俺――兵藤一誠は現在、8人分の荷物が括り付けられた背負子を担ぎ、山を登っている。その理由は古典的だがフェニックスと対戦するまでの間、山籠もりで修業する為だ。

ちなみに背負子に括り付けられている荷物は、俺を含むオカ研メンバー全員分の着替えや歯磨きセットなどの旅行用品一式。しかも、2週間分だ。

それだけの大荷物を俺が1人で担げることに疑問を感じるかもしれないが、ぶっちゃけ今担いでいる荷物の総量より『十戒の聖石剣(ホーリーブリング・ブレード・テン・コマンドメンツ)』や『十戒の魔石剣(ダークブリング・ソード・デカログス)』の通常形態である『鋼鉄の剣(アイゼンメテオール)』や『闇の鋼鉄剣(テネブラリス・アイゼンメテオール)』の方が重いから、問題なく担げる。

ん?色々と話が飛んでないかって?それは悪かったな。端的にでも良ければ、現在に至るまでの経緯を話すべきだった。

焼き鳥が帰った後、グレイフィアさんも俺達に一礼してから冥界へと帰って行ったんだ。そして、部長の指示で部活動が中止になり、オカ研メンバーは解散することになった。

で、翌朝の今日。部長が俺の家に現れ、山籠もりで修業するから準備しろと言い出し、現在に至る。

俺やアスナ、黒歌達が加入する前から眷属だった木場は事前に山籠もりのことを聞かされていたみたいで、俺達が部長に引き連れられて修業予定地の山道入り口に来た時には、既に集合場所で待機していた。

黒歌や白音、アーシアの様に俺と一緒の家に住んでいないアスナの所には、副部長が迎えに行ったみたいだ。いきなりの山籠もりに宿泊セットの用意や両親の説得に時間が掛かったのか、副部長とアスナは1時間程遅れてやって来たな。

そうそう。俺達の両親の説得も部長がやってくれた。まぁ、あれは説得というより催眠暗示だったんだが。元々、俺達の両親は放任主義な所もあったから、長期外泊を誤魔化す催眠暗示にも簡単に掛けることができたんだろうと、俺は推測している。

え?そんなことはどうでもいい?そんなことよりもお風呂でのラッキースケベイベントについて話せ?……一体何の話をしているんだ?

お風呂でのラッキースケベイベントなんて現実に発生する訳ないだろう。確かに、俺が入浴中に黒歌と白音が入って来ようとすることは多々あるが、そんなことを俺が許す訳ない。

俺が風呂に入る時は、常に脱衣所の出入り口に前世でプロのGSが使用していた様な自作の結界札を張る様にしていたからな。

俺限定で悪戯猫と化す兵藤家の猫又姉妹は、色んな手段を講じて結界札の結界を突破しようとするからな。そのお蔭で結界札作成のスキルが日々向上しているよ。

誰かが先に入っている場合も、俺は脱衣所に入る前にいつも両親に確認を取ることにしているからな。誰かが入浴中の所に俺が入るという様なこともまず起こらないんだ。

まぁ、そんな訳で期待に添えられなかった点も多々在ったかもしれないが、これが現在に至るまで大まかな流れだ。

で、俺が1人で8人分の荷物が括り付けられた背負子を担ぎ、修験者が利用する山道程とは言えないもののそれなりに急な坂を歩く中、俺以外のオカ研メンバーはその殆どが手ぶらで俺の数m先を歩いている。

客観的に見ると、「何の虐めだ」と言いたくなるだろう。いくら俺がオカ研メンバー唯一の男子とは言え、部員全員の2週間分の荷物をたった1人に持たせるなんて在り得ないからな。

