始まりのAtoZ/2【タイプツー】


AtoZ
それらはA〜Z=26のアルファベット数字のことをさす。

A・B・C・D・E・F・G・H・I・J・K・L・M・N・O・P・Q・R・S・T・U・V・W・X・Y・Z

これらを全て二重な意味で、それぞれ26のアルファベットを冠した力が存在した。
それは今から語られし物語で、とある街に襲い掛かる脅威となりえる。
そしてこれは、人々の希望の物語にもなりえる物語でもある。

もしこの小説を読んでいる方々、これはあくまで虚構の世界から生まれた更なる虚構に過ぎないが、この物語に存在する彼らの人生と歴史には嘘偽りなどないとだけ言わせて欲しい。





風都上空。
そこには一機のヘリが飛んでいた。
しかし、そのヘリに絶対悪たる者が現れたのだ。

QUETZALCOATLUS(ケツァルコアトルス)・MAXIMUM DRIVE】

「「「!!?」」」

ヘリに乗っていた財団Xの一員・田端、迷彩服の男、パイロットは突然聞こえてきた電子音声に耳を疑った。
なぜならそれは、純正方メモリ専用のメモリドライバーによって発せられるガイアウィスパーだからだ。

――ガンッ!――

何者かがヘリに飛びつき、無理矢理に内部へと侵入した。
その侵入者の容姿を見た時、パイロットはこう呟いた。

Maskd(マスクド) rider(ライダー)

直訳すると、仮面ライダー。
漆黒をベースカラーとし、頭部のI字型の一本角の真下にある紫の一つ眼。血の色に染まった両腕。身に纏った白色のマントに、上半身と右太ももにはスロットが設けられたコンバットベルトが装着されている。

「退きなさい」
「うっ、うああああああ!!」

迷彩服の男は漆黒のライダーも首をつかまれ、外に放り出された。
誰も助けることなどない空中へと投げ飛ばされたのだ。

「さあ、それを渡しなさい」
「くッ・・・」

田端は抵抗するのも無駄とし、持っていたケースを差し出す。
漆黒のライダーはケースを開けた。
その中には26本の純正型の新型ガイアメモリ、TYPE2のメモリがあった。

「これでよし」

と、漆黒のライダーが一本のメモリを手に持った瞬間。

「吹き飛べ」

――カチッ――

田端が何かのスイッチを作動させ、



――ドガアアアアアアアン!!!――



ヘリを木っ端微塵に爆破させた。
それによって空中に投げ出され、下にある街に降り注ぐメモリたち。
漆黒のライダーは爆炎の中から悠々と現れ、ビルの屋上に着地してみせた。

「ご苦労様でした、シックス」

そんな漆黒のライダーにねぎらいの言葉をかけるものが居た。
ビルの屋上には、漆黒のライダーが来る事を予想していたのか、数人の人物が待機していたのだ。
人数は十人で、その内の五人は同じ服装だったが、あとの五人の服装はおろか人種や年齢はバラバラだ。

火火火(ヒヒヒ)!どうでした?成果のほどは?」

帽子を被った火傷のある中年男がタバコを吸いながら訊いた。

「この一本だけだ」

漆黒のライダーはあるメモリをだした。
そのメモリとはEのメモリだった。

「キミのメモリだ」

漆黒のライダーはそういうと、そのメモリを、ツナギのようなジャージような服を着た美青年に投げ渡す。

「おいおい!それじゃあ、克己(かつみ)のメモリしか拾ってこなかったのかよ!?」
「他の――あたし達のメモリはどうするのよ?あんた達は殆どあるからいいとしても!」
「大丈夫。直ぐに見つかるよ。・・・君達次第によるが」

棍棒を持ったいて服の上からでもわかる筋肉質な男と、やたらクネクネとしたオカマの言葉に、漆黒のライダーは冷淡に答えた。

「自分で探せってことね?」
「ゲームスタート」

同じようなジャージをきた、クールな美女と寡黙な男が結論を口にする。

「あんたも随分意地悪なことをしてくれるな、シックス」
「ふふふ・・・!ちょっとした宝探しさ。君達ならきっと出逢えるよ。時間稼ぎにこちらの”アナザー”から何本か使って、連中を引きずり出すエサも用意したことだしね」

