Q『あなたは異世界人を信じますか?』














 『紅のなのは』から『電波的なヴィヴィオ』へ














 確かに異世界人は存在している。しかし、それは自分たちに敵対する者ではなく、むしろ友好的である。

 紅真九郎は、そんなSF的な事を考えながら目の前に置かれたラーメンの湯気に目をつぶる。

 真九郎の目の前の席に着いている栗毛をサイドポニーにした女性・高町なのはも同様に目を閉じていた。

「それで大体こういった事でいいでしょうか」

「はい。すみません、まだ完全に決まったわけではないのに」

「いえいえ、こちらも以前に我侭を聞いてもらいましたし。それに安心してください。治安はそちらに比べたら悪い

 ですが、きっちりと安全に生活できるようにサポートはしていきます。」

「お願いします」

「それでは、一ヵ月後に決定を教えてください。こちらに来てくれるのなら、ちーちゃんも紫も喜びますよ」

「はい・・・・・・では」

 神妙な面持ちで立ち上がるなのはと、笑顔を終始崩さない真九郎。







 今回、なのはが、真九郎を訪ねたのにはワケがあった。義理の娘として引き取ったヴィヴィオが猛烈に反抗し始めたのだ。

 それまで通う事で話が進んでいたベルカのミッションスクールを嫌がり、真九郎の世界の学校に行きたいと言い始めた事が原因となっている。

 聖王の遺伝子を持っている事が、一部ではあるものの情報が漏れている現状でヴィヴィオを完全普通に育てる事は至難の事と言える。

 学校の友達にはバレなくても、解体した管理局のリクとウミや、ベルカ関係には知れ渡っている。

 さほど表立っては見えないが、ヴィヴィオ自身過敏に聖王という単語などには反応してしまう。

 それもこの管理局の管理する次元世界を離れたいという理由にはなる。

 しかし、それ以上にヴィヴィオには真九郎の世界に行きたい理由はあったのだ。




『女の子がね、ビューンってなってキラーンで、ニッコニコになるの!』

 誘拐事件で知り合った斬島雪姫がヴィヴィオに進めたアニメ作品の説明だ。

 それを見て、ヴィヴィオは本格的になのはに真九郎の世界の学校に行きたいと言い始めたのだ。

 要するに、真九郎の世界のアニメにドップリとハマってしまったのだ。

 ヴィヴィオの次元世界にもアニメは存在する。なのは達が元になったモノもある。

 しかし、魔法が深く浸透している世界でのアニメでは、魔法抜きの現実的なモノが多い。

 それになにより、単調すぎて面白みに欠けているのだ。

 そんなヴィヴィオを襲った衝撃は、なのはを見た幼きスバル・ナカジマと同じであった。

 その後の人生を左右するに相応しい程の衝撃だったのだろう。それから、ヴィヴィオはなのはと毎夜口論が始まった。

 半月間、決着も着かなく機動六課の面々にも飛び火する事も多々あった。

 口論の末に泣きながら去るヴィヴィオを慰めるフェイト。口論の末に疲れ果てたなのはの愚痴を聞くはやて。

 巻き込まれるフォワード陣や、ロングアーチの面々。

 世話役のアイナとザフィーラに至っては、日が落ちる頃になると、ヴィヴィオの元から離れて退避している。

「なんや、今回もノックダウンかいな」

「うん・・・・・・誰に似たのか、かなり頑固だよ」

「そやね、なのはちゃんによく似てるわ」

「そうなのかな?」

「そうやで」

「そうかぁ」

「そうや。まぁ、いつものように愚痴聞いてもええねんけど――今日はちょっと趣向を変えるつもりや」

「ん?どういうこと?」 

「提案や。ヴィヴィオが行きたいって言っても、そっちに拠点がないとなんにもできんやろ?

 なのはちゃんがあっちに家を借りたりしてもええねんけど、それやとヴィヴィオが夜寂しくなるやろ?

