仮面ライダーブライ!
前回の三つの出来事!


一つ!天堂地獄が封印された地に、新生火影とブライと七実が突入!
二つ!ゾンビ化した盗賊より、天堂地獄の情報を得る!
三つ!ブライはバマーイコンボの力で、牙王を倒した!

水脈とゲームとオカマ


刃介らパー組が左のルートに進行している際、七実らグー組は右のルートを進行していた。

歩いてから暫くして、四人はちょっとした障害に行き当たることになった。


――ゴオオォォォォォォ!!――

轟々と音を立てて流れる大量の水。

「なぁんでこんな地下に川があんのよぉ?」
「地下水脈というヤツだな」
「流れ、けっこー速いよ。落ちたらヤベーや」
「でしたら、こうしましょう」

七実は助走もつけず、

――ピョン――

あっさりと向こう岸にまで跳躍した。
忍法足軽を使い、自分の体重を零にしたお陰もあってか、着地は実に緩やかだった。

「さあ、皆さんも御一緒に」
「「「いや、できないから」」」

助走もなく、一っ跳びで川を渡ってみせる者などそうそういない。

「でもまあ・・・進むしかないっしょ!」

だが風子は腹を括り、軽快なステップで川の途中にある岩を踏み台にし、向こう岸に渡って見せた。
水鏡も風子が着地する少し前から既に川を渡りきり、余裕の表情である。

残るは小金井一人だ。

「さて、最後は小金井君ですね」
「あの、七実姉ちゃ「小金井君」・・・はい」

自分のことを姉ちゃんと呼ぼうとした小金井に七実は

「私を姉ちゃんと呼んで良いのはたった一人だけです♪」
「Yes,sir!」

なんか軍人みたいな返事をしてしまう小金井。
それもそのはず、七実の邪悪な笑いを真正面から見てしまったのだから。

だが小金井はすぐに自分の雰囲気を戻してこういった。

「俺・・・カナヅチなんだけど・・・」
「「「・・・・・・・・・」」」

この状況でカナヅチ=失敗すれば溺れる。

「でしたらもう跳ぶしかないのでは?」
「そうだよ!身のこなしの鋭いあんたなら大丈夫!水に落ちなきゃいいのよ!」

七実の案に風子が賛同する。

「がんばって。溺れたら人口呼吸してやるから」
「//////・・・いらない。土門兄ちゃんに殺されたくないし」

顔を赤らめながら、小金井は返す。
そして覚悟をきめたのか、

「てや!!」

掛け声をだしてジャンプする。
順当に行けば、小さめな足場に足を乗せて再びステップを踏める。

はずだった。

――ドッ――

「!?」

何処からか飛来した一本の短剣(ナイフ)が、小金井の足に突き刺さった。

「こっ・・・小金井ーーっ!!」

激流に流されていく小金井を心配して風子は叫ぶ。

「飛び込むぞ風子、鑢!!」
「う、うん!」
「仕方ありませんね」

三人は小金井を救出しようとする・・・・・・が

――カンッカンッカンッカンッカンッカンッ――

複数の短剣(ナイフ)が三人の足元に投降される。
その方向へと振り返ってみると、人影が一つ。

「逃さない・・・・・・私の獲物・・・・・・」

底冷えするような声音で、その人物は呟く。





*****

一方その頃、左ルートと右ルートの選択と地点には、二体の異形がいた。

『・・・・・・我等が主の仲間が、流されたようだな』
『よし、あっしは流された小僧の方へ行こうぞ』
『ならば、ワシはあの小娘を手助け致そう』
『では、折角貰い受けたこの短命の身。派手に使い散らすとしよう』

二体の異形はそういって右ルートに進んでいった。





*****

小金井にナイフを投げ刺したのは、両手に奇形な刀型魔導具と思われる武器を逆手に持ち、体中に傷跡のある短髪の女だ。

その女はハイライトの無い瞳でコチラをじっと見てくる。
すると女は、自身の腕を上げて、その指で風子を指差す。

「女・・・お前が獲物だ。来い」
「えっ・・・獲物ォーーっ!?」

いきなりの御指名に混乱する風子。

「風子さん」

そこへ七実が話しかけてくる。

「こんな時になんですが、このような事態に備えて助っ人を二人程用意しています」
「助っ人?」
「もう既にこの洞窟に入ってきていますが、よければその内の一人をお貸ししますが」
「・・・・・・・・・いや、気持ちだけ受け取って『それでは困る』って、ンギャアア!!?」