ジャージを着た四人のリーダーであり、さきほど漆黒のライダーからEのメモリを受け取った美青年・克己が漆黒のライダーにそういった。

「でもこの街には、仮面ライダーがいるよ」

ニット帽を被った色黒な少年が口に出す。

「フン!所詮はダニだ。我々、選ばれし者には勝てんよ」

それを一蹴するのは黒人の男。

「まあでも・・・油断大敵かな?このボクの美しい顔が傷つくわけにはいかないからね」

ナルシストな雰囲気の漂う白人の美男。

「私語を慎みなさい!私達五人はこのお方の指先にして手駒。勝手な行動は許されなくてよ」

イブニングドレスを着た妖艶な巨乳美女。

「火ッ火ッ火!そう堅いこと言いなさんなって。こいつは確かに宝探しだぜ」
「あぁ、この街を地獄に変える為のな」
「そして、私達の悪意に満ちた、楽園が創造されるための礎だ」

今此処に、AtoZ事件が、その始まりの時を迎えたのである!





*****

仮面ライダーイーヴィル。
それは二人で一人の魔人戦士。

『究極の欲望』を追い求めて地上に現れた魔人・無限ゼロと、精神世界に『次元書庫』と呼ばれるデータベースを宿した異次元の魔導騎士・リインフォースが・・・!

仮面ライダーとなって、ガイアメモリの脅威に挑み続ける、『欲望』と戦いの物語である!





*****

事件の始まりの直前は、雨だった。
しかしこの時に気づくものはいるわけがなかったのだ。
これから起こり得る未来を予測することなど。

「ヴィヴィオちゃん、どうかな?」
「うん大丈夫。サイズもデザインも良い感じだよ」

無限家では、ヴィヴィオと御霊が浴衣姿でなにやら話し合っていた。
ヴィヴィオのは白色で桜柄の浴衣、御霊の浴衣は藍色で巴柄のものだ。

「どうだ二人共?」

そこへ無限家家長のゼロが入ってきた。
ちなみに何故浴衣なのか?という理由は、風都で行われる花火大会が近日中にあるからだ。
花火大会の当日で、風都タワーにあるパネルの前で、マスコットキャラの『ふうとくん』と一緒に写真を撮ったカップルは結ばれるというありがちなジンクスがあったのだ。
もっとも、無限家の者達には関係の無いことだが。

「バッチリ♪」
「後一人だけですね」

そう、浴衣はもう一着あった。
部屋の奥に大事そうに置かれていた黒を基調として銀の線が描かれた高価そうな浴衣。
誰が着る為の物かは明白である。

「まったく、相棒はどこで油を売っているのやら・・・・・・」

そしてゼロは、暗紫色の無地な浴衣を着て、溜息をついた。

そう、もう一度言うが、未来を完璧に予知できる者など居はしない。
例え神々であろうともだ。
それを思うと、この雨も・・・世界と彼女と・・・彼女が見てきた者達が流した雫だったのやもしれない。





*****

その頃、”彼女”は降り注ぐ雨を逃れるべく、とあるカフェでコーヒーを飲みながら雨が止むのを待っていた。

「・・・・・・ほう、成る程」

その手には一冊の本があり、ページの殆どには英語とは別の言語、ドイツ語によく似たモノが記されていた。不思議なことに、ページに書かれた文字は浮かんでは消え浮かんでは消えを繰り返していて、様々な文章を表している。
その絶世とも思える美貌と神秘的な長い銀髪に真紅の瞳と、日本人ではありえない外見をしている異国美人。
そんな彼女を独り身だと思った何人かの若者が彼女にアプローチを試みたが、彼女が日本語とは別の言語で喋ると、若者らは一気に熱が冷めたように彼女から離れていった。

