はじめに

 このSSは、ナデシコキャラを現代に置き換えた、わりとリアルっぽいデーターに基づいた旅紀行です。若干、相関図やキャラの性格をアニメ版より変更しているところがあります。
 





 GO! GO! ゲキガン号ぉぉっ

 厳冬の風を切り裂く、オレさまのゲキ・ガンまっしーんっっー!!!

 朝陽が、が俺の熱さに嫉妬するぅぅぅー (なんか曇ってるぅ……風吹いてね?)

 うぁぁあぅっー、マフラーぁぁぁー 感じる鼓動ぅぅううー

 西湘の海に煌めくゲキ・ガン魂ぃぃいいー (なんかさみー)

 スロットルをゲキゲキ絞れっ!! (キャブだと限界があります)
 
速度ああっっぅぅぅー!!(スピードは抑えろよ/60キロから70キロにアップだぜ・西湘バイパス法定速度)

 俺さまの前は何人たりとも走らせねぇー (うわー、軽に抜かれたぜ)

 小さいことは気にするな (なんかむかつくけど)

 青い海が俺をたしなめる (前日に嵐で濁り気味……)

 快調に飛ばすぉぉぉうー (ハヤブサが俺さまをぶち抜いた!)

 ばっきゃろー!! ぜってー200キロは出てるぞ、てめーなんか覆面に捕まっちまいなー

 ゲキ・ガンマシンが俺の荒れた心に訴えた

 「イラつくのはやめておけ。急ぎたいヤツは急がせればいい、行きたいやつを行かせればいい。俺とお前のライフスタイルは最高のエンジンサウンドを奏でることだぜ! 今の速度でGJだ。ガイよ、耳を澄ませ! 魂を加熱させろ! お前が求める嗜好がこの先にある!」

 熱い思いは正義に燃やせ? (?でスマン!)

 いくぜー、いくぜー いくぜー (昇天しないよ)

 俺さまのゲキ・ガンぃぃぃぃぃんんんんんー

 絶好調ぉぉぉ! 


 


ガイのゲキ・ガン ツーリング!


「伊豆へ!/西湘PA編」





 んん?

 おおっといけねぇ、久々のツーリングなんでついお調子に乗っちまったぜ。気にしないでくれ、どうも西湘の海を走るとノッちまうんだよなぁ……

 えっ? うざいあんたは誰かって? うーん、ストレートにグサリとくる質問だな。人に物を尋ねるときは礼儀正しく丁寧な言葉使いを心がけるもんだぜ。

 まあ、しょうがねぇ、自己紹介だ。

 俺さまの名前は「ダイゴウジ ガイ」だ。

 なに? かたかななのかって? ノンノン、わかりやすく表記しただけだぜ。

 醍豪寺 牙(だいごうじ がい)

 と読むんだ。どうだ、読めたか? 意外に字もむずいだろ? だからカタカナで教えてやったんだぜ。そのほうがわかり易いだろ?

 俺さまは、ネルガル重工の通信部門に勤める25歳のナイスガイだ。えっ? 今のはオヤジギャグかって? なるほど、ちと気づかなかったぜ。なかなかするどいツッコミだな。それでこそこのガイ様のファンってもんよ?

 なにぃ! 違うの?

 まあ聞けよ。俺様の駆るゲキ・ガン号が西湘バイパス下りの西湘パーキングに到着したのはジャスト8時だったぜ。

 おっと、一つ忠告しておくぜ、下り西湘PAの入り口は大きく左にカーブしているから進入時は十分減速してくれよな。わりと驚いて急ブレーキかけるあぶないやつやが多いんだ。コケてたヤツもいたなぁ……

 俺さまのゲキ・ガン号がそのカーブを華麗なまでにコーナリングすると、目も前に見える駐車場は満杯だった。ま、入り口に進入する前に駐車場の様子はわかるんだが、たいていその時は減速中だからよくは見えねぇんだ。

 カーブを過ぎた左側は大型車の駐車エリアになっているが、なんつーか二台ほどミニトラックが停まっている以外はバイク、バイク、バイク、バイクばかりじゃねえか!! 10人くらいがたむろしているが、たぶん同じ団体だろう。

 ……こんな感じだからそのちょっと奥にある屋根付きの二輪専用駐車エリアも埋まっちまってるよ!

