合宿二日目。その日の午前中から日が暮れるまで、丸一日ISの各種装備試験運用とデータ取りに追われる。



「ようやく全員集まったか。――おい、遅刻者」


「は、はいっ」


千冬さんに呼ばれて身をすくませたのは、意外にもラウラだった。
あのラウラが珍しく寝坊したようで、集合時間に五分遅れてやってきた。


「そうだな、ISのコア・ネットワークについて説明してみろ」


「は、はい。ISのコアはそれぞれ相互情報交換のためのデータ通信ネットワークを持っています。これは元々広大な宇宙空間における相互位置情報交換のために設けられたもので、現在はオープン・チャネルとプライベート・チャネルによる操縦者会話など、通信に使われています。それ以外にも『非限定情報共有(シェアリング)』をコア同士が各自に行うことで、様々な情報を自己進化の糧として吸収しているということが近年の研究でわかりました。これらは制作者の篠ノ之博士が自己発達の一環として無制限展開を許可したため、現在も進化の途中であり、全容は掴めていないとのことです」


「さすがに優秀だな。遅刻の件はこれで許してやろう」

ラウラが千冬にISのコア・ネットワークについて説明しているなか、
ライは自身の両目に意識を傾けていた。

(この感じ……暴走とも違う…)


先程から感じてる違和感が何なのかと思考を巡らせていた。

「さて、それでは各班ごとに振り分けられたISの装備試験を行うように。専用機持ちは専用パーツのテストだ。全員、迅速に行え」


千冬の号令で思考を停止して、自分の持ち場に向かった。

そんな中、千冬は箒を呼び止めた。


「ああ、篠ノ之。お前はちょっとこっちに来い」


「はい」


打鉄の装備を運んでいた箒は、千冬さんに呼ばれてそちらへと向かう。

「お前には今日から専用――」


「ちーちゃ〜〜〜〜〜〜ん!!!」

ずどどどど……! と砂煙を上げながら人影が走ってくる。明らかに人間が出せる速度を超えていた。たぶんISっぽい何かをつけてるからだろうけど、問題はその人影が――


「……束」


突然の登場に全員の意識がそちらに向けると。


「やあやあ! 会いたかったよ、ちーちゃん! さあ、ハグハグしよう! 愛を確かめ――ぶへっ」


千冬はアイアイクローを決める。

「ぐぬぬぬぬ・・・相変わらず容赦のないアイアンクローだねっ」


すると直ぐにアイアイクローから抜け出し箒に話しかけた。


ライはそれを気にすることなく、先程の違和感に思考を戻した。


(この感じ…やっぱり……Cの世界に触れたときと同じ感じ……)


以前、記憶が戻ったときのきっかけを思い出していた。


(奴らがCの世界なんらのアクションをおこしたのか?、
だとしたら、こんなところで時間を食うわけにはいかないな…)


「おい束。自己紹介くらいしろ。うちの生徒たちが困っている」

「えー、めんどくさいなぁ。私が天才の束さんだよ、はろー。終わり」

ライがどうやってこの場を抜け出そうかと考えると束をした。



(束?…ああ、たしかISを開発した人か、
ロイドさんとは気が合わなさそうだな。目的が一致したらどうなるか分からないけど、
気があったらセシルさんが一気に老けそうだけど、
ラクシャータは絶対毛嫌いするな)


かつて自身の機体を作った科学者たちのことを考えた。



「あ、あのっ! 篠ノ之束博士のご高名はかねがね承っておりますっ。もしよければ私のISを見ていただけないでしょうか!?」


「はあ? 誰だよ君は。金髪は私の知り合いにいないんだよ。そもそも今は箒ちゃんとちーちゃんといっくんと数年ぶりの再会なんだよ。そういうシーンなんだよ。どういう了見で君はしゃしゃり出て来てるのか理解不能だよ。っていうか誰だよ君は」


「え、あの・・・」

「うるさいなぁ。あっちいきなよ」

「う・・・」



「ふー、へんな金髪だった。外国人は図々しくて嫌いだよ。やっぱ日本人だよね。日本人さいこー。まあ、日本人でもどうでもいいんだけどね。箒ちゃんとちーちゃんといっくん以外は」



