電気が消え、完全な暗闇に包まれた麻帆良学園。人々の困惑する声、巻き起こる交通事故、混乱と怒号。今や学園都市は混沌の渦と化していた。


 そして真っ暗な大浴場で、ネギとエヴァは闘っていた。しかし1対1というわけではない。エヴァ、茶々丸、チャチャゼロ、そしてエヴァによって一時的に眷族と化した3−Aの運動部4人組。7対1の多勢に無勢である。前者3人ならともかく、4人はネギのクラスの生徒であり、傷つけるわけにはいかなかった。それ故にネギは、人数差以上の劣勢を余儀なくされていた。
 しかし彼とてやられっ放しではない。大きく距離を取り、素早く呪文を紡ぐ。



「大気よ 水よ 白霧となれ 彼の者等に一時の安息を 眠りの霧(ネブラ・ヒュプノーティカ)

 明石と佐々木は逃れたが、和泉と大河内は眠りの霧により意識を失い、崩れ落ちる。ネギはそれを優しく抱きとめながら、謝罪しつつ横たえた。
 そしてそれを見計らって、エヴァの魔法が飛ぶ。




「魔法の射手、氷の17矢!」




 放たれた魔法の射手は窓際までネギを追い詰め、そのままガラスを割ってネギを弾き飛ばした。そのまま落下していくネギだったが、直前で杖にまたがり、飛行していく。

 なおも追いかけてくる魔法の射手を魔法銃で撃墜しながら、ネギは事前にしかけたトラップのある橋へ移動していった。後ろから明石と佐々木が追 いかけてくる。まずは二人を何とかしなければ。そう考えた矢先のことだった。





 突如、全身をフルスイングされたような、とてつもない衝撃が襲った。耐えきれず、跨って飛んでいた杖から手が離れる。高速飛行の途中だったので、そのまま前のめりに地面に叩きつけられ、転がった。何が起こったのか。それを認識する前に、彼の目が新たな映像を映す。
 明石と佐々木も倒れ込んでいた。つまり、エヴァの仕掛けた攻撃ではないということ。では、一体誰が。何も分からぬまま、頭部から熱い物が流れてくるのを感じ、意識を失った。
 そしてその一部始終を見ていたエヴァも混乱していた。



「マスター!ネギ先生、明石さん、佐々木さん、共に意識を失っています!先ほど感知した衝撃波が原因かと!」

「そんなことは分かってる!一体どこのどいつだ、決闘の邪魔をしたのは!」




 茶々丸の言葉に怒鳴りかえしながら、周辺を隅々まで索敵する。
 神聖な決闘、それも私の身の自由がかかった大切な決闘だ。それをこんな奇襲でぶち壊しにするとは、良い度胸だ。確実に縊り殺してやる。地面に降り立ち、索敵するが、魔力反応は一切見当たらない。確かにあの攻撃からも魔力は感じられなかったが、魔法を使ったのでないのならどうやって―――――


「―――――どこ見てんだ。こっちだよマクダウェル。」


 柱の影から声が聞こえた。素早く振り向くと、月明かりを反射した金色の光が目に飛び込んできた。
 そう、あの桜通りの夜と同じ光が。




「―――――長谷川、千雨。」




 そこに居たのは長谷川千雨、ついこの間、エヴァ主従をスコップ一つで追い詰めた人間である。しかし今日の彼女は、いつもとは全く違う装いだった。



 目を引くのは白の燕尾服。上下とも純白のその服装が、彼女のスラリとした身体を映えさせていた。髪は後ろで一つに束ねており、何故か眼鏡をかけてい る。おそらく伊達眼鏡だろうその眼鏡の奥には、獲物を狙う鷹のような鋭い瞳が爛々と輝いていた。いつも通りと言えるのは、背中に背負うサックスケースの み。
 まるで死装束のような戦装束。だが、その全身から立ち昇らせる戦意と殺気は、むしろ彼女自身が死神であるかのように感じさせる。だとすれば、あの白い燕尾服を染めるのは、敵の返り血か。



 エヴァが柄にもなくそんなことを連想していると、千雨の後ろに新たな気配が生まれた。千雨はそれを一瞥すらしない。




「長瀬。そこでくたばってるネギ先生と明石と佐々木病院に連れてけ。上の二人は後回しでいい。ついでに帰りに神楽坂見つけて先生のこと教えてやれ。送り終わったらそのまま部屋に戻れ。」

「―――――承知。」




 長谷川の影から飛び出した長瀬が素早くネギの下へ駆け寄り、抱きかかえた。そのまま明石と佐々木も背負う。




「それでは、ご武運を。長谷川殿。」




 そう言い残して長瀬は去っていく。後に残されたのは、千雨とエヴァ主従だけだ。すでに茶々丸は臨戦態勢に入っている。




「…それで、専守防衛を謳う貴様が、何故わざわざ私たちの決闘を妨害した?そもそも何故私たちの決闘について知っていた?素直に答えろ。さもなくば―――」

「どの道ただで済ます気はねぇだろうが。大体元はと言えば、お前の家での会話が原因だぜ?」

「何――――――――?」




 千雨の言葉に目を剥いた。確かにあの日、帰り際におかしな素振りを見せていたが、千雨を決闘の妨害にまで導くほどの理由には全く心当たりが無かった。
 そんなエヴァの内心の当惑を感じてか、千雨は息を一つ吐いた。