行き成り登場してきたのは、先ほどの異形の一体。
なんだかイタチのような印象をうける姿形をしている。

「思ったより早かったですね、カマイタチ」
『七実様の為です』

その異形、カマイタチヤミーは七実の眼前で傅く。

「まさか、そのイタチちゃんって・・・・・・」
「私のヤミーです」

そう、七実は刃介の家に居候してからの数日間で、こっそりとヤミーを育てていたのだ。
それも二体だ。

『七実様、あの小金井という少年には、もう一人のほうが向っています』
「そうですか」

カマイタチヤミーは悠々と説明し、七実も淡々と聞き入れる。
それをみた傷跡の女は

「おい、面白そうだから、風神の女とそこのイタチ、纏めて来い」

などと言ってきた。

「ん〜〜〜」

風子は頭を悩ませる。

「・・・・・・わかった。一緒にやろう、イタチちゃん♪」
『あぁ、宜しく頼む』

「では風子さん、カマイタチ。ここは頼みますよ」
「僕らは、もう一体のヤミーとは別に小金井を捜す」
「はいはい、早くいきな。・・・・・・みーちゃん、七実ちゃん」

風子は突然テンションを下げてこう言う。

「小金井に会ったらさ・・・言っといて。ごめんよって・・・無理させちゃってゴメンって」
「それは私が言うべきことですよ」
「というか、僕らは伝言板じゃない。生きて帰って自分で言うんだな」

それを聞くと、風子は清清しい笑顔で

「あんたらも頼みがいの無い奴らだねぇ」
「かもしれませんね」


――バシャン!×2――


七実は自嘲気味にそういうと、水鏡共々、激流のなかに飛び込んでいった。

(小金井を頼むよ、二人とも!・・・・・・さーて、風子ちゃんにイタチちゃん、発進!!)

風子は女らしさが微塵も感じられない豪快な歩調で歩き、その隣をカマイタチヤミーが歩いた。
そして到達したのは



入り口と出口以外は全て・・・・・・針の寧ろと化しているフィールドだった。

「な・・・なんだぁこりゃあ!?」
「針の山・・・・・・」

そこへ傷跡の女が、鋭くとがった石筍に足を乗せてながらボソっと呟いた。

『地獄に存在するとされる場所・・・・・・ここは正しくそれだな』
「そうそして・・・我々の戦いに相応しい場だ」

意外にもこのカマイタチヤミー、けっこう博識っぽい。

「紹介が遅れた。私は緋水(ひすい)。戦いを求め、此処へ来た」
「霧沢風子!天堂地獄、壊しに来たよ!!」
『カマイタチヤミー。七実様のお言葉に従い、霧沢に助太刀致す』

こうして、魔導具使いVS魔導具使い&ヤミーという有り得ない構図が出来上がった。
に見えたが、

――ボガァァン!!――

向こう側の出口から、なにかが変な音を立てて現れた。
全身の容姿を見て連想するのは、

飛蝗(バッタ)・・・?」
『甲虫と蜂と稲子のヤミーだ』

その異形、カブハチナヤミーは即座に訂正した。

「言っておくが、私らも助っ人を使わせてもらう」

緋水は無感情に告げる。
というか、このような助っ人がいなければ、カマイタチヤミーの参戦など最初から認めていなかったであろう。

「へぇー、あんたらにも心強い味方がいるんだね」
「不本意ながらも・・・だがな」

その言葉と同時に、この二組は同時に動き、攻防を繰り広げる。

風子は風の爪で緋水に攻撃しようとするも、緋水は魔導具でそれを受け止め、逆に反撃するも風子は寸でのところでジャンプして避けた。

カマイタチヤミーもカブハチナヤミーと凄まじい一進一退を行っている。
強烈極まる旋風を引き起こすことで真空の刃を連続発射するも、カブハチナヤミーはそれを両腕から連射する太い毒針で相殺していた。

