とある魔術の未元物質
SCHOOL28  汝、誰が為に戦うか


―――夢を現実にするのは人である。
空を飛びたい、宇宙へ行きたい、月に立ちたい。
人間は多くの夢を現実にしてきた。百年先にはもしかしたら時間旅行が出来るようになるかもしれない。一瞬で遠く離れた場所に移動できるようになるかもしれない。
夢とは欲望の別の名であり可能性への扉だ。夢や欲望がない者は、可能性と言う名の扉を開く事もまた出来ない。







 強すぎる。
 それが垣根帝督の抱いた感想だった。
 後方のアックアと名乗った大男は強い。本当に強い。今まで戦ってきたどんな敵よりも強く圧倒的。
 前に戦った神裂の動きも速くはあったが対応することは出来た。だがアックアには対応すら出来ない。なによりも技量が、戦場を超えてきた経験が違い過ぎる。

 垣根も暗部組織に堕ちてそれなりに長い。平和ボケした国の兵士よりも余程生と死が隣り合わせの戦場を理解している。けれどアックアは文字通り桁が違う。
 持って生まれた才能も恐らく途轍もないのだろうが、なによりも長い年月を戦い続けたことで獲得したであろう戦闘センス。

 才能と努力と経験。個人個人の戦いで勝敗を決するそれらだが、アックアはその二つにおいて垣根を上回っている。ならば互角かそれ以上である『才能』のほうでどうにかするしかないが、他二つが才能の差を埋めてしまっている。いやもしかしたら才能にも差がないのかもしれない。垣根はLEVEL5の超能力者で未元物質という特殊すぎる能力を持つが、アックアはこの世界に二十人しかいない聖人といっていた。
 もし二十人足らずしかいないというのであれば、アックアは三億分の一の確率で生まれた天才なのではないか。

「はぁはぁ…………」

 ゼーハーと息を吐く。
 この寒いロシアの空気を大量に吸うのは喉が痛かったが、そうもいってられない。
 
「聞こえなかった可能性も考え、もう一度だけ言うのである。
大人しく禁書目録をこちらに預けることだ。さすれば貴様を見逃すのである」

「…………せぇよ」

「なんと言ったのであるか?」

「うっせぇんだよ、このゴリラがッ!」

 白翼が脈動し、垣根が動いた。
 地面を裂きながら弾丸を超えた速度でアックアに突っ込んでいく。
 
「考えなしの特攻であるか?
カミカゼとは良く言ったものであるが、この私には通用しないのである!」

「あぁ悔しいが自覚はある。接近戦じゃ俺はテメエに勝てねえ。だが……」

 アックアと激突する寸前。
 垣根は大地を蹴り、そのままスペースシャトルが大気圏を離脱するように急上昇した。

「なにもテメエの得意なフィールドで戦う必要はねえだろうがっ!!」

 ここは戦場だ。
 ならば相手の得意な戦い方に合わせてやる必要はない。
 相手が近接戦闘を得意とするのならば遠距離で、遠距離を得意とするならば接近戦を挑めばいいのだ。
 勿論、自分が得意なフィールドで常に戦えるとは限らない。特に戦場ではそれが顕著だ。

 狙撃しか能がない兵士と接近戦しか能がない兵士だけで構成された小隊があったとしよう。
 だが戦場とは冷酷だ。どんな屈強な兵士でも流れ弾一つで死んでいく。もし仮にその小隊で接近戦しか能がない兵士達が全滅してしまえばどうなるだろうか?
 その小隊に残るのは狙撃しか能がない兵士だけだ。そして狙撃しか能がない兵士が生き抜けるほど戦場は甘くない。一芸特化というのはスポーツならまだいいかもしれないが、常に味方の誰が死ぬか分からぬ戦場では実に脆く頼りないのだ。

 狙撃しか能のない兵士は四流、近接戦闘しか能のない兵士も四流。大抵の物事に対応できて三流、心構えが出きて二流。
 そしてあらゆるジャンル、あらゆる局面、あらゆるコンディションで最高峰の結果を叩き出すのが真のプロフェッショナルだ。

 恐らくアックアはプロフェッショナルだ。
 接近戦だけでなく遠距離戦も人並み以上の技量を持っているだろう。
 だが幾ら最高峰のプロフェッショナルでも、特別に得意なジャンルは存在する。アックアにとって特別に得意なジャンルを、垣根は接近戦と読んだ。
 
