仮面ライダーブライ!
前回の三つの出来事は!


一つ!復活したメズールとガメルが真木の元に集結!

二つ!ウニアルマジロヤミーが、睡眠欲を利用し大量のセルメダルを獲得!その一方で、刃介と七実は四季崎から重大な秘密を告げられる!

そして三つ!伊達明は一億の報酬金の為に真木と組み、そして金女がゼントウによって重症を負わされたことにより、刃介は我刀『鋼』として暴走した!
超絶暴走と紅蓮のチェリオとReverse/Re:birth
『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッ!!!!』


そこには一本の刀があった。
神々しくも禍々しい金色の波動(オーラ)をあたり一面に撒き散らし、憎悪と怨嗟に吼える妖刀が。
普段は赤黒い眼光さえ、その負の情念に呼応するかのように、紫色の邪悪な光を宿している。

だが・・・そこへ・・・

「――きゃっ!」

七実の体から十五枚のコアメダル・・・・・・そう、竜王が予備につくった十五枚がガトウに引き寄せられ、七実の体内から飛び出てしまったのだ。
刀系を十二枚、龍神系を四枚、変体刀系を二枚、そして今取り込んだ十五枚―――合計で三十三枚のコアメダルがガトウの中にある。

そこにいた者達の反応が様々である。

まずグリード側は後悔していた。
コレほどまでに運悪く、目の前の妖刀に出くわしてしまったこと―――いや、それどころかこの妖刀と出遭ってしまったこと自体に後悔していたと言って良いかもしれない。

映司(オーズ)と後藤とアンクは、恐怖していた。
今まで仲間として接してきた男がコレほどまでに豹変したことに。
さらに、自分たちには想像する事さえ赦されないようなモノを秘め続けていたことに。
そして、3人は知った。――目の前の妖刀が秘める家族への愛情を。

七実に竜王(クエス)は、一種の感激を覚えていた。
彼女等は元人間ではなく、あくまで人形(ニセモノ)に過ぎないが、本人の記憶においては、自分等は他者より優れすぎ、死ぬ時まで敗北を知らず、七実は両親からさえも恐れられては疎んじられ、竜王はその強さ故に機密漏洩防止の為に”夢幻惑い”で十二頭領以外の同胞達から自分に関する記憶を消したこともあった。
強い所為で孤独に生きてきた彼女等でさえ、目の前にいる一本の刀に崇拝にも近い感情を向けていた。
もしかして、自分たちをいとも容易く捻じ伏せるやもしれない、彼女達の愛する男へ。


『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッ!!!!』


刃金(ヤイバ)と鋭い牙に満ちた口が再び開き、更なる咆哮が天地を揺らす。
その吼える声に喜ばしそうにする者がもう二人いた。

ゼントウは武者震いしていた。
今までナリを潜めていた目の前の金色のグリードが叫んで飛ばす音に、森羅万象を支配する欲望を感じ取り、その欲望が彼を無限に強くしていくのだと直に感じ取って。
失敗作の自分では決して勝てない相手だとは重々承知している――しかし、それでも武者震いは止まらない。今からが手にしている一本の完成系変体刀・薄刀『針』の毒に触れた今、堕剣士の闘争意欲もまた高まっているのだから。

デシレは狂喜乱舞したい心境だった。
己の手でこれほどの作品を――しかも未完成の状態で既にこれだけの力を発揮するモノを作りつつあることにだ。心の隅には他の者が抱いているような恐怖や好奇などの念があったかもしれないが、それさえも押し退けてしまう程にデシレは心地好さを感じていた。
此の世の万物を生み出すことも消し去る事も出来得るであろう、欲望の神の雛形の姿を今、こうして見て拝めているのだから。

そして、


『殺す!!殺す!!殺す!!殺す!!殺す!!殺す!!殺す!!殺す!!殺す!!殺す!!』


黒い殺意が全てを斬り殺すかのように飛び出した。
そして彼の狙いは、血染めにされて地に伏している金女に視線が向けられた直後、実行犯と主犯であるデシレとゼントウに向く―――と誰もが思っただろう。


『コロス!!コロス!!コロス!!コロス!!コロス!!コロス!!コロス!!』


だが現実というものは堅くて脆いモノだ。
どれだけ当たり前と思った想像さえ、容易くぶち殺してくる。
長々と語る必要はもう無い――ハッキリ言おう。


我刀「鋼」は、映司達や七実ら以外の全てに襲い掛かった。


『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッ!!!!』


表記不可の雄叫びで世界そのものさえ震え上がらせ、ガトウは動き出す。
大切な者を傷つけられた怒りと憎しみを、神々しい金色のオーラに混ざる禍々しい紫のオーラに篭めて。

まず最初にグリード側。

――瞬ッ!――

高速さえ越えたスピードで彼等の前に立ち、

――ザシュ!ザギュ!――

『うッ、きゃああああああああ!!!』
『メズール〜〜!!』

ガトウは両手の刃でメズールの体に幾数もの深い傷をつけ、さらにもう一度攻撃する事で百枚近くのセルメダルと共にタコが描かれた水色のコアを体外に出してしまう。
ガメルも一番親しい存在であるメズールの大ダメージに叫ばずにはいられない。

お次の標的は、カザリ。

――ブァン!ブァン!――

『なっ、なにぃぃ!?』

ガトウが手を思い切り振るうと、両手合わせて十の斬撃刃がカザリの体に襲い掛かる。

『ぐぁぁあああああ!!』

当然、カザリも百枚近くのセルを落とす中、ライオンのコアも一緒に弾け飛んでしまった。
勿論のこと、それを見逃すアンクではない。

(チャンス・・・・・・!!)

素早く本体である『右腕』を飛ばし、弾け飛んだライオンとタコのメダルを握って掴んだ。
そうして素早く信吾の体に戻る。

(こいつは良い・・・!セルメダルの代金だ・・・!)