「・・・強いな・・・お前」
「これでも火影の一員さ!ウチには弱いやつなんていないのだ!」
『随分と、図に乗ってくれているな』
『それはどうかな?同種混合型』

とりあえず両者は互いの力量を確認したようだ。

「強くば生き・・・・・・弱くば死す。果たして、どちらが生き残るのだろう・・・?」
『無論俺たちだろう?』

緋水は不気味に笑い、カブハチナは奇妙に笑い、腕を振りかぶった。


――ゴドゥゥ!!――


短く太い音がする。
それは緋水の武器の刀身と、カブハチナの毒針が天井の鍾乳石を斬ったり撃ったりしたせいで、一気に崩れ落ちてきたのだから。

「げげ!?」
『拙いな』

風子とカマイタチは危機感を正常に持つ。
が、緋水は戦いを賭けやゲームとしているが故、死を恐れない。
カブハチナのほうはわからないが。

「無茶苦茶な奴だね、あんた・・・・・・」
『完全に自分達のことさえも考えていなかったな』

風子とカマイタチはギリギリのところで鍾乳石を避けた。
それに対し、緋水はというと

「まだ死なない・・・フフ・・・強い・・・面白い・・・この獲物、楽しい。フフフフフフフフフフフフフフ・・・・・・」

(この姉ちゃん怖・・・)

このうえなく危ないスマイルをし、カブハチナもそんな緋水の壊れぶりに心で大量の冷や汗をだしていた。

すると緋水はさっきの攻撃の際に、何時の間にかついてであろう腕の傷から流れる自らの鮮血に気がつき、それを舐めていると

「風子・・・といったな?」

風子に語りかけてくる。

「ロシアンルーレットを知っているか?」
「拳銃に弾丸を一発だけ入れて、互いに一回ずつ引いていくっていうアレだろ?」
「そう、相手が死ぬか自分が死ぬか・・・運のみが左右される死のゲーム」

((悪趣味だが、欲望が渦巻きそうだな))

説明を聞いて、二人のヤミーの思考は一致していた。

「極限の緊張感・・・恐怖感・・・助かった時の安堵感。戦いと同じだとは思わないか?」

――ドゴン!!――

緋水は前ふり無しに風子に切りかかる。
勿論風子はそれを避けて見せた。

「今、お前は避けることができた。弾丸が入ってない弾倉を撃鉄が打った。そうとれるとも思わないか?」
『要するにこの女は、戦いを人間ゲームとして捉えているのさ。自分という最大のチップを賭けた、運に左右される人生の一時ということだ』

カブハチナはそう要約した。

「当然・・・」

緋水は刀身をふって、近くにある石筍を斬った。
石筍の断面は鑢がけされたように綺麗で、彼女の腕前を示している。

「互いの力が拮抗している程・・・・・・運に左右される確率は大きくなる」
『多分オメーらとは楽しいバトルが出来るだろうぜ!』

――ブンッッ!!――

――バチバチ!!――

緋水は石筍の先端を、カブハチナは頭部の角から雷撃を飛ばす。
風子とカマイタチは表情を厳しくし、

「鎌鼬!!!」
『旋風斬!!』

二人は風の刃を引き起こし、石筍と雷撃とで相殺させる。

「言いたいことはわかったけどさ、好きになれない!運の一言で済ませちゃったらおしまいでしょ?」
(それは表側だけだと思うが・・・)