 なのはちゃん、夜遅くまで仕事あるし」

「――何が言いたいのかな?」

「まぁ今回の件、真九郎さんに話してんねん。もしかしたらヴィヴィオがそっちの学校行くかもしれんねんけどってな。

 つまり、明後日時間上げるからヴィヴィオに内緒で真九郎さんと話して、色々決めてきぃ。

 明日から一ヶ月ヴィヴィオがゴネれたら、そっちの学校に行かせたらええし。

 諦めたらベルカのミッションスクールに行かせればええやん」

「・・・・・・うん。でも、出来るなら行かせたくないんだよね。真九郎さんには悪いけど、治安が悪すぎるよ」

「まぁな。でも、いい経験にはなるとは思わん? 魔法無しでも体鍛えたら、こっちに帰ってきた時困らへんとは思うけどな」

「何気に乗り気だよね、はやてちゃん」

「うん! やっぱな、あっちは楽しそうや。魔法はないけどね」

「はやてちゃんがそっちにいけばいいんじゃないの?」

「っあ! それいいね。真九郎さんも相手おらんぽいし。幼な妻もいいかもね」

「ぁあ、もうふざけてるぅ」

「それも含めて聞いてきぃ」

「うん。そうさせてもらうよ」

 ぐったりとソファーに寝転ぶなのはは溜息をついて、部屋に帰ってからのヴィヴィオとの険悪な雰囲気に耐える為に気力を貯める。

「ホント、ゴメンね。色々手を回してもらっちゃって――」

「いいって。せっかく親子になれてんから、仲良くした方がええって――うちは家族の記憶なんてもうほとんどないからね」

「――はやてちゃん」

「まぁ、本音はうちの隊のメンバーが被害にあって、仕事の効率かなり悪なってるからやけどね」

 はやては、大きな声で笑いながらなのはを険悪な自室へ向けて送り出す。





















 結局一ヶ月、ヴィヴィオはゴネ続けた。

 真九郎に公言していた通り、ヴィヴィオの真九郎の世界への移住が決定した。

 住まいは、この世界で最も安全なアパート“五月雨荘”ではなく、楓味亭というラーメン屋である。

 楓味亭を経営する家族の中には、かつてフェイトが情報を買った超一流の情報屋・村上銀子がいる。

 元々、同い年の崩月散鶴の家に預けるという話も上がってたが、“身体を鍛えさせる”という単語を聞いた瞬間に真九郎が猛烈に反対したのだ。

 かつて自身が受けた修行のようにはならないだろうが、近い目にはあうだろう。

 事戦闘に関して言えば、崩月家の人間は手加減しない。

 その危険性を説明して、色々と話は難航した。

 だが、決着は着いた。

 普段は無愛想だが、子供相手となると誰よりも優しい銀子がいる楓味亭にヴィヴィオは住まわせてもらう事になった。

 銀子も去る事ながら、その父親の銀正も豪快だがかなりいい人である。

 その銀正を喧嘩屋からラーメン屋に転職させた女である妻もまた言わずもがな。

 また、安全面から見ても超一流の銀子の元にいれば、危険を察知する可能性も高い。

 そして、この難航している話の中でなんの変更も反対意見もなく決まったのは、ヴィヴィオの身体を鍛える方法。

 真九郎の隣人・武藤環が師範代を勤める空手道場に通わせる事となった。

 活人拳である空手であるし、何より師範を務めるのが武藤環である事が大きな要因である。

 真九郎が知る限り、裏十三家の特殊なモノを抜いた純粋な人間としての強さとして見てみると武藤環に勝てる、もしくは渡り合える人間を知らないからだ。

「本気でするなら、目標にする価値はあると思います」

「はぁ・・・・・・」

 ヴィヴィオが通う小学校は崩月散鶴の通う小学校となった。

「まぁ、あんまり心配しないでください。護衛も着けますし逐一報告もしますよ。それに参観日は前もってお知らせします」

「おねがいします」



















 こうして、ヴィヴィオは真九郎達の世界で成長していく事となる。

 銀子達村上家に見守られ、散鶴達とともに色々と学んでいく。

 “聖王”という事など関係なく、忘れても良いくらい魔法と断絶した世界での生活を手に入れた。

 こうして、ヴィヴィオは、高町ヴィヴィオとして成長していく。魔法なんてものは忘れ去られる程、現実の世界で――

 




 物語は、ヴィヴィオが高校生となってから動き始める。















どうも、まぁです。

お見苦しい点が多々あったと思いますが、暖かい目で見てもらえると嬉しいです。

これからも精進していきたいと思っておりますので、拍手やコメントをいただければ幸いです。

また、私の他の作品にしても同様です。

読者から反応があれば、それがキツイ批評や指摘であったとしても、それが次の作品への原動力になったりします。

これは他の作家さんでも同様だと思います。

ですのでコメントも、批評や指摘大歓迎です。

これからも、皆様に楽しくお読みいただきたいと思っておりますので、びしびしとお願いします。



っと、ここまではかた〜い感じでお届けしましたあとがきです。

ここからは、陽気な感じで行きたいと思います。



書いた自分でも驚きなんですが、前作の『紅のなのは』が思った以上に好印象だったので続編を書こうと書きました。

今回は導入編としまして、紅のなのはと電波的なヴィヴィオの間の話としています。

ネタも何も完成していませんが、始めた以上完結させようと思っています。

更新がいつになるのかは、未定ですが皆様の期待に沿えるように頑張ります。





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