第6話『生きてる人間と……』


『ヴァルキリー7、フォックス1!!』
『ヴァルキリー8、フォックス1!!』
『ヴァルキリー9、フォックス1!!』

けたたましい音をたて戦術機3機が装備している92式多目的誘導弾システムのミサイルコンテナから、
ミサイル32発合計全96発が撃ちだされる。

激しい爆発音をたて全弾命中…最前列の突撃級に直撃。1発では殺害までには威力不足でも3発程集中的にあたれば流石の甲殻も耐えきれない。
追従している突撃級がつんのめりスピードが落ちる。

ミサイルを撃ちつくした3機は交換再装填しに後方の補給コンテナへ交換しに下がっていく。


西暦2001年5月9日

旅団規模のBETAが新潟上陸。
2月の新潟上陸の被害回復での編成中だった帝国軍第13師団は奇襲の形で半壊。

補う形で第15師団が増援にくるも…
既に突破され、約1500あたりのBETA群がそのまま横浜方面に向かいだし、
今回の増援要請に応じたA-01の相手をしていた。
後詰めで厚木からの部隊も駆け付ける予定である。

A-01…国連オルタネィティヴ4の統括責任者であるある一人、香月夕呼博士直属戦術機甲連隊で、現在隊長は伊隅みちる大尉。
現在隊員数は女性のみ10名。
初出撃の衛士3名を含み不知火9機での出撃である。
連隊内で第9中隊のみが現存し、第9中隊のコールサインがヴァルキリーである。

そして彼女らの機体、不知火は日本帝国が94年に正式量産化が決定した第三世代の戦術機であり、性能もかなり高い。

BETAの侵攻隊形は突撃級が甲殻と突進力、スピードでもって前衛を必然的にこなす。

9機で1500あまりを相手するのにまずは突進力を削りとる…
充分阻止ラインまでの距離をとり、遠距離攻撃をしかける方針を選択した。

装着交換を終え再び前進、ミサイルを再び発射、命中しコンテナまで戻って交換を5回程繰り返すと、
拠点とした補給コンテナまでのレンジが縮まってくる。
「ヴァルキリー1、フォックス2!!」
『ヴァルキリー2、フォックス2!!』
『ヴァルキリー3、フォックス2!!』
『ヴァルキリー4、フォックス2!!』
『ヴァルキリー5、フォックス2!!』
『ヴァルキリー6、フォックス2!!』

一斉に各機の突撃砲の120mmの火がふき散々減らしてきた突撃級の甲殻を貫通した。
死んだ突撃級は足止めとして使われBETA群の進軍速度は落ちている。

今回の編成は…
ヴァルキリー1迎撃後衛、
ヴァルキリー2突撃前衛、
ヴァルキリー3強襲前衛、
ヴァルキリー4強襲掃討、
ヴァルキリー5突撃前衛、
ヴァルキリー6迎撃後衛、
ヴァルキリー7制圧支援、
ヴァルキリー8制圧支援、
ヴァルキリー9制圧支援…

の前衛3後衛3支援3の9機編成であった。
7〜9は初出撃の00年度訓練組。
その為後衛の遠距離攻撃専門にし他の者でカバーをする。


「ヴァルキリー1、フォックス3!!」

突撃砲の36mmが火を吹きはじめる。
それまで120mm撃ってた他機も順次36mmに切替火を吹き始める。

(今回は死の8分は大丈夫だろうか?)
ヴァルキリー1の頭によぎる。

順調にBETAの数が減ってくる。
しかし破綻の切っ掛けが訪れた。

光線級の視認…

最優先で始末しなければならないBETAが出る。

通信で警告すると、弾種変更したヴァルキリー7、8、9から順次頭ごしにAMLランチャーが放たれるが…

『キャアアアアー!!』

『ヴァルキリー9!!』

後衛のヴァルキリー9に何かがおこった。彼女の機体マーカーが…陣形からかなり前方外側に位置して…


side〜ヴァルキリー8〜

『キャアアアアー!!』

『ヴァルキリー9!!』

(おぐ!?!?)

身体が無条件に彼女を探し出す。

ヴァルキリー9の機体は戦車級にたかられていた…

「おぐ!!」
叫ぶと92式をパージし、彼女の元へ急ぐ…

(やだ!やだ!やだ!)

『私もいく!なんとか振りほどいて堪えろ!!ヴァルキリー4穴頼む!!』

いつも一緒にいた生活…
それが崩れる……先がみえない。
自分の半身である彼女を失いたくない。

しかし…

『どうも駄目みたい…ゴメンねイッシー』

『あきらめるんじゃない!ヴァルキリー隊規忘れるな!!』

しかし…装甲を食い破ったのだろう…戦車級が中に入ろうとしてる様子がみえる。

マ ニ ア ワ ナ イ

(やだやだやだやだやだやだ、誰かおぐを助けてーーー!!)


その瞬間…

上空から何かが連続して降ってきて、戦車級の身体を貫いた。

コクピットの中に入ろうとしていた、戦車級の動きが止まり…
またコクピット回りにたかってた戦車級が次々と落ちる。

(え??何??)

