黒と水色

第15話 「調査結果」









命の使い魔が知らせた、戻ってこいとの報せ。
無論、4人はすぐさま、学園都市行きの列車へと飛び乗った。

「うぅ、またしても、お流れだよ…」

その車内。

2度ならず、3度までも王都観光を中止にされたセリス。
指をつついていじけている。

「うぅ、ユナさんのバカ。何も、このタイミングで言ってこなくてもいいのに〜」
「あのねセリス。ユナはあなたのために調べてくれてるのよ?
 その言い草はあんまりだと思うわよ」

やれやれとため息をついて、エルリスは言っても無駄だと思いつつ、
妹をなだめていた。

「それに、私たちに帰ってこいということは、何か発見があったってことよ。
 上手い解決策が見つかったのかもしれない。それなら、早いほうがいいでしょ?」
「うぅ、それはわかってるけどぉ〜」
「王都観光なんて、またいつでも出来るんだから」
「うぅ、今したい〜」
「まったく…」

駄々っ子である。
こうなってしまうと、手に負えない。

「まさしく、2度あることは3度ある、の状況ですね」
「まあ、運が悪いというか、良いというか」

苦笑の御門兄妹。

本当に解決策が見つかったのなら、運が良かったということになるんだろうが。
いかんせん、ユナに会ってみないことにはわからない。

「まあ、あれだ。エルリスにセリス」
「え?」
「なに?」
「どういうことになるのかわからないけど、覚悟をしておいたほうがいい」
「…うん」
「…わかったよ」

勇磨の言いたいことは大体わかった。
こくりと頷く水色姉妹。

問題を解決するためなら。
暴走の可能性をゼロに出来るのなら、どんなことでもする。

例え火の中、水の中。






列車は学園都市へと到着。
下車した一行は、すぐさまユナの工房へと向かう。

「また、あの恐ろしい迷宮を抜けねばならんのか…」

構内を歩いている途中。
げんなりと勇磨が言った。

「酷い目に遭ったからな、前回は…」

蘇る、恐ろしい、忌々しい記憶。
出来れば今すぐ、記憶から消去したい。

「あ、あはは…」
「げ、元気出して勇磨さん」
「ありがとよ…」
「あはは…」

水色姉妹は勇磨を励ますものの、皮肉たっぷりに返されて、苦しげに笑うしかない。
特にセリスは、勇磨が災難に遭った直接の原因を作ってしまったので、笑みも引き攣る。

「はいはい。ほら、着きますよ」

環もため息をひとつついて、ユナの工房前へと到着。
すると

「待ってたわ」

なんと、ご本人様じきじきの出迎えである。
彼女は、長い炎髪を風に揺らしながら、工房の入口前に立っていた。

「あ、わたしたちが来たってこと、よくわかったね?」
「まあね」

どうやらユナは、もちろん、連絡をしてからずっと外で待っていたというわけではなく。
彼らの到着に合わせて、外に出てきたという風情である。

セリスがこう尋ねると、当然とばかりに頷き。

「逆算して、そろそろかなと思ってね」
「わー、さすが」
「あなたに褒められてもね」

そう言いつつも、少し得意げなユナ。

勇磨らと接触した、ユナの使い魔であるあの真っ赤な鳥は、手紙を渡すと一声鳴いて、
そのまま飛び去っていった。
往復分の時間も計算に入れ、今日のこの時間にあたりに戻ってくると、そう予想したのだろう。

「そ、それよりユナ! 何かわかったの!?」

待ちきれない。早く聞きたい。
そんな様子で、エルリスは声を張り上げる。

「暴走の回避策――!」
「待った」
「………」

あなたこそが暴走している。
そう言いたげな目で、ユナはエルリスを制した。

「こんな場所で、そんな話はまずいわ。
 奥まった場所だけど、誰も来ないとは限らないのよ」
「あ…」

慌てて口を塞ぐエルリス。
周囲も見渡してみたが、幸い、自分たち以外の気配は無かった。

「こっちにいらっしゃい。話は中でするから」
「う、うん」

ユナの後に付いて、工房へと入る。
と…

「あ、あれ?」
「いきなりお部屋の前だよー」

水色姉妹は驚きの声を上げた。

そこは、前回に通ったような迷宮ではなく、迷宮を抜けたところにあった部屋の扉が、
目の前に、ごく自然に存在していたのだ。

「何を驚いてるのか想像はつくけど、この工房は私のテリトリー。
 あれはあくまで侵入者撃退用のトラップなんだから、私の意志で自由自在よ」
「へえ…」
「ふわ〜、やっぱりすごいなあユナさん」
「…入って」

