土台と言うのは何かが成長するために重要なものである。土台がしっかりしなければ、家は建たない、草木は育たない。
人もまた然り、土台をしっかりしなければならない。それ以上に確りと立ち上がり、歩くためには土台を固めていくのが大切なのだ。
その為に家族がいる、教育機関がいる、友がいる、それが土台を作り上げ大人に仕立てるのだ。


マブラヴ・リヴァイヴ 
第3話「自分自身のために」






拳が鋭く風を突き刺す。それを避けるのに風が起きる。突き出された腕を掴もうと手を伸ばすが手を弾く様に軸足を使い回転し手を弾く。

「っ!」

相手の動きは見事、捕まらない方法を熟知している。それより彼の動きは変化し続けている。
打ち出す拳の速さは見切れるほど、しかし、次には蹴りが繰り出され肘が打たれ手の甲が迫る。

現在、白銀武と御剣冥夜が無手での格闘戦をしていた。互いの速さは熟知した。戦いが加速していくことが理解できた。

ところで、何故この様な事になっているかそれは、小時間前のこと・・・。




タンッ!と軽快な音と共に遠くに設置された的が撃ち抜かれた。続いて2射目が発射された。それが、されに遠くに設置された的を撃ち抜いた。


「ひゅ〜、ガンマンだねぇ〜たま。」

「え、えへへ。」

双眼鏡で全てが撃ち抜かれたのを確認する。数十メートル先の的が綺麗に撃ちぬかれているのを確認すると武は唸りながら射撃の結果を見ていた。

 やっぱり、何度見ても綺麗に決めてくな。国連軍の中でも屈指の腕だな、こりゃ。

何度確認しても彼女の銃の腕前は上位クラスであることを再確認させられる。それに対して武の銃の腕前は・・・笑うしかない。未来の時は一端に銃を使えたの と比べて今の自分は・・・。


数分前

「のぉ!」

銃の勢いによって尻餅をついて銃弾を的に外していた。それを思い出して乾いた笑いをする。


「あ、あの・・・白銀さん。」

「ん?おお。」

「あまり、頭を撫でないでください。」

気がつくとピンク色の髪をグシャグシャと撫で回していたようで髪がそこだけ他の場所と違って乱れてしまった。

「わ、悪いな。なんか、無意識のうちにやってた。」

「もぅ、髪グシャグシャになっちゃった。」

乱れた髪をいじって直そうとするが簡単に直るものではない。そうは思うが女である以上は髪の乱れは気になるものである。

「悪いな。ん〜、じゃ代わりに俺の事を名前で呼ぶことを許してやろう。」

「え、え〜!」

「あ、正し さん 付けな。これ決定事項。」

「え、ええ〜〜!!」

珠瀬をイジっていると後ろから一瞬殺気を感じて振り向いた。

「し~ろ~が~ね~~~!!サボるな!!」

「も、申し訳ありません教官!」

神宮寺の一声に武は立ち上がり自分のライフルを手に取る。それを見て榊は呆れた顔をする。御剣はジッとコチラを見て、いや睨みつけていた。彩峰は・・・ど うでもよさそうな顔をしていた。

「さて、白銀。」

「なんでしょう?」

「サボっていた罰をくれたやろう。フルマラソン10周だ。」

「うぇ。」

「だが、私も鬼ではない。」

嬉しそうに言う彼女の顔に彼は鬼を見た。それを見てゲンナリする武。だが、彼女も鬼ではないと自分で思っている。

「罰を回避したかったら20m先の的に当てろ。だが、的を外したら・・・もっとキツイ罰をやろう。」

「いっ!」

悪魔のような笑みでコチラを見てきた。劣等生へのムチというやつだろうか?確かに、罰を受けないためにヤル気を出す訓練生もいるだろう。
しかし、今の俺の状態で的に当たるかどうかと考えると体が覚えていない状態で的に当てるのは難しい。

「そうだな。マラソン10周に加えて重装備でだ。・・・もちろん、連帯責任つきでな。」

それを聞いて、重く溜息。仲間たちを見ると諦めて走るしかないかという顔をしていた。

何気に酷い。

そんな事を考えて銃を構え20m先の的を見据えた。現状の体が緊張したように固まり先ほど的を外したような状態になっている。

 ちっ、もう少しリラックスできないもんかね。

そう考えながらも固くなっていく身体に苛立つ。目のピントを20m先の的を見つめる。目がシパシパする。
特別運動をしていない身体は目が良い分けではない。普通に見るだけなら未だしも的を撃ちぬくとなると次元が違う。

少しだけ意識を変えようと30m先の的を見つめる。すると、少し変化が起きた。20m先の的よりも30m先の的の方が鮮明に見えたのだ。
それに気づいた時には、指先がトリガーに触れ肉体の固さが抜けトリガーを引き抜いた。


タンッ!


