※諸注意――
  当二次創作は、ワンダースワン版『宇宙戦艦ヤマト』のIFエンド『ジュラ編』をベースに、その他プレイステーション版『宇宙戦艦ヤマト〜英雄の軌跡〜 永遠のジュラ編』、リメイク版2199の設定、独自設定を盛り込み、書き上げたものなりますので、ご注意ください。

第1話『デスラーの娘』


 私はジュラ……。

 大ガミラス帝星総統アベルト・デスラーと、サイレン人メラ・メルディアの間に生を受けた娘。

 唯一、デスラー一族の血筋とサイレン人の血筋を引く、サイレン人とガミラス人のハーフ。

 今は絶望の淵にあるガミラス民族を束ね導く、新たな指導者。

 私はジュラ……。

 この宇宙を、同胞達と共に流離う娘。

 そして、斃れた父の無念を晴らすべく、奮起するガミラス人と共にヤマトへ挑む娘。

 私は……ジュラ……。



〜CHAPTER・T〜



  大マゼラン銀河と天の川銀河の中間に位置する孤立した天体があるが、それをバラン星と呼んでいた。地球で言うところの木星規模を誇るガス状惑星だ。大マゼラン銀河と小マゼラン銀河を、それぞれ半分以上を支配下に置く大ガミラス帝星の一大軍事拠点であり、天の川銀河侵攻における重要な中継地点かつ補給基地を担う非常に重要な惑星であった。
  過去形で語らねばならないのには大きな理由があるのだが、それにはもう1つ、このバラン星には重大拠点たる別の理由を説明せねばならない。長大な航路を短時間で済ます為の特殊なシステム“ゲシュ=タムの門”が配備されていることだ。既に滅び去ったとされるアケーリアス文明の遺産で、これがあることによって天の川銀河への航行時間削減を実現していたのである。
  これを利用した大ガミラス帝星は、天の川銀河へと侵略の手を伸ばした。当然のことながら、その攻略候補であった太陽系の地球にも手は伸ばされた後、ガミラス軍の攻撃で地球は滅亡の寸前に追い詰められる結果となった。
  ところが、その滅亡寸前の地球からは、人類を救う為に旅立った宇宙戦艦〈ヤマト〉と名乗る戦艦が出航したことから、ガミラス軍の想定していた事態とは打って変わって、大きく変化していった。この〈ヤマト〉と名付けられた戦艦は、ガミラス帝星首脳部らの予想を遥かに超えた行動を見せており、ガミラス軍の猛攻を掻い潜ってきた挙句、遂には重要拠点であるバラン星へと辿り着くこととなった。
  並びに、ガミラス帝星内部においては、蠢いていた反政権派によるクーデター計画が発生してしまう。

「純血こそ正義! 青き肌を持たぬ二等臣民が蔓延る時代など、吾輩が断ち切ってくれる」

  大ガミラス帝星にて存在が許されるのは、高貴な蒼き肌を持つ純血ガミラス人であり、二等臣民と呼ばれる属国の多民族など不要である――とは、ガミラス国防軍ヘルム・ゼーリック国家元帥の言うところである。彼は、大ガミラス帝星内部で最高権力者たるアベルト・デスラー総統の次に強大な発言力を有する門閥貴族だ。ゼーリックは、多民族を同化させることで領域の拡大と安定化を図る政策方針には、内心では批判的な立場にあった。それを表立って行わないのは、身の保身を考えてのことであったのだ。
  そして、旧ガミラス公国時代にあった貴族社会制度を復活させようと、彼は忍耐強く機会が来るまで待ち続けていた。そこへ〈ヤマト〉が千載一遇のチャンスとして具現化したのだ。〈ヤマト〉の行動が、大ガミラス帝星の基盤に少しづつ罅を入れ始めたことで、その基盤がより大きく揺るいだのを見計らい、デスラーを暗殺し、クーデターを決行したのである。
  その為に彼は、本星周辺の中央軍所属の艦隊は無論、手の空いた各戦線の予備兵力、更には温存されていた機動戦力らを掻き集めて、総勢約1万隻もの艦艇をバラン星へ集結させた。デスラーの死を利用して、自分に正当な指揮権があることを明言し、そのうえで1万隻による大侵攻を行って帝星を一挙に制圧する腹であったのだ。
  これは非常に危険なもので、各戦線から予備戦力どころか、いざと言う時の為の機動戦力をも引っ張り出したのは何を意味するのか、誰の目にも明らかであった。もし、これで敵勢力の反抗戦が開始されようものなら、各戦線は瞬く間に不利に陥ってしまう。加えて、各植民星も決起して手が付けられなくなる。それはゼーリックとて想像できない訳ではなかった。
  それでも掻き集めたのは、クーデターを成功させる確固たる自信を持っていたからだ。大ガミラス帝星司令部を一挙に占拠し、自分が総統の座に座ったら、直ぐに戦力を戻すつもりだった。
  しかし、その計画が事前に漏れていたことに気付かず、デスラーの手の上で踊る羽目になった。要はデスラーの暗殺に失敗したばかりか、約1万隻もの大艦隊を前にして、堂々と反逆者の烙印を押されてしまうという、誰が見ても分かる大失敗をした訳だ。
  狼狽するゼーリックの痴態を、デスラー本人は退屈しのぎ程度に見ていた。

「違う、断じて違う! 心ある兵士諸君、吾輩が敢えて逆臣の汚名まで着て訴えんとしたのは、誠に憂国の志から来たものであり――」
「ぎゃ……逆賊め!」

  見苦しい言い訳で、もはや支離滅裂なことを口走ったゼーリックは、これまで手塩にかけてきた手駒こと銀河方面軍副司令官グレムト・ゲール少将に討たれて死亡するに至る。
  このまま、ゼーリックが総統暗殺未遂の罪で処刑されるのは当然だったが、そこで乱入して来た〈ヤマト〉が、火災に火薬を放り込むが如き行為を行った。波動砲でバラン星の内核にある巨大エネルギープラントを狙撃されてしまい、暴発した挙句にバラン星を巻き込んだばかりか、周辺にいたガミラス艦隊を巻き込んでしまったのだ。
  そして、このエネルギープラントは“ゲシュ=タムの門”を起動させているエネルギー源でもあった訳で、それが失われた今、単なる巨大なリングでしかない。門自体は起動可能なのだが、エネルギー供給プラントが断たれたとあっては、もはやどうしようもない。使う時には外部エネルギーの注入が必要となる。
  加えて、真面に衝撃波と強烈な爆縮エネルギーの波に呑み込まれた1万隻のガミラス艦隊は、実に5000隻もの艦艇がデブリと化し、2000隻もの艦艇が航行不能なほどのダメージを負ってしまったばかりか、一撃で破壊されデブリと化した艦艇の破片がバラン星周辺に散らばっており、バラン星近海における艦の航行を阻害している状態だった。
  人工的に引き起こされた爆縮の被害から辛うじて戦闘航行共に支障の無かった艦艇群約3000隻は、大ガミラス帝星へ向かう〈ヤマト〉の追撃に移るべきであったが、実際に追跡に当たった部隊の規模は僅かに180余隻と極少数の部隊に留まった。大部分は、各戦線へ戻る為に行動を共にせず、分散した為である。
  〈ヤマト〉への追撃に移れた戦力はバラン星駐留艦隊並びに、ガミラス本星から観艦式に引っ張り出されていた中央軍艦隊、そしてバラン星で待機状態になっていた第6空間機甲師団が主戦力となり、その他は各戦線の兵力などから引き抜かれた艦隊が占めていた。無論、追撃に移れた各艦隊も、バラン星の爆縮の影響で大きく数を減らしていたが、それを嘆く暇など誰にもありはしなかったのである。

