さあ、覚悟を決めな


風都図書館。
そこではマツが資料作りに勤しんでいた。

そんなところへ、帽子を被った壮吉と、キセルをふかしたレイズがやってくる。

「よぉ壮吉、レイズさん」

――パチッ――

「なにか質問かい?というか、図書館でキセルは止めてくれよ」

砕けた表情でいうマツとは逆に、壮吉とレイズの表情は険しかった。

「お前に聞くことは何も無い。自分で回答を得た」
「キセルのことなど、どうでもよくなるような答えを」

二人は前振りなく、

――ブンッ!――

マツを殴り倒した。
周囲の一般人が驚く中、マツの懐から一本のガイアメモリが出てくる。

「そのメモリが、何よりの答えであり証拠」
「蜘蛛男はお前だ、マツ」

無表情で、二人は残酷な真実に辿り着く。

「・・・・・・何故わかった?」
「お前は数字の1の書き方にクセがある」
「二回も頭が大きく跳ねておった」

それを言われたマツは、地面に尻や手をつき、壮吉とレイズを見上げる格好で乾いた笑いを出す。
すると体育座りになりながら

「カッコイイよなぁ・・・・・・相変わらずッ!!」

――ドンッ!――

マツは本を載せたトレーを蹴りつけて二人との距離をとり、ガイアメモリを回収して逃げた。

「マツ!」

二人はマツをおい、廊下のところで追いつき、

「この、大馬鹿モンが!」

マツを殴った。

「――――!」

壮吉も無言でマツを殴る。
マツはそれでも逃げようとするが、

――ドッ!――

逃げ切れず、やはり二人の拳をくらう。
メモリまで落とし、地に這い蹲るような格好になってしまう。

倒れた衝撃で、メガネも床に落ちた。
だがそのレンズに一人の女性が映る。

「まって二人共!乱暴しないで!」

メリッサだった。

「マツがこうなったのは、私のせいなの!」

駆け寄りながら、メリッサは必死に弁明しようとする。

「マツは、矢口社長の噂を聞いて、私を護ろうとして・・・・・・」
「知ってたんじゃな、蜘蛛男の正体を」

レイズの問いに、メリッサは哀しそうに首を縦に振った。

「俺はお前等のように強く決断できない。――お前等が妬ましかったし・・・・・・自分が憎かった。そんな俺の初めての決断が・・・・・・コレだよ」

メモリを手に持ちながら、マツは本音を明かした。

「ガイアメモリで愛するメリッサを護ることだ!」
「マツ・・・・・・」

メリッサは袖をめくり、皮膚の下にいる蜘蛛をみる。

「その蜘蛛は・・・・・・!」
「俺の切ない心が生んだ、スパイダーの特殊能力さ」

マツは立ち上がりながら説明しだす。

「俺の小蜘蛛を埋め込まれた人間は、最愛の人間に触れると・・・・・・相手が爆発する」
「昨日の矢口ん時は、その手口で・・・!」

レイズは些か胸糞悪そうにしている。
こんな切ない上に陰湿な能力に対してだ。

「あのホールの時・・・俺は彼女に正体を明かし、蜘蛛(そいつ)を埋め込んでやったのさ」


――マツ・・・!?――
――メリッサ・・・・・・お前が壮吉に触れると・・・・・・奴は死ぬ――


「だから俺を避けてたのか」
「かなり重い荷を背負わせたもんじゃ」

また一つの謎が解けていく。
マツはメリッサの肩に触れると、哀しそうな顔をする。

「見ろよ・・・・・・がっかりだ。俺がこうやって触れても、俺は死なない。・・・・・・愛されてないんだ・・・・・・彼女に」

マツは、ずっと前から気付きつつあった事実を再認識させられ、大粒の涙を流す。

「・・・・・・マツ」
「御主・・・・・・」

そして顔をあげたマツは、

「お前等も、一生彼女に触れられなくしてやる」

SPIDER(スパイダー)