 仕方がないから、その左に逸れて壁つたいの二輪駐車スペースに止めようとしたら、ちょうど誘導係のおっさんが誘導棒を振って「こっちに止めなさい」と指示していた。その過程で右手に見える普通車の駐車スペースを見たら、みごとに満車御礼じゃん!

 「ふう、厳冬のどまんなかにどいつもこいつも外出しやがって……いい迷惑だぜ」

 まあ、今日は仕方がないかな。久々の晴れだし、気温が上昇して3月上旬の陽気になるとかの予報だから、誰でも出かけたくなるよなぁ。昨日の早朝まで「嵐」だったし、外出を控えた人も多いだろう。

 「そのわりにはいまいち日差しが弱いんだよなぁ……」

 俺さまはバイクを止めると駐車場を横切り、海側に建つ売店に足を運んだ。そこは駐車場より高い位置にある。建物の中には入らず、その横にあるオープンテラスに向かい、正面にでっかく広がる相模湾を眺めた、

 「おー、久々だぜこの爽快感。やっぱここはいいぜ」

 日差しがいまいちだし、海にはうねりがまだあるが砂浜に打ち寄せる波は荒くない。売店の右側は柵一つ隔てただけで遮蔽物がなく、正面に西湘の相模湾が一望できる県内でも有数の人気スポットだ。元旦になればこのPAに初日の出を拝みに来る人でごった返すくらいだ。非常に競争率は高く、最低でも日付が変わるまでにPAに入っていないとあっという間に駐車場所がなくなってしまう。

 今日は元旦ほどじゃあないが、2月の朝8時だというのにここにはたくさんの人が訪れていて、海をバックに写真を撮る姿が目立つ。

挿絵

 ま、みんな元気ってことだぜ。景気が悪くても寒くても出かけたいときは出かけたいものさ。
ちなみに、売店の営業時間は比較的早いが、食堂は9時からだ。ラーメンとカツ丼が有名なので、ぜひ一度食べてみてくれ。


 そうそう、海を一望できる柵のところには小田原箱根周辺の観光地図看板があるから、ここでルートを確認するのもいい。といってもあくまでも箱根周辺だけだぜ。

 ふと時計を見る。8時15分、まだ誰も来ない。行楽客は多い……

 「8時半集合だからなー、しゃあねえ」

 とりあえずコーヒーを飲む。ふう、こう言っちゃあなんだが、かすかな陽光に煌めく太平洋を眺めながらの「BOSS」はまさに格別だぜ。ちょっとした寒さも苦にならねぇ。

 「ヘックしょいっ!」

 頼む、聞かなかったことにしてくれ。


 「ヤマダさん」

 同時に俺の首筋に衝撃が走った。コーヒーを飲もうとしていた瞬間だったから見事に顔にかかっちまったじゃねえか!

 「うらあ! …………」

 振り向き様に怒鳴ろうとしてトーンダウンせざるを得なかった。やや表情を怒り気味にそこに立っていたのは、茶色のロングヘアーにブラックのライダースーツが峰不二子ばりに似合いすぎている鬼主任だったのだ。

 「み、みなと主任……」

 通信事業部・遥みなと主任は、周囲の男どもの羨望の視線など気にせず俺の頭をチョップした。

 「な、なにするんスか……」

 ずいと彼女の顔が近寄る。

 「何をするんだ、じゃないでしょ、山田二郎。さっきから呼んでいるのにまるで心ここにあらず状態で海ばっか眺めちゃって、まだ哀愁漂わせるには年季が足りないでしょう」

 おおきなお世話だが、彼女に逆らうとあとがめんどい。おもいっきり本名で呼ばれたのも抗議しないでおこう。とりあえず「すんません」と謝っておく。

 け、決して屈したわけじゃないぜ! 男は潔くないといけないんだもん!

 「ところで、みなとさんのバイクは?」

 話題を転じて突っ込まれるかとヒヤリとしたが、みなとさんはニヤリと笑ってバイクのある方向を指差した。

 「ん? あれってどれ?」

 「あんたの目は節穴かしら。正面よ正面。青いタンクのトライアンフよ」

 「おお! あのフォルムはボンネビルっすね」

 「まあね。1959年式のT120よ」

 「ええ! 超希少年式じゃないですか」

 「ふふん、手に入れるのに苦労したわよ」

 みなとさんは自慢するように大きく胸を張った。

 「へえ……」

 自然とバイクに向って歩き出すのはバイク好きの性というやつだろう。いやいや、どいつもこいつも趣味が同じなヤツならとる行動さ。

 それにしてもこの女性(ひと)は何台目だ?