「〈ヤマト〉の追撃よりも、各戦線の守りを固めるのが先決である」

  このように、離脱した約2800余隻の艦艇群は口を揃えて異を唱えると、追撃に同行しなかった。当然ながら、〈ヤマト〉よりも元の配属地における戦線の維持の方が、彼ら部隊にとって最重要課題であったのだ。まして、反逆者であったゼーリックの命令は、事実上無効となっている為、これ以上にバラン星宙域に留まる意味はない。加えて本星の守りは、親衛航宙艦隊らが存在することから、それほどまでに心配する必要性も無いのではないかと判断したのであった。
  また、とばっちりを受けたバラン星そのものも、爆縮の影響に耐え切れずに大幅に収縮し、通常の半分の大きさになってしまっているばかりか、バラン星を構成していたガス物質なども広範囲に散乱し飛び散り、辺り一帯の通信状況や索敵機能を低下させている。



  不本意ながらも死に絶えてしまった星にて、やがて訪れるであろう敵艦――宇宙戦艦〈ヤマト〉を待ち構えている多数の艦艇の姿があった。規模にして、730隻余りものガミラス艦隊の姿である。これでも、傍から見れば大艦隊のレベルに相当するであろうが、万単位の艦隊を持っていた大ガミラス帝星国防軍に比較すれば、誠に微々たるものでしかない。
  ガミラス艦艇特有の濃緑色に塗装された宇宙艦艇だが、その中には一際にして巨大な戦闘艦が鎮座している。全長にして638mという巨艦であり、塗装はガミラスでは高貴な色とされる蒼であり、その巨体さ故に一際存在感をアピールしていた。
  巨艦の名を特一等航宙戦闘艦〈デウスーラU世〉という。武装は、秘匿兵器として開発されたデスラー砲×1門、480o三連装陽電子カノン砲塔(遮蔽式)×6基18門、330o三連装陽電子カノン砲塔(遮蔽式)×6基18門、330o三連装陽電子ビーム砲塔×6基18門、魚雷発射管×51門を有する、ガミラス軍屈指の重武装戦闘艦であり、かのアベルト・デスラー総統専用の座乗艦として建造された特注艦だった。
  その〈デウスーラU世〉の艦橋では、幾人ものオペレーター達が忙しくコンソールを操作しては、互いにやり取りしている。

「第4部隊、第5部隊、配置展開完了しました」
「同じく、第2部隊、第3部隊、デブリ内部に配置展開完了」
「第1部隊、陣形展開完了」

  また〈デウスーラU世〉艦橋の奥側に設置された指揮官専用の座席に座る、地球で言えば14歳ほどの若い女性が1人と、その女性に付き添う様にして傍に立つガミラス人の高官が、静かに部隊の展開報告を耳に傾けている。
  女性の方は、金髪のベリーロングと、表情には幼さを残しつつも透き通ったアイスブルーの瞳が、華麗さというより神秘さ、神々しさを放っているようにも思えた。身体的特徴として別に挙げられるのは、彼女の両耳がファンタジーに登場するようなエルフの耳のようであり、違った異質さを与える。服装は、青色のワンピースと緑色のレギンスと、ロングブーツを着用していた。
  彼女の名をジュラ・メルディアという。ガミラス総統アベルト・デスラーと、母メラ・メルディアの間に生まれた一人娘だ。
  そして、彼女の傍らに立つガミラスの高官は、見た目からして40代の論理派を思わせる顔つきと、鼻の下に生やす小さ目な髭が特徴的だ。中肉中背の体躯をしており、緑色の高官用軍服と黒地マントを着用する。
  彼の名をヴェルテ・タランといった。元大ガミラス帝星軍需国防相を務めていた人物だ。ガミラス国防軍を支える軍需産業の管理と、国防態勢を取仕切ることの出来る随一のテクノクラートとして、大ガミラス帝星を支えていた官僚であった。
  ヴェルテは、オペレーターからの報告を聞き、最後に艦隊総指揮官のガミラス人高官から、直接回線で報告を受ける。

『タラン。戦闘部隊は皆、配置を終えたぞ』

  口周りを覆いながらも手入れされた髭と、オールバックに纏め上げられた灰色の髪、右目を縦に横断するように走る一本の傷跡が特徴的な中年の男性士官だ。
  彼がこの宙域におけるガミラス艦隊の実質的指揮官ガル・ディッツ提督である。ガミラス国防軍でも評価の高い用兵家として、軍内部や市民の間でも名の上がる提督であり、ガミラス航宙艦隊総司令官だった人物だ。良識的な軍人ではあるが、近年の大ガミラス帝星内部の実情に嘆いていた。取り分け、親衛隊による横暴とも言える苛烈な取り締まりには、見るにも聞くにも耐えない。いずれ、帝星内部に大規模な事件が生じるやもしれない――と、将来の行く末を心配していた。
  ところが、不満を口にする姿勢が思わぬ事態へと繋がってしまう。ある時、デスラーが内密に中間拠点であるバラン星への視察に向かうことを、ディッツともう1人の高官のみが知っていた。この行動予定を嗅ぎ付けたゼーリックが、デスラー暗殺という己のクーデター計画の楽譜の音符に載せていたのである。
  つまり、行動を内密にしていた筈のデスラーを暗殺しつつも、その実行犯をディッツと、もう1人によるものだという冤罪を着せたのである。加えてディッツが時折口走った現政権の不満は、デスラーへの背信であるとこじ付けられた挙句に、逮捕されてしまったのだ。
  ディッツは、乗り込んできた親衛隊に混じって目に前に現れた親衛隊長官ハイドム・ギムレー中将待遇の、陰湿な眼と口調を、今でも忘れはしなかった。

「ディッツ提督、貴方を総統暗殺の首謀者として逮捕します」
「何を根拠に言っておるのだ、貴様は!」
「“疑わしきは罰せよ”それが鉄則です」

  それがギムレーの口癖だった。
  強引に逮捕状を突きつけられたディッツは、抵抗を無駄なものだと察し、大人しく親衛隊に逮捕されている。そして、一時的に帝星とは離れた星系の留置所へと監禁されてしまい、自身は無実であろうに処刑されてしまうのかと嘆いた。
  ところが、その苦難もが仕組まれていたことだと、ディッツは知った。全てはクーデターを計画し実行に移したゼーリックと、彼に同調する貴族派や反政権派を一網打尽とする為の、大掛かりな茶番劇であることを知ったのである。ディッツは愕然としたものだ。デスラーは、ここまで見通したのか。おおよそ、あのギムレーが独自のネットワークを介して、クーデターを知ったのであろう――ディッツは留置所の独房内で小さく溜息をついたものである。
  その後、彼は帝星へ召喚されることとなるが、直ぐに帝星へ馳せ参じることは無く、〈ヤマト〉を迎撃する為にガミラス軍の再編成に追われることとなった。結果として間に合わなかったが、これが意外な運命をもたらしたのであった。
  そして、別の通信スクリーンからも戦闘配置が完了した旨を伝える人物が映る。

『兄さん、こちらも戦闘準備は完了した』

  40代程の男性将官で、角ばった顎と、茶色の髪、それと同色のカイゼル髭がトレードマークの如何にも職業軍人な気質を放つこの軍人。総旗艦〈デウスーラU世〉を護る護衛部隊指揮官を務めるガデル・タラン中将である。元々は大本営において参謀次長を務めていた人物だった。また彼は、ヴェルテ・タランの弟であり、正反対の印象を与えることから兄妹らしからぬとも言われることもあった。
  彼も決戦に向け、各予備兵力を掻き集める為に奔走する事態となり、本土決戦時には不在の身となった。それがディッツ同様に、ある種の運命に繋がったのである。
  2人からの連絡を受けたヴェルテは頷く。

「分かった。ジュラ総統、全軍の配置が完了いたしました」

  スクリーンから振り返り、彼の後ろで指揮官席に座る可憐な女性に対して報告する。年齢からして立場が逆にもなろうが、ジュラを総統として忠誠を誓っている故だ。

「ご苦労様です。ディッツ提督、ガデル将軍」

  ジュラは労いの言葉を2人に掛けると、ディッツとガデルは敬礼を取って通信を切った。おおよそ、総統らしからぬジュラは、自身にカリスマ性が潜在するなどとは微塵も思ってはいない。そこへ、タランを始めとする周囲の将兵達による助力を受けており、彼女はその支えに対して大いに感謝していた。
  また、大半の艦隊運用については、専門の軍人らに任せておくことにしたのだ。あくまでジュラ自身は、生き残りのガミラス民族を束ねる指導者、或は象徴として、彼らの上に立っていることを自覚している。