「ふぅ、元から簡単にあしらうつもりだったが、ベルカ語で喋っただけでこれとは・・・」

彼女の名前はリインフォース。
仮面ライダーイーヴィルの片割れにして、今持っている”記憶の魔導書”の管制人格であり、無限ゼロの最愛たる人物である。

(にしても雨が長い・・・暇つぶしのつもりで次元書庫を読み漁っていたが・・・これでは日が暮れてしまうな・・・)

と、リインフォースが考えていると、

「お姉ちゃん、その御本なんていうの?」

一人の幼い少女が声をかけてきた。

「遠い国の本、かな?」

リインフォースは記憶の書を見せながら少女に答えた。

「ふーん・・・面白いの?」
「面白いところもあるし、そうでもないところもあるな」

勿論のことながら、次元書庫にある情報全てが、リインフォースの興味を引くものとは限らない。
中には果てしなくつまらないものや、読むのさえイヤになるようなものさえある。

「風花(ふうか)ちゃ〜ん!」
「あ、お母さんだ!お母さ〜〜ん!!」

母親と思われる存在が迎えに来て、風花と呼ばれた少女は手を思いきり振って喜ぶ。

「嬉しそうだな・・・」
「だって、お母さんと一緒だと楽しいもん!パパも一緒だともっと!」
「そう、か・・・」

こんなことを言ってはなんだが、リインフォースの生まれは異次元のベルカとよばれる国だ。
そこで彼女は夜天の書の管制人格として生まれた。故に彼女には肉親がいない。
親と呼べる存在がいたとしたら、それは彼女を作り出した創造者であろう。

創造主(マイスター)

リインフォースは自分の作り手のことを思い出していた。
だが、感慨に耽っている時間があっと言う間に削られた。


――ドゥガァァアアアアアアン!!!――


「「「「「きゃあああああああああ!!!!」」」」」
「「「「「うわあああああああああ!!!!」」」」」

突然聞こえてきた市民の悲鳴。
リインフォースは即座に反応して外に出てみる。

するともう雨は止んでいたが、そこには雨以上に来て欲しくない記憶の怪人・ドーパントが三体現れていた。

一人は暴力の記憶を宿すバイオレンス・ドーパント。
一人は氷河期の記憶を宿すアイスエイジ・ドーパント。
そして最期は、

「あ・・・あれはジョイント・ドーパント!?」

接続の記憶を宿すジョイント・ドーパント。

「バカな・・・!堺の奴はあの戦いで確実にしとめた筈だ・・・」

堺というのは以前ジョイントメモリを使い、ゼロの実兄であるレイズの肉体を用いて戦いを仕掛けてきた小悪党のことである。異次元戦士の仮面ライダーディロードと協力することで完全消滅させた筈だが・・・。
もっともその堺はとある異世界で蘇生し、最期の最期で無様な死に様をもう一度味わったのだが、それをゼロたちが知る術は無い。

「なにが起こっている・・・?って、あれは・・・フィリップ?」

少し考えていると、とある親子を庇うようにしてドーパントらの前に立つのは、仮面ライダーWの頭脳と呼ばれる魔少年フィリップ。

「伏せろフィリップ!!」
「え・・・?リインフォース?」
「ディバンイン・・・バスター!」

フィリップに呼びかけた直後、リインフォースは騎士甲冑になることもなく、私服姿のままで生成した魔力スフィアから魔力の光線を放ち、ジョイント・ドーパントを吹っ飛ばした。

『んぎゃあああ!!』
『『!?』』

いきなりの攻撃にアイスエイジとバイオレンスも戸惑う。

「大丈夫かフィリップ?」
「あぁ、問題ないよ」

そこへさらに、

【FIRE】

――バンバンバンバン!!×2――

電子ボイスが聞こえ、銃声の音と同時にドーパント二体に銃弾が炸裂する。

それを撃ったのは全身黒尽くめの女と、手に拳銃型アームドデバイスを持った男だった。
二人は発砲しながら、距離を詰めていき、帽子をサングラスを外して素顔を見せた。
厳しそうな雰囲気のある壮年の女性と、軍人のような渋い壮年の男性だった。

