第七話「ルリちゃん『航海日誌』………ではなくて、『交換日誌』」










《Side ユラの日誌》





今日から、交換日誌を書く事にした。

メンバーは、俺(ユラ)、ルリちゃん、ラピス、パールの計四人。

何となく始めた日誌だが、途切れる事無く続けていこうと思う。



………では、今日の出来事を書く訳だが……おそらく、ナデシコに乗ってから一番騒がしい日だったと思う。

事の発端は、ミナトさんのあの一言からだった………





アキトたちとの早朝鍛錬が終り、解散して自室でシャワーを浴びる。

上がって着替えが済むのと同時に、タイミング良くコミュニケが入ってきた。


『はぁ〜い、ミナトお姉さんのモーニングコールよ♪』

「おっ、おはようございます………」

『いきなりで悪いんだけど……私の部屋に来てくれるかな?』

「別にいいですけど………」

『ほんとっ!?
 じゃあ、待ってるから早く来てね♪』

「……………何故だか、凄く寒気がする」


コミュニケが切れ、俺は何とも言えない嫌な予感が湧き上がってきた。

しかし、頼まれた以上は行かないと………



思えばこの時に、自分の第六感を信じていれば良かった。





ミナトさんの部屋に着くと、中に招き入れられ椅子に座る。

目の前のテーブルには、ティーセットが用意されていた。

そして、淹れられた紅茶を口に含み一呼吸置く………


「それで、俺に何の用ですか?」


質問した時、ほんの一瞬だけ………ミナトさんの口元が、「ニヤリ」っと笑った気がした。


「実はねぇ……あの術、“影法師”って言っていたわね………」

「はい、“影法師”の術が何か?」

「あの娘を完全に独立させる事ができるでしょう?」

「へっ!?
 たっ、確かにできますけど………」

「良かったぁ〜〜。
 この本に書かれていた通りね♪」


ミナトさんが手に持っている本の表紙を見ると………

[日本の陰陽道 (呪術、符術 式神 編) ]……っと書かれていた。

何でそんな物を持っているんですかっ!?


「細かい事は気にしないの♪」

「……俺は何も言ってません」

「あらっ、そうだったかしら………」


やっぱり、要注意人物だ。


「話に戻るわよ………このぺージに記述されている、“式神”にすればいいんでしょ?」

「ええ、そうすれば確かに“個人”……“自我”を持つ事が出来ます。
 けれど………俺はやりませんよ。
 また、大騒ぎになるし、それに………恥ずかしいです」


自分とほぼ同じ容姿をした異性………なんか、自分が女装に目覚めたみたいで嫌だ。

整備班の間では、あの時のメイド服姿の写真が人気らしい。

全く、何時の間に撮ったんだろうか?


「あらそう、でも…………」


どこからか取り出した、テープレコーダーを再生させる。


『ミナトさん、俺にできることなら何でも言ってください。
 出来うる限りの事はしますから………』

「ブッッッ!?」


思わず、飲んでいた紅茶を吹き出す。

あれは、メイド服を返しに行った時に言ったセリフっ!?

ラピスたちの面倒を見て貰う代わりに、お礼のつもりとして言ったんだけど………

まさか、ここで使うかそれをっ!?


「ミっ、ミナトさん……あのですね………」

『ミナトさん、俺にできることなら何でも言ってください。
 出来うる限りの……………』

「いや、だから………」

『ミナトさん、俺にできることなら何でも言ってください。
 出来うる…………』


巻き戻して再生、巻き戻して再生を繰り返すミナトさん。

言っていて非常に恥ずかしいセリフだが、俺は首を縦に振らない。

俺の“影法師”を式神化するよりはマシだ。


「仕方が無いわね………」


ようやく、あきらめてくれたっと思ったら……中のテープを変える。

どういう事だ?

その答えは、すぐに出た………俺の人生に終止符を打つ位の衝撃と共にっ!!


『……なんで、俺はメイド服なんて着てんだろうか?
 しかし…………よしっ!!
 ………お帰りなさいませ、御主人様♪
 ……………何をやってんだ俺はぁぁぁぁぁぁぁっっ、これじゃあ、変態だぞぉぉぉぉっっ!!!』


「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっっ!!!」


椅子から転げ落ち、頭を抱えながら部屋中を転げ回る。

自分の中でも、忘れたい出来事ワースト10入りを果たした出来事が掘り起こされる。

あれは、魔がさしたんだっ!!

ただ、何となく……着替える前に湧いた、ちょっとした好奇心だったんだぁぁっ!!

自分でも、バカな事をした思っている。

しかし、一度は言われてみたい言葉………浪漫が俺を突き動かしたんだっ!!

更衣室の備え付けの鏡に向かい、お辞儀のあとに少し首を横に傾げて、「ニッコリ」っと微笑んで言う。

ちなみに、首を傾げるのがポイント………何を説明しとるかぁぁぁぁっ!!!

俺は……俺は……オレはぁぁぁぁぁっっ!!!


「ノオオオオォォォォッッ!!!」


ただひたすら、転げ回る俺………


「ユラ君♪」


その言葉を聴き、「ピタリ」と止まる。

俺に選択肢は無い………ならば、やる事はただ一つっ!!


「じゃあ、お願いね♪」

「精一杯がんばらせて頂きます………」


涙を流しながら、ミナトさんに宣言した。



その後、俺は特殊な霊符を取り出し、自らの“髪の毛”と“血”を付け………そして、“氣”の塊を送り込む。

初めて行なった事だったので、氣を送る加減が判らずにやった所為か、余りの量を消費した為に気絶してしまった。





以降は、オモイカネから観せて貰った映像を元に、その後の様子を記す。





「ちょっ、ちょっと大丈夫っ!?」


いきなり倒れた俺を見て、慌てて駆け寄るミナトさん。

その表情から、軽いパニック状態のようだ。

さらに、ミナトさんを煽るような現象が起こる。


「なっ、なにっ!?」


霊符を中心に、光が渦巻いているのだ。

光は集束していき、そして………一瞬の激しい光の輝きと共に霧散する。



そこから、現れたのは………髪を下ろし、巫女服を纏った女の俺だった。


「はじめまして、ミナトお姉さん♪」

「へっ……はっ、はじめまして………」


彼女の挨拶に、「ポカン」っとしながら答えるミナトさん。


「主様(あるじさま)の事なら、心配しなくても大丈夫ですよ。
 私に氣を送り込み過ぎて、回復の為に寝ているだけですから……」

「えっ………あら、本当だわ」


彼女との会話で幾らか落ちついたのか、俺が寝ている事にようやく気付く。


「とりあえず、そこのベッドに寝かせていいですか?」

「ええ、いいわよ。
 私が原因みたいなモノだし………」


“俺”を抱きかかえて、ベッドに寝かしつける“彼女”。

それを確認したミナトさんは………


「えっと、“あなた”の事をなんて呼べばいいのかしら?」

「今は“ユラ”結構ですよ。
 後で、主様に命名して貰います」

「じゃあ、ユラちゃん」

「はい、何ですかミナトお姉さん♪」


微笑みながらの答えに、ミナトさんは………立ち眩みが起きたみたいに膝を着く。

そして、一言だけ小さく呟く。(オモイカネに何とか呟きを拾って貰った)


「最高っ……」


………だった。

それが、微笑みによるモノなのか、「お姉さん」発言からなのか、あるいは両方によるのモノなのかは分からない。


「あの……ミナトお姉さん?」

「大丈夫よ………それじゃあ、行きましょうかっ!!」

「えっと、何処にですか?」

「食堂よっ♪」


これが、あの惨劇(俺にとって)を起こす事になる。





それから一気に時間は進み、映像の時間はお昼頃。

その間の出来事は記録していないらしい(オモイカネ談)

昼食をとる為に、大勢の人が食堂に集まってくる。

しかし、みんなが入った途端に硬直する。

もちろん、ユリカさんやアキト、メグミさんやウリバタケさん、ヤマダとリョーコさん、ヒカルさんにイズミさん。

そして、ルリちゃん、ラピス、パールも同様だ。

その他は、整備班の人達など………

何故、みんなは固まっているのだろうか?

その原因は………


「いらっしゃいませぇ♪」


アンミラ系の制服に身を包んだウェイトレス姿で微笑む“彼女”だった。


――1分経過


――2分経過


――3分後に………爆発


「「「「「「ええぇぇぇえぇぇっっ!!!」」」」」」 (女性陣)


「「なにいぃぃぃいぃぃっっ!!!」」(アキトとヤマダ)


「「「「「「キタァァァァァーー、キタァァァァァッッ!!!」」」」」」(ウリバタケさんを含む男性陣)


もの凄い音量だった。

なにせ、映像を見せてくれていたオモイカネが、一瞬だけフリーズしたのだ。

しかし、ルリちゃんがあんな大声を出すとは意外だ。

話を戻そう。


「ユユユユユっ、ユラっ!!
 なななななっ、何でそんな格好してるのっ!?」


余りの出来事に、呂律(ろれつ)の回らないラピス。


「ミナトお姉さんが、『着てみて』って言うから………」


「「「「「「「ミナトお姉さんっっ!!?」」」」」」」


次から次へと、予測不可能な事が起こる中で、その仕掛け人であるアノ人はというと………


「は〜〜い、みんな席について……そうしたら、ユラちゃんが注文を聞きに行くからね」


ミナトさんが言うのと同時に、アキトを除く男性陣が風の様に素早く席に着く。

アキトと女性陣も、雰囲気に流されてノロノロとだが席に着く。

ちなみに、アキトはユリカさん、メグミさん、ルリちゃん、ラピス、パールと同席。

リョーコさん達は、別の席に座っている。


「それでは、注文が決まったら呼んで下さいね」


「「「「「「「ハイハイハイっ、ハイハイハイっ!!!」」」」」」」


言い終わるのと同時に、ウリバタケさんを中心とした整備班グループが一斉に手を挙げる。

それに負けじと、ヤマダ率いる他部署組みが声を上げる。

何なんだ、この光景はっ!?