 故に垣根帝督は飛翔した。
 翼を持たぬ者には届かぬ、空という名の戦場へ。

「喰らいやがれ」

 翼を使った烈風攻撃が飛ぶ。
 アックアは一瞬垣根にある翼を凝視するが、動きを止める事はなかった。地面を滑るような高速移動で、一気に数百メートルの距離まで離れ烈風を躱すと何事かを呟く。
 効果は直ぐに表れた。

 ゴォッ、という音と共に大地にある氷が溶ける。
 氷と言う固体から溶けて液体になったおよそ数百tの水がアックアの周囲に浮かぶ。
 この瞬間、アックアは数百tの水全てを支配下に治めていた。学園都市の水流操作系のLEVEL4が束になっても出来ない程の偉業を、アックアはあっさりと行って見せた。

 ブンとアックアが手を振るうと浮かび上がっていた数百tもの水が、まるで鞭のように動き、空中に巨大な水路を生み出していた。
 誰にとっての『路』なのかは言うまでもない。

「空中に逃れれば安全とでも踏んだか?
だとしたら片腹痛いのである」

「なんて野郎だ……」

 アックアはまるで水上スキーのように、空にできた巨大な水路を滑るようにして走っていた。
 なんという出鱈目。こんな事もし水流操作のLEVEL5がいても出来ないだろう。
 だが文句を言う暇すら垣根にはない。そうこうしている内にもアックアは滑る動きで、垣根帝督のもとへと向かってきている。こちらに接近してきているという事は、アックアが近接戦を得意としているという予測は当たっていたようだが、アックアの無茶苦茶な行動の前にそんな事を考える思考の余地はなかった。
 
 先ずは足場を破壊する。
 垣根は手のひらに未元物質を生成し、それを第四位の『原子崩し(メルトダウナー)』のように放った。
 赤黒い閃光。立ち塞がる障害の全てを焼き尽くす業火がアックアの乗っている水路を粉々に破壊した。

「無駄である」

 けれどアックアの言うとおり無意味。
 水路は液体なのだ。固体ではない。粉々にした所で、直ぐにまた元の形に戻る。沸騰して気体となった水蒸気もまた、アックアの魔術により元の液体へと戻る。
 そして遂に垣根帝督がアックアの射程圏内に収まった。

「生命の恵みたる水(BUILKOH)、一時生命を貫く武具となれ(UINELKNVKN)

 アックアの詠唱に従い、数百tの水が槍や剣、戦斧へと形を変える。
 だが変わったのは形だけではない。威力もまた、通常の水を叩きつけることよりも上昇しているだろう。

 とはいえ垣根とて黙ってやられる程弱くはない。
 先ず最初、自分を貫こうとする水槍を未元物質によって変化した重力により叩き落とす。第二、第三の攻撃も同様の手段で防ぐが第四の攻撃には効かなかった。アックアが重力対策を講じたらしい。ならば、と。垣根は白翼を振るい無茶苦茶に烈風を繰り出した。
 けれどまだ甘い。大量の水はやがて一つに集まり、津波の如く押し寄せてきた。余りの巨大さに垣根は一体その水がどのような形をとっているのかは分からなかった。 
 だがその津波の破壊力ならば想像がつく。あれは正に天災だ。一度繰り出されれば人一人どころか、街一つを壊滅させる破壊の塊。
 
「上等じゃねえか、ゴリラァあああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 垣根もまた未元物質を最大限に生成する。
 散布された数億の未元物質が物理法則を歪め、書き換えていく。
 未元物質という異物が混ざった事で変革した世界。おかしな重力、おかしな気圧、おかしな気温、おかしな空気抵抗、おかしな世界。

 けれどアックアという個人が起こした津波という名の自然災害はその『おかしな世界』でもまだ消えてはいなかった。

 そんな状況下でも垣根の顔に絶望はない。確かに津波は消えなかったが威力の減衰には成功している。ならばその程度の自然災害、垣根帝督には通じない。
 白翼を操り迫る津波を強引に切り裂いて弾く。そして津波の中心から竜巻のような風が吹き荒れ、より巨大な天災の前に津波という天災は吹き飛ばされた。