「早くその親子を逃がして!」
「ここは私達がなんとかする!」

二人が指差してそういう姿は、

「・・・シュラウド・・・?」
「・・・マイスター・・・」

フィリップとリインフォースに、無意識にその名を呟かせた。

「早く行きなさい!」

女は手に持った拳銃で連射しながらそういい、フィリップとリインフォースは親子を非難させる。

【RISE SHOOT】

――バンバンバンバン!!×2――

謎の男と女は発砲を続ける。
しかし、女の持ってる拳銃が弾切れになった時、


――ブゥウウウウゥゥゥウウウウウ!!×2――


二台のバイクのエンジン音が其の場に響いた。
ハードボイルダーに乗ったWの左半身、左翔太朗。
私服に着替えてイビルホイーラーに乗った無限ゼロの二人。

彼らはまず、翔太朗がバイクから飛び降りてドーパントらにとび蹴りを食らわせたところへ、ゼロがバイクに乗ったままドーパントらに突貫したのだ。

勿論ドーパントらはひとたまりもない。
二人はバイクを一旦乗り捨てて相棒のもとへ。

「翔太朗」
「ゼロ」
「大丈夫かフィリップ?」
「問題ないなリインフォース?」
「あぁ」
「心配無用だ」

軽いやり取りをおえ、この二組の活躍が始動する。
翔太朗がダブルドライバー、ゼロがイーヴィルドライバーを装着すると、同型のドライバーがフィリップとリインフォースのほうにも出現する。

【CYCLONE】
【JOKER】
【MAGICAL】
【LEADER】

「「「「変身!」」」」

四人は腕を構え、宣言した。

フィリップとリインフォースが、ライトスロットにサイクロンとマジカルをインサートすると、メモリは相方のドライバーに転送され、もう片方のスロットにジョーカーとリーダーがインサートされ、それが展開されると・・・・・・。

【CYCLONE/JOKER】
【MAGICAL/LEADER】

ガイアウィスパーが発せられ、翔太朗とゼロは顔に奇妙な模様を浮かばせながら、疾風と瘴気を纏いながら、軽快な音楽を鳴り散らしながら変身する。

右半身が緑、左半身が黒い風の切札!
仮面ライダーW・サイクロンジョーカー!

右半身が白銀、左半身が紫色の魔法の統率者!
仮面ライダーイーヴィル・マジカルリーダー!

その変身が完了すると、相棒の右半身に精神を転送したフィリップとリインフォースの体が抜け殻となって倒れていくが、

「「ッ!」」

謎の男女はそれを察知して、倒れる二つの肉体を受け止めた。

「いくぜ!」
「あの世に返品するとしよう」

Wとイーヴィルは戦闘を開始する。
勿論Wはアイスエイズとバイオレンス、そしてジョイントの特性をしっている。
それはイーヴィルも同義だ。それゆえに、

【HEAT】
【HEAT/JOKER】
【TRICK】
【TRICK/LEADER】

メモリによって行うハーフチェンジに迷いはなかった。
熱き切札のヒートジョーカー、奇術の統率者のトリックリーダーだ。

「オゥリャア!!」
「フン・・・ッ」

摂氏3000度の高熱拳をぶつけるWと、伸縮自在な腕と足をムチのようにしてぶつけるイーヴィル。
さらに次のメモリを換装する。

【LUNA】
【LUNA/JOKER】
【KNIGHT】
【TRICK/KNIGHT】

幻想の切札・ルナジョーカー、奇術の騎士・トリックナイト。
二人は伸縮自在な腕と薙刀(ナイトグレイブ)で敵の体をグルグル巻きにして動きを封じたり、思いきり回して三体の体をぶつけ合わせたりした。





*****

一方、別の場所では・・・。

【緊急通報、緊急通報!ドーパントが多数出現!現在警官隊と交戦中!】

四体のドーパント相手に警官達が防衛ラインをしいて踏ん張っていた。
しかし所詮は通常兵器の携帯した許されていない彼らではドーパントに勝つのは不可能に等しい。
あっというのまに劣勢にされてしまう。