  因みに、バラン星に集結したガミラス艦隊の戦力は、決戦に挑む戦闘部隊と、民間人を収容した輸送艦などで構成された非戦闘部隊に分けられる。

戦闘部隊――
・戦艦
 総旗艦〈デウスーラU世〉×1隻
 ゼルグート級一等航宙戦闘艦×1隻
 装甲突入型ゼルグート級二等航宙装甲艦×3隻
 ハイゼラード級二等航宙戦闘艦×10隻
 ガイデロール級二等航宙戦闘艦×21隻
・空母
 ゲルバデス級航宙戦闘母艦×7隻
 ガイペロン級多層式航宙母艦×16隻
 ポルメリア級強襲航宙母艦×8隻
・巡洋戦艦
 メルトリア級巡洋戦艦×43隻
・巡洋艦
 デストリア級重巡洋艦×116隻
 ケルカピア級軽巡洋艦×172隻
・駆逐艦
 クリピテラ級駆逐艦×334隻
――計734隻

非戦闘部隊――
・空母
 ゲルバデス級航宙戦闘母艦×2隻
 ガイペロン級航宙母艦×2隻
・巡洋戦艦
 メルトリア級巡洋戦艦×3隻
・巡洋艦
 デストリア級重巡洋艦×6隻
 ケルカピア級軽巡洋艦×12隻
・駆逐艦
 クリピテラ級駆逐艦×24隻
・補助艦
 輸送艦×45隻
 補給艦×54隻
 工作艦×32隻
 護送艦×14隻
 民間船×33隻
――計225隻

  これほどの戦力が〈ヤマト〉を待ち構えている訳であるが、そもそも何故、この崩壊したバラン星にガミラスの艦隊が集結しているのか……理由は至極簡単だった。
  大ガミラス帝星は、双子星であるイスカンダル星へ向かう〈ヤマト〉の迎撃に失敗してしまい、母星そのものを決戦上にした代償として帝都バレラスは壊滅状態に陥った。ガミラスに住まう民間人をも巻き込んだ未曾有の大戦災ともされ、陣頭指揮を執ったデスラーを始めとした多くの将兵が、都市防衛戦の犠牲になってしまったのである。
  その死闘においてタランは、デスラーの命によって大ガミラス帝星の軌道上に浮遊する機動要塞に上がり、そこで開発されたばかりの新兵器“ゲシュ=ダール・バム”こと“デスラー砲”の試射を兼ねた、〈ヤマト〉の迎撃戦を指揮することとなった。因みに、このデスラー砲は、波動砲と何ら構造は異ならぬ超兵器であった。
  機動要塞に配備されたデスラー砲(厳密には、機動要塞に格納されていた〈デウスーラU世〉のデスラー砲であるが)は、遠方からの迎撃を望むものの失敗してしまう。あまつさえ〈ヤマト〉側の決死の抵抗により、機動要塞の主要動力部を破壊されてしまったのだ。この動力部の破壊によってエネルギー暴走を引き起こしてしまった機動要塞だが、この要塞と半ば一体化していた〈デウスーラU世〉に乗り込んでいたタランは、危険を承知で緊急ワープによる離脱を行い、辛うじて生還したすることに成功したのだった。
  因みに〈デウスーラU世〉は、コアユニットと呼ばれるロケット型艦艇と、主兵装(デスラー砲、陽電子ビームカノン砲塔等)を備えた外殻ユニットと呼ばれる艦艇が一体化して初めて、〈デウスーラU世〉として運用可能なものである。
  コアユニットは、デスラー総統府内部に格納されていたが、この決戦を前に〈ヤマト〉を迎え撃つ為にも〈デウスーラU世〉を稼働状態に持っていく必要があった。そこで、総統府内部からロケットの如く打ち上げられたあと、そのまま機動都市に格納されていた外殻ユニットと合体し、本格的な戦闘艦として目覚めたのであった――結局は〈ヤマト〉と直接的な砲火を交えることなく離脱したが。
  機動要塞は暴発し、崩壊した衝撃波は凄まじかったもので、要塞の近辺で防御線を構築していた親衛航宙艦隊は、尽くが崩壊のエネルギーの濁流に巻き込まれて壊滅の道を辿った。

「成程、これが“死”か……」

  親衛隊長官ギムレーも、自ら親衛艦隊を率いて機動要塞前に陣取っていたが為に、機動要塞の暴発の余波に呑み込まれて戦死。更には、崩壊した機動要塞の巨大な破片群が重力に惹かれて落下し、ガミラス帝星の地上と地下都市に多大なダメージを与えた。
  この隙を突いて〈ヤマト〉はガミラス星内部に突入し、帝星都市の中枢部を叩く戦術に出た。なるべく市民への被害を最小限度に抑えようという判断によるものだった。
  機動要塞と親衛艦隊の壊滅、そして都市の被害を目の当たりにしたデスラーだが、一にも二にも〈ヤマト〉の撃破に固執した為、或は戦闘という狂気に駆られた為か、都市上空での戦闘を辞さない強硬姿勢で戦闘を継続する。残存する親衛艦隊や、地下都市内部の防衛基地に迎撃を指示し、お膝元であろうと構うことなくミサイルを乱発したのだ。
  その結果として、外れたミサイルやビームは流れ弾となり、天井都市と地下都市の双方が多大な被害を生み出すこととなった。
  この時、副総統レドフ・ヒスは、デスラーの狂気に慄きはしたものの、勇気を奮って意見を申し立てた。これ以上の戦闘は自殺行為であることを……。

「例え、大ガミラスとて敗れることはあったのです。このままでは滅ぶのは我々です。総統、どうか停戦のご決断を……遅まきながら申し上げますが、地球人との共存を――」

  そこまで訴えた時、彼の心臓は永遠に止まった。ガミラスの敗北という苦杯を認めかねたデスラーの手によって、その場で射殺されたのだ。それを見ていた他の幕僚陣もまた、この行動に戦慄した。誰の目にも、ガミラスの崩壊は明らかであったのだが、それ以上にデスラーに逆らえば死を賜ることは、察する以前の問題だ。幕僚陣は、彼の渦巻く狂気に呆然としてしまう程だった。
  そんな幕僚陣を無視して、デスラーは戦闘を継続したのであるが、これがまた余計な騒ぎを引き起こした。戦闘の影響で破壊され落下してきた巨大な破片群や、それを支えていた天井の岩盤が崩落し、空洞内部の都市諸共を巻き込んで押し潰していった。そればかりか、ミサイルの一部は活火山の火口に落下。強制的に眠りを妨げられた火山は、怒りに目覚め、文字通り噴火という報復によって、帝星内部を地獄絵図へと塗り替えていったのである。
  人災と戦災が混ざり合って化学反応を起こした結果、天災という劇薬がガミラス星そのものを蝕む。不幸が重なったとはいえ、大ガミラス帝星は機能不能に陥り、デスラー本人も、周りの幕僚を巻き添えにする形で戦死してしまったのだ。こうして、ガミラス帝星での決戦の幕は閉じられることとなった。
  大ガミラス帝星が戦災と災害の二重演奏で苦悶にのたうつ事態となったが、そこへ、遅ればせながらディッツとガデル、ヴェルテが到着した。さらに、本星への異変を感じ取って帰郷してきたジュラと鉢合わせしたという次第である。

「――今や、これがジュラ総統の下に掻き集められ得る最大限の戦力……心許ない限りです」
「致し方ありません。私は、父ほどのカリスマを持たぬ若輩の身。まして、サイレン人の血を含んでいるとなっては」