束とセシリアのやり取りを見てライはある確信を得た。



(うん、ラクシャータが嫌いなタイプだ)

ライは一度がラクシャータがプリン伯爵ことロイド伯爵は人間を見ていないと嫌っていた説があったことを思い出した。



(夏樹さんはあの人はISを開発したことによって生じた混乱や新しい秩序の後処理を丸投げして、逃げ出したといって嫌ってるし、僕としては気持ちは分からないでもないが、嫌悪する理由は今はないとしかいえないかな)




ライがそんなことを考えていると、箒は紅椿の試運転を始めた。


(紅い機体…か、カレンを思い出すな……)

ライはかつてのパートナーを思い出していた。



同じクラスであり、生徒会のメンバーと言うこともありもっとも仲がよかった黒の騎士団の戦友。


先行試作機月下に乗ってから、背中を任せる事が出来たパートナー。


それからライが脱退するまで黒の騎士団の双璧と呼ばれた。


(比べるのは二人に失礼だけど、やはりカレンに比べるとかなり劣るな……、
無理もないか、カレンは元々才能が有ったしレジスタンスとして命をかけた戦場に出ていたし。
けど、それはこの世界はあの世界より平和だったという証拠か…)







周りが紅椿のスペックに圧倒さている中、
一人で複雑な気持ちで箒の試運転を見ていたライ。




その後、束は一夏のISを見ていた。その途中、ライにとってあまりとって欲しくない行動に束が出た。


「そういえばいっくん、もう1人の男の子はどこかな?そっちも興味あるんだよねー束さんは」


(げっ!?)



夏樹に世話になっている手前、本人が嫌っている人物にISを見せることに多少戸惑いをもつライの気持ちを知らず、
一夏はライのことを教えた。


「ライならあそこにいますよ」


束はライに近づくと何人かは威圧感をだした、その所為で部屋の空気が多少重くなったのは言うまでもない。
ちなみに千冬は最早殺気である。


「さあ、君のISを展開してくれるかな。男の子が扱えるISなんて束さんは気になって気になって仕方ないんだよ♪」


(夏樹さんにお世話になっているしここは断った方がいいな。
それに、なぜかシャル達が睨んでるんだけど? 気のせいかな…?)



「すいません、開発者の意見も必要なので今回は遠慮してください」


その言葉に全員が多少成り驚いた。 そして更にライは続けた。

「開発者の人たちには恩が有りますから、僕は彼等の許可がない限り見せるつもりはありません」

「ふ〜〜〜ん」


思いもよらない行動だったのか逆に束はライに興味を持ち、ライを観察し始めたが

突然山田先生が焦りながら千冬の元に駆け寄った。


「たっ、た、大変です!お、おお、織斑先生っ!」


「どうした?」

「こ、こっ、これをっ!」

差し出された小型端末をみて、織斑先生の表情が曇る。

「特命任務レベルA、現時刻より対策をはじめられたし・・・」

「そ、それが、その、ハワイ沖で試験稼働をしていた――」




小声で話し始める二人を見てライは。

(これはチャンスか? 何とか抜け出して連中を見つけ出して始末するか、
この感覚はやはり遺跡に触れたときに似ている。あの時は直接触れていたから今より強く感じるけど、
離れていてもこの違和感を感じられるのは以上だ)


ライは以前あったヘルマ達の事が気になっていた。
Cの世界に関する遺跡に触れたときと同じような感覚が襲ってきたのは感覚が勘違いではなく、
彼女達の仕業だと確信して始末する気でいた。


(このタイミングでこの事件か……偶然かそれとも連中の仕業か、はては全く関係のない人物かはどうでもいい。
今はルルーシュ達に危害を加える連中の始末が先だ。
このタイミングで事件は逆に幸運といってもいいな)