だがその時、赤いバイク、茶色いバイク、白いバイクが現場に到着する。

風都署の超常犯罪捜査課課長、照井竜。
時空管理局執務官補佐、ディアン・テスタロッサ。
そしてゼロとリインフォースの養女、無限ヴィヴィオ。

「青いナスカにウェザー・・・!?」
「それにバニティーとエレメンタル・・・!」
「パパたちが倒した敵ばっかりだね」
「地獄から迷い出たか!」

三人はメモリドライバーを装着し、メモリを起動させる。

【ACCEL】
【NAIL】
【HOPPER】

「変・・・身!」
「変身」
「変身!」

【ACCEL】
【NAIL】
【HOPPER】

赤き加速者、仮面ライダーアクセル。
茶色き爪と刃の申し子、仮面ライダーネイル。
蒼い飛蝗の格闘士、仮面ライダーホッパー。


「さあ!・・・振り切るぜ」
「さあ、断罪の時間だ」
「さあ!・・・決めるよ」

ホッパーの言葉と同時に戦いは開始された。
幸いにも現場の近くには人気の無い駐車場があり、三人はそこで四体のドーパントの相手をしだす。

「ハァァァァ!!」
「オォォォォ!!」
「セヤァァア!!」

アクセルはエンジンブレード、ネイルはネイルクロー、ホッパーは自らの拳と足を使い、戦いを有利に進めていく。

「プラズマアーム!ブレイズチョップ!アイスプリズン!」

ホッパーは自らの魔力を電気、炎熱、冷気に変換しての攻撃を行い敵をひるませた。

「今です!」
「わかった!」
「感謝する」

【ENGINE】
【ENGINE・MAXIMUM DRIVE】
【NATURAL】
【NATURAL・MAXIMUM DRIVE】

エンジンメモリとナチュラルメモリをエンジンブレードとネイルクローのマキシマムスロットにンサートし、必殺技を発動。
ナチュラルスクラッチャーとダイナミックエースが鮮やかに決まり、ナスカとバニティーを刻む。
そしてさらに、

【ENGINE】
【ENGINE・MAXIMUM DRIVE】

アクセルは自分のアクセルドライバーのスロットに収まっているアクセルメモリを引き抜き、代わりにエンジンメモリをインサートしてマキシマムクラッチレバーを作動させてパワースロットルをひねる。

【NAIL・MAXIMUM DRIVE】

ネイルも自分のシングルドライバーのスロットからネイルメモリを抜いて左腰のマキシマムスロットにインサート。

「ハッッ!!」
「テアァ!!」

アクセルはバイクフォームに変形し、火炎を纏いながらウェザーに突貫。
ネイルは左足を大きく上げながらジャンプし、エレメンタルに必殺の踵落とし・ネイルダウンフォースをくらわせた。

「絶望がお前達の、ゴールだ」
「復讐・・・・・・否、裁きの一撃を、その身に刻め」

『う、うぅ・・・!』
「ッ!まだ意識がある・・・!」

さっきかられた筈のバニティがのろりと起き上がってきた。
それをみたホッパーは、

【LOCUST】

右腕にメモリガジェットのローカストフォンを接続する。
そしてマキシマムライドレバーを作動。

【HOPPER・MAXIMUM DRIVE】

「これで、最後ォォオ!!」
『ぐがあああああ!!】

繰り出される必殺の鉄拳、ローァストライダーパンチを喰らい、バニティも流石にダメージ過多で人間に戻ってしまった。どうみても不通の一般人にして見えない。

ライダー一同はそれをみて変身を解除した。

「井坂でも堺でもない・・・」
「ヘルでもない。ま、当然だな」
「でも、この人達のメモリって・・・」





*****

同時刻、バイオレンスが苦し紛れに投げまくった鉄球が偶然、親子を避難させた建物の天井を破壊した。それによって瓦礫が生じる。

『ッ!』
「危ない!!」

イーヴィルもWも急いで駆けていこうとしたが、その必要はなかった。
なぜなら、緑色の大竜巻が瓦礫を吹っ飛ばして親子を護ったからだ。
しかし、そんな都合のいいものが自然に発生するわけがない。