軽やかな音と共に30m先の的が見事に撃ち抜いた。辺りがシンッとした。撃ち終わった後は、心臓の鼓動が早く身体にドット疲れが圧し掛かってきたように感 じた。

「・・・・・あの、一応的に当たったんですけど。」

「っ、そ、そうだな。よくやった。」

労いの言葉を受けるがマグレ当りでしかない。周りもそう思っている。銃を撃つのもやっとの男が30m先の的に当てるなんぞマグレでしかありえないことだろ う。

けれど、それを鋭い目線でジッと見つめている人物がいた。目線を向けると冥夜は目を背けて立っていた。話しかけようと近寄ってくるとトコトコとピンク色の 物体が近づいてきた。

「凄かったですよタケルさん!」

「お、おおっ。そうだろう、そうだろう。」

気をとられすぎていた武は、珠瀬の話に対応するのに遅れたが珠瀬の純粋な賛美にほほを緩める。

「まぁ、偶然よね。」

「・・・マグレ。」

「ああ、そうだよ!もう少し褒めようと思わないのかね。」

「全然。」

「だよねぇー!!」

心優しくない同慮に現実に引き戻される。それに肩を落とすと彩峰が肩をポンポンと叩く。
それを見て励ましの言葉のでもかけるかと思われたが「・・・マグレ」と再び言われて又も落ち込んだ。
しかし、先ほどの冥夜の様子が少し気になり目線を移してみるが彼女は沈黙を守っており言葉を聴くことはできないでいた。



「っ!」

力を入れた拳が武の頬を掠める。それに合わせて右から掌を突き出した。それを左に避ける。
だが、避けることに気をとられ左手が胸倉を掴んでいたことに気づかないでいた。

「えっ。」

声を発した途端に世界は逆転した。そして、いつの間にか地面に座り込んでいるのであった。
慌てて後ろを振り返ると手を指し伸ばされていることに気づくと溜息をついてその手を掴んだ。

「おいおい、委員長。油断大敵だぜ?油断していると何時後ろからブスリっとやられちまうぞ。」

「そうね。私の不注意だったわ。貴方が相手で負けるとは思わなかったもの。」

「なんか色々と言いたいが外見で惑わされていちゃ、まだまだだぜ。」

「うるさい。」

二組になって組み手という名の格闘戦の訓練。榊と武は組手をしていた。まずは、彼女は武が対人格闘でどこまでやるのかを見たかったからである。
しかし、マラソンで倒れるまで行かないまでも無様な姿を晒した武の格闘技術を期待していなかった。

だが、結果は榊が倒されるほどに高い技術があることが気づかされた。それにより、彼女の中で武の評価が少しばかり高まった。

「タケルさ〜ん、千鶴ちゃん。お疲れさま。」

「おう、たま。どうだ、俺の動きは。」

「とっても綺麗だったよ。なんだか、ステップ踏んでるみたいだった。」

珠瀬の言葉に榊は頭に「?」マークをつけて珠瀬の方を見る。武は逆にニンマリと笑顔で珠瀬の近くにいって頭を撫でる。

「お、いい着眼点だな。たま〜、ほれほれ。」

「にゃ、にゃ〜ん。」

「なにしてるのよ。」

頭を撫でて少しだけ頬が赤く染まってるところに、あごの辺りをウリウリとくすぐると猫のようにくすぐったそうにより赤く上気していった。

それを見ている榊は、呆れたように嘆息し武の頭をポカリと叩いて子を戒める母のような目でにらみつける。

「貴方ね。珠瀬はペットじゃないのよ!」

「落ち着けって。スキンシップ、スキンシップだっての。なぁ、たま。」

「へ、はい?」

「あーのーーねーーー!」

「落ち着いて、千鶴ちゃん。」

怒れる榊が武に迫っていく。そこに、ドタンッ!と何かが倒れる音が響いた。3人が振り返ると彩峰が地面の上に倒されていた。

「お、あそこは随分と時間がかかったな。」

「慧ちゃんも冥夜ちゃんも格闘戦が得意だからね。でも、今回は冥夜ちゃんが上か。」

「今回は?」

「そう、御剣と彩峰は接近戦で甲乙つけがたいほど拮抗してるというわけよ。」

その説明を受けて彼女らの方を見つめる。それに気づいたのか冥夜が見つめ返してきた。
いや、見つめるというよりも睨みつけていた。今にも長けるに飛び掛らんばかりに、ただジッと見つめていた。

