そういやぁ、そうだった。





あの日あの時、あの雨の日、





俺はひとりで生きていた。





いきなり違う世界に飛ばされて、





誰にも頼らず、





―――いや、頼る相手もなく、





ひとりで……ずっと。





そこに、ヤツが現れた。





――アノ男だ。















『ソレ、君島くんにあげたら良いのでは?』
(「ナデシコ」×「スクライド」、クロスオーバー?)















「よぉ、坊主。ひとりで何してる?」


降り止まぬ雨を避けるため崩れかけた建物の影に入り、やっとのことで手に入れた食材で作った三日振りの食事にありつこうとした丁度その時、どこからともな く男が現れた。

若い男だ。

痩せ型で長身。少しだけ長い顎。何かが刺さりそうなくらいに尖った髪。一束だけ前に垂れているのが特徴だ。


「こんなところで食事か?」

「あ、あぁ」


警戒する。

もし襲い掛かってきたらおそらくは逃げ切れないだろうが、それでも痛いのはごめんだ。


「ラーメンかぁ。うまそうだな」


俺がまさに今食わんしていたそれを見ながら男は言った。

物取りなのか、そうじゃないのか。

俺は慎重に訊く。


「欲しいのかよ」

「だとしたら、どうする?」


男の目が鋭く光る。

あれは、獲物を狙うような……いや、こちらを値踏みするかのような目だ。

俺は出来るだけの虚勢を張って答える。


「ほ、欲しいなら、奪ってみろよ。ガタイのデカイあんたには敵わないかもしれないが、俺はこのラーメンを放さないぞ」

「うっははははは!」


何が可笑しいのか男は声を上げて笑い出した。


「冗談だよ。オレは物取りなんかじゃねー」

「わ、分かるもんか。そうやって優しい声を掛けてくる奴に何度も痛い目を見せられてるんだ」

「痛いのも裏切りも、どこにでも転がってる。そういうもんだろ?」

「う、んん」


男の真意を測りかねて、俺は言葉を返すことが出来ない。


「その食いもんをどうする? お前はどの道を選ぶ」


だが、

その答えは決まっている。


「渡さない。三日振りに作った三日振りの食事なんだ」

「だったらそうしろ。それでいいんだ。そういう気持ちでいいんだよ」

「あんた……」

「あぁんたなんかじゃねぇ。俺の名前はストレイト・クーガー。誰よりも速く走る男だ」


誰よりも速く? まさかとは思うが、陸上でもやっているのだろうか。


「ストレイト……クーガー」

「坊主、お前の名前は?」

「坊主なんかじゃない。俺の名前はアキトだ」

「アキラかぁ」


普通の発音をしたはずなのに、何故間違える?