『風属性のドーパントともう一体のドーパント?』

リインフォースの推測どおり、親子を救ったのは黄色の眼と緑の体色をした一体のドーパント。
そしてもう一体は体に布やマントを巻きつけた黄金色のドーパント。
親子はそのドーパントらを恐れて逃げてしまったが、肝心のドーパントらは大して気にするようすもなかった。

『君達は一体?』
『『・・・・・・・・・』』

フィリップが聞くと、二体のドーパントは何も言わずに去っていってしまった。

「おい、後ろ」
「え?うおッ!!」

イーヴィルが忠告した直後、敵の攻撃がWに命中する。
Wはすかさず反撃に移り、イーヴィルも必殺技を準備する。

【MANTIS】
【EVIL/KNIGHT・MAXIMUM DRIVE】

マンティスフォンと合体したナイトグレイブに2本のメモリでツインマキシマム。
両先端の刃が鎌状となり、ナイトグレイブは二本に分身した。

【JOKER・MAXIMUM DRIVE】

Wも体が正中で分断し、ルナサイドが五つに分身する。

「荒くれどもめ!纏めて喰らいやがれ・・・!」

五つのルナサイドから伸ばされる5本の腕は三体のドーパントを鞭打ちにする。
そして彼らが弱ったとところでWは一旦元に戻る――かと思ったら今度はジョーカーサイドが手刀を構えて

「『ジョーカーストレンジ!!』」

アイスエイジとバイオレンスに必殺チョップを決めた!
しかし一体取りこぼしがある。

「『ナイトマンティスデスサイズ!』」

しかしイーヴィルの構える2本のナイトグレイブの鎌が異様な長さに伸びた。
まるで鎖鎌のような起動を描く刃はあっというまにジョイントを捕らえ、そして切り裂いた。

これによってドーパントらは一気に倒され、イーヴィルとWは変身を解除する。
それによって当然、フィリップとリインフォースの意識が肉体に戻る。

「「・・・・・・」」

二人は起き上がると周囲を見渡す。
さっきの謎の二人組がいないのだ。
しかし、代わりに木製の箱と鉄製のハーモニカが落ちていた。

「「・・・・・・?」」

フィリップとリインフォースはそれを拾った。

一方、倒されたドーパントらの変身が解けて正体があきらかになる。
ジョイントになっていたのは名も知らぬ男だったが、

「えぇぇぇ!?ウォッチャマンにサンタちゃんじゃねーか!!」
「こいつは意外だな」

思わぬ正体に翔太朗はびっくり仰天し、ゼロも少し興味深げにしている。

「ここはどこ?ボキュはだれ?」

ウォッチャマンがありがちなボケをやっていると、

「このメモリは・・・!」
「ガイアターミナル以外は、まさしく・・・!」

フィリップとリインフォースがブレイクされていない三本のメモリを相棒にみせる。

「俺たちのメモリとソックリだ!」
「こいつは確か、堺のと・・・・・・貴様等、このメモリを何処で?」
「二人でブラブラしてたら、空からキランッ!ぴゅ〜〜〜!バァン!って落ちて来て・・・」
「そんで拾ったら、勝手に体に入ってっちゃったんだよ!」

大方もう一人の気絶している一般市民も同じだろう。

「メモリが持ち主を選んだというのか?そんなガイアメモリ、聞いた事無いぞ」

――ガシッ――

すると、さっきの謎の二人組がゼロの腕を掴んだ。
ジョイントメモリ、アイスエイジメモリ、バイオレンスメモリを取ろうとしているようだ。

「なんだ貴様等?」

しかしゼロに腕力でかなうわけもなく、二人組は諦めたかのように手を放した。

「・・・さっきは立派だったわよ、坊や」
「君もだよお嬢さん。さっきの魔法、中々の腕前だった」

と、二人を褒めた。

「坊やは、やめてください。・・・僕は、子供じゃない」
「一体貴方達は?」
「マリア・S・クランベリー。国際特務調査機関員」
「アダム・ルートマン。時空管理局のガイアメモリ専門捜査官」