などと、かなり身勝手な思考があったが、格段気にする事でもないのでほっとこう。
アンクの心境はコアを二枚手に入れたことで、先ほどまで感じていた恐怖と好奇は薄れた。

ガトウはそのままロクに唸りもせず、すぐさま主犯と実行犯に視線を釘付けにし、凶暴で残忍な口を獣のように大きく開き、両手と両脚に力を入れる。一撃でも多く入れるため、一撃一撃に凶悪な威力を持たせるために。

『ヴゥゥオオオオオオオ!!!』

そうして漸く表記可能な唸り声をあげ、ガトウという怪物は本能のままに動き出す。
まずはゼントウからだ。


『――速遅剣』

薄刀を振るった瞬間、刃渡りが自由自在に変化を遂げる技。
それは見事にガトウの体に入ったが、

『っ――逆転夢斬!』

すぐさま刃を引き、技を変更する。
悟ってしまったのだ――刃がガトウに触れた瞬間、速遅剣如きではガトウを破ることが出来ない。
そう悟らされ、柄と鞘を用いた簡易な二刀流による技を使った、しかしながらコレも・・・・・・。

――ガシっ!――

ガトウはゼントウに超高速で接近し、彼の両腕を掴んで技を強引に封じてきた。
虚刀流を除き、大抵の剣士は刀という武器が無ければ戦力が大幅に削られる。

そうして、ガトウは口を大きく開いて悪魔のような凶貌を除かせた直後、


――ビカッ!!――


赤黒から紫に染まっていた両の眼光が、光を帯びた真紅に変色し、怪光線を出してきたのだ。

『ぐぉぉあああああああ!!』

光線の威力は当然ながら甚大で、ゼントウも大量のセルメダルを削ぎ落とされた。でも『針』とコアを護れただけでも上出来と言えるかも知れない。

そして最後は―――

『ヴゥゥゥウウウゥゥゥゥ・・・・・・!!』
『やっぱし、俺かよ』

残る憎悪は全てデシレに向けられている。
しかし、こんな状況にも歓喜するデシレだ――慌てた様子など、微塵もありはしない。

『痛手負うのは御免被るし、ちょいと荒療治だな』

デシレは相違って体内から何か奇妙なメダルを取り出し、それをガトウに投げつけた。

(なんだあのメダル・・・!?)

オーズの眼から見ても、そのメダルの正体は見当もつかなかった。
なにせ、虹色のメダルの存在など、この場の誰もが初見なんだから。

『ッッ』

投げつけられたメダルをそのまま引き寄せて取り込んだガトウ。
だがしかし・・・・・・。

『ヴッ・・・!ヴァァァァァ・・・・・・』

体中から紫電や七色の波動がバチバチと彼に迸り、先ほどまでの勢いは無くなっていた。
寧ろ、何かを必死に抑え付けようと大人しくなっている。
その様子を見たデシレは、ゼントウとグリード達にこう叫ぶ。

『おーい、お前等ぁ!そろそろ引き上げ時じゃねぇのかぁ!?』

それを聞いた瞬間、真木が首肯した。

「皆さん、今のうちに逃げましょう。何時またアレが暴走するか解りません」
「みたいだな」

真木とバースは謎のメダルの影響下にあるガトウを見つつ、三人のグリードを連れて逃げ帰ってきた。
デシレも負傷したゼントウを連れ、翅を拡げて住処へ戻っていった。

『ぐッ・・・!うっ・・・!あ、アぁ・・・・・・』

ガトウは呻きながら何かに耐え忍び、最後には・・・・・・


『■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ッッ!!!!』


再び狂い咲いた音を、大きく荒れ狂って裂けた大きな口から出し、


――ビューーッ!!――

背中から巨大な翅を二枚生やして凄まじいオーラを辺り一面に放ったのだ。
虫の翅のようでいて、悪魔の翼にも見える、その巨大な二枚。

このままどうなるのかと思い、誰もが固唾を飲み込んだが、ガトウはあらかた叫び終えたら、急に両腕をダラリとぶら下げて大人しくなった。一目で全身から力が抜けたことがわかる状態となる。

「・・・・・・・・・・・・」

そして、ガトウの状態は完全におさまり、漸く鋼刃介の姿に戻ったのだ。
それに対しては、一番早く動いたのが―――

「刃介さん!大丈夫ですか!?」

刃介を心配する七実と

「火野、後藤!救急車を呼んでくれ!」

金女の為、オーズと後藤に救急車を呼ぶよう指示するクエス。

「「・・・・・・・・・・・・」」
「おい、何やってんだお前等?」

呆然と立ち尽くす二人に、アンクが呼びかける。
それに二人はハっと気がつく。

「わ、わかった!直ぐに119番に!」

後藤は携帯電話を使って早速救急車を呼んだ。

「金女さん!しっかりして下さい!」

オーズは変身を解き、ポケットに突っ込んでいた明日のパンツで金女の傷口に押し当て、止血しようとする。
残った者が様々な意味で動き回る中でただ一人、観ることに徹していた男がいた。

(今の虹色のメダル・・・・・・一体どんな力が?)

アンクだけは、刃介の体内に放り込まれた謎のメダルに興味を集束させていた。





*****

金女はすぐさま救急病院へ搬送された。
騒ぎが大きくならないよう、トライブ財閥や鴻上ファウンデーションと懇意にしている病院へ。
付き添い人として、竜王が傍にいることとなった。

そして、クスクシエでは、比奈が伊達の裏切りに驚いていた。

「――伊達さんが裏切るなんて・・・そんな・・・」
「驚くことじゃない。奴は最初から一億のために動いていたんだ」

アンクがズバっと言い切る。

「だが、俺達をあんな風に裏切る人じゃない!」
「どこがだ?俺等の前でハッキリ言ってたろ?」

アンクは奪ったライオンとタコを見つつ、毒を吐く。

「だが、不幸中の幸いだな。鋼が暴れ回ってくれたお陰で、二枚のコアを手に入れられた」
「そいつはどういたしまして」

刃介は皮肉気な口調で返事する。

「でも、あの虹色のメダルは一体なんなのでしょうか?」
「詳細は俺にもわからんが、体内に入ってきた途端、全身に半端じゃないエネルギーが満ちてきて、抑えねば危うく完全暴走するところだった」

それはつまり、ただ暴れ回るだけでは済まない事態になっていたかもしれない、という意味だ。
七実の問いに、刃介本人が苦々しく語る。

「にしても、伊達さんが裏切る理由って、やっぱり一億円ですかね・・・?」
「一億円・・・・・・そんなお金、一体なんに?」

比奈はまだ何も知らない。

「伊達さんはずっと、医者がいなかったり、医療の遅れた地域で活動していた」
「だから、医療関係の学校をつくりたいんじゃないかって」
「多分、それが伊達さんの夢だ。――だが、その為のお金を、汚い手段を稼ぐとは思えない」

