草原で鉄のぶつかる音が鳴り響く。



その音は現代では珍しい音であったが、
その場にいる男達にとってはそうではなかった。




「ツッ!!」



「フン!」


銀髪の青年は刀を、対峙している男は剣と(ハルバート)をもって、
戦っていた。


その戦いは、彼らが生きてきた時代ならその技量だけ賞賛されていたが、
現代に行くる人間にとって、技量だけでなく、彼らの戦いも驚愕する戦いだった。



彼等は試合をしているんではなく、()()()()をしている。
お互い殺すための一撃を繰り出す。
首を、心臓を、腕の関節を躊躇なく狙っていく。
その一撃をお互い回避はまたは防ぐ。




ライの攻撃を槍で流し、剣で反撃するイゴール。
だが、ライは僅かな回避動作でその攻撃を交わす。

躱されたいイゴールは一歩半さがり、槍を振り下ろすもライはそれを刀で受け止めた。


(! この戦い方!?)



「ネーベルスタンに同じ型だと思っているな」



「!」


ライの考えをよんだ言葉にイゴールは続けた。


「似ていて当然だ、私たちは同じ村で育ったのだからな。
お互い競い合った仲だ。
村を出るとき、たとえ戦場で敵同士になっても容赦はしないと誓った」



「だったら、この技量にも納得だ」


「今だから言えるが、貴様がブリタニアの王として名を挙げたときは、
やつに失望した。当時まだ幼かった貴様が戦場の最前線に出ていると聞かされていたからな」



ライは黙ってそれを聞いていた。

「士気を挙げるためにそんな手段をとり、貴様のような小僧に仕えるやつと戦う気すら失せた」




「だがら、戦場で貴様はやつとの戦いを避けたのか?」



「そのつもりだったが、奴から向かってきたのでな、
剣をとったが、やつは私の気持ちを知っていて、
初撃の時こういった『貴様が私どう思うかは貴様の勝手だが、
我が主君を嘗めるのはいただけんな。
これでも主君を見定める目は貴様より上だと思っているぞ』といってきた」



イゴールは笑みを浮かべながら話し続けた。


「その後直ぐに貴様の戦いぶりを見て自分の判断が間違っていたと思ったぞ!!」



イゴールは剣をライに向けて振り下ろした。


そこから、剣と槍の連撃でライは防戦一方となる。


「だが、今の貴様は戦いぶりはどうだ。
反応速度は上がっているも、以前のような恐怖は感じない!」



もし、その言葉を一夏達が聴いていたら戦場というものを少しは理解したのだろう。

何せ彼らが戦っている空間には彼等の殺意が充満している。


「どうした、この程度か!!」

イゴールの攻撃を防ぐライは焦り始めていた。

眠りについてから、目覚めたあとも戦場に出ていたが、
その戦場は彼が経験した戦場とは全く違っていた。


生身で戦ったのは星刻との一戦だけだ、
しかも、その戦いすらライにとっては自分の身体能力を確認するためのものだった。
実戦を離れたライにとってはイゴールは強敵だった。



残像さえ見えてしまう高速の攻撃にライは後退をさせた。



「どうした、この程度で終わりか?」



ライは呼吸を整えて、精神を集中した。


彼の目的はこの男でなく、ルルーシュ達
あの世界に危害を加える目的のあるヘルマ達である。


彼等は親友であり自分の恩人である。


故にライは彼等を守るためなら自分のことはどうなっても構わない思っている。



だからライは自身の心の闇の扉を開けた。


扉が開いた先は文字通り闇だった。

果てしなく暗い闇、ライはそこに歩いていく。
自身の目的のために、死んだはずの自分が生きているのはあの暖かった彼らの場所を守るために。
ライは自分の命を、存在を闇に溶かしていく。

