とある魔術の未元物質

※注意事項

・見たら死にます。
・このノートに名前を書かれた人間は死ぬ。
・通行止め、行き止まりです
・この先、アンデルセン神父出没注意。
・この先、アーカードの旦那出没注意。
・この先、ラスト・バタリオン出没注意。
・ナッチナッチにしてやるぜ。
・見ない方がよいったら!
・某シスコンが命ずる「見るな」!
・おおっ 邢道栄を捕らえたか。斬れっ
・親父パネェ
・とっつぁん
・このssはファンサービスの一貫です
・黒歴史は封印したい……よって絶対見てはいかん!

「吐き気を催すssとはッ!なにも知らぬ無知な原作を利用する事だ!!
自分のssのためだけのために利用する事だ…ss作家がなにも知らぬ『原作』を!! てめーの都合でッ! ゆるさねえッ! あんたは今 再び オレの心を『裏切った』ッ!」



移転はすませたか?
トラックにお祈りは?
部屋のPCでエロゲプレイしてたことがママにばれる心の準備はOK?
人気第三位 RYUZENの戦争


―――戦争が邪悪だと認められている限り、戦争は常にその魅力を持つだろう。これが卑俗なものだと考えられる時は、戦争は一時的なものに終わるであろう。
悪というものには魅力がある。魅力というやつがあるのは、なにも正義だけではないのだ。もしも何らかの創作物をある程度閲覧したことがある人ならば分かるだろう。人気があるのは正義の側にたつ主人公ばかりでなく、悪の極致ともいえる敵側にも相応の人気がある。邪悪とは魅力なのであり、戦争が邪悪である限り邪悪という魅力に向かって嬉々として進軍する者はいなくはならないだろう。









 現実の一般人が気付けばライトノベルの世界にやってきてしまいました、という展開は二次創作においてテンプレとされるものの一つだ。
 二次創作ssとは簡単に言ってしまえば、既存の作品を原作者ではない第三者が作った小説のことだ。主にはネット上で楽しまれているが、中には同人誌として印刷されたものもある。
 ジャンルも様々で、原作のキャラクターがあの時ああいう選択をとっていたら、あそこがああだったら、あのキャラがあそこで死なず生存していれば、などという思考を膨らませそれを文章にするIF物。原作には描かれないような話を書く補足ストーリー的なもの。完結した作品のその後を描くアフター物。原作のキャラクターではなく第三者の考案したオリジナルキャラを主人公に据えるオリ主物。現実に住む人間が何らかの要因でその世界に行ってしまう来訪物。逆に原作のキャラクターが現実世界に来てしまう現実来訪系。……といった具合に、多くのssがネット上には存在している。
 大抵の場合、商業的利益がないために敷居が低そうな二次創作ssであるが地雷とされるものもある。神様という高次元存在が適当な理由で主人公に能力を付与し好きな世界に送る神様転生物。原作キャラを徹底して批判して批判するアンチss。原作キャラの能力や性格などを劣化させ貶めるためだけに存在するようなヘイトss。ヒロインをひたすら囲むハーレム物。この辺りが地雷要素であろう。
 近年では現実世界に住む人間が、物語世界に来るという現実来訪系が一番流行している。前述の神様転生系もその亜種だ。
 そんな二次創作にありがちな現実からの来訪という事態を、よもや二次創作ss作家である己が経験するとは信じられなかった。後に数いるss作家の一人、RYUZENはそう述懐している。
 そう。今現在『とある魔術の未元物質』の著者であるRYUZENがいるのは現実の世界ではない。学園都市、脳味噌を調べ脳味噌を開発し脳味噌を弄り能力者を製造する唯一の街だ。

「事実は小説より奇なり。いや、これは事実で起きたssか」

 切欠は今日も元気にssを書こうとした時だった。突然に自分のPCが光を放ち始め、そのままRYUZENの体を丸のみしたのである。そして気づいてみれば知らない街、知らない土地、知らない人間だらけ。TVのニュースでは今日も学園都市は平和です、とニュースキャスターが言っているときていた。

「……納得できないな」

 明らかな苛立ちをこめてRYUZENが呟く」

「ああ、納得できないとも!」

 怒りのままに手近にあった壁を思いっきり殴りつける。
 突然の奇行に通行人たちは眉を顰め、RYUZENの手からは壁を殴ったせいで血が滲んだが、その程度のことは知ったことではなかった。
 ただ納得いかない。どうして、