後藤と映司が仮説を口にし、後藤は伊達の心境を浅はかにも察しようとする。

「フッ・・・夢ってのはお前ら人間が欲望を都合よく言い換えたものだ。綺麗も汚いもあるか」
「同感。欲望も夢も、方向性はどうあれ至極純粋だからな」

アンクと刃介は否定的な態度をとる。

「だがもし、伊達さんがそのことで俺達を裏切ったなら、体のことで焦っているのかもしれない」

しかし後藤は怒るのではなく、伊達なりの理由を推測した。
するとそこへ、クスクシエのドアが開いた。

「チィーッス!鋼のヤツ此処にいるって聞いてきたんだけどよ!」

入ってきたのは高校生くらいの少年。

「烈火か。随分とまあクソ忙しい時に来てくれたもんだなぁ」
「間が悪かったですね」
「ん?」

何も知らずにやってきた元火影忍者に、七実は彼のことを映司らに紹介し、現状を須らく伝えた。

「え、金女のヤツが、重症だと!?」
「今んとこ、竜王が付き添ってくれている」
「確かに、トンデモない時に来ちまったな・・・・・・」

仲間に裏切られ、仲間を斬り付けられ、最悪すぎるタイミングで遊びに来てしまったことを果てしなく後悔する花菱烈火。

「兎にも角にも、今は連中の様子を見てから、今後の方針を考える。みんなもソレでいいな?」

刃介の言葉に、否定するものはいなかった。





*****

武家屋敷。
そこには住人の四季崎と白兵しかいないのだが、今日はまたもや珍しい脚が五人もやってきていた。

「団体さんのお越しか」
「お邪魔させてもらいますよ、デシレ君」
「今は四季崎でいい。白兵(こいつ)のことも錆白兵と呼んでやってくれ」

茶の間に来ているのは真木を初めとする五人のグリード。
そして、伊達明も一緒だった。

「んで、今日は雁首揃えて何の為に来たんだ?」
「簡単に述べれば、勢力統一の為の同盟を結びに」

真木は相も変わらず人形を観て喋り続ける。

「鋼刃介くんの暴走によって、カザリ君とメズール君のコアが一枚ずつ奪われてしまったことですし、我々は本格的にブライに対する警戒を強めなければなりません。それに―――」

真木は横や後ろに控えたグリード達や伊達へ一度振り返ると、

「それに、貴方が持っていた虹色のメダルについても是非お聞かせ願いたいのです」
「ああ、アレか。あいつはな、簡単に言えばコアの力を暴走させる特殊な代物さ」

――ピクッ――

コアの暴走、という点に真木は眉毛を動かした。

「まあ、暴走したグリードに世界を喰らい尽くして貰いたいお前にとっては、美味しいモンだろうな」
「それってどういう意味?四季崎記紀」

メズールはここで漸く口を開いた。

「ドクターは僕らの誰かを暴走させたいのさ。コア全部の器にして、そうして世界を終わらせる」

それに対してはカザリが簡潔に説明した。

「本気?ドクターの坊や?」
「何れお話しする時が来るまで」

真木はそうしてはぐらかす。
そこへ四季崎が切り込むように言った。

「期待させといて悪いがよ、あのメダルで暴走させられるのは、俺が作ったコアを軸にしてる奴だけだぜ。普通のグリードが使っても、トランプのジョーカーみてぇに、普通のコア一枚分になるだけだ」

そういった瞬間、真木たちの動きが少しだけ、完全に止まった。
一番最初にそれへツッコんだのは。

「おい、待て!あんたが作っただと!?」

伊達明だった。

「その通り。虹色のメダルは勿論、俺や白兵、そしてリュウギョクなどと言った連中のコアを創り出したのは、この俺なんだよ」

四季崎は肯定する。
しかし、ブライやキョトウについては触れないでいる。

「言っておくでござるが、この話を聞いたからと言って都合の良い話は吹っかけないで欲しいでござる。お主らの目的は集りではなく、同盟なのでござろう?」

白兵はそうして牽制するが、連中の目はギラついている。
なにしろ、コアメダルの製法を知る者がこれで二人いることになるのだから。

「だけどさ、態々目の前にコアを創れる奴がいるのに、はいそうですかと言って引き下がるわけには行かないね」
「意地でもコアを創ってもらうわよ・・・・・・!」
(うぅぅ・・・メズールとカザリ、怖い・・・)

目くじらを立てるカザリとメズールに内心怯えるガメル。
四季崎は立ち上がると、座りもせずに、床にボールを突いては投げ突いては投げを繰り返しているロストに近づきながらこういう。

「おいおい、大の大人が揃ってなんだよ?見っとも無いとは思わないのか?なぁ小僧?」

ポン、とロストの頭に手を乗せると、

「邪魔だよ!!」

左肩から片翼を現出させ、吹っ飛ばそうとするが、

「あめぇぞ小僧」

逆に四季崎が十枚の翅で吹っ飛ばした。

「うわあああっ!!」

ロストは障子を破って庭、放り出されてしまった。

「「「ロスト(アンク)ッ!!」」」

三人のグリードが驚きながら吹っ飛ばされたロストを観ていると、

「もう一度お主らに聞くでござる」
「集りに来たのか、同盟を組みに来たのかを」

真木は数秒間を沈黙と思考に費やし、

「申し訳ありません。こちらの失礼をお詫びいたします。改めまして「ちょっと、待てよ」――なんでしょう?」

――バッ――

四季崎が真木の人形を奪った。

「――――――ッッ!!?」

それに対して真木は今までの冷静さ全てを金繰り捨てるような動きで必死に人形を取り戻そうとする。

「お前な、話すときは目を見て言え。俺の目をきちんと見て言えたら返してやる」

そう言われた真木はパニック状態のままだが、人形の為に必死な表情で四季崎の目を見て焦り気味の口調で、叫ぶように言った。

「お、お、お願いします!いま、今までの失礼をおわ、お詫びしますので・・・・・・どぉ、同盟を組んで下さい!そしてソレを返してください!!」
「なんか歯痒いが、まあ良いか」