「驚いた、あれを防ぐとは思っていなかったのである。
けれどこれでチェックメイトだ」

「チッ、何処にいる!?」

「上だ」

 言われて思わず上を見上げてしまう。すると言葉通り垣根よりも高い上空にアックアはいた。
 百トンに及ぶ巨大な水の大槌を傍らに侍らせて、

「――――――――――――――!」

 合図もなければ勝利宣言もない。ただ冷酷にアックアはその巨大な水の槌を落とした。
 垣根もまた何も言わず動く。あれは余りにも巨大で破壊力も段違いだろうが、当たればの話だ。持てる全力で垣根は飛翔する。亜音速で飛行する垣根を前にしてはデカいだけの大槌など当たる筈がない。
 けれど大槌が落ちきる前に、水で構成された大槌が弾けた。弾けた水は再び剣や槍などの形をとり、一斉に垣根に迫った。

(数が多すぎる……躱しきれねえ)

 咄嗟に白翼で全身を覆って防ごうとする。
 だがそれすらもお見通しだったようだ。無数の槍や剣は再び一つに集まると、今度は巨大な槍となった。

「なっ……!」

「終わりである」

 突然の事に垣根が反応しきれない。
 重力の力が加わった巨大な水槍は、確かな重量と共に垣根に落ちてくる。
 未元物質で白い壁を作り、再び全身を白翼で覆った。けれどあれほどのパワー。果たして防ぎきれるか。
 
 人間どころか大地をも貫く槍が迫る。
 だがその圧倒的破壊の前に、一つの透き通るような声を垣根は聞いた。

左方へ歪曲せよ(TTTL)

 突然、垣根に向かっていた水槍が左方へとずれた。
 あのアックアが狙いを外すとは思えない。となると原因は、

「インデックス、お前一体何をした!?」

 先の言葉を発した当人。
 地面にいるインデックスへと思いっきり叫んだ。
 だがインデックスから返ってきたのは、垣根の問いに対する答えではなかった。

「ていとく、危ない後ろっ!」

「!」

 咄嗟に高速で降下し地面に降り立つ。
 危ない所だった。もしあのまま突っ立っていればアックアのメイスが、無防備の垣根を粉砕していただろう。

強制詠唱(スペルインターセプト)、か。驚いた、十万三千冊の魔道書図書館は魔力がないが故に戦力にはならないと想定していたが、それは判断ミスだったようである。
この私が魔術に割り込みをかけられ、しかも抵抗出来なかったというのは初めての経験だ。が近接ならば詠唱を介する間もあるまい!」

 水路が伸びる。そしてそれを滑るようにアックアが高速移動してきた。

水は崩れる(RFFP)

 ボンッとアックアの乗っていた水路が崩れた。
 今度は垣根も対応する。水路という足場を失い体勢の崩れたアックアに烈風による攻撃を仕掛けた。
 アックアは躱し切れぬと悟ったかメイスで烈風を防ぐ。

 強制詠唱(スペルインターセプト)
 理論的には実に単純だ。魔術の詠唱とは、能力に演算が必要なのと同じように頭で組み立てられる。ならば術者の脳を混乱させる事が可能ならば、その制御を乱すことも可能だ。
 嘗て垣根が喰らったキャパシティダウンの能力者に一定の音を聞かせる事で、演算を乱していたが、それにも似通っているかもしれない。
 インデックスが行っているのは、難解な数学を解いている人の耳元で、滅茶苦茶な数を囁いているようなものだ。

 勿論理論的には単純であっても、実行するには深い魔術の知識と、魔術の攻勢を見抜く眼力と頭脳が必要不可欠だ。本来アックアは優れた魔術師であり、詠唱を妨害されるなど有り得ない。例え四肢を失ったとしても、詠唱を乱さぬタフネスさを持っている。
 しかし十万三千冊の膨大な知識を持ち、尚且つそれ等を用いた最適な術式特定及び高度な応用力を有するインデックスだ。魔力を用いても出来るか出来ないかと言うような事を、なんの魔術も使わずに知識のみで実行してしまう。魔道書図書館の役を担うにインデックス以上の適任者はおるまい。

「――――聖母の慈悲は(THMI)厳罰を和らげる(MSSP)
 
 アックアの声が聞こえる。
 それが一体どのような効果を秘めた詠唱なのか確かめる前に、弾けた水が元に戻っていくのを見た。

下方に落下する(BILLJF)

 再びの強制詠唱。
 だが今度は、何の効果もない。

「甘く見たな、禁書目録。
このアックアを並みの魔術師と同列に見てくれるな」

 気づけば垣根の体は宙に浮いていた。
 認識すら出来なかったが、どうやらアックアの攻撃を喰らってしまったらしい。

「ガ、ハッ――――――――――」

 全身がまるで金槌で殴られているかのように痛い。
 痛すぎて絶叫したくても、口が血で溢れていて満足に言葉を発することすら出来なかった。
 口に血が詰まっていて息苦しい。右腕が有り得ない方向に曲がっている。内臓に骨が突き刺さっているのか血が次々に零れていく。