 「え? まだ3台しか持ってないわよ」

 そうだっけ? 5台くらい持っている気がしたが、わりとしょっちゅう乗り換えているから錯覚したんだろう。

 みなとさんのトライアンフは見事だった。知り合いのつてでやっと手に入れたそうだが、年式にありがちなのかオイル漏れが酷かったらしい。ただそれ以外の状態はよく、車体もオール純正部品で構成されているので思い切って譲ってもらったそうだ。

 そんで知り合いのヴィンテージバイクショップに持ち込んでオイル洩れの修理をし、レストアしてもらって「復活」を遂げたのはほんの二週間前だという。

 「黙ってましたね?」

 「あったりまえじゃない。こういう日にデビューを飾るために準備するものでしょ?」

 「否定はしませんよ。みなとさんにしてはよく我慢しましたね」

 チョップが飛んだ。

 「それだと私がこらえ性のない女にならないかしら」

 「いや、そういう意味じゃなかったんですが」

 俺さまはファーストボンネビルを横から眺めた。シングルに見える並列二気筒コンパクトなエンジン、ティアドロップの流線型タンクに低く左右に突き出したキャブトンマフラー。

 ライトカバーとフロントフォークが一体になっているナセルヘッドタイプのボンネビルは1959年から一年間だけの製造であり、それゆえにT120の希少価値を押し上げている。国外でも稀なのに国内でこれだけの現状が維持されたファーストボンネビルはかなりのお宝だ。マニア涎物の逸品だろう。

 国産のW1や多くのクラシック系フォルムのバイクの原型になっただけはある。ただでさえ、ここ最近のOLDバイクブームでトライアンフT120の注目は高い。市場流通する車種の年式は60年代から70年代が多い。その辺が売れ筋なんだ。

 「で、あんたのハーレーはどこ?」

 唐突だ。顔も笑ってねぇ。俺が愛車を元にもどしたかどうか、どうも確認したいらしい。

 「ふーん、ちゃんと戻したんだ」

 俺のローライダーを見るなり、それがみなとさんのさめた第一声だった。もうすこし感情的な響きがあっていいと思うんだが……

 おっと、男ならネチネチした考えはなしだぜ。

 「とりあえずタンクのゲキガンガーカラーはやめたみたいね。マフラーも……ボマーに交換ねえ。シートはコブラシート……まあ、いいんじゃない」

 ミナトさんは車体をくるりと見回って気づいた。

 「ちょっと、山田さん、タンク左側のゲキガンガー3はなんなのよ!」

 やっぱ見つかっちまったか。まあ、当然だが、「ワンポイントくらいは勘弁してくださいよ」と強い意思を込めて言ってやった。

 「ふう、まあいいでしょう。以前みたいに全体痛車じゃなくなったからねぇ……」

 ミナトさんは渋い顔をしたが妥協はしてくれたらしい。「コーヒー買ってくるわ」といって、男どもの羨望を受けながら販売機の方向に歩いていった。

 俺は、ゲキガンガーの描かれたタンク左側を一なでした。

 「うーん、こうしてみると以前より逆に目立っているかもなぁ」


 『ゲキガンガー』

 正確には「ゲキガンガー3」という子供向けSFロボットアニメのことだ。初放送は1982年。ガンダムやマクロス、太陽の牙ダグラムというリアルロボット旋風吹き荒れる中、1970年代の「熱血・友情」をテーマにして、あえて時代に逆行する形で挑んだ意欲作だった。残念だがやはり当時の波から逸脱して反応はよくなく、39話で打ち切りになったらしい。

 その「ゲキガンガー3」は、SFロボットアニメが行き詰まりをみせていた1990年代に入って再放送されたのだ。俺はその再放送を観て「ぐぐっとキター」ってわけさ。皮肉なことに人気を博したらしい。