風子の言い分にカマイタチは心中で反論する。

「ホラ、運動会とかでも、それまで一生懸命やってきたっていうのがあったりさぁ、ボクシングとかでも負けられないっていうのがあるじゃない?」

なんか妙な例え話をだしてきた。

「そーいった気持ちが運とかを越えちゃうってのもあるぞ!モノサシじゃ計れないのよ!」
『おい、後ろだぞ』
「へ?」

そう長々と語ってる間に、緋水とカブハチナは後方に回っていた。

『突風弾』

カマイタチは即座に腕から強風を引き起こすことで、後ろにいた緋水を吹っ飛ばす。
が、カブハチナは違った。

――ヂグッ!――

聞くのもいやになるような音がした。
その針が刺さったのは、

「ッッ!・・・い、イタチちゃん!!」

カマイタチだった。

『ぐぅ・・・!』

毒針が刺されたのは三秒足らずだが、毒を送り込むには充分だ。

「霧沢風子。・・・そう言った気持ちを運命が上回るのが現実だ。実際、今のお前はくだらない話をして油断し、味方に損害を与えた。・・・・・・こんな話をしよう」

すると緋水は一方的に語り始めた。



裏麗予備軍・・・・・・戦いの中に投入される為、集められた人間。
日常の中では生きられぬ者・・・過去を捨てた人間達が、そこには沢山いた。

想像を絶する地獄・・・・・・自ら望んで死んだ者も少なくなかった。
生き残った者だけが、人間から戦士として調教され続けた。

「・・・なぜ・・・あの地獄のなか、私のような脆弱な人間が生き続けてこられたか・・・あのときは・・・もしかしたらお前の言う気持ちが・・・運命を上回っていたのかもしれない」




*****

回想、?年前

「緋水!」

当時、まだ傷跡が顔にしかなかった緋水に呼びかけるものがいた。
その声は実に爽やかな男のもので、とてもこの場に相応しいものではなかった。

「今日もお互い、生き残れたなあ!!」

ヒデキ・・・・・・互いを蹴落とすのが常の掃き溜めのなかで、彼らは互いの生を喜び合った。
彼の笑顔を見る為に生きている・・・そう思えた。

(愛シテイル・・・・・・私ハコノ男ヲ愛シテイル・・・・・・)

「いいか、緋水?なにがあっても生き延びろ!例えその為に人を殺めねばいかん時もあるだろう!仕方ないんだ。人は生きる為に、獣や魚の肉を食う。生きる為に奪わなきゃいけない命だってあるんだ!」

それは正しく弱肉強食の世を生きているからこそ言える台詞であった。

「生きろよ、緋水。お互い生き延びるんだ・・・」

それがヒデキと緋水の間にある「気持ち」「絆」「愛情」だった。

だが運命は血に汚れた者に鉄槌を下したのかもしれない。
森光蘭から告げられた最終テストによって。

その際の生存者は30名、合格定員数は15名。
つまり、一対一での死合だ。

口と鼻を覆い隠す拘束具、耳には詰め物、暗闇の中でのテストが始まった。
五感を失った中での死合・・・・・・・・・・・・その戦いに緋水は、今尚も身体に残る傷を負いながらも、敵の首に一撃を与え、血に染めた。

「勝者、緋水!!」

そして、照明がつけられると、取り戻した視覚は緋水に残酷極まる運命を用意していた。



緋水が殺し、緋水に殺されたのは
恋人のヒデキだった。



1/29の悪夢。
その時、何かが彼女の中で弾けた。

――ああ、こうなる運命だったんだ――

――戦いは・・・人生はゲームで、私が勝って、彼は負けたんだ――





*****

回想終了

「・・・それから私は敢て危険な任務にばかり志願した。でも・・・周りが死んでいくなか、私は何時も生きて帰った。不思議な気分だ。恐怖と快感が入り混じっている・・・・・・私にGAME(ゲーム) OVER(オーバー)ってあるのか・・・?私が一発だけ弾丸の入った銃で死ぬことってあるのか?」

緋水はハイライトの消え失せた瞳で、
カブハチナは足を力を込めて、

――ザシュゥゥ!!――

――ドゥガァァ!!――

「うぁああああああああっ!!」
『ぐぉぉあ・・・・・・!!』

風子の左腕を突き刺し、カマイタチの身体を思い切り踏みつけた。

「私はこれからも試し続ける。戦慄(ゲーム)の中で・・・・・・」
『そしてオメーらは、その実験台』

――ズボっ・・・!――

刀身が腕から引き抜かれる。

「次は・・・右腕か?」
「冗談!!そう簡単に乙女の肌を何度も傷つけられちゃ・・・たまんないよォ!!」
『ワシもこれ以上、時間を食うわけにはいかん!!』

風子とカマイタチは風を引き起こし、敵との距離を強制的にとった。

――キュッ――

――チャリン、チャリン――

「あんたのことはよくわかった。でも―――」
『ワシらもここでゆっくりしておる暇は無い!!』

風子は左腕に布を巻いて止血する。
一方カマイタチの身体からは数枚のセルメダルが出ていた。

緋水はゆっくりと腕をあげ、魔導具の刀身を超長距離にまでにまで伸ばした。

神慮伸刀(しんりょしんとう)