いや、俺にとってオカ研メンバー全員の荷物を持つのは別に苦痛って訳でもないから、問題はないんだけどな。それに部員の全員が全員、手ぶらって訳じゃないし。

黒歌と白音、木場の3人は抱える様な形で大量の山菜やキノコを運んでいる。それが俺にとっての救いなんだが、いくつか突っ込みを入れたい点もあったりする。

まず、木場にどうして山菜や食用キノコの知識があるのかってことだ。もしかしたら、騎兵(ナイト)の眷属だから定期的に山籠もりで武器を使った修業とかしていて、その結果としてサバイバル能力を身に着けたのかもしれないけど。

山菜や食用キノコの選別といったサバイバル能力に関しての突っ込みとなると、黒歌と白音にも当て嵌まる。まぁ、この2人の場合は俺の家族になるまで放浪生活をしていたみたいだから、別におかしくはないんだけどな。

取り敢えず、真面目な突っ込み所は以上の2点だ。で、それ以外の突っ込み所が1点。これからそれについて簡潔に話す。

黒歌と白音、木場の3人は山菜と食用キノコを大量に抱えている。より正確に説明するなら、白音と木場は山菜を抱え、黒歌は食用キノコを抱えている。

ここまで話せば、大体の人は俺がどういったことに突っ込みを入れたいかが分かったと思う。そう。服越しとは言え、黒歌の胸の谷間に巨大な松茸とエリンギの中間みたいな食用キノコが挟まれているんだ。

明らかに運んでいる過程で自然とキノコが挟まったとは思えない。また抱き寄せる形でキノコを運んでいることから、胸のキノコが外れるということも無い。

正直、黒歌は態とキノコを胸に挟み、性的な意味で俺を挑発しているとしか思えないんだ。突っ込みなど入れた日には、そこからより一層俺に対して性的な挑発をしてくるのが目に見えている。だから、気付かない振りをし続けることにした。

というか、黒歌だけでなく白音や木場も、抱えている山菜を胸に埋もれさせているという、何とも扇情的な絵面で目のやり場に困る。

……はっ!?俺は何てことを考えているんだ!黒歌と白音にならほんの僅かな劣情を抱いてもおかしくはない。一応、告白までされた相手だし。アスナがハーレム入りを許している相手でもあるからな。

しかし、木場は拙い。彼女をそんな目で見るなんてセクハラとしか言いようがない!日本が某訴訟大国と同じなら、確実に訴えられている!!

くっ!もしかして、松田や元浜と腐れ縁でいた影響か?それとも悪魔になった影響か!?7つの大罪に色欲というのがあるが、悪魔になったことで色欲が強くなったのか!!?

と、兎に角!アスナに悟られる前に僅かであろうと抱いた劣情を退散させなければ、縦裂きの刑に処される!!

俺は黒歌達を少しでも視界から外す為、先行している部長達の所へと全力で駆け出し、部長達の近くにある木の幹に手を掛け、頭を何度も打ち付けた。


「煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散」
「ちょ、ちょっとイッセー!?」
「一体どうしたの、イッセー君!!?」
「あらあら、うふふ」
「イッセーさん、もう止めて下さい!頭から血が出てますよ!!」


ただひたすら木の幹に頭を打ち付ける俺を止めようとする部長とアスナ、アーシアの3人と微笑ましいものを見る様に笑う副部長。

って、アスナや部長達のことを気にしている暇があったら煩悩を退散させろ、俺!煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩――「煩悩ずぇんくぁ〜い!ちちしりふともも!!広がれ、俺のドリームワールドッ!!!」――退散、って何だ今の!!?

今、謎の電波を受信した気がするぞ!?俺は頭を打ち付け過ぎておかしくなったのか!!?……あれ、目の前の空間の一部が歪んで見える。もしかして、これが謎電波受信の原因か?