首筋にスパイダーメモリをさし、マツは蜘蛛の記憶を宿したスパイダー・ドーパントとなる。
三人は取っ組み合いとなって、バルコニーに出た。

「マツ!もう止すんじゃ!」
『散散殴っといちゃあ、今更だろ!』

スパイダーはレイズの言葉さえ拒み、掌から大量の小蜘蛛を放出した。

「ッ!」

レイズは咄嗟に後ろ腰から、金色に輝く九本の尻尾を現し、それを盾代わりに防いだが、

「壮吉ッ、大丈夫か!」
「ああ・・・・・・」

口ではそう言っているものの、壮吉は右腕をおさえている。
十中八九、小蜘蛛が入り込んだのであろう。
そして残りの大量の小蜘蛛たちは風都中に散らばっていき、ありとあらゆる男女の体に侵入していく。

「壮吉!」

メリッサも遅れてバルコニーにつくが、

『フン』

スパイダーによって気絶させられてしまう。

「テメェェ!!」

壮吉はスパイダーを殴ろうとしたが、奴が抱えているメリッサに拳が触れることを危惧し、止めざるを無くなった。

「壮吉、離れろ!」
「ん・・・っ」

だが、メリッサと深い仲ではないレイズは、遠慮なく尻尾を振るい、

――バチン!――

『うぅぅ・・・・・・!!』

スパイダーを精一杯殴りつけた。

『ハッ、幾らでも殴るといい。メリッサの愛を受けられない事に比べれば、屁の河童だ』
「マツ・・・御主・・・」
「やめろマツ!」
『断る』

そして、風都史上にとって、最初のドーパント事件は大詰めとなる。

小蜘蛛がばら撒かれて三分程経つと、街中の至るところ―――丁度デートスポットとして最適な公園や喫茶店・道端などで、多くのカップルの相方が、愛ゆえの無惨な爆死を遂げていた。

いや、カップルだけとは限らない。
もしかしたら、年端もいかない子供が犠牲になったかもしれないような状況だ。

『ハーハハハハハハハハ!!ハッハッハハハハハハ!!』

スパイダーはバルコニーから見える多数の爆発に高笑いを堪え切れずに吐き出しまくる。

『結ばれるのは、俺とメリッサだけだ。全ての恋人達に――バシッ!!――うぉああ!!』

台詞の途中で、スパイダーは何かに引っ叩かれた。――それは九本の金色の尻尾。
持ち主たるこの男は、キセルをふかして煙をすい、吐き出すと、壮吉共々同じ台詞を口にする。

壮吉は無情に徹せれど、レイズは怒りの涙を篭めて。

「「マツ・・・お前は・・・」」
『ん・・・?』

人が人で居られる最後の砦―――

「「越えてはならない一線を越えた」」

それはもう、仲間ではなく、怨敵を見る眼だった。

『じゃあ止めてみなよ、俺達の結婚式を。この生煮骸骨と甘辛魔人が!!』

スパイダーはそう吐き捨て、スパイダーウェブを使ってどこかへと行ってしまった。

壮吉とレイズは急いで階段をおり、あとを追おうとする。
だがそこへ、

「追っても無駄でありんす」

小森絵蓮と―――

「あの御客様はもう、人間を棄てちまった」

アサシンだった黒服。

「松井さんはガイアメモリの購入者第一号として、実にセンセーショナルな活躍をしてくれた。これでみんな欲しがるでありんしょう。――この魔性の小箱を」

【BAT】
LANCER(ランサー)

小森はバット・ドーパントに。
黒服は槍兵の記憶を宿し、赤い一本の長槍を持った蒼きランサー・ドーパントに変貌する。

『あとは最後の一暴れをしてくれれば、松井さんはもう用済み』
『邪魔はさせんよ』

二体のドーパントに対し、壮吉は帽子、レイズはキセルを取り外してこういった。

「本当にしつこい奴等じゃ」
「退け。用済みはお前等だ」

彼らはドライバーを装着し、一つの決意を刻む。

【SKULL】
【MULTI】
【WARRIOR】

『ッ・・・!』
『ヤル気か!』

そう・・・・・・ヤル気なのだ。
もっともバットとランサーにとっては、悪い意味になるが。

「「・・・変身・・・」」

二人はガイアメモリをスロットにインサートし、それを展開した。

【SKULL】
【MULTI/WARRIOR】

ロストドライバーにインサートされたスカルメモリからは、渋い重低音の旋律。
デュアルドライバーにインサートされた二本のメモリからは、ピッチの低い二重奏。

二人の体は黒と緑の粒子を纏い、異形と化したとき、以前にはない変化を遂げる。

スカルの頭には黒いS字の傷が刻まれ、デュアルの頭には2本角が生えたのだ。

鋼鉄のハードボイルド探偵・仮面ライダースカル。
魔界で最も慈悲深い生物・仮面ライダーデュアル・多才な戦士(マルチウォリアー)

第一世代のダブルライダーの完全誕生の瞬間!

