※注意事項
 この話は本編との関わりは、それ程ありません。本編でやりたかったネタが出来なかったので、番外編として作成しました。時系列や人物関係など、本編を考慮していません。
また今後、もしかしたら作製事情で、これを本編に組み込むこともあるかもしれませんが、ご了承ください。

番外編『観艦式』


 西暦2226年8月8日――この日、天の川銀河辺境宙域では、周辺諸国を対象とした一大イベントが催されようとしていた。それは、宇宙艦隊によって行われる観艦式だ。
それも単なる観艦式ではない。地球連邦 防衛軍宇宙艦隊を始めとして、地球連邦との結びつきのある星間国家の艦隊も参加するというもの。
地球艦隊の他に艦を並べるのは、アマール艦隊、エトス艦隊、フリーデ艦隊、ベルデル艦隊、さらにはガルマン・ガミラス艦隊と時空管理局から次元艦隊も参加した。
全部で7ヶ国(内ひとつは国ではないが)の艦隊が、太陽系の地球へ一か所に集まるのだ。参加艦艇数においては、実に70隻あまりにも昇っていた。
  天の川銀河の平和と安定、そして、周辺諸国との連携を強める意味で、この観艦式が催される事となっていた。
開催内容は、まず地球の中心都市の1つである東京メトロポリスの軍港から出航する事となっている。そこから地球の各主要都市で低空飛行を行いながら観閲を受ける予定だ。
一巡すると宇宙空間へ飛び出し、月基地まで移動して観艦式は終了となる。1日は余裕で使い切るスケジュールだが、これくらいが限界であるとの事だった。
  また、各国指導者も出席できる者は出席していた。その出席者は、長年に渡りアマール国を統治してきたイリヤ女王である。
他にもエトス国のブローネス首相、フリーデ国のリッケンバー大統領、フリーデ国のレンネマン国王らも出席。時空管理局からはリンディ・ハラオウン提督(中将)が代理出席。
ガルマン帝国の総統デスラーは大国の指導者ともあって、容易に本国を出る事が出来なかった。だが儀礼として代理の者が派遣されていた。
中には艦隊は派遣しないまでも、代表団だけ来ると言う他の国家も幾つかおり、それらだけでも8か国にも昇っていたのである。

「壮観な眺めだね」
「ほんまやね、フェイトちゃん。これだけの国が参加するっちゅうのは、ウチらの世界じゃ滅多に……いや、絶対にお目に掛けられへんな。なぁ?」
「ほんとですぅ」
「う、うん……」

  東京メトロポリスの一大軍港にある観閲艦隊専用のガンルームでは、八神 はやてと副官リィンフォースU、フェイト・T・ハラオウン、高町 なのはが待機していた。
はやてはこの年26歳、一佐に昇進し海上警備司令に就任している。その補佐を務めるリィンフォースUは准尉へと昇進を果たしている。
方やフェイトはこの年26歳、三佐に昇進しつつ執務官を継続している。なのはも今年で26歳、相も変わらず教官職を継続し、人材育成に精を出していた。
6年前と比べて、誰しもが美貌だと評するような、より女性らしい風貌へと成長を果たしていた。その彼女らは軍港に鎮座する艦艇群を眺めやり、驚きが止まない彼女らだった。
  他にも彼女らの知り合いや後輩が幾名か来ており、メカ好きで知られるマリエル・アテンザ、その弟子に当たるシャリオ・フィニーノの2人は進んで着いて来ていた。
が、その2人は待合室ではなく軍港の方へと直行しており、メカニック好きな性格ゆえに間近で見れる軍艦勢に心躍らせていたのである。
そのお目付け役、というわけではないが、既に同士(友人)とまで呼べる仲になっていたアレリウス・レーグ中佐が、共に着いていた。

「凄いわ、これがガルマン帝国の大型戦艦ね。こんな500m近い巨大な戦艦が、何百隻……何千隻と就役しているのね!」
「見てください、この変わった形状の砲塔を! 幾つも穴が開いてます!」
(凄いな、このお二人も……感心するよ)

到底、女性らしい会話ではない。かといって軽蔑するわけでもなく、レーグは同じ技術者として熱中ぶりを羨ましく見ていた。
ガルマン艦の特徴であるマウントボール式砲塔は、ガトランティスからの技術が流れて来たものである。射程と威力がやや欠けるが、速射性にもっとも長けている武装だ。
因みに通常兵装で射程と威力が高いのは、バレル式砲塔や固定式砲塔である。

「さぁ、次はあの大型空母を見に行きましょう!」
「待ってください、アテンザ技師」

好きなもの見ると夢中になるのは、どの世界も変わらないものだと実感するレーグであった。
  はやて達は、開放的な窓ガラスから眺められる艦隊の光景に見とれていたが、待合室の奥、各国の将官クラスしか入れない貴賓室もまた、違う意味で壮観な眺めと言えるだろう。
時空管理局の人間である2人の他には、アマール国やエトス国等などの軍人達もおり、違う顔ぶれが一度に集まった様子こそ、壮観であった。
特に地球連邦やガルマンガミラス、それと旧大ウルップ星間連合諸国はあの災厄、2重銀河の衝突以前は全く別の世界を歩いてきたのだ。
早速各国の将官の中では相手の目的を知ろうと会話の名を借りた腹の探り合いを始めている。
  一方、観艦式開始まで後1時間と迫っており、先の軍港では観客用に設けられた席が人で埋め尽くされている。直接目で見たいという者が多いのだ。
また、こうした観艦式を見越して、観光船企業は船を特別に手配した。会場での観艦式閲覧を望む顧客を上手く引き込もうというのだろう。
メディアも多数が押し掛け、観艦式での開式や飛び立つであろう艦隊の撮影を、今か今かと待ち受けている様子だった。
その艦隊を改めて眺めて見る。今はここに70隻程度しか集まっていないが、もしも連合を組むとなれば、天の川銀河で最強の布陣が完成するだろう。