「どうして、こんなにも在り来たりな導入で私はここにいる! PCから光だと? 面白くない。ふざけているじゃないか。何の捻りもない。意外性もない。欠片もない。私が読者の立場なら、その退屈さから匙を投げているところだ」

 RYUZENは別に自分が自分のいるべき世界ではない場所に来てしまった事に対し激高しているのではない。彼にとってPCが繋がる環境さえあれば、武偵校だろうと海鳴市だろうとIS学園だろうとノープロブレムだ。だから彼が怒るのはこの世界に来たという結果ではなく過程。どのように来たか、ということに対して。

「もっとあるだろう! もっと面白おかしい導入部があった筈だ! 銀行強盗に殺される? トラックに轢かれる? なにかを庇って死ぬ? 鏡のような何かに吸い込まれる? 目が覚めたら別の世界? 意識が戻ったら赤ん坊になってました? 宝石剣? こんなものは既に使い古されている! つまらん! 二次創作ssに限ってではない! 導入とは、始まりとは宇宙の創造にも匹敵する崇高にして絶対のもの! 第一話が肝心なのだ! 一話が駄目なら読者は見向きもしてくれない。だというのに……PCが光り輝いて、そのまま異世界に……だと? ふざけているな。余程、不愉快なssになりたいとみえる」

 怒髪天を突いたままRYUZENは人目もはばからずに、不満をここにはいない誰かに向かってぶちまけた。

「そう……こういうのはどうだ? ある日、ある一人のマッドサイエンティストが物語の中にいける装置を開発した。だがそのマッドサイエンティストはその装置をこの世に産み落として直ぐに急死。装置の設計図は見つからず、その装置の作り方も終ぞ分からず、最後には最初にして最後の唯一の装置だけが残った。その装置は一度の使用で壊れて消える欠陥品。しかし物語の世界へ旅立つための唯一にして無二の扉だ。当然争いが起きる。誰もが装置を求め争うようになる。その果ての戦争、その果ての死線。財界・政界・芸能界・二次創作界。数多の世界のオタク共を巻き込んだ壮絶なる激闘と殺し合い。三年に渡る戦いの末に勝利し装置を手に入れたのは一人のしがない二次創作ss作家RYUZENッ! これだ! このくらいのドラマがなくては導入とは言えん! やり直しさせろ!」

 RYUZENは怒鳴るが、そう言われたところでやり直しが出来る訳もなかった。誰もいない場所に向かってかけた問いは、やはり誰からも答えられることなく消える。
 呆然と立ちすくむRYUZENは数分して漸く自分が奇異の視線で見られていることを察した。

(……ふむ。導入部に関しては大いに不満だが……これ以上、天に向かって唾を吐いても無意味か。こういう時は前向きに行こう。私が不甲斐ない様を見せては、私の産み落としたキャラクターに笑われてしまう)

 もっと言えばこのままこの場所に立っていれば通行人に警備員でも呼ばれかねない。RYUZENはこの世界において家も親も身分もない。公僕に御用されるのは御免だった。

(取り敢えずは食事だな。腹が空いた…………上条当麻の家に行って「おなかへった」と告げれば何かを食わせてくれるだろうか?)

 RYUZENは原作における「とある魔術の禁書目録」を頭から掘り返しつつ考える。住所不定である以上、孤立無援では如何ともし難い。生活力が皆無という訳でもないが、一人では限界もある。ホームレスという最終手段もあるが、ホームレスではネットが出来ない。ss作家としてネット環境は命の次に抑えなければならない事であった。

(しかし待て。上条当麻の部屋に果たしてネットはあるのか? ……………ないだろう。他に頼れば助力をくれそうなのは上条当麻の担任の合法ロリ。…………いや、考えるのはよそう)

 先程から腹がグーグー鳴っている。胃袋が食事を求めているのが丸わかりだ。財布には諭吉がそれなりにあるが、ここはライトノベルの世界でしかも科学が数十年先をいく学園都市。元の世界が通じるかどうか分からない。最悪、偽札を使ったとして逮捕されるかもしれないのだ。
 ベターな選択としては誰かにたかる……もとい奢らせる。見知らぬ誰かの「おなかへった」の一言で何か食わせてくれそうなお人好しといえば。

(やはり上条当麻、彼か。上条当麻の家にはインデックス……………いいや、待て! そもそも此処は本当に『とある魔術の禁書目録』の世界なのか)

 RYUZENがPCに呑まれた時、やっていたのはssの閲覧だ。開いていたページは『とある魔術の未元物質』。RYUZENが執筆した二次創作ssだ。

(まさかここは原作ではなく私の執筆した二次創作……『とある魔術の未元物質』の世界なのか?)

 そうなると上条当麻の家にはインデックスはいない。インデックスが出会い共に歩んでいるのは垣根帝督。学園都市第二位のLEVEL5であり私が一番描いた男だ。街頭のTVでの情報によると今日は8月12日。その時期、垣根とインデックスはロシアでワシリーサに匿われていた。

(上条当麻は……あくまで私の考えていた設定通りならば冥土返しの病院で入院中)

 RYUZENの口元が吊り上る。
 在り来たりな導入部だと思い怒りが天を越したが、これは中々どうして。面白味の欠片が出てきた。自分で執筆したssに自分が赴いてしまう。新しい、中々ないパターンだ。

(しかし上条当麻が入院中だと仮定するなら、彼の寮に行った所であるのは洗濯物と食材くらいだ。さてさて、どうしたものか。―――――――――んん?)

 ふらふらと街を彷徨い歩いていたRYUZENは裏通りで一人の女子生徒が三人のガラの悪い男に囲まれているのに気付いた。女子生徒は見た目からすると中学三年。カツアゲかナンパか。どういう理由で絡まれているのかは知らないが女子生徒は毅然として男達に何事かを言っていた。しかし助けは来ない。警備員が呼ばれた気配もない。人通りの多い場所からは位置的に目立たない場所で絡まれたことが、あの女子生徒の不幸の二つ目。一つ目は無論、絡まれたことそのものである。

(不良に囲まれる女子生徒。…………面白くない。なんて有り触れたパターンなんだ。だがあの女子生徒)

 何時もなら面白味のなさに捨て置いたところだが、あの女子生徒の髪についている白梅の花を模した髪飾りには見覚えがあった。

(性格的に助ければ食事を奢ってくれそうだ)

 余りにも即物的な理由で、その女子生徒が困っているとかいうことは歯牙にもかけず、RYUZENは己が食欲のために女子生徒を助けることに決めた。
 ゆったりと歩き30秒ほどで女子生徒が絡まれている場所につく。

「止めてよ! こんな事して……直ぐに警備員や風紀委員が来るんだから!」

「へへへっ、よいではないかよいではないか!」

「くんかくんか! 中学生萌えぇーー!」

「絶対領域の絶対を犯すぜぇーーーーッ!」

 毅然として不良三人に抵抗の言葉を放つ女子生徒と、やたらとアホみたいなことを言う不良三人。年齢は不良の方が上だろうに精神的には明らかに格下だ。
 そんな不良達と女子生徒の間に無言でRYUZENが割って入る。

「えっ、あの……え?」

 女子生徒は警備員でも風紀委員でもない男の登場に目をパチクリさせる。

「あぁ!? なんだよテメエは、邪魔すんのか!?」

 RYUZENのことに気付いた不良の一人が怒鳴り声をあげた。
 それを興味深そうにRYUZENは眺める。こういったテンプレ通りの台詞をまさか自分が言われることになるとは思わなかったので、そういう意味では良い経験だ。

「私かね?」

「あァ!?」

 とぼけた様に尋ねるRYUZENに不良の一人が指を鳴らす。威嚇しているつもりなのだろう。それとも自分が恐ろしい存在であると見せつけたいのだろうか。

「なに。大したものじゃない。私はただの――――――ss作家のRYUZENだ」

「RYUZENだとぉ? 馬鹿にしてんのかテメエ! 本名名乗れや!」

「馬鹿になどしていない。私はRYUZEN、漢字にすると劉禅。玄徳が直系にして蜀の二代目皇帝。人類最古の降伏王。頭が高いぞ不良共、皇帝の前だ。跪け」

「……面白ぇ。そう言うんなら俺がテメエを、跪かせてやるってばよぉぉぉぉぉおぉぉぉお!!」

 舐めきったような口調に元々沸点の宜しくない男の怒りが限界値を超える。不良達は一斉に拳を振り上げるとRYUZEN目掛けて殴りかかってきた。
 RYUZENはss作家である。最強の騎士を題材としたssは書いたが、彼自身は別に戦士でも何でもない。不良三人と戦って勝つ術は彼にはなかった。そう、彼にはない。

「――――――一つだけ忠告しよう不良共。私は兎も角、私の産み落としたキャラクターを舐めないことだ」

 瞬間、不良達三人がいきなり力を失い地面に倒れた。全くの無音。RYUZENは何もしていない。彼はなにもしていないのに不良達三人は倒れた。

「ところで君、佐天涙子だね?」

 RYUZENは後ろを振り返り、絡まれた女子生徒に向かって問いを投げる。敢えてフルネームで言ったのは確認のためだ。

「は、はい! 良く分からない内に倒れちゃったけど、助けてくれてありがとうございます! それと何で私の名前知ってるんです?」

「積もる話はあるが、それよりも危急存亡の大問題を私は抱えている。人の命がかかわった重要な問題だ。もし君が助けられたことに恩義を感じたのならこの頼みを聞いて貰いたい」

「命? え、ええ。私で出来ることなら……たぶん。力になりますけど……」

「そうか」

 RYUZENの目に妖しい光が灯った。それは獲物を前にした狩人の目。下が蕩けそうになる柔らかな肉を目の前にした肉食獣の目だった。
 女の直感でそれに気づいた佐天涙子が身を守るようにして後ずさる。身の危険を或いは上回る危険、貞操の危機を感じたのかもしれない。幾ら不良から助けられたとはいえ、自分の身を慰み者として救い主に提供するほど佐天涙子は恋多くも尻軽でもなかった。そんな佐天涙子にRYUZENは告げる。

「腹が減った。奢ってくれ」

「え、あ―――――――は、はい!」

 思った以上に簡単なお願いに佐天涙子は頷く。
 RYUZENの腹がぐーというデカい音をたてたのはそれから少ししてのことだった。



「どうぞ。当店お勧めミレニアム大隊指揮官こだわりのハンバーグです」

 ウェイトレスの置いたハンバーグを見つめる。ハンバーグから漂うのは胃袋の中に秘められし欲望を曝け出さんと舌を伸ばしてくる魔性の臭い。肉食獣、否、例え草食獣であろうと齧り付かずにはいられない極上の肉。一通りハンバーグを舐め回す様に見つめるとRYUZENは満足そうに頷く。
 その様子を確かめるとウェイトレスが続けた。

「対狗の餌用吸血鬼風肉『バレンタイン』。今までの454円米国産牛肉ではなく、初のミレニアム産です。全長39cm。重量16kg。肉数6個。もはや人類では食べきれない代物です」

「肉汁は?」

「純独製、マケドニウム加工肉汁」

「家畜の餌は?」

「純日本産黒毛和牛」

「焼き加減は? レアか? ミディアムか?」

「法儀式済み、化け物(ミディアン)でございます」

「パーフェクトだ ウェイトレス」

「感謝の極み」

 アホなやり取りをした後、そしらぬ顔でウェイトレスは退散した。それを見送らずにRYUZENは自分の前に置かれた肉を丁寧にフォークとナイフで切り分ける。

「ん、食べないのか?」

 RYUZENは真向かいに座る少女、佐天涙子のテーブルに何のメニューも来ていないことが多少気になったので尋ねる。

「このお店で一番高いメニューを遠慮せずに頼んだ貴方が言いますか。今月、結構ピンチなんですよ」

「ほう、そうなのか。それは大変だ。有難う佐天涙子。君の今月分のお金は私の胃袋の中に入ることになる。本当に有難う」

「もういいですよ!」

 鼻も恥じらう女子中学生の抗議も、RYUZENの面の皮に反射され何の効果も発揮することはなかった。女子中学生に奢らせるという大人にあるまじき行為をしたRYUZENは、他人の目も世間体もなにもかも気にせずに食事を楽しんでいる。少しでも出してやる、という気はこれっぽっちもないようだ。

「そういえばRYUZENさん? でしたっけ。普段は一体なにをしてるんですか?」

「ssの執筆だよ。ちなみにssといってもナチス親衛隊でないのであしからず。私はそういった主義者ではないからね」

「知ってますよ。で、ssってなんです?」

「掻い摘んで説明するならネット小説の一形態と思ってくれればいい。私は今日、何時ものようにPCを起動させ、何時ものようにインターネットに繫ぎ、何時ものように執筆を開始しようとしたら、何時の間にか知らない場所に立っていたんだよ。とどのつまり、私は自分のssの中に入り込んでしまったらしい」

 RYUZENはハンバーグが来る前の間、佐天から学園都市で起きた大凡の事件などを聞き出していた。そして確信したのである。佐天の話の中には「原作・とある魔術の禁書目録」には存在せず「二次創作・とある魔術の未元物質」にしか存在しない出来事があった。
 読者にもまだ明かしていない些細なる小ネタ。これを知るのは作者である自分と、この世界で生きる人間だけに他ならない。しかし、そんなことを聞かされたことでこの世界で普通に生きてきた佐天にしたら全くの意味不明だ。

「ssの中に入るって……あ、あははは。これ笑うところなんですか?」

「ジョークと思うかね。だけど生憎、私はこんなイギリス料理並みに不味いジョークは謂わないよ。だからこれは残念ながらジョークじゃあない。ノンフィクション、リアルな話だ」

「…………………」

 佐天はジト目でまるで精神障害者でも目の当りのような表情をしている。それが普通の反応だろう。いきなり良くも知らない男が自分は小説の作家であり、執筆中に小説世界であるこの世界に来てしまった。などと言ったところで信じたとしたら余程お目出度い人間か馬鹿なのか、妄想癖の持ち主くらいである。

「その目、信じていないようだね? 私としては"これを聞いているであろう一人の人間"にも言ったつもりなんだが……はてさて、君は信じてくれたかな?」

 佐天は意味が分からなかっただろう。馬鹿みたいな戯言をほざいていた男が、いきなり誰もいない虚空に向かって話し出したのだから。佐天は119番を押そうか真剣に悩む。
 だが彼女の手が携帯に伸びる前に、店内に複数の無粋な乱入者が入ってきた。乱入者はRYUZENの姿を確認すると一斉に手に持った銃口を向ける。
 学園都市製の銃らしくRYUZENにはどういう性能をもつのか分からないが、少なくとも外にある極普通の銃がモデルガンに思える程度には出鱈目な性能をもつはずだ。

「な、なななな……なんなんですかぁ、これぇ! なんかの撮影? カメラは?」

「落ち着きたまえ佐天涙子。彼等はただ我々を殺しに来ただけだ。大したことじゃあない」

「ほっ。なんだそうなんですか。それは…………よくないッ! 全然良くない! 大したことですよ! 大いに大したことですとも! なんでいきなり重武装の如何にもなテロリストっぽいのが殺しにきてるんですかっ!?」

「先程言った話が嘘偽りのない真実だからだよ。全く予期しない正体不明の乱入者が自らの王国に迷い込んだことを、この国の王様は不審に思ったんだよ。同時に危惧をした。自分の温めている大切な大切な……もしかしたら命よりも大切な計画が、この男のせいで一切合財台無しになるんじゃあないかと。しかし手際が良いな。店内にいる他の客を極自然と帰らせ、客がいなくなったのを見計らって店員も返す。心理操作系の能力者を使ったのかね君達。良い手だ、結構な手だ」

 パンパンと気が抜けるような拍手を乱入してきた男達に捧げる。この分だとこの場で佐天とRYUZENが粗挽き肉団子になろうと、警備員どころか野次馬一人駆けつけないだろう。無論、どこかにいるであろうヒーローも然り。

「御託は良い。貴様は我々と共に来て貰う」

 リーダー格であろう偉そうな男が前に進み出てRYUZENに言う。

「私は構わないが……彼女はどうするね?」

「そこの餓鬼か。目撃者は生かして置けん。殺すさ、こいつに用はない」

 ごく自然に出た「殺す」というキーワードに佐天の体が強張る。彼女はまだ小学校を卒業したての中学一年生……ガキだ。殺す、なんて単語クラス内でもしょっちゅう言われているだろうし言っているかもしれない。殺す、なんていうのは中学一年生の餓鬼からすれば在り来たりな悪口の一つでしかないのだ。しかし男から出た「殺す」は違う。その奥にある深さが心底違う。
 殺すというのは脅しでも悪口でもなく事実。殺すと言えば本当に彼等は殺すのだ。それが無垢なる赤ん坊だったとしても、たぶん容赦なく息を止めるだろう。
 一般人ならこの緊張に耐え切れず腰を抜かし、最悪気を失ったかもしれない。だが佐天涙子という少女は勇敢だった。なけなしの勇気を振り絞り、腰を僅かに浮かしあるかもしれない反撃のチャンスを探る。そんな勇敢な少女を止めたのは、意外な事に椅子に座った男だった。

「止めろ佐天」

「えっ?」

「美味しい美味しい昼食を奢ってくれた君が死ぬのは忍びない。故に忠告しよう。止めろ佐天涙子、君がどう足掻こうと彼等には勝てない」

「で、でも!」

「でも、じゃない。勝てないといったら勝てない。互いの戦力比を考えたまえ。自軍には私のようなしがないss作家に無能力者の少女。無論、二人とも戦闘経験は皆無。おまけに武器らしい武器もない。対する相手は完全武装の兵士が幾人か。戦闘訓練も受けたプロ。――――――これはいけない。この両者の戦いはもはや戦争にすらなりはしない。ただの一方的な虐殺だ」

 そう言い切ると、RYUZENは兵士達に銃口を向けられていることすら忘れてしまったのか、改めて切り分けたハンバーグをフォークで突き刺し口に運んだ。
 口の中に充満する肉の味。美味しい、と迷いなく思える味だった。

「うん。このハンバーグは美味しい。とても美味しい。焼き加減といい死ぬのを通り越して不死になるような刺激といい、なんともべらぼうな味だ」

「ってこの緊迫した状況下でなに呑気に食べてるんですか!?」

「言っただろう? 抵抗は無意味だと。となれば彼等に抗う術がない我々が出来るのは、精々が各々の神に自らの平穏と無事を祈ることのみ。と、思いきや私のテーブルには極上のハンバーグがあるじゃないか。これを食さずに死ぬのは惜しい。そう思うだろう? だから食べる。私が彼等に捕縛され動けなくなるその瞬間まで私はこのハンバーグを食べ続ける。ああそうだ、そこの兵士達くん。もしよければ私がこのハンバーグを食べ終わるまで、その銃口から鉛玉を吐き出すのを待ってくれないか? 食事というのは静かに楽しむものだろう」

 その問いかけが馬鹿にされているのだと受け取ったらしく、リーダー格は頬を羞恥と怒りで真っ赤に染める。そして、

「ふ、ふざけるなぁ!」

 拳銃を取り出し発砲。
 弾丸はRYUZENの眉間目掛けて真っ直ぐに飛び、そして見えないなにかに切断され其々があらぬ方向に飛んでいった。

「なっ!?」

「走狗では私は倒せない。狗では私は殺せない。ss作家を打ち倒すのは いつだって読者だ」

「わけわかんねぇよ! どうなってる! 状況を説明しやがれ!?」

「おやおやそうだった。君達には私の能力を説明していなかった。私の能力は摩訶不思議な幻想空間(ワンダー・ルーラー・キングダム)。学園都市のそれとは多少性質の違う能力でね。ある程度の人気度、具体的には総合評価5000ポイント以上の私の書いたssのキャラクターを30秒かけて実体化する事が出来るという何ともユニークなものなのだよ」

 兵士達は全員が気付く。気付いてしまった。
 既に経過している。RYUZENの無駄話に付き合ってしまったせいで30秒など当の昔に経過してしまっていた。

「とはいえ肝心のその作品がとあるサイトの規制事情により中々どうして、制限がついてしまったのだが。そう……もはや彼は自らの所属する国も、己が家名も、己が身分も、己が主君の名もこの場では発言することの叶わぬ残党。だけど気を付けた方が良いぞ君達。彼は血に飢えている。とても飢えている。私がハンバーグに飢えていたように、彼は戦争に飢えているのだから」


「―――――――ここはファミレスというらしい」



 突如として店内に響く声。兵士達は辺りを見渡すが声の主と思われる人影はどこにもいない。だが警戒は解かなかった。聞こえ間違いと受け取るには些かはっきりと聞こえすぎているし、なによりもRYUZENはその声の主と会話したのだ。

「そうだよ。私の産み落とした愛しいキャラクター、愛しい子供、そしてもう此処で会う事の出来ない君。ここはファミリーレストラン、略してファミレス。それがどうかしたかな?」

「ファミレスというのは、訊く所によるとウェイトレスが客にオーダーを聞きに来るらしい」

「ふむ」

「それではお客様、オーダーはお決まりになりましたか?」

 芝居がかった慇懃な口調が響く。だがやはり兵士達は声の主を見つけられない。完璧に気配そのものを殺し消し去った彼を見つける事が終ぞ出来なかった。

「全員仲良く平等に皆殺し―――――――というのは些か品が無い。ここにはまだ麗しいお嬢さんもいる。日常の場である此処がお前の狩場になれば残るのは無様な死体だ。無様な男達の死体だけだ。このハンバーグを出した店に対し、汚物を撒き散らすのはマナーの良い客とはいえないだろう。なので頼もう、一切の音もなく、一秒の時間もかけることなく、一瞬にして彼等を殺さずに沈めてくれ」

「親は子に尽くすもの。いいだろう。イエス、マイ・マスター」

 瞬間、今まで銃火器を向けていた兵士達が糸の切れた人形のように気を失い倒れた。
 常人には目視不可能な超早業。当然ながらRYUZENも佐天も常人であったため、何が起きたのかを確認することはできなかった。

「さて、行こうか」

 敵の沈黙を確認すると、RYUZENはゆっくりと椅子から立ち上がる。

「行こうって、どこ行くんですか? この人達は? そ、それよりも警備員に連絡を――――――」

「無駄だ。彼等はこの街の闇に属する連中、警備員に通報したところで意味などはない。どうやらこの街の長はこの私を殺しに掛かってきているようだ。面白い……面白いよアレイスター。君が230万人で私を殺そうと言うのなら、私達の戦力は二人。この二人にて君の230万人を打倒する」

「二人って、もしかして私も数に」

「入っているよ、帰りたいなら帰ってくれても一向に構わん。その代わり君が先程の手合いに襲われたとしても感知はしないよ」

「………………」

「さぁアレイスター。戦いの始まりだ、正史には描かれない戦争を始めようじゃないか」

 しがないss作家RYUZENは静かに窓のないビルにいるさかしまの魔法使いへ宣戦布告する。

「ここは……やっぱり偉大なる少佐殿の演説を借りて……おほんっ!」

 わざとらしく咳き込むと、RYUZENは前に見たとある漫画の演説を記憶の表面に引っ張り出し、それを適当にアレンジしたものを唱え出す

「諸君 私はssが好きだ
諸君 私はssが好きだ
諸君 私はssが大好きだ
執筆が好きだ
再構成が好きだ
アフターが好きだ
IFが好きだ
性格改変が好きだ
救済物が好きだ
クロスオーバーが好きだ
十八禁が好きだ
最強物が好きだ

日本で 海鳴で
ハルキゲニアで 冬木で
学園都市で 三国志で
第三新東京市で 幻想郷で
宇宙で 異世界で

この世界で行われるありとあらゆる執筆行動が大好きだ

デバイスを構えたNANOHAさんのスターライト・ブレイカーが轟音と共に敵陣を吹き飛ばすのが好きだ
空中高く放り上げられた雑魚敵が無双パワーで消滅した時など心がおどる

オリ主の操る無限の剣製が好敵手を撃破するのが好きだ
悲鳴を上げて燃えさかる敵陣から飛び出してきたヒロインをナデポで洗脳した時など胸がすくような気持ちだった

ヒロインをコンプリートしたオリ主信者の横隊が男性キャラを蹂躙するのが好きだ
恐慌状態のヤンデレが既に息絶えた主人公を何度も何度も刺突している様など感動すら覚える

ドMの女を縛り上げて吊るし上げていく様などはもうたまらない
泣き叫ぶ原作キャラが私の振り下ろした手の平とともに金切り声を上げる王の財宝にばたばたと薙ぎ倒されるのも最高だ

哀れな男キャラが雑多な能力で健気にも立ち上がってきたのを神様から貰ったチートパワーがプライドごと木端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える

ヘイトの理不尽さに滅茶苦茶にされるのが好きだ
必死に守るはずだったヒロインが蹂躙され女子供が犯され殺されていく様はとてもとても悲しいものだ

王の軍勢の物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ
神様チートオリ主に好きな原作が媚を振り害虫の様に地べたを這い回るのは屈辱の極みだ

諸君 私はssを地獄の様なssを望んでいる
諸君 私に付き従うお気に入り読者諸君
君達は一体何を望んでいる?

更なるssを望むか?
情け容赦のない糞の様なssを望むか?
鉄風雷火の限りを尽くし三千世界の読者を殺す嵐の様なssを望むか?
 
『ss! ss! ss!』
 
よろしい ならばssだ

我々は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとするノートPCだ
だがこの暗い部屋の隅で一か月も自宅警備員を続けてきた我々にただのssではもはや足りない!!

大名作を!!
一心不乱の大名作を!!

我らはわずかに一個大隊 千人に満たぬ敗残兵に過ぎない
だが諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している
ならば我らは諸君と私で総力100万と1人のss作家集団となる

我々を忘却の彼方へと追いやり眠りこけている作者を叩き起こそう
髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう
連中にヘイトの味を思い出させてやる
連中に我々の俺TUEEEEEE!の音を思い出させてやる

天と地のはざまには奴らの常識では思いもよらない事があることを思い出させてやる
一千人のss作家の戦闘集団で
移転先を炎上し尽くしてやる 」

「最後の大隊大隊指揮官より全空中艦隊へ。目標個人サイト、移転先首都上空!!

「第二次規制作戦 状況を開始せよ」

「……ラジャー………って違いますよ! なにやらしてんですか!?」

「ふっ。これで字数は十分だ。如何に内容が薄くともここまで書けば読者の方も満足だろう。ということで」

 そう。俺達の戦いはこれからだ!






―――――――――――――未完(オレンジ)―――――――――――











「って未完!? ここまで引っ張っておいて未完なんですか!?」

「当たり前じゃないか。もう疲れた面倒臭い怠い嫌だ書きたくない」

「酷い!」

「そもそも読者の望んでるのは垣根の大冒険であって、しがないss作家の大冒険じゃないよ。本音を暴露すると、短編だし尺もないし」

「なら短編で終わる範囲でやれば良かったじゃないですか?」

「えぇー。でも書き直すのめんどい。本編なら書き直しくらいするけどさぁ……これ、読者の無茶ブリから生まれたおふざけだしぃー。もうやりたくないよーみたいなー」

「じゃあこの続きは?」

「だから未完だよ未完。Good night!」

「そんなんで作者としていいんですか?」

「いいんだよ。そもそもこの短編自体が寄り道のまた寄り道のたっしょんくらいなもんなんだからさー。ほら文体もこうやってテキトーでしょテキトー」

「納得いかない! こんな終わり方じゃ納得できませんよ!」

「仕方ないな、るいたくんは〜。じゃあどういう奴かきゃいいのさ」

「しっかり完結する奴! 完結した凡作は未完の名作を上回るんですよ!」

「分かったよ。完結した奴にすりゃいいんでしょぉぉぉが。んじゃ完結した作品をドン!」




(テイク2)

神様「儂のミスで間違えて殺しちゃったから禁書世界に能力付与して転生させるぞい。何欲しい」

RYUZEN「イケメンフェイス&王の財宝」

神様「ラジャー」

RYUZEN「禁書世界に転生したぜ。おや、あれは」

一方通行「へへへっ、実験だぜェ実験〜」

最大主教「たりけるわよ♪」

☆「プランプラン」

フィアンマ「俺様ってばサイキョーね!」

RYUZEN「チートパンチ!」

ラスボスさん達「うわああああ!」

禁書ヒロイン全員「きゃー! RYUZENサイコー! 惚れたわ抱いてぇ!」

RYUZEN「お前が、お前たちが俺の嫁だ!」

〜完結〜



「はいシューリョー! ほら完結したから終わり」

「確かに完結してる! してるけど……これはないって、この薄さはないわぁ」

「完結した凡作は未完の名作に勝るんだろう?」

「いや、これを作品といったら侮辱でしょ。300字にも達してないし」

「何を言う。『無駄』というものを限界にまで削ぎ落とした実に読みやすい作品じゃないか。ほいじゃ、今度こそシーユーバディコンピス」

「何語!?」

「RYUZEN語」




 ビッグニュースをお伝えします。今世紀最高の大ニュースです。
 なんとなんとジョジョがアニメ化&PS3でゲーム化ですよ! もうこれに比べたらにじファンのアレコレなんて今まで食べたパンくらいどうでもいい問題です。ヤッホー! 規制問題も月までブッ飛ぶこの衝撃!

 やや作品内で過激な発言がありましたが、本気で他サイト様を炎上させる気は毛頭ありません。ただ実際問題、にじファンからの移転者が規約を読まずに投稿したせいで大変なことになっているサイトは幾つもあります。移転するにしてもルールとマナーを守りましょう。
 
……移転問題ですが進展はありません。ただ第一候補であるシルフェニアには当分移転できません。理由はシルフェニア様のトップページを見て頂ければお分かりになると思います。とある魔術の未元物質の話数は130以上。こんなのが行ったら、冗談抜きで管理人様が過労で倒れかねませんので。ううむ……どうしましょう? こうなればにじファンと共に心中しますか。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.