スカルは白い帽子を被り直すと同時に、

「「トォ!」」

二人は前へジャンプして

『『ぐッ!』』

バットとランサーを殴った。
二体はそのまま逃げていくが、そうは問屋が卸さない。

スカルとデュアルは急いで、スカルボイルダーとデモンスプリンターに跨り、エンジンを前回にする。

――ブォォォオオオォォォン!!――

けたたましい爆音を再現するかのように、二台のバイクは主人を乗せて駆けて行く。
メリッサを抱えながらスパイダーウェブで縦横無尽に移動するスパイダーに追いつこうと、二人のマシンはさらに声を上げ続ける。

途中、工場から伸びる運搬用の太いパイプを道代わりにして追跡を行う。
だがしかし、無人の石油タンクローリーを操作したバットが。

『――ハッ!』
『ウリャア!』

ランサーと共に超音波とエネルギーの刃を飛ばしてきたのだ。

「「―――ッ!」」

スカルとデュアルはまず、バットとランサーを片付ける事にして、

「「トォォ!」」

バイクから飛び降りてタンクローリーの上に飛び乗った。

無論、そこで戦闘が行われるが、如何せん場所の狭さでどちらとも上手い具合に戦えないで居る。
そこでスカルは、

「怪物マシンの出番だ」

――ピ・ピ・ピ――

スタッグフォンでスカルギャリーの発進操作を行う。
今頃、発進準備を完了させ、発進口から出発した事だろう。

デュアルはそれを見ると、先のことを見越してこうでる。

LIGHTNING(ライトニング)
ARCHER(アーチャー)

金と銀のメモリを起動させ、ハーフチェンジ。

【LIGHTNING/ARCHER】

右半身は金で、左半身は銀。
雷光の弓兵・ライトニングアーチャー!

「壮吉、今じゃ」
「ああ」

デュアルの合図と同時に、スカルは後ろへとジャンプし、デュアルもそれに続いてバックジャンプする。普通なら道端に転がるだけの行為になるが、デュアルがメモリをかえ、ハーフチェンジしてる間に、スカルギャリーが到着したのだ。

スカルギャリーに乗り移った二人は、車体の大きさと頑丈さにかこつけて、タンクローリーに対して体当たりを何度と無く行う。

『ぅぅ・・・んッ!』

バットはそれにイラついたのか、タンクローリーの車体から何本もの鉄の触手を生やさせたのだ。
しかし、

「魔界777ッ能力――城壁の苔(イビルサラウンダー)