そして、邪魔な理性も良心を溶かしていく。












イゴールはライの異変に気づいた。

ライから放たれている殺意が変わった。

世界が凍り付く。


そして、その殺意を放っているライの表情は恐ろしいくらいまでに無表情になっていた。

これだけの殺意を放つなら顔には怒気などの感情が読み取れもおかしくない。

それなのにイゴールはライの表情から何も読み取れなくなった。





そのせいで、ライが移動したときは消えたと脳が判断したが、
殺意に気付きライの攻撃をギリギリで防いだ。


「くっ!」


「悪いが貴様に関わっている時間はない」

ライは自分の攻撃を防いだイゴールにそう言って、
イゴールを蹴り飛ばした。



「ちぃ」


「貴様は邪魔だ」


ライは刀を強く握りイゴールに斬りかかった。


(先ほどの歩法術を使わず正面から、
速いが反応できないほどではない)


イゴールはそう思って、武器を構えたが



「なっ!?」



ライは自身の刀すら振り下ろせない距離まで詰めていた。


その事でイゴールは柄での攻撃を予測したが、
予測した瞬間、ライは半歩下がった。


「なっ!!「終わりだ」


ライは半歩下がった状態で更に
イゴールの横に移動して無表情で刀を振り下ろし、甲冑ごとイゴールを斬った。


「…見事」





自分の血が噴き出しているにも関わらず、
イゴールは笑みを浮べて最後の言葉を口にした。


イゴールはそのまま倒れ、大量の血を流す。



(主君を見る目は貴様の方が上だったようだな、スタン…)



殺した男を見ることもせず、
ただこの場所をどうやって出るか思考するライの表情は万人が見れば恐怖するほどだった。
王だった時代なら騎士である敵にも敬意を示していたが、
今の彼にはそれらの余裕がなくなっていた。


「思考に干渉する世界を支配しているのか、
だったら、話は早い」




ライはただ、自分の意思をCの世界に干渉を始めた。



ライはもともと、この世界で何百年も眠っていたため、
誰より、この世界に干渉しやすい人間になっていた。



その為、ライの殺意は空間を支配していく。

彼はただ、自分が殺すべき敵を殺すため前に進んだ
否、堕ちていく。




























その頃、レインはヘルマと戦っていた。

ただしISではなく生身で戦っていた。



彼女の騎士道と忠誠心を認め、剣をとってやるとヘルマは笑みを浮かべて、
彼女とと生身で戦いを始めた。




ヘルマはサーベルでレインの攻撃を受け流す。

レインは自分と的に力量の差に歯噛みする。


先ほどの戦争とも言える戦いで、
以前の感覚と戦う時に決めていた覚悟を思い出したレインは確実に先日より強くなっている。





それ故、ヘルマの実力がわかってしまう。


自身の主君であるライと同じかそれ以上だと結論づけた。

それと同時に、ヘルマが強くなった経緯はライとは正反対であると思った。


ライの強さは環境が生んだ強さだが、ヘルマは環境を喰らった強さだと考えた。





「惜しいな、もっと経験を積めば奴の足元ぐらいなら近づけたのにな」


ヘルマがそう言った瞬間、ヘルマの握っていたサーベルはレインの左肩を貫いた。


「…っく!」



「連中よりは楽しめたといっておこうか」



楽しんだという表情をしたヘルマはサーベルを抜く、
抜いた瞬間、レインの左肩から赤い血が吹き出した。


そして、止めを刺すためにサーベルをレインの喉を貫こうとしたが、
マリーカがレインを掴み、アサルトマシンガンを躊躇なくヘルマに向けて撃った。



二人の戦いはレイン自ら手を出すなと、
自分を含め、一夏達に強く言い聞かされた。

自分も貴族であり、ブリタニアの騎士として戦ったことあるマリーカはレインの気持ちを分かっていたが
今はただの学生であり、この世界で始めて知り合った親友を見殺しにはできない。