 せわしないご時世に突入していたからこそ、世の中が忘れてしまった「熱血・友情」というたぎるテーマに俺は惹かれてしまったわけさ。

 そういうわけで俺の「ゲキガンガー生活」が始まったというわけ。

 たしかに「ゲキガンガー3」は最近放送された「天元突破グレンラガン」と比べれば当然クオリティーや洗練度の上では劣っているだろう。話だってより単純明快すぎる。

 ただ、そのストレートすぎるストーリーが最高なんだ。世の中は複雑化しすぎている。それが当然であり、時代の変化であるとひと区切りで片つけてしまうヤツも多いが、本来、世の中が複雑化しすぎると、より見えにくい大きな弊害が生まれるもんだ。


◆◆◆


 おっと、暗い話はここまでだぜ。ちょうどミナトさんが戻ってきたからな。

 ミナトさんは缶コーヒー片手に高そうな腕時計を見た。

 「そろそろ8時半ね。天河夫妻はまだかしら?」

 俺は連絡が入っていないかと携帯を確認した。

 「あー、メール来てたっス。少しだけ遅れるかも、って送ってきてますね」

 「そう、どれくらい遅れるのかしら」

 みなとさんが呟いた直後、見慣れたバイクが二台駐車場に入ってきた。スズキ2008年式Z1000だ。近未来的なロボットのようなフォルム、オレンジカラーのボディー、車体左右後方側面に伸びた三角形の太いマフラーが特徴的だ。

 「瑠璃ちゃんも一緒みたいね」

 みなとさんはそう呟き、屋根のついた二輪専用駐車場に停まったZ1000に向って自然に歩き出す。俺も後を追う。

 「やっほー、明人くん、ユリカさん、お久しぶりー」

 みなとさんが手を振ると、バイクに合わせてオレンジ色のラインが入ったフルフェイスを脱ぎ、天河明人が頭を下げた。(以降、テンカワとする)

 「お久しぶりです! みなとさん」

 「ひっさしぶりー、みなとさん」

 周囲の注目を浴びるほどの声量の持ち主はテンカワの嫁のユリカさんだ。腰まで届く長い髪、大きなパッチリした瞳、楽天、お気楽系の美人であり、通信事業部の元主任だった女性だ。

 テンカワの野郎とは幼馴染だ。

 「ガイ、久しぶりだね」

 そんでもって、テンカワが挨拶してきた。(お前だけだぜ、俺のことを「ガイ」って呼んでくれるのはよぉ)この一見頼りなさそうな童顔男がユリカさんの旦那だと知ったら、たいていのヤツは驚くだろう。また、俺様のゲキ・ガン仲間の一人であり、熱血魂を持つ数少ない同志つうところだ。

 「久しぶりって、一ヶ月前にもラーメン食いに行っただろう。久しぶりって感じかよ、兄弟?」

 「一ヶ月も会っていなかったら充分久しぶりだと思うけどね」

 互いの拳を突き合わせるのが俺ら流の挨拶だ。ま、相変わらず熱そうでいいことだ。


 テンカワは二年前まで俺と同じ部署で働いていたが、料理人になる夢をあきらめきれずに退職したっつうことさ。社内食堂の責任者であるホウメイ料理長に度々修行をつけてもらっていたらしい。やつ自身の努力の甲斐もあり、料理長に太鼓判を押されて脱サラしたわけだ。
俺は引き止めたりしなかったぜ。ちと寂しくなるが、夢に向って突き進む熱血魂こそ俺が求める美学だからな。

 ちなみに、ヤツが嫁さんと切り盛りするラーメン店は結構盛況だぜ。

 さて、俺がユリカさんと挨拶を交わすと、すぐ傍らにいる少女がミッキーマウスのイラストが描かれたジェットヘルを両手にかかえたままペコリと頭を下げてきた。

 「よう、瑠璃ちゃんも久しぶり! 元気にしてたかい」

 「ええ、まあまあです」

 絵に描いたようなツインテール髪の美少女の声は素っ気ないの一言だ。だれにでもこんな感じなんだよ。俺だけにじゃあないぜ。いわゆる「クール」というやつだな、うん。

 この妖精のような少女の名前は星野瑠璃ちゃんだ。(以降、ルリちゃんとする)テンカワのいとこでもある。両親が七年くらい前に他界して養護施設で暮らしていたが、テンカワは独立するとすぐにルリちゃんを引き取った。新婚だっていうのに、貴様には頭が上がらないぜ!

