダーイーヴィルの基本形態。
魔法の統率者・マジカルロード。

「『「ッ!!」』」

デュアルとイーヴィルは取っ組み合い、そのまま壁を破壊して屋外へと出た。





*****

屋外、逃げ惑う人達を尻目にイーヴィルはデュアルに対して圧倒的な優勢を築いていた。

「お、おのれ!」

【ARCHER】
【FROST】

デュアルはメモリを起動させ、スロットにインサート。

【FROST/ARCHER】

右半身は青、左半身は銀といった配色。
凍結の弓兵・フロストアーチャーだ。

デュアルは二の腕にぶら下っている”アーチャークロスボウ”を手に取り、アーチャーメモリをグリップのマキシマムスロットにインサートする。

【ARCHER・MAXIMUM DRIVE】

「アーチャーフリージング!」

クロスボウから射ぬかれた絶対零度の矢は、イーヴィルのドライバーに直撃しようとするとき・・・。

【TRIGGER・MAXIMUM DRIVE】

「『トリガーエアロバスター!』」

――バキューン!!――

後方より飛んできた風の弾丸が、デュアルの必殺技と相殺される。
無論、その攻撃を行ったのは、W・サイクロントリガーであることは言うまでもない

「終わりだ、堺」
『メモリブレイクし、たっぷりと反省してもらおう』

アクセルとゾディアックも駆けつける。

「そうは行くか!魔界『させないよ!』

【LUNA/JOKER】

デュアルの魔界能力発動を、Wがルナジョーカーとなり、右腕によるチョップで遅らせた。
その稼いだ時間で、ジョーカーメモリをマキシマムスロットへ。

【JOKER・MAXIMUM DRIVE】

「『ジョーカーストレンジ!!』」

Wはセントラルパーテーションを境に分断し、ルナサイドが分身して腕を伸ばしてデュアルの動きを封じると、残ったもう一つのルナサイドとジョーカーサイドがキツイ一撃を加える。

「く、クソォ・・・!」

デュアルはWのマキシマムドライブをマトモに喰らってしまい、ジョイント・ドーパントのシルエットが見え隠れする。

【ENGINE・MAAXIMUM DRIVE】

「絶望がお前の、ゴールだ・・・!」

【SAGITTARIUS・MAXIMUM DRIVE】

人馬宮の記憶を宿したサジタリアスメモリのマキシマムドライブを発動するゾディアック。
サジタリアスアローに収束された矢を引き、デュアルを狙い打った。

「『ハァ!』」

エースラッシャーとサジタリアスランチが放たれる。

「ッ!!」

デュアルはとっさにアーチャークロスボウで前方の地面を撃ち、分厚い氷の壁をつくって防いだ。

「危なかった。――――魔界777ッ能力・・・普遍の亜空(イビルディメンション)

デュアルは目の前に髑髏と時計の装飾がある長方円形の形をした魔界能力を呼び出し、中央の大きな穴に入り込もうとすると、

「その前に兄上の体を返せ!」

【EVIL/LEADER・MAXIMUM DRIVE】

「『リーダーブレイクラッシャー!!』」
「そう簡単に喰らうものか―――――ッ!?」

デュアルは避けようとしたが、突然体が言う事を聞かずにピタリと止まり、

――ドガッ!ドガッ!――

半身ずつによる二連キックが直撃した。

『グアアァァァ!!』

これによってジョイント・ドーパントがデュアルの体から抜け出し、デュアルは力無く倒れた。

『何故だ?何故動けなかった!?』
『貴様には一生わからん。レイズは、貴様のような奴に何時までも言い成りになるような都合のよい男ではないのだからな』

混乱するジョイントにゾディアックが説明する。

『だが、逃げ道はできた』

そう、未だに普遍の亜空<イビルディメンション>は健在だったのだ。
ジョイントは素早く穴の中に入り込んだ。

『ゼロ!』
「わかっている!」

リインフォースとゼロ=イーヴィルも、ジョイントを逃がすまいと、イビルホイーラーに乗って穴の中へと突っ込んだ。





*****

2009年・12月24日

「ここは・・・?」
『去年のクリスマスイブ。死人還りの事件が終わった日』

過去へと到着したイーヴィル。

【HEAT/JOKER】

向こうではヒートジョーカーにハーフチェンジしたWがスカルを全力で殴っていた。
殴られたスカルは神父・ロベルト志島となり、ロベルトは電流のようなモノがあったが、ロベルトは構わずに腕のコネクタに挿す。