四季崎はギリギリ合格点を出し、押し付けるように人形を返した。
こうして、四季崎と真木達による同盟が締結された。

もっとも、主導権は四季崎が握る形となってしまったが―――これで、グリード達の勢力はさらに増して行くことにも成った。

「・・・・・・・・・」

伊達は静かに茶の間とは別の部屋に行こうとしたが、

「ッッ―――――」

また手酷い頭痛に襲われ、足元がふらついた。
視界の方も朦朧とし始めている。

(予想より早い・・・・・・)





*****

夕方の救急病院の廊下を歩く音。
スタスタという軽やかなものとコツコツというものの二種類。

「悪いわね、急に呼び出して」
「いや気にすんなよ。金女んトコに見舞いに行くんだろ?」

そこにいたのは私服姿の烈火と、鉄製のケースを持ったルナイト。
ルナイトに呼びつけられた烈火は、こうして金女が搬送された病院の廊下を歩いていた。
足音を揃えないまま、奥の奥へ行くと、そこには集中治療室のドアが。

「遅いぞ」

ドアの前で待っていた女性が軽く叱責する。

「りゅ・・・竜王!?なんでお前!?」
「病院でデカい声を出すな、この愚か者」

だけども、驚くのも無理はない。
烈火ら火影メンバーの記憶では、竜王は死んだままなのだから。
その情報が急遽更新されれば、そりゃ騒ぐ。

「金女ちゃんの容態はどうだった?」
「医者によると、出血が多くて危険らしい。幸い、必要な輸血は確保出来てるし、傷口もかなり綺麗だから直ぐに止血と縫合に入ったみたいだ。ついさっき、治療を終えた直後に意識が戻ったよ」
「ふー、良かったぜぇ」

烈火が安堵していると、

「それは上々だわ。・・・それで、喋れるの?」
「喋るだけなら問題は一切ない」

竜王からそれを聞くと、ルナイトは烈火にこういった。

「花菱くん。金女ちゃんと少しお話してきて頂戴」
「え・・・?」
「そして、話をした上で、これをどうするか決めて頂戴」

ルナイトがケースを開き、そこから取り出したのは、炎が刻まれた紅蓮のコアメダルと、所々にメタリックレッドのラインが付け足されたチェリオドライバー。
この二つの物を持たされ、強制的に部屋に放り込まれてしまった烈火。

でも、ベッドの上で包帯だらけの姿で、仰々しい設備や装置のコードがつながっている金女の姿を見た瞬間、困惑が消え去り、純粋に『自分に何ができる?』と思った。
烈火は金女に近寄り、「聞こえるか?」と聞いてみた。

「・・・・・・はい」

薄らとしていたが、要は口を開いて声を出した。

「わかるか?俺だ、烈火だ」
「ああ・・・・・・やっぱり、来たんですね」
「話してこいって言われたんだけどさ、よくわかんなくてよ・・・・・・」
「深く、考えることなんて、ありません」

金女は薄らと微笑み。

「貴方がチェリオになりたいか――なってどうするかを決めるだけで良いのです」
「決めるだけで・・・・・・」
「貴方なら、決めたことは実行するだけでしょうし、アドバイスとしては、充分でしょう?」

金女は微笑んだ表情を悪戯めいた笑顔にする。

「本当に俺で良いのか?俺はもう、普通の人間なのに」
「私だって普・・・・・・いえ、普通どころか人殺しです。それに引き換え、貴方はただ炎術士でなくなっただけで、まだ戦う力全てを失ったわけじゃない。まだ、そんなに体力持て余してるほど、元気じゃないですか」

金女はそういうと、真顔になってこう告げる。

「どんな選択肢を採るかは、君に全て任せます。でも、掴んだ選択に後悔するような失態だけは犯さないで下さい。――故に、自分の全てを、信じなさい」
「自分を・・・信じる・・・」
不忍(しのばず)――私は暫く、忍者から患者にジョブチェンジするような身の上です。だから貴方に託します。同じ忍びとして、決意ある者として」





*****

その夜、鴻上ファウンデーション会長室。

「成る程。伊達君のために一億の前借を・・・・・・素晴らしい」

ケーキのクリームを泡立てながら、鴻上は頭を下げている後藤と話していた。

「一億は無理でも、お借りできる最大限をお願いできれば!」
「前借の限度額は君の年俸と・・・・・・今後何年働けるか・・・財団への貢献諸々と、欲望の大きさを考慮して算出される―――里中くん」

指示され、ソファーに座りながら里中は電卓を打ち終え。

「7万8千円です」
「ッ・・・・・・」

一億の前には塵芥に等しい値だ。

「大きなマイナス要因は、君の欲望だ。かつての詰まらないプライドはなくなったが、欲望も小さくなったようだ。伊達くんのサポートという位置に、安住し過ぎたかな?」

と語る鴻上はさらに迫るように、

「伊達君がいなくなったらどうする?以前あんなにバースに成りたがっていたのに、すっかり忘れたようだ」
「いえ・・・今も何時バースになってもいいようにと!」

体は日頃から鍛えに鍛えている。

「君の欲望は、いつも(ここ)に留まっている。――(ここ)で感じたまえ!!」

その言葉に、後藤は何も言い返せなかった。





*****

洋館に戻った真木達は、それぞれ就寝についていたが、伊達と真木はまだだった。

真木は人形に寝巻きを着せ、ベッドで横にさせている。
伊達はそんな真木に話しかけた。

「こうして見る限り、まだ人間だよなぁドクター?」
「さぁどうですか?」

曖昧に答える真木。
伊達はその後ろに飾られている『来るべき終末』が描かれた絵画を観る。
真木のシンボルカラーとなった紫の布が周囲にあることで、よりミステリアスな雰囲気になっている。

「なあドクター。・・・・・・世界を終わらせるって、本気なの?」
「終わらせます。人も世界も、終わってこそ完成する」
「そうかなぁ?ずーっと続くから良いんじゃないの?自分が死んだ後も何か遺る。ドクターだってその人形のこし―――」

人形に触れようとした瞬間に支度が終わったのか、真木は人形を持って避ける。

「残れば醜い残骸です。美しいうちに終わらせなければ」
「・・・・・・グリードになって、ね?――止めるのは無理か」
「私は既に一度、姉の人生を終わらせてます。グリードになってるとしたらあの時に・・・・・・」