  総旗艦〈デウスーラU世〉の艦橋から見える、数を減じた同胞の数を見て嘆くタランに対して、自身の身なりを見つめながら自虐的な笑みを浮かべる新総統ジュラ。サイレン人は人の脳波に合わせた幻覚を見せることの出来る特殊な人種で、さらにはどんな遠くの人間の思考まで読み取ってしまう能力を有しているが故に、多種族からは忌避され、迫害も日常茶飯事であった。
  中には人種の壁を越えて共に暮らす者達も少なからず存在したものだが、ジュラは微妙な立ち位置にある。デスラーとメラは、互いに心惹かれ合った仲だったが、次第に特殊能力がうっとおしく思い始めたデスラーの手によって、サイレン星へ幽閉されたのである。
  そのエルフの様な尖った耳を、己の手の指でサラリと弄るジュラに対して、ヴェルテの想いは全くぶれることは無い。

「何を仰います。人種が何だと仰るのですか? 貴女は、亡きデスラー総統の意を継ぐ後継者であらせられる。私は無論、此処に集いし兵士達は、貴女様に永遠に付き従うことを誓っております」
「……感謝に堪えません」

  このヴェルテ・タランは如何にも――というより、確実にテクノクラートな知能派官僚だったが、心の奥底には熱い武人の魂を宿していたようであった。それが、大ガミラス帝星が亡国となったことと、遺されたジュラ、ガミラス民族の危機を前にして、硬い殻から孵化した次第である。まして、一度は戦線を離脱し、戻った時には荒廃した母国を目にしてしまったことを一生の悔いだと嘆いていたものだ。
  ヴェルテの言葉は、ジュラにとって何よりの励ましの言葉だった。こうしてガミラス民族を束ねる新指導者として立つ決意をしたのも、ヴェルテ、ガデル、そしてディッツらの存在あってこそだ。
  何より予想外だったのは、ジュラの名を出しておきながらも、730余隻の戦闘艦や民間人を乗せた非武装船が、彼女の基に集ったことである。本当は、もっと少ないと思っていただけに、ジュラは驚きを隠せなかった。無論、心から忠誠を誓う者が全てではなく、身寄りがなく仕方なく集った者も少なくない。中には、デスラーに叛意を持っていた者もいるくらいだ。
  これに関してヴェルテは、一応の注意は促した。

「御父君を亡き者にしようとした謀反者です。お連れするのは……」
「父ならば追放したでしょうが、私はそうは致しません。身寄りがないのは誰しもが同じ筈です。過去のことは問いません。その代り、共に歩んでもらいたいのです」
「総統……お優しい心を、お持ちですな」
「甘いですか?」

  きっと若さ故の甘さだろう、とその時は思っていた。
  だが、ヴェルテはその優しさがデスラーとは違う魅力を放つ指導者だとして、寧ろ褒め称えた。素直に褒めてくれる彼の笑みに、彼女も嬉しくなった。人生で心の奥底から褒められたことは数少ない。デスラーからのこと褒め言葉は無いが、愛情は持っていたのは間違いない。母のメラにしても、たった1人の娘とあって蔑ろにすることはまずなく、母としての愛情を注いでくれた。それでも、純粋な、明るい笑顔で褒めてくれたのは記憶に乏しくなってしまい、それが彼女の心に小さくない寂しさを溜め込んでいったのだ。
  父は、自身のカリスマ性によって臣下達を引き連れていたが、今や自身が元臣下達に支えて貰うことを考えると、何だかんだで自身もまた恵まれていると尽々に思う。
  その様な思いに深け入る最中、目標とする標的――〈ヤマト〉がバラン星宙域に侵入したことを、前衛部隊より受け取った。

「タラン将軍、1隻の艦がバラン星外周にゲシュ=タム・アウト……間違いありません、〈ヤマト〉です!」
「来たか……総統!」
「いよいよ、ですね」

  報告を受けたジュラの表情は、何処か硬い様にも思えるが、決して将兵達の前では温厚そうな表情を崩しはしなかった。
  母国を壊滅させた張本人たる〈ヤマト〉の姿が、〈デウスーラU世〉の艦橋内スクリーンに投影される。たかだか1隻の戦艦でしかない筈だが、その姿を見たの大半ガミラス将兵からは“破壊神”と称する程に、強大な敵として目に映っていることであろう。730余隻の艦隊を持ってすれば、〈ヤマト〉1隻などどうでも出来よう筈だが、母国である大ガミラス帝星を滅ぼした実績からすると730余隻でも物足りないと思ってしまう。
  故エルク・ドメル上級大将の率いた第6空間機甲師団でも、撃沈できず手こずったのだ。まして、〈ヤマト〉の果敢な抵抗によって第6空間機甲師団が受けた損害も、決して少なくはなかったのである。
  このバラン星に集った艦隊は、正規艦隊もいれば各戦線で辛くも落ち延びた敗残兵、或は警務艦隊など実戦経験の少ない部隊らが集まった、文字通りの寄せ集めだった。それを実績豊富なガル・ディッツ提督が纏め上げているとはいえ、訓練などする暇もなく土壇場での決戦という形となる。

「……?」

  指揮官席に座っていたジュラは立ち上がり、スクリーンに映る〈ヤマト〉の異なった雰囲気に気づく。ヴェルテも、ジュラに遅れてソレに気付いた。

「〈ヤマト〉の艦首は、蓋がされているのですか?」
「そのようでございますな。あれは、この〈デウスーラU世〉のデスラー砲と同等の破壊力を持つ武器です」
「地球の人々が、波動砲と呼ぶものですね」

  得意の人の思考を読み解くことのできる能力を持ってすれば、ジュラが〈ヤマト〉クルーの面々が破壊兵器を何と呼んでいるかは直ぐに判明できる。ただし、ジュラの能力は決して高いとは言い難く、母のメラに比して低いものであったが。
  何故、波動砲口に蓋をしているのか。それも直ぐに判明する。

「どうやら、イスカンダルからコスモリバースシステムを受領した影響で、撃てない様な状況にあるようですね」
「おぉ……!」

  それを聞いたヴェルテはチャンスだと察した。〈ヤマト〉が波動砲を使えないとなれば、こちらはデスラー砲での先制攻撃で葬ることも可能だと知ったからだ。しかも前回と違い、今回の〈ヤマト〉は帰路にあってガミラスは滅んだとばかり思っており、襲われることは無いと踏んでいるに違いない。
  であれば、こちらの存在が探知されていない今を置いて、一撃で〈ヤマト〉を葬るチャンスではないだろうか。
  だが、その考えはジュラによって読み取られ、直ぐに制止される。

「いけません、ヴェルテ将軍。デスラー砲は使いません」
「!? 何故ですか、ジュラ総統。今ここで使えば、容易く〈ヤマト〉を――」
「あの兵器は、旧イスカンダル帝国が、かつて大マゼラン銀河を血に染めた時代に使われた禁断の兵器です。スターシャ女王陛下、そして、ユリーシャ公女殿下は、それを嘆いていらした。ヴェルテ将軍も、ご存知でしょう?」

  旧体制時のイスカンダルは、今のガミラスと同じくして帝国主義を掲げていた。波動砲を侵略の武器として使い、かつての大マゼラン銀河を多くの血で塗り固めていったものだ。それは、ガミラス人も知るところであり、同時にジュラもまた、母のメラから聞かされたことのある歴史である。波動砲によって星を破壊するという行為が、漫然となる未来に強い危機感を覚えていた現イスカンダル星女王スターシャ・イスカンダルは、決して波動砲の技術供与は許可しなかったとされる程だ。
  ジュラもそれに賛同的で、デスラーの弔い合戦であろうとデスラー砲の使用は許可できない。許可すれば、自分らもまたイスカンダルと同じ道を歩む筈である。生き残りのガミラス人を率いる身としては、将来において再起したガミラス人による新国家が、多くの星々を血に染める様を想像したくはなかった。

「これは、個人的感情による弔い戦です。私達が本当に危機に陥った時ならいざ知らず、この戦いでは使用を認める訳にはいきません」
「しかし……」
「一度、デスラー砲による戦果に味を占めてしまえば、私よりも後の世代が、今後もデスラー砲を大量に使用し、見境なく犠牲者を生み出すことは容易に想像できましょう。それでも、構いませんか?」
「……了解しました。ここは、武人としての誇りを全力で〈ヤマト〉にぶつけ、我らガミラスの力を思い知らせてやりましょう」
「ありがとうございます、タラン将軍。それと、もう1つだけ、我儘を聞いてもらっていいですか?」
「なんなりと」