それが魔導具の名前だ。

「持ち主の意思を読み取り、どこまでも伸びる刃。私の唯一のパートナーだ」
『ま、俺はただの捨て駒だがな』

緋水は伸ばされた刀身、カブハチナは両腕の毒針と角からの雷撃で天井の鍾乳石を攻撃。
当然、鍾乳石たちは凶暴な刺客となって、敵味方関係なく降り注いだ。

「うぎゃっ!まーたこいつは・・・!!」
『また捨て身か!?』
『その通りだな』

――ザゥ!――

緋水とカブハチナは地をけり、

――ゴッ!!――

見事な打撃と蹴撃を風子とカマイタチに食らわせる。

「あうっ!」
『こやつ等・・・!』

しかし、その攻撃を行った二人にも洗礼はあった。
緋水は、右肩と右足に鍾乳石の破片が突き刺さっており、カブハチナも身体の到る場所から少量のセルメダルが音を立てて零れ落ちていた。

「命知らず、ここに極まれり・・・だね。ゾットすらぁ・・・・・・」
「死など怖くない。試してみたいのさ。私がどこまで勝ち続けていられるのかを」

緋水は相も変わらずハイライトの無い瞳をしている。

「違うね!試しているんじゃない。求めてるんだろ?緋水――あんたは死に場所を求めてるんだ!死を望んでるんだ!」
「・・・・・・・・・」

緋水は答えない。

「そんな命知らずは勇気とはいえないし・・・賛同できないんだよね。だから決めた!風子ちゃんは勝つ!! +・・・あんたも死なせてやんない!!」
『全く、七実様も、酔狂な連中についたものだ』
「そう言わないでさ、一緒にいくよ!」

風子とカマイタチは両腕を大きく振った。

「風神!!!」
『旋風斬!!』

二人の引き起こした風は一直線に突き進む。
その進行先にいる者

「お前に何がわかる?聞いたような事を言うのはやめろ、風子!」
『甘ったるいんだよ!』

緋水とカブハチナは力技で強引に風を止めた。

「勝者は生き、敗者は死すのみ!その覚悟の無いお前の楽観的思想こそ・・・賛同できん!」
『新生火影ってのは仲良しグループなのか?』

あくまでも互いの思想は合間見えないようだ。

『ならば、ワシらはこう提案する』
「来なよ。その刀で刺せるモンならやってみな、緋水」
『ついでに、そこのヤミーにも、この案に乗ってもらうぞ』

「・・・どういうつもりだ?風子・・・」
『決着を早々をつけたいってことか?』
『その通り。次の一撃でワシらに致命傷を与えればそちらの勝ち。できなければこちらの勝ちだ』

カマイタチが丁寧に説明する。

「・・・言葉の意味がよく理解できないな。なぜ刺さねば私が負けるのか・・・しかし、敢て乗ろう!」
『次で幕にしてやる!』

緋水は低姿勢になり、刀身の切っ先を風子に定め
カブハチナも角の電気を腕の毒針と脚部に移し、それを足元にゆっくり落とし

「神慮伸刀!!風子を、貫け!!!」
雷蹴針(らいしゅうしん)!!』

神慮伸刀の刀身は凄まじい勢いで伸び、電気を帯びた毒針も勢いよく蹴られ、まっすぐに風子とカマイタチに襲い掛かる。

二人はそれを待ち望んでいたかのような面持ちであり、容易く一撃をかわした。
そして、

「勝利宣言!!ROCKET DIVE READY」
『これで決まりだ』
「『GO!!』」

見事なまでに息をそろえ、風神と左手から凄まじい突風を起こし、正しくロケット噴射の勢いで突貫してきた。

((風の力で、空中を飛ぶ!!?))