「アキトだ! テンカワ・アキト」

「だから、アキラだろ?」


違うって。


「アキトだって言ってんだろ」

「わぁかった。わかった。ところでぇ……」


男の視線が下のほうへ。

そして、俺が持っているもののところでその動きが止まった。

何を言わんとしているのか、大体想像がつく。


「そのラーメン美味そうだなぁ」

「やっぱり、これ狙ってるじゃないか」

「知り合いだから、頼んでんだよ」


さっき会ったばかりだというのに、どういう強引な理屈だ。


「三日振りに作ったって、それ、お前が作ったのか?」

「ああ、そうだよ。俺はコックになりたいんだ」


コックになりたいという夢は、元の世界でもここ『ロストグラウンド』でも変わらない。

ただ、少し達成困難になっただけだ。


「すげぇ美味そうだよなぁ」

「……」

「スープは良い色出してるし」

「……」

「具は在り合わせとは思えない」

「……」

「その匂いも、最高だ」

「……」

「お前は良いコックになるぜ?」

「……ちょっとだけなら、分けてやるよ」


そこまで言われて断ることは、俺には出来なかった。


「助かるぅ。実は俺も三日食ってないんだ――」


そこで、その男――クーガーは何故かタメに入った。

何か、来る。俺の本能がそう告げている。

だが、ソレを止める術を俺は知らなかった。というか、止めることなど不可能だった。


「――愛車に乗って気ままに一人旅を続けていたオレなんだがな、道中五、六人の女性がうつ伏せで、しかも全員が全員血だまりの中で倒れているの を見かけたんで、うわぁ、こいつは拙いものをみつけちゃったなぁなどと思いつつ、しかし、死んでいるか死んでいないかくらい確認してあげるべきなんじゃな いかというわけで、オレが最速でその女性たちに近づいて脈を取ってみると、全員意識を失っているだけで命に別状はなさそうだったもんだから、一安心したん だけど、万が一の、そう、万が一のことも考えて、さらにはか弱い女性を助けるのは精神的にも肉体的にもお礼があるかな〜と思って最速で人工呼吸をしようと 女性を抱き上げたんだ。なんせオレはグッド・スピードだからな。そして近づく顔と顔、吐息と吐息、オレが王子で彼女は姫で、間近に迫る甘いひと時! しか し、なんという悲劇かその女性とオレの唇と唇が触れるか触れないかのその瞬間その女性が眼を覚ましてしまったんで、心の底でコンチクショウと思いつつもオ レは爽やかな笑顔を彼女に送り、お礼の『チュッ』
のひとつでもしてくれるかなぁ、いやここはするべきだろうと期待していたら、いきなりほっぺたを引っ叩かれてよぉ。よくよく訊いてみたら、その女性たちは 全員興奮のし過ぎで鼻血を出しまくったせいで出血多量に陥り貧血で頭がクラクラするのを耐え切れなくなってその場に倒れてただけらしい、っておいおい!  そんな誤解を招くようなことしてるんじゃないっていうか鼻血出して出血多量はまずありえねぇだろそもそも何に興奮したらそんな状態になるんだと思ったけ ど、最速を信条をとしているオレは即座に謝って即座にトンズラしたわけなんだが、その女性のうちのひとりの兄貴がなんとアルター使いでな! 仲間のアル ター使いを集めてオレを追いかけてきたもんだからさぁ大変! 食うや食わずの逃亡劇が始まった、あぁ、三日。まぁ、そんなこんなしている途中でここにいる わけだが、あははははは――」


