六月も最終週に入り、IS学園は月曜日から学年別トーナメント一色に変わる。
ライ達は着替えを終えて、モニターを見ている。



「しかし、すごいなこりゃ・・・」




モニターから見える観客席は、各国政府関係者、研究所員、企業エージェント、その他諸々の顔ぶれが一堂に介している。



「三年にはスカウト、二年には一年間の成果を確認にそれぞれ人が来ているからね。一年には今のところ関係ないみたいだけど、それでもトーナメント上位入賞者には早速チェックが入ると思うよ」

「ふーん、ご苦労なことだ」



「本来はね・・・」


「本来?」



「今日、彼等の目的はライなんだよ」


「ライだけ?」



「うん、以前山田先生との戦闘が各国政府に渡されてね、
先生達はその所為で去年の三倍の近くの観客になってるって愚痴を言ってたよ」




「マジかよ?」



「うん、僕達代表候補生はライの事を政府に聞かれたからね」



「本人は気にしてないみたいだな」


「はは・・・・」



ライは機体チェックしていた。


「ライは落ち着いてるな? 皆お前が目当てみたいだぞ?」



「慣れてるからね」



王であった時代、隣国の代表と会談もしたことある、戦場に出撃した事あるライにとってはどうという事は無かった。
加えて、記憶を失った後も、黒の騎士団に入った後の初陣で無頼を駆りサザーランド五騎を破壊している。




更衣室のモニターが変わり、トーナメント表が表示された。


「いきなりボーデヴィッヒさんとだね(気の毒に・・・)」



「そうみたいだな・・・・」


「ライ?」



ライは自分の名が載っている場所ではなく、三回戦の相手の名に興味を示していた。


マリーカ・ソレイシィ


ライはその名前に見に覚えがあった。

かつて黒の騎士団にいた時、ナイトオブラウンズやそれの直属の部隊の名を覚えていた。



その中にマリーカ・ソレイシィという名があった。



(同性同名? 或いは僕と同じでこの世界に? いや、彼女、
ヴァルキリエ隊はトウキョウ決戦のときに死亡した筈だ・・・)



ライは初めてフレイヤを撃たれた時の事を思い出していた。2500万の人間が一気に消えたあの戦いを。



(いや、そもそも、死んだ僕が此処にいる時点でイレギュラーか)



「ライ?」


シャルの呼び声に反応するライ。


「なんでもないよ。いきなり一回戦目だと思わなかったからね」


「そうだね、早く行こう」



「がんばれよ」


「ああ」


ライ達はアリーナに向う。



「それにしても昨日は驚いたよ」


「何が?」



「ライのISが一次移行(ファーストシフト)を終えてなかったなんて」



「まあ、昨日ギリギリ終えたけどね」



「直ぐに使うのあの翼?」



「ああ、夏樹さん達がデータが欲しいから思いっきりやってくれって」


「対戦相手に同情するよ僕は」



ライのIS操縦技術は初期設定でも山田先生を圧倒していた為、
一次移行を終了した、ライと戦えるのはもう世界でもトップクラスじゃないと駄目だろうとシャルは考えている。



「皆驚くだろうなぁ・・・」


遠い目をするシャル。


昨日一度だけ、エナジーウィングを使った飛翔を見た時のシャルの感想は、
凄いの一言だけだった。



(僕がボーデヴィッヒさん達の味方をして、三対一に持ち込んでも勝てる気がしないよ)