余りに想定外な行動に驚き、思わず接近を許し、




全力で殴られた。




「・・・・・・・・・そ・・・うか」

緋水は気づいた。

「神慮伸刀が伸びれば伸びるほど・・・私の懐に入りやすくなる」
『それに、あんな規格外な行動をとることで、俺たちの動きを鈍くする』
「あの時の風神と旋風斬は私達への攻撃ではなく、私達の懐に入る為の道を作る為だった」

もっとも、その為に風子もカマイタチも随分体力を使ったようだが。

「・・・フ、お前らこそ相当の命知らずだ、風子・・・無茶するのはお互い様だったようだな」
「私の場合はね、生まれつきなのさ!」

実に明るい笑顔で風子はそういった。
それを見ていたカブハチナは

『・・・ま、所詮こんなものか。緋水が負けた以上、俺の命もここまでだな』
『なに・・・?』
『リュウギョク様からの御命令でな、もう俺は存在意義を失くした。先に逝かせてもらう』


――ジャリィィィィン!!――


そう言い遺し、カブハチナヤミーは大量のセルメダルへと還元され、二度と動くことはなかった。
緋水は、それをみてゆっくりと立ち上がった。

「どこに行くんだ?」
「ゲームは終わったんだよ。私のゲームオーバーだ。末路は彼と同じだ」

その表情は実に虚しそうで、悲しそうだった。

「(末路・・・)あんた・・・やっぱり!!」

緋水は予測された通り、次々と跳躍を繰り返し、高台にあがる。

「緋水!!」
「来るな!!・・・私は負けた・・・・・・戦いという賭けに負けたんだ」

自分と他人に言い聞かせるような言葉。

「やはり永遠に続くものなどありはしない。どこか・・・安心したよ。このまま勝ち進んでいたら、快楽を伴った恐怖に押し潰されていただろう。これで楽になれる」



そして緋水はこう思った。

「死を望んでいる」

・・・お前にそう言われた時・・・自分の気持ちを理解した。
そうだ・・・そうだったんだよ・・・ヒデキのところへ――――

自ら命を絶ったらヒデキに怒られそうな気がした・・・
何があっても生きろ
・・・彼はそう言ったから。

賭けに負けたら死ねる・・・そう思って・・・思い込んで戦っていたんだ・・・
終わったよ・・・・・・ねぇヒデキ?

もう・・・いいよね・・・・・・



そして緋水は身を投げた。
真下にあるのは、大きく鋭い石筍の大針。

『させん』

――バッ!――

「や。ヤミー!?」

カマイタチは、空中で緋水を突き飛ばした。

――グサッ!――

そして嫌な音が聞こえた。

「い、イタチちゃん!!」

風子は急いでカマイタチに駆け寄る。
石筍の大針が彼のどてっ腹を貫いていたのだから。

しかしカマイタチは無理矢理に状態を起こすことで石筍をおり、セルが溢れ零れる身体を引き摺りながら緋水に歩み寄る。

『緋水、今ワシがお前を助けたのは何故か・・・わかるか?』
「・・・・・・・・・なぜ・・・なぜ死なせてくれない!?お前に邪魔する権利があるのか!?」
『天誅!』

――ゴンッ!――

「いた・・・ッ」

カマイタチの拳骨が緋水の頭頂部に炸裂。

『理由としては、命令されたからだ。ワシは宿主の中に居た際、七実様にはこう言われた、救いようのある奴は死なせるな・・・・・・これは七実様からの厳命だった』

「な、何故そんな命令を・・・?」

『さぁてな。ただ、七実様はお前ら人間のことを知りたがっている。人間の欲望に秘められた何かを・・・・・・だから助けただけだ。どの道、ワシらヤミーは短命の身。こんな感じで死に逝くのも悪くないと思ったのもあるがな』