「まだ、立つのであるか?」

「―――――――――ハッ、温い一撃だったぜ。あの程度でやられる訳ねえだろうがバーカ」

 嘘だ。本当は立っているどころか息をするのすら苦しい。
 息を吐いて吸う。呼吸という行為をする度に喉が締め付けられるような痛みが伴う。

「成程。立ち上がる理由は禁書目録の為、であるか」

 アックアの手のひらから水が放たれる。
 さっきまでの水の魔術とは比べ物にならない、LEVEL3の水流操作でも出来るような弱い攻撃。
 けれどその程度の攻撃に、ボロボロの垣根は対応できず倒れた。

「もう、やめてっ!」

 インデックスが、垣根を守るように後方のアックアの前に立ち塞がった。

「私は、あなたと一緒についていくから! 私なら何でもするし、どんな事だってするから…………。
お願いだから、本当にお願いだから、もうていとくを傷つけないで!」

「元よりそのつもりである」

 アックアがゆっくりと地面に降り立つ。

「……垣根帝督と言ったか。
戦場において勝利の要因は様々である。
戦力差、戦術、戦略、士気、運。
思いの強さが勝敗を決する絶対的な要因ではない。気高い理想を持った人物が、下らぬ男に撃たれる事など良くあることである。
が、理想や思いによる『士気』というのは、確かに一つの勝利における要因である」

 アックアがインデックスの前に立つ。
 この男はやると言ったら『やる』男だ。有言実行。口に出した時点でこの男の行動は決まっている。

「『大切な者を守る』という言葉は、一見綺麗であるし美しくも格好良くもある。
国の為、妻の為、朋友の為にと剣をとる人間を私は見てきた。
だが貴様と彼等との間に決定的に違うものがある。彼等は『大切な者を守る』ことを理由にして、動機として戦う事はあれど、その行動の責任は全て己が背で担っていた。だが貴様は違う。お前がしているのは『大切な者を守る』という小奇麗な言葉を言い訳にして、担うべき罪科と責任を『大切な者』へ押し付けているだけである」

 最後に、アックアは言った。
 それはアックアなりの勝利宣言だろうか。

「自身の行動を自身で担う事すら出来ぬ腰抜けが、この私を打倒しようなど百年早い」

 言い終わるとアックアはインデックスへと手を伸ばす。
 禁書目録を所属する組織に連れ帰る為に。
 
「待って!」

 けれどその手はインデックスの手によって拒絶された。

「今になって恐れたのであるか?」

「違う。あなた治癒魔術は使えるの?」

「一通りは」

「なら、ていとくを治して! このまま病院も何もない場所に放置してたら、ていとくが死んじゃうんだよ!」

「…………その男を治癒して、私にメリットが存在するのであるか?」

「もしもこのまま……ていとくを放置するなら、私はここで舌を噛み切る。十万三千冊の知識も、絶対に渡さないんだよ」

「正気か? 自殺とは十字教における最大の罪の一つである。
その男を守るために地獄に堕ちるというのであるか?」

 十字教は最後まで一生を貫いた末に祝福される。
 だからこそ十字教徒にとって自殺とは殺人と同等の大罪なのだ。そしてインデックスは紛れもなく十字教徒。洗礼を受け、主に祈りをささげるシスターである。
 当然、彼女にとっても自殺とは最大の罪に他ならない。

「私の為に一杯頑張ってくれた、一杯助けてくれたていとくを見殺しにして祝福されるより、ていとくが生きてくれていた方が何倍も何十倍も嬉しいんだよ」

「…………良いだろう。私としてもここで君に自害されるのは損失である。
治癒魔術を行い適当な病院にでも放り込んでおこう。だが――――――――」

「分かってる。私はあなたに着いていく」

 それはどれほどの決意だろうか。
 アックアに着いていけば、一体どのような目に合うか分からない。
 十万三千冊の魔道書を利用する為に、言葉にするのも憚られるほど非人道的な行為に晒されるかもしれない。
 けれどインデックスは垣根帝督に傷ついてほしくなかった。インデックスには垣根帝督と出会い過ごした記憶はないし思い出もない。けどこの数週間、垣根と過ごした日々は、紛れもなくインデックスにとって本物だった。
 それで十分、彼女にとっては命を懸けても守りたいものに値する。