「……部長。何か、俺の目の前の空間の一部が歪んで見えるんですけど?あと、さっき謎の電波を受信したんですけど。これって、もしかして目の前の空間の歪みが異世界とかに繋がってたりするんですかね?」
「イッセー、気をしっかり持ちなさい!」
「空間が歪んでいる所なんてどこにもありませんわ、イッセー君」
「アーシア、『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』!『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』をイッセー君の頭に使って!!」
「は、はい!イッセーさん、頭から血が出過ぎたせいで幻覚が見えて、幻聴が聞こえるんです。すぐに治療しますから気をしっかり保って下さい!!」


俺は事実を語っているだけなのに、部長達は疎かアスナも信じてくれない。いや、分かるけどね。逆の立場なら俺も信じないよ。

でも、アスナや部長、アーシアだけでなく微笑ましそうに笑っていた副部長にまで心配されると、色々と悲しくなってくる。というか、今にも俺は泣きそうだよ。

取り敢えず、アーシアの『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』から放たれる癒しのオーラに頭の傷だけでなく、俺の心の傷を癒す様な温かさがあるのが唯一の救いか。そのお蔭でマジ泣きせずに済む。

というか、頭の傷が塞がりきった後に絶対気まずい空気が流れる気がするんだが、どうすればいいだろう?色んな意味で荒ぶってしまった心を静めながらそんなことを考えていると、落ち着いたことで俺はある違和感に気付いた。

そして、違和感の原因を確認する為、視界から外そうとしていた3人へと視線を向けた。そう。黒歌と白音、木場だ。

まずは黒歌。この場に居る全員に言えることだが、山登りには似つかわしくない駒王学園の制服を着ている以外はいつも通りだ。次に木場。黒歌と同じくいつもと変わらず、違和感などは一切ない。

黒歌と木場に違和感がないとなれば、違和感の原因が誰にあるのか明白だ。しかし、ちゃんとこの目で確認しない訳にもいかない。

という訳で、俺は白音に視線を向けた訳なんだが、視界に入った白音の姿に思わず驚愕してしまった。

着ている服は贔屓目に見ても中1サイズといった駒王学園の制服。これは既に見慣れているから驚く点ではない。驚く点はそれを着ている体がいつもと違っているということだ。

山登りを始めた当初は普段の姿だったのに、今の白音は何故かアーシアと同じくらいの身長へと変わっていて、胸も黒歌とほぼ同じ位か、少し小さい位の大きさへと変わっていたんだ。

ってか、身長に対して不相応と言える大きな胸で中1サイズの駒王の制服を着るとか、けしからんにも程がある!お兄ちゃんは白音をそんな子に育てた覚えはないですよ!!

ほら!胸の大きさに耐えられず、今にもブラウスのボタンが弾け飛びそうだよ!!全くもってけしからん!!!アーシアと同じ位の体型なら制服もギリギリ耐えられたかもしれないけど、今の白音の体型ではブラウスのライフがいつ0になってもおかしくないぞ。

全く、重要なことだから3回言うが小柄な割に胸が大きいとかけしからんにも程がある。……あっ。よくよく考えれば、部長や副部長も胸の大きさの割に身長が低い気がする。

そう考えれば、小柄で胸が大きくてもけしからんことは無いのか?というか、けしからんのはその体型で中1サイズの服を着ていることか?何はともあれ――


「白音が成長してる!!?」


俺はアーシアに治療されながら白音を指差し、自分でも受け入れがたい現実を気付いていないであろう他のオカ研メンバーに知らしめる為、声を大にしてその事実を口にした。

それを耳にした黒歌と白音以外のオカ研メンバーの反応は、「何を言っているの?」的なものだった。まぁ、当然と言えば当然の反応だ。俺でも他のオカ研メンバーが同じことを言ってきたら、「気でも触れたのか?」と思うだろう。

しかし、部長やアスナ達のその反応も白音へと視線を向けた瞬間、全員が凄いシンクロ率で目を見開く程の驚きへと変わった。


「「「「「………え?」」」」」


まぁ、その驚きの反応ってのも俺とは真逆で、全員が思考回路をフリーズさせてしまうものだったみたいだけど。思考回路のフリーズってのは色々と厄介だよね。再起動までの個人差があるだろうし。