「…まぁ説明しないと分からないかな。多分お前も知らないんだろうし。」




 その言葉にエヴァは茶々丸、チャチャゼロと顔を見合わせる。全く見当がつかない。しかし、自分すら知らない何か、という言葉に、陰謀のにおいを嗅ぎ取った。




「最初に違和感を持ったのは、桜咲と龍宮だ。私が倒れた日、あったろ?あの日にあの二人、私に警戒の視線を向けてたんだ。けど、一体あいつらはどこで私たちの戦闘について知ったんだろうな?」




 言われてみて初めて気付く。確かにあの日あの二人はコイツに対してかなり警戒していたが、あの二人が私たちの戦いについて知っているのはおかしい。




「で、そっから私はお前と学園がグルになってるんじゃないかって思ったんだが――――そう睨むな。確かにお前は学園と結託してなかったよ。むしろ、学園がお前を利用してたんだからな。」




 千雨の根も葉もない言いがかりにカチンと来たエヴァだったが、続く言葉を受け、頭が急速に冷えていった。
 私が、この私が、利用されていただと?




「それはどういうことでしょうか?」




 エヴァよりも速く茶々丸が聞き返した。茶々丸も動揺しているらしい。チャチャゼロもさっきからずっとおとなしい。珍しく聞く体勢に入っているようであった。




「まず、学園側がエヴァの犯行を知って無視している。これは間違いない事実だ。でも何でそんなことを許しているのか?これについては、私の知り得ない部分での問題が絡んでるのかと思って無視してたんだが、実はこれが最大の肝だったんだ。あの時ののどかの言葉で全部分かったよ。
 なあマクダウェル…おかしいと思わないか?少なくともこの学園の上層部は、お前とネギ先生の親父さんとの因縁を知っているはずだろ?それなのに何故、お前がいるクラスにお前の敵の息子を送りこむなんて、火に油を注ぐような真似をするんだ?」

「っ――――――――!!」




 確かに、エヴァとナギとの因縁を知っている学園長が、わざわざナギの息子とエヴァを同じクラスにするなど、襲ってやれと言わんばかりだ。
 つまり、エヴァは事件を起こすよう仕向けられた、という可能性が濃厚になる。




「そしてそんなことをする理由…のどかが答えを出してくれたよ。ネギ先生、英雄の息子なんだろ?だとしたら、それ相応の教育を期待されててもおかしくはないよな?もしくは、英雄の再来を待ちわびる人間がいるか、だ。つまりさ――――」










「ネギ先生はここに教育実習をしに来たわけじゃない―――――逆だ。教育を受けに来たんだ。魔法と戦闘に関する英才教育だ。本人は気付いてないだろうがな。そしてネギ先生の教師は―――お前だ、マクダウェル。」










「今回の吸血鬼騒動、最初っから学園上層部の掌の上だったんだよ。お前がそういう行動に出ること、正義感の強いネギ先生が介入すること、そして解決のために、ネギ先生とお前が戦うこと。全てシナリオ通りだったってわけだ。もちろんお前には知らされていない。お前がそんなこと知って協力するはずがないから な。」




 エヴァは絶句した。今回の計画は全て誘導されたものだったというのか?今夜のこの決闘を引き起こすため、そうなるように仕向けられたというのか?
 様々な疑問が頭を掠め、何とか言葉を返そうとするが、それより速く茶々丸が口を開いた。




「…しかし長谷川さん、マスターとネギ先生が戦うことに、何の意味が?」




 確かに一度聞いただけでは分かりづらいかもしれない。しかし、聡明なエヴァにはすでに予想が着いていた。目的が坊やの『教育』にあるのなら、全ての理由に説明がつく。




「だからさ、学園側の狙いはあくまで先生の『成長』。マクダウェルは学園に封印されているわけだろ?多分最初っから学園はエヴァを逃がさないよう手は打っていたはずだ。今の状況から鑑みるに、お前を封じていたのは電力か?だったら、電力の早期復旧とかな。

 それにマクダウェル―――お前、内心先生のこと多少気に 入ってただろ?じゃなきゃ決闘とか受けたりしないだろうだしな。それで学園にお前が残れば、あわよくばお前が先生に魔法の特訓をさせ始めると踏んだんじゃないか?学園がお前に望んだことはそれだ。先生を強くするために、わざとお前とぶつけさせたんだよ。もし先生がお前に勝てば万々歳だ。先生の経歴に箔が付く。お前に負けてもそれでいい。お前さえ学園に残れば、先生はお前という後ろ盾を得る。どっちにしろ美味しいわけだ。」

 エヴァにとっては美味しくない、不愉快極まりない状況であった。あのジジイに良いように転がされていたのかと思うと、腸が煮えくりかえってくる。いっそこのまま学園長室に行って血祭りに挙げてこようか。
 しかしまだ千雨に肝心なことを聞いていない。今までの話だけでは、千雨が動く理由にならないのだから。