セリスの純粋な物言いに、さしものユナも照れたのか。
ぶっきらぼうにそう言って、扉を開けて中へと入っていってしまった。

修行の最中も、何度もため息をつかされていたことからわかるように。
ユナにとって、セリスは、天敵なのかもしれない。

「環。お茶」
「招き入れて早々、開口一番がそれですか…」

先に部屋に入ったユナは、どっかとソファーに腰を下ろし。
後から入ってきた環に向かってそう言った。

「呼びつけたのはそちらのくせに」
「誰の頼みで、エルリスとセリスに修行をつけて、面倒くさい調べものまでしたと思ってる?」
「はいはい、わかりましたよ。紅茶でいいですね?」
「よろしく」

頼みごとをした手前、強く出られない環。
やはりため息をついて頷くと、勝手知るったるキッチンへと入っていった。






人数分のお茶を淹れて、面々に配り、自らも席について。

「ではユナさん。お話を」

環はそう切り出した。

「わかった。でもその前に、課題をやってきたのかどうか、聞きたいわね」

ユナは環が淹れたお茶を一口飲んでから、こう返答。
視線を水色姉妹に向ける。

「で、どう?」
「もちろん」
「やってきたよー!」

答える側の水色姉妹は、自信たっぷりに、笑顔でライセンス証を机上に差し出した。
それを手にとって、確認するユナ。

ランクB、との記載に、ピクッと眉が動く。

「Bランク?」
「ええ。本当はね、約束通りCランクのはずだったんだけど」

事のあらましを話して聞かせる。
本当に、ひょんなことで思わぬ昇級をしてしまったものだ。

「なるほど」

ユナは頷いた。

「下がるのはアレだけど、上になる分にはいいわよね?」
「まあね。正直予想外だけど、あのカンダタ団を潰したくらいなんだから、腕前のほうは言うこと無しか。
 でも随分と太っ腹じゃないハンター協会。
 私のときは、SランクのときもSSランク認定のときも、散々大揉めしたくせに」

悔しそうに言う彼女。
どうやら過去に、ハンター協会との間で何かがあったらしい。

「それは、貴女の武勇伝が知れ渡っていたからじゃないですかね」

そっぽを向いて、口笛でも吹きそうな勢いで言う環。

「ここに在籍していたときや、フリーで活動していたときの、逸話の数々が」
「…何が言いたいの、環」
「いいえー。思えば貴女も、随分とご出世されたものだなあ、と」
「……まあいいわ」

ここでこんな話をしても、百害あって一利なし。
ユナはそう判断して、この話題を切り上げる。

気を取り直して、本題へと入ろう。

「さて、エルリスにセリス。魔力の暴走を防ぐ手立てだけど」
「う、うん」
「……」

ごくりと息を飲む。
が…

「結論から先に言うと、無いわ」

「「…へっ?」」

あまりの言葉に、それはもう驚いた。

「無い…?」
「ええ。暴走を完全に防ぐ方法なんてあるわけない。
 一応、調べてはみたけど、調べた限りでは、サッパリ」
「……」

固まる水色姉妹。
それだけの衝撃だった。

「もっとも、私が前に言った方法でいいというんなら、面倒見てあげないこともないけど?」
「………」

まだ、直前に言われたことのショックが抜け切れていないが。
納得できない、との意志をみなぎらせた目を、ユナに向けた。

「…そうね」

すると、ユナは何を思ったか、ひとつふたつと頷いて。

「調べたとはいっても、あくまで、私が持ってる資料を漁ってみただけに過ぎない。
 時間も短かったし、資料の数も絶対的に少ないわ。
 学園の図書館に行ってもみたけど、どれもどんぐりの背比べ状態だったわね」
「……」

話には続きがあった、という解釈でいいのだろうか。
水色姉妹は表情を引き締めたまま、ユナの話を聞いた。

「でも………他に、方法を記している資料があったとしたら……どう?」
「あるのっ!?」
「さあ、なんとも言えないわ」
「ユナ!」
「ユナさん!」
「別に、ふざけているわけじゃないわよ」