「マ…リーカ?」



「文句は後で聞きますから、今はじっとしててください」

その言葉を聞いたレインは意識を失う

「中々いい判断だ」



マシンガンを生身で避けたヘルマ笑いながら言った。


「私は殺すつもりで撃ったんですけど?
全て避けたんですね?」



「ほう、殺すつもりで来てくれたか、
やはり後ろの連中よりは少しはマシだが、
それだけだ、そこに倒れている騎士に比べれば小娘に過ぎん」




レインの成長を見たヘルマはそう口にすると、
彼らがいた空間の空気が変わった。



『!?』



「これは?」


「ようやく来たのね」



ヘルマの後ろに待機していたアルヴィ達が口にした瞬間、
空気が更に重くなった。





マリーカを含めた一夏達は背筋が凍った。

まるで地獄に堕とされた感覚だと錯覚してしまうほどの殺意を感じ取ってしまった。


それは自分たちに向けられていないにもかかわらず。




「いい殺意だ。戦場はこうでなくてはつまらん」


ヘルマは笑みを浮かべて視線をこの空間に入ってきた人物に向けた。




一夏達は本能がやめろと叫びだすも、
この殺意を放つ人物に視線を向けてしまう。


「……ラ……イ?」




誰が口にしたのかわからないほど彼等は混乱していた。




その表情は狂気を感じないが、
冷たさと恐怖を感じるほどの殺意を感じ取れる何かがあった。


極大の殺意をヘルマ達に向けた瞬間、ライは消えた。




金属同士がぶつかる音が聞こえ、
一夏達は直ぐにそこに視線を向けた。



そこには、サーベルで自分の首を狙おうとしていた刀を止めたヘルマの姿があった。


「随分と芸達者だな」



それなりに距離があるにもかかわらず一瞬にして自分の背後を取ったライに素直に感想を口にするヘルマ。


「私の過去を見たのなら、知っているだろ?
これでも、幼少のころから戦場を駆けた身だ。
劣る身体能力を補うための歩法術の一つや二つ、
習得している」



そう口にした瞬間、デュランダルを展開して、
ヴァリスをヘルマの顔に向けて撃った。



が、ヘルマも自身のIS展開して防いでいた。




「貴様とは生身でも戦いと思ったが。
これはこれで面白いか。さて、力比べと行こうか」



その言葉と同時に後ろに待機していた二人も戦闘に参加し、
ビットを放った。





いきなりの戦闘で一夏達は驚いたが、ライは自身のビットで攻撃を防いだり、
交わしていた。


一夏達はライの援護をするために動いたが、
ライ自身が一夏達に向けてヴァリスを撃った。




「ラ…ライ!?」


「邪魔だ、消えていろ。
それとも貴様等から殺そうか?」


ライの言葉一夏達はショックを受ける。
それと同時に、ヘルマ達に向けられていた極大の殺意が自分達にも向けられた事もショックだったが、
それ以上に、その極大な殺意を向けられて身動きができなくなった。


「マリーカ、こいつらが邪魔をする素振りを見せたら、
後ろから殺せ。こいつらを殺すは私だ」



「イエス・ユア・マジェスティ」


マリーカは王としてのライの言葉を素直に受け取った。

「ライ…」



一夏達から視線を外し、ヘルマに視線を戻すライ。


「確かに、こいつらでは囮にすらなれん邪魔者だな」


ライのとった行動に笑みを浮かべて口にするヘルマ。


その言葉に一夏達はショックを受ける。

ライ自信、既に自分たちは邪魔な存在でしかないこと突きつけられる。



同時にそれだけ、ライにとってルルーシュ達は大事な存在だと言うことを再確認することになった。



記憶を失った自分を優しく迎え入れてくれた生徒会のメンバー、
加えて、自分と同じ道を歩んでしまった二人の親友。

その親友とともに世界を変えた。


ライにとって彼等は自分の命をより大事な存在だ。
否、自分の命など価値などないゆえに天秤にかけることすらできないとライ自身は思っている。



冷た視線がヘルマ達に突き刺さるが、
彼女達とっては心地よいものであった。


「さあ、始めようか」



ヘルマの言葉で戦闘が始まった。


三機の機体のビットを相手に、防戦一方になるライだが、
その内心は三機の戦力を測っていた。




(以前とISが少し違う、
二次移行か、機動力はこちらのほうが多少上だが、こいつら相手だと大して有利でもない、
ここは攻撃よりも機動力を優先する)