そう思っていたライだが、直ぐにその逆だと知ることになる。


「それでは、私は他の先生たちにも連絡してきますのでっ」

「了解した。――全員注目!」

山田先生が走り去ったあと、千冬は手を叩いて生徒全員の注意を集めた。

「現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。今日のテスト稼働は中止。各班、ISを片付けて旅館へもどれ。連絡があるまで各自室内待機すること。以上だ!」

「え・・・?」

「中止? なんで? 特殊任務行動って・・・」

「状況が全然わかんないんだけど・・・」

不測の事態に女子一同がざわざわと騒がしくなる。しかし、それを織斑先生が一喝した。

「とっとと戻れ! 以後、許可無く室外に出たものは我々で身柄を拘束する! いいな!!」

「「「は、はいっ!!」」」

全員が慌てて動き始める。

「専用機持ちは全員集合しろ! 織斑、ランペルージ、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰!――それと、篠ノ之も来い」


「!………」

その言葉にライは「最悪のタイミングだ」と口に出しそうになった。




旅館の一番奥に設けられた宴会用の座敷・風花の間にライ達は集められた。




「二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第3世代型の軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走。監視空域より離脱したとの連絡があった」


ライにとっては最悪のタイミングの事件だった。



(この状況下では、抜け出せないか…、
いや、最悪、出陣して直ぐに攻撃対象を倒して、離脱すれば何とかなるか)


千冬が今回の事件を一夏以外の専用機持ちに説明し、面々が次々に質問や意見を述べ始める。

ライはその間に、対銀の福音の戦術を組み立てていた。
もっとも、ライ自身はその後の行動に力を入れて思考している。



「ランペルージ、お前ならこの機体相手に勝率はどれくらいだ」


ディスプレイに表示されている情報をみて千冬が質問した。

スペックを見る限り、代表候補たちの意見だと機体のスペックは自分達より上だと自覚している分、
ライの答えが気になっている。


「スペックは確かに高いですけど、暴走していることを踏まえても、
9割以上の確率で落とせます」



その言葉に皆が驚いた。


「本当か?」


「はい、これだけのデータがあれば向こうが取ってくる戦術も予想できます、
搭乗者の負担を無視した戦術も頭に組み立てましたから、第三者のこちらが知らない戦力が出てこない限り、
これ一機になら確実に勝てます」

その言葉でライと自分の距離が途方もない差があると自覚した一夏は前に出て。


「お、俺の零落白夜で落とせないか?」



先程から、一人だけ現状を理解しきれてなかった一夏が始めて事を発した。


「まあ確かに、一夏の零落白夜なら可能よね」


「デュランダルと違って白式は一撃必殺をもってるし、迷うね」


鈴とシャルロットがそう言うと、千冬は冷静に答えた。


「だが、ランペルージ相手に一度でも零落白夜は決まったか?」


「うっ」


「確かにデュランダルは一撃必殺を持たないが戦闘レベルは明らかにランペルージの方が上だ。
もしこの場にランペルージがいなかった場合その作戦はとっていたが、
今はランペルージをいかせた方が勝率が上である以上、お前には待機してもらう」



「わ、わかった」



実の姉である千冬の言葉に多少ショックを受けるも引き下がった一夏。



「待った待ーった。その作戦はちょっと待ったなんだよ〜〜!」


「束?」


「束さん?」

「私はね、いっくんと箒チャンを推薦するよ、
ここは断然白式と紅椿の出番なんだよっ!」


その後、束は紅椿の性能を説明した結果は千冬は頭を抱えていた。



「ランペルージはどう思う?」


「ちーちゃん随分その子に意見を聞くね?」


「総合的能力を見た結果だ、で、どうだ?」


「それでも、問題はあると思えません。
(それならそれで皆がその戦闘に注意が向けるから抜け出すこ事が可能だ、
今はルルーシュたちの危害加える連中を一刻も早く排除するのが先決だ。
絶対にあの世界に手を出させない)」



自身の考えを全く悟られないように言葉を返すライ。



その言葉に一同は黙ってどっちがいいか考えようとしたら、
ライが窓の方に首を向けた。その行動に一瞬驚いた一同、
その瞬間窓ガラスが割られライに向けてナイフが2本飛んでいった。 
そのあとに三本続けてライに向かっていった。



