第九話
『対立・・・なんで仲良くできんかな・・・』

薄暗いワームホールの中、二つの人影が駆け抜ける。
「全く・・・あれほど離れるなと言ったのに。」
片方の影が溜め息とともに言った。声の調子からして、初老の男のようだ。
「あの娘は血の気が多いですから・・・ごめんなさいね。」
もう一人の人物から謝罪の言葉がでる。こちらは若い女性の声。影だけでも分かる長い髪。

「・・・ともあれ、早めに見つけねばならんな。ここにシティのガードが入ったとの連絡があった。
まだアレの存在を知られるわけにはいかん。」
そういうと、男は速度を上げる。
「・・・そうですわね・・・。」
その声には、悲しみが混ざっていた。




目覚めたティラノモンに、四人は苦戦を強いられるも、これを撃破。
赤い巨体が粒子へ変わる。
「んなっ!?」
妙な声を出しながらマユミが仰け反る。
「?」
怪訝な顔をするアキラ達。その粒子が少年達の体に吸い込まれるのを見ると、奇声を上げた少女の顔が驚きの色に染められる。
「い、今のなに!?っていうかそんな体に悪そうな気色悪い変なのを体に入れて大丈夫なの!?」
マユミが三人を震えながら指をさし、言った。

「何・・・って、これがオレ達を強くするって言われたけど。」
まぁ確かに色が悪いけど、と苦笑しながらアキラ。
「強く・・・初めて聞いた・・・見るのも初めてだけど。」
「はっ、お前、もしかしてビーストと戦うの初めてなんじゃないのか?」
呆然とするマユミに、ベルトランが鼻で笑いながら言う。その言葉にリンリンシャオが顔をしかめた。
「もう、なんでそう喧嘩腰なの?悪いクセだよ?」
リンリンシャオがたしなめる。少年は舌打ちをするとそっぼを向いた。
だが、喧嘩を売られたであろう少女は、その言外の意味に気づいて無いのか、
それとも無視したのか、気にする風もなくアキラに近づくと顔を近づけた。

「な、なに?」
鼻と鼻がくっつくかと思うほど近づかれ、アキラは少し腰が引けた。
少女はじっと、アキラの顔を見る。まるで観察しているようだ。もう一人の少女はなんとなく面白くなさそうにその様子を見ていた。
「・・・うん、やっぱり良いかも。」
マユミがぼそっとつぶやく。それはあまりにも小さかったのでアキラの耳にすら届かなかった。
アキラが首を傾げると、マユミは顔を離し、手を横に振った。
「うぅん、なんでもないわ。話の続きをしよっか。」

少女は三人を見回すと口を開いた。
「そうね・・・何から話そうかな。え〜っと・・・結論から言うと〜・・・」
この少女のソウルチェンジ・・・それは明らかに自分達のものとは異色だ。いうなれば、デジモンと融合したかのような・・・。
「あれは、『完全なソウルチェンジ』・・・かな?」
ふっくらとした唇が開かれ、出てきた言葉に三人は困惑した。

「完全な・・・?」
リンリンシャオが思わず反復する。
「そ。完全な。あ、でも、あんたたちのソウルチェンジが不完全というわけでも無いんだけど・・・」
またもや混乱した。それが完全で、こちらも完全といえる・・・ワケが分からない。
「・・・もう少し分かりやすく言え。」
不機嫌な声でベルトランが言った。どうやら先ほど天道虫といわれたことを根に持っているらしい。

「え〜っと・・・う〜んと・・・」
少女は頭を抱える。しばらく唸っているといきなり顔を上げた。
「説明できない。お姉ちゃんにしてもらう。」
マユミが疲れた顔で言った。説明文を考えるのに相当頭を使ったようだ。・・・結果は出てないが。
「お姉ちゃんも多分、このワームホール内にいると思うから、先に進めば合流できるわ。その時に聞いてちょうだい。」

「・・・ふん、結局お前、自分の事なのに分からないんだな。」
いまだ不機嫌な少年が吐き捨てるように言う。
「ベルトラン!」
そして先ほどと同じように少女に咎められた。

「じゃあ、一緒に行こうか。」
そんな二人を横目にアキラが少女の方を向く。
「もちろん、そうさせてもらうつもりよ。」
またもマユミはベルトランの雑言に耳を貸さず、アキラを見た。その目はまるで、ショーケースの商品を値踏みするかのようだ。
だが、それも一瞬で少女はにこりと笑う。アキラは乾いた笑みを返すことしかできなかった。