「ぶっちゃけ難しい話やろうけど、この銀河で味方同士が手を組めば、1000隻なんて軽いもんや。いや、下手したら1万いくかも知らんわ」
「数的には、ね。実戦にならないと分からないけど、実戦が来ない方が、余程いいと思うよ?」
「なのはの言うとおり。戦争は無い方が一番いい。ただ、起きてしまったら覚悟は決めないとね」
「勿論、ウチだって戦争は無い方がええと思ってるよ」

お互いにハニカミながら会話する様子からして、以前と比べれば迷いのないものだ。SUSとの死線を潜り抜けた後、とある残酷な事件に遭遇した事が原因かもしれない。
その事件に関しては後に詳しく語る事になるかもしれない。一先ず、彼女らは数度の過酷な事件を通して、精神的にも大きく成長したと言っても過言ではないだろう。
  3人のエース達の会話を余所に、この地球世界へ初めて足を運びいれた局員の面々が居た。16歳の若い男性に、16歳程の若い女性2人である。
初めて見る艦艇群に対して、驚きの感想を漏らしたのは、茶色の短髪をした16歳の男性――その名をトーマ・アヴェニールだった。

「わぁ……これが、八神司令達の地球と違う、別の地球なのか」

局員入りする前には色々と世界を旅してまわった経験があるが、それは魔法文明に関連する世界においてのみだった。故に、これ程科学力の発展した世界は初めてだったのだ。
その隣で珍しい物を見るような、驚きの表情をしているのは、亜麻色のロングヘアーに見た目16歳のおっとりした女性――リリィ・シュトロゼックである。

「凄い数の船の数です……」
「本当だよ。これだけ様々な世界の艦隊が集まれるなんて、地球って凄い存在なんだね」

続いて感心したような、呆れたような感想を漏らしたのは、マリンブルーの髪をツインテールで纏めた16歳の活発的な印象を放つ女性――アイシス・イーグレットだ。
  3人それぞれが様々な感想を漏らしていた所で、エースら3名と彼ら3人の後ろから声が掛けられる。その声は、はやてら3人には聞き覚えのあるものだ。
振り返った先には、金髪のロングヘアーに見た目30代半ばの女性と、黒髪のロングヘアーを首の後ろで束ねただけの風貌をした、同じく30代半ばに見える女性。
どちらも地球防衛軍の士官・将官の黒いジャケットに、白いスラックス、スカーフを着用しており、特徴の一つである鍔付軍帽を被っていた。
ただし微妙に違うのは、前者のジャケットは襟元が赤い、つまりは艦隊指揮官クラスである。後者は緑色の襟元、それは艦艇指揮官であることを示していた。
 誰であるか、真っ先に気が付いたのははやてである。

「真愛美さん! それに……」
「こんにちわ、はやてさん。それになのはさん、フェイトさんも、しばらくぶりね」
「「雪さん!?」」

同時に声を上げるフェイトとなのは。古代 雪はこの年43歳、少将にまで昇進を果たした後、現在は第9艦隊分艦隊司令 兼任 戦艦〈ネレイド〉艦長を務めている。
もう一人の目方 真愛美はこの年36歳、大佐に昇進を果たすと同時に雪の副官――〈ネレイド〉副艦長を務める事となった。どちらも実齢より5〜10歳は若く見えた。
そんな2人と、はやてら3人は女性同士という事も有り何かと話す事もあった。慌てて敬礼するはやて達3人に対して、返礼する雪と目方。
  一方のトーマ、リリィ、アイシスの3人は、初めて会う人だった。取りあえず先輩達にならって敬礼してみる。はやては、そんな後輩達に雪と目方を紹介した。

「ええか、この方が古代 雪少将や。そんで、こちらが目方 真愛美大佐。私も良く世話になった大先輩やから、よく挨拶しておくんやで」
「先輩は言い過ぎよ、はやてさん。私が目方 真愛美よ。よろしくね」
「古代 雪です。よろしくね、えぇと……」

まだ名乗っていなかった事に気づいたトーマ達も、慌てて自分の氏名を名乗った。後の2人もそれに続く。

「と、トーマ・アヴェニールであります!」
「リリィ・シュトロゼックと言います!」
「アイシス・イーグレットです!」

新しく見る若い3人組に、優しく微笑む雪と目方は敬礼を返した。トーマ達は、軍人と言うと堅苦しいイメージが付きまとうものだった。
それを今少し改める必要がある、と内心で思った。それにしも、あのリンディ・ハラオウンにも負けず劣らずの容貌である、とも彼らは感じ取った。
  挨拶もそこそこにしたところで、はやては気になる事を聞いた。

「そうえいば、雪さん、古代提督と美雪ちゃんはお元気にしてますか? 真愛美さんもご家族は……」
「えぇ、相も変わらず元気そのものよ。進さんは今、観艦式の事前準備でいないわ。美雪は佐渡先生の病院で、正式に獣医の資格を取って働いているわ」
「私の方も、似たようなもの。父は年齢に合わず怖いくらい元気よ。姉夫婦もいたって平和だし、夫も元気に働いているわ」