  潔く諦めてくれたヴェルテの器量には、ジュラも感心してしまう。もしも他の者だったら、デスラー砲という魔力に憑りつかれて使用してしまっただろう。彼の様な人材を失くしてしまうのは想像に絶する痛手だ。ここは、どうしても〈ヤマト〉に勝たねばならないが、そこでもう1つのお願いをヴェルテ・タランに頼んだのだ。



〜CHAPTER・U〜



「〈ヤマト〉に通信を繋いでください」
「よろしいのですか? 我らの存在を暴露することになりましょうが」
「我々の本隊はいざ知らず、展開中の部隊は気づかれてはいないのでしょう?」
「そうでございますが……」

  ジュラの言う通り、ガミラス艦隊は6つの部隊に別れて配置されている。
  まずジュラ直属部隊約40隻を本陣として奥深くに配置され、その前面には第1部隊約180隻が展開する。
  第2部隊と第3部隊からなる襲撃部隊約280隻は、そのさらに前面にある大量のデブリ群とガス帯の中で息を潜めており、第4部隊約120隻は、最前線に位置するデブリとガス帯の少ないバラン星外園に位置していた。この第4部隊が事実上の前衛部隊となって〈ヤマト〉を待ち構えている格好となる。
  残る第5部隊約110隻は、第2部隊・第3部隊と、第1部隊の中間で構えて配置されていた。
  当初の手順として、次の様な作戦が立てられていた。なお〈ヤマト〉が時間惜しさに“ゲシュ=タムの門”を通過する筈であり、そこから短期決戦を仕掛けてくるのは明らかであることから、動きは読みやすい。

1.前衛である第4部隊が最初に矛先を交える。
2.第4部隊を突破された後、デブリ群に隠れていた第2部隊が、〈ヤマト〉正面より奇襲を掛ける。
3.突破された場合は、左右に分かれて展開した第3部隊が、左右両舷から挟撃戦に持ち込みつつ同航戦を行う。
4.挟撃同航戦で仕留められなかった場合は、重火力を持つ第5部隊の集中砲火で〈ヤマト〉を仕留める。
5.万が一、それでも仕留めきれなかった場合は、最後の第1部隊とジュラ直属艦隊が壁になり食い止めつつ、各部隊で包囲し撃滅。

  ――以上の計画で迎え撃つもので、それが概ね変わることは無い。
  寧ろ、率先してジュラのいる直属艦隊に目を向けさせる必要があった。さすれば、〈ヤマト〉の全神経はジュラに集中され、デブリ群に潜む奇襲部隊の露顕を抑えることが出来るであろう。

「元々は、〈ヤマト〉が門へ向かうことを前提に練られた作戦ですが……〈ヤマト〉は門の事情を知らないでいます。もし事情を知れば、彼らはバラン星を避けて、地道にワープを繰り返して帰らざるを得なくなります。そうなってはこちらの罠は無意味になってしまうでしょう」

  そこで、ジュラは自らの存在を〈ヤマト〉に暴露し、かつ門が使えないことも通達する。本来なら避けていこうとするだろうが、そこで〈ヤマト〉の気を此方へ向けさせる手段を見せるのだ。門は単体では使えなくなってしまったが、ガミラス艦隊が手を加えれば稼働することを教えるのだ。
  条件として、自分らに勝てたら、門を稼働させて天の川銀河へ送り届ける――これなら否応に戦闘へ引き込むことが出来る。
  そうともなれば、〈ヤマト〉が狙ってくるのはジュラであろう。他には目もくれず彼女を狙うのが彼らの最短の勝利への道筋なのだ。なれば、それに気を捕らわれている所へ奇襲も可能な筈だ。

「なんと……!」

  今度はヴェルテの方が舌を巻かされる思いだった。何だかんだで、彼女もデスラーの血筋が影響しているのではないかと思った。
  どのみち、戦闘になれば〈ヤマト〉は、この艦が総旗艦であることを見抜くことも考えられる。なれば、今ここで通信回線を全開にして呼びかけても変わるまい。

「お見事な推察でございますな。私よりも遥かに軍師としての素質をお持ちだ」
「煽てても、私からは感謝の意を言うことしか出来ませんよ、ヴェルテ将軍」
「煽てではございません。官僚としての仕事が中心だった私が、こうも発想の転換が回らないのですから」

  ヴェルテは苦笑しながらもジュラの提案を呑むと、通信士官へ〈ヤマト〉への直接回線を開くように命じた。

「〈ヤマト〉との直接回線を開く前に、私の個別回線で艦隊旗艦〈ディルノーツ〉のディッツ提督へ繋げるのだ」
「ハッ!」
「総統、申し訳ありませんが少々ばかりお時間を頂きます。直ぐに終わらせますので」
「構いませんよ、ヴェルテ将軍」

  この指示には、〈ヤマト〉と対話を希望するジュラの傍らで、ヴェルテもまた、作戦変更を密かに伝える為に作戦実行司令官であるディッツへと通信を繋いだのだ。
  ガミラス艦隊第1部隊旗艦ハイゼラード級〈ディルノーツ〉艦橋で、戦端が開かれるのを今か今かと心待ちにしているのは、艦隊司令官ディッツ提督であった。ベテランな指揮官を醸し出す堂々たる姿勢、右目を縦に跨ぐように走る傷跡が、彼の経験してきた戦闘を物語っている。腕を組み、合図が出るまで沈黙を守っていた所へに通信が入った。
  この旗艦〈ディルノーツ〉は、ガイデロール級航宙戦艦の継承型として設計・建造された、ハイゼラード級航宙戦艦の1隻だ。ガミラス軍内部でも、最新鋭の戦艦として就役を始めた戦闘艦で、全長390m、主兵装は330mm三連装陽電子カノン砲塔×2基6門、330mm三連装陽電子ビーム砲塔×1基3門、280mm連装陽電子ビーム砲塔×4基8門、魚雷発射管×33門を備える強力な戦闘艦だ。また、旗艦機能よりも索敵機能の強化をより行ったもので、暗黒物質の漂う宙域や、濃密なガス状惑星内部、宇宙乱流内部での活動をより行いやすくしたものであった。
  ディッツは、親友でもあるヴェルテ・タランからの個別回線を受けると、早速と言わんばかりに作戦内容の変更を言い渡された。

『ディッツ、作戦が多少変わった』
「なに?」

  唐突に作戦変更を言い渡されて訝し気になるディッツに、タランは短時間で経緯を説明した。長たらしく説明しては、ジュラと〈ヤマト〉との通信が終わってしまうからだ。

『当初は奇襲をかける予定だったが、ジュラ総統は敢えて〈ヤマト〉に宣戦布告をされる。同時に戦いに勝てば“ゲシュ=タムの門”再稼働を約束することを条件に挑まれる。さすれば〈ヤマト〉は、ジュラ総統の乗る〈デウスーラU世〉を狙うだろう。時間が惜しい彼らのことだ、短期決戦を狙うのは目に見えるからな』
「……そうか。恐れ多くも総統ご自身が矢面に立たれ、〈ヤマト〉を引きつけると申されるか……わかった。作戦は概ね変わらぬが、ジュラ総統まで辿り着かぬよう、奴を袋の鼠にすればよいのだな?」
『理解が早くて助かる』
「何を言うか、何年の付き合いだと思っているのだ」

  政権崩壊前から深い友人付き合いをしていただけに、ディッツの理解力にはヴェルテも助けられる。事態を飲み込んだディッツは、速やかにヴェルテとの通信を終えると、ディッツは全軍に対して作戦変更を通告しておき、いざ戦闘となった際に混乱しないよう努めた。通達された中には、ヴェルテの弟であるガデルもおり、彼もまたジュラの気概に感服し、一層の闘争心をかき立てた。
  この決戦に投入される部隊は、混成艦隊となんら変わりない。その中で、混成艦隊の中核となった正規艦隊(どの部隊も多大な損害を受け、大きく数を減らしているが)は、以下の通り――