ついに絞れを切らし、エルリスセリスは食って掛かるが。
ユナも、そのままの態度を続けた。

「そんなものがあるかどうかなんて、誰にもわからないだけ。
 少なくとも私は、見たことも聞いたことも無いわ」
「……」

「…だけど、そんなふうに言うってことは、可能性、無いわけじゃないんだろ?」
「何かお考えがあるようにお見受けしますが」

水色姉妹には言葉も無いが。
一方の御門兄妹からは、こんな発言が飛び出した。

「まあね」

にやりと微笑むユナ。
彼女の話を、最後まで聞いてみようではないか。

「調べられる範囲では調べた。でも、まだ、調べられる場所は存在しているわ。
 可能性も、決して高いわけじゃないけど、望みはある」
「どこです?」
「”封印図書館”よ」

「封印図書館…?」

首を傾げ聞き返す水色姉妹。
封印された図書館とは、なにやら物騒ではないか。

「この学園の図書館の、地下3階からさらに下。通常、強力な結界が施されていて、
 一般の学生や職員は愚か、私や学園長でさえ絶対に立ち入れない場所。
 それが通称、”封印図書館”と呼ばれている領域よ」

結界とは、穏やかでない。
そうまでして、人を立ち入らせられない理由があるというのか。

「一説によると、封印図書館には、この世に出すことの出来ない強力な禁呪や魔法具、
 言葉にすることすら恐ろしい魔術の数々が記された禁書の類が、ごまんと眠っているそうよ。
 もっとも、”封印”されているから、今では誰も、その全容を知るものはいないというけど」

つまり、”噂”でしかないわけだ。
本当に禁書などがあるのかどうか、知る者は誰もいない。

「その封じられた書物の中に、魔力暴走に関して、なんらかの情報があるかもしれない」
「……」

恐ろしく、可能性の小さな話ではあるが。
このままでも何も解決しないのだ。

ゼロとコンマの後に、さらにゼロが何個も続くような、ごく小さな可能性でも、
今の水色姉妹にとってみれば、賭けてみる価値はある。

「…あるいは」
「!」

ユナは、さらに続けて言った。

「”賢者の石”を利用してみる、という手もアリかもね」
「賢者の石…」

魔術に疎いものでも、その名くらいは聞いたことがあるのではなかろうか。
膨大な量のエネルギーを持ち、なんでも望みが叶う、などとも囁かれる伝説の秘宝。

「賢者の石の力に願えば、セリスの膨大な魔力も、完全に制御が可能になるかもしれない」
「……」
「とはいえ、賢者の石自体、その存在が疑われているし、もちろん、在り処や作り方は誰も知らない。
 でも、封印図書館のどこかに、情報が眠っている可能性があることも確かね」
「……」

水色姉妹が震撼している、その傍らで。

(……環)
(はい…)

御門兄妹が、とある単語に反応していたことに、気付いた者はいなかった。

「封印図書館……賢者の石……」

しばしの沈黙ののち、呆然と、出てきた単語を反芻するエルリス。

「そこへ行けば、暴走を無くす方法が見つかるかもしれないのね?」
「可能性はあるわ。限りなく低いけど、決してゼロじゃない」

素っ気なく答えるユナ。
カップを口に運んでひとくち飲んでから、再び口を開く。

「少なくとも、このまま座して待っているよりは、よっぽどいいんじゃない?」
「………」
「どうする?」
「行くわっ!」

訊かれたエルリスは、即座に頷いていた。
そして、セリスの手を取る。

「お姉ちゃん…?」
「もうすぐ、私たちの願いが叶うから。がんばりましょ!」
「うん!」

「…盛り上がっているところを悪いんだけどね」

何回か見せられた、麗しい姉妹愛な光景。
やってられないとでも言いたげに、ユナはふぅっとため息をつき。

「お手軽に行き来できる場所じゃないのよ」
「へ?」

衝撃的なことを口にする。

「言ったでしょ? 封印図書館の入口には強力な結界が施してあって、
 私だろうと学園長だろうと、突破することは不可能だって」
「ユナでも…?」
「無理。何度か試したけど、ビクともしなかったわ」