「ああ! ウルセぇよ!」

「スマンスマン。悪かったなぁ、アキラ」

「アキトだ!」

「ああぁ。スマンスマン」


何なんだ、この男……。















そうだった。





そういう出逢いだったなぁ。















「クーガー。あんたもアルター使いなのか?」


俺は少し興味が湧いたので訊いてみることにした。


「ああ、オレのアルター名は『ラディカル・グッドスピード』。どんなアルター使いもオレの速さには追いつけねぇ」

「闘ったりしたのか?」

「数え切れないくらいなぁ」

「勝ったのか?」

「あぁ。勝った。勝ち続けた。最速のスピードでな。ところで、お前さんもアルター使いなんだろ? 見せてみろよ」

「あ〜……それはぁ〜」


俺がこの世界に来るのと同時に見に付いた、不思議な能力。ここではそれを『アルター』と呼ぶらしい。

だけど――


「何だ? 見せられないって言うのか?」

「いや、そうじゃないんだけど……」

「いいから、見せてみろよ、アキラ」

「アキトだ!」

「あぁ! スマンスマン」















「……どうだった? 俺のアルターは」

「……」


流石のクーガーも黙ってしまった。

ううっ、だから嫌だったんだ。


「……お前、ソレ、本当にアルターなのか?」


やがてクーガーは口を開いた。


「分からないよ。効果がある人とない人がいるんだ。現にクーガーには効かなかっただろ?」

「うーむ……。オレはこれまでにいろいろなアルター使いを見てきた。アルターの形を見ればどんな能力か大体分かるはずなんだが……お前さんのは全然検討も つかねぇ」


俺のアルターの特殊性は自分でもなんとなく分かっている。

俺がこれまでに見てきたアルターは、融合装着型や独立稼動方、遠隔操作型などで、はっきりとそれがアルターだと認識することができた。

だが、俺のアルターはそのどんな型にも当て嵌まらない、自分でも理解出来ないシロモノなのだ。


「まぁ、いいさ。どんな効果があるのかは今度他の奴で試すとして、そのアルターに名前あるのか?」

「ないよ。そんなの」

「だったら俺がつけてやるよ。とびっきり格好良いやつをな」


クーガーは、ニヤリと笑った。


「名前はぁ、そうだなぁ……         ってのはどうだ?」

「         ? ……確かに的は得てるけど……」

「次は技の名前だ。


                      ――にしな」

「……嫌ッス」

「お前に拒否権はない」

「何でだよっ!」

「いいじゃないの。ぴったりじゃないか」


そう言いながら何故かクーガーは右手を俺の方へ差し出し、指をクイックイッっと動かす。


「ほれっ、ほれっ」


意味が分からない。


「な、何? その手は」

「謝礼だよ。謝礼――」


タメに入った。

ま、マズイ! また、来る!


「ひとぉにぃー……何かをしてもらったら お礼をするのは至極当然であり文化の基本法則だ。『ありがとう』『助かりました』『嬉しいです』等の言葉だけで済ませていい問題じゃない。一方的に与えら れたものお礼をしないでいるとそのうち罪悪感になって自分に跳ね返ってくる。そう、お礼は早く返すことが重要なんだ。遅いことなら誰でも出来る猫でも出来 る。何でもいいからお礼を最速で返すことこそ人間関係を円滑に進めるための物理的有効手段であり俺の信条でもあるんだ――」

「ああっ! ウルセぇよ!」

「あはは。スマンスマン。悪かったなぁ、アキラ」

「アキトだっ!」

「あぁ! スマンスマン」

「まったく……ん?」


そんな漫才をしているところへ何か近づいてくるような音が……。

段々、段々近くなる。

それは地響きとなって俺の脳を揺さぶった。


「な、何だ!?」


クーガーの方を見る。

クーガーは額に手を当てて「あちゃー」などと言い出した。

おいおい。それって、もの凄くやばいんじゃ――


「おいっ! そこのてめぇら、ちょっと待ちな!」


近づいてきたのはどデカイ金属の塊。

そして、小さいのが十体くらい。

あれは――アルター?


「おい。アイツか?」

「そうよ。アイツがいきなり私にキスしようとしたの」

「そうか……」


アルターがでかくてここからじゃ良く見えないけど、上の方から男性と女性の声が聞こえる。


「てめぇ、よくも俺の妹に。覚悟は出来てんだろうなぁ!」


叫ぶ男の声。


「あ〜あ、追いつかれちまったか」

「おい、クーガー。まさか……」

「ああ、そのまさか、だ」

「俺、関係ないから! じゃ!」

「おいっ! 仲間を見捨てる気かっ!?」


誰が仲間だ。

巻き込まれるのはごめんなんだ。ここは逃げるに限る。

が。


「そこの坊や! 待ちなさい!」

「へ?」


俺を呼び止める女性の声。

そして、振ってくる人影。

すとんと着地。

あれ? あの人は――


「私たちから逃げるなんて許さないわ」

「責任取ってね?」


続いて軽やかに五人の女の人が飛び降りてきた。


「あ、あなたたちは……」

「久しぶりっ。会いたかったわ」

「いやぁ〜ん。やっぱり可愛いっ」


……。


「おいアキラ。この女性たち、お前の知り合いか?」


知り合いというか、なんというか……。


「あ、ああ。三日前襲われそうになったんだ」

「で、どうした?」

「アルター使った。そしたら急に大人しくなって、なんでか食材を分けてくれたんだけど、突然に鼻血を噴出して倒れちゃったんだ。死んではいなかったけど全 然動かないから、怖くなって逃げてきた」