・バラン星駐留艦隊
・中央軍艦隊
・第6空間機甲師団
・第13機甲旅団
・第9重突撃機甲大隊
・第5空母打撃群

  以上、計6個部隊が、混成艦隊の中核として再編成されている。
  グレムト・ゲール少将が纏めるバラン星駐留艦隊、元ヘルム・ゼーリック元帥直轄の中央軍艦隊、故エルク・ドメル上級大将が指揮していた第6空間機甲師団らは、バラン星に釘付け状態だったものの、バラン星崩壊の折に大損害を受けつつも〈ヤマト〉追撃に移っていた。そして今また、ジュラの名の下にそのまま合流し、〈ヤマト〉と相対することとなっていた。
  第13機甲旅団は、集結命令に一早く駆け付けた艦隊で、敗戦が相次ぐ厳しい戦場の中において生き残った部隊だ。第9重突撃機甲大隊も招集命令に反応して駆けつけた艦隊で、この艦隊は敵地への殴り込み役として投入される部隊だった。その能力を如何なく発揮して激戦区を突破し合流することが出来たのである。また航宙母艦を中心に構成された第5空母打撃群は、各戦線から離れた距離にいたことから敵の索敵に掛からずに合流できた。
  無論、上記の艦隊以外にも、戦場で艦隊が瓦解してしまった中で嘉禄も落ち延びた戦隊規模の小部隊なども多数集まっている。
  因みに大隊規模の艦隊は60〜70隻、旅団規模の艦隊は120〜150隻、師団規模の艦隊となると300〜360隻である。
  そして、正規部隊以外に残るのは、版図内部での警備や巡視を専門としていた各部隊も多数集まっていた。

(1隻の戦艦を葬るには過剰すぎる数だが……相手は修羅場をくぐっている〈ヤマト〉だ。こちらは歴戦の艦艇が多く揃っているとはいえ、連携した戦闘はこれが初めての混成艦隊。しかも、身を隠す為とはいえ、デブリとガス物質が漂うバラン星での戦闘……苦しい戦いになるやもしれんな)

  ディッツは、彼我の戦力比と現状、連携密度、戦場条件を分析し、必ずしも楽観視は出来ないでいた。
  膨大な戦力と力を有していた大ガミラス帝星国防軍も、本星壊滅並びに政府の機能停止という最悪の事態によって、各戦線のコントロールが不可能となってしまった。帝星司令部を失った各戦区のガミラス軍も、さしもの動揺して侵攻の脚を止めざるを得なかった。そればかりか、寧ろ戦線を縮小するという消極的な対応を取らざるを得なかったのだ。
  そこへ、各戦線の反ガミラス派の星間国家、惑星国家らが組んだ惑星国家連合軍らが息を吹き返したばかりか、ここぞという時に巧妙な連携を取って逆撃を加えて来た。後退するガミラス軍の各戦線を突き破っていき、瞬く間に戦線崩壊を招いてしまったのだ。怒涛の勢いに乗った星間国家群の軍勢を前にして、ガミラス軍は帝星司令部の方針を受けられずに立ち往生してしまった。
  そして、動揺し立ち往生していた大半の部隊が、自分らの持ち場である戦線を支えるという選択を選んだのだ。

「我らガミラスに敗北は無い!」

  無敵ガミラスを謳って来ただけに、後退をするということは屈辱的な行為だと錯覚してしまった指揮官達が大勢いたのである。
  結果として、ガミラス軍の各戦線は完全崩壊してしまった挙句に、各占領宙域を完全放棄せざるをなくなった。加えて各部隊は、降伏を拒絶して玉砕し最後までデスラーに忠誠を示すか、或は降伏の道を選んだのだ。
  一方で、少しでも将兵の犠牲を抑え込むと同時に、帝星司令部の復帰を願って雲隠れする部隊も少なからず存在した。ヴェルテやディッツは、そういった生き残っているであろう部隊と連絡を取ろうにも、現状では通信もままならなかった。下手に通信すれば、ガミラスに敵対する諸惑星の軍勢を呼び込むことになりかねないからだ。まして、デスラーの後継者がいると知れば、躍起になってくるに違いないのだ。
  しかも、ガミラスに対して反抗を続ける外部勢力ばかりが、ガミラス軍を強かに打ちのめしていた訳ではなかった。ガミラス軍とはいえ一枚岩の組織ではない。表面上は唯唯諾諾として付き従ってきたガミラス人も少なくはなかったのだ。
  取り分け叛意の傾向が強かったのは、外交圧力や武力によって併合された惑星国家群であるのは、想像に容易いことだ。元々から、ガミラスに義理人情など1mgも無かった各国家群や、不平不満を募らせていた各ガミラス軍部隊は、ここぞとばかりに反旗を翻した。不満が爆発したことで、後背からガミラス軍を撃って壊乱の縁に叩き込んだ部隊もあれば、併合された各惑星の兵士で構成された部隊が、そのまま母星へと帰還してしまう場合も多く見られていたのだ。
  だが、その中で未だにガミラスへ合流することを望んで潜伏している同胞達もいるだろうが、合流できるかは甚だ難しい問題だ。

「ディッツ提督、ジュラ総統閣下が〈ヤマト〉との回線を開きました」
「うむ」

  遂に直接回線が開かれた。

(ジュラ総統は、一度〈ヤマト〉と相見えておられる。彼らクルーのことは、恐らく我らよりも遥かに知っていよう。それだけに、堂々の宣戦布告を成されるとは……若くして修羅の道へ歩まれるか)

  今だ20歳にもならぬ若い娘が、放浪のガミラス人を束ねる指導者となったことに、ディッツは半ば後ろめたい様な気持ちがあった。親友であるヴェルテが、ジュラを新総統として迎え入れるという提案に対し、ディッツは抵抗感があったのだ。
  何せディッツ自身は、軍人として兵を率いるなら良いとして、生き残った市民をも纏めての指導者としての力量は高くはないと自覚していた。戦うことが本分の彼にとって、流浪の民を率いるのには難しいものだったのだ。ヴェルテは文官肌が強く、一見すれば彼が適任かと思われたのだが、それでも流浪の民を束ねるには力不足だと自覚していた。
  片やジュラは、唯一無二の、デスラー家の血筋を引く後継者である。まして、初々しくも神々しい容貌は神秘的であり、指導者と言うよりも女神の類に思えた。その代り、政治的判断や軍事的判断は素人である。であればこそ、そういった武と知の部分をヴェルテとディッツで補い、人心を纏める柱としてジュラが受け持った。ヴェルテが決心したように、ディッツもまた、ジュラを護ろうと誓ったのだ。

「全軍、戦闘態勢を維持したまま待機。ジュラ総統閣下のご指示があるまで、戦端を開いてはならん。よいな」

  亡国の民と化したガミラス兵らが、〈ヤマト〉に対して感情的になって暴発しないとも限らない。もしも勝手に発砲でもされれば、〈ヤマト〉を騙し討ちした等と汚名を切ることにもなりかねないばかりか、ジュラの信用も失墜する。勿論、それを制止できなかったディッツらにも責任はあり、今後のガミラス復興の大きな弊害となってしまうだろう。そうならないよう、彼は厳重な待機命令を送ったのだ。



  一方、〈ヤマト〉との通信回線がオープンになり、〈デウスーラU世〉艦橋内の大型スクリーンには、ジュラの記憶に新しい若い地球人男性の顔があった。
  まずは形式通りの挨拶を、〈ヤマト〉のクルーに対して――厳密にはスクリーンに投影される人物へと送る。