「試したこと、あるんだ…」
「よく、捕まったりしませんでしたね…」

なんと、体験に基づく話だった。
御門兄妹が呆れている。

「昔の話よ」

意に介さず、一言で片付けるユナ。
これも、彼女の”武勇伝”のひとつなのだろうか。

「じゃ、じゃあ、どうやって中に…」
「何か方法は無いの? ユナさん教えて!」

「無いことも無いわ」
「本当っ!?」

封印図書館とやらに潜入する方法。
聞いている限りでは絶望的とも思えたが、ユナの返答は意外なものだった。

飛びつく水色姉妹。

「私が調べた限りでは、結界を破れるかどうかは、エルフが鍵を握っている」
「エルフが?」
「ど、どういうこと?」

エルフといえば、あのエルフのことだと思う。
結界を破ることと、どう関連するのだろう。

「古い文献に、こんな記述があったの。信憑性には乏しいけれど、
 『エルフが持ちし幻の秘宝、光の壁をたやすく打ち破らん』ってね」
「それって…」
「おそらく。この光の壁っていうのは、結界の類じゃないかと私は思った。
 となると、エルフが持っているらしい、このなんらかの道具なり魔法なりを使えば、
 封印図書館を守る結界も、打ち破れるんじゃないかってことよ」

なるほど。
詳しいことはわからないが、エルフの協力を仰げれば、可能性はあるわけだ。

「問題は、この記述が正しいのかということ。
 そして、正しかったとしても、そんな物騒な代物を貸してくれるか、ということよ。
 そもそも、エルフ自体と接触するのが、知っての通り難しいわ」

本当に、文献の記述通りに、結界を簡単に破れるものだとしたら。
…世界は大混乱だろう。

どんなに強力な結界も意味を成さないはずだし、もし悪いものを封印している結界を
無闇に破壊されでもしたら、それこそ大問題になる。

それ以前に、エルフと接触したくても、当のエルフが人里に現れることは滅多に無いのだ。

「その点なら、大丈夫!」

しかし幸いなことに、重要なエルフとの接点が、彼女たちにはあった。
自信たっぷりに言ってのけるエルリス。

「心当たりがあるわ。最低でも、話くらいは出来ると思う」
「どんな心当たりなのか、大いに気になるところだけど、まあいいわ。
 第一の問題は解決できたとして、第二の問題ね」
「ま、まだあったの?」
「ある意味、こっちのほうが重大かもしれないわね」

ユナはそう言って、ニヤリと微笑を浮かべた。

「封印図書館には立ち入りが禁止されている。
 結界があるから有名無実化しているようなものだけど、これが何を意味するか、わかるわね?」
「あ…」
「捕まるかも……しれない?」
「イエス、よ。
 何があるかわかったものじゃないし、もちろん多大な危険も予想されるけれども。
 もっとも恐ろしいのは、潜入したことが学園側にバレて、捕縛令が出されることでしょうね」
「……」

そのことが恐ろしいのは、水色姉妹が1番よくわかっているに違いない。
何をされるかわからないのだ。

封印図書館に潜って、魔力の暴走を止める方法がわかったとしても、
そのあとで捕まってしまっては、せっかくの努力が水泡と帰してしまう。

水色姉妹の望みは、何の心配も無い、のどかで平穏な暮らしなのだから。

「あわよくば逃げられたとしても、一生、逃亡生活を強いられる羽目になるかもよ」
「……」
「その覚悟が、あなたたちにはある? それでも、行く?」
「……」

ユナから問われた水色姉妹は、しばし沈黙して。
顔を合わせて数十秒。

「覚悟ならあるわ。もちろん行く」
「うん」

2人揃って、肯定の返事を返した。

「どのみち、暴走の危険を無くさなければ、私たちに平穏は訪れないんだもの。
 今でもある意味では、逃亡生活を送っているようなものだしね」
「みんなを巻き込んじゃうのがイヤだけど……
 わたしたちだけで行ってくれば、ユナさんや勇磨さんたちに危害が及ぶことは無いよね?
 …いたあっ!?」

エルリスに続いて、セリスがそう言った直後。
そのセリスから悲鳴が上がった。

「なにするんだよ〜!?」

叩かれた頭を抑えながら、叩いた本人へ、恨めしそうな目を向ける。

「何を言っているんですか」
「そうだそうだ」

セリスを叩いた犯人は、御門兄妹である。

「この期に及んで、俺たちに待ってろとでも言うつもりか?」
「だ、だって、危ないし、捕まっちゃうかもしれないんだよ!?」
「そこまで迷惑はかけられないわ」
「そこのバカ弟子1号2号」
「な、バカ…?」