因みに真愛美も既婚者である。相手は幼馴染で、4年程前にようやく結婚を果たした。真愛美が軍人故に中々時間を作れないのは痛いが、相手もそれは理解している模様。
また、はやては別の話を振る。実は今回の観艦式は単なる催しではなく、別のサプライズも含まれているというものだ。
最プライズの内容は詳しくは知らされていないが、地球防衛軍の新たなる最新鋭艦が就役し、そのお披露目も含まれていると言う話だ。

「私や目方大佐は目にしたことが無いの。ただ、今回の最新鋭艦は他国の技術支援があったと言う話よ。それも、貴方方管理局も例外ではないとかね」
「珍しいですね。防衛軍が他国の技術支援を受け入れるというのは……。あ、けど最近になって、地球企業と提携しているとかと言うニュースがあったね」
「そうだね。私もそれは耳にしてるよ。最初は本当か疑問だったけど」

  フェイトが不思議に思って口にするが、最近のニュースでそれに類する話があったのを思い出した。なのはも、それに続いて記憶を探り出し、合致させた。
だがフェイトの言うように、防衛軍の技術力は天の川銀河で随一であり、ガルマン帝国に拮抗するレベルにまで来ている。
偏見ではないが、他の彼女らも防衛軍が他国の支援を受け入れるとは、予想外の事であった。とはいえ、それ程大々的に支援を受け入れてきた訳ではない。
あくまで主流は地球であり、無理なく技術を取り入れたのだ。これの狙いは、他国技術を受け入れた戦闘艦を作る事により、地球は自分のみならず全生命のために戦うのだ、と言う意味づけを狙っての事でもあった。
  雪は時計を眺めやると、開始時間30分前を切っていた。もう移動しなければならない。そこで、はやて達にも伝えた。

「そろそろ時間ね。皆も移動した方がいいんじゃないの?」
「いえ、私らはここで十分です。見やすい良い場所ですから」
「そう、では、また会いましょう。真愛美さん、行きましょう」
「はい。貴方達とは、また今度、ゆっくり話したいわね」

そう言うと、雪と真愛美の2人は待合室を退室していった。また、なのはとフェイトも観艦式のパフォーマンスで参加する事になっている。
そのため、彼女らも待合室を離れ、乗艦へと戻って行った。残された側は、景色の方へと視線を変え、間もなく開式となる観艦式を待ち続けるのであった。





  開始の合図となる花火が打ち上げられた。ドン、ドン、と空に響き渡る花火の音。観客席は既に人で埋め尽くされ、賑やかな様子であった。
観客席とは別に、招待された賓客達専用の客席にも、様々な面子が揃っていた。各国代表者は、地球市民の熱気に圧巻される。
メディア関係者達はこれから行われる観艦式の模様を記録に収めようと、カメラをスタンバイしている。しかも地球関係者だけではなく、管理局のメディアも来ていた。
ミッドチルダ有数のメディアであるMT情報局から派遣された、マイク・ルーディら数人のメンバーも、いつでも来いと言わんばかりの様子である。

「これだけの艦隊だ。良いアングルを取り損ねるなよ」
「分かってますよ、チーフ」
「なんたって、防衛軍の最新鋭艦も出るそうじゃないですか。噂じゃ、あの〈ブルーノア〉級や〈ヤマト〉を凌ぐって話らしいですからね!」

同僚の者達も笑顔がこぼれる。こんな大規模観艦式なんてものは、管理局じゃお目に掛かれない行事なのだ。しかも多国籍軍さながらの艦隊行進である。
  賓客用の座席には出席者の一人であるリンディ・ハラオウンが、熱気に包まれる式場に気圧される気分であった。

(あれから6年……地球を取り巻く情勢は大きく変化したわね。これ程までに、他国は地球の声に反応して、協力関係をアピールできるんですもの。さすがといったところかしら)

管理局はと言えば、部隊の再編制は終わったものの、本格的な組織改革は難航していた。また、他世界とどう向き合うべきかという難問もある。
歴史は浅いとはいえ、定着した体質の変化は難しいものだ。などと考えている間に、開式の言葉が終っていた。
  次は主催者側の挨拶が行われる。式台に上がったのは、地球連邦大統領(7代目)のジェイムス・ハイネセン、年齢は53歳でカナダ人である。

「お集まりの皆さん、私が地球連邦大統領のジェイムス・ハイネセンです。この度は、我ら地球連邦の声に答えて頂き、誠にありがとうございます。特に、わざわざ地球まで来て下さった、各国代表の方々にも、厚く御礼申し上げます」

大統領が会釈すると、同席した代表者も軽く会釈を返す。大統領による約5分の演説が終わると、そこからは招待された各国家の読み上げを行い、それと同時に出席された代表団らの氏名も読み上げられていくことになっていた。
順次読み上げられる代表者達を耳で聞きながら、何番目かになってリンディの名も挙げられた。

