神の代行者


浩介サイド

「浩介、頼んだぞ」

父が俺の名を呼ぶ。

ちなみに、俺の服は、シャツにジーパン、そしコート

「もちろん。神に挑みし愚か者に、鉄槌を!!」

「がんばれ。まずは、対を見つけろ」

対、俺のためだけに生まれた存在。

「そのつもり。じゃあ、行ってきます」

「たまには、帰ってこいよ〜。暇なんだよ〜」

シリアスなムードを一気に壊す台詞で送り出された。

「わかってるって」


祠を後にし、近くの研究所を襲撃する。

「ここにいるのか。どんなやつなんだろうなぁ。楽しみにしてよ〜」

とり合えず、壁を『殺す』

「脆いな。ま、仕方が無いか。何処にいるんだろう?」

ウ〜〜〜〜〜ウ〜〜〜〜〜〜

「ちっ、警備のやつ等にばれたか。まあ、俺には触れることすらできないがな」

俺は、研究所の奥に、足を進めた……


研究所サイド

「な、なんだ!!」

突如、研究所が揺れたことに驚き、研究員達のチーフが叫ぶ。

「侵入者のようです」

警備員が答える。

「侵入者だと!?『完成体』を狙ってきた、テロリストか!?」

考えうる限りの相手を考える。

「まさか、ファトゥームか!?」

ファトゥーム

最近、各地の能力者研究所から、『完成体』と呼ばれる、能力に覚醒したものを攫っている組織。

世界各国で活動が確認されており、世界手配されている組織。

『完成体』を集めて何をするのかなどは不明。

「だとしたらまずい。『こいつ』はものすごい力を持っているからな」

そう言って、『完成体』を見る。

一見、平均的な少女の体をしているが、これ1人で、軍の1個師団に相当する力を持っている。

「逃げるぞ!!『こいつ』を奪われるわけにはいかん!!」

そう叫んで、秘密通路から、『化け物』を抱えて逃げようとすると、1人の研究員が話し掛けてきた。

「『失敗作』はどうしましょう?」

「放っておけ、やつ等も、『失敗作』まで気にしないだろう」

そう言って、研究所から脱出する。

研究者たちがいなくなって少したったあと、研究所は爆破された。

数百体の『失敗作』たちの命と共に…


浩介サイド

燃えている研究所の上空。

「人間はどこまで愚かなんだろう、こいつの重要性にすら気が付かないくせに。あんな物の血が半分流れているとは、思いたくないな」

腕に抱いている、研究者達が『失敗作』と言った、少女を見る。

遥か昔にいた、恋人の姿が、腕の中の少女に重なる。

「なんであいつにそっくりなんだよ……百合……」

「とりあえず、家に行くか」

そう言って研究所から消える。

向かうは、神が用意した自分の家。

奇しくもそこは、人間だった頃、俺の住んでいた場所に建てられたものだった…。



「ここか」

数分後、家に着いた。

一般的に、金持ちとやらが住む家くらいの大きさだった。

「鍵、鍵っと」

ポケットから、鍵を取り出し、玄関のドアを開ける。

一歩足を踏み入れると、外とは違う感じがした。

「中は、あそこの空気を入れてあるのか。ここまでしてくれるとは、本当に神か?」

祠に祭られている、自分の父を思い出す。

「やけに、人間らしいよなぁ。この服も家も準備したの父さんだし…」

う〜ん、と考えてみる。

「どうせ、神主さんと協力して、女遊びでもしてたんだろ。軽そうだし」

――うるさい

一瞬、祠にいる父の声が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。

「こいつを、ベットに寝かせなきゃな。寝室はどこだ?」

一度も来たことの無い場所なのだから、当然迷う…はずなのだが。

「ご丁寧に地図まで張ってある」

まるで、襲撃したあと、ここに来るのがわかっていたのかのように、玄関の壁には、寝室までの道のりが書かれている地図が張ってあった。

「行くか」

壁から地図を取り、寝室へ向かう。



夕方

「思った以上に広いな」

軽い散歩のつもりで繰り出したのだが、思った以上に広かった。

「父さんは、一体何を考えてるんだ?理解できん」

腹が減ったので、キッチンへと向かう。


キッチン

「めし、作るか」

冷蔵庫を覗く。

そこにはきれいに食材が入れてあった。

「なにからなにまで、あの人は…」

祠に括りつけられている父親の顔が浮かぶ。

「なにがあるんだ?」

冷蔵庫の中身を確認し、適当な物を作り、食べる。

「うん、上出来だ。あいつにも料理を教えなくては…」

『攫って』、いや『拾って』きた自分の対を思い出す。

自分とは対極の位置に座する彼女。

すべてを殺すことができる自分と、

すべてを生みだすことができる彼女。

考えているうちに、食事を終えていたらしい。

「…寝るか」

あの馬鹿みたいに広い、寝室へ向かう。

一応、起きているかもしれないので、彼女の分の食事も持って。


???サイド

ここはどこ?