気を遣って言ったのに。彼らのためを思って言ったのに。
返ってきたのはゲンコツと、ありがたーいお言葉。

当然、憤る。

「どういう意味よ!」
「そのまんまだ、そのまんま。ここで頷いたら、俺たちが君たちを見捨てた、みたいに思われるじゃないか」
「そんなつもりじゃ…」
「あなたがどう思おうと、残される身にしてみれば、同じことですよ」

勇磨に続いて、環も、ジト目を向けながら言う。

「ここまで行動を共にしてきた私たちに、そんなことを言うおつりですか?」
「公に出来ない秘密すら共有した仲だ。あんまりじゃないか?」
「………」

水色姉妹には言葉も無い。
驚きももちろんだが、その上を行く感情。

「それに、曲がりなりにも、あなたたちは兄さんと私が取った弟子。
 まだまだ未熟な弟子を放っておけますか」
「環…」
「環さん…」

環は、途中でふっと表情を緩めた。
真意に気がついて、水色姉妹も心を打たれる。

「ま、そういうことで、一緒に行ってあげるよ。何より興味があるしな、何があるのか」
「私たちも修行中の身ですから、何か発見があるかもしれませんし。
 なに、安心なさい。もし手配でもされたら、別の場所にでも行きますよ。
 捕まってやる気なんか無いですし、なんなら故郷に帰ってもいいですしね」

「勇磨君……環……」
「ありがと……ありがとーっ……!」

感極まって、思わず涙ぐむエルリスとセリス。
本気で言ってくれているであろうことがわかって、余計にうれしかった。

…そう。
間違いなく、御門兄妹にしてみても、本気の言葉・・・・・

「決まったみたいね」
「あ、うん…」

ユナがそう言うと、水色姉妹は目元を拭って。

「ユナもありがとう。修行をつけてもらった上に、貴重な情報まで教えてくれて」
「まあ、等価交換だから。それで? エルフとの話はどれぐらいで纏まりそう?」
「え? 1度、王都に戻らないといけないから、それなりにかかるとは思うけど…?」

調べて教えてくれたことに対し、礼を述べたのだが。
なんだか雰囲気が怪しいことに気付く。

「そう。じゃ、急いで行って、なるべく早く話をつけて戻ってきて。
 私も準備があるから、そういう意味では助かるけど」
「え…。ちょ、ちょっと待って…」

何が原因だったのか、今のユナの言動で察しがついた。
わからないほうがおかしい。

「も、もしかしてユナさん。ユナさんも一緒に来るの…?」
「当たり前でしょ」
「………」

尋ねたセリスのほうが固まってしまうくらいの、呆気ない一言。

「封印図書館よ。おもしろそうじゃない」
「そ、そう…」
「それに、私に失敗の文字は似合わないじゃない?
 今度こそ、封印図書館内部に入ってやるわ」

そんな単純な理由で。
水色姉妹は呆れるが、客観的に見て、ユナがいてくれるということは、とてつもないメリットがある。

戦力的に見てもそうであるし、何より、魔術的な知識が自分たちには欠けている。
ユナがいてくれれば、たいていのことはなんとかなるだろう。

「そういう意味では、あなたたちに感謝しなくちゃね。
 封印図書館に入るチャンスを与えてくれた、って意味では」
「あはは…」
「それじゃ早速、準備に取り掛かるわよ。
 潜入のための準備をしないと。探索に何日かかるかわからないから、水や食糧も私が整えておくわ。
 その代わり、エルフとの交渉は任せたわよ」

「う、うん…」

俄然、やる気のユナ。
彼女がこれほど活動的なところを見せるのは、彼女の義兄に関わること以外では、初めてかもしれない。

昔、結界を破れずに中へと入れなかったことが、そんなに悔しいのだろうか?

兎にも角にも、明確な道筋が見えた。
その道の先に待っているのは、はたして、光か、闇か――






第16話へ続く




以下、Web拍手返信です。
拍手していただいている皆様、本当にありがとうございます!



>ふぅ・・・勇磨サーガを読了しました。(ハンターも)続きを楽しみにしています。

畏れ入ります、お疲れ様でした。
ハンターのほうもなんとかしたいところですね。





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