「それで?今までの話は確かに聞くに値する話ではあったが、お前が直接介入する理由にはなっていないだろう?何故貴様が出張った?」

「…ああ、ここからが本題だ。」




 そう前置きして、話し始めた。




「お前ら、ウチのクラスがおかしいと思ったことはないか?常にハイテンション、成績はピンキリだが、特定分野に高い能力を持つ。個性豊かと言えば聞こえは いいが、単なる色物生徒の集まりだ。絡繰にしろ私にしろな。普通そういう生徒って、なるべく分散させるものじゃないのか?」

「…確かに、常識的に言えばそうだな。」

「じゃあ何故その基本に逆らってまで個性的な面々を集めたクラスを作った?魔法使い、忍者、剣士、ガンマン、格闘家、天才児、人外、ロボット。こんな面子を一か所に集中させることで、どういったメリットが生まれる?」




 そう言われてエヴァは考える。個性、特定分野、クラス、魔法、高い能力―――担任。英雄の息子。教育。計画。



 エヴァの頭に最悪の予想図が浮かび上がった。それは確かに、長谷川千雨を、この専守防衛主義の戦闘者の、重い腰を上げさせるのには充分な理由だ。




「まさか―――――。」

「ああ、ご想像の通りさ、マクダウェル。」











「3−Aはそれ自体がネギ先生のために作られたクラス―――――高い能力を持つ人間を集めて、先生の仮契約、すなわち武力増強の糧にするための、な。」










「仮契約って、何人とでも出来る上に、個人の能力に見合ったアイテムが出てくるんだろ?だとしたら一芸特化な3−A連中には最適だよな。おそらくあのペットのオコジョが学園とグルなんだろ。先生に積極的に仮契約を勧める係だ。そして魔法という非日常―――あいつらを釣る最高のエサだ。桜咲や龍宮も、本当のことは知らされてないんだろうな。あいつらには悪いことしちまった。あいつらも被害者だってのに。
 つまり、さ。3−Aの本当の生徒はネギ・スプリングフィールド。担任はエヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。そして私たちは―――教材だ。これから先も使える、都合の良い道具ってわけだ。」




 全部私の推論だけどな、と締めくくった。しかしその推論が大筋で正しいであろうことは、エヴァも感じていた。なるほど、確かにあのクラスの構成は常々おかしいと感じてはいたが、全てあの坊やの仮契約のためだけにあつらえたわけか。そして私は坊やのサポーターとなる。確かに、私がバックにいるとなれば、坊やの身の安全はそれだけで確保されたものといえる。誰もが何も知らぬままに。そう考えれば、全てが納得がいった。


 だが、まだだ。まだコイツは、本心を出し切っていない。




「なるほど?貴様は自分が厄介事に巻き込まれそうだから、わざわざこの件に介入してきたわけか?しかしそれなら、お前だけでも無視していればよかったじゃないか。別に坊やがどう成長しようが、お前に関わりはないだろう?自分が魔法関係に巻き込まれそうになった時だけ、介入すればいい。違うか?」




 エヴァの言葉に千雨はふぅ、と大きく息を吐いた。溜め息や呆れを含めた物ではない。まるで、何か疲れているような、そんな感じ。




「…マクダウェル、お前、今まで何人殺してきた?」




 唐突な質問だった。エヴァはチャチャゼロの方を見たが、チャチャゼロは大袈裟に肩をすくめるだけだ。




「…さぁな。数えるのも億劫なほどに、だろうよ。3桁は越えてるかな。」

「そうかい。………私も数えきれないほど人間を殺してきた。老若男女、善悪問わず、時には一つの街ごと、な。」




 茶々丸が驚きの声を挙げようとするのを、エヴァは黙って手で制した。これは、途中で遮っていい話ではない。最後まで語らせ、最後まで聞くべき話だ。




「私の生まれたところは、そりゃまぁ酷いところでさ…。見渡す限り不毛の砂漠。コップ一杯の水の為に銃弾が飛び交い、命が潰され、全ての人が常に明日をもしれない運命に晒されてた。私も同じさ。ただ、生きるのに必死だった。生きるために殺し続けた。それがいつの間にか生業になってた。殺して、殺して、殺して、殺して―――――いつの間にか、こんなところへ流れ着いてた。」




 そこで千雨は優しい笑顔を浮かべた。生きるために殺し続けてきた人間には、決して浮かべられないような、優しい笑みを。




「ここは間違いなく天国さ。着る物も食べる物も充分ある。水なんて飲み放題だ。銃声を聞くこともないし、緑に囲まれてるし、人の笑顔が絶えない。私みたいなモンが、人を喜ばせることも出来る。まさしく理想郷さ。」

「…………………………。」

「だからこそ、」




 と、千雨は柔和な笑みを崩し、激しい怒りを秘めた形相で、拳を握りしめた。




「だからこそ、この計画は許せねぇ。魔法なんてファンタジックな言葉で飾ってるが、実際は単なる暴力の一手段に過ぎない。お前がのどかにしたように、