デュアルが小さな何かをばら撒くと、それらはスカルギャリーの側面に張り付き、大きな植物の触手となって鉄の触手を阻む。

――ギリギリギリギリッ!――

スカルギャリーはその状態でさらに体当たりを続け、鉄の触手を城壁の苔(イビルサラウンダー)もろとも引きちぎる様にした。

そうしていると、二台の大型車両は開けた空き地につき、バットとランサーのタンクローリーは一旦スカルギャリーと距離をあけると、急にUターンしてこちらに走ってくる。

「「・・・・・・ふっ」」

だがスカルとデュアルはそれでもなお余裕の態度だ。

『風穴あけてやる・・・!』

ランサーは手に持った赤い長槍を構えて、投擲の姿勢に入った。

【ARCHER・MAXIMUM DRIVE】

デュアルはマキシマムを発動し、専用のボウガンことアーチャークロスボウを両手で持ち、静かに呟く。

「アーチャーエレキショット」
『オゥゥラアアアアアッ!!』

アーチャークロスボウから発射されたのは一筋の雷光。
理論上では5億ボルトに達しかねないような威力である。

片やランサーが放った槍の投擲は恐らくマッハに入る速度だ。
そんなものが衝突しあえば・・・・・・・。


――バキィィィィン!!――

『なッ、なにぃぃ!?』

必然的に、威力の高い方が残るだろう。

――バギュウウウゥゥゥン!!――

『ぐぼぉぉああああああああ!!』

ランサーはそのまま電気射撃の餌食となり、メモリブレイクによって元の姿に戻りながら地面を転げ回った。

【SKULL・MAXIMUM DRIVE】

スカルも銃火器(スカルマグナム)にスカルメモリをインサートすると、

「・・・・・・・・・」

――バギュンバギュンバギュンバギュンバギュン!!――

スカルパニッシャーという必殺のエネルギー弾を連発した。
それも車体の下を狙って撃った為に、タンクローリーは、タンク部分が外れてしまった。

『ッ!?』

それによってバットを地面に落ちてしまったが、これだけではすまない。
運転席は勿論の事、タンクが横転してバットを下敷きにしてしまったのだ。

スカルとデュアルは、スカルギャリーから降りると、その様子を見るために態々バットの前に姿を見せる。

『助、けて・・・くんなまし・・・・・・!』

さっきのスカルパニッシャーで火の気があがっている状態でこのまま行けば、タンクの石油は大爆発を起こすだろう。

「――無理だな」
「自業自得じゃ」

だがスカルとデュアルは手を掴んで欲しいと懇願したバットの願いを却下して、爆発しても大丈夫な安全圏に歩き出したのだ。
最後の希望さえ完全に消失したバットは、それこそ藁にも縋る切迫感に襲われる。

『ッ!――助けてッ!!』

それが彼女の末期の言葉となった。


――ドガァァァアアアアァァァン!!!!――


タンクは大爆発を起こし、下敷きになったバットと、その近くで気絶していた黒服ごと、爆炎に飲まれていった。

「「・・・・・・・・・・・・」」

そして、冷徹な骸骨と二色の魔人は、何事も無かったかのように、其の場から去って行った。





*****

『さあ、俺のメリッサ――起きろ』

スパイダーは、大きな灯台のような塔が近くに立っている歩道橋のような場所で、周囲の物や上に作られたアーケードを利用して巨大な蜘蛛の巣をはり、メリッサをそこで捕えていた。

『そして永遠に歌い続けろ。俺の一番好きな、あの歌を!』

だがその時、無情に徹した二つの足音が聞こえてくる。
スパイダーが振り返ると、そこには二人の男が居た。

骸骨探偵と人情魔人の二人が。
その時の姿は、一瞬変身しているようにも見えたが、それは幻覚だとでも言わんばかりに、スカルとデュアルは壮吉とレイズの姿に戻っていた。
更に言うと、それはスパイダーも同じだった。

「壮吉、レイズ・・・来るな。メリッサは俺のモノだ――メリッサは俺のモノだ!!」
「――ガイアメモリに心を喰われている」
「もう・・・・・・止むを得ないということか」

もはやマツを救いきれないと判断し、壮吉とレイズは呟くように吐き棄てた。
そうして、少しだけ顔を俯かせると、新しい仮面でもつけたかのように、二人は無表情となる。

「・・・・・・一つ――俺は何時も傍に居る仲間の心の闇を知らなかった」
「否・・・ワシらは知ろうとさえせんかった」

二人は、この事件に関する要因と、発展までのことを述べていく。

「二つ――戦う決断が一瞬鈍った」
「それは、決断と覚悟が無かったが故」

最後には、二人の台詞が同時に発せられる。

「「三つ――その所為で街を泣かせた」」
「・・・・・・何を言ってやがる?」

壮吉とレイズが述べた言葉と確認したものとは、

「俺は自分の罪を数えたぜ」
「ワシは一生の覚悟を決めたぞ」
「「・・・・・・マツ―――」」

壮吉は右手の指、レイズは左手の指をゆっくり上げて、かつての仲間を指差す。

「さあ、お前の罪を・・・・・・数えろ」
「そして――さあ、覚悟を決めな」

自分の罪を戒める為、相手の罪を裁く為。
己の不覚悟を戒める為、相手の覚悟を見極める為。

それが、この決め台詞は生まれた最大の理由。

そして、この言葉が紡がれたと同時に、二人の姿は仮面ライダーとなっていた。
マツも音さえなくスパイダーへと姿を変える。

『――うあああああああ!!』

スパイダーは何の計算も無く、スカルとデュアルに殴りかかる。
だがそれは当たり前のように受け止められた。

すると、

――ビカぁぁぁ・・・・・・!――

工事現場のときは不発に終わった紫の光が、スカルの胸から溢れんばかりに満ちている。
その光は次第にオーラとなり、ガイアディスプレイに映ったものと同じ、S字型の骸骨として現出した。