「武。」

「お、おお。」

飛び掛ってきた。そして、一気に武に詰め寄って再び目をジッと見つめていた。それは、何か決心した。その様な雰囲気が彼女から感じられた。

「私と一試合してもらえないか?」

「ふへぇ?」

いきなりのことで武は、素っ頓狂な声をだしてしまった。彼女の目を見てみると真剣に何かを図るかのような彼女の瞳に武もしっかりと見つめなおす。

「・・・・分かった。」

「頼む。」

それだけを言うと互いに立ち位置について睨み合う。周りは突然のことで置いていかれている。まったく、状況が読めていないのだろう。ただ、立ち尽くすだけ しかできない。
それに対して武と冥夜の二人は、合図を待ちただ待っていた。

「ちょ、ちょっと貴方たち!!私たちに分かるように説明しなさい。」

「お、落ち着いて千鶴ちゃん。」

必死に榊を止めようとする珠瀬。その横をスッと彩峰が出てくる。二人を止めるかと榊が微かに期待して見る。
スッと右腕を上げて何をするのかと見送る。

「・・・・はじめ。」


右手を勢いよく下ろして火に油を注いだ。


「彩峰ーーー!!!!」

「お、落ち着いて〜〜〜〜!」



合図と同時に冥夜が動く。彼女から拳を突き出した。それを武は、下から手の甲ではらう。
はらわれたと同時に首元を狙い武の手刀が放たれる。それを冥夜は左手で受ける。
そして、次に彼女が彼が互いに攻めて、受けてと繰り返す。



「ふぇ〜。」

「互角・・・かしら。」

「・・・ううん。御剣の方がうまい。」

自身も武道の技を習っている。故に技術としたどちらか有利かは少しは理解できる。だが、それでも、冥夜が絶対に勝つだろうという自信が持てない。

「そうかな、私はタケルさんが押しているように思えるよ。」

「?」

「どういうこと?」

「足の運びが。」

「「足?」」



ここで、話の最初の場面にあたる。互いに動きを理解し合えるほど打ち合った。故に、互いに相手を倒すためにどうすればいいか手段を考える。

御剣冥夜は、内心毒づいていた。確かに決定打は互いに与えていないにしても自分が相手に押されているように感じていた。
いや、本当に押されていた。互いに攻守を入れ替えながらも冥夜は後退をし、武は前進をしていた。

白銀武は、内心納得していた。身体が本来の速さを出してくれない。肉体の脆弱さに泣きたくなる。
そして、冥夜の速さと技術を肉体が命令通りに受けつけ武の攻撃が当たらない。今は独自流派の技のお陰で相手が四苦八苦しているが何時かは彼の動きは彼女に 止められてしまうだろう。

「しゅぅっ!!」

「くっ。」


腹部を武の蹴りが掠める。息をつこうとするが、武からの2手目が迫っていた。それを避ける。だが、次、次に攻撃を打ち出してくる。
手刀を避けた瞬間に肘が打ち出される。逆に攻撃をすれば受けた瞬間に反撃が頬をかすめていた。


「この、技・・・知っている。」

独特の攻撃方法。舞うかのような動きと指一本の変化が身体全体を変化させる。気づけば、その変幻自在の技に自分の攻撃リズムは崩された。

「確か、中国武術の内家拳の1つ八卦掌(はっけしょう)」

「ご名答。だが、俺の技は中途半端な技でな。あまり、拳で勝負するなって師に言われている。」

「そんなことはない。例え中途半端といえども気迫が・・・そなたが本気で私と戦ってくれている事は伝わってくる。」

ニッと唇の片方を釣り上げる。とても、嬉しそうな顔に武もまた、笑みを返す。

「そんなに期待されるんなら応えないと男じゃないよな。」

「そう、そなたの本気を見せてくれ。」

武が飛び出す。冥夜は、それを受ける構えをとる。掌が突き出される。それを避ける。
そこに、攻撃がとんでくる。それを受ける。だが、より、早い攻撃が次々と放たれる。
さっきまでの舞の様な動きではなく、獣のように荒々しく、そして、自由奔放に蹂躙する。

