とある魔術の未元物質
SCHOOL50  賄 賂


―――お中元だの、お歳暮だの、いいますけど、あれ、結局は賄賂やね。
賄賂というのは一般的にはマイナスなイメージをもたれ安い。賄賂というと汚職の象徴のような気がするし、なにより金に対する人間の浅ましさをありありと表してモノのようにも思える。だが賄賂という言葉の枠を広げてみれば、誕生日プレゼントやバレンタインも全て賄賂になってしまう。








 ある日、家に帰ったら自宅に金髪少女がいました。
 貴方なら、どうする?

 いたのは金髪少女。
 それも染めているのではなく地毛。更にブルーの瞳はその少女が日本人ではないことを如実に示している。つまりただの金髪少女ではなく金髪外人少女なのだ。
 貴方なら、どうする?
 彼ならば、先ず。

「もしもし警備員(アンチスキル)ですか……」

「ストーーップ!」

 金髪少女が体当たり――――――ではなく電話のコードを引っこ抜いた。
 すると当然電話が切れる。
 学園都市のLEVEL4『上位次元(オーバーフロー)』ことベルンフリートの耳にはツーツーという音だけが鳴り響いていた。

「さて金髪の餓鬼。一体全体なんのようだ? 泥棒か強盗と新聞&宗教勧誘ならお断り」

「違う違う。私はそんなヘンテコリンな仕事なんてしてない訳よ。あ、私の名前フレンダね。金髪の餓鬼じゃなくて」

 直ぐにでも能力を発動できるよう警戒を強める。
 過信している訳じゃないが、強力な自分の能力だ。前に戦ったメルヘン野郎のような化け物とか以外ならば戦う自信はある。

「結局、これには色々と深い事情がある訳よ。いやーほらー、私としても今頃は麦野が借りっぱなしにしてるプールで悠々自適なセレブライフを謳歌してる筈だったんだけどねー」
 
「…………」

「まぁ色々と私にも事情があって。その麦野って私の…………なんだろ? 友達というには健全じゃないような気もするし、仲間っていうのかなぁ」

「知るかよ」

「結局、なんだかんだでその麦野に追われてるから匿ってほしい訳よ!」

「よし、帰れ」

 良い笑顔を浮かべながら部屋の扉を開ける。
 このような類の不審者には成るべく関わらない方がいいだろう。未来のライフの為にも。

「そ、それは少し薄情なわけよ!」

「うぜェ。てか何で俺が見ず知らずの金髪不審者を家に匿わなけりゃならないんだ。うちは家出少女の駆け込み寺じゃない」

「私と貴方との間にある絆はどこにいったの!?」

「最初から絆なんて芽生えてないです、はい」

「あの熱い抱擁は、嘘だったと……!」

「覚えがない」

「うぅ。上司の激怒に怯える可憐なる少女を助けようと言うボランティア精神は」

「他の家行けよ。それかホテルでも借りりゃいいだろ」

「ふふふっ、アイ……もとい麦野の情報収集能力を舐めちゃダメな訳よ。ホテルなんかに泊まれば足がつく。自慢じゃないけど目立つ容姿だし」

 確かに日本人が大半を占める学園都市だと、このフレンダとかいう少女のような白人は珍しいだろう。
 ドイツ人と日本人のハーフであるベルンフリート自身、なにか動物園のパンダでも見るような視線に晒されたことがある。

「少なくともほとぼりが冷めるまで麦野に見つかるわけにいかない訳よ! なんだか今見つかったら半分になっちゃいそうな気がするし……」

「半分?」

「うん、なんか電波が」

 もしかしたら、このフレンダという金髪少女はアホなのかもしれない。

「そ、それに! 今この私を匿ってくれるなら色々な特典が!」

「なんだよそれ」

「見なさい! この脚線美を! そんじょそこらのお子様にはない美しさが!」

 足を強調するフレンダ。
 上位次元ことベルンフリートは一言だけ、

「チェンジで」

「なっ! あなたには分からないというの! この脚線美が!」

「脚線美とかより、パッキンでその断崖絶壁はなんだよ。てか背もチビ。ぶっちゃけタイプじゃないわ」

「むむっ! こう見えても私は絹旗よりも遥かに背が高い!」

「絹旗って誰だよ」

「それに胸だって自称脱げば凄い絹旗よりも…………ある筈っ!」

「だから絹旗って誰だよ」

「なにより私には絹旗にはない脚線美がある訳よ!」

「なんというか、絹旗って人に謝ったらどうだ?」

「そんな訳で宜しく」

「どういうわけだ!?」

 フレンダがぜぇぜぇと息を吐く。大粒の汗を拭うと、

「まさかこんなに頼み込んでも駄目だなんて……」

「別に俺の家じゃなくていいだろうが。百件くらい回れば何処かに大食いニートシスターを居候させるウニ頭や、巫女服地味少女やショタコンを居候させてくれる合法ロリがいるかもしれないじゃないか。残念だがうちは田舎に泊まろう……もとい学園都市に泊まろうには対応してない」

「………………どうしても、駄目?」

「涙目上目使いしても駄目だ」

「……脚線美に、触っていいと言っても」

「だからタイプじゃないし」

「お気に入りの人形サンダース」

「俺はフリーザ様がいい」

「百円あげるから」

「安すぎる」

「奮発して一万円」

「奨学金たんまり貰ってるし」

「限定ゲコ太ストラップで」

「いいだろう」

「じゃあ他には………………えっ?」

「あん?」

 こうして上位次元の家にフレンダが転がり込むことが決定した。
 本日の報酬。限定ゲコ太ストラップ。
 時間停止というやけに強そうな能力を持つ男は、ゲコ太マニアだった。



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