デュアルの体からも緑の光が溢れだし、狐の首を模した波動となって、スカルのそれと同じく出現と同時にスパイダーを吹っ飛ばすオーラとなった現出した。

『うわあああああッ!!』

スパイダーは吹き飛ばされ、その隙に二人はメモリをベルトのサイドバックルとも呼べるマキシマムスロットにインサートし、上空へと飛び上がる。
丁度、現出すると同時に上方へ舞い上がったオーラーを追う様に。

【SKULL・MAXIMUM DRIVE】
【WARRIOR・MAXIMUM DRIVE】

そして、

「「トオッ!!」」

全ての力をこめ、オーラをキックし、スパイダーへと直撃させた。

『ぎぃあああ!!』

無惨な悲鳴を上げて爆発するスパイダー。
スカルとデュアルのライダーダブルキックにより、スパイダーメモリは排出されてブレイクした。

それと同時に、メリッサを捕えていた蜘蛛の巣も消滅する。

「・・・・・・・・・・・・ッ」

床に倒れてすぐに眼を覚ましたメリッサ。
彼女が起きて眼にしたのは・・・・・・。

「―――壮・・・吉・・・・・・レイ、ズ・・・・・・」

今にも死にそうな状態で、異形二人の本名を呼ぶマツ。

スカルが帽子を取ると同時に、デュアル共々変身が解除されて正体を見せる。

「眠れ・・・・・・相棒」
「安からかにな・・・・・・」

壮吉は実に静かにそう告げ、レイズは無表情のまま涙の雫を流して述べた。
マツは弱弱しくも何時もの笑顔を見せると、一気に体から力が抜けていき、お世辞にも安らかとは言えない死に顔となった。

「どうして・・・?止めてくれるって約束したのに!――二人なら、マツを元のマツに戻してくれるって信じてたのに!」

メリッサは起き上がり、糾弾するように声を張り上げた。

「・・・・・・マツは人間を棄てた」
「届く言葉さえ無かったんじゃ」
「貴方達もでしょ!?自分までバケモノになって!!」

そう言われた二人は何も返さなかった。
壮吉は無表情のままで、レイズは涙の雫を流しながら、帽子を頭に被り、キセルを口に銜えて、たった一人の女に背を向ける。

「何とか言ってよ二人共・・・!――ばか・・・・・・バカッ!!」
「「――――――――――」」

それでも尚、二人の男は無言のまま、歩みを止めなかった。

そして、亜樹子とヴィヴィオの意識は、このタイミングで過去から現代へ戻ってくる。





*****

亜樹子とヴィヴィオが眼を覚ましたのは、ついさっき見た、スカル&デュアルとスパイダーの戦いの場だった。

「仮面ライダーって、やっぱり辛過ぎるよ・・・・・・お父さんも、メリッサさんも可哀相!!――酷いよ!」
心の闇(ドーパント)と、正義の魂(仮面ライダー)・・・・・・どっちも哀し過ぎるよ・・・・・・どうして、こんなことに!?」

体を起こしながら、亜樹子とヴィヴィオは切なそうにする。
今にも眼から何かが流れ出そうなほどに・・・・・・。

『ココだな・・・!強い戦いの記憶・・・!』
『悲しみと憎しみ、負の記憶だぁ・・・!』

だが、亜樹子とヴィヴィオが居るという事は、彼女らがしがみついたプテラヤミーとキョウケンヤミーも居るという事。

二体のヤミーはメモリーメモリとパストメモリを掲げる。

『『仮面ライダー・・・・・・』』

2本のガイアメモリからは、天にまで届かんとする緑と銀の光が発せられる――いや、寧ろメモリが何かを集めている。

『『仮面ライダァァァァァアアア!!!!』』

その欲望の叫びに呼応するかの如く、近くの空き地の地面からは、緑と銀の光が地上に現れていた。
しかし、そこには神聖さはなく、それどころか邪悪な気配まで感じさせる。

地上にまで届くこの奇妙な光・・・・・・それは、暗い心の闇が生み出したモノから流れ出ていたのだから。


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