「これは。」

「俺が習ってたのは八卦掌だけでなくてね。この拳の名を形意拳(けいいけん)っていうんだ。」


いきなり、リズムを変えられる。八卦掌よりも攻撃的な武術である形意拳。
相手に接近し、『進むことを知って退くことを知らない』といわれるほどである。獲物を狙う獣の如く腰を低く拳を打ち出し、次には飛び掛るように拳が迫り、 相手を屈服させるかのように蹴りが飛び出す。

それを受けて攻撃を返すが俊敏に腰を低くし攻撃を避けられ反撃を受ける。やり難そうに武の顔を見る。彼の顔を見た途端に冥夜の顔に余裕が戻る。

「なるほど。」

「あん。」

武が不思議そうな顔に対して冥夜の顔に余裕のある顔をする。彼女自身も彼の変化についていくのがやっとだというのに。
しかし、彼女は理解した。武には圧倒的に足りないものの事を見抜いていたのだった。
そうと気づかずに彼が拳を突き出した途端に彼女は、狙ったようにそれを捕まえた。

「しまっ。」

「はぁ!!」

そのまま背負われる形になり投げられた。彼は背中を思い切り地面に叩きつけられた。目をパチクリとさせて太陽を見上げていた。


 あ〜、やっぱり・・・。

「負けちゃった?」

「・・・・うん。白銀の負け。」


彩峰の一言により自身の負けを改めて確認する。大きく息をはいてゆっくりと立ち上がろうとするとスッと手を差し出された。

「お、あんがと冥夜。」

「気にするな。」

冥夜の手を掴んで立ち上がると他のメンバーが近づいてきた。どうやら言いたいことがあるのか榊が眉を釣り上げていた。

「白銀!御剣!貴方たちね。」

「すごかたよ。タケルさん、冥夜さん。」

「お、そうか?いや〜〜照れるね。」


言いたいことを見事に邪魔された。次に言おうとすると

「まぁまぁだね。」

「ああ、まだ精進が必要なようだな。」

ことごとく邪魔をされてしまう。言いたいことがのどまで出ていたが大きく息をはき言おうとしていた言葉を捨てる。


「どうしたよ、委員長。」

「なんでもないわ。気にしないで。」

「そうか?んなら、まぁ、飯にでも行くか。」

「そうだな。そなたの欠点の指摘もできる。」

「んげ。」


歩き出そうと瞬間にガクッと武が片膝をついた。


「お。」

「どうした、武?」


心配そうに武の顔を見ると尋常じゃない汗をかいていた。片膝をついた瞬間に身体が麻痺したように指一本動かない。瞳の焦点が合わず周りがグニャリと歪んで 見えた。


 なんだ、これは?

『許されない。』

 はぁ?誰だ・・・どこから声が

『お前は(俺は)お前たちは、(俺たちは)負けることは許されない。』


声がダブって聞こえる。意識を取り戻そうと手を伸ばそうとするが身体が命令を受け入れない。
そのまま、ドサリと武の身体は地面に倒れてしまう。


「武!!?」

「タケルさん!?」

「!!」

「はやく!はやく医務室に!」







あとがき
どうもNEOです。未だに投稿になれず四苦八苦しておりますがどうにかしたいと頑張っています。
今回は伏線張るだけって感じです。4話で回答する感じですね。3と4で1つの作品にでもする感じです。(だったら、前編、後編にでもしろという話ですが)
とりあえず、12月は忙しいので投稿速度はスローリーになりますので読者の皆様には迷惑をかけます。それでは、拍手を返します。




拍手返し。

11月23日
20:03
ええ、花の慶二は面白い。痛快ですからな慶二の行動。

20:04
前のサイトに追いつく。・・・2009年まで待ってください(おい)


11月26日
22:58、23:00
月詠に関しては難しいですが国連衛士に関しては・・・頑張ってみるつもりです。

11月27日
1:28
前作からありがとうございます。前のよりいい出来のを作るつもりですので応援をよろしくお願いします。



拍手ありがとうございました。次回もガンバゾーー。


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