そんなことを考えていると、フリーズ組で逸早く再起動したアスナが、正に閃光と言わんばかりの速さで俺の上着を掴んできた。


「イッセー君!今すぐ、この上着を脱いで!!」
「え?」
「だから、イッセー君の上着を貸してって言ってるの!今の白音ちゃんをいつまでもあんな恰好のままにして置けないでしょう!!」
「は、はい!」


鬼気迫ると言うのだろうか?取り敢えず、今のアスナの迫力は俺が前世で色々と世話になった美神さんが、切羽詰った時や危機的な状況に陥った時に周囲に振り撒いていた迫力を髣髴させる。

で、俺から上着を殆ど強制という様な形で取り上げたアスナはというと、正に目にも留まらぬ速さで白音の所へと向かい、俺の上着を白音に着せるとそのまま説教を始めた。

そして、アスナが白音の説教を始めてから数秒後には、続々と他のフリーズ組も再起動し、アスナの説教が終わると同時に白音は休む間もなく質問責めに合うこととなった。

言うまでもないと思うが、眷属内で白音の急激な変化に唯一驚いていなかった黒歌は、白音の変化の理由を全て知っていた様で、説教後の質問責めを可哀想と判断したのか、部長達の質問には黒歌が答えていた。

黒歌曰く、俺を含む眷属メンバーが見知っている童女体型の白音は仮初の姿で、年齢相応の今の姿が本来の姿であるとのことだ。

白音が常日頃から仮初の姿でいたことにも、黒歌の説明からちゃんとした意味があったことが判明した。

どうやら、白音は黒歌より仙術との相性が良いらしい。というか、相性が良過ぎて許容量を凌駕する気を取り込んでしまい、力に呑まれて暴走する危険性を孕んでいたそうだ。

力に呑まれ無い為にはどうすればいいか。簡単な方法としては、許容量を超えてしまう程に取り込んでしまった気を常時消費し続ければいいというのが思い浮かぶ。

そう。白音が童女体型で居続けた理由は、それが許容量を超えてしまった気を常時消費し続ける手段だったからなのだ。

仙術の高等な術式の1つに身体を若返らせるというのがあるそうだ。気の消費量が激しく、仙術の中でもあまり意味のない術らしいが、白音にとっては許容量を超えてしまった気を消費するのに丁度いい術だったそうだ。

ちなみにこの術の本来の使用用途は、直接戦闘ができない程に老いた者が一時的に肉体を最盛期にまで戻し、直接戦闘を可能とするものらしい。

ここまでの説明を聞くと、現状で白音が本来の姿になるのは拙いのではないか、という突っ込みを入れたくなるんだが、その点も問題ないそうだ。

黒歌曰く、俺やアスナ達が『SAO』から解放される半年前に、白音は気を取り込む量を完全に制御できる様になっているとのことだ。

そう説明されると、今度はどうして今も仮初の姿で居続けるのかという疑問が生じる。しかし、その疑問への答えも俺を含む殆どの眷属が納得するものだった。

白音曰く、小学校高学年から中学3年までの約3〜4年間、常時使用し続けていたことで術を維持することが習慣化してしまったそうだ。確かに、習慣化してしまったことを急に止めることはできないよな。

ちなみに兵藤家で白音の本来の姿を知らなかったのは、俺とアーシアの2人だけだったらしい。父さんと母さんには、俺が『SAO』に囚われている間に白音が自分から話していたそうだ。

では、どうして俺とアーシアには秘密にしていたのか。白音が語ったアーシアに秘密――というか話していなかった理由は至極真っ当なものだった。

白音はアーシアが兵藤家の養子となった時点で、本来の姿について話すつもりだったそうだ。しかし、アーシアの生活環境は兵藤家入りする前と後では大きく異なるという問題を抱えていた。

つまり、白音はアーシアが兵藤家や駒王学園での生活に慣れてから話すつもりだったらしい。だが、先日の焼きホトトギス襲来で部長の婚約騒動という新たな問題が浮上してしまい、話すタイミングを延期した方がいいという判断に至ったそうだ。