今すぐ行って、ぶち壊してやりたいが………すでに終わった出来事は覆す事は不可能だ。



そして、次々と注文を受け取る“彼女”………

ついに、最後の席に居るアキトたちの所にやってきた。


「ハ〜イ、ご注文はいかがなさいますか?」


どう対応したらいいか判らないアキトたち。

すると、パールが………


「あなた、本当にユラなの?」

「何処をどう見ても、“ユラ”にしか見えないと思うけど……」

「そうね………でも、私のカンが言っている……あなたは“ユラ”じゃないわっ!!」


どこぞかの名探偵の様に、“彼女”を指を向けるパール。

しかし………


「証拠はあるのかな?」

「うっ………」

「証拠も無いのに、そう言われても納得できないわ」


パールの指摘を平然とした顔で、いとも簡単に返す………


「………それより、アキトは何を注文するの?」

「えっ、うっ……その〜〜、あっと………」


「あぁぁぁっっ!!!
 二人とも顔を近づき過ぎっ……艦長命令です、今すぐ離れなさぁぁぁいぃぃっっ!!!」


「そうです、アキトさんから離れてくださいっっ!!!」


ユリカさんとメグミさんのダブルアタックが炸裂。


「いいじゃない……それ位の事はできる仲だし………」


「どう言う仲なの(ですか)!!?」


再び、二人のダブルアタックが炸裂。


「スカートの中を見られる仲だけど………」



―――時が凍りつく。



「アキトぉぉぉぉ!!!」とユリカさん。


「アキトさぁぁぁぁぁんっ!!!」とメグミさん。


一番早く再起動した、二人が怒りの咆哮を上げる。


「テンカワさん………」っとルリちゃん。

「アキト………」っとラピス。

「アキトさん………」っとパール。


三人の冷たい視線が突き刺さる。


「ちっ、違うぞっ!!!
 あれは、事故だったんだぁぁぁぁぁっ!!!


「…って事は、見たのは事実なのね」


何時の間にか来ていたミナトさんが、鋭い指摘をする。


「うっ………ユラぁぁぁぁっ、誰にも言わないって言っていたのにっ!!」


“彼女”に向かって、詰め寄るアキトだが………


「あっ」

「きゃっ!?」


神のイタズラなのか、つまずいて倒れるアキトに巻き込まれる“彼女”。


「いたたた………ユラ、大丈夫……んっ、何か手に柔らかい物が?」

あぅんっ……」


アキトが手を軽く握ると、それに合わせて何かに耐える様な声を出す“彼女”。

もうお気付きだろう、アキトの手の位置は“彼女”の胸の上。

「ムニュ」っと言う音が聞こえそうな位、アキトの手の形に合わせて胸は歪んでいる。


「どわわぁぁぁぁぁっ、ほんものぉぉぉぉっっ!!!」


ようやく、自分のしている事に気付いて飛び下がる。

周りは、突然の事態に付いていけずに停止していた。

そんな中で、“彼女”は起き上がり………


「下着を見られただけじゃなくて、胸まで触られた……これは、責任を取って貰わないとね♪」

「せっ、責任って何を………」

「そ・れ・は・ね♪」


そう言いながら、アキトの前まで来ると………


「ん〜〜〜」

「えっ、ちょちょちょっとぉぉぉ!?」


徐々に、アキトの顔に接近する“彼女”の顔。

この光景をみて、何故か止まっているみんな……たぶん、この急展開に頭がオーバーロードしたのだろう。



そして、互いの唇がゼロに近くなったその時っ!?


「なにをやっとるかぁぁぁぁぁぁっ!!!」


ここで、目を覚ました俺が登場。

あの時は、人生にピリオドを感じる位の嫌な予感がしたので、そのカンを信じて食堂に直行したのだ。

今、前の場面を見ていたからこそ、俺のカンは正しかったと言える。





あの時、目の前に繰り広げられている光景を止めるために、どこからか取り出したハリセンで“彼女”の頭を叩く。

叩かれた“彼女”は、その場で頭を抱えながら蹲る(うずくまる)。


「ハァっ…ハァっ……ハァっ………」

「主様ぁ〜、いたいですぅ〜」


瞳を潤ませ、なおかつ上目遣いで俺に訴えかける。

普段の俺なら、一瞬だけ色んな葛藤をするだろうが………今の俺には効かん。

コイツに対する怒りで、もう一杯だ。


「痛いじゃないっ!!
 そんな格好で、何をしとるかっ!!」

「ウェイトレス」

「俺は、アキトに何をしているかと聞いているんだ」

「責任を取る為のキスかな……」


もう一度、頭をハリセンで叩く。


「みうぅ〜〜〜」

「艦内風紀を乱すなっ!!」

「え〜〜〜っ」

「『え〜〜』っじゃない………全く、どういう神経しているのやら……」

「えっと……ユラ?」

「すまん、アキト……この馬鹿が迷惑を掛けた。
 純情な青年をからかうとは………」

「かっ、からかわれていたのかっ!?」

「えへへっ、ごめんねぇ〜」

「いや、あの……」


「その笑顔に騙されるな」っと叫んでやりたいが、それより大事な事がある。


「何処に行くんですか、ミナトさん?」


この場から去ろうとしていたミナトさんが、「ビクッ」っと身体を震わせる。


「あははははっ、ちょっと用事を思い出して………」

「だったら、何故そんなに警戒する必要があるんですか?」

「ううう…えっとね………ごめんなさい」

「ハァっ……勝手にコイツを連れて行かないでください」

「ハイ、反省しています」

「まあ、全部がミナトさんの所為じゃないし……この馬鹿にも騒ぎの責任があります」

「みぅ〜〜、ごめんなさい」


とりあえず、事態は終わったかと思ったら……


「ユラ君………」

「ユラさん………」

「はい、何で……ヒイィィっ!!」


後ろに振り向いた先には……表面上は笑っているが、背後に黒いオーラを立ち上らせているユリカさんとメグミさんだった。


「その娘の事……」

「ちゃんと、説明して貰いますからね」

「了解でありますっ!!」


余りの怖さに、思わず姿勢を正して敬礼をしてしまう。

“女の嫉妬は鬼よりも怖い”………本当の事だったんだね父さん。





「「「「「「「しきがみぃぃ?」」」」」」」


「ハイ……主に、術者のサポートをするのが役割です。
 特殊な霊符と血を使用して、それに基となる媒介を付加させて作り上げるんです」

「じゃあ、何でユラの女の子の姿なの?
 媒介は動物とか、生き物なら良いんでしょう?」

「ラピス、それはね……ミナトさんリクエストなんだ」


全員が一斉にミナトさんに向く、そして………

アキト以外の男性陣が「グッジョブ」っと親指を突き立てる。

ミナトさんもそれに応えて、「まあね」っと親指を突き立てる。

無視だ、無視………


「“影法師”とは違うの?」

「そうですね……あれは自分の分身ですけど、“個”を持っていないんですよ。
 だから、式神は“明確な意思と個性”を持つ自分に近い存在です。
 “相棒”って言った方がいいかもしれませんね、ユリカさん」