そして、上の階に上がるべく、階段に足を伸ばす。

「君とは解り合えるとは思ってません。あの研究所にいた時からずっと」
「・・・・・・なあドクター」

伊達はそんな真木を呼び止める。

「俺は結構好きだったよ。・・・・・・あんたも、人形も」

そう言って伊達が行こうとすると、今度は真木がこう言う。

「伊達君。明日再びオーズとブライに仕掛けます、私と君と四季崎の3人だけで。向こうも油断するでしょう」

伊達は小さく「OK」と言って、そのまま互いに部屋に戻っていった。





*****

鋼家の居間。
そこで営業と家事をしながら待機していた刃介と七実。

「・・・・・・・・・お」
「何かありました?」

刃介が何かを感じ取ったようだ。
その証拠にブラッドレッドの瞳が、見事な金色になっている。

「四季崎の野郎か。・・・コアが呼び合ってやがる・・・」
「来い、というわけですか」
「行くか。多分、火野達も来るだろうしな」





*****

町外れにポツンとある廃工場。
今となっては出入りする者も疎らな場所だ。

――ブゥゥウウウゥゥン!!――

「陰気臭い場所だな」
「だとしても、行かねば始まりません」

シェードフォーゼから降りて屋内に入ると、中には何も無いくらいにガランガランで、残された僅かな機材やガラクタや水溜りなどくらいのものだ。
だが今日は違う。まず目に付いたのは明るいライトで薄暗いこの場所を照らす車と、そのライトの光で照らされている映司とアンク。

「よう、火野」
「鋼さん!」

お互いの存在に気付く二組。
一方で車からは三人の人物が出てくる。

当然だが、真木と伊達と四季崎だ。

「君たちのコア――特に映司(キミ)の中にある紫のコアを貰います」
「俺だってあげたいところですけど・・・・・・無理ですよ」
「たかが人間が、これ以上グリード化されて堪るか」

真木の発言を全面的に否定する映司とアンク。

「そうですか。では・・・」

真木は一瞬、伊達と四季崎に視線を送り、二人はそれに気付いて動く。

「これも一億の為でね」
『まあ、悪く思うな』
「伊達さん・・・・・・」
「四季崎・・・!」

ベルトを装着した伊達、変貌を遂げたデシレを見て、映司と刃介はなんともいえない感情に駆られる。
そこへ、一台のライドベンダーを駆るものが現れた。

「後藤さん!」
「・・・来なくていいのに・・・」

映司とは対照的な態度をとる伊達。
後藤はヘルメットをとり、車体から降りた。

「伊達さん。一億つくろうと思いましたけど、無理でした」
「えっ?」
「でもこんな方法で、夢を叶えるつもりなんですか?」

伊達な素っ頓狂な声も無視して後藤は問いかける。

「夢・・・?」
「医療関係の、学校をつくる夢です」

すると、伊達からは予想外の答えが乾いた笑いと一緒になって返ってきた。

「どっから聞いてきたそんな話?――違う。蛇の道は蛇・・・・・・医者にも裏の世界があってさ、金さえ出せば最高の名医がいたりする。ただちぃとバカ高い」
「要するに、ブラジャクみたいな闇医者に、治療を頼み込む気だったのか」
「それも、最初から・・・ですか」

刃介と七実は答えを纏めた。

「まあ褒められた手段じゃないし、自分の手で一億稼ぐ賭けに出た。――わりぃな後藤ちゃん。俺って最初から欲望塗れなんだわ。”まだ死ぬ訳にはいかねぇ”ってさ」

伊達は今再び、後藤らを見てハッキリと

「その為ならお前達とも戦える」

敵対宣言を行った。

「薄々予想はしてたがよ・・・・・・」
「見ろよ。俺達の言った通りだろうが」

刃介は溜息混じりに、アンクは皮肉げに言った。

「だったら・・・・・・だったら俺が伊達さんを止めます!」

後藤はバースバスターを取り出し、構えた。

「やっと解りました。伊達さんを死なせないっていうのは、ただ伊達さんの命を心配するんじゃない。俺が・・・俺の知ってる伊達さんのバースを引き継ぐ!それが伊達さんを死なせないってことです。その為なら、そのためなら俺も戦えます!」

その宣言を聞いた伊達は意を決したように、

「・・・・・・上等」

セルメダルを手に持つ。

「変身」

伊達はバースに変身する。

「ちょ、ちょっと!それじゃ勝負になりませんよ!」
「バスターは出力アップしてきた!」
「でも!」

映司の介入を後藤は拒み、

「火野!いいから見てろ」

伊達(バース)も拒んだ。

互いにバースバスターを構えあう二人。
無言の時が流れ、僅かな挙動がいつ戦いの引き金となるかわからない状況。
刃介たちが見守る中で―――


バースは銃口を真木とデシレに向けた。


「すまねぇなドクター。こんな仕事は俺にしかできねぇ。あんたをグリードにするなってよ、会長が」

バースは最初から鴻上の指示で動き、裏切ったかのようにしていたのだ。
もっとも、戦う動機こそは嘘ではないようだが。

「そうですか。その為に・・・・・・」

真木もデシレも大して驚く様子は無い。
だが、数秒たってもバースは発砲する気配が無い。

「撃てませんか?」
「・・・・・・・・・」
「伊達君。私にあそこまで近づいてきたのは、姉以外に貴方が初めてでしたよ。そうでなければ本当に協力してもらいたかったのですが」