さて。アーシアの次は当然、俺に秘密にしていた理由が語られる訳なんだが、その理由はアーシアの時とは逆で、全く以って真っ当なものでは無かった。

白音――というか、俺とアーシアを除く兵藤ファミリーが白音のことを俺に秘密にしていたのは、俺が白音を娶った時にドッキリという形で明かすという、アホな計画を立てていたからだ。

アーシアに秘密にしていた理由とのあまりのギャップに、俺は思わず額に手を添えてしまったが、この行為は正直仕方のないことだと思う。

……正直、納得し難いが百歩――いや、千歩譲って俺に秘密にしていた理由を無理矢理にでも納得するとしよう。しかし、そうしたらそうしたで新たな疑問が発生する。

俺が白音と結婚するまで秘密にする予定だった、ぶっちゃけドッキリ計画のネタを何でこの場でバラしてしまったのかということだ。

だが、このことについて質問すると、俺にとって余り良くないことが起きる。そんな予感を俺はヒシヒシと感じていた。

という訳でネタバレの理由をスルーし、この場に居る全員に先を急ぐ様に告げる為、口を開こうとする。が、世の中というのは自分の思う通りに事が進まないものなのである。

俺が口を開くより先に、アーシアがネタバレの理由を白音に尋ねてしまったのだ。白音の本来の姿を知らなかった他の眷属だけでなく、黒歌も興味津々といった反応だ。

……いや、俺がネタバレについて疑問を感じた時点で、他の眷属メンバーも同じ疑問に辿り着いていてもおかしくないと内心では思っていたよ。

が、敢えて言わせてもらおう。ネタバレなんてどうでもいい。そんなことより修業の為に目的地にさっさと向かおう、と。

しかし、俺がどれだけ願おうとも、目と鼻の先まで迫っている未来を変えることなど不可能であり、白音の口からはネタバレの理由が語られた。

そして、その内容がまた、今まで築き上げた俺の人物像を一気に崩壊させるものであると同時に、不名誉極まりないイメージを主に部長と副部長、木場に植え付けるという、俺にとって最悪なものだったのだ。
まず、ネタバレの理由に関してだが、これは俺が黒歌を家族としてでなく、1人の女として意識してしまったことが起因となったらしい。

ほら、黒歌の胸にキノコが挟まっていて、俺が目のやり場に困っていただろう?それを白音は俺が黒歌を女として意識していると判断した訳だ。

で、自分も同じ様に見て欲しいという思いから、独断で急遽計画を変更し、童女体型から元の姿に戻ったそうだ。

俺は白音のそういった思惑に気付かず――というか、再確認するまで違和感こそあったものの、白音が成長していることにすら気付けていなかった訳だが、白音の狙い通り、黒歌以外の姿にも目のやり場に困った訳だ。

さて、ここまでの説明だけでも俺は世間一般でいう所のムッツリスケベという、不名誉極まりないレッテルを張られてもおかしくはないと思う。

家族のあられもない姿を見て、目のやり場に困るなんて普通は在り得ないからな。例えば、自分の母親が風呂上りにシャツとパンツだけで家の中を歩き回っていても、目のやり場に困るなんてことは起こり得ないだろ?

俺の場合、黒歌と白音が血の繋がらない家族であり、異性としての好意を向けられているということも目のやり場に困った原因の1つなのかもしれないが。

それでも黒歌と白音が俺に好意を向けているという事実を知らない人から見れば、俺は義理の兄弟姉妹とはいえ、家族を異性として意識するムッツリ変態スケベにしか見えないだろう。

が、部長と副部長、木場に植え付けられた俺の不名誉極まりないイメージとは、ムッツリ変態スケベとは若干異なるものだったりする。

いや、ムッツリ変態スケベがムッツリスケベにランクダウンしているだけで、不名誉極まりないことには変わりないんだけどな。

どういった経緯で知ったのか全く分からないのだが、アスナだけでなく黒歌と白音も俺に好意を寄せているという事実は、オカ研メンバー全員が知る所となっていた。

それだけでなく、アスナがハーレムを容認しているということも知られていた。俺の知らない所でオカ研女子の間で女子トークというものが交わされていたのだろうか?