謎の二人組は身分証を見せた。

「任務は国際犯罪者の、追跡と確保」
「そして今回は、TYPE2ガイアメモリの調査解決」




*****

探偵事務所

「コネクタ無しでインサートでき、マキシマムでもブレイクできない最新型か」
「T2ガイアメモリと、アナザーT2・・・」
「恐るべきメモリだ。管理局も余計な物を作ってくれたものだ」

テーブルの上には回収したアイスエイジ、ナスカ、バイオレンス、ウェザー、エレメンタル、ジョイント、バニティーのT2がおかれていた。

「アナザーT2の製造を命じた管理局の高官は既に確保して処罰されたが、事情聴取の結果、アナザーT2は何者かによって秘密裏に盗まれていたことが明らかになり、その足取りを追う内にマリア捜査官と出会い、互いの素性を明かして合同調査を行っていたんだ」

「そして、そのメモリを盗んだ連中は、とある凶悪犯罪集団と結託して輸送機を襲撃し、AtoZ=26本が街中にバラ撒かれてしまったの」

それを聞き、亜樹子は青ざめる。

「じゃあ、何も知らない街の人たちが、これ拾ってドーパントになってたってこと?」
「管理局の犯罪はもう見聞きし慣れたが、盗んだ連中というのがきになるな。結託した連中も」

ゼロがそういうと、マリアとアダムが捜査資料をみせた。
最初にマリアが説明する。

「私が追っていたのはこの五人よ。大道克己(だいどう かつみ)とその部下四名」

写真つきの資料を皆はまじまじと見つめる。

「各国で傭兵として活動し、甚大な被害をもたらしている犯罪者達。五人は皆、強靭な肉体と常人離れした身体能力をもっている。そしてそれぞれの特殊技能によって狙ったターゲットを確実に仕留める。言ってみれば戦闘のプロフェッショナルね。彼らの行くところは全て地獄にな・・・恐らくこの風都も」

熱心に説明するマリアにフィリップは、

(もしかして、彼女がシュラウド?僕の母親・・・?)

と考えていた。体型や声、雰囲気もどことなく似ているが故だろうか。

「今度は私の番だな」

と、アダムが資料をだした。
すると一目散に反応したのは。

「「シックス!!?」」

ゼロと照井だった。

「そ、それって・・・!?」
「確かシックスっていえば・・・」
「ネウロを追い込んだ・・・!」

名前が出たことで亜樹子も翔太朗もリインフォースも気づいた。
三年前、日本全体に超弩級の大規模破壊活動を行ったテロ組織の首領・・・!

「そう、そのシックスだ。本名はゾディア・キューブリック。知っての通り、”新しい血族”の首領たる男」
「何故奴が生きている!!?」

「管理局は秘密裏にスパイを送り込み、5本指の内4人とシックスの細胞を採取した。そしてプロジェクトFと記憶転写の技術を応用し、彼らを再生させた。彼らの一族が数千年をかけて完成させた多種多様な才能を手にしようと考えてな」

「ハッキリ言って愚策中の愚策だぞ」

ゼロは渋い表情で言い切った。

「そのとおりだ。意識を持つほどに彼らが再現されたころ、研究所は一人残さず殺されてしまった。それも常人では考えられないほど残酷な殺し方でね」

当然だ。シックスを初めとする新しい血族は天才的な技能と同時に強烈な悪意を秘めている。
特に脳内で悪意が定向進化したシックスは人が苦しみ死んで行くさまを見ることに至上の喜びを感じるくらいだ。

「そして奴らはアナザーT2を手に大道らと同盟を結び、T2ガイアメモリを奪おうと画策した。ある意味連中に全メモリが一気に渡らなかっただけでも幸運といえるだろう」

ある意味アダムの言っている事は正解だ。
その意味を踏まえると、田端の決死の自爆は無駄とは言えなかっただろう。

(やはり似ている・・・顔や声だけじゃなく、雰囲気や仕草まで・・・創造主(マイスター)と・・・)