「へえ〜、そうなんだ」

「でも何故か、少し俺とは性格にズレがありますけどね。
 どうして、こうなったのやら………」

「主様、細かい事は気にしない方が良いですよ」

「おまえは黙っていろっ!!」

「ハ〜〜イ」



説明も一通り終わった所で、やり忘れた事を実行しないとな。


「ちょっといいか」

「何ですか、主様?」

「まだ、おまえの命名をしていなかったよな。
 ………今、この場でおまえに“名”を与える」


ほんの少しの沈黙の後、元の巫女服姿に瞬時に変わると同時に、“彼女”の雰囲気が一変する。



『謹んでお受け致します、我が主。
 我、如何なる時も主と共に戦いし者。
 主への不変の忠誠を誓います』

「ならば、汝は“ユナ”と命名する。
 汝は、我が一片より生まれし者。
 我が守護者となりて、其の力を振るえ」

『振るいし時は、剣となりて……守りし時は、盾となりましょう』

「我が守護者、“ユナ”よ……」

『我が主、“ユラ”よ………』

「『契約はここに完了せり』」



命名の儀式が済み、やっと全てが終わる。

………なんか、妙に周りが静かだ。


「みなさん、どうしたんですか?」

「………他のヤツ等は、お前達の雰囲気に呑まれたんじゃねえか。
 まあ、俺もさっきまで呑まれていたからな」


ウリバタケさんが言うには、突然始まった儀式に呑まれて呆然としているらしい。

う〜ん……この場所でやったのは、失敗だったかもしれない。


「とりあえず、名前が決まって良かったわね」

「はいっ、ミナトお姉さん」

「そういえば、服はどうしたの?」

「ちゃんとありますよ……ほらっ」


また、瞬時にユナの服が変わる。


「あら、今のどうやったの?」

「さっきの巫女服は、この服の上に幻影を重ねていたんです。
 巫女服は、デフォルトなのでこんな風にできるんですよ」

「便利な能力ねぇ〜」


そんな話をユナとミナトさんがしていたら、みんなが正気を取り戻してユナに色々と質問を投げ掛ける。

……主に男性陣(アキトを除く)だけどね。



「ねえ、ユラ………ユナの部屋はどうするの?
 私たちと一緒でも良いけど……スペースがもうないわよ」

「それなら、大丈夫だぞパール………ユナっ!!」


声を掛けられ、質問を一時中断してこちらにやって来る。


「なんですか、主様?」

「みんなの前で小さくなってくれないか」

「は〜い………えいっ」


「ポン」っという音を立てて、ユナの姿がUFOキャッチャーのヌイグルミと同じ大きさになって、宙に浮いていた。

ちなみに、衣装はデフォルトの巫女服を着ている。


「「「「「「「おおぉぉーーっ!!!」」」」」」」


「こんな風に、式神は大きさを自由に変えられるんだ。
 この大きさなら、スペースに問題ないだろうパール」

「そうね……でも、こんな事もできるなんて………」

「形態“チビユナ”って感じだよね」


「ちっっがぁぁぁぁうっ!!!」


突然、ウリバタケさんが叫んだ。


「違うぞ、ラピスちゃん……この形態名は、“ちびゆな”だっ!!
 全部ひらがなの方が……萌えるっっ!!」

「そんな、文章じゃないと分からない事を……」


パールの指摘にも耳を貸さず、みんなに力説するウリバタケさん。



「ふよふよ」っと浮かんでいたユナが、元の大きさに戻りみんなに向かって………


「みなさん、これからよろしくお願いします♪」


極上の笑顔と共に挨拶するユナだった。

それと同時に、男性陣の魂の叫びが食堂……いや、ナデシコ艦内中に響き渡った。





このあと、プロスさんとの相談の結果。

ユナは、食堂のウェイトレス兼厨房の手伝いの仕事に就く事になった。

ちなみに、部屋は俺達と同室。





………っと、今日はとにかく精神的に疲れた日だった。



もしかしたら、俺は自分の天敵を増やしてしまったかもしれない。

このイタズラ好きの子悪魔は、色々と騒動を起こしそうで心配だが………まあ、退屈はしなさそうだ。

ルリちゃん、ラピス、パール……ユナのことよろしくな。

俺からは以上だ。





追伸  俺の“ご主人様発言”は、俺達の間だけの秘密だからな。





《Side パールの日誌》



ユナが生まれるまで、そんな過程が在ったとはねえ………

あの事は、絶対に言わないから安心していいわ。

その代わり……今度、一緒にお昼寝して貰うから。

もちろん、二人っきりでだからね。



それじゃあ、今日の出来事を書くわね。

今日は朝から、寝るまで退屈しなかった日だったわ。





私の身体を、「ユサユサ」っと揺り動かす人がいる。

何時も通り、ユラが起こしてくれているのだろう。

もう意識は覚醒しているのだが……私の意志は、まだ温かいベッドの上で寝ていたいのか動こうとしない。

そして、優しい声で……「パール、朝だぞ」っと言ってくれる。

その声で起きると「おはよう」と言いながら、微笑を浮かべるのよ。

ああっ、それはまさに至福………


さあ、ユラ……あなたの声を聴かせて………

「む〜〜〜、起きない……ハァ、しょうがない」


あれ……なんか何時もと違う行動ね。

それに声が………

「えいっ♪」


―――10秒経過。


―――20秒経過。


―――30秒経過。


「ぷはぁぁっ!!
 ハァ…ハァ…ハァ………ラピスっ、朝っぱらから私を殺す気っ!!」

「だって起きないんだもん」

「だからって、寝ている私に濡れタオルを顔に被すなんてどういう事よっ!!」

「目覚まし」

「永遠の眠りに着く処だったわよっ!!」

「そうなってくれたら、どんなに良かった事か……」

「…………殺スッッ!!」



二十分程経った頃だろうか、私たちは揃って大の字で仰向けに寝ていた。

不毛な戦いだったわ……まだまだ、レディーとしての修行が足りないわね。


「ねえ、ラピス……ユラは早朝鍛錬?」

「そうだよ、アキトたちと一緒にね……」


なら、あとちょっとで帰ってくるわね。

私の考えている事が分かったのか……


「早く片付けよう」

「そうね」


起き上がり、私の目に飛び込んできた光景は……見るも無残な部屋の風景だった。





片づけがちょうど終わった頃に、ユラが帰宅。

たぶん、暴れた事はバレているだろうが、その事には一切触れずに朝食の準備に取り掛かる。

朝食後、仕事に行くユラを見送る……この時、“新婚さんってきっとこんな風なんだ”と思ったのは秘密。

次のラピスが、この日誌を読んで悔しがる顔が目に浮かぶ。



私とラピスの仕事は午後からなので、それまで何をしようか考えていると……


「ここに居てもしょうがないから、行こう」

「何処に?」

「適当に艦内を回るのも、悪くないと思うけど?」

「……それもそうね」


ラピスの提案に乗り、私たちは部屋を後にした。





当ても無く、通路を歩いていると………


「あれっ、二人とも何してるの?」


ユリカさん登場。


「仕事が午後からなので、それまで暇を潰そうと……」

「そうなんだ……ねえ、何処かに行く予定はある?」

「ううん、特に予定は無いよ」

「それじゃあ、私の部屋でお話しない?」

「「えっ?」」

「私はユラ君の事も含めて、二人の事は乗員名簿に書かれている事しか知らないの。
 だから、あなた達から直接聞きたいと思って……」


ラピスが、私に「どうするの?」っという感じで視線を送ってきた。



特に断る理由も無いし、ユリカさんの好意を無駄にはしたくない。

それに私自身も、色々と知って欲しいと思う。


「わかりました、私たちで良ければ喜んで………」

「うんっ、決まりっ!!
 ……それじゃあ、お部屋に案内するね」


私たちは、前を歩くユリカさんの後を付いて行く。


「パール、いいの?」

「何が?」


私たちは、ユリカさんに聴こえない様に小声で会話する。


「私たちの事……全部話すつもりなの?」

「質問された事には、できうる限り答えるわ」

「そう……でも………」

「私だって怖い………けれど、ユリカさんならきっと……」

「…………そうだね。
 ミナトさんとメグミ、ホウメイさんも受け入れてくれた。
 だから、きっとユリカも………」


私は力強く頷いて、それに答える。


「二人ともぉ〜、早く早くぅ〜〜」


私たちと早く話がしたいのか、急(せ)かすユリカさん。


「行こうか……」

「そうね」


歩く速度を少し速めて、彼女の元に向った。





「お茶を淹れるから、イスに座って待っていてね」


ユリカさんの部屋に招き入れられ、言われた通りにイスに腰掛ける。

室内を見渡して観ると……意外な事に、ゴミ一つ落ちていない整理整頓された綺麗な部屋だった。

まあ、ヌイグルミや可愛い置物の数の多さは、この際おいておこう。

普段のユリカさんを見ていると、家事などは疎いと思っていたが、どうやら違うらしい。

認識を改めなければ………


「全然チラかってないね、ユリカの部屋」

「週に2・3回、ジュン君が部屋の掃除をしに来てくれるの」

「あっ、そうなんだ……」


前言撤回………やっぱり、家事はダメみたいね。

それにしてもアオイさん、書類整理の手伝いだけじゃなくて、部屋の片付けまでしていたのね……



…………遅いわね。

もう、お茶が出てきても良い筈だけど………どうしたのかしら?

私たちはイスから降りて、そっとキッチンを覗いて見る。


「えっと……紅茶ってどうやっていれるんだろう?」


紅茶の茶葉が入った缶と、にらめっこしているユリカさん。

その様子を一緒に見ていたラピスが………


「しっ、知らないのに淹れようとしてるの!?」

「……っと言うか、普通は誰かが淹れるのを見て、覚える筈よね」


小声で話し合う私たちは、在りえない言葉を聴く。


「う〜〜ん……とりあえず、缶にお湯を注いじゃえばいいよね♪」


その言葉を聴くのと同時に………


「「ちょっと、待って(ください)!!!」」


「わっ、どうしたの二人とも?」

「ユリカ……今から、私たちが淹れかたを実演するから、それを覚えて……」

「えっ、でも………」

「お願いしますユリカさん、私たちにやらせてください」

「何か顔色が悪いけど……大丈夫?」

「「誰の所為よ(ですか)」」

「あうっ、ごめんなさい」


あのままにしておいたら、どうなるか分かったもんじゃない。

家事が下手とか、そういうレベルの問題じゃないわ。





「これで、完了です」

「わぁ〜、いつもと色が違うねっ!!」

「味も違うはずだよ、ユリカ」

「凄いね二人とも………誰に習ったの?」

「それは……」

「もちろん……」

「「「ユラ(君)」」」


私たち、三人の声が重なり、思わず吹き出してしまう。


「フフフっ、やっぱりね」

「ユラって、結構こういうのにこだわりますから……」

「一緒に住んでいた時から、そうなんだよ」

「へぇ〜……って、一緒に住んでたの!?」

「あれっ、知らなかったの?」

「名簿に書いてなかったんですか?」

「うん……プロスさんは何も言って無かったし………」

「ハァ〜、その事も含めて話さないとね」

「ユリカさん、紅茶が冷めない内に早く座りましょう。
 お話は、それからです」

「そうだね」





私たちはイスに腰掛けて、テーブルに置かれたティーカップを取り一口だけ含んで味わう。


「……おいしい」

「及第点ね」

「私には好みの味だから、満点だね」


ユリカさん、私、ラピスとそれぞれの感想を呟く。



………紅茶が半分位になったところで、私は話を切り出した。


「さてと、ユリカさん……私たちに何を訊きたいんですか?」

「……ユラ君と初めて出会った時の事を教えて欲しいの」

「分かりました……」


私は一呼吸置いてから、話し始めた。


「私たちが最初に出会ったのは、一般には知られていない非公式の研究所。
 そこでの、私たちの扱いは……人体実験の被験者でした」


ユリカさんが、両手を口元に持っていき息を呑む。

それでも、私は止める事無く続ける。


「来る日も、来る日も繰り返される実験の日々。
 何人もの子が、耐え切れず死んでいく姿を私は覚えています。
 それを見て、“いつか、私も同じ様になるのか”と怯える毎日を送っていました」