パパ、ママ、お姉ちゃんどこ?

私を1人にしないで!!

助けて!!


目がさめる。

自分の姿を見ると、いつもの、被検体用の服ではなく、ちゃんとしたパジャマを着ていた。

「ここ…は?」

周りを見ると、ものすごく広くて、真っ暗で、怖いおじさん達もいなかった。

でも、一人だと思うと、どうしようもなく怖かった。

「誰か、助けて…」

その時、ドアが開いた…


共有サイド

「あれ?起きたんだ。今、電気つけるね」

見ず知らずの彼が電気をつける。

消えてるときでもわかったが、電気がつくと、かなり広いことがわかる。

「すいません、ここは?」

おそるおそる聞いてみる。

「俺の家の寝室。馬鹿みたいに広いでしょ?ああ、服は取り替えさせてもらったよ。あんなものを、
いつまでも着せておくわけにはいかないからね。」

見知らぬ彼は、色々なことをしてくれたらしい。

――見られた?

自分の体に刻まれた、奇怪な紋章を思いだす。

考えるのをやめ、名前を聞く

「あなたは?」

「名乗り遅れたね。俺は、芳賀浩介。君は?」

見知らぬ彼は、浩介と言うらしい。

「浩介…さんですか。私は被検体ナンバー0016です」

「ナンバーじゃなくて、本名」

「すいません。名前が思い出せないんです」

「そうか」

「住んでた場所とかは、思い出せるんですけど……」

すいませんと、また謝る。

「私以外の方はどうなったんでしょうか?」

「死んだよ。研究所と一緒に」

「そう…ですか」

仲のいい友達でもいたのか、少し、悲しそうだった。

「ところで、これ食べる?ご飯持ってきたんだけど…」

くう〜〜〜〜〜

腹が鳴った。

「……いただきます」

かなり、恥ずかしかったのか、小さな声で答える。

「召し上がれ」

皿を渡すと、あっという間に食べてしまった。

「美味しかったです。浩介さんが作ったんですか?」

「ああ、そうだよ。とりあえず俺は寝るよ。……一緒に寝る?」

冗談半分で言ってみる。

「………はい」

驚くことに、YESの返事が返ってきた。

おそらく彼女は、広いところに1人でいるのが怖いのだろう。

部屋に入ったとき、少し涙目だった。

「まず、風呂に入りなよ。すっきりするから。案内するよ。ついてきて」

そう言って馬鹿でかい寝室を後にし、風呂へ向かう。


風呂

これも広かった。

三、四十人は入れるであろう。

――母さん、あの人はなぜこうも、スケールが大きいのだろうか?

「おおきいですね。お金持ちの息子さんか何かですか?」

「違う、いろいろな経緯で、この家を手にいれただけだ」

一瞬で言い訳を考えて、言う

「そうなんですか。すごいですね」

「入るのか、入らないのか。どっち?」

「入りたいです。着替えとかが無いんですが……」

すいません、と申し訳なさそうに言う

「安心しろ。不思議なことに、お前に似合う服がたくさんある」

「そうなんですか!!」

「不思議なことに…な。それじゃあ、ごゆっくり。上がったら呼んでくれ。着替えを持ってこよう」

それだけ言って、風呂場を後にする。

「ありがとうございます。それじゃあ」


浩介サイド

――なぜ、彼女は俺に懐くのだろう?

あの時は、守れなかったのに。

そう思いながら、長い廊下を歩く。

「くっ…」

突如、体が痛む。

――昼間の魂か!

おそらく、完全には『消化』出来なかったのだろう。

――早く消えろ!!