真木は懐からペンを取り出す。
だがこの状況で普通のペンを持ち出すわけが無い。

「バースには自爆装置がついています」
『こいつはその遠隔装置だ』

それを聞いた瞬間、

「伊達さん!!」
「来るな!!」

映司が慌て、バースがそれを制する。

「マニュアルに書いてあったはずですが?」
「マニュアルは苦手なんだ・・・・・・」
「では実際に体感してみてください。――良き終わりを」

真木はそういってスイッチを押した。
伊達は思わず眼を瞑ったが―――

何も起こらなかった。
しいて言うなら胸のリセプタクルオーブが少し、赤く点滅したというだけだろう。
真木は妙に思ってもう一度押すが、

「残念だったな!俺はマニュアルが大好きなんだ!あんたが研究所を出たときに、とっくに自爆装置は解除しておいた!」
「おお・・・後藤ちゃんナイス!!」

サムズアップを決めるバース。
そして、

「・・・・・・わりぃな、ドクター」

――ヴィンヴィンヴィン!!――

バースバスターから弾丸が発射される。
だがそれは防がれたしまった。

でもデシレにではなく、別の三体によってだ。
バースは高速で動くそれらによって吹っ飛ばされる。

「申し訳ありません。私は用心深いんです」

そこには、ガメル・メズール・カザリがいた。

『お前の行動は目付きで察せたよ』
『裏切り者は死ぬのね』

デシレとメズールがそういったのを皮切りに、突風・水流・重力波・光線が一極的かつ同時にバースへ襲い掛かった。


「うわぁぁああああああああああ!!!!」

――ドガァァアアアアアアアァァン!!!!――


バースへの攻撃により、近くの物資が大爆発を起こし、凄まじい爆炎が起こる。

それを見た映司はすぐさまアンクからメダルを受け取る。
刃介も素早くプロセスを踏んで、

「「変身!」」

≪SAI・GORILLA・ZOU≫
≪SAGOHZO・・・・・・SAGOHZO!≫
≪YAIBA・TSUBA・TSUKA≫
≪YABAIKA・YAKAIBA!YAIBAKA!≫

「「おおおおおっ!!」」

二人はサゴーゾコンボとヤイバカコンボに変身し、四人のグリードに突っ込んで屋外へと戦いの場を映す。

攻撃を喰らったバースはというと、原形こそは留めているが、全身からバチバチとショートを起こしている。当然、変身も強制解除された。

「流石だな、ドクター・・・・・・」

それだけ言うと、伊達は倒れこんでしまう。
真木は興味もないように、其の場を後にした。

「伊達さん!伊達さん!!伊達さん!!!」

後藤は伊達に駆け寄り、必死になって呼びかける。

「伊達さん聞こえますか!?伊達さん!!」
「ああ・・・・・・聞こえてるよ」

伊達は口から一筋の血を流し、まともに起き上がれない体で語りかける。

「後藤ちゃん、俺を死なせないってやつ、痺れたわー」
「しっかり!今病院へ!!」
「医者はココにいるっつの・・・・・・でも、もういいや」

伊達はどこか吹っ切れた様子で、

「後藤ちゃんが受け継いでくれれば、俺は死なないってことだぁ――そうだろ?」
「何言ってるんですか・・・!?俺にはまだ・・・・・・」

なおも戸惑う後藤に、伊達は全ての気力を込めて、眼前にいる後継者に告げる。

「自分を・・・・・・信じろ・・・・・・!」

最後に、口元を綻ばせると、伊達の体からは一気に力が抜けていった・・・・・・まるで魂が抜けて、体が死んだかのように。

「・・・・・・伊達さん?・・・・・・伊達さん!?伊達さん!!!!」

幾ら叫んでも、伊達の眼が開くことは無かった。
後藤の両目から涙の雫が溢れたとき、

「なあ、後藤さん」

彼はやってきた。
その腰と手に、決意の証を携えて。

「君は確か・・・・・・」
「花菱烈火だ」

そこには、とても高校生とは思えない、戦士の面構えをした男がいた。
幾度とない非日常的な死闘や修羅場を潜り抜けた猛者の目だ。

「俺は行くぞ。大事なモン、託されたからな。あんたはどうする?」
「・・・・・・・・・俺は」

後藤は沈黙ののち、手を伸ばした。
大切な人の使った力と、その原動力に。

「伊達さんのバースを受け継ぐ!!」
「上等だ固羅ッ!」

二人はゆっくりと歩き出す。
新しい心で見る、新しい戦場へ。





*****

屋外――そこでは、オーズとブライが苦戦していた。

「チッ、なら!」

≪YAIBA・TSUBA・TSUKA!GIN・GIN・GIN!≫
≪GIGA SCAN!≫

ヤイバスピナーから眩い黄金の刀身を現す。
野太く長大なエネルギーの塊ともいえる刀身を左腕に宿し、ブライは必殺技の名を叫ぶ。

「我刀真剣!!」

金色の剣が全力で振り下ろされる。
だが、

『総員で防御!』

デシレの指示で、他のグリードたちが手を出し、それぞれの力を使って我刀真剣を止めたのだ。
一人一人では折れてしまうが、三人ならば耐え切れる。――まさに三本の矢。

結果としてブライの技は不発に等しい結果をのこす。

「チキショー・・・・・・」

他に打つ手はないかと思っていたとき、奴等はやってきた。

廃工場から現れ出でたその姿には決意と遺志が背負われ、迷いの影さえなかった。

「後藤さん!」
「烈火!?」

意外な増援の出現に、オーズもブライも驚きを禁じ得ない。

「伊達さん・・・一緒に戦ってください・・・!」
「オッチャン、金女・・・見ていてくれよ・・・!」

後藤は受け継がれたバースドライバー、烈火は新生したブレイズチェリオドライバーを装着。
そして、後藤は銀色のセルメダル――烈火は紅蓮のブレイズ・コアを手に持って、胸に秘めた思いを新たにする。

「「変身」」

――チャリン――

セルとコアがスロットへと投入し、ブランクゲージへと送る。

――キリッキリッ――

グラップアクセラレーターを捻り、

――パカッ!――

銀と緑のセルリアクターと、銀と赤のコアリアクターが開くと同時に、二人の周囲には薄緑と緋色のフィールドが発生し、その中で二人は歩みながら装甲と仮面を纏う。

そして烈火が変身したのは、忍者(チェリオ)の面影を残しつつも、全体的に炎を連想させるデザインとなっていて、ブレイズ・コア同様に装甲部分は紅蓮となり、スーツ部分は黒に変色していた。さらにバイザー部分の色は、まるで超高温の火炎をイメージさせる蒼のままだったし、胸のリセプタクルオーブは二つに増えていた。

新・仮面ライダーバース、後藤慎太郎!
仮面ライダーブレイズチェリオ、花菱烈火!