ここで、“怯えていた”と言ったが、当時の私はそれが恐怖だという感情に気付いてなかった。

初めて、その事に気付いたとき……私はユラに抱きしめられ、その胸で大声を上げて泣いた。

その時の事は、私の大切な思い出として今でも鮮明に覚えている。


「そこに、ユラ君があなた達を救出しに行ったのね」

「ううん、ユラは研究所に来ていない

「っっ!?」


ユリカさんの中で、一つのパズルが組みあがったのだろう。

その顔には、驚愕と悲しみが混ざった表情を出している。


「ユリカさんの推測道理ですよ。
 ユラは私たちと同じ被験者……それも、私たちよりも遥かに激しい実験を受けています」

「そんな……事って……」

「ユラは、ただのIFS強化体質じゃないのよ。
 何かの計画の為に、生まれた特別なマシンチャイルド」

「計画?」

「私たちも詳しくは知りません。
 でも、ユラは“それを調べている”と言っていました」

「そうなの………」


室内に重い空気が支配する。


「ねえ……」

「何、ユリカ?」

「二人とも……今、幸せ?」


その言葉を聞き、私はユラに助け出されてからの日々を思い出す。



初めは、いきなり与えられた自由に戸惑っていた。

でも、一年前のアカツキ達との交渉の時に、私はユラの役に立ちたくてオペレーターの訓練を志願した。

その時に、私は理解した。

これが、“自由”………誰に命令されたのではなく、“自分の意志”で決められる。

そんな当たり前な事を、私は知らなかった。

それから、私は……楽しかった、嬉しかった出来事や、悲しかった、苦しかった出来事を経験した。

それは、“自分”というモノが在って、初めて感じる事ができる。

ユラは、“私”を“パール”という存在を教えてくれた大切な人。

その人と暮らした日々は、良い事や悪い事も在ったが……後悔した事は一度も無い。

だから、「今、幸せ?」っと訊かれたら迷わずこう答える…………


「幸せですよ……」

「過去がどうであれ、私たちが今こうして生きている事に不満なんてないよね」

「そうね、ラピス」


私とラピス、多少の違いはあると思うが、根本的な思いは一緒なのだ。

この思いがある限り、私たちは日々の暮らしを幸せと感じる事ができる。


「そっか………じゃあっ、暗いお話はここでおしまいっ!!
 今度は、ユラ君に助け出された時の事や、どうして一緒に暮らすことになった経緯を教えてっ!!」

「うん、いいよ………私の時は……」


先程の空気は何処にいったのだろうか、一気に部屋の雰囲気が明るくなる。

これも、一種の才能ね。



…………それにしても、ラピスの話は脚色し過ぎじゃないかしら?

でもまあ、二人とも楽しそうだし良いわよね…………私も参戦しよう。





午後の仕事は、暇で暇でゲームをしていても大丈夫な位に、何事も無く終わった。

それにしても、ルリは格ゲーが強かったわ。

まさか、三勝も勝ち越されるとは思っても見なかった。

それはともかく、目の前に並べられた夕食を食べましょう。

さて、ドレッシングのフタを………


「パール、ユラは?」

「あそこで、ユナと話をしているわよ」


私の指した先には、ユナと話しているユラの姿が在った。


「何を話しているのかな………さっきから何してんの?」

「このヨーグルトドレッシングのフタが、硬くて中々外れないのよ」


会話中も、ずっとフタと格闘していた私。

それを観ていたラピスが………


「ちょっと、貸して……ふーーーんっ……くっくくくっくっ……ハァ、ダメだね」

「今度は、二人でやってみましょう」


私がビンの底を持ち、ラピスがフタを持って、お互いに逆の力を加える。

しかし、それでもフタは開かない。

すると、ラピスが目で合図してきた。

私たちは、それを実行する。


「「いち、にいの……さんっ!!」」


スリーカウントと同時に、一気に力を入れる。

そして、ようやくフタが開いたのだが……


「「あっ!!」」


勢いが強かったのか、ビンが宙を舞いながら………


「うわっ!?」

「きゃあっ!?」


ユラとユナの頭の上から、その中身をぶちまけた。


「なっ、何なんだこれは?」

「ふえ〜〜ん、ベトベトしますぅ〜」


二人の髪や顔、上半身をドレッシングまみれになった姿が確認できた。


「あっ、ユラごめんな………」


私が謝ろうとした……その時っ!?


「グハッ!!」

「ガフッ!!」

「ハブッ!!」

「ゴフッ!!」


次々と、鼻血を吹き出しながら倒れる男の人たち……一部の女の人も混ざっていますけどね。

いったい、どうしたのかしら?



「あっ、主様……」


声のした方を向くと、互いの姿を確認しているユラたちだった。


「主様、コレって言わゆる………」

「言うな……」

「でも、私たちの今の姿は完璧に……」

「言うなっと言っているっ!!」


何が言いたいのかしら?

すると、ミナトさんが私の傍に来て……


「ここだと、食べられそうに無いから私の部屋に行きましょう」

「それはいいですけど……みなさん、どうしたんですか?」

「そうですね……」

「鼻血を出しながら、顔は幸せそうだよ?」


私の質問に、ルリ、ラピスと続く。


「子供には、まだ知るには早すぎる事よ」

「「「私、少女です(だよ)………」」」

「大人になったら、きっと解るわ」


そう言いながら、ミナトさんは部屋に移動し始めました。

……けれど、ミナトさん。

その鼻に詰めているティッシュは何ですかっ!?

しかも、先の方が赤く染まっていますけど……

それと………


「きゃあーーっ、テンカワさんがっ!!」

「自分の出した鼻血の海に沈んでいますっ!!」

「あっ、右手の指先を見てください」

「あれっ、何か書いてありますよっ!?」

「え〜と……“人間失格”……どういう意味でしょうか、ホウメイさん?」

「さてね……とりあえず、医務室に連れて行ってやりな」

「「「「「ハ〜〜〜イ」」」」」


去り際に、厨房からそんな会話聴こえてきた。

いったい、何がこの惨劇を生み出したのかしら?





そして、就寝前に………



「ハァ〜……今日も偉い目に遭ったな」


食堂での一件がまだ引いているのか、表情が未だに暗い。


「あれって、そんなに落ち込む事なの?」

「ラピスは、純真だな………」

「ユラ……それって、まだ私が子供だってことっ!!」

「ふうっ、褒めているんだよ……」

「………何であんなにタメ息混じりで話すのかしら?」

「それだけ、主様はさっきの事が効いているということですよ、パールさん」


今度、エリナに訊いてみよう。


「さてと……そろそろ、寝るか」

「じゃあ、私は小さくなりますね………あの、なんでしょうか?」

「んっ、ちょっとね……」


ラピスが、ユナのある一点を「ジッ」と見つめている。


「ラピス、そんなに見ていてもあなたのは大きくならないわよ」

「べっ、別に私はむっ、胸の事なんか……」

「ラピスさん、墓穴を掘っていますよ」

「うっ……うう〜〜」

「大丈夫ですよ、その内きっと大きく……にゃぁっ!?」


突然、ユナの胸を両手で鷲掴みするラピス。


「大きい……サイズは幾つ?」

「みぅ……88ですけど………」

「どうやったら、そんなに大きくなるのよっ!!」

「いっ、痛いですよ、そ…そんなに強く掴まないでく……みうっ!?」

「うううっ……巨乳なんて、巨乳なんてぇぇっ!!
 いつか、私もぜっっっったいになってやるんだからっ!!」

「早く離してくださいよぉ〜〜」


全く、ラピスったら………それにしても大きいわね。

でも、私は将来を約束されているから大丈夫………よね?


「おまえら、明日は午前から仕事だろうが……はよ寝ろ」

「それもそうね……」


私はユラの右隣に寝転がる。

ここだと、ユラに抱き枕にされる確立が高い。

いつもは、ラピスと争うんだけど……


「巨乳ぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」


「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


アレだし……漁夫の利ね。

それじゃあ、オヤスミなさい。





………っと、こんな感じの一日だったわ。

本当に、飽きないわねナデシコでの日々は……

さて、次はラピスね………サボらずにちゃんと書きなさいよっ!!





《Side ラピスの日誌》





うう〜〜っ、パールもここまで正確に書かなくてもいいのに………

しかも、新婚さんって何よっ!?

………一度、話し合わなければいけないみたいね。



さてと、今日の出来事を書くね。

今日の事を一言で表すと……バトルな日かな?

ルリと一緒に、ユラ達の鍛錬を見学に行った時の事なんだけど………





「よーーしっ、そこまでっ!!」

「ハァ〜、やっと終った……」

「アキト、足が笑っているぞ……」

「そういうガイだって、起き上がれるのか?」

「しばらくは無理だ……」


筋力トレーニングが終り、ぐったりとしているアキトとヤマダ。

倍以上はやっている筈なのに、ユラはピンピンしている。

ユラが言うには、「日頃の鍛錬の賜物」らしい。


「二人とも、今から最後の鍛錬を始めるぞ」

「えぇぇっ……まだあるのかっ!?」

「もっ、もう勘弁してくれ……」


アキトとヤマダが、不満の声を上げる。


「つべこべ言わずに、早く起きろっ!!」

「ユラさん、流石にテンカワさん達も限界ですよ」

「心配しないでルリちゃん……アキト達は観ているだけで良いんだからね。
 動くのは俺たちの方だし………」

「“俺たち”ですか?」

「そうそう……おっ、来たな」


ユラが視線を入り口の方に向けると………


「主様ぁ〜〜、お待たせしました」


入ってきたのは、動きやすい格好をしたユナだった。

しかし、その格好を見た途端っ!?