カマイタチは無理矢理に顔の形を変えて笑った。

「どうして・・・笑えるんだ・・・?あの時・・・私がヒデキをこの手で殺してしまった時・・・マスクをとった彼の顔も、笑ってたんだ・・・・・・?」

それは緋水の心に引っ掛かり続けていた疑問だった。

「教えてくれよ!なんでなんだ!」

そう叫ぶ緋水に、風子は彼女を優しく抱きしめた。

「何があっても生きろ・・・とその人は言った。途中であんただって気付いたんだね・・・・・・どういう結果になろうとも・・・あんたが生きることを望んでたんだ。”生きようっていう気持ちを持て!”運命なんか変えちまえ!」

「ヒデキは・・・私の為に・・・自分から死んじゃったんだよ・・・?それとも・・・馬鹿なのかな・・・風子・・・?」

緋水はそう呟き、

「うあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ!!」

思い切り泣き叫んだ。
ただただ、想い人との、短くも楽しかった日々を思い出して。
それは否定のしようもない、幸福と不幸の記憶だった。



そして

『霧沢』
「・・・なんだい?」
『ワシと奴のセルメダルを、七実様に届けてくれ。遺言と思ってくれていい』
「わかった・・・・・・必ず、届けるよ」
『感謝する』

――ジャリィィィィィン!!――

そうして、カマイタチヤミーもセルメダルへと還元された。



そうして、十数分後
風子は針の山から出て、緋水から教わった方向に進んでいた。

ヤミー二体分のセルメダルを運ぶには、風子の黒いヘソ出しタンクトップ一枚に短パン紛いなジーンズという恰好は余りに不適合で、どうしようかと思っていたとき、緋水はメダルを入れて持ち運ぶのに丁度良さそうな袋を風子に渡してこういった。



・・・こっち側の穴から先へ進め。川の流れの方向だ。
一緒にいた三人とも何時か合流できるはずだ。

一本を風子・・・お前に預ける。
お前とカマイタチには借りが出来た。
いつか返すときまで使ってくれ・・・それが――――

私の生きる証だ。



「右手に風神。左手に神慮伸刀!なんかカッコイイ!」

とはしゃぎつつも、風子はこう思っていた。

(負けんな・・・緋水!そして、見ててよ・・・イタチちゃん!)





*****

一方、激流にのまれた小金井は

「あ?」

洞窟のどこかの砂浜っぽいところで、一枚の毛布を掛けられて眠っていたが、両目の端に雫を浮かべた状態で眼が覚めた。

「それにしても、ここ・・・どこ?」

周囲を見渡しても、岩や砂ばっかりだ。

(確か俺はえーと。水鏡と風子姉ちゃんと七実さんと一緒で、川を渡ろうとして失敗して落ちて・・・失敗・・・っていや足にナイフが刺さったからで・・・・・・)

色々と脳内を整理中。

「あれ?」

ふと目に付いたのは、ナイフが刺さった右足に巻かれた包帯。

『お、ようやくお目覚めかい?』
「もう大丈夫」

が、そんな疑問云々は一人の異形と一人の変質者の登場で吹き飛んだ。

「ウフ♪神威よん♪」
『あっしはカッパヤミーでさぁ』

裏麗の一人と、七実がはなったもう一体のヤミー。

「う・・・うわ・・・うわあぁああぁあああああぁ!!!」
「ちょっとォ、待ちなさいよ〜〜〜!人見て逃げるなんて失礼じゃないかしら?」

逃げようとする小金井のベルトを掴み、ガッチリと捕まえる神威。
まあ、「人見て逃げる」とは言っても、一人だけ怪人がいるわけだが。

「な、なんでお前がここに・・・って・・・うわ!!オレ、上半身裸だよ!!なにをしたっていうんだぁ、何を!?尻小玉でも抜き取るのか!?」

パニックを起こす小金井。

「まだ何もしてないわよぉ」
『尻小玉を抜くなら上ではなく下を脱がす』

さりげなくツッコム二人。

「風邪ひかないように脱がせただけよ。もう直ぐ乾くわ」

確かに小金井のシャツは焚き火の近くで干されていた。
因みに、カッパヤミーは服が乾くまでの間、自分の素性を小金井に話した。
信用してもらうのにけっこう時間がかかり、危うく服が焦げるところであったが。

どうやらカッパヤミーと神威は小金井が寝てる間に一切戦いことなく、妙なことに意気投合していたらしい。
一体なにをどうすれば妖怪と変態の間にそんなことが起こるのかが、果てしなく疑問だが。
つーか、知りたくもない気がしたりもする。