「……なるほど」


何に納得したのか、クーガーはうんうんと頷いている。

って、そんなことをしてる場合じゃないだろ! アルター使いの人はすんごく怒ってるみたいだし、早く逃げないと――


「おい、アキラ。 お前のアルターの能力が分かったぞ。お前の力――今ここで見せてみろ」

「だから、アキトだって……ええっ!?」

「はら、やれ」

「何でだよ!?」

「いいから。逃げるためだ」

「ああ、もう! やればいいんだろ!」

「何コソコソしてやがる。さあ、存分にいためつけてやるぜ!」

「さあ、坊や。もうにがさないわよぉ」


ジリジリと追い詰められる。

絶体絶命。

本当に効くのか?

でも、やるしかないか。……これ言うの結構恥ずかしいんだけどな。


「よっしゃあ、往けぇ! 最速で!」

「はーい。往きますよー。





「誘惑のぉファーストス マイルっ!!」





「「「「「「あら?」」」」」」

「効いてるぞ。続けてもう一発!」





「鈍感のぉセカンドスマ イルッ!!」





「「「「「「ああっ!」」」」」」

「いいぞぉ。そして止めだ!」





「陥落のぉラストスマイ ルッッ!!」





「「「「「「ああぁ〜ん♪」」」」」」


何故か鼻血を噴出す女性たち。

もの凄い量だ。空が真っ赤に染まる。


「お、おい! どうした!?」


うろたえるアルター使いたち。

俺も驚いた。

何なんだ? この能力は。


「よくやった。それがお前さんの対女性限定アルター、『テンカワ・スマイル』だ。さあ、アキラ。この隙に逃げるぞ」

「え? え?」

「しっかり掴まってろ! 最速のドォラァイブに連れてってやるぜ!」

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっっっ!!」











ぱーぱらぱぱぱーぱぱぱー




















<あとがき……か? これ>

……ギャグですね。

こんにちは、時量師です。

この文章は音読しましょう。最速で。

これは学校で倫理の時間、空をぼーっと眺めているときに浮かんだものをそのまま書いてみました。とはいっても『s.CRY.ed sound edition 1』の台詞をほとんどそのまま使っているのですが……。

連載ほっぽり出して何やってんでしょうね? すみません。明日からは真面目に本編を書きます。

話は変わって、時量師はクーガーくんが大好きです。

これを読んだ人の中でクーガーくんが好きだという人、もしくは早口が得意だという人、時量師と友達になりましょう。是非。あ、君島くんが好きな人も。

黒い鳩さんもスクライドのSS書いてくれないかなぁ。無理ですかね?

ではでは、「The alternative of dark prince」の方も読んでやって下さいね。


時量師さんやっちゃいましたね(汗) 面白いと思います♪ 作品としては 笑いのつぼを押さえています! 原作の『s.CRY.ed sound edition 1』は知りませんが…(汗)

あったら購入してみますね♪

でもこのアルターは…どう表現すれ ばいいのでしょう…(汗) というか、アキトさんはそんなの必要ない気もしますが…

素でできるって言う事?

まあ、大手サイトでは有名ですし ね…実際、アレには私も敵いませんけど…

暴力じゃないしね(笑)

貴方には暴力の方が良いようですけ どね(笑) 所で、時量師さんにSS依頼もらっちゃいましたけど、どうします?

そうだね、GWに時間があったらやってみても良いけどね。

まあ、連載の作品がまだですから ね、特に〜光と闇に祝福を〜が!!

はひぃ(汗) いや、確かにそうですね、明日には下書きがあがると思いますので、今週中にあがるかな? と言うところです。

もう一本も今週中には何とか…(汗)

本当に、最速の人に言われますよ、速さが足りないって。

にゃふう(泣)



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