ユラはズッコケ、アキトとヤマダは顔を真っ赤にした。


「どうしたんでしょうか?」

「さあ………ルリは分かる?」

「いえ………」


私たちは訳が分からず、首を傾げる。


「何で、体操着姿なんだぁぁぁあぁぁぁっ!!!」


「ダメですよ主様、ちゃんとブルマと言わなければ………」


「んっなこと知るかぁぁぁぁあぁぁっ!!!」


そう……ユナの格好は、かつて消えてしまった旧体操着“ブルマ”なのだ。(後で、オモイカネで調べた)

今でも、その人気は衰えずにある特定のお店では高値で売り出されているみたい。

紺色のブルマに、上のシャツには「1−A ゆな 」っと書かれている。

おそらく、ウリバタケさんのコレクションから貸して貰った物だろう。


「あのさあ、これからいったい何をするんだ?」

「実は、こいつと組み手をして実戦的な戦闘を肌で感じて貰おうと思ったんだが……」


呆れているユラに、質問をするアキト。

何故か、アキトはユナに目線を向けない様にしている。

注目されている当人はというと………


「んっしょ、んっしょ……よっ、はっ……ルリちゃん、背中押してくれる?」

「ハイ………こうですか?」

「そうそう、その感じでお願い」


念入りに柔軟体操をして、組み手の準備をしていた。


「まあ、アレだが………実力はあるから観ていてくれ」

「ああ、努力してみるよ」


何とも言えない空気が、二人の周りに漂う。





「準備はいいか、ユナ?」

「いつでもどうぞ、主様」


二人は、実技などで利用する広いスペースの試合場で互いに向き合って話す。

互いの確認が終わったのか……二人を中心に空気が変わる。

構えも無く、ただ立っているだけで威圧感を感じた。

ほんの数十秒だったのかもしれない、数分かもしれない硬直状態が続いた後に………


「疾ィィィィィィィッッ!!」

「覇ァァァァァァァッッ!!」


……………始まった。



互いに繰り出した拳は、付加された光輝く氣によって拮抗する。

それが数瞬続き、それを破ったのはユナの腹部に向けて放つ膝蹴り。

ユラはバックステップで避け、反撃として「掌氣弾」を放つ。

しかし、それをモノともせずに左手で弾き、そのまま突っ込んでくるユナ。

ユラは動じずに、踵を地に付けて迎え撃つ体勢に入る。

そして、互いの距離が腕一本分位の間合いから、二人の攻防の連撃が始まる。

拳・蹴り・肘・膝・腕の身体のあらゆる所を使い攻撃を仕掛ける。

さらに、首や上半身を左右に振って避けたりするが、手数の多さに全ては避けるのは不可能。

だから、防御面はガードや衝撃を受け流す事をメインにしている。



その時の私は、二人の戦う姿はほとんど視認する事ができなかった。

だから、この前後に書かれている事は、全て後からオモイカネのスロー映像とユラの説明で確認したのを書いている。

まちがっても、ユラとユナの動きが見えていたと勘違いしないで欲しい。

この時に見えたのは、“戦い”という言葉の意味だけ。

………続きを書くね。



それは一瞬の隙……ほんの少し大振りになったユナの突きを、ユラは見逃さなかった。

その腕を掴んだユラは、一呼吸も置かずにユナを投げる。

これは、「無拍子(むびょうし)」と言うんだってさ。


「クッ……」


ユナは空中で一回転をし、体勢を立て直して少し離れた場所に着地する。


「さすがに強くなっているな」

「“影法師”の時とは違いますよ。
 私は式神となった事で、主様により近くなったんですから」

「そりゃあ、手強そうだ」

「自分を褒めているんですか?」

「全然………まだまだ、未熟者だよ」


私たちは、余りの凄さに言葉もでなかった。

傍にいるルリ、少し離れた所にいるアキトとヤマダも一緒だ。

私は、何度かユラの戦いを見た事あるが、今日のは次元が違う。

私たちは、ただ無言でその戦いを夢中になって観ていた。



短い会話の後、ユナの右手が上がる。


水珠(すいじゅ)


右手から、直径20cmの水の球体が放たれる。

ユラは、避けずに手で弾く。

ユナの攻撃はそれでは終わらず、次は両手で連射してくる。

怯む事無く、向ってくる球体を全て弾いてユナに突っ込むユラ。


「……っつ!?」


あと少しでという所で、ユラの右腕に視認できる程の電流が流れた。

この時、ユナは一つの「水珠」に仕掛けを施した。

空気中の静電気を集束して作った「雷珠(らいじゅ)」を、外側だけ水で包み込み「水珠」に似せたのだ。

ユラは知らずにそれを弾き、中の「雷珠」に触れてしまったのだ。

その一瞬、意識が腕にいったのをユナは見逃さなかった。


「しまっ……」

瞬迅連舞(しゅんじんれんぶ)


ユナの身体が幾つにもブレて残像を作る……その光景は、まるで分身の術。

「疾風」を使った高速の連続攻撃で、それが使えれば誰でもできる技では無いそうだ。

足腰が十分に鍛えていないと、あちこちの筋肉が耐え切れずに崩壊するらしい。



ガードをしようとするが、右腕がまだ痺れていて動かす事が出来ない様だ。

そこに、ユナの怒涛のラッシュが始まる。

それを全てまともに受けながら、後ろに下がって体勢を立て直そうと………


「甘いですよ、主様」

「なっ!?」


その行動を予測していたのか、ユラの懐に何時の間にか入っていた。


「終りです、双臥天砲撃(そうがてんほうげき)


顎へと左の掌底を下から突き上げ、水月(みぞおち)に当てている肘の裏に目掛けて掌打を放ち肘打ちが刺し込まれる。

この技は、人体の急所の二点に時間差で攻撃を打ち込んで、脳と内臓に直接ダメージを与えると言っていた。



ユラの身体が、放たれた技の衝撃によって後ろに飛ぶ。

私は、心配ですぐに駆け寄ろうとしたが………

突然、ユラが砕け散って氷の粒が辺りに飛び散る。


「これは、氷鏡幻術!?(ひょうきょうげんじゅつ)

「その通り♪」


何時の間にか、ユラがユナの背後に現れてその手を背中に当てている。


「チェックメイトだな」

「ハァ……降参ですぅ〜」


最後の動きが良く解らなかったけど、とにかくユラの勝利で終わったみたい。





「ユラ、あのさあ……」

「なんだ、アキト?」

「最後の方……つまり、どうやってユナちゃんの背後に回ったんだ?」

「実は………バックステップした時から、大気中の水分を氣で操作して作った氷像と既に入れ替わっていたんだ」

「でも、そんな瞬時に作れるもの何ですか?」

「良い所に気付いたね、ルリちゃん。
 瞬時に作れるのかと訊かれたら、答えはNOだ。
 通常の大気中は水分が少ないから、ほとんどは氣で代用するんだけど……その前に、ユナが辺りに撒き散らしたよね」

「……“水珠”と言う技ですね」

「その通り……氷像の俺を下がらして、俺自身は“疾風”で背後の方に移動したんだ」

「そういう事だったのか………」


全員が、納得した様な動作をそれぞれ取る。


「けど……罠に“掛けた”と思ったら、逆に“掛けられた”なんて……悔しいですぅ〜」

「力も技量も充分にあるんだ、後は経験だな」

「みぅ、がんばります」


悔しがるユナを、慰めるユラ………なんか、仲の良い兄妹みたい。


「でも、最初の方が早過ぎて分からなかったよ」

「そういえば、そうだな……」


私の疑問に、同意とばかりに意見を言うヤマダ。


「それは、仕方無いさ……この組み手は、“戦い”の独特な雰囲気を感じて貰うのが目的なんだからな。
 どうしてもって言うんなら、オモイカネに頼んでスロー映像を見せて貰え」

「そうだな……アキト、おまえも一緒に見るだろう?」

「もちろんだ」



この後、私たち(アキト、ヤマダを含めた)は一緒にさっきの組み手を、ユラの講釈付きで観た。

ルリとユナは、仕事があると言ってこの場を後にした。





そして、今日は部屋のお風呂場でちょっとした事があった。


「久々に、満足のいく組み手だったな」


私の髪を洗いながら、ユラが話し掛けてくる。


「それ以前のは、いったいなんなの………」

「軽い準備運動かな」

「………ウソ」

「ラピス、深く考えたらキリが無いわよ」


ユラの答えに唖然とする私を、浴槽に入りながら慰めるパール。


「酷い言われようだな……よ〜〜しっ、シャワーで流すぞ」

「んっ……」


頭の頂点から始まり、毛先まで丁寧にお湯で泡を流す。

時折、指先で髪を梳かすのを忘れない。

洗い終わると、髪を結って湯船につかない様にしてから、パールの隣に入る。


「……こうしていると、水が怖かったなんて嘘みたいだよね」

「そうよね……湯船に入る時なんてユラにしがみ付いていないとダメだったわ」

「なつかしな…………パール?」


私に意味ありげな視線を送ってきた。


「……あっ、そういう事」

「良い案でしょう」


二人で小さく笑いあってから、準備に入る。

幸いな事に、ユラは洗った髪の泡を流しているの気付いていない。



「ふうぅ〜、俺も入るからちょっと詰めてくれ」


私たちと同じ様に髪を結って、湯船にはいってくる。

ちょうど浴槽の真ん中に来る様に誘導した事を、ユラは気付いていない。

フッフッフッ……ミッションスタートっ!!