「私は、ガミラスの総統ジュラ。お久しぶりです、〈ヤマト〉の皆さん」
『総統……ジュラ!? 何故、君が……』

  20代前半程の若い男性士官〈ヤマト〉戦術長古代進一等宙尉は、動揺した表情でジュラを見つめている。以前のサイレン星における一件で会ったことのある若き士官であり、ある種において純情かつ、そして生真面目な印象を強く与えていたのを、今でも覚えていた。そんな彼も、サイレン星で別れたジュラが、よもやガミラスの総統として君臨するなどとは到底考え及ぶところではなかった。
  そして、別に思うところがある。〈ヤマト〉艦長沖田十三宙将の姿が、いるべき位置である艦長席にいなかったのだ。老練な地球の軍人の沖田が何故いないのかは、彼女も何となくだが想像は出来ていた。彼は遊星爆弾症候群という病によって身を蝕まれており、この長大な航海で文字通り命を燃やし尽くすつもりなのだ。

『君は、滅んでしまったガミラスの指導者になったのか』
「独り身となった私にとって、この宇宙に往くところはありません。おわかりでしょう? この私の中に流れるサイレン人の血がある限り、私は他の種族から忌避されるのです……貴方達は例外ですが」

  サイレン人の能力は〈ヤマト〉クルーが嫌がおうに味あわされたものだ。古代も、その能力によって幻聴や幻覚を視ている。

「当初はサイレン星に留まるつもりでしたが、どうしても気がかりになっていたのです。私の父……アベルト・デスラーのことが」
『なっ……デスラーが、君の父親!』

  これは、〈ヤマト〉の誰しもが知り得ていない情報だった。それは当然だった。ジュラはそれを教えていなかったのだから。

「黙っていたことは、お詫びします。私がガミラスの総統として就くことは、本来ならばあり得ないことでした。なので、敢えて申し上げなかったのです」

  その表情に陰りがさしたのを、古代は見逃さなかった。サイレン人の能力を忌避するガミラス人が、ジュラを後継者をとして立てる訳がないと考えるの常識だったが、この非常事態にあってガミラスの残党は、ジュラを新総統として受け入れたのだった。

「私にどうこうできるか分かりませんが、自然と身体はガミラス星に向かっていました。父デスラーを止められるかは別としても……しかし、彼も既にこの世の人間ではなくなりました」
『それは――』
「いえ、咎めている訳ではありません。事情は聴いています」

  〈ヤマト〉との決戦で戦死したデスラーだが、要するに〈ヤマト〉がジュラの父を殺してしまったことになる。身寄りのなかったジュラを、本当に独り身にしてしまったのだ。そうと知った古代は勿論、その艦橋にいる他のクルー達も気まずい雰囲気に包まれてしまう。
  だが、デスラーにしても自業自得なのだ。自身の膝元で決戦を挑んだ無謀な結果が、彼自身の命と、数多くの将兵や臣民を巻き添えにしてしまったのである。

「恨んでいる訳ではありませんが、私はガミラス総統としての立場が……生き残ったガミラス民族の人々を率いる立場があります」
『それでいて、一戦交えると言うのか』
「はい。亡き父アベルトと、ガミラス星を屠った〈ヤマト〉を打ち倒してこそ、私達の新たな旅が……父アベルトが掲げていた第2の母星を探す旅が出来るのです」
『新たな旅……第2の母星……?』

  通信画面越しに、古代は疑問を表情に出した。彼らからすれば不可解であろう。〈ヤマト〉に国を滅ぼされたから旅に出るのではなくて、それ以前にアベルト・デスラーが計画していたことだというのだ。

「貴方がたは知らぬことではありますが、ガミラス星は寿命を迎えようとしていた星なのです。それも100年にも満たない内に、居住不可能な死の惑星に変化すると予測されていました。それをどうにかするべく、父アベルトは、ガミラス人が居住可能な惑星を探し求める意味でも、大マゼラン銀河を制覇したのです」
『……まさか、遊星爆弾に混じっていた未知の植物は、ガミラス人の身体に適合させる為の環境改造だったのか』

  声を出したのは真田であった。科学者として、地球表面に蔓延した未知の植物の研究解析には、彼も携わっていたものだ。以前の木星に存在した浮遊大陸にも、同じような植物が群生していたことが分っていた。その事からも、人為的に環境を作り変えるものであろうことは予想していたが、それがガミラス人が居住可能にする為の行程だったとは予想していなかったのである。
  もっとも、環境の改造は成功したとは言い難いものであったことは、古代達が知る由も無かった。母国に存在している生態系を他惑星に移植するのは簡単なようで難しい。異なる自然体系に無理矢理組み込んで、自分らに適合する環境を造ろうというのだから、時間も掛かった。
  しかも結果は芳しくはなく、言ってしまえば失敗に終わったのだ。
  これまでにも、適合可能と思われる惑星に同様のことを試みたものの、すべて失敗に終わっていた。ガミラス人が馴染める程の自然環境に仕上がることは無く、無駄な時間を費やすばかりだった。無論、ガミラス人が他の惑星で過ごすことは可能であるが、ガミラス本国と異なる環境下では身体を蝕み、通常の平均寿命に比して10歳から15歳も早く命の火を消してしまう。
  下手な移住よりも、艦艇の中で過ごした方が長生きできるのではないか、とさえ囁かれたものである。
  そして本星も死に絶えた同然の今、残るガミラス人は決死の覚悟で新たな母星を探すべく立ち上がろうとしていたのであった。
  だが、立ち上がる前に〈ヤマト〉を倒さねばならないという前座があった訳だが。

『君は……それで良いのか!』

  ここに来て戦いたくはない。古代の願いは悲痛なものであることを察していたが、ガミラスの同胞達の願いは打倒〈ヤマト〉を掲げて一致団結している。ジュラは、曇りのない瞳で古代を見つめ返す。答えないこそすれ、その沈黙と並んで動じない瞳と視線が、彼女の決意を強く表しているのだ。何を言っても引き返してはくれないだろう。
  古代も察してくれたようで、一瞬だけ悔やむような表情を作ったが直ぐに視線を上げた。

『どうしても、穏便に済まされないのか』
「はい。ガミラスの存続の為、新たなガミラス民族による国を再起する為にも、貴方々に戦いを挑みます」
『……分かった。その挑戦、受けよう』

  その言葉に、古代の周囲にいた者達の多くが、半ば複雑な表情を浮かべて彼に視線を集中させているのが、ジュラにもモニター越しにわかった。彼らは、どの道バラン星を通過せねばならず、なおかつ“ゲシュ=タムの門”こと門を通って短期間で地球へ帰還せねばならないのだ。無駄な戦闘は避けたかったではあろうが、こちらとて母星を破壊されたまま引き下がる訳にはいかない。どちらも存亡を掛けているのだから。
  だが、門は稼働してはいない。バラン星内核にあったエネルギープラントが破壊されてしまった為だと、ジュラは教えた。

「もう1つ。貴方々は、“ゲシュ=タムの門”を使おうとしているのでしょうが、残念ながら機能しておりません」
『何だって!?』

  驚くのも当然だろうが、同時にゲートを使う予定であったことを身を以て示している事にもなった。〈ヤマト〉クルーも次々と絶望の色を浮かべる。これでは地球に間に合わないのかもしれない、という懸念が広がっているが、そこでジュラは用意していた希望を彼らの前に与えた。

「古代さん。もし、この私を倒すことが出来れば、我々が責任を持って天の川銀河系へとお送りいたします」

  それは、ガミラス艦隊の各艦艇の動力部を連結させ、ゲートをコントロールする人工天体へと直結させる。後は全艦がワープ航法に使用するレベルにまで機関部の内圧を一気に上げ、ゲートを起動させて〈ヤマト〉を天の川銀河までジャンプさせるという。なお計算上では、最低でも20数隻の艦艇によるエネルギー供給であれば、ゲートを再起動させることが可能だというのだ。
  よしんば〈ヤマト〉がジュラを倒せた後は、非戦闘部隊に編入されている護衛艦艇が全力で機関をフル稼働させ、ゲートを起動させる。
  〈ヤマト〉クルーの面々からすれば、これは信じるには難しい条件だった。新しく指導者となったばかりのジュラが倒れれば、残ったガミラス艦艇が死に物狂いで襲い掛かることだって有り得たからだ。その危惧をジュラが分からない筈がない。彼女は約束を必ず守ると、古代達に公言する。