ライは最初のと二本目を避け、避けたナイフの柄を掴み残りの三本を掴み取った二本のナイフで叩き落した。



何が起きたのか理解していない一同は黙ったままだがその沈黙を破る音が聞こえた。


パチパチパチ


拍手の音が部屋の外から聞こえてきた。
皆がそこに視線を群れると戸が開かれた。


「すごいすごい、突然の殺気に反応して曲芸師みたいに俺の攻撃を防ぐなんて、
ヘルマの言ったと通りだな」



部屋に入ってきたの一般人のような女性だった。
けど、俺と言ったり、ナイフが飛んできた逆の方向から入ってきたことでこの人物がまともでないと一同は考えた。




「誰だ?」



ヘルマという反応してライの顔つきが変わり、視線が鋭くなった。


「あの三人の共犯者だよ」


ライの質問に素直に答えた乱入者。


「目的は何だ」





「ああ、あんた達には興味ないから、気にしなくていいぞ、
俺達の目的はそっちの銀髪だから。だから、さっき言ってた作戦はそこの男に任せればいい」

千冬も質問するも侵入者は興味がないみたいに答える。

「ライに用って、あんたどうやってここに入ったのよ?」


鈴が質問する。


「どうやってって普通に入ってきただけだぜ?」


男口調で答える。


「まあ、んな事よりお前の親友がいる場所に向かう準備が出来たんだよ、
ようはあんたの親友を殺しに行く」


その言葉を聴いた瞬間
部屋は殺意によって凍りついた。


その結果、モニターの前に座っていた教師達は気を失った。


一夏達は二度目であるゆえ何とか気を失わずにすんだが、
全身が震えている。


「へ〜、スクルドのいったとおりヘルマと同等の殺意か」


その言葉でこの殺意はライのだと知った一夏達は驚愕した。
それが事実かを知るためにライの表情に視線を移したら、
一夏達はショックを受けた。


自分達の目に映っている人物が先程の人物と一緒とは思えないほどの変貌ぶりだったからだ。

今のライの表情は王だったころと顔つきである。
だが、ライから発している気は以前ヘルマから発せられた殺意と同じである。


夢でライの一端を見たらラウラですら怖がっていた。

それだけ今のライの表情とライから発している殺意が一夏達にとっては異常だった。



「態々、私に殺されるために挑発しているのか下郎?」



何時もの口調ですらない、怒気も満ちた言葉を発したライ。


一夏達は恐怖のあまり膝を地面に着き
命乞いをしてもおかしくなかった。それほど部屋には殺意が充満していた。


そうならなかったのは、怒りが目の前の侵入者に向けられているからだ。


「殺せるなら殺して見ろよ? 今殺さないと後悔することになるぜ?
カシス嬢のときと同じく北の蛮族を根絶やしにすればよかったと後悔した時みたいな」




殺意を直接向けられているにもかかわらず、ライを挑発した侵入者。


「ライ・S・ブリタニアが命じる。貴様は『死ね』!」


もはや後のことは考えず、ルルーシュ達の危害になる連中の排除を優先した瞬間だった。

ライはためらいもせずギアスを行使する。


ライの両目から赤い鳥に似た模様が浮かび上がった。



「わかった」



そう答えた侵入者は自身の首をねじ切って自決した。


一夏達は何が起こったのか理解できなかった。


そんな中ライは凍りつくような視線を死体になった人物を睨んでいた。


「いや〜すげえすげえ、『俺の操作』を超えて
命令を強制させるなんて、こんなことは初めてだわ〜」




突然、今はは死体なっている人物が入ってきたドアから
新たな人物が入ってきた、しかも先程と同じ口調で見た目は全くの別人になってだ。



そのことで、一夏達は更に混乱したが、
ライだけが新たに侵入した人物の言葉でなぜ同じ口調なのかを理解した。


「なるほど、『操作』するのが貴様の能力か?」



侵入者はライの言葉を聞いて面白いものを見たようにニヤリと不気味な笑みを浮かべた。



「大当たり〜♪。 俺の能力は操作」


そう言って、ナイフを無造作に投げる。

するとその無造作に投げられたナイフは勝手に浮かび上がる。

そして、死体に触れると死体は立ち上がりそのナイフを掴んだ。



「人間であるなら意識を乗っ取って操作でき、
ものならこうして自在に操作できる能力だ」




ライの視線は更に鋭くなった。



「その様子じゃあ、俺がこの能力で何をやってきたのか想像できたみたいだな」


ニヤニヤしながら自慢するように言葉を続けた。



「国の代表を操作して無実な子供を殺させたり、
意識を乗っ取らないで肉体だけを操作して犯罪を犯させたりもしたぜ」


まるで子供が新しいおもちゃを自慢するような表情をしてさらに続けた。


「特に楽しかったのは身体だけを操作して、同じ人間の肉を食わせたことかな。
面白いように泣け叫んだり、狂ったりしてるところを見るのは最高だったぜ」


この人物が何を言いてるのか理解した一夏達はこの人物に激しい嫌悪感を抱いた。


「アメリカのISを暴走させたのはお前なのか?」


怒りを表しながら質問した一夏に侵入者は興味のないように答えた。


「んなわけねえだろ。 俺たちはそれに便乗しただけだ。
俺達の目的はその男一人だけだ。
その暴走したISはお前達が止めればいい、
というか身内が起こした面倒はお前らが片付けろ」



身内という言葉に驚いた一夏達。



「その暴走の犯人はそこにいるISの開発者だぜ、
アルヴィが心を読んだから間違いねえよ、
俺たちはそれに便乗してるだけだ」



「ね…姉さん?」



箒はその言葉が本当なのか束に問い詰めるが、
侵入者は無視してライに告げた。


「Cの世界の扉は今朝開いた、
後はお前がいた世界に殴り込みをかけるだけだ。
その前にお前と殺し合いをしたいんだよ俺たちは。
それを拒否するなら親友達の死体をここに持ってくるだけだ。
俺達としては、順番はどうでもいいからな」