「「えいっ♪」」

「へっ?」


私は前に、パールは後ろにそれぞれ抱きついた。


「ナニヲシテイルノカナ?」

「ん〜、思い出の再現かな……ほらっ、前はこんな風にして入っていたよね♪」

「それに、日々の成長の確認できるじゃない♪」

「タノムカラヤメテクダサイ、オネガイシマス………」

「「却下っ♪」」


言うのと同時に、さらに抱きつく力を強める。

「もう、これでもかっ!!」……という位に肌と肌が密着する。


「こっ、こここここれ以上は、マジでヤバイっ!!
 頼むから早く離れて………」

「聞こえませ〜〜〜ん♪」

「同じくよっ♪」


先程のカタコトの言葉から戻って、私たちに頼み込むユラ。

しかし、それを無視して絶対に離れようとしない私とパール。


「だぁーーーーあっ!!」


振り解こうと動くたびに、湯船が「パシャパシャ」と音をたてる。

それでも、私たちは抱きついて離さない。


「どうしたんですか、ある……じ……さ…ま………」


発した言葉は語尾が近づく程に小さくなっていく。

そこには、騒がしいので様子を見に来たユナが出入り口に立っていた。

ユラもその姿を確認すると、「ピタッ」と動くのをやめて顔中に脂汗を掻き始めた。

ちなみに、私たちはニコニコと笑っている。


「……………お楽しみ中の処を失礼しました………どうぞ、ごゆっくりぃ〜〜♪」


そう言いながら、もの凄い笑顔をしながらドアを閉めるユナ。


「ご、誤解だぁぁぁぁあぁぁぁっっ!!!」





そして、お風呂から上がってすぐに誤解を解くためにユナの元に向った。

なんとか誤解も解けたのだが、追撃とばかりに私たちは更なる行動を実行に移す。



二人で、就寝前のベッドにペタッと座り………


「「ユラ……きて………」」


服装はユラのパジャマの上着のみ、あいかも第一ボタンを開ける。

右手は口元に持ってきて、左手は上着の裾を下に引っ張っている形に……

ここが重要……瞳を潤ませて、なおかつ上目遣いで少しはずかしげに見つめるのがポイント。



一瞬だけクラっとするユラだが、すぐに持ち直して……


誰に教えてもらった?

「えっと、ミナトさ……ん、あれ!?」


ユラは既に居なかった。

私が、“ミナトさん”の“ミ”を言った瞬間、部屋から駆け出して行ったみたい。





一時間後…………

ユラはもの凄い笑顔で帰ってきた……でも、その笑顔はどこか黒いモノを感じた。





………っとこんな感じの一日だったよ。

あの後、ミナトさんがどうなったか知らないけど……大丈夫かな?

次はルリの番だねっ!!

どんな事を書くのかな……なんか楽しみ♪

それじゃあ、期待しているからね。





《Side ルリ》





「なるほど、だから………」


日誌を読んでみて、今朝と昼の疑問がようやく解けた。

その疑問とは、ミナトさんの朝食と昼食がふりかけご飯だけだった事である。

あまりにも不思議な光景だったので、直接本人に訊いてみると………


「暗示の所為で、ユラ君の出すご飯しか食べられないのよぉ〜〜」


悲痛な声で、意味不明な事を呟いていた。

おそらく、昨日の罰としてユラさんが暗示を掛けたのだろう。

あの体型で結構食べるミナトさんにとって、これ程の拷問は無いでしょう。

まっ、自業自得ですね。



「ふわ〜あ……本当にヒマだね………」


眠たそうにアクビをする艦長、雑誌を読みふけるメグミさん。

そして、私……これが、現在のブリッジの光景。

一応、最新鋭のナデシコは有事の際以外は、全てがコンピュータ制御。

必要な人といえば……指揮を執る艦長、通信士のメグミさん、オペレーターの私。

操舵士のミナトさんは、部屋で居眠りです。


【 第四級警戒態勢 】


警告音が鳴るが………


「敵、攻撃………」

「えっ、どこどこどこっ!?」


艦長、ブリッジで探しても見えませんよ。


「迎撃っ!!」

「必要ありません」

「えっ?」

「ディストーションフィールド、順調に作動中……」


ナデシコのDFによって、攻撃が弾かれる。


「隕石コロニーでの戦い以来、木星蜥蜴が本格的な攻撃を仕掛けてこないのは……おそらく、この艦(ふね)の能力を把握する為。
 少なくとも、火星の制空圏内の確立した火星まで挨拶程度ものになると思います。
 ……艦長はどう思います?」

「あなた、鋭いわね。
 まだ、子供なのに………」


何時の間にやら、私の近くまで接近している艦長。


「私、少女です」

「はあ………」


どう答えたら良いか分からずに、その場で止まる艦長。


「そっか……私、火星に着くまでヒマなんだね………」


そう言って、私の前に腰掛ける艦長。


「艦長、邪魔です……自分の所に戻ってください」

「は〜〜〜〜い……」


トボトボと、定位置に戻っていく……





「はぁ〜〜……ルリちゃん、艦長って何だろうね?」


コンソールに顔を預けながら、近くに来ていた私に訊いてくる。


「調べてみますか?」

「へっ?」

「オモイカネ、検索をお願い」


すると、私たちの前にウィンドウが表示される。


「年代はどれ位にします?」

「あっ、ここ百年で………」


ウィンドウに、ミニエステバリスと【 検索中 】の文字が表示される。



……【 検索終了 】

私は、その結果を淡々と読み上げる。

読んでいくに連れて、みるみる艦長の顔が………


「要するに、現代では作戦能力や決断力などの、本質的な意味での艦長は必要ないのである」

「それってどういう事……それって、それって………」


艦長の目に涙が溜まってくる。

つまり、艦のほとんどがコンピュータ制御である現代の戦闘には………


「それって、早い話が誰でも良いって事ですよね」


………トドメですね。


「うわぁぁぁぁんっ!!!」


泣きながら、ブリッジを飛び出す艦長。


「メグミさん、イジワルですね」

「そうかなぁ〜?」

「そうですよ」

「そうかなぁ〜?」

「そうですよ」

「そうかなぁ〜?」

「そうですよ」

「そうかもね」


なんで、はっきり言ってしまったんでしょうか?

最近のメグミさん、ちょっと変です。



上の方から、「プシュ」っというドアが開く音が聞こえてきました………艦長でしょうか?


「なんか、ユリカさんが泣きながら走って行ったけど……何かあったのか?」


ドアの前に来ると、ユラさんが私にそう訊いてきました。


「現代の艦長の役割について、ちょっと……」

「ハァ……そりゃあ、さすがにヘコムわな」


気の毒そうに、艦長の走り去った方向を見るユラさん。


「ところで、何か御用ですか?」

「ああっ、実は……格ゲーで勝負しない?」

「………またですか」


呆れた表情で返した私に対して………


「フッ、今度は負けないように練習してきたっ!!」

「断る理由も無いし、良いですよ……ちょうど、ヒマでしたし………」

「じゃあ、勝負だっ」


お互いにオペレーターの席に座って、コントローラーを取り、スイッチを入れる。





「ユラさん、大丈夫ですか?」


隣でコントローラーを持ったまま固まって、真っ白に燃え尽きているユラさん。

結果は、私の全勝……25戦25勝でした。


「なんで、勝てないんですか?
 エステバリスの操縦は、あんなに上手なのに……」

「ううぅ〜〜、俺にも分からん……エステのシミュレーターなら、無敗なのになぁ〜」


がっくりと肩を落とすユラさん、本当にどうしてでしょうか?

……しかし、ユラさんにも意外な弱点を発見しました、メモをして置かなければ。


「そういえば、ミナトさんの姿が見えないんだけど……」

「居眠り中です」

「ふ〜〜ん……どれどれ、様子を見てみますか」


コンソールに手を置くと、ユラさんの手の紋様が光り始め。

目の前に表示されたウィンドウに、ミナトさんが寝ている姿が映し出されました。


『うぅ〜〜、お腹へったよぉ〜〜〜』


枕を涙で濡らしながら、今の心境を呟いていました。


「………夕飯は少し豪華にしてあげよう」

「その方が良いと思います」



そして、ユラさんは言っていた通り夕食は豪華にしていました。

ちなみにメニューは、和風定食でした。(山菜や刺身、椀物と天ぷらなどなど)

その料理にミナトさんは大感激し、食べ終わった後の幸せな顔が印象に残っています。

このとき、ついでに暗示も解いて貰ったようです。





それから、数日後………


「ねえ、ルリちゃん」

「ハイ?」

「最近ね、艦長の姿が見えないんだけど……」

「そういえば……」


メグミさんの言葉に、私の傍にいたユラさんも同意しました。


「調べてみますか?」

「そうだな……じゃあ、頼むよ」


その言葉で、私は艦長の居場所の検索を始めました。

………いましたっ!!

ウィンドウに居場所が表示されます。


「瞑想ルームぅぅ!?」

「なんでまたこんな所にいるんだ?」


メグミさん、ユラさんが驚いて声を上げました。

映像が切り替わり、艦長の姿が映し出されます。


『座禅………お釈迦様は菩提樹の木の下で悟りを開いた。
 私も悟りたい、艦長とはなにか……だから、座禅』


〔ポクポクポクポク、チ〜〜ン〕


「何やってんだか………」

「どうしたんだろうね?」

「メグミさんが、イジメ過ぎたんじゃないんですか?」

「こりゃ、お籠もり決定だな」


これで、良いんでしょうか?





そして……瞬く間に二週間が経ち、火星は目前です。

でも、艦長は………


『煩悩、“煩悩”ってなんだろう?』


相変わらずのお籠もり中です。

そうそう、ユラさんから聞きましたが、アキトさんも瞑想ルームに最近通っているそうです。

最近、悩むのが流行っているんでしょか?