シャルはそんな事を考えながらアリーナに出る。そこに待っていたのは対戦相手。

シャルは同情的な目で二人をみていた。



そして、試合開始のブザーがる。



ライは直ぐさまエナジーウィングを展開し。
















それを見ていた一夏達は。


「新しい装備か?」


デュランダルの両腰に八つの青い板らしいもの装着していた。

それだけではなく幾つか武装が追加されてるようだった。



そして、背中から青い光の翼エナジーウィングが展開された。



「うわ・・・」



綺麗だと口にしようとした瞬間、ライは消えた。





「「「「はっ!?」」」」



わずかに見える青い軌跡がライが移動したと確認できたが。


「何よ!! あの速さ!?」


もはや、それしか言葉がない鈴達。




最も戦っているラウラは一夏達より動揺していた。

以前とは全く違う速さ。咄嗟に6本のワイヤーブレードを飛ばして操作しても追いつけもしない。



ライはラウラと組んでいるもう一人も生徒に4本のハーケンを同時に飛ばし、四肢にダメージを与える。


その生徒は何が起こったのか知らず、ハーケンを受ける。



ライは瞬時にハーケンを戻し、生徒のほうに飛び、回転しながら回し蹴りを食らわして壁に蹴り飛ばした。



「えげつな!?」

一夏は咄嗟に口にする。


蹴り飛ばされた生徒は開始数秒で退場してしまう。
それどころか、何が起きたのか本人は理解していなかったと後に語る。



それを見ていた全ての人達が唖然していた。







「な、なんですか、あの速さは!?」



「わからんが、あれがランペルージの本気か?」



教師陣達も例外なく驚いていている。








「ライ・・・やりすぎだよ」

ライのパートナーであるシャルも唖然した後は、やりすぎだと呟く。






本来、ライも此処まで本気を出すつもりはなかったが、夏樹に一次移行を終えたと報告したら。


「明日トーナメントでは全力前進で行ってね、データが欲しいから。
無論、全試合で」


と、言われた為全力に近い状態でやっている。




片方を退場させても、動きを止めないライにワイヤーブレードを飛ばすが、
ライは自らワイヤーブレードに向かい二本のMVSで瞬時に破壊する。


破壊した後、ライは上空に飛び展開してるエナジーウィングを広げる、
そして、翼から刃状粒子が発射させる。


ラウラは回避行動をとるが、飛んでくる刃状粒子は数が多く
全て回避できずシールドエネルギーが削られていく。




だが、ライはその攻撃を途中で止め。両手にヴァリスを構えた。




「舐めるな―――――!」



あのまま刃状粒子を撃ち続けたらラウラに勝てていた。それなのにそれを止めた事でラウラの怒りを買う。




ラウラはそのまま向かって飛ぶが、ライは高速で移動しラウラは追いつけず、
それどころか、ライから射撃される。



ライは高速で飛翔しながらも、全て命中させている。


それをデータで見ていた千冬達は驚愕していた。



「い、異常ですよ!?」

もはや、何度ライに言っているのにそれ以外の言葉が見つからない山田先生。



「だが、目の前でそれが起きている」



「で、でもアレだけのスピードで止まっている相手ではなく、動く相手を正確に射抜くなんて」



「いくらハイパーセンサーで視覚が強化されているとはいえこれは・・・」










ライ目当てできた来客達も驚愕してる。



ドイツの代表候補、しかも最新鋭のISが全く歯が立たない。
そのことは来客達は全く予想できなかった展開だった。
















「私が、負けるだと?」


ラウラは攻撃を受けながらも、何とか動き回り回避しようとするが意味もなく、
シールドーエネルギーは削られる一方だった。



けど、そこで異変が起きた。


「っああああああああ!!」



絶叫と共に、黒い装甲が電撃を纏い、ぐにゃぐにゃと形を変えていき、全身真っ黒い機体となった。

そして、その片手に握られていたのは一夏と同じ雪片弐型。



「あれ・・・やりすぎた?」


「うん・・・やりすぎ。でもアレはライの所為じゃないと思うけど」

自分の一方的な攻撃の所為で異変が起きたともってシャルになんとなく聞き、
シャルは否定するが。


「だといいけど・・・」


ライはなんとなく罪悪感を感じる。





ラウラは全く動かない為、
二人で呑気に話していたら観客席のバリヤーを突き破って現れた一夏。



「は?」


「一夏!?」


「うおおおおっ!!」



一夏は黒い機体に襲い掛かるがライが寸前で止める。


「離せ!! 離せよライ!!」



「とりあえず落ち着いて?」



「うるさい!! アレは、アレは千冬姉の!!」

ライの静止を無視してラウラに襲い掛かる一夏。

「黙れ」



「うるさい!!―――「私は黙れと言った」―――っ!!」


自身の静止を聞こうとしない一夏にライは王だったころの雰囲気で一夏を一言で止めた。


ライの言葉で一夏の頭は一気に冷えていく。近くにいたシャルもライの雰囲気に驚愕した。


二人は同時に思った。


『誰だコイツは?』と、何時もの雰囲気じゃない、怒っている風でもない、
けど、その雰囲気に圧倒された。膝を着きそうになった。




「状況も理解できず、突っ込んで痛い目を見ても、
文句は言えんぞ?」



「あ、ああ・・・悪い」


ライの言葉に恐怖すら感じた一夏。


『すまないランペルージ。馬鹿が迷惑をかけた』