まぁ、それはさて置き。黒歌と白音が俺に好意を寄せている件と、アスナがハーレムを容認している件が知られていたことで変態のレッテルを張られることは回避できた訳だ。

というか正確には、黒歌と白音を異性として意識してしまったことが、部長と副部長、木場に俺=ムッツリスケベというイメージを植え付けた原因という訳でもなかったりする。

俺=ムッツリスケベのイメージの原因。それは俺が黒歌と白音だけでなく、木場にまで例え一瞬であろうと異性として意識する視線を送ってしまったことであり、またそのことについて白音が語ってしまったことにある。

そう。白音は俺が自分と姉の黒歌だけでなく、木場にも目のやり場に困っていたということに気付いていたんだ。で、グレモリー眷属全員にネタバレの理由を説明する際に、そのことも言ってしまったんだ。

結果、俺はムッツリスケベのレッテルを張られ、木場から少しばかり距離を取られることになった。ってか、木場がアスナの後ろに隠れる形で俺の視界に入らない様にしようとする行動が、精神的ダメージを俺に与える。

部長と副部長は、普段から俺に対して歳不相応な反応が多いと思っていたのか、女子に対して歳相応の反応をしたことに微笑ましいと言わんばかりの反応をしていた。

アーシアは黒歌と真・白音、木場の胸に視線を向け、自分の胸を確認すると酷く落ち込むという反応をしている。言って置くがアーシアよ。別に俺は胸の大きな女子が好きという訳じゃないからな。

黒歌は俺に異性として意識して貰えたことが嬉しかったのか、いつの間にか猫耳と尻尾を出していて、上機嫌に尻尾を振りながらアーシアのフォローをしている。一瞬であろうと俺が木場を異性として意識したことに関しては、完全にスルーの様だ。

…………えっと、最後はアスナだ。アスナは以前から、俺に好意を寄せている親しい者には幸せになって欲しい。だから、ハーレムを許容すると言っていた。

だからなのか、俺が黒歌と白音を異性として意識したことに対して怒るどころか、ニコニコと笑顔を浮かべている。しかし、今回に関しては木場のことも絡んでいるので、その笑顔を俺はとても怖く感じてしまう。

というか、木場が後ろに隠れているからなのだろうが、アスナは俺から一定距離を置いた状態で笑顔を浮かべている。それが俺の恐怖を助長させている。

もう、アスナの笑顔が黒歌と白音を祝福してのものなのか、それとも俺への怒りから来るものなのか判別不能だ。

俺がそんなことを考えていると、只でさえ笑顔のアスナが今まで見たことの無い様な笑顔を浮かべながら口を開いた。


「イッセー君。合宿先――グレモリー家の別荘らしいんだけど、そこに着いたらすぐに着替えて修行するんだって。知ってた?」
「え?あ、うん」
「それじゃあ、最初に私の修行の相手になってくれるかな?最近、『SLO』のソードスキルを再現する鍛錬をしてるんだ。イッセー君は私の攻撃を回避するだけでいいから。無手で」
「………え?アスナさん、流石に無手は――」
「無手でお願いね」
「アスナs―――」
「お願いね」
「…………はい」