そんな事を思っていたら………


「艦長、反乱です。
 一部の乗務員が反乱を………」とメグミさん

『ええっ!?』と艦長

「責任者、出てこぉぉぉぉいっ!!」とウリバタケさん


さらに、パイロット班のリョーコさん達(ヤマダさんも含む)、整備班の人たち数名がなだれ込んできます。

本当に、ナデシコは大丈夫なんでしょうか?


「我々は断固、ネルガルの悪辣さに抗議するぅぅっ!!!」


さらに、ヒートアップするウリバタケさん。


遅れてやって来た、艦長たちがその現場を見て呆然としました。

代表で艦長がウリバタケさんに話しかけます。


「ちょっと、いったい何があったんですか?」

「これを見てみろ、艦長っ!!」


そう言って、艦長に一枚の紙を突きつけます。


「これって……契約書!?」

「こんな細かい字をいちいち読む奴がいるかっ!?」

「そこの一番小さい文字を読んでみな」


ウリバタケさんに続いて、リョーコさんが艦長に話しかけます。


「え〜とっ……社員間の男女交際は禁止いたしませんが、風紀維持の為お互いの接触は手を繋ぐ以上の事は禁止します。
 ………って、何ですかこれっ!?」

「読んでの通り………」

「なっ、分かったろ。
 お手々繋いでって、ここはナデシコ保育園かっ!!
 いい若いもんが、お手々繋いでで済むわきゃなかろうがっ!!」


ウリバタケさんが、リョーコさんとヒカルさんと手を繋いでブラブラとしていたら………


「「調子に乗るなっ!!!」」


二人の肘鉄を鳩尾に喰らい、僅かに蹲りました。

さらに、ウリバタケさんの演説は続きます。


「俺はまだ若いっ!!」

「……若いか?」

「若いのっ!!
 若い二人が見つめあい、見詰め合ったら〜〜」

「唇が〜〜♪」

「若い二人の純情は、純なるがゆえに不純」

「せめて抱きたいっ、抱かれたいっ!!」


その言葉が終わるのと同時に、辺りが暗くなります。


「そのエスカレートが困るんです………」


今度は、スポットライトが輝き。

そこには、プロスさんが佇んでいます……ついでに、ゴートさんの姿が………


「貴様ぁぁぁぁっ!!」

「やがて二人が結婚すればお金かかりますよね。
 さらに子供が生まれたら大変です……ナデシコは保育園ではありませんので、ハイ」

「黙れ黙れ、宇宙は広い……恋愛も自由だっ!!!
 それがお手々繋いでだとぉぉぉ……それじゃ女房の尻の下の方がマシだぁぁっ!!!」

「………とは言え、サインした以上は……」

「うるせぇ、これが見えねぇぇかっ!!」

「この契約書も見てください」

銃と契約書を突きつけあう人たち………バカばっかな人たちですね。


「大体なんなんだっ、この細かい字はっ!?
 さっきも言ったが、読む奴が………」

「俺は読みましたよ。
 それで、給料は少し下がりましたが、その項目は削除しました」

「私もぉ〜〜」

「私もです」


ユラさん、ラピス、パールの順に発言する。

その言葉に、止まるウリバタケさん。


「これでウリバタケさんの論拠は崩れましたな」


メガネを上げて、高らかと勝利宣言をするプロスさん。


「な、な、なっ、何故っ!?」


余りの衝撃に言葉にならないウリバタケさん。


「いや、何故って言われても………」


すると、艦長が………


「あっ、そうか……でないと、ラピスちゃん達と一緒にお風呂に入れないもんね」



時が凍りつく…………



そして、静かに時が動き出す。


「何で、ユリカさんがそれを知ってるんですかっ!?」

「私たちが話したんだけど……ダメだったかしら」

「パール、それは………おわっ!?」


「一緒に風呂だと……貴様ぁぁぁっ、憎しみを越えて羨ましいぞゴラぁぁぁぁぁっ!!!」


ユラさんが振り向いた先には、血涙を流すウリバタケさんの姿だった。


「えっと、他にもねえ〜〜」

「そっ、それ以上は話さないでくださいユリカさん」

「うちの娘なんて、“もう、お父さんと入るの嫌”って言うんだぞっ!!
 おまえに、この気持ちが分かるかっ!!」
「ねえ……他にはどんな事を話したの?」

「そうそう、教えてぇ〜♪」

「それは……」


ラピスに、質問を投げ掛けるミナトさんとヒカルさん。

周りの人たちも耳を傾けている。



………なんでしょうか、この阿鼻叫喚の光景は?

まったく、バカばっ………


「っっ!?
 マズイっ、みんな何かに掴まれっ!!」


ユラさんの掛け声と同時に………

DFに、今までとは比べ物にならない攻撃があたります。

その衝撃で、艦内が激しく揺れ動きました。


「ルリちゃん、フィールドはっ!?」

「効いています。
 この攻撃、今までと違う……迎撃が必要………」


一瞬で、艦長の表情が変わります。


「皆さん、契約への不満は分かりました。
 ……でも、今は戦って勝たないと……でないと、でないと………
 アキトとの結婚生活ができなくなっちゃうぅぅぅぅっ!!!


艦長の叫びを切っ掛けに、それぞれの所定の位置に向けて走り出します。



皆さんが、駆け出す中で………


「木星蜥蜴さん、ありがとうっ!!」

「うやむやになって良かったですね、主様♪」


この状況に、喜んでいる人がいました。



それにしても、艦長は何を悟ったんでしょうか?

以前と全然変わっていない気がします。





こうして、ナデシコの火星領域での戦いは始まりました。

それにしても、大人たちの契約って何かイヤです。

今日は、そんな事を感じました。





おまけ……かな?





《ユラのノートPCの日記より抜粋》





今日も夢を見た。

あの日以来、頻繁に朱い夢を見るので、忘れない様に日記に書きとめている。



今回の内容は最悪だった。

最近は同じ内容の繰り返しだったので、進展して最初は喜んだのだが………





俺は、雨の中で異形の者と戦っていた。

場所は、自宅の庭……鳴り響く銃声、剣と爪という二つの凶器が弾け合う音が辺りを支配している。

暗くて敵の全身は分からないが、長く鋭い爪、口元で光る牙、二メートルを越す巨体であることが解る。

そして、時間が分からなく為るほど、激しい攻防が続いていく。



映像が飛ぶ………



俺の全身からは血が流れ、傷口が無いところを探すの至難な状態。

まさに、満身創痍だ。

相手も同じ様な状態だが、明らかに敵が有利である事が分かる。

何故なら、右肩から先が無いのだから………

在る筈の右腕は、そこに転がっている。



敵と対峙してから数分、互いの相手に向って駆け出す。

俺は、左手にありったけの氣を集束させた拳を胸元に向けた放った。

だが、敵は身体を僅かに左にずらして、当たる位置を胸元から右腕に変えた。

右腕が吹き飛ぶのと同時に、相手の顔に不気味な笑みが浮かぶ。

俺は、次に襲い掛かる衝撃に歯を喰いしばる。



次の瞬間には、俺の背中からは血の滴る爪が生えていた。

だが、俺は内心では笑みを浮かべていた。



突如、口元に咥えられた刀が現れ、それに全てを賭けて振り下ろす。

俺は、幻術で刀を不可視にして口に咥えていた。

つまり、この結果は予想通り……最初から相打ち覚悟の特攻だったのだ。



相手に驚愕の表情が浮かぶのと同時に………首が胴体と離れていた。





身体が地面に叩きつけられ、咥えていた刀が落ちた。

そのまま、傍の木に背を預けるように倒れて、空を見上げる。

胸と右腕から止めどなく溢れる血が、雨水と混じり合い俺の周りを紅く染める。

徐々に無くなっていく身体の感覚。

………目蓋が重い。

何度も目を開けようとするが、少しずつ狭くなる視界。

最後に見た光景は………





ここで、目が覚めた。


起きたと同時に、余りのリアルさに自分の胸元を確認する。

どうやら、何ともないが全身が嫌な汗でベト付いていた。

自分の死については、予想はしていたが……事実を突きつけられるとさすがに気分が悪くなる。

それに、自分の死んだ夢をみた感想に、最悪以外の言葉があるだろうか。

そんな事を考えていたら、俺の内に何かが溜まり始めた。

ソイツは、一ヵ所に集まると黒い炎となって心に灯る。

それは徐々に燃え上がり、目に映る全ての物を滅茶苦茶にしてしまいたい衝動に駆られる。

その衝動を押し止めたのは、傍にいるラピスとパールの寝顔。

それは、少しずつ小さくなって行き………やがて、消えた。



………残った燃えカスは心の奥底に沈める。

何かを切っ掛けに、また燃え上がる可能性がある為だ。

だから、厳重にフタをして、さらに鎖で縛る。



はっきり言って辛い……でも、それ以上に怖い。

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いコワイコワイコワイコワイコワイコワイこわ……………



こうやって、日記に書いて少しでも吐き出さないと、自分を保つことができない。

口に出しても同じ、その瞬間で何かが壊れてしまいそうだ。

唯一、ここが弱音や憎しみ、悲しさと辛さを吐き出しても良い場所。





もし、神がいるなら俺は願う。

“願わくは、全てが終わるその時まで自分でありたい”と………

















ダレカタスケテクレ…………










第八話へ










楽屋裏劇場



以降は

二式(クイック二式) ユ(ユラ) ラ(ラピス) パ(パール) エル(エメラルド) ル(ルーミィ) ユナ





二式「つ、ついにやってしまった………」

ユ「そうか……なら、滅べ

二式「なっ、何故に斬艦刀が此処にぃぃぃっ!?」

ユ「おまえ専用に作ってみた。
  ……と言う訳で、斬艦刀・横一文字斬りぃぃぃぃぃっ!!!