「時空管理局代表、リンディ・ハラオウン中将」

同時に、軽く会釈をする。全てが読み上げられると、いよいよ観艦式へと挙行される事になるのだ。観艦式は、各国の艦隊が順番で低空飛行で、観客席の前を通過して行く。
その行進に合わせて、軍楽隊が曲を奏でる。それは参加国をイメージさせるように選定されたものだった。
  一番バッターを任されたのは、エトス国艦隊であった。エトスの大型戦艦〈ミュレイネ〉を中心に通常型戦艦9隻が、縦列陣にて海上を低空飛行する。
エトス艦隊の指揮官を務めているのは、シィエラ・レミオス中将だ。白銀のロングヘアーにアイスブルーの瞳を持つ女性提督は、さながらジャンヌ・ダルクのようである。
〈ミュレイネ〉艦橋では、観艦式における先陣を任せてもらえたという、ある種の高揚感に包まれていた。

「武人としては光栄の極みですな、提督」
「そうね。それでは感謝の意を表して、祝砲を撃つわよ。準備は良いわね?」
「ハッ! 準備は完了しております!」

  この観艦式では、観客の前を通る際に祝砲を撃つように予定が組まれていた。勿論、破壊エネルギーの照射ではなく色彩光線――レインボウビームという類のものだ。
参加する各国でも大気成分の違いで虹の色は異なる。個々に自らの虹を地球の空に描こうという味な演出でもある。エトス艦隊は一つの主砲に色の全てを詰めるのではなく、個々の大口径砲がそれぞれに違う色のビームを放ち、地球の空に特大の虹を現出させた。
並はずれた技量がなければ不可能な技市民から歓声を驚嘆、口笛と投げられた紙吹雪が舞う。その瞬間、観客は声を上げた。
後続も続いて発砲を開始、その様子は中継でも伝えられて、世界中に配信されている。武士道、騎士道を具現化させた様な白き戦闘艦は、颯爽と通過していく。

「主砲、斉射!」

〈ミュレイネ〉も予定地に付き、艦長のギアリス・ホンテルン大佐の号令が響き渡った。艦首と一体化した大型主砲3門が空を突き抜けた。
  エトス艦隊が過ぎ去ると、後に続いたのはフリーデ艦隊だ。真っ赤な塗装をした派手な戦闘艦であるが、相手を串刺しにするであろう艦首のラムに、数多くのミサイル発射管、ビーム砲など、フリーデ国の性格を具現化している証拠でもあった。
フリーデの次に出たのはベルデル艦隊だ。参加国では最も全高の長い艦艇――航空戦艦は、個性の違いを強烈に植え付けるものである。
新型艦載機〈ベルデルファイターU〉が飛び出し、パフォーマンスを繰り広げるなど、違う方法で観客をあっと言わせた。

「ほう、ベルデルも派手な事してくれるじゃないか」

  そんな事を呟いたのは、次を控えたアマール艦隊の指揮官、アラゼン・レプルスク将軍(准将)だ。だがアマール艦は、伝統ある綺麗な装飾で注目を集めた。
ガレー船の様でありながら幻想的な雰囲気を放つアマール戦艦は、艦船マニア等の間では密かな人気を集めているとさえ言われていた程だ。
同席者のマリエル、シャリオ両名も、その幻想的な姿に感動していた。

「綺麗ですね、先輩!」
「えぇ。参加国の中では、トップクラスのデザインだと思うわ」

アマールの次はガルマン帝国だ。この観艦式に、戦闘空母1隻、二連三段空母1隻、大型戦闘艦1隻、デスラー砲艦1隻、中型戦闘艦2隻、駆逐艦4隻を投入してきた。
最長で540mを誇る巨大空母に、今までになく圧巻される観客達。軍事大国たるゆえんが、そこにあった。空母からはパフォーマンス用の艦載機が飛び立つ。
主力戦闘機ゼーアドラーVが飛び立ち、新開発とされる固定ビーム発生装置――通称、ビームフラッグを掲げて飛び回る。
それはまさに軍事国家の大軍団を軍旗をもって導く親衛騎兵の様相だ。
  待合室にて眺めていた、はやても息を呑む。隣にいるトーマ達など、その巨大さを目の当たりにして素直に言葉が出てこない状態だった。

「こ、こんなに大きいのか……」
「す、凄いです」
「フッケバインなんて、目じゃないのが良くわかるよね」

こんな国にケンカ売ったら、利息を必要以上に付けられて返してくるだろう。こんな軍艦が数百隻と、何千隻と押し寄せてくれば、まず勝ち目はあるまい。
かつて古代がガルマン帝国建国記念日に行われたパレードで、感じた感想と殆ど同じと言ってよいだろう。この国を敵に回してはならないと。
視界から次第に消えていくガルマン艦隊を眺めていると、次は彼女らの時空管理局が姿を現した。それらは新たに設計された艦艇群だった。
  従来の〈LS〉級や〈L〉級、〈XV〉級を基にしたもので、外見の変化は小さいが、機関部などは新型魔導炉と波動エンジンのハイブリッド艦だ。
ただし出力が低く、波動砲を撃つようなエネルギーは出せないが、それでも旧来から比べれば比較的強力な艦になったのは間違いない。
そしてこの艦隊を指揮するのがクロノ・ハラオウン提督(少将)である。彼の旗艦〈アースラU〉は幾度かの改修を受けて波動エンジンを搭載したものだ。

「どの艦隊も、個性が良く出ているな」
「同感です……。提督、〈デバイス〉隊の発艦準備できました」

艦橋にてクロノが感心している傍で、副艦長のクルト・バッフェ二佐が発艦準備を伝える。防衛軍の技術提供で完成した〈デバイス〉級の量産型だ。
  その肝心の〈デバイス〉はと言えば、今回は10機が飛ぶ予定とされている。パイロットは、先のフェイト、なのはの2人と、シグナムやヴィータらベテラン勢。
そこに扱い慣れした魔導師達が加わり、パフォーマンスを繰り広げるものとなっていたが、操縦に成れてもいまだに慣れない事もある。
だがなのはの場合、別の意味で慣れない様子であった。