「いいだろ、お前達を殺しに行ってやろう」



「アンタなら勘にしたがって動けば、たどり着くことできるだろ。
俺達はCの世界で待たせてもらうから」




そう言って死体となった物と一緒に部屋から出て行った。






ライはも出て行こうとしたが千冬がライを止める。
このままライを行かしたらライは戻ってこないという不安が追った為だ。


実際はライは一度死んだ身、その命を親友達のためなら、
彼女達を止めた後はどうなろうとどうでもいいと考えている。

「待て、ランペルージ」




「邪魔をするなら、お前達とて容赦はしない」




ライがそう口にした時、先程に発した殺意とは別の気を発した。
それはかつて、王だったころ騎士達に民草達を導いていたときの覇気である。


その気を感じ取った千冬と一夏達の本能が逆らうなと告げる。
だが彼等はその気の正体を知らず戸惑う。

本能と理性の狭間で思考していた。


ライは一夏達を無視して部屋を出ようとする。


部屋の前にはレインとマリーカが片膝をついて待っていた。

レインはライの殺意に反応して直ぐにアリーかたと共に駆けつけた。


駆けつけた時は入れんの騒動は終わっていたが、
ライから感じ取った覇気に反応して方膝を着き待機していた。




「ご命令を」



「今の私にとっての最優先事項は奴らの排除だ。
お前達は好きにしろ」


たったそれだけの言葉で、レインは理解した。


王としてはなくルーシュ達の親友として奴らを排除する。
加えて勝手な行動をとったことで査問委員会から罰則が科せられてもどうでもいい
という気持ちを理解した。


「あの時、私は言いました――此の身、此の魂…我を成す全て
今度こそ、塵と化し朽ちるまで、貴方の御元に在る事を願います――と」



たとえこの先の結末がどうであろうと王と共にいる、
それが王に身命をささげたレインという騎士の生き方である。



「私も同じです気持ちです」


そして、マリーカも王に身命をささげたい気持ちに従った。
おとぎ話や伝説とされた英雄が目の前にいる。
ブリタニアに忠誠を誓った者の本能が共に有りたいと願う。



ライが部屋を出た後二人は待機状態になっている量産機を持ち出してライの元に向かった。




3人が出た後、千冬は束に質問した。


「束、銀の福音はお前が責任を持って止めろ」


「ぶーぶー!! 分かったよ。
他でもないちーちゃんお頼みなら仕方ないね。
でも、ちーちゃんは随分あの子に入れ込んでるよね?」



最後の方の言葉は千冬にしか聞こえない程度の声で質問した。
そして千冬は嫌がりながら答えた束に複雑な感情がよぎった。



「千冬姉はライをどうするつもりだ?
俺はあいつを助けに行きたい」


一夏がそういうと鈴、シャルロット、ラウラも同じ気持ちだとわかる。


千冬はため息をつき。


「わかっている、このままランペルージを放置するわけには行かない」


ここにいる皆が先程の現象を理解できなかった。

ライがS・ブリタニアと名乗り「死ね」といったときの相手の行動や、
ライがなぜあのような別人に変貌したのかも理解できないままだったゆえに、気になっていた。