「・・・お前、ついてくるつもりか。」
ベルトランがマユミに突っかかる。少女は不機嫌な少年を一瞥すると、アキラのときとは打って変わって淡々とした声でいった。
「えぇ。悪い?」
アキラは思う。どうやらマユミとベルトランの相性は最悪だ、と。そして視界の端に見えるリンリンシャオが二人を見比べてオロオロしている。
「あぁ悪いね。何者なのかも分からない・・・ましてや、自らのことを把握しきれていない奴なんて、信用できん。
 チームワークが乱れる。」
アキラは思う。今までチームワークを、まともに発揮できた時があっただろうか?と。リンリンシャオが俯いている。
「確かに自分のことを全て分かっているわけじゃないけど、それはあんたも同じでしょ?
 それともなに?あんたは自分の五臓六腑全てのことが分かるってわけ?それはすごいわねー。」
アキラは思う。確かに自らを悟っている人間はいないと思うが、内蔵とかの話ではないんじゃ・・・と。リンリンシャオの体が震えだした。
「屁理屈を・・・」
「それに、足手まといにはならないわよ、あんたよりは強いもの。」
アキラは思う。前途多難だな、と。そしてたぶんそろそろ少女の怒りが爆発するかもしれない、と。

「・・・俺よりも強いだと?はっ、なんならやってみるか?」
ベルトランが少女を睨みながら前へ出た。
「ふふ、弱い犬ほどよく吠えるっていうわよねー。いいわ、相手になってあげる。」
少女も一歩前に出る。その体から青く淡い陽炎が立ちのぼる。
そこで、ぷつん、という音がした。
「・・・いい加減に・・・しなさぁぁぁぁぁぁぁい!!!!!」
鼓膜が破れるような空気の振動、頭を貫通するような衝撃、全身にあたる風圧、壁がピキピキとひびが入っていく。

思わずアキラ達は耳を押さえ、うずくまってしまった。
「う、うるさいぞ!」
ベルトランが抗議の目で見上げる。瞬間、息が詰まった。
涙目でリンリンシャオを見るアキラとマユミ。あまりの恐ろしさに身の毛がよだつ。
目に映った少女は、普段のおとなしそうでありながら活発で、頭の二つのお団子ヘアーが愛らしい小さな可愛い女の子だが、
今目の前にいる少女は全く違う、異質ともいえる姿だった。
その目はまるで電球のように光り、二つのお団子から垂れる二房の髪は天井へ伸びきり、背後からは紫色のどす黒いオーラが噴出されていた。

三人は思う。恐ろしい、と。




薄暗い通路を歩く人影が四つ。
アキラ達だ。その様子はまるで魂をとられたかの如く、疲れ切った表情をしていた。
その先頭を歩くリンリンシャオは、頬を膨らませている。その姿だけ見れば愛らしいが、他の三人を鬱患者のようにした張本人である。
怒りのボルテージが最高潮に達した・・・ようはブチ切れたリンリンシャオは、三人にたっぷりとお説教。
何故か何もしていないアキラまで、止めないことに対する不甲斐なさを挙げられターゲットにされたのである。

三人は誓う。もうリンリンシャオは怒らせないでおこう、と。










っていうか言い訳?な後書き。
はい!超ミラクルスーパーデラックスオメガマキシマムお久しぶりです!!
いや〜・・・やっと書き上げましたよ、第九話。
これはあれですね、けじめの問題に発展しますよね、ここまで長いこと更新してないと。
・・・まぁ、あれです。いろいろですよ、いろいろ。えぇ、いろいろです。申し訳ありません。
さて、自然に謝ったところで・・・実は何も考えずに本能の赴くまま執筆中のわたくし。
冷たい視線でもいいので、見守ってください。見捨てないで。

ぇ〜・・・DEGISOUL第九話、如何でしたでしょうか(遅
何気に話が進んでないなぁと思いつつ、今回もほとんど話が進まずに終わりました。あぁ!瓶コーラなんて懐かしいもの投げつけないで!
あれです、伏線ばかり張って本当に回収できるのかどうか不安になりつつある酒呑 童でした。
では!第十話で!

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