ライは未来先が見える機体に向けて二挺のヴァリスを投げた。



ミカには自分に向けて飛んできたヴァリスが爆発する映像が脳に送られる。



自分が破壊したわけではない、なのに爆発したことに不思議に思った、
その時、自分の見た未来と同じようにヴァリスが爆発した。


そして、それより少し早く、未来の映像の爆発からハーケンが飛んできた。



「なるほど」



剣で軽く弾き、自分のビットをライに向けて放つも、
ライもそれを避ける。



それに続き、二人もライに向けて同じようにビット放つ、
その攻撃は千冬ですら避けることは許されずそのまま落とされるレベルの攻撃をライは避ける。




そして、そのまま三機から距離をとった。





ライの表情はさきほどと変わらず、無表情でいて、
恐怖を感じずにいられない殺意を維持している。



その内心は冷静にヘルマ達を殺すために思考を働かせていた。



「いい動きだ、状況判断能力にくわえ指揮能力のおかげで、
ビットの攻撃を全て把握できている、やはり面白い」




ヘルマは素直にライの能力を賞賛する。



ライは自身のビットをそのまま、デュランダルの背後に移動させた。

そして、エナジーウィングが消える。
残ったウィング部分にビットが連結し、再びエナジーウィングを展開。

ただし、その大きさは先ほどの比ではなかった。


その大きさは片翼だけでもIS一機分である。




「ほう、まだ切り札を隠し――!」




ヘルマの言葉を終える前に攻撃を仕掛けるライ。


躊躇もためらいもない行動。


加えて、先ほどと比べて機動性が格段に上がっている。



ライの手には二本のMVSが握られていた。
そして、ヘルマの手にはブレードが握られていて、ライの不意を付いた攻撃を防いでいた。

「いいぞ、そうでなくてはつまらん」


ヘルマはそう言って、ブレードで力づくでライを後方に弾き飛ばした。






ライが吹き飛ばされた先にはヘルマ達のビットによる攻撃がライを襲うが、
驚異的な加速でそれらを避ける。



「ねえ、今どんな気分?」



アルヴィが微笑みながらライに質問をした。
ライはそれに応えることなく、武器を構えなおそうとするが。


「自分のせいで、守りたかった母と妹を殺すきっかけを作り、
友の未来のために自ら恨まれ役を買って出て死んだはずなのに生きている気分は?」



その質問にライの視線が鋭くなる。


それと同時に彼がいた空間の空気が更に重く冷たくなっていく。


アルヴィに関して感情を爆破しそうになった一夏達だが、
なぜか体どころか声すら上げられなかった。


その理由は、空間を支配している、ライの覇気に当てられて、
彼らの本能が彼等の行動を拒んでいた。

それだけ、彼等がいる空間を支配している空気は重く暗くそして恐怖を感じるほど凄まじいものだった。
気絶してもおかしくほどの覇気を受けているにもかかわらず、
気絶しないのは本能が死にたくなければ気絶するなと告げる。


それなのに、アルヴィはライを挑発する。


「友のためだといっても本当は自分の為でしょう?」


その言葉に、一夏達は驚きにかわった。



「誰よりも殺したい人間は自分自身、
大義名分があれば、彼等は許してくれると思ったんでしょ?
何の意味もなく死んでいったら罪悪感を感じるから死ぬ理由が欲しかったと言ったところかしら」





悪意ある笑みで質問するアルヴィ。


「貴様の言うとおりだ。誰よりも私自身を殺したいと何度も思っていた。
だが、死んで楽になる資格もない」



冷たい瞳で、そう口にしたライ。



誰よりも自分が許せない、そんな思いを今まで抱えたことを気づかなかったことに後悔する一夏達だが、
体は動かず、ただ見守ることしかできないでいた。


「救いや祝福など要らない、ただ独り、この最悪感を背負って何処までも歩き続ければいい、
そう自分でも気づかずに願っていた、
お前達のおかげでその道を見つけることができた」