「御飯、食べる?」

と、神威はキャンプやサバイバルで使われてそうな炊飯道具を手に持ってそういった。
炊飯道具の中にある白米はきちんと出来上がっているらしい。

とりあえず小金井は服を着て神威の提案に頷き、インスタントカレーを熱湯で暖められる光景を静観することにした。

――グツグツグツグツ――

「ウフ♪バーモンボカレ〜〜〜♪」

神威はインスタントカレーをヒョイとつまみ出した。

「たーらら〜♪たりィーー♪あぁあんあ〜ん♪」
「『・・・・・・・・・・・・』」

なんか意味不明な歌を歌う神威を小金井とカッパヤミーはとりあえず黙ってみておく事にした。

「おぉ〜、彼のお口にィ♪カレ〜カレカレ〜♪」

白米が盛られた三枚の皿に、それぞれ一袋ずつ、カレーを白米に盛って行く。

「なあ・・・鋼金暗器とってきていい?」
「アラ、予告奪回?正直な子ね。でもダメ〜〜。三人で一緒に御飯(カレー)食べたら、返してあげるっていったでしょ?」

といいながらカレーを差し出す神威。

小金井はくんくんとカレーの匂いをかぐ。
その際、彼からは獣の耳と尻尾生えて見えるのはどうしてだろうか?

「・・・・・・しびれ薬とか入ってない?」
『心配御無用。あっしがずっと見てたが、神威はそんな物混入させてる仕草はありゃあせんぜ』
「そうよ!私は○○○する時は無理矢理しないの!今は○○○よりご飯!!」
「誰もそこまで聞いてない・・・・・・」

色々と食欲を萎える言葉を二回も聞いてげんなりとする小金井。

(なんか・・・変な奴)

そう思いながらカレーを食べていると、神威は小金井を愉快げに見ている。

「な、なんだよ・・・?」
「食べ方カワイイ♪」
「ブバァァァア!!」
(勿体ないな・・・・・・)

いきなりの発言に小金井、盛大に吹いた。
美少女や美女に言われたのであれば、この上ない萌えだったであろう。
しかし小金井を褒めたのは、モヒカンヘアーのオカマ。

なんかもう、色んな意味で願い下げだった。

「そうなの!!やっぱり男の子はカワイイに限るの!子犬のようにね!」

主張!これは主張である!

「・・・・・・・・・ハァ・・・ユウウツ・・・・・・」

ため息混じりにいった。

「ホントは私、貴方たちを殺したくないの。だってに好きになっちゃったんだもん」
「・・・・・・・・・・・・」

なんか小金井の表情がどんどん微妙に・・・・・・。
もっとも、カッパヤミーはそんなことを気にせず、カレーの最後の一口を食べているが。

「でもダメ。私と貴方たちは敵同士・・・愛し合っていても結ばれてはいけないのよ」
(早く終わらないかな〜〜)

なんか妙なDelusion World=妄想世界に突入しているバカにカッパヤミーも飽きを感じ始めた。

「そう!!ロミオとジュリエットのように!!・・・・・・・・・・・・悲しいけど仕方ないのよね」

神威は寂しそうに呟き、鋼金暗器を小金井に投げ渡す。
するとカッパヤミーは小金井の隣に立ち、神威と対峙する姿勢となる。

「楽しい時間をありがとう。貴方たちとの思い出は忘れない。すごく・・・使い古された台詞、言っちゃおうかな・・・・・・」

神威は一呼吸をおき、

「私の心の中で生き続けるのよ!!カッパちゃん!!薫!!」

――ザンッ!――

――ギィン!――

神威は魔導具でもなんでもない両刃剣を振るうも、カッパヤミーが背中の甲羅で弾く。

「好きだけど、かなァ?・・・ううん・・・やっぱり、好きだから殺すの。ウフフ♪」


今此処に、新生火影の斬り込み隊長&欲望の怪人vsモヒカンヘアーでショタなオカマとの激戦が始まる!!

次回、仮面ライダーブライ

サイボーグとタッグと冷血?


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