「いえ、それよりアレはイレギュラーですよね?」


以前の雰囲気に戻り、放送で千冬と会話を始めたライ。


『ああ、こっちも援護したいが、観客たちの避難が困難していて時間がかかる。
頼むがアレを止めてくれ。それと、そこの馬鹿、この後覚悟していろ』



「わかりました」









「・・・・・・えーとっ・・・一夏大丈夫?」


真っ青な顔になっておとなしくなる一夏をみて苦笑するシャル。



「どうしようかな・・・」


「何か案はあるの?」


「戦闘不能にするしかないかな。とりあえず僕が行く、シャル達は周りを警戒して」



「周り?」


「アレは明らかにボーデヴィッヒ自ら発動したシステムじゃない。
誰かが意図的にあれを装備させた。しかもボーデヴィッヒに知らせず」



「なんで、そんな事を?」


「そこまではわからないけど。今観客席は混乱してる。
何かやばい事をやりたいなら絶好のチャンスだろ? たとえば要人の暗殺とか」


「「・・・・・」」



二人はライの言葉に緊張が走る。



「観客席は教師達に任せよう。可能性は低いけど、
もしかしたら狙いは僕達男子操縦者かもしれないからね。
今は皆避難に夢中だからね。だから警戒をしてくれ」



「「わかった」」



二人はライの頭の回転の速さに驚いていた。





「さてと、(最悪ギアスを使って止めないといけないから、シャル達に聞こえないように言うには接近戦を仕掛けるしかないか)




ライはMVSを掴み黒い機体に向った。



黒い機体もライに反応して構えた。

二人の剣がぶつかる。


ラウラは何度も斬りつけるがライは剣を受け流し、
相手に行動パターンを瞬時に頭に入れていた。



それをみていた千冬達は驚いていた射撃のみならず、
あそこまで斬撃を受け流す事が出来るライの技量に。




千冬達が見ているモニターにはライのデュランダルのパーソナルデータが映し出されていた。
一次移行を終えたばかりのISのデータを見たときは呆れていた。


機動力、俊敏性、は既存のISを大きく上回っているが、
防御力は逆に一番もろい。その所為で力比べは自殺行為になる。


打鉄の一撃でシールドエネルギーの大半を持っていかれるくらいの防御力だ。

デュランダルはライの様に戦略眼、反応速度、戦術があって初めて性能を発揮できるピーキーなISになっている。

それを証拠に、ラウラの攻撃を寸分の狂いもなく全て受け流している。




ライは大振り斬撃を受け流し突きの構えをとる



そして、瞬時に三回突いた、
この攻撃はかつて藤堂が使っていた三段突きである。

それを回避するにはスザク並み、いわばナイトオブラウンズクラスの反応速度がないと不可能だった。
故にラウラは初撃すら回避できず、全てくらい
黒い装甲は砕け散ちると同時にラウラの機体が解除された。


ライはすぐさまラウラを抱えた。


ラウラはライをみて。



「なんで、お前はそんなに強い?」



「守りたかっただけだよ
それだけだよ」



「それだけなのか?」


「うん、僕は他の兄妹に疎まれていた、
けど、それに関しては我慢できた」


ラウラは真面目に僕の話に聞いてくれた。

「けど、母上と妹が僕と同じ目にあっているのは凄く悔しくて。
自分の力では二人を守れない
だから強くなろうとした。がむしゃらに覚えられるものは覚えた」


ギアスを手に入れた。いろんな事を覚えた。

交渉術、相手を確実に殺すため身体の構造が知ることが出来る医術も学んだ、
暗殺者と同じように夜目でも戦える体術、技術も覚えた。

、母と妹が暮らす国を満るため、
政治の取引を覚えていった。

「けど、それだけじゃ駄目だった。少し力を手に入れて、
母上たちを守れても幸せで居られる場所も守らなくちゃならなかった。
だから、それ以上の力を手に入れた」



国を守る為に領地拡大をした。


けど、他の国を自分の物にしたときの心が空っぽになっていく感覚は嫌いだった。
でも、そうしなければ生き残れない。


ライは過去を振り返って口にしていた。

ラウラは悲しそうな表情でいうライを見て


「そうか・・・、だからお前は強いんだな」

ライの表情を見たラウラは自分では敵わない素直に思えた。


ラウラは笑顔で言うと。


「やっぱり、君みたいな女の子は笑ったほうがかわいいよ」


「はぅ」



唐突の言葉だった為、変な声を出してしまったラウラ。


「ふ〜ん、仲いいんだね?」



ライが後ろを振り向くと機嫌が悪そうな顔をしたシャルが笑顔を浮べていた。


「どうしたの?」



シャルがなぜ機嫌が悪い理由もわからず素で質問するライ。


『グシャ!』



「何、今の音?なにか壊れたような!?」

突然の何かが壊れる音がアリーナに響いた。






「お、織斑先生!? なぜスピーカーのマイクを握りつぶしたんですか?」

涙目になりながら勇気を振り絞り質問した山田先生。



「・・・・別に」


ものすごい形相で山田先生を睨んだ。


「ええ―――!?」










事件も解決したかと思っていたら、上空からシールドバリアーを突き破ってきた三機のISが侵入してきた。








「やっぱり、ドイツ軍の囮は失敗か〜」


「ダメージも与えられないのは流石に誤算だったけど」



「無理もない、所詮戦場を知らない小娘だからな」





それぞれ勝手に言いながらライに視線を向け笑みを浮べた。



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