キラとシャルは1年ブロック決勝、アスランとラウラとの戦いに備えていた。

キラはキーボードを高速で叩きながら画面を見つめる。

正直、その雰囲気はプレッシャーを放っていてシャルは内心怯えていた。

怯えながらシャルは何とかキラに語りかける。

「キラ……あの、休憩しない? もう30分以上作業してるよ? 決勝まで後1時間もあるよ?」

その言葉にキラは画面に顔を向けたままシャルに言う。

「シャルだけ休憩に入ってもいいよ。それに、後1時間“しか”無いんだから」

キラはアスランの強さも部隊運用の上手さも心得ている。

正直、数パーセントだろがラウラの運用も在り得るだろう。

その事を見越して此方もシャルとの連携を取りつつアスランと戦わなければならない。

だが、確率的にはキラ対アスランの構図は揺るがないものだろう。

正直、ラウラではキラの相手は無理だ。

そのまた逆のシャルではアスランの相手は無理。

なら必然にキラ対アスランの構図が成り立つ。

しかし、相手はアスラン奇抜な策を弄する可能性も捨てきれない。

コレはタッグマッチ、ツーマンセルの戦いだ。

此方も考えて戦術を組む必要もある。

アスランに集中している最中に横槍を入れられては堪らない。

アスラン相手だと集中力を切らせて戦える相手ではないのだ。

そう思いながらキラはシャルに顔を向け今回の決勝についての作戦を話した。

「今回、多分、アスランの戦術は僕との対決に持ち込みラウラが牽制の為にシャルに当たると思う。正直、アスラン相手だと護衛も難しい。いけるね?」

その言葉にシャルは任せてと言わんばかりに親指を立てながらウインクをする。

「任せて! ラウラは僕が何とかする。だからキラは存分にアスランと戦ってきてよ」

その言葉にキラは頭を下げて礼を言う。

「有難う。シャルロット……」

「気にしないで。優勝したらご褒美にキラにキスしてもらうから」

そう言い残しシャルは休憩に入った。







アスランとラウラは機体調整を行っているが、正直、空気が重い。

その原因はやはりアスランだった。

余りの張り詰めた空気にラウラが堪りかねてアスランに語りかけた。

「アスラン、今回の作戦だが……いいのか? 私のバックアップ無しで?」

その言葉にキーボードを叩きながらアスランは静かに答える。

「ああ、今回の相手はキラだ。正直、キラにラウラの砲撃が当たる確立は限りなくゼロに近い。それなら、シャルルを相手してくれた方が効率が良いからな」

その言葉にラウラは内心憤慨する。

何せ自分の嫁に戦力外通告されたからだ。

明らかにジャマだから離れてろと言われた様なものだ。

彼女のドイツ軍特殊部隊隊長としての矜持はいたく傷ついた。

しかし、冷静な軍人としての判断ならアスランの言葉は限りなく正しい。

無駄な損害を出さずに任務を完遂するならラウラもアスランと同じ判断をしただろう。

それ故にラウラは喉元まで出かかった反論の言葉を何とか腹の中まで押し戻した。

「解った。アスラン達の邪魔はさせん。好きなだけヤルがいい」

その言葉にアスランはラウラに礼を言う。

「有難う、ラウラ」

その言葉にラウラは当然と答える。

「気にするな。嫁の我が侭を聞けないほど器量は狭くない。優勝したら結婚式だ」

その言葉に苦笑しながらアスランは修正する。

「ソレを言うなら婿だろ? いい加減直せよそれ……後何で挙式?」





1年決勝の会場は正に熱気に包まれていた。

正に全学年の決勝戦と言ってもいい対戦カードに胸を躍らせているのだ。

来賓もその例外ではなくキラのペアーとアスランのペアーの戦いに熱い視線を送る。

その中にフランスのIS企業、デュノア社の人事部担当がデュノア社社長と電話で話していた。

「お送りした資料は以下の通りです。正直、シャルルのあのIS、化け物のスペックです。我が社が開発したラファールリヴァイヴとのスペック差は歴然かと……ソレよりも私が注目しているのはキラ・ヤマトの存在です」

