キラとアスランは千冬に連れられ、学園内の研究室に案内される。

研究室ではキラとアスランが完膚無きまでに破壊したザクとハイペリオンとXアストレイの解析が進められていた。

千冬はソレをガラス越しに眺めながらキラとアスランに問いかけた。

「さて、2人を呼び出したのは他でもない。あの、一つ目緑色のISと“ガンダム”についてだ」

その言葉に先ずキラが答えた。

「緑色のシールドが片方しか無い機体はZGMF−1000、ザクウォーリア、次に角が付いてて両肩にシールドが付いているのがZGMF−1001、ザクファントムです。ザフトのニューミレニアムシーリーズに分類される量産機です」

その言葉に千冬が質問する。

「ZGMFとは?」

その質問にアスランが答える。

「Zero Gravity Maneuver Fighter、無重力下用機動戦闘機の略です。このシリーズは第二次ヤキンドゥーエ戦役終結後にザフトが開発した量産機です」

その言葉に千冬は頷きながら問う。

「つまり、キラが属していた軍の機体か?」

その問いかけにキラは頷く。

「ええ、今はZGMF−3000、“ゲルググブラスト”がロールアウトして旧式化してますが」

「解った、次はあの“ガンダム”2機について質問する」

千冬の質問にアスランが先に答える。

「俺が交戦した機体はCAT1−X1/3ハイペリオンガンダムです。此方がその資料です」

そう言いながらアスランはSDカードを千冬に差し出す。

ソレを受け取った千冬は端末に差込み、データを見る。

「とんでもない機体だな……核エンジンによる無制限のシールドエネルギーの補給が可能、光波防御帯シールド、アルミューレリュミエール……展開されたら最後、此方の攻撃は受け付けない、向こうの攻撃は素通りとは……最強の盾だな」

その言葉にアスランは否定する。

「アルミューレリュミエールにはちゃんと対策があります。アンチビームコーチングされた物なら簡単に素通りされるんですよ。それに、出力以上のビームを受ければ維持できなくなって抜かれます」

ソレを聞いた瞬間、千冬は呆れる。

「まるで、コロンブスの卵だな……」

その言葉にキラが言う。

「まあ、最新兵器がイニシアティブを握っていられる期間は短い物ですよ。幾らでも穴を見つけて対策をされるものです」

そう言いながらキラも千冬にSDカードを差し出す。

「因みに、僕が戦ったのはYMF−X000A、ドレッドノートガンダム、または、Xアストレイとも言われる機体です」

千冬はそのデータを見ながらこれまた驚きの声を上げる。

「装甲がPS装甲に核エンジン、更に有線式ドラグーン……今更ながら思うが、ガンダムは特殊な装備が多いな……」

その言葉にキラが考えながら答える。

「元々、地球連合が開発した最初のガンダムシリーズの“G”が試作機の色合いが強いですからね……特殊な装甲や小型ビーム兵器、特殊兵装が満載されていましたよ。今でこそ僕達の世界では当たり前になってますけど、当時はMSに搭載可能な小型ビーム兵器は革命でしたから」

その言葉に千冬は渋い顔をする。

「そもそも此方では気象条件に左右されず、過酷な戦場で乱暴に使っても壊れない小型荷電粒子砲や収束プラズマ砲があること自体革命なのだが?」

そう言われキラとアスランは苦笑いするしかなかった。

「最後の質問だ。ガンダムを相手に勝てる生徒はいるか?」

その質問にキラとアスランは考え込む。

最初に結論に至ったのはアスランだ。

「一概には言えませんが……第二世代型なら先ず勝つには卓越した部隊間での連携と兵数ですね……ガンダム1機に最低1個中隊規模30から40機は必要でしょう。専用機なら小隊規模、3から4機での対応で戦えるでしょうが……やはり、パイロットの腕しだいでしょう」

そしてキラも付け足す。

「更に言えば、兵装にはアンチビームコーティングされた質量兵装かビーム等の熱量兵装が必要でしょうか……」

その回答に満足したのか千冬は頷きながら命令する。

「解った、話はコレで終わりだ。後、この事は決して外部に漏らすな。マスコミには特にな。一応、全世界のマスコミにはお引取り頂いたが何時何処で情報が漏れるとも限らない」