「お約束いたします。貴方々が勝利した暁には、必ず天の川銀河までお送りすると」
『……君の言葉を信じよう』
「ありがとうございます。では、互いの未来の為に……全力で参ります」

  そう言うと〈ヤマト〉との通信はそこで切れた。何も映らなくなったスクリーンから目を離すと、彼女は傍に立つヴェルテへ横顔だけ見せて目配せする。全艦へ通信を開くよう合図したのだ。彼女の意思を理解したヴェルテは、通信士官に全艦への直接回線を開く様に命じた。
  通信士官が、回線オープンが完了したことを知らせると、ジュラは口を開く。

「ガミラス軍の皆さん、ジュラです。そのまま聞いてください」

  かのデスラーと比較すれば、威厳やカリスマ性に乏しい演説の第一幕であるが、心優しくも決意を秘めた声に誰しもが耳を傾ける。

「いよいよ、亡き父……アベルト・デスラー総統を倒し、大ガミラス帝星を滅ぼした〈ヤマト〉と、雌雄を決する時が来ました。お判りでしょうが、〈ヤマト〉はただの艦ではありません。地球を救う使命を帯びた、地球人の思いが込められた不屈の艦です」

  それは否定しようのない事実だ。過小評価して挑み掛かるよりも余程良い、とジュラは思った故の言葉だった。

「ですが、必要以上に恐れる必要はありません。私達もまた、新天地を求めて新たなガミラスを再建するという、大きな使命を背負う立場にあります。その再建の想いは、〈ヤマト〉以上に強いものだと自負している筈です」

  互いが成し遂げなければならない使命を帯び、それを成す為に生き残らねばならない。今のガミラス艦隊は寄せ集めかもしれないが、各戦線を生き抜いた古強者が集まると同時に、これまで以上に熱き想いに震え立つ兵士達が団結している。負ける筈がない。デスラーが成し遂げられなかった〈ヤマト〉撃破を、自分達で成し遂げるのだ。

「〈ヤマト〉を倒し、皆さんと共に新天地を目指して歩みだしましょう。皆さんの健闘を、期待しています」
「ガーレ・ジュラ!」

  ジュラの演説が終わるや否や、ヴェルテが真っ先に叫んだ。それは大ガミラス帝星時代からずっと続いていた掛け声である。それを、ジュラに変えているのだ。ジュラの腹心となるべく支えるヴェルテの、綺麗な直立姿勢と共に見事なまでの90度直角に立てられた右腕は、誰しもが見とれてしまった。
  それはガミラス式の敬礼であり、周囲にいたクルー達も直ぐに直立不動な姿勢をとると、ヴェルテに続いて復唱した。

「ガーレ・ジュラ! ガーレ・ガミロン!」
『『『ガーレ・ジュラ!! ガーレ・ガミロン!!』』』

  瞬く間に全艦隊にまで波及し、生き残りの全将兵がジュラを改めて新総統として認識し、厚き忠誠を示すが如く敬礼と復唱を行う。ガミラス艦隊の人数からすれば微々たるものに過ぎないであろうが、この時の掛け声はバラン星宙域全体を揺るがすような意気込みだった。
  全軍の三唱が終わると、ジュラは改めて全艦艇に命令を発する。それは、彼女の人生で初めて発した戦いへの火蓋を切る号令だ。

「全軍、戦闘を開始してください」
「全軍、戦闘開始! 良いか、これはデスラー総統の弔い合戦でもあるのだ、心して掛かるのだ!」

  ヴェルテが景気づけにと、命令の復唱に続いて全軍を改めて鼓舞する。以前のタランを知る者なら戸惑う程の、血気を滾らせた姿であった。ガミラス艦特有の目玉の様な形状が、戦闘態勢に移行したことを示す赤色系統にグラデーションが変わる。一斉に血に飢えた鮫にでもなったような光景であろう。
  戦闘態勢に切り替わる艦内にて、ジュラは一瞬だけ瞑想し、亡き父と母に無理だと分かりながらも祈りを捧げる。

(お父様、お母様……このジュラに、ガミラスの皆さんに、どうかご加護を)
「ジュラ総統、タラン将軍、〈ヤマト〉が動き出しました!」

  始まった。

「〈ヤマト〉増速、間もなく前衛部隊と接触」
「このコースは、やはり……」

  ヴェルテが戦況状況を投影するスクリーンを見て、直ぐに〈ヤマト〉の意図を見抜いた。いや、当然の選択として、それしかなかったのであろう。増速を開始した〈ヤマト〉の針路上には間違いなく総旗艦〈デウスーラU世〉が被っており、ジュラの目論見通り、総旗艦を真っ先に潰す算段なのだ。これは承知の上であり、後はディッツの手腕と将兵達の連携に委ねられる。

「頼むぞ、ディッツ、ガデル」

  ギュッと握りしめるヴェルテの拳がジュラの目に入る。彼の表情には、隠し切れない不安があるようだが、敢えてそれを言及はしない。懸命に戦おうとする人間に対して無粋であり、士気を著しく損ねる行為だ。今は、全てをヴェルテ、ディッツ、ガデル、そして多くの将兵達に任せるしかないのだ。
  そして、〈ヤマト〉が〈デウスーラU世〉に差し迫るまでの間には多少の時間がある。
  再び指揮官席にちょこん、と上品に座り込むジュラは瞑目する。ここに至るまでの出来事を振り返った。





※主要登場人物

名前:ジュラ・メルディア
年齢:14歳(地球換算)
肩書:総統
詳細――
  ガミラス人であるデスラーと、サイレン人であるメラの間に生まれた少女。母譲りの金色のベリーロングヘアに、エルフの様な尖った耳、青い瞳を持つ。
  人の心を読み取ることのできるサイレン人で、それが原因で母メラ共々、辺境のサイレン星に隔離されていた。
  唯一のデスラー家の血を引く人物として、デスラー亡き後に総統としてガミラス民族を束ねる立場に立つ。
補足――
  漫画版『永遠のジュラ編』、WS版『宇宙戦艦ヤマト』、PS版『宇宙戦艦ヤマト〜永遠のジュラ編〜』に登場するキャラクター。
  漫画版、PS版では宇宙を彷徨う孤独の身で終わるが、WS版では残存ガミラスを率いる立場となり、放浪の旅に出る。
  オリジナルでは、名前はジュラのみ。


名前:ヴェルテ・タラン
年齢:42歳(地球換算)
肩書:総統補佐官
階級:大将
詳細――
  大ガミラス帝星随一のテクノクラート。やや細身で、細目の口髭を生やす等、官僚的なイメージを放つ秀才。
  元軍需国防相だったがガミラスの滅亡後は、ジュラの補佐役としてガミラス民族を束ねるブレーンを務める。


名前:ガデル・タラン
年齢:40歳(地球換算)
肩書:護衛部隊司令
階級:中将
詳細――
  大ガミラス帝星の元参謀次長。ヴェルテの弟で、兄と違って角ばった顎やカイゼル髭が特徴の、生粋な軍人。
  参謀職を務めていたが実戦の指揮経験も豊富であるため、実戦部隊を率いてジュラを護衛する。


名前:ガル・ディッツ
年齢:55歳(地球換算)
肩書:提督
階級:大将
詳細――
  大ガミラス帝星の元航宙艦隊総司令官。メキシカン&サイドバーン型の髭にオールバックの風貌を持つ歴戦の軍人。
  ガミラス軍の実戦部隊総責任者として立っていたが、ガミラス崩壊後は新総統ジュラの基で残存する実戦部隊の総責任者を務める。


名前:古代進
年齢:20歳
肩書:〈ヤマト〉戦術長
詳細――
  〈ヤマト〉戦術長を務める青年士官。ジュラとは一度会いまみえたことがある。


名前:真田志郎
年齢:29歳
肩書:〈ヤマト〉技術長/副長
詳細――
  高い知識を持つ士官。科学知識は他者に追随を許さないが、実戦には不向きな傾向がある。



・2020年12月23日:誤字修正、並びに文末に登場人物紹介を追加しました。
・2020年12月19日:誤字を修正しました。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.