 こ、ここにもゲキ・ガン魂が! つくづくナイスな「漢」だぜ、天河明人!

 「山田さんは相変わらずみたいですね」

 なんとなく感情が枯れてしまったように無表情な時が多いが、テンカワや俺たちのことは慕ってくれている。なんだかんだと俺が主催する催し物に顔を出すし、ツーリングは今日が初めてではない。会った頃に比べると笑顔もずっと増えている。

 「ルリちゃん、俺に変わってほしいと思うんだ?」

 少女はフルフルと首を左右に振り、大きな瞳で俺に謝った。

 うん。根はいい子だ。もうちょい感情が豊かになれば周囲とのコミニュケーション能力も向上して友達もぐっと増えるだろう。俺はルリちゃんの頭を撫でてあげる。少女のかすかな笑顔はいいぜ!

 みなとさんの声がした。

 「じゃあ、これで全員よね? 暁部長は来るのかしら?」

 おっと、これは俺の出番だ。

 「ここには来ないぜ。箱根新道の入り口で待ち合わせになってますよ」

 「そう。確かあの人、直前まで会議だったわよね。間に合うのかしら?」

 「まあ、大丈夫でしょ。なんせ会議の場所は箱根湯本ですからね」

 「あーあ、温泉会議? このご時世に贅沢しているわよねぇ」

 うん、まったくだぜ暁の野郎! 社長の弟だからって贅沢しすぎだ。まあ、けちなのは困るが、豪快すぎてもなぁ……

 「ねえ、山田さん、暁部長、例の通信装置の実験もするって言っていたけど、人数分持って来れるのかしら?」

 「まあ、エリナさんあたりに持ってこさせるんじゃないですか?」

 エリナさん、というのは暁部長の部下のことだ。なんつうか頭は切れるんだが、厳しいというかうるさいというか、俺の苦手とするキャリアウーマンタイプだ。

 ピピピピピー、と俺の携帯が鳴った。この音はメールのものだ。確認するとまさに話題の人物からだった。

 「みなとさん、暁部長、箱根新道の入り口で待ってます、つうことです」

 「OKよ。ところで山田さん、新道ということは山ルートで行くってことよね?」

 「ですね。バイパスの終点から伊東辺りまでは激混みでしょうからね」

 ただでさえ、今日は目的地である「河津桜」を観にいこうというハイカーやらライダーやらが多いにちがいないのだ。西湘PAのゲキ混みぶりはまさにそれを明示しているといってもいい。だいたい、寒い季節の行楽というと、たいてい周辺の連中は伊豆を目指す傾向がある。

 まあ、冬だしね。

 俺は、テンカワが貸してくれたライダーマップを開いてルートの説明をした。(やべぇ! 地図忘れたぜ)

 「箱根新道から伊豆スカイラインの最後まで行って、そこから111号線を経て135号線に入ったらひたすら南下ですかねぇ……」

 ほとんどの行楽客は多少なりとも暖かい海沿い経由で東伊豆を目指すから、山の中の伊豆スカイライン方面は絶対数的に少ないと予想したわけさ。

 「なるほどね。毎度週末になると海沿いの道はこむからねぇ、スカイライン経由は正解だと思うわ」

 「でしょう、みなとさん」

 今日、3月上旬の陽気になるといっても冬は冬だ。みんなしっかり防寒対策はしているから伊豆スカは問題ないだろう。ここ最近、積雪も無いし、時間帯的に凍結の心配はない。

 俺は告げた。

 「じゃあ、準備して9時に出発するぜ!」

 おう! という声が元気に響き、それぞれの行動をとる。よく見るとついさっきまでバイクだらけだった駐車場が空きつつあった。

 ゲキ・ガンマシンに向う途中に幾分日差しも強くなってきた。

 「さて、朝陽に向って走るぜ!」(海に落ちるけどな)

 次は箱根新道PAだ。


 ……TO BE CONTINUED


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 あとがき

 涼です。新作にしようか短編にしようかと迷いましたが、一応、短編にしました。

 なんとなーく、書いてみたかったので書いたのですが、実際は真冬真っ只中に掲載予定が、他の連載もあって今頃になりました(汗

 2009年8月8日──涼──

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