「やっぱり慣れないよ、レイジングハート。こんな恰好は……」
『It does not necessarily show off.
I think whether there is any necessity of caring.(見せびらかす訳ではありません。それほど気にされる必要はないかと)』
「確かにそうだけど……」

とりわけ、なのははパイロット用スーツに苦手意識を持っていた……その外見に、である。マリエルやレーグらが重力や重圧対策として開発した特殊スーツ。
それはダイバースーツに似た様なデザインのものだ。そのため、身体のラインが浮き出てしまい、なのはは恥ずかしがっているのだ。
開発部としては“ウケ”狙いで開発したわけではなく、パイロット本人の生命を守るために考え抜いた結果であり、大真面目そのものだった。
方やフェイト等は、自身のバリアジャケットがそれに近いパターンがあるため、彼女ほどに恥ずかしがりはしなかった。

『出撃せよ!』
「っ!? 〈レイジングハート〉、出ます!」

発進命令に驚いたものの、彼女は恥ずかしさを一先ずおいて、操縦に専念するのであった。





  最後は地球防衛軍だった。参加艦艇は観閲艦隊旗艦を務める〈シヴァ〉を中心に、伝説の戦艦〈ヤマト〉、〈スーパーアンドロメダ〉級戦艦1隻に〈ドレッドノート〉級1戦艦隻、〈インディペンデンス〉級空母1隻、〈最上〉級巡洋艦2隻、〈フレッチャー〉級駆逐艦4隻。
さらにサプライズとして噂されていた、最新鋭艦を含めて12隻。観客達も、最大の見せ場だという事で興奮止まぬものであった。

『では、皆さん! 次は地球防衛軍宇宙艦隊です!』
「「「おぉーっ!!」」」

景気づけに流れていた演奏が、雰囲気を変える。地球防衛軍の軌跡を表したものか……堆く積まれた、敵味方の犠牲の上に自らがいる事の使命と、決意を感じさせるものだった。
観客に見やすいよう、艦隊は縦列陣を組んで目の前を横断し始めた。先頭を行くのは戦場の駆け馬、駆逐艦だ。その後ろを、宇宙の万能屋――巡洋艦が続く。
  通り過ぎる間際に祝砲を撃ち放つ。青白い模擬用ショックカノンが、直線から次第に螺旋を描きながら、空の彼方へと消えていく。
その様子を、〈シヴァ〉の艦橋から見つめる人物がいた。

「勇ましいな、他の艦隊は……なぁ、副長?」
「そうですが……我々も負けてはいられませんね、北野司令」

〈シヴァ〉2代目艦長、北野 哲也中将はこの年で40歳になる。先代のマルセフに変わり、彼が艦長及び第4艦隊司令官を務める事となった。
副艦長もコレムから変わって、元〈イラストリス〉艦長のカール・フレーザー大佐となっていた。主力艦隊ともなれば、参謀長も新たに付けられる。
第4艦隊参謀だったニック・ラーダー少将は、やはりマルセフらの異動に伴い所属が変わった。その後任は、元司令本部の参謀部に所属していた島 次郎准将である。
  島 次郎は今年で33歳。移民計画本部長から防衛軍司令部の参謀部に異動し数年務めると、第4艦隊の参謀長へと異動が決まったのだ。
もっぱら10年後には宇宙艦隊司令長官職か総参謀長職が回ってくるのではないか、と噂されている。また、北野も数年後には地球防衛軍司令長官に就任できるのでは、とされる。

「そういえば、奥様は元気でいらっしゃいますか」
「ん? あぁ、娘の子育てに専念中だが、元気にしているよ。私がずっと傍に付けないのは心苦しいがね」

北野は結婚していた。相手は〈アガメムノン〉副長を務めた藤谷 美代中佐で、4年前に結婚にまで話しが急転。さらに1年後には娘を授かり出産したという。
藤谷 美代は嫁いだ事により北野 美代となり、出産したのを機に予備役入りとなった。その後は実家に世話になりつつも育児に専念しているという話だった。

「それでは、休みの時は家庭に専念ですね?」
「そうだな、ハハハッ」

  そう話している内に、〈シヴァ〉も祝砲ポイントに辿りつく。その瞬間、防衛軍随一の火力が一斉に解放され、大空を引き裂いた。
観客はワァッ、と歓声を上げる。大小36門の砲が斉射されるのは、迫力の一言である。〈ブルーノア〉級において破壊神の名を与えられた艦は、今なお健在している証拠だ。
破壊神が通過していくと、今回のメインとさえ言われるであろう、あの伝説の戦艦〈ヤマト〉が入場してきた。

「〈ヤマト〉だ!」
「人類の〈ヤマト〉、万歳ー!」

白熱に勢いが増す観客達。昔から変わらない伝統的な水上艦フォルム、城の如き艦橋、力強さを与える主砲……これまでに危機を救ってきた〈ヤマト〉に熱狂する。
代表者達も〈ヤマト〉という戦艦が、〈シヴァ〉よりも特別な意味を持つ戦艦である事を知っている。