その言葉を聞いた一夏達は自分達の耳を疑った。




「確かに、このCの世界なら貴様の願いもかなうだろうな。
永劫苦しみ続ける願いを、だが、私達を殺さないとかなわない願いだぞ?」




ライの空のように蒼かった瞳が黒い蒼色に変わる。


「黙れ。それ以上口を開くな下郎が」



ライはそう言って、ヘルマに接近する。






二本のMVSでヘルマを攻撃するが、
ほかの二人が横から狙撃して妨害する。

だが、ライはそれすら避けてヘルマの前まで接近した。


目の前まで接近したと思ったら、瞬時でにヘルマの背後に移動して建を振り下ろすが、
ヘルマはそれすら防いだ。



防がれたライは後ろに下がりながら、エナジーウィングから刃状粒子を飛ばす。


エナジーウィングに連結したビットのおかげで、
機動力だけでなく、刃状粒子の範囲と攻撃力は上がっている。


だけど、その反面出力はエナジーウィングに持って行かれているため、
ヴァリスは使用できず、MVSの使用がやっとである。





その中で、彼女たちを倒す思考を休めず戦うライ。




「どうしたの、ダモクレスで見せた、
狂気を見せないの?」



未来視するミカがライを挑発する。



ダモクレスで見せた狂気。
あの狂気に当てられせいで、スザク達を相手に勝つことができた。


だけど、ヘルマたちのような人間には効かないことをライは知っていた。

王だった時代、戦場では死体と血の匂いで支配されていた。


その中で、精神が弱い者は、すなわち新米兵などはすぐに命を落とす。
だけど、歴戦の兵たちは麻痺しているのか耐性がついているものがほとんどだが。
中にはむしろ高揚して士気が上がる者も若干存在する。


ライはヘルマ達はその部類の人間だと悟っているためあの時の狂気は使うつもりはなかった。




「観察眼も大したものね。一体戦場でどれだけの人間をその手で殺したのかしら?
陛下様は」



愉快げにアルヴィは口にする。


(二人の動きにはもう慣れた。
思った以上にシールドエネルギーが減らされたが、
問題はない。後はあのヘルマという女だけだが、
まずは邪魔な二人を殺すのを優先だ)



