とある魔術の未元物質

注意事項
・垣根が色々と甘い。
・垣根が色々とデレ。
・メルヘン。
・本編とは全然関係ありません。

クリスマス特別番外編


「クリスマス♪ クリスマス♪ クリスマス♪」

 今日はクリスマス。
 常日頃からしかめっ面しているオッサンも、そして年中食い気100%の純白暴食シスターまでしっかりとクリスマスムードに染まっていた。

「メリークリスマスなんだよ、ていとく!」

「うるせぇよ、分かったから一々騒いでんじゃねえ」

 インデックスとは違い、今年の7月に入ってから神に呪われてるとしか思えない不幸に晒され続けている垣根帝督は今日も不機嫌だった。ちなみに余談だがアメリカなんかだとクリスマスは自殺者が最も増加する日らしい。なんでも周りが幸せ一杯の中、自分だけ不幸なのか空しいとかなんとか。

「むぅ。クリスマスはイエス=キリストの誕生日だからしっかりお祝いして、主に御馳走を食べないと駄目なんだよ!」

「絶対に後者しか頭にねえだろ、テメエ」

 思わず垣根がツッコミを入れる。
 インデックスの口元からは隠せもしない涎が垂れていた。まず間違いなくクリスマスの御馳走で頭が埋め尽くされているのだろう。

「ていとくは私を何だと思ってるの?」

 やや不機嫌そうにインデックスが問い詰める。
 垣根は頭を噛まれた痛みを思い出して適当にはぐらかす。インデックスの攻撃力はそれほどではないが、口撃力は侮れないのだ。

「ああもう、メリークリスマス! これでいいんだろ?」

「うんうん、ていとくにもクリスマスの『れいぎさほー』っていうのが分かってきたね! 敬虔なる一信徒として嬉しいよ」

 暴食の化身の癖して何処か敬虔なんだ? と指摘したい衝動を必死に抑える。
 ちなみに英語のメリー・クリスマス。イタリア語だとボエナターレ、フランス語だとジュワイユ ノエル、ドイツ語だとフロヘ ヴァイナハテンである。どうでもいいことであるが。

「二人とも、お食事が出来たのでございますよー」

 紳士の国イギリス。そして世界一飯の不味い国イギリス。
 その食文化の永遠発展途上国イギリスで最も美味い飯を作る女性、なんだかんだでイギリス清教に所属することになったシスター、オルソラ=アクィナスの声が聞こえてきた。
 え? どうして垣根がイギリスにいるのかって?
 それはまぁ、こういう場ですから。本編のアレコレは一切関係ありません。

 食卓に並ぶ如何にも美味そうな料理の数々。
 ここがイギリスではなくイタリアやフランスなのではないかと勘違いしてしまいそうな御馳走。

「やっぱり、おるそらの料理力は世界一ィィィィィィィィィィなんだよ!」

 暴食の化身、インデックスがブラックホールのように御馳走を喰い漁っていく。
 そこに敬虔な十字教徒の姿はどこにもない。

「コラテメエ! 俺のステーキをとるんじゃねえ!」

 垣根もまたインデックスと過ごして長い。インデックスの暴食に抗う術を心得ていた。

「そういえば、ていとく」

「あぁ?」

「サンタさん、しっかりきてくれるかな?」

「は?」

 一瞬、垣根は何考えてんだこいつ、というような目をする。
 サンタさん、その名前は何処の国でも知らぬ者などいないほど有名だが、実在するかと問われれば勿論そんなことない。サンタの正体は…………子供たちのパパやママなのだ。
 だがもしかしたらインデックスは、

「な、なぁ。サンタさんっていると思うか?」

「何言ってるの、ていとく! サンタさんは毎年、私達にプレゼントを運んできてくれる素晴らしいお爺さんなんだよ!」

「…………………………」

 これはもう間違いない。
 インデックスはサンタを信じきっている。

「私は去年のクリスマスのことは覚えてないけど、覚えてない私のところにもサンタさん、来てくれるかなー?」

「さ、さぁ。来るんじゃねえか、サンタの一人や二人……」

 こうなれば最後の手段だ。
 残念ながらサンタはこの世界に実在しない。ならばどうするか? 垣根も日本のパパやママと同じように、自分がサンタになればいい。

(第一次サンタ計画、始動だぜ)


 夜となり、サンタの衣装に扮した垣根はインデックスの寝床に忍び込んだ。勿論、下心はない。あるのは真心だけである。

(思えばインデックスは寝てんだから、別に格好までサンタになる必要はねえんじゃねえか?)

 だが今更気づいても遅い。
 サンタの格好のまま垣根はインデックスの眠るベッドに近付く。事前に起きている子の所にはサンタは来てくれないと教える、日本のパパやママの常套手段を使っておいたので寝たふりの心配はない。
 
(プレゼント、プレゼント…………って第二位の超能力者がなにやってんだか)

 本編より格段に甘いというよりデレ期に入ってる垣根は、心の中でしのごの言いつつもプレゼントをインデックスの隣に置く。綺麗に包装された赤い箱にはバイキングのタダ券十回分に適当に見繕ったアクセサリが入っている。
 タダ券だけでなくアクセサリも入っている辺り、今回の話はやけに垣根がデレ中だ。

(さーて、帰るか。んで寝る)

 しかし垣根が帰る直前、インデックスの枕元に変な袋が置いてあることに気付く。メモ付きだ。なんとなく読んでみる。すると、

『サンタさんへ。
いつもいつも、クリスマスの日に世界中の皆に幸せをプレゼントしてくれてありがとうなんだよ。だけど毎年大変だろうし、サンタさんばかりクリスマスに大忙しなのは可哀想だから、サンタさんには私からプレゼントなんだよ。お仕事頑張ってね。メリー・クリスマス。
インデックスより』

「ハッ、こいつも洒落た真似するじゃねえか」

 垣根は袋の中身を空ける。
 中にはチョコレートなどのお菓子が入っていた。プレゼントの内容が食べ物だというのもインデックスらしい。
 垣根はチョコレートを一つ食べてみる。

「甘え、激甘だぜこりゃぁ……」

 垣根の背中から白翼が出現する。
 プレゼントは貰った。ならば今日は正真正銘のサンタになってやろうではないか。

「俺のクリスマスに常識は通用しねえ」

 その日、イギリス中に白い翼を生やした若々しいサンタの姿が多数目撃される。
 イギリス中は大パニックに陥ったが、真相は垣根唯一人が知っていた。



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