しかし、この時に聞こえたガイアウィスパーは・・・。

【DUMMY】

ロベルトはデス・ドーパントに姿を変えるも、フラフラとした状態で、様々な人物のシルエットが重なる。その中には鳴海壮吉とスカルもいた。

「何・・・?」
『そうか、わかった翔太郎。コイツのメモリはDEATH(デス)じゃない。DはDでも、DUMMY(ダミー)のDだ!』

【TRIGGER】
【HEAT/TRIGGER】

Wはヒートトリガーとなり、トリガーマグナムから高熱の弾丸を発射。
幾つかの弾丸が命中すると、”偽者の記憶”を宿したダミー・ドーパントとしての本来の姿を晒した。

「あれが正体!?うーわ、しょっぼぉ〜」

フィリップの肉体を抱えながら来た亜樹子もダミーのビジュアルを正当に評価する。

『私はあらゆる才能の持ち主になれる。愛する者の死を餌に誘き寄せたこの街の要人達に成り済まし、幾つモノゴージャスな人生を満喫するのが、この私の生きが――パコン!――痛った!?」

喋り終える直前で、亜樹子は怒り心頭な様子でダミーをスリッパで叩く。

「なんてクズ野郎なの!二人とも、やっちゃって!!」
「言われるまでもねー」

Wはダミーを指差し、

「『さあ、お前の罪を・・・数えろ!』」

決め台詞の直後にトリガーマグナムから炎弾を発砲してダミーを吹っ飛ばす。
すると、

『退け退けぇ!』
「あ、ドーパント!」

ジョイントが必死になって走っていた。
それをみたイーヴィルはイビルホイーラーを走らせた。

『翔太郎!』
「この際だ、二人纏めてメモリブレイクしてやるぜ」

Wがトリガーマグナムを構えると、

――ブゥゥゥン!!――

イーヴィルが颯爽と登場する。

『ゲッッ』

ジョイントは心底不快そうな声であり、Wと亜樹子、ダミーまでもが驚く。

「もう逃がさないぞ、堺!」
『しつこい奴め・・・!』

すると今度は紅と蒼の光弾がWとイーヴィルに降り注ぐ。

『おぉ!貴方方は!』
『頼もしい援軍だ』

現れたのは園咲家の三人、霧彦のナスカ・ドーパント。冴子のタブー・ドーパント。若菜のクレイドール・ドーパント。

『貴方の能力、中々使えそうだし、特別に助けてあげるわ♪』
『感謝したまえ。そこの君もね』
『見慣れない顔がいるけど、決着をつけてあげるわ、仮面ライダー』

「喧しい!!」

『『『ッ!!』』』

イーヴィルの大声に三人の幹部ドーパントは驚く。

「こっちは虫の居所が悪い。一瞬でケリをつけさせてもらうぞ」

【SONIC/LEADER】
【EVIL/SONIC・MAXIMUM DRIVE】

イーヴィルは音速の統率者・ソニックリーダーにハーフチェンジすると、即座にツインマキシマムで通常時を遥かに上回る超々高速を発動。



――ヒュンッ――

――バギ!ボガ!ゴキ!グシャ!――



一言で言おう、”瞬殺”だ。
ついでに、気絶した三人の記憶を操作するのも忘れない。

『す、凄い・・・・・・組織の幹部三人を瞬殺するなんて・・・!』

フィリップはイーヴィルの力量に感動していた。
当のイーヴィルは、ジョイントに向かい、指差してこう告げる。

「『さあ、貴様の欲望を差し出せ!』」

『此処まで来て、やられてなるものか!』

ジョイントは近くに停まっていたバイクに自らを融合させて逃亡。

『そうか、アレなら!』

ダミーもそれを見て、タイヤに変化して逃げ去る。

「逃がさないぞ!地の果てまで追ってやる!」
「奴だけは絶対に殺す!!」

Wはスタッグフォンでリボルギャリーの発信準備を進めながらハードボイルダーに跨り、イーヴィルもソニックメモリとマジカルメモリを換装しながらイビルホイーラーに跨る。

【CYCLONE/JOKER】
【MAGICAL/LEADER】

Wとイーヴィルは基本形態にハーフチェンジし、疾風のようにバイクを駆りながらジョイント・ドーパントとダミー・ドーパントを追いかける!





MOVIE大戦2010に続く!

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