ライはそう思い、それを読んだアルヴィはこの状況で勝機を見つけるライを
楽しいおもちゃを見つけたみたいに笑みを浮かべて武器を構える。




だけど、ライを含めたこの場にいる人間にとって予想だにしないモノが現れた。



「ナイトメア!?」



ライが口にする。


その中で、ある意味一番驚愕したライ。

なぜなら、その機体はかつてダモクレスで騎乗していた機体、タルタロスに似ていたからだ。



ただし、似ているだけで、タルタロスについていなかった装備が見られた。



その装備がライに向けられる。


「輻射波動!?」



かつて、仲間だったカレンが乗っていたKMFの同じ武器である輻射波動がライを掴む。


掴んだまま、まっすぐ移動し彼らがいた空間から消えた。



それをみていた一夏達は前途するが、

状況を理解したヘルマは笑みを浮かべて口にする。



「思った以上に早い到着だな。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、に
枢木スザク」




そう口にして、視線を上に向けるとそこには黒と白のKMFが現れた。




「へえ〜、彼の幻術を破ったのはともかく、
こんな早く破るなんて予想外よ」



アルヴィはそう言って、蜃気楼に視線を向けた。


「ああ、以前の俺達なら破るどころか、
あのまま幻想の中で生きていただろうな」



「同感だね、失った人たちと暮らす幸せは、
手放すことができないからね」



ルルーシュとスザクが冷たい声で答える。



「だが、貴様らはたとえどんな現実でも受け入れて、
明日を望んだんだ。あの程度の幻術を破るのは訳はないか」




ヘルマは笑みを浮かべてルルーシュたちの言葉を代弁した。


「ああ、あのとき誓ったからな。
たとえどれだけ幸せな幻でも俺たちが現実を受け入れて明日に進む」


ルルーシュがヘルマの言葉を肯定する。




「その代わりに、随分と冷たくなったのね。
妹はどうした?おいてきたの?」




その言葉で、一夏達は驚く。
それと同時に、ライに好意を持つシャルロット達は複雑な心境になった。




「ナナリーも甘えてばかりの子供じゃないい。
それに、戦うことを選んだのはナナリー自身だ。俺がこれ以上口を出すの野暮というものだ」




「そうか、貴様らの中で精神的に成長しているのはやはり貴様のようだな」



ヘルマは蜃気楼に視線を向けてルルーシュを評価した。



「そんなことはどうでもいい。
お前達にはここで死んでもらおう」




「枢木ならともかく貴様は兵を率いてこそ真価を発揮するのだろう。
できればそちらで戦いたかったが残念だ」


ヘルマはそう口にして、精神を集中させた。



その時、彼女達のISに変化が起きる。


「随分とこのCの世界に干渉してきたようだな」


ルルーシュは以前、自分の父親が起こした現象を思い出し呟いた。


かつて、蜃気楼を抑えたブロックが突然現れたように、
ヘルマも自分にとって都合のいいように現象を起こし始めた。



「ISが巨大化!!」



一夏が口にすると、千冬は否定する。


「いや、巨大化じゃない、あれはナイトメアに変えた」



「なんでもありなわけ!」


鈴の言葉は彼らも同じことを思っていたが、



「さて、枢木は楽しませてもらえそうだが、
貴様は邪魔だな」




「そうか、だったら徹底的に邪魔をしてやろう」



ルルーシュはそう言って先頭を介した。



ヘルマ達はビットで蜃気楼を攻撃をした。




絶対守護領域で防ぐかと思っていたら、
蜃気楼はあろうことか、それらを避けた。



そのことに、スザク以外の人物たちは驚愕した。


ライの過去を知っている彼らにとってはその動きは予想すらしていなかった。




「随分、変わった兵器だ。
だけど、こちらの死角を狙っている分避けやすい」



ルルーシュは笑みを浮かべてヘルマに言った。



ヘルマはすぐに、ルルーシュがこれだけの操縦具術を得たのか理解した。


「そういえば、その機体はコンピュータよって学習される機体だったな」



「そういうことだ、俺たちの世界に存在する全ての戦闘データをつぎ込み、
それを処理してこの機体を動かしている」




ルルーシュは膨大な戦闘データを、
蜃気楼の自動制御で処理させるのではなく、
自らそのデータを処理して蜃気楼を動かしていた。



フレイヤを止める為にわずかな時間で環境プログラムの入力に成功したルルーシュの情報処理能力だからこそ、
蜃気楼で避けることができた。




「なるほど、この場で楽しめる価値がある者として、
認めよう」



ヘルマはそう口にして、ビットを二人に向けて放った。



ルルーシュは先ほどと同じように、避ける。
そして、スザクルルーシュと同様に避ける、
しかも、ヴァリスでいくつか破壊した。



「これは…、ふふ、
初めてビットの攻撃を受けたにもかかわらず、それを避け、あまつさえ破壊するか。
やはり、戦闘のセンスは対したものだな、さすがは()()()()、守護者の末裔と言ったところか」




「興味深い言葉だけど、ルルーシュが言ったとおり君達にはここで死んでもらうよ」




自分にかかった生きろというギアスを発動させて、ヘルマ達に向かった。






















その頃、ナナリーはひとりの男の前で動かなくなっていた。



「随分と冷たくなったもんだな君のお兄さんは。
俺を殺せば、君を解放できるのにね」



何も喋らず動くこともできないナナリーに言い放つ男。



「そうではありませんよ。お兄様は私の為に先に行ってくれましたから」


「!!」



男は突然自分の言葉に返したナナリーに驚いた。



「これは驚いた。いつ目を覚ました?」


「今さっきです、本当ならもっと早く現実に戻ることができましたけど、
あなたが見せてくれた幻想は心地いいものでしたから」




「それなのに、現実を選んだのか?」



「ええ、私たちは明日を望みますから」


「俺と会話なんかしてていいのか。
君が愛した男は結構ヤバイところに堕ちていってるよ?
感じるだろ彼の殺意? この空間に影響を及ぼせるくらいヘルマ達を殺す気満々の殺意を放ってる」


男に言われるまでもなく、ナナリーはライの異変に気づいていた。
このままいけば、取り返しがつかない所まで堕ちていく。



兄であるルルーシュは誰よりもライの気持ちを分かっていた。
ライは自分でも、いな、気付かないふりをして死ぬ理由、或いは罪を償う方法を見つけていると予想した。
そして、今回のことは彼にとっては好奇だと言われた。