仮面にあるバイザーを光らせ、二人は叫びながら走る。
セルメダルをさらに投入し、その勢いを倍増させる。

≪CUTTER WING≫
≪HITOU・HASAMI≫

「「ハッ!!」」

背中に飛行ユニットであるカッターウイングと飛刀『鋏』を転送装備することで、二人は思いのままに空中を飛んだ。
その光景には一瞬、ブライやグリード等も唖然としてしまう。

バースもブレイズチェリオもそれにはお構いなしで、さらにセルを投入。

≪SHOVEL ARM≫
≪CATERPILLA LEG≫

バースは左腕にショベルアーム、両脚にキャタピラレッグ。

≪SHATOU・GEN≫
≪TOUTOU・NAMARI≫
≪CHINTOU・OMORI≫

ブレイズチェリオは左腕に射刀『鉉』と投刀『鉛』、両脚に沈刀『錘』を装備して更に飛行を続ける。

「「ハアアァァァ!!」」

飛行の際、両脚の重々しい装備を敵にぶつけることも忘れない。
二人のライダーは宙を舞い、途中に廃工場の錆たタンクに激突して破壊したりもしたが、それでもノンストップでUターンし、飛び続ける。

「「ウオォォォォォ!!」」

戻ってきたところで、バースはショベルアームを振り回し、ブレイズチェリオは右手で忍刀『鎖』を抜いて振り回し、グリードらにダメージを与える。
そこからは一気に上方へと飛び上がり、廃工場の壁を突き破り、天井さえ突き抜けていく。
無論、それによって瓦礫なんかも発生し、アンクの周辺に落ちていく。

「あいつら、伊達より酷い」

ゆっくり降りてくるバースとブレイズチェリオに、しっかりと酷評を下すアンク。
だがそんな声も届くわけはなく、二人はセルを更に投入し続ける。

≪CRANE ARM≫
≪DRILL ARM≫
≪BREAST CANNON≫

六つのアタッチメント全てを装備したバース・デイ!

≪ANTOU・KAMA≫
≪SETTOU・ROU≫

暗刀『鎌』と切刀『鏤』を右腕に装備し、最後には

≪GEKITOU・KUROGANE≫

ブレストキャノンと同型ながらも、色はもちろん紅蓮で銃口やフレームは火炎を模したデザインとなっている撃刀『鉄』を胸部に装備。

七つのアタッチメントを全装備したブレイズチェリオ・グッバイ!

最強の重装備を全身に集めた二人の戦士。
全てのエネルギーはブレストキャノンと撃刀『鉄』へと集中する。

「シュートッ!!」
「イッケェェェ!!」

≪CELL BURST≫
≪CORE BURST≫

セルバッシュとコアバッシュが起動し、ブレストキャノンと撃刀『鉄』からはズドーンという轟音を立てて真紅のエネルギー砲撃が発射され、それは四人のグリードへと降り注いだ。


――ドゥガァァァアアアアァァァン!!――


勿論、これだけの砲撃なので、周囲にも多大な被害が出ている。
辺り地面からは爆発による爆炎や煙等が巻き起こり、最早前方の様子が確認し切れない状況になる。

だがそんな中で、

――チャリーン――

(ッ!コアメダル!)

ブライはその音に気付き、右腕をチェインハンドとして飛ばし、煙から出てきた二枚のコアを掴み取る。腕諸共回収したコアは金色で、その片方には『鋸』、もう片方には『鎩』の文字が刻まれていた。

煙が風に流されていくと、デシレを先頭にカザリ達が倒れていた。

『なんなのあのバースとチェリオ!?』
『メチャクチャだわ・・・!』
『痛い・・・痛いぃ・・・』

倒れながらそう喚く三人。

『重装備の二人攻めとはいえ、俺から二枚も弾き出すとはな』

デシレはというと、相も変わらず冷静だが、今ので残るコアメダルは8枚となり、両前腕部の外装が崩れて紫色の素体を剥き出しにした不完全(セルメン)になってしまう。

「・・・・・・・・・ッ」

真木も戦々恐々としている中、そいつは悠々と現れた。
赤い服を着た一人の子供・・・・・・そう、ロストだ。

ロストはある程度まで近づくと、瞳を赤くして片翼を現し、空中に浮かぶ。

「もう帰るよ」

とだけいって翼を大きく羽ばたかせ、赤い旋風を巻き起こし、仲間共々姿を眩ましてしまった。
状況はそうして終了し、バースとチェリオの変身は自動的に解除された。

「・・・・・・・・・・・・」

烈火は無言のままブランクゲージからブレイズ・コアを抜き取ってポケットにしまった。





*****

廃工場内。
烈火が変身した件は一旦置いといて、みなは伊達の元へ歩んで行った。
特に映司は、倒れている伊達を見て、

「伊達さん?・・・・・・伊達さん!!伊達さん!!」

懸命に呼びかける。
それを居た堪れない表情で見る後藤と烈火だったが、

「・・・・・・・・・・・・あ、一つ言い忘れた」

伊達はまだ生きていた。
それどころか、上体を起こしてこんな事まで言って来たのだ。

「退職金、俺の口座に振り込んどいて」

いい笑顔でサムズアップしながら。

「「――――――ッッ」」

これには後藤も烈火も脱力せざるを得ない。
さっきまで自分たちの活力にもなっていた理由が一気に反転したのだから。

「フハハハッ――バカか?」

アンクも嘲笑った末に呆れ帰る。

「ホントしぶとい男だな」

刃介も刃介で半ば感心していた。





*****

後日、鴻上ファウンデーション・会長室。

「失敗したが、最初に約束した通り、危険手当だ」
「いやいやぁ、ホントに死ぬかと思いましたよ」

鴻上は札束をケースに入れながら伊達と会話する。

「バースの後継者・後藤くんを育ててくれた報酬と退職金」

そこへさらに札束達が追加される。

「しかし残念ながら、五千万にしかならない」
「フッフッフッフッフ」

伊達は笑いながらケースを受け取る。

「真木博士からの前金5千万がありますからね。ピッタリ、一億こんだけです・・・!」
「素晴らしい!!」

伊達の計算された目標達成に、鴻上もテンションを上昇させる。

「君の欲望ミッション・コンプリィィトだぁ!!おめでとう!Win!」





*****

救急病院――烈火は今一度この病院に来ていた。
ことがことなので、やはり一人でだ。
集中治療室から普通の個室の病室に移されたくノ一を訪ねるため。

不負まけず――よくぞ勝って来ましたね」
「おうよ!」

医者達の技術とルナイトの魔術により、金女は奇跡的な回復をとげ、既に半分以上の包帯を外せる状態になっていた。もっとも、肩あたりはまだ包帯が巻かれているし、激しい動きも禁止された絶対安静の状態なのだが。