リインフォースはアダムをみて思い耽っている。

「左、私が考えてる事、言わずともわかるな」
「当然だな。あんな奴らに街の平和を踏みにじられてたまるかよ」

答えは決まった。

「じゃあ連絡はホテル・マンハッタンへ。頼むわよ、仮面ライダー達」
「我々も尽力する。健闘を祈るぞ」

そうしてマリアとアダムは事務所から出て行った。

「はぁぁ・・・・・・フェイトを一足早くミッドに帰しておいて良かった。こんな話題を聞いたら、あいつは確実に卒倒するからな・・・」

ディアンは己が妻の性格を思い出す。

「彼女(マリア)がどうかしたか?フィリップ」
「いや別に・・・問題ないよ」
「そうは見えなかったぞ。・・・遠慮なく言えよ、相棒」
「・・・いくら相棒でも、立ち入ってほしくないことだってあるさ」

「相棒、アダムのことを随分気にしていたようだが?」
「ちょっと大昔の知り合いのことを思い出していただけだ」
「本当か?一体誰を思い出していたのだ?」
「ゼロ、例え最愛の相棒であろうと、あまり干渉して欲しくないことだってある」

フィリップが気分を害してガレージに入ってしまったように、リインフォースも事務所をでて帰ってしまった。

「・・・はぁ、仕方のない奴だ」

こうして、T2ガイアメモリの捜索が始まった。

とはいうものの、捜索対象は20pにも満たないメモリだ。
手分けして探すにしてもソレ相応の時間は要することになった。





*****

ガレージ。
フィリップは木箱を開けてみると、木箱は鏡付きのオルゴールだった。
手動ぜんまいを巻いてメロディを奏でてみる。

――♪〜〜〜♪〜〜〜♪〜〜〜――

奏でられる音にフィリップは聞きいる。

――♪〜〜〜♪〜〜〜カチッ――

曲が終わり、ぜんまいが止まった。

「もしかして・・・これは、彼女の?」





*****

無限家リビング。

――♪〜〜〜♪〜〜〜♪〜〜〜〜――

そこでリインフォースは、あの時拾ったハーモニカを吹いていた。
少しホコリを被っていたので、少し湿った布で拭いてから。

――♪〜〜〜♪〜〜〜♪〜〜・・・・・・――

突然、リインフォースは演奏をやめた。

「流石に何時までも持っているままは、拙いな・・・」

持ち主に返すことにした。





*****

ホテル・マンハッタン。
捜査と任務の都合上、同じ部屋にマリアとアダムが宿泊していたので、必然的に頭脳役の二人は顔をあわせた。

「これ、貴女のものではないかと思って・・・・・・」
「それからこのハーモニカも・・・・・・」

フィリップとリインフォースはオルゴールとハーモニカを手渡した。

「素敵なメロディですね」
「こっちも、古いけどいい音をだしていた」
「使ったの?」
「・・・・・・」

マリアは聞いた。アダムは無言だ。

「すいません、つい・・・・・・いけなかったですか?」
「私の場合は怒られても仕方ないが、フィリップは大目に「心配いらんよ」

と、アダムもマリアも許すどころか

「届けてくれてありがとう」

礼を言ってきた。

「君達を見ていると、私もマリア捜査官も、ずっと昔に失ったモノを思い出す」
「失ったもの?」
「あぁ・・・もう二度と帰ってくることのない・・・大切な・・・」
「「・・・・・・・・・」」

アダムとマリアの悲しげで切ない表情に、フィリップもリインフォースも何か感じるものがあった。
フィリップにとって実の母親との面影が被るマリア、リインフォースにとって父親たる存在との面影が被るアダム。
無意識のうちに、強い思い入れを心の内で抱いていた。

しかし、これこそが後々の戦況を大きく悪化させ、そして一発逆転の好機を生むとは、地上の誰もが思ってはいないであろう・・・・・・。


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