その言葉にデュノア社長は資料を見ながらラファールリヴァイヴカスタムmkUの資料を見ながら部下に語りかけた。

『キラ・ヤマトが作り上げたストライカーパックシステムにパワーエクステンダー、それにISに使用可能な小型ビーム兵器……素晴らしいな……キラ・ヤマト……我が社に欲しい逸材だ』

その言葉に人事部担当の男はデュノア社長の言葉の意味を読み取りながら言う。

「キラ・ヤマトの調査とスカウトを行います」

担当の男の言葉に満足したのかデュノア社長は満足しながら言う。

『頼むぞ』

「お任せを」

そう言い、男は携帯の終話ボタンを押すのだった。







キラとシャルはカタパルトから飛び立ち、アリーナに下り立つ。

其処にはアスランとラウラが既にスタンバイしていた。

キラとアスランはお互い無言で正面に立つ。

その瞬間、会場は水を打った様な静けさが支配した。

余りの息苦しさに生唾を飲み込む会場。

キラとアスランは既に牽制の意味でプレッシャーを放っていた。

そのプレッシャーの余波でアリーナの客席を全て黙らせた。

そのプレッシャーを真近で感じているシャルとラウラは堪ったものではない。

2人は冷や汗を掻きながら開始を待った。

『キラ・ヤマト、シャルル・デュノアペアー対アスラン・ザラ、ラウラ・ボーデヴィッヒの対戦を始めます』

その瞬間、キラとアスランはビームライフルを構える。

それに遅れてシャルはビームアサルトライフル2挺を、ラウラはアハトアハトを構える。

『それでは開始してください』

その声と同時にキラとアスランはフルブーストで上空に舞い上がる。

イグニッションブーストと同じ速度で飛び上がる2人。

ISの常識では考えられない速度だ。コレで通常のフルブーストなのだから会場の観客、来賓はキラとアスランを見失う。

パートナーのシャルやラウラですら一瞬見失った。

しかし、その中で千冬だけが見失わないで目で追いかけていた。

(あり得ん速さだ。通常のフルブーストでイグニッションブースト並みの加速力だと? 2機のポテンシャルの半端無さもそうだが、ヤマトとザラのポテンシャルも出鱈目の域だな)