「お陰で私の溜飲も下がりましたよ。それから私のことですけど、お医者さんやシルフィード会長のお陰もあって、あと2・3週間もすれば退院できるそうです」
「そっかぁ。でもさ、いいのかよ?」
「なにをです?」

烈火は少し金女のことを案じるように述べる。

「その、仕事盗っちまってよ・・・・・・」
「問題ありません。今回のことは会長から『最後の大仕事』と言われてましたし、報酬なら既に貰っています。もっとも、途中退場ですから、約束の半額である一億でしたけど」

その瞬間、烈火が固まった

「え、ちょ、あの・・・・・・一億円?」
「聞き返さずとも、一億円です」
「えぇぇぇエェェェ!!?」
不騒(さわがず)ッ」

――バギッ――

「んがッ!」

やかましく大声を出す烈火に、金女はベッドの上に置いてたマンガで脳天に打撃をくらわせた。





*****

そして、遂に伊達は海外の闇医者のもとへ行くべく、空港へと足を運び、映司らも見送りに来ていた。

「じゃあココで」

キャリー付きの黒いスーツケースを手に伊達は目的地行きの便へ向う入り口の前に立つ。

「手術、できるといいですね」
「さあな。神の味噌汁だ」
「神のみぞ知るです・・・・・・気をつけてくださいね」
「どうか御達者で」

映司に対し、さりげにボケをかます伊達に比奈がやんわりとツッコミ、七実もペコリと一礼する。

「ま、生き残らなきゃ学校もつくれないからな。――火野、お前もいつか来い」
「え?」
「お前の欲、思い出せよ」

その大きな器とは裏腹に、あの事で涸れ果てた火野映司の欲望。
今も尚、ヤミーさえ怯ませる程に巨大な彼の夢。

「おいアンコ、鋼!ったくお前等は、別れの言葉ぐらいないのか?」
「余計な言葉はいらねぇだろ?何時かまた会うかもしれねぇんだしよ」

と刃介は返したが、

「・・・・・・俺はアンクだ」

アンクは最後までぶっきらぼうだ。

「というか伊達。なんで鋼をハリガネと呼ばん?」
「今回の件でよーく身に染みたわけよ。鋼をブチキレさせたら、命が幾つあっても足らないってさ」
「チッ」

伊達の返答に露骨に舌打ちするアンクに、刃介も苦笑いしていた。

「そんじゃーな」

そうして、伊達は行ってしまった。





*****

――ヴィン!ヴィン!ヴィン!――

空港を見渡せる海沿いの場所で、後藤は植木鉢をターゲットにバースバスターの射撃を行っていた。
伊達に別れの言葉を告げる選択をあえてしなかったのだ。

(見送りませんよ、俺は――絶対、生きてまた)

そうして、恐らく伊達が搭乗したであろう飛行機が大空へ舞い上がるのを見上げつつ、後藤の心は―――

(それまでは俺が・・・・・・!)

紛れも無く、プライドや正義感とは違う一つの意思を、バースと共に受け継いでいた。
次回、仮面ライダーブライ!

不穏の影と町内会長と策士ロスト





ブレイズチェリオ
花菱烈火が変身するチェリオの特殊強化形態。
通常のチェリオとは違い、セルメダルではなくブレイズ・コアを用いて変身しており、かつての面影はあるがデザインやカラーもそれに合わせて変化している為、デザインは燃え盛る炎、カラーは紅蓮となっている。バイザーの色は以前と変わらず青色。

さらに従来のチェリオよりアタッチメントの数が一つ増えており、胸のリセプタクルオーブが縦に二つ並んでいることがその証明になっている。無論、変身にコアを使用しているため、スペックなどは通常のチェリオの数段上を行くモノへとパワーアップを果たした。そして、炎熱を司るブレイズ・コアの恩恵で炎術士と同格の力を得ることが出来、武器を装備せずとも必殺技を発動できるようになった。

ただし、アタッチメントを転送装備するに限り、セルメダルを使う機構なのは以前と相違ない。だが、必殺技などを発動する際、『忍刀両断』以外のものを発動する=ベルトによって発動するとセルバーストではなく『コアバースト』によるエネルギーの増幅と解放が行われる。

身長:190cm 体重:90kg キック力:17トン パンチ力:12トン
ジャンプ力:80メートル 走力:100mを2秒 必殺技:オーバーヒートブレイズ


ブレイズチェリオドライバー
既存のチェリオドライバーを改造し、ブレイズ・コアに対応できるように強化された変身ベルト。基本的な機能は変わらないが、コアメダルのパワーを扱う為にエネルギーの運用効率面などに関しては以前とは比べ物にならない性能となっている。
カラーもそれに合わせてかメタリックレッドが追加されている。

ブレイズ・コア
ルナイトが独自に作り出していた紅蓮のコアメダル。
炎熱属性の力が特別に強く込められたコアで、オーズ・ブライ・クエスなどのドライバーには対応しておらず、その証拠に裏面はセルメダルと同じバツ印が刻まれている。創ったまでは良いが、使いどころがなくて長い間お蔵入り状態だったが、チェリオシステムが正式に花菱烈火へと引継がれると同時にブレイズチェリオドライバーの起動キーとして運用されることが決定した。
セルメダルと違って、幾度と無く変身に使っても消滅することはない。

撃刀(ゲキトウ)(クロガネ)
ブレイズチェリオの胸部に装備される大型の砲門。
カラーは紅蓮で炎がデザインされていること以外はブレストキャノンと酷似している。しかし、その威力は凄絶の一言に尽き、コアバーストによって発射される『砲撃刀火(ほうげきとうか)』のそれは――理論上、暴走した巨大グリードにさえ甚大なダメージを与えるとされている。


ブレイズチェリオ・グッバイ
七つの装備をその身に纏ったブレイズチェリオの重装備形態。
当然のことながら、撃刀『鉄』が加わったことでチェリオ・グッバイの火力を遥かに凌いでいて、両手が塞がっている為に自動でコアバッシュモードとなり、装着者の意思一つでコアバーストを発動できる。
尚、ブレイズチェリオは転送装備を行った直後、その為に使用したセルメダルは即刻消滅するようになっていて、何時でもコアバーストが行えるようになっている。


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