その言葉にキラとアスランは居住まいを正す。

この2人とて軍の重職についていたのだ。情報の重さを知らない訳が無い。

2人はつい軍にいた頃の癖で敬礼しながら答える。

「「ハッ!! 了解しました!!」」

その敬礼に千冬は苦笑しながら注意する。

「オイオイ、気をつけろよ? それをマスコミの前でやらかすとあらぬ疑いを持たれる。ソレと私は教師だ。軍人であった頃もあったが今は教師。ソレを間違うなよ?」

その言葉にキラはしまったという顔をして、アスランは苦い顔をして答えた。

「すみません」

「申し訳ありません……」

こうして、キラとアスランの事情聴取は終了した。






翌日、教団に立つシャルを見てキラ以外は全員唖然とする。

真耶も何と言ったらよいのやら解らないと言った風に何とか言葉を紡いでいく。

「……えっと……今日は皆さんに……転校生を紹介します……」

その言葉と共にスカートを穿いたシャルが壇上へと歩み寄る。

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めて宜しくお願いします」

シャルの紹介が終わり、真耶は何とか紹介をする。

正直、教室は微妙な空気だ。

「えっと……デュノア君は……デュノアさんと言うことでした……」

誰かが何処からともなく口にした。

「は!?」

「デュノア君って、女の子だったの?」

「美少年じゃなくて美少女だったのね……」

兎に角、教室は騒がしくなる。

アスランはキラの様子を観察し、呟く。

「キラ……お前、知っていたな? シャルが女である事を……」

その喧騒の中、アスランの呟きがクラス全員の耳に届いた。

その言葉に観念したのか、キラが言う。

「うん……まあ、ね」

その言葉に更に騒がしくなる教室。

その喧騒を眺めながらキラは苦笑いを、アスランはヤレヤレと頭を横に振りながらこの成り行きを見守るのだった。




とある研究室で男女数人がモニターを見つめていた。

「フム……ISの“疑似コア”の生成とAIの運用はこんなものか……」

そういいながらくすんだ金髪の男は鼻で笑った。

「所詮は“機械”、本物の“殺し合い”とは程遠いな……」

黒髪の男の鼻で笑った。

その様子を見ていた金髪の女が彼らに問いかける。

「結局、撃破されたわね。あれで完成と呼べるの?」

その言葉は何処か皮肉めいた物をその内側に潜ませていた。
しかし、男達は意に返さずこう言った。

「まあ、所詮は機械だ。定められた物事しか出来ない」

そういいながら黒髪の男は椅子から立ち上がると部屋から出て行った。

金髪の男は金髪の女とお茶を飲みながら語る。
それは雑務的な語らいではなく古い友との語らいに似た雰囲気だった。

「あれから10年か……お互い年を取る訳だ」

金髪の男がコーヒーカップを慣れた手つきで持ち上げながらそう漏らした。
その言葉に金髪の女は何処か非難めいた口調で男にこう言った。

「やめてよね。私達これでも25よ? 世間一般では若い方だわ」

その言葉に男は苦笑した。
その姿は年相応の穏やかさを醸し出していた。

「それは失礼した。“スコール”……」

「まったくよ、“ラウ”」

そういいながらもスコールと呼ばれた女性はラウと呼ばれた男に問いかける。

「それに、“ラフト”もね……」

「ラフトも私と同じだよ。あの黒髪の男は私と同じさ……ただ“出来る”。それだけの理由で生み出された“ある男”の写し絵なのだから……だが、あの男と私との違いがあるとするならあの男は“自分”という存在の確立という所に重きを置いているところだろうか……」

その言葉にスコールは皮肉めいて言う。

「“貴方達の世界”は人の命の重さが随分と軽いのね……」

「それが人だよ……命が重いと叫びながら命を弄ぶ。しかし、全てのものは生まれ、やがて死んでゆく。ただそれだけの事だ」

その言葉にスコールが問う。

「だから何を望もうが、願おうが、無意味だと?」

その言葉にラウは何処か皮肉めいて言うその姿は自分を再認識するかの姿だった。

「いやいや、そうではない。ただそれが我らの愛しきこの世界、そして人という生き物だということさ。どれだけ、どう生きようとも、誰もが知っていることだが忘れていること。だが私だけは忘れない。決してそれを忘れない。こんな私の生に価値があるとしたら、知ったときから片時も、それを忘れたことが無いということだけだろうがね」

ラウはそう言いながら遠くを見つめた。

この部屋とは違う何処か、スコールでは計り知れない常世の世界の何処かを。

「迷路の中を行くようなものさ。道は常に幾つも前にあり、我らは選び、ただ辿る。君たちはその先に願ったものがあると信じて。そして私は、やはり無いのだと、また知るために、そうして私は生きてきた。あの時、“彼”に倒され、人の子として腹から生れ落ちたその時にも私は覚えていた。そして……父親だったモノと母親だったモノが死したその時にも、君とこうしている時にも」

ラウはそう言いながらコーヒーで喉を潤すとさらに続けた。

「だからこそ私は知りたいのだよ。この世に輪廻転生というモノがあるのなら私は何の為にこの世界に生れ落ちて、そして、何の為にこの世界に生きるのかを……」

そのラウの言葉にスコールは黙って聞き入っていた。

ラウらしい独白だと思いながら彼女は彼と出会った時の事を思い出した。

あれは10年も前、彼等が15の時だった。

ある主催者のパーティーで彼と知り合った。

女尊男卑が明確になりつつある状況で彼だけは他の男達とは違った。
そう、実力に裏打ちされた自信を漲らせながら他の全てを圧倒していた。

そんな男に彼女は興味を引かれた。

そして、ISを駆る私を“ガンダム”で打倒した。

恐ろしかった。

それが彼女の第二印象だった。

圧倒的な強さを持つこの男を彼女は恐れると同時に知りたくなった。

そういった馴れ初めから彼らは共にパートナーとして自分が所属する組織の実動部隊として数々のミッションをクリアしてきた。

これまでも、そして、これからも。




あとがき
とうとう登場あのお方


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