二式「………身体を半分にするなんて、酷いじゃないかユラ」

パ「相変わらず不死身なのね………」

ラ「うわっ……もう、身体が繋がり始めてる」

エ「いつ見ても、凄いよねぇ〜」

二式「ふう〜、ドッキング完了。
   さて、ここで新レギュラーを紹介しよう」

ユナ「皆さん、初めまして式神のユナです。
   これから、楽屋裏のレギュラーとして、よろしくお願いします♪」

ユ「何が悲しくて、自分の女の姿を………」

二式「まあ、いいじゃないか………
   それじゃあ、ユナの設定だ。
   性格は、明るくて元気なムードメーカー的な存在。
   しかし、イタズラや人をからかうのが好きなので、意外と腹黒い一面もある」

エ「月○のマジカルア○バーみたいだねぇ〜」

パ「ぶっちゃけ、そうなんじゃない」

二式「……余り、突っ込まないでくれ。
   容姿は、髪を下ろしたユラ。
   身長は165cm前後で、スリーサイズは上から88・56・85だぞ」

ラ「なんで、そんなにスタイルが良いのよぉ〜〜(泣)」

ユナ「文句なら、主様に言ってください。
   私は、“主様がもし女性だったら”を具現化した姿なんですから」

ユ「なんで、俺に振るかな………ラピス、頼むからそんな風に睨まないでくれ」

二式「ちなみに、ユナは一番最初のプロットでは、この話の主人公だったんだよね」

ユ「なぬぅぅっ!?」

二式「どんな話だったかというと……ラピスやルリ達のいいお姉さんであり、アキトを導く存在。
   やがて、アキトは彼女に好意を寄せ始める……っとまあこんな感じかな」

エ「なんでやめたのぉ〜」

二式「はっきり言って、多角関係を書くのが難しそうだからだっ!!」

パ「確かにそうよね、二式は男だし……」

ラ「しかも、彼女は生まれてから19年間ナシ♪」

二式「がはっっっ!!」

エ「クリティカルヒットぉ〜〜♪」

ユナ「返事が無い、ただの屍の様だ♪」

ユ「おお、これしきで死んでしまうとは情けない♪」

二式「黙れや、こん畜生………(泣)
   話を戻すが、最初に考えたキャラだったから思い入れもあった。
   それに、おもしろそうだから式神として再登場させたんだ」

ユナ「………って事は、私もアキトと一緒になれる可能性がっ!?」

二式「いや、それは………」

???「何をふざけた事をいっているんでしょうね、あなたは………
    アキトさんと結ばれ、幸せな人生を送るのはこの私ですっ!!」

ラ「何処からか響く、この声はっ!?」

パ「こんな事ができるのは、あの人しかいないわっ!!」

エ「あっ、次元の壁にまた穴がっ!?」

ル「前回に引き続き再登場です。
  さてと……二式、あなたは前回の忠告を無視して、またアキトさんに………覚悟はできていますか?

二式「甘いね、ルーミィさん。
   俺が、何の考えもなしに書いたと思っているのかい?」

ル「……どういう事ですか」

二式「このユナは、対ルーミィさん用に作ったキャラでもあるのだよ」

ユナ「えっ、そうなんですか?」

二式「そうなのだ………さあ、行くのだユナっ!!」

ユナ「え〜とっ………」

二式「(ボソッ)報酬に出番を多くしてやる」

ユナ「すいません、ルーミィさん……避けられぬ運命みたいです」

ル「フッ、瞬殺してあげましょう

ユナ「そう簡単にはいきませんよ



ユ「あのスキに、ラピス達と逃げておいて正解だったな」

ラ「後ろは、凄い事になってるよ」



ル「はあっ!!」

ユナ「なんのっ!!」

〔チュドォォン〕



エ「ねえ、二式……本当にユナはアキトとくっつく予定はあるの?」

二式「120%ありえんっ!!」

パ「やっぱりね………」

ユ「話は変わるが、最近の俺は汚れキャラになっていないか?」

二式「ああっ、あのヨーグルトの……ゲフッ!?」

ユ「そのセリフを口に出すな

二式「いたたたっ……」

ユ「それで、何であんな風に書いたんだ?」

二式「………読者サービスかな」

ユ「そうか………」

二式「あの〜、ユラさんは何故に私を持ち上げているのでしょうか?」

ユ「決まっているじゃないか………あそこに投げ入れるんだよ



ル「これが、とどめの………」

ユナ「私のこの手が朱く燃える、あなたを倒せと轟き響く………」



二式「いやっ、マズイだろう、それはっ!?」

ユ「逝ってこい♪」


二式「どわぁぁぁぁあぁぁぁっ!!!」


「レインボーブリッド・バースト!!!」


ユナ「バーニング・ブラスト!!!」



ル・ユナ「あっ………」


二式「ぎゃぁぁぁあぁぁぁぁぁっっ!!!」



ラ「二式が………」

パ「二人の技の間に………」

エ「見事にボロボロ………」

ユ「愚か者の末路に相応しい」

ユ・ラ・パ・エ「「「「合掌」」」」


〔チ〜〜ン〕





ル「勝負の方は、どうします?」

ユナ「この場合は、引き分けでいいんじゃないですか?」

ル「そうですね……」











あとがき





更新をお待たせして、申し訳ありません。

6月は、期末試験の準備とばかりに大量のレポートを出されて、それを仕上げる毎日。

その合間にこれを書いていたので、更新が予定より大幅に遅れてしまいました。



今回のお話はどうだったでしょうか?

基本的にはコメディー風に書きましたが……笑って貰えたでしょうか?

そうだったら、幸いです。

自分自身も、少し暴走気味だったので………



話は変わりますが、6月8日頃にWeb拍手で指摘を受けたんですが。

第六話の後半に、サツキミドリの人たちは『月』に行ったと書きましたが、『地球』の間違いです。

これを書く少し前に、ガンダムSEEDを観ていたのでごちゃ混ぜになっていました。

指摘を書いてくれた人に、ここでお礼を述べさて頂きます。



最後にお知らせですが………

7月一杯は期末試験の為、学業に専念したいので更新がまた遅れます。

できうる限り早くしますが、おそろく8月の中旬か下旬頃になると思います。

勝手な申し出ですが、何とぞご理解のほどをよろしくお願いします。



Web拍手や、私の作品を読んでくれている皆さん。

これからも、どうかよろしくお願いします。

それでは、またの機会にお会いしましょう。




感想

クイック二式さんまたしてもやってくださいましたね♪

ユラ二号ことユナ嬢! 全男性のアニマとして登場!

いや〜さらに戦いにおいて無敵っぷりに磨きがかかってますね〜♪

戦闘法にはなにやら東京アン○ーグラウンドっぽいものを感じますが。

まあ、能力の使い方が似ているのでそうなってくるだけの事でしょう。

それにしても、18禁っぽいネタには笑わせて頂きました♪

まあ、わからない人は分らないでしょうし、わかる人にとって見ればたいしたことでもない気もしますので問題ないかと。

今回はオチ担当にユラを持ってくるようにする所もよかったと思いますよ〜♪

今回のお話、ユナさんとその元締めであるユラさんがさらにアキトさんに猛攻をかけてきているように見えるので すが…

それにしてもユナさんもかなり強かったですね。私にバーストを出させるとは…

まあ、向こうもゴッドガ○ダムの力を持っているしね…

それにしても、引き分けとは…びっくりです。このままでは制裁出来そうにありません。

まあね、ルリちゃんが恐怖の対象でなくなった以上、ユナさんやりたい放題だろうねぇ〜(汗)

ぐっ(怒#)

でっ…ですが! 別に負けたわけじゃありません! それに、まだ100%の力を出していた訳でもないです!

そんなの、言い訳じゃないかな?

結局勝てなかった訳だし…これで私も一々吹っ飛ばされずにすむので万々歳だけどね♪

やられそうになったら、彼女を呼べばいいわけだし(来てくれるかどうかは、分らないけど<爆>)

そんな…私は…もう勝てないというのですか…ではアキトさんと結ばれる資格も無いと?

そんな…
そんな馬鹿なこと…

いや、別にそこまで言った訳じゃ…って…え?

いらない…

ルリちゃんのアルターが全て拡散した…!

この現象は!!

そんな私ならいらない…

ヴォ ン…ヴォン…ヴォン…

凄まじい気だ…周辺の物質がすべて巻き込まれて消えていく(汗)

これは、この場から脱出するしかない!!

待ちなさい。


なんだ…このプレッシャーは…

うっ、動けない…

今更逃げ出しますか? さあ、ユナさん を呼びなさい。

まさか…まさか…その姿は…ロストグ○ウンドのあく…ぶべら!?

前にも言ったでしょう? 水色の妖精形 態だと。 

そっその通りであります!! しかし、相変わらず凄い水着…ぶぎょ!?

口の利き方に気をつけたほうがいいです よ、

この形態にはオートでザコをすりつぶす 機能がありますから。

ただでさえ、その形態10倍は強いのに…(汗)

そんなの反則じゃあ…

前にも言った筈です。私を絶望させたの がいけないんです。

そうでなければ、この形態にはならないんですから…

でも、別に私が…
 
止めを刺したのは貴方です。さあ、砕け 散って反省する事です。

喰らいなさい!!

私の自慢の拳をぉー!!!

うわ!!? ちょっと待ってって…ジュワ!!(体が蒸発した音)

ごわごごどぉおおーん!!

勢い余って幾つか山を消してしまったみたいですね。

これからは力の調整にも気をつけないと。



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クイック二式さんへの感想はこ ちらの方に。



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