ヘルマ達の干渉がなければ、ライがいる世界からCの世界は開くことはなかった。





これから先ヘルマ達のような輩がCの世界に干渉しないということを否定できない以上、
彼はこのCの世界にとどまるだろうと予測していた、しかも、Cの世界でC.C.と同じコードを自分に宿すつもりでいる。


永遠にCの世界の番人になることを望むだろうとルルーシュの見解だ。



その予想はこの殺意を感じたナナリーは兄の予想通りだだったことに悲しんでいた。



ナナリーはライ自身、自分は堕ちるところまで堕ちればいいという思いが手に取るようにわかってしまう。



ライが死ぬことによって自分たちの世界は平和になった。
それなのに、自分が生きていることに負い目を感じている。


兄とスザクに明日のためにゼロレクイエムを決行した、
生きているのに勝手に死ぬことは彼らを裏切る行為であるとライは感じたのだろう。


だから、自分の願いを気づかない振りをして過ごしてきた、
それなのに、ヘルマ達が可能性をを見せつけた以上、
彼は止まらない。









「これ以上、堕ちていく彼を見たくないと思っていたけど、
そうでもない?」



「いえ、あなたの言ったとおり、
ライさんに幸せになって欲しいです」



「だったら、なぜ俺を倒して、彼を救おうとしない?」



「ライさんを救えるのはお兄様とスザクさんだけですから」


「だからここに残ったと?」



「いええ、それとあなたにお礼を言うために残ったんですよ」


笑顔でそう言ったナナリーは恐怖を感じさせた。



「あなたのおかげで、ユフィ姉さまやシャーリーさんやロロと会話をして、
その姿をこの目で見ることができました」




自分は彼女達を一目見ただけ満足できた。

だけど、兄とスザクは満足ではなく罪悪感を感じたはずだ。
現実を生きるということを選んだ彼らがとった行動は幻である彼女たちを殺すことであった。


たとえ幻でも、彼等にとってはこれ以上ないくらいの苦しみであったのだろう。


それでもライを救う為にに迷わず幻である彼女たち殺して現実に戻った。




「あなたのお陰でユフィ姉様達と会話ができたことを考慮して、
せめて苦しまずに殺してあげます。
彼女達に合わせてくれてありがとうございます」



ナナリーはそう言って、マークネモの剣を振り下ろして男を殺した。

男自信は最後に笑みを浮かべて死んでいった。





「私も大罪人ですから、
お兄様達を苦しめるなら加減はしません」



「お願いしますお兄様、スザクさん」

自分以外誰もいない空間でそうナナリーは呟いた。








そして、手に残った殺したという感触を戒めとして残すように自分が殺した人間を見つめていた。



























あとがき

誤字、脱字は何度も見直していますが、なくならないアホな作者ライナナです、今回かなり遅れてすいませんでした。
今回はかなりの難産でした。
特に主人公であるライは当初はもう精神がぶっ壊れるくらいにアルヴィに精神的に追い詰められる予定でしたが、
後に回復するために生半可では回復できないと思いボツにしました。
そして、ISがナイトメア化? これに関してはご都合主義でしょうが、
IS対KMFだと個人としては機動力はIS、力(パワー)重さのせいもあってKMFのほうが分がかあるかなと勝手に解釈しています。
あと、ISは小さいですから攻撃が手にくそうなうえ、ISのブレードじゃあ部が悪すぎるのでこのようにしてしまいました。
反省はしてません!
あとタイトルが思い浮かびませんでしたから、こんなタイトルになりましたすいません。
こちらは反省しています。なにかいいのがあったら後日修正します。
あと、ナナリーがちょとやばいです…。
番外編ではライとイチャイチャしてもらうのでこの世界のナナリーは一歩下がった感じです。



WEB握手で転生者であるレインがいるならシャーリーやユーフェミアを出してくれという声が出ました。
シャーリーはだそうかなと思っていますが、ユーフェミアは無理です。
あのキャラをどうやって立てるか想像もできない作者を許してください。
誤字、脱字を知らせてくれてるアバター様、いつもありがとうございます。



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