「すごい熱狂ぶりや。ウチらの地球で、アレを見たら殺到する人が大勢いるんとちゃうか?」

  やや辛辣なコメントをするのは、はやてであった。ただし〈ヤマト〉に対してではなく、自分の世界に対してだ。
〈ヤマト〉など、大昔の戦争で沈んだ悲運の戦艦だ、という知識程度でしかなかったものだ。それが地球人類を救う宇宙戦艦として復活し、度重なる危機を救ってきた。
20年も前に自沈したというが、それが再び再建さた。これは、地球人類がどれだけ〈ヤマト〉に心を寄せているのかが伺えるものか、あらわしているのではないか。
そして〈ヤマト〉も、自慢の46cm砲が火を噴いた。〈シヴァ〉に見劣りはするものの、その存在感は圧倒的である。
  だが、その〈ヤマト〉や〈シヴァ〉をも凌ぐ、本当の圧倒的存在感を醸し出した巨人が、彼女らの前に姿を現すのだ。

「……? 急に雲って来たですぅ」

その兆候は、まず会場や待合室を照らしていたはずの、陽の光から現れた。電気もいらないくらいの明るい陽射しが、急に陰りを差し出したのだ。
はやて達は思わず、雲でも差したんだろう等と思った。だが、それはすぐにおかしいと気づく。まず今日の空は晴天だった筈だ。これほど陰りがさす事は無い。
そして、それは会場周辺に限られた減少だった。いったい、何が? そう思って空を見た――その瞬間だった。それが自然ではなく人工的なものである事を悟らされた。

「な……なんや、この艦は!?」
「お、大きい!!」
「あ……ぁ……」
「なにさ、この規格外の大きさは!?」

  はやて、トーマ、リリィ、アイシスは揃って衝撃的な光景に打ちのめされる思いだった。窓ガラスが小さくカタカタと振動が伝わり音を鳴らす。
その規格外の何かが、視線の前に露わになる。この時、騒然となる会場で司会者と思しき女性が、マイクを手に取り大きめの声で発表した。

『皆様、これこそが、“全人類”の防人の総旗艦となるべくして、凡そ1年半の歳月を掛けて完成を見ました!』

司会者が説明を続ける最中も、最新鋭艦は悠然とその巨体をゆっくりと、ゆっくりと通過させて行く。リンディも口から言葉出てこない。
全体の雰囲気は、かの〈春蘭〉級戦艦に近いような気がする。艦首は今までの艦艇とは異なるが、かの〈アリゾナ〉級宇宙戦艦に近い。
ただし、艦首下部が肥大化かつシャープになり、艦首上部は波動砲発射口ではなく、ラムの様な形状となり、その左右に発射口を2門づつ計4門装備している。
  艦中央部から後部に掛けては〈アンドロメダ〉〈アリゾナ〉に類似している。また防衛軍特有の、冷却装置・制御スラスター・星間物質取り込み口となる、インテーク状のパーツが艦底部と艦首下部に備えられている他、艦中央部左右にも張り出したインテークパーツが見える。
艦橋構造は〈アンドロメダ〉に近い。機関は主機が1機、サブが左右と艦底部に計3機。そして攻撃の要となる武装だ。
  波動砲発射口が艦首上部に4門。51p口径三連装主砲塔が艦前部に3基、後部に2基、後部下部に1基、艦中央部に1基、計7基21門。
40p口径三連装副砲塔が艦左右に2基、艦底部左右に2基、計12門。巨体に似合わず少ない武装だが、それは口径が従来より増したためでもある。
その他にも、ミサイル発射管と思しきものが数十か所あり、隠れて見えないだろうが機銃関係も至る所に装備されている。
さらに司会者説明によると、最新鋭艦の全長は940m、全高(アンテナ含まず)320mもある、前代未聞かつ史上最大の巨大戦闘艦だった。
  そして、地球防衛軍最強とされる艦名が露わになった。

超弩級重装甲宇宙戦艦〈ユーノス〉!!


正式名称:〈ユーノス〉級超弩級重装甲宇宙戦艦 1番艦〈ユーノス〉である。当艦は防衛軍の化学の粋を結集させ、さらにはエトス国のビーム主砲技術、アマール国の強力なシールド形成技術、さらには時空管理局の居住区設備技術、等、あらゆる技術を融合させて建造したものだった。
勿論の事だが、この技術提供の見返りとして、他国に波動エンジン関係の技術等が渡っている。

「多国の支援を受けたとはいえ、地球がこれ程の艦を造れるようになったんですね、先輩」
「まぁ、多国の支援が無くとも、造れたでしょうね。一国の総旗艦には勿体ないけど、地球政府の言うとおり、全人類を守るための総旗艦ならぴったりね」

  シャリオとマリエルが〈ユーノス〉を見上げながら呟いている。内心では、ここまで巨大な艦にしなくても良かったのではないのか、と疑問もあったが。
無論その疑問は彼女たちだけではない。〈ブルーノア〉級と同程度の大きさで良いのではないか、という声もあったくらいだ。
だがこの〈ユーノス〉は戦闘艦としては勿論のこと、他の局面を考えても活躍を大いに期待されている。その一つが災害救助などにおける活躍だ。
900mとなった巨体は、鉄壁ともいえる重装甲を纏う。さらには艦内部のスペースも余裕があり、5000人は軽く収容できるものだった。
  さらには巨大化した事で、〈ブルーノア〉を超える指揮管制能力や索敵能力、情報処理能力などが強化された事で、1万隻レベルの艦艇を直接指揮できるようになった。
実際には1万隻クラスの艦隊を指揮する機会は滅多なことでは有り得ないだろう。指揮のみならず、情報戦でも大いに活躍する事が期待されている。

「あ、主砲が動いた……」
「撃つみたいですね……っ!?」

〈ユーノス〉の51cm主砲全門が動いたと気づいた時には、その巨砲は轟音を立ててエネルギーを一斉解放し、観客たちを驚愕させる。
あの46pを上回る主砲が直撃すれば、戦艦とはいえ轟沈してしまうだろう。〈ヤマト〉でさえ、沈まない保証はないのではないか、と思わせるほどに強烈であった。





「とんだ化け物だな、この艦は。そう思わんかね、参謀長」
「同感です、長官。新鋭艦にしては、大きすぎる気もしますね」

  地球防衛軍総旗艦〈ユーノス〉艦橋で、呆れ顔な3人の姿があった。地球防衛軍宇宙艦隊司令長官・本国防衛艦隊司令官を兼任するフュアリス・マルセフ大将。
そして本国艦隊参謀長ニック・ラーダー中将と、本国艦隊副参謀・〈ユーノス〉艦長リキ・コレム准将の3人だ。第4艦隊時代と変わらぬ幕僚人事である。
艦長職はコレムが参謀と兼任するが、副長は別の人物が収まった。それが雷電 五郎中佐、この年で35歳になる。〈旧ヤマト〉乗組員だった男で、航海科に所属していた人物だ。
体格はラーダーに劣らぬ巨躯の持ち主で、また腕っぷしもよい。だが喧嘩っ早い性格ではなく、どちらかと言えば冷静で忠義に厚く、上官を敬うタイプだ。
  マルセフはこの年で59歳。SUS戦役(次元大戦)と第二次ガトランティス戦役を戦い抜き、2年前に大将に昇進。同時に先代の水谷大将の後任として、宇宙艦隊司令長官に就任。
水谷は元帥に昇進し、山南元帥が退役するのと入れ違いで地球防衛軍司令長官へと就任した。今は地球全軍の指揮権を委託され、日々従事している。
ラーダーはこの年で48歳、少将から中将に昇進を果たして、マルセフの参謀役を続けて務めていた。そしてコレムは、大佐から准将へ昇進した事で艦長職から参謀職に異動した。

「ですが、この〈ユーノス〉に匹敵する戦闘艦艇は実際にありました」
「副長の言う通り、旧ガミラスとガルマン・ガミラス帝国では、それくらいの巨大な艦はあったな」

  コレムが言うのは、旧ガミラス帝国時代に建造された数少ない〈ゼルグート〉級一等航宙戦闘艦である。これはガミラス時代で最長の巨大艦で、730mを誇った戦艦だ。
かのドメル将軍が座乗していたことでも知られている。また、今のガルマン帝国では、デスラー座乗艦の〈デウスーラ(4代目)〉がある。
これは全長1350mを誇る銀河で最大の巨大戦闘艦であり、艦首のハイパー・デスラー砲、無数の回転式主砲、艦底部の惑星破壊ミサイル2発を備えている。
しかし銀河交差現象に伴い、係留中のまま超新星爆発に巻き込まれ轟沈。その後は2番艦が再建され、〈デウスーラU〉が就役している。
  今彼らが乗艦している〈ユーノス〉は、この天の川銀河で2番目に巨大な戦闘艦と記録されただろう。コレムが呟く。

「しかし、まぁ、同型艦を作るのは難しいでしょうね」
「当然だな。2番艦の建造はギリギリ許可されているという話だが、どうなる事やら……」

大艦巨砲主義を具現化した、とまで囁かれる〈ユーノス〉級戦艦。巨額の予算が注ぎ込まれたのは予想するのに難しくはない。
この艦1隻で〈シヴァ〉が2隻は余裕で建造できるであろうと言われている。〈ドレッドノート〉級なら6〜7隻分に匹敵するかもしれなかった。
予算食いと見られても仕方ないが、それ以上に活躍させる性能も確かにある。いや、活躍してもらわねば困るのだ。

「実戦は直ぐにやってくるかもしらん。何せ、今だ天の川銀河は、戦争の火が収まらんからな」

  マルセフが言うように、天の川銀河は戦争状態が続いている。とりわけ戦争をしているのはガルマン帝国とボラー連邦だが、これは予測もしないものだった。
銀河交差の影響で戦争どころではなかったが、それでも10年は決着つかずである。先年のアルデバラン会戦でボラーが連邦が不利に立たされたのは、まだ記憶に新しい。
しかしボラー連邦は持ち前の国力と戦力で拮抗し、ガルマン帝国の艦隊を幾度となく退けてきたのだ。これにはデスラーもうならざるを得なかった。
ボラー連邦がここまで粘り強い抵抗を見せているのは、やはり指導者の力量と、前線に出る非凡な指揮官の存在にあった。
ガルマン艦隊も優秀な人材を用いるようにしてきたのと同様、ボラー連邦もそれを重視してきた結果でもある。
  ボラー連邦の属国とされる軍隊も、冷遇されてきた政策が大きく緩和されたことにより、モンキーモデルな三流戦闘艦から、二流または一流の戦闘艦が配備されてきたのだ。

「ボラー連邦も侮れませんね。ガルマン帝国と拮抗するような国になるとは、思いもよりませんでしたよ」
「いつまでも同じだと思ってはいけない、という良い例だ。思考の硬直化と同じで、人間、柔軟性を持っていかなくてはならないものさ」

雷電が皮肉を込めて言い張ると、コレムがそれをたしなめる。人が硬直した思考を持ってしまった時ほど、後が怖いものはないのではないか、と思えるのだ。
相手からすれば、そういった思考の硬直化したところに、奇襲や奇策を入れ込む余地がある。軍事としても、これは基本的なものだった。
  やがて〈ユーノス〉のお披露目も終わりに近づいた。コレムは次の会場となる都市への進路変更を申し出る。

「長官、これより次の都市に向かいますが、よろしいですか」
「ウム。よろしく頼むよ」

マルセフが頷いて了解すると、〈ユーノス〉は操舵手の舵取りに敏感に反応する。巨体に似合わぬ反応を見せ、地球最大の戦艦は日本を離れるのであった。
その〈ユーノス〉を、見えなくなるまで観客たちは見つめ続ける。見えなくなると、司会者が閉会を告げた。

『これにて観艦式は閉幕となります。出席された代表団の皆さま、お疲れ様でした。会場の皆さまも、お疲れ様でした』

  代表団がまず退場を行う。リンディも後に続き、会場を後にした。後はクロノ達が観艦式を終えるまで待機するのみであった。

(地球防衛軍も、とんだ物を造ったものね。敵対関係にあったら、管理局はさぞかし恐ろしい目に遭うでしょうよ)

過去に幾多の戦乱を乗り越えた地球は伊達じゃない。SUSとの戦争でも、それを証明して見せた。劣勢にあっても折れない屈強な精神と勇気は感心するものだ。
また、ここ数年で地球連邦は10近い国家との同盟関係を築き上げてきている。対等な関係による大同盟は、支配下に置かれた経験を持つ国家にとって魅力あるものだった。
とはいえ、欠陥が無いとは言い難い。皆で人類を護りぬこうとは言うものの、そう言った手前、参加しない訳にはいかない状態だってある。
中には理由をこじつけて戦闘に不参加を表明する国も出てくるだろう。また、己の利益求めて、という可能性も大いにあり得た。

(管理局が言えた話じゃないわね。私達も、現在進行形で問題に取り組んでいるのだから)

  他管理世界と如何にして協力的な関係を築き上げていくべきか。他人事ではない問題だ。より良い未来を切り開けるのは、まだまだ先の話になりそうだ、とため息を吐く。
これからはやて達と合流し、クロノ達の艦が式を終えるまで待つことになる。それまでの時間、どう過ごそうかと考えつつ、はやて達の基へと向かうのであった。




〜〜あとがき〜〜
どうも、第3惑星人です。
今回は書きたいことを書いた番外編となりました。本編とはあまり関係ないですが、前書きしたように、作成事情でこの案を本編に盛り込む可能性大です。
基は読者様から頂いた観艦式のネタが、本編ではお見せできなかったもので、それを番外と言う形で、しかもかなり書き換えたものを作りました。
それとこの番外編にて、初登場したキャラ&メカがありますが、分かり易いのと分かりづらいものがあります。

とりあえず初登場キャラは、『魔法戦記〜Force』から主人公のトーマ、リリィ、アイシスの3人組になります。私としても何故出したのか甚だ疑問ですが(汗)。
これらキャラは原作をご存知の方ならば、直ぐに分かるかとおもいますので、あえて説明は省かせていただきます。

むしろ、ここで説明しなければならないネタは、今回初登場の〈ユーノス〉です。これ、名前を聞いた瞬間に『あの作品だ!』と分かった方は、かなりマニアックかと。
〈ユーノス〉の元ネタは、松本零士氏が監督し制作したOVAアニメ『大YAMATO零号』になります。これはヤマトとは全く違う作品で、松本ワールド全開の作品です。
しかし視聴者の評価は低く、また、制作会社の問題から製品が大幅に変更されました。全部で5本分のDVDだったのですが、3本目から打ち切られ、5本まとめてBOX販売に変更。
単品販売版は既に“絶版”です。私は持っていますが、第1巻が行け不明(泣)。しかも、単品版はメニュー欄に設定画集が織り込まれているのですが、BOX版がそれが無い!?
……話がそれました。〈ユーノス〉についてご説明します。

作中では、天の川銀河の勢力が集まったものを、A銀河連合と言います。そのA銀河連合は数億という艦隊を保持しているのですが、その中でとりわけ期待されている艦隊がいます。
それが七千艦隊と言うもの。〈ユーノス〉はその七千艦隊旗艦であり、かなりの巨大戦艦として登場しています。まずもって、全長が1q超えは軽いものでしょう。
下手したら2qはあるのか? デザインはかなりかっこいいです。〈アリゾナ〉と〈アンドロメダ〉を足した様な感じもします。
主なスペックは次元砲(波動砲と同類?)4門、三連装主砲7基になります。とくに感心するべきはこの艦の防御力にあり、あの復活編アマール戦艦並みのシールドを保持してます。
また、装甲による直接防御も優秀なようで、戦艦を数発で沈めるような攻撃に、幾度となく耐え抜くというタフさ。巨艦は伊達じゃないです。
ヤマトシリーズでは、こうした最新鋭艦は撃沈する運命にありますが、〈ユーノス〉は最終章5巻の終了時点で轟沈を免れた強運艦。

他の艦もかっこいいデザインが多いのですが、陽が当たる事はないでしょう……。



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