体の中を動き回る、魂に向かって、力を向ける。

少し立つと、その気配が無くなり、自分と同化したことがわかる。

「ふう、危なかった。服、取りに行かなくちゃな」

少し、駆け足で寝室へ向かう。

道を覚えたせいか、前よりも早く寝室に着き、パジャマを選ぶ時間があった。

「これにするか」

選んだのは、水玉のもの。

生前、百合が好んできていたもので、すごく似合っていたのを思いだし、それを持って行く。


0016サイド

私は1人、ただっぴろい風呂に入っていた。

「なんで、私なんかに、優しくしてくれるんだろう?」

『失敗作』だと言われ、実験動物にされた日々。

私は汚れてしまった。

おそらく、すべてを知っているだろう。

この、奇怪な紋章のことも、モルモットにされたことも……

なのにあの人はそんなことを気にせず、私に接してくれる。

「うれしい、のかな?穢れた、私を見てくれて」

私のほかにも『失敗作』はたくさんいた、でもほとんどが、『失敗作』と告げられたことがショックで、死んだ。

私が生き残ったのは奇跡に等しい。

「に、しても不思議な形」

自分の身に刻まれた紋章を見る。

所々に空白があり、そこに何かがはまるようだ。

「浩介さんなら、何か知ってるかも。物知りそうだし」

そう言って、風呂から上がる。


脱衣所

「下着の変えだけは、あったんだよね」

髪を拭き、次に腕、胴体、足の順で拭いていく。

体を拭いたタオルをおき、浩介の持ってきた服を着る。

「なんで、私の好みがわかったんだろう?」

どうやら、彼女は前世である百合と同じく、水玉のパジャマが好きらしい。

「あがりました〜」

聞こえるかどうかはわからないが、リビングの方に向かって、言う。

「わかった〜」

返事が返ってきた。

タオルを持って、リビングへ向かう。

紋章のことを聞こうという、決意を胸に…


浩介サイド

「あがりました〜」

彼女の声が聞こえた。

若干、声がうれしそうだったので、気に入ってもらえたのだろう。

「わかった〜」

少し、大きな声で、返事をする。

しばらくすると、脱衣所から、彼女が出てくる。

「何から何まですいません」

「別にいい。俺が好きでやっていることだ」

「一つ、質問があるんですけど、いいですか?」

何かを決意した、ような目をして、言われた。

「何だ?」

「私の体にある紋章についてなんですけど……」

「ああ、あれか。それと、ついになっているような紋章が、俺の体にあるぞ。見るか?」

普通に言うと、彼女は少し戸惑い、返事をした。

「はい」

そう言ったので、俺はシャツを脱ぎ始める。

シャツを脱ぐと、彼女の体にある紋章に酷似した紋章が見える。

「本当にそっくり……」

「これが、対の証だ」

「対の証?」

聞きなれない単語なのか、彼女は首をかしげる。

――あ、ちょっと可愛い。

一瞬、どうでもいいことを思ったりする。

「本来、能力者、お前達の言葉を借りると『完成体』というものは、対極の位置に座するものがいる。それが対だ」

「いると、何か得があるんですか?」

「ある。対がいると、能力を使用した時の威力が上がったり、能力を安定させやすくなる。ついでに、人並みの寿命になる」

「そうなんですか。でも、『失敗作』の私に、なんで対がいるんですか?」

どうやら、彼女は自分の能力に気づいていないらしい。

「お前は、『完成体』だ。ただ、その能力が戦闘向きではないだけで」

「?」

「お前の能力は、すべてを産むことのできる力だ。産む対象が、人だろうと霊だろうと、獣だろうと関係なくな。
その対である俺の能力は、すべてを殺せる力だ。怖いか?」

自分の能力を告げた瞬間、彼女の体が、少し動いた気がした。

「安心しろ、意識して殺そうと思わなければ、俺は何も殺せない。お前の能力もそうだ。何かの精を受けなければ受胎はしない」

「……そうですか」

「とりあえず、寝ろ。疲れているだろう?さっきも言ったが、一緒に寝るか?こんな『化け物』と一緒に」

「……それを言ったら、私も化け物ですよ。それに1人で寝るのは怖いんです。私が眠るまででもいいですから、一緒に寝てください」

「……わかった。寝室へ案内する、まだ迷うだろ?」

そう言って、彼女を寝室へ案内する。


寝室

少し離れ、二人一緒に布団に入る。

「おやすみなさい。私の名前考えておいてくださいね」

「ああ、おやすみ」

部屋の電気を消し、眠りにつく。

そして、夜はふけていく……



あとがき

初オリジナルです!!

これからもがんばりますので、よろしくお願いします。

それでは〜



感想

リンク頂いた無さんの作品です♪ 完全オリジナルですね!

浩介君が0016さんを助けて帰ってくるところまでのようですが、

色々謎の深いお話のようですね、世界観や完成体の事についての設定、神の存在。

浩介君が何故神の側についたのか等気になるところが多いです!

まあまあまあ♪ 可愛い子達ね♪  パシフィカと同い年くらいかしら? いいお家に住んでるみたい。ちょっと羨ましいわ♪

まあ、その辺の描写は無いようですし、幾つかまでは分らないけど…多分若そうだね。

そうね、初々しいし♪ 今後の為に も若い方がいいわ〜♪

ははは(汗) その辺はまた次回って言う事で…

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