\(゜o゜)/オワタ。アスナさんは非常に怒っておられた様だ。そして、合宿初日から俺は地獄を見ることが確定した。


「イッセー君、そんな今から死地に向かう様な顔しなくても大丈夫だよ。修業相手になって貰う時間は1時間だけにするつもりだから」


無手で1時間、マシンガンの様な連続突きとかを回避し続けることに絶望しない者がいるのだろうか?そんな奴がいるなら俺は是非とも紹介して欲しい。

そんなことを思いながら、精神的なもので重くなった足取りで俺はオカ研メンバーの皆と共に目的地へと歩を進めるのだった。






あとがき


読者の皆さん、お久しぶりです。沙羅双樹です。

3ヶ月という時をお待たせして申し訳ありませんでした。しかも、長い時を待たせた癖に本格的な合宿編に突入していない体たらく。

言い訳になるんですが、1月から2月に掛けてはリアルで色々と忙しかった上、スランプに陥ってしまったんです。

実は専門学校を受験することになって、受験したはいいんですが最初は合格するとは思ってなかったんですよね。

そう!合格するとは思ってなかったんです!!だから、入学金とかの用意もしてなかったんです。なのに、予想に反して合格。正に寝耳に水でした。

そして、入学金や授業料のお金を用意していなかった私は、親戚中を回ってお金を急遽集めました。

ここまで話せば、皆さんは私が今年の4月から専門学校生になると思うでしょう。ところがどっこい、この話には続きがあるんです。

なんとか入学金と授業料を確保できた私に、同じ系統の専門学校で卒業までに掛かる費用が10万円以上安い所があるという話が舞い込んできたんです。しかも、卒業後の就職斡旋先の数や卒業生への支援制度も圧倒的にいい所です。

この時、私は確保したお金をまだ納金してなかったこともあり、折角合格した専門学校の合格を取り消しました。

いや、だってお金を掛けるならやっぱり条件のいい所に行きたいじゃないですか?ということで、新たに入学を希望する専門学校を受験する為に勉強を開始した訳です。

そして、今月の頭に受験した訳なんですが、見事に不合格でした。まぁ、3月の時点で残り合格枠が3〜5人分位しかないと言われてた上、受験者数が20人を超えていたので、この結果は必然だったのかもしれませんが……。

取り敢えず、勉強で時間を取られたり、親戚に借金したことによる精神的な負荷でスランプに陥ってた訳です。

次の受験は今年の10月以降なので、時間的にもお金の確保的にも余裕があるので、4月以降の更新は大分マシだと思います。
(余り期待され過ぎても困りますが……(笑))

そんな訳で、これからも応援を宜しくお願いします。それではここから3ヶ月ぶりのコメント返信に移ります。


2014年01月01日14:32:33 匿名希望様のコメントに対する返答

コメント返信が遅れて本当に申し訳ありませんでした!!orz
そして、本当に匿名希望様の言う通りだと思います。新しい慣用句ができそうです。
何かのSSで読んだ設定だと思うんですが、不死って意外と弱点多いんですよね。
いや、SSの設定じゃなかったかな?3×3ア●ズだったかもしれません。
真空の空間に放り出されたら結界などを張れない身の場合、死亡と復活をエンドレスで繰り返すという正に生き地獄なんですよね。
その辺りのことを原作の焼き鳥は理解をしていなかったと思います。


2014年01月01日17:37:33 N様のコメントに対する返答

コメント返信が遅れて本当に申し訳ありませんでした!!orz
え〜、匿名希望様への返信にも書きましたが、不死っていうのは何気に弱点が多いですよね。完全に酸素を焼失させた空間に放り込んだら生き地獄です。
あと、聖闘士●矢に登場する牡羊座の黄金聖闘士の技『クリスタル・ウォール』も拙いですね。箱の様な形で四方と上下を囲まれたら、自分の放った攻撃が乱反射し続け、エンドレスの苦痛を味わい続けることになる気がします。
というか考えれば考える程、攻略方法が生まれる気がします。不死って意外と大したことが無いのかもしれません。


2014年03月19日15:09:02 にコメントされた方に対する返答

更新が遅れて申し訳ありませんでした。
一向に更新していなかったので、読み直されたりしていたんですよね?
取り敢えず、来月からは月1更新を心掛けるので、それでお許しください。
(確約はできないのですが……)


以上、WEB拍手コメントに対する返信になります。それでは皆さん、次話もお楽しみに。そして、これからも頑張っていきたいと思いますので、応援して下さい。



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