「…………ふざけんじゃねえ」

 それでも垣根は立ち上がった。
 フラフラな体で、意識があるのが奇跡なほどの傷を負いながらも立ち上がった。

「この俺が、垣根帝督がっ! わざわざ『お前の為』に戦っただと!? 舐めてやがるな。テメエは聖人君子やお姫様にでもなったつもりか!? 守られて当然とでも勘違いしてやがるのかっ!
何度でも言ってやる! ふざけるなよ、俺は『俺の為』に戦ってる! 『お前の為』にじゃねえ、あくまで『俺の為』だ!
俺が『お前を救いたい』から救う。全部、俺の為だ。だってのに一丁前に悲劇のヒロイン気取ってんじゃねえ」

 覚悟は決まった。
 思えば最初から間違っていたのだ。
 垣根帝督は決して善人ではない。もし目の前で誰かが困っていれば、手を差し伸べるくらいはするかもしれないが、自分の命を張ってまで他の誰かを助けようなどとは思わない。

 自分の命が他人の命より可愛いし、自分の身を犠牲にして誰かの為に動く事もしない。垣根帝督が戦うのは常に自分の為だ。大義名分も言い訳も正義も悪も全てがどうでもいい。
 ただ『インデックスを救いたい』『インデックスという居心地の良い時間を失いたくない』という欲望で戦う。垣根帝督はインデックスの為に『インデックス』を救うのではない。自分の為に『インデックス』をなんとしても助けるのだ。
 
「良いこと教えてやる?
俺はな『垣根帝督』っていう人間はな。どこまでも我が侭で欲張りで、傲慢なんだよ。
テメエは黙って大人しく俺に救われてろ。だが俺は断じてテメエの為に救うんじゃねえ。
俺が『お前を』救いたいんだよ!」

 もしも垣根帝督が後方のアックアに勝てぬというのならば、その常識を塗り替えろ。
 深く考える必要などない。垣根帝督は思想家でも評論家でも哲学家でもない。
 クソッタレの外道だとか暗部組織など関係ない。どんな世界、どんな場所にいようと、自分は自分が信じる道を、『垣根帝督』を貫き通す。

「だから俺にお前を救わせろ、インデックス」

 インデックスが何かを呟いた。
 しかし悲しいかな。上手く聞き取れない。
 思ったよりも傷が深いらしい。無理して叫んだせいで意識が段々と朦朧としてきた。

「―――――――――――――ッ」

 そして訪れるのは、一つの覚醒。
 パリンッと垣根帝督の背中に生えていた白翼が割れた。
 中から噴射するように飛び出てきたのは、耀きすぎるほど耀いている光の翼。
 清廉でありながら邪悪で、神々しくありながらも禍々しい。
 歪で歪んだ光翼。

「馬鹿、な。それ程のエネルギー……いや単純な力の総量ではなく、その力の源は、まるで――――――――」

 垣根帝督は、決して誰かを救うヒーローにはなれない。
 その力を自分の為にしか振るうことが出来ない俗物だ。
 ならば上等だ。
 何処までも傲慢に、誰よりも俗物的に、自分の為にインデックスという一人の少女を救って見せよう。

「nviakgn死gkanabiwciw」

 光翼が爆発的に噴射する。
 後方のアックアをもってしても説明出来ない力の奔流が激突する。
 余りにも理不尽な、聖人ですら制御出来るか分からないエネルギーを喰らったアックアは、虚空の彼方へと飛ばされ、やがて見えなくなった。

「――――――――――――」

 そして敵が消えたのを確認した垣根の背から光翼が雲散する。
 体が傾く。元々立つどころか意識を保つことすら出来ない重症を負っていた垣根は、そのまま大地に倒れた。

「ていとく!」

 インデックスが駆け寄る。
 しかし垣根帝督の体はピクリとも動かなかった。
  




垣根がウィングゼロカスタムからV2ガンダムになりましたw

という冗談は置いておいて本作品における二つだけの主人公補正のうち一つが発動しました。まぁ、せめて一方通行と同じように覚醒くらいして貰わないとアレイスターのセカンドプランになれないし、この先やってけませんからねw
しかし多少なりとも補正がつく分難易度が更に跳ね上がるかも。
「KAKINE MUST DIE」てな感じで。
最悪の場合は「HELL AND HELL」になるかもw



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