「但し、今回のことは他言するなよ」


「「「「はい!!」」」」


「お前達はどうする、篠ノ之、オルコット?」



「皆様が行くのでしたら私も行かせてもらいますわ」


「私は……、私も行きます」



箒は今回の事件が姉が引き起こしたことを気にしているが、
自分だけここに残る理由にならない。
その上、なぜか純菜とマリーカがライに従うところを見て何かを感じる物があったため、
その正体を知るためについていく事にした。



千冬は待機状態の打鉄を持って、一夏達と共にライを追いかけた。





「いってらしゃ〜い♪」


束は適当なISに近づき、コンソールを弄り始めた。

そして、ISネットワークを利用して簡単に銀の福音の暴走を止めた。


「ちーちゃん、あの子が気になるのはちーちゃんだけじゃないよ♪」



束は暴走を止めた後、直ぐに千冬の達の後を追った。





千冬たちは直ぐにライ達を見つけたが、そのライ達が突然消えた。


直ぐに彼等がいたところに向かうと、そこは別世界であった。
























一方そのころ、ルルーシュ達は神根島の遺跡の前に集合していた。


「連中がいよいよCの世界に入ったぞ」


C.C.がそう知らせると、ルルーシュは蜃気楼に乗り、
スザクはアルビオンに乗った。



「本当にいいんだな、ナナリー?」


ルルーシュは共にCの世界に行くナナリーに再度確認を取った。


「はい、今回私も戦います。


「そうか。なら何も言うことはない。
C.C.俺達の身に万が一何か有った場合は全てシュナイゼルとジェレミアに任せてある」


「ああ、わかったよ。だがお前達は戻るつもりなんだろ?」


「当たり前だ、ライとの約束がある。
より良い明日のために俺たちはまだ死ぬわけには行かない」


「そうか、ではがんばれよ。私はCの世界が閉じないようにここで待機させてもらう」


「よろしくお願いしますC.C.さん」


「まかせろ」



「行こうルルーシュ、ナナリー」

「はい」


「ああ、このナイトメアをライに届けなくてはならないからな
世界唯一のフレイヤを元に造った核エンジン搭載ナイトメア、
『アルクトゥルス』を」



アルクトゥルスと一部ではかつてアーサー王の名の由来のうしかい座の恒星の名である。



三機のナイトメアとナナリーが遺跡に取り込まれ、その場から消えた。


「さて、誰かは知らんがあの三人が組む以上、そう簡単にこの世界にこれないぞ?」


C.C.は微笑ながらそう口にした。



















そのころヘルマは一夏達がCの世界に来たことを知った。


「招かざる客もきたか。
まあいい、銀の福音を利用させて足止めでもしてもらおうか。
それと、ここならあの三人の歩んできた人生も見せられるな、
どう反応するかも楽しみだな」



ヘルマはそう言いながらCの世界に更なる干渉始めた。



「そして、ライよ貴様には飛び切りのゲストを待機させてある。
お前が王だったころに戻れる人物をな」



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