腕組をしながらその様子を見ていた千冬は真耶に命じた。

「山田先生、2人は速い。見失わない様に。因みに二人は上空30メートルの所だ」

その言葉に慌てて真耶はコンソールを操作し、上空のカメラに切り替えた。

其処には青い軌跡と赤い軌跡が緑色の光を放っていた。



キラとアスランはお互いビームライフルで牽制しながら相手の後方や死角を取る為にクルクル回りながらビームライフルを撃ち合う。

アスランはビームライフルを左手に持ち替え、ビームサーベルを引き抜きソレを連結させる。アンビデクストラスハルバードモードしフルブーストでキラに迫るアスラン。

キラは右のクスィフィアス3レール砲を後方に移動させビームライフルを右腰に装着し、右手で左腰のビームサーベルを引き抜くとフルブーストでアスランの攻勢を迎え撃つ。

アスランは左から右へビームサーベルを振るい、キラは下から上へ振るう。

高速で擦れ違った瞬間、激しくスパークする現象が発生する。

2人は高速旋回をし、また切り結ぶ。

お互いのビームサーベルが激しくぶつかり鍔迫り合いを開始した。

お互い鍔迫り合いをしながらクルクル回る。

コレには理由がある。

ビームサーベルはミラージュコロイドの応用でビームの刃を形成している。
その為、C.E.のビームサーベル同士がぶつかると双方の磁場が干渉し合って刃が維持できなくなる。
しかし、干渉が途切れると即座に刃が形成される。それ故に刃を干渉させたまま、斬りつけるのに有利なポジションの取り合いの為、お互い距離を取ったり、クルクル回りながら有利なポジション取りをしている。
それ故に、ビームサーベルで斬り結んでる時の機動は独特だ。『相手が振ったビームサーベルの延長線上から常に機体を外す』コレが基本的な動きとなる。
結果として『ビームサーベルで鍔迫り合いしたままクルクル回転してる』ように見えるわけだが、実際は超高速で動く戦闘で相手の斬りつけるラインを読み違えたり、ビームサーベルの相互干渉を意図せぬポジションで外されたらソレだけで命取りになる。ビームサーベルでの戦闘は実際は超高度な心理戦の様相を呈してくる。

しかし、ユニウス条約以降、ミラージュコロイド技術の兵器転用が禁止された為、連合、ザフト、オーブは新技術のビームサーベルを開発した。
その為、メサイア戦役では往々にしてビームサーベル同士の鍔迫り合いが頻繁に見かける様になった。

キラやアスランがこう言ったクルクル回る戦術を取るのは旧世代のビームサーベルの運用方が複雑な円を描きながらの戦いになる為、相手の間合いを崩したり、予期せぬ攻撃を仕掛ける事が出来る為、こうした旧世代ビームサーベルの戦い方を行っている。

キラとアスランはソレを理論的に行うがシンの場合は直感と勢いでソレを行っている。

キラとアスランはお互い距離を取り、ビームライフルの牽制に入る。

キラはビームライフルを撃ちながらアスランの隙を窺う。

アスランはソレを回避しながらビームライフルを撃ち帰し、何とか距離を詰めようとする。

アスランの射撃を無駄なく回避しながら射撃するキラ。

アスランはソレをかわし、ハイパーフォルティスをキラに叩き込む。

回避困難と考えたキラは左腕を突き出し、ビームシールドを展開、ソレを無力化する。

お返しとばかりにキラはカリドゥスを発射する。

赤いプラズマビームがアスランに襲い掛かるがアスランはビームシールドを展開し無力化する。

開始からこの間、20秒。





ソレを見ていた一夏達は唖然とする

「キラが腕から出したのって……ビーム……だよな?」

一夏の言葉に箒もまた唖然と一夏に言う。

「それを言うならアスランのあのシールドもビームが出てたぞ……」

そう、一夏達はキラ達がビームシールドを使うところを見たことが無かった。

「あいつ等、アレでリミッター付き? 化け物じゃない」

鈴の掛け値無しの言葉にセシリアも頷く。

「ええ、全く勝てる気がいたしませんわ……」





キラとアスランは上空で静止したまま睨み合う。

不意にキラがアスランに語りかけてきた。

「もう、肩慣らしはいい、アスラン?」

その質問にアスランは頷きながら答える。

「ああ、ここからは遊び抜きの本気で行かせてもらう!」

その時だった、会場の天井に張られたシールドが破壊される。

緑色のビームがキラとアスランを襲うが、2人は難なく回避する。

ソレが地上に落下し地面が爆ぜる。

「「!?」」

地上で戦っていたシャルとラウラは驚きの声を上げる。

「何!?」

「何だ!?」

会場もざわつく。

その瞬間、ユックリと2つの“何か”が下りて来た。

ソレを見た瞬間、会場からどよめきが起こる。

「アレって……」

白い四肢。

「間違いないよ!!」

1つは右手のビーム兵器と背中の2つの筒状の兵器。

2つは右手にライフルと左手に盾、背に4つの赤い筒。

「あれは!?」

1つは緑色のツインアイに赤い“Vアンテナ”

2つ目は緑色のツインアイに黄色の“Vアンテナ”
赤い“口”

不意に会場とキラ達の言葉が重なる。


『ガンダム!?』


“高い天を行く者”、“ギリシャ神話の神の名”を持つガンダムと“勇敢なる者”“Xを持つ王道からそれた者”の名を持つガンダムが天より舞い降りたのだった。




あとがき
さて、キラペアーVSアスランペアーの戦闘です。
まあ、メインがキラとアスランですけど



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