何かがヴァルキリー9の機体の前方にきた…

(天使??)

そう…ありえない事にそれは飛んでいた。
しかも人であった…

side〜ヴァルキリー8end〜
……


(こっちの方か?)
爆発音がした方向へと…

(この間は助けられなかったが…このチートで絶対助けてやる!!)

戦場が見えはじめた。
(やつらの集団は比較的大が多めの…800位か…
モビルスーツは…9……チッ!!)

ATフィールドが波紋を広げる。この間よりは本数が少ないが、だんだんと増えて…15本程度。
うち一本は出力が少し高めのように感じた。

(見えた!…かなり劣勢?もてよーもてよー)

戦術機の集団に近寄る。

その時1機の様子が変に感じるが、まだ遠距離だから詳しくわからない。

(やばそうだ。間に合うか)
一気に最大加速ソニックブームをまきちらす。

(金属を食ってる!)
戦車級が1機を食べてると認識した瞬間に無声光線を連発する。

CIWSのチート版と思ってよいが、実際問題精度はレーダー付きの自動制御には勝てない。
しかも有効範囲は、視界範囲内だけ。

最初の数発はコクピット部に手をかけていた戦車級に当てる。
活動停止を確認。
その開構部回りにたかってた戦車級にあて機体から落ちるのを確認。
更に機体にたかってた戦車級に次々と当て範囲を若干広げたところで、
速度をおとしつつ…不知火の前に到着した。

仲間だと思うが、こっちにくるのを視界の隅で確認しつつ、
コクピットを塞いでいるやつらの死骸をほうりなげる。

中を覗きこみながら…
「大丈夫ですか?」
と声をかけようとした。

……

side〜ヴァルキリー8少し戻る〜

『な…何??』
おぐからほうけた通信が流れた。

『無事か!?』『どうなってる??』『状況おしえて下さい〜〜無事なんですか〜〜?』

おぐの機体の天使は、
中に入りこもうとした戦車級の死骸を掴んでほうり投げている。

『ヒィィ』
おぐの悲鳴が流れる。
「おぐ!!」

その天使が中に入ろうとして…

『パンパンパンパン!!』
通信から銃声がながれ…

side〜ヴァルキリー8end〜


side〜ヴァルキリー9少し戻る〜

「な…何??」

(い……きなりどう…って…の?目のま…のBETA、
い…なりビ…ンと…って…かなく…なった…ど……た…たす…かっ…た?)
精神的に衰弱しており思考が途切れ途切れになっている。

『無事か!?』『どうなってる??』『状況おしえて下さい〜〜無事なんですか〜〜?』

(あ…あ…あ…た…し…)

涙は既に流れきったって…もう流れない。
鼻水もだらし無くたれ…涎も…かなり恐怖の思いをしただろう。

勿論下の方も…

塞がっていた戦車級の死骸から光がさしはじめた。
死骸が有り得ない力でどかされているのだ。

そう認識すると…
「ヒィィ」
悲鳴をあげた。

(いや…いや…いや…いや)
喰われる…無意識に武器になるものを探していた。
だがパニック状態におちいった彼女は携行銃の置場もわからなくなっていた。


手が銃に触れた。
銃を手繰りよせ…身体にしみついた動作で…

(死力を尽くして任務にあたれ、
生ある限り最善を尽くせ。けして犬死にするな)

何かが見えた瞬間、発砲する。

恐怖に怯え、目をあけられなくともトリガーをひく…

side〜ヴァルキリー9end〜

……

「大丈夫で…」
パンパンパンパン!!
ATフィールドが波紋を広げ弾を止める。

パンパンパンパンパンパンパンカチッカチッカチッ


目の前の女性は多分恐怖だろうか……
穴という穴から体液を垂れ流しながら目を必死につむり…
弾切れにもなってるにも関わらずトリガーをひいていた。

カチッカチッカチッカチッカチッ

静かに近寄り、
「もう大丈夫だから」
手を女性の銃を握っている手にそえる…

女性がびくっと反応し目を開いてくる。
完全に開くとほうけたように目を開きつづける。

(綺麗な目だな……)

「もう大丈夫だから…」
女性の手の指を一本一本握っているグリップからはがし、銃をとると床におく。

「あ…あ゛あ゛あ゛っ゛あ゛ー!!」
女性の目から涙が再び出はじめ、鼻からも…
よっぽど怖い思いをしたのだろう。

「もう大丈夫だから……もう大丈夫だから…」

抱き寄せ髪を撫でる。

(怖い思いしたんだろうな…
戦力としてはもう使えないか…他にもやばい機体あると思うし…)

「ごめん、少し回りかたずけるからさ…
少し避難しててな…」

撫でながら彼女の身体を放しコクピット部分から出て、
「え……?あ?…」

ほうけている表情を最後に見ながら彼女の機体を虚数空間に引き込む。

……

side〜ヴァルキリー8少し戻り〜

『パンパンパンパンパンパンパン カチッカチッカチッ』
通信で銃声と弾切れのトリガーの音がながれた。

(何?何があったの?)

36mmで牽制射しながらおぐの機体に接近す。

ヴァルキリー3の先任も、74式長刀を使いながらくるが…まだ距離が少しある。

他の隊機は崩れた陣形を立て直しつつ圧力対応におわれている。

『もう大丈夫だから…』
また通信が流れた。

ヴァルキリー9のマイクが拾ったのだろう…

(天使の声?)
心地好い男性の声…

『もう大丈夫だから……もう大丈夫だから…』

『ヴァルキリー3戻るぞ、ヴァルキリー8、ヴァルキリー9のフォローしろ』
「了解!!」

先任は対応を私にまかせてくれた。

(あのこは……天使?…けどおぐはまだ動いてない…あたしが守らなきゃ)

『ごめん、少し回りかたずけるからさ…少し避難しててな…』
『え……?あ?…』

そう流れた瞬間、悪夢が訪れた。おぐの機体が……一瞬で消えた。
「オグーーー!!」
(あたしが馬鹿だった、
あたしが馬鹿だった、
あたしが馬鹿だった、
あたしが馬鹿だった、
あたしが馬鹿だった、
あたしが馬鹿だった、
あたしが馬鹿だった、
あたしが馬鹿だった、
あたしが馬鹿だった、
あたしが馬鹿だった、
あたしが馬鹿だった、
あたしが馬鹿だった、

このやろう!!)


その悪魔に向かって突撃する。
36mmをフルオートで放つとその悪魔の目の前の空中に変な波紋がでる。

(きいてる筈)

120mmも混ぜて撃つ…
BETAの存在を無視し、
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

悪魔がなんか叫んでるが関係ない。
(悪魔め殺してやる!!!)

残弾0で突撃砲を放棄、ナイフを抜刀し、
(殺してやる!悪魔め!!!!)


いきなり目の前が……


side〜ヴァルキリー8end〜

……

(やば、なんか俺間違えた??)

彼女の仲間の機体からいきなり発砲を受け、ATフィールドが展開する。

「ちょっと待って!!!」

その機体からの射撃はとまらない…
「まてってんだろ!!!」

その機体は盲目的に自分めがけて攻撃をくわえている。
「まてってんだろ!このわからずや!!くそっ!」

その機体に飛び掛かろうとした戦車級に無声光線、要撃級には、
「パイル!」
変形しつつある状態で光の杭を撃ちこむ。

その機体はナイフ抜いて振りかぶって…
「だぁー!わからずや!!」

落ち着かせようとその機体を虚数空間の、
さっきの引き込んだ機体の真っ正面に、位置固定で引きずり込む。

……

side〜ヴァルキリーマム少し前〜

(え?そんな)
『ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
ヴァルキリー8の声が流れると、ヴァルキリー9のマーカーがロストしていた…

「ヴァ…ヴァルキリー9!応答して下さい!!」
『え?9?』
『まさか!!??』

「ヴァルキリー9!!」

(確かに装甲は食い破られてたけど… いきなりロストは……え?)

「ヴァルキリー8!!!」

ヴァルキリー8も信号ロスト。

(なになになに?なにが起こってるの??)

「ヴァルキリー8!!」

『8も!??』『イヤァァァー』

「ヴァルキリー8!!」
その瞬間…いきなりズレた位置でマーカー復活確認する。
『こちらヴァルキリー8…』

side〜ヴァルキリーマムend〜

……

「こちらヴァルキリー8…」

『え?なに?』『どうなってるの?』

「こちらヴァルキリー8、ヴァルキリーマムどうぞ…」

『は、はいこちらヴァルキリーマム』
遥先任の声…

「ヴァルキリー9の生存確認」

『え??』

その瞬間…機体の制御が効かなくなった。

「え……あ…こ、こちらヴァル!!」
「はいちょっと機体使わしてね〜」

あの悪魔が…コクピット内部にいきなりあらわれた。
ハッチがしまってるのにも関わらず…

「あ…き…き」

「はいまず通信つかうよ〜〜あ〜あ〜テステス、やつら…あの生物をぬっころすの協力しますよ」




寸劇風後書き

おぐ「ねえ作者さん」

作者「ん?」

おぐ「あたしの純潔かえしてよ…なんであんな描写を……」

作者「あ〜ストーリー上な…それにおま…」
おぐ「かもーん」

作者「な……なんでここで36mm構えた不知火君が…?」

おぐ「辞世の句は??」

作者「ち……ちょっとまて……今ここでだと……死亡フラグだすぞ……」

おぐ「どーせ、エログロになんでしょ?ならいまここで、あ、誰かさんが何とかしてくれるわよ。じゃーね」
手を前に振り合図

バララララララララ!!

作者 チーン

H24年4月8日改稿

…まぁ…コロコロ主観がかわりますね…
4人分の立場で変わる話でした。
分割すべきかな?ても思いますが…

そこはそのままで…

繰り返します。モビルスーツではありません。戦術機です。

やっとこの注意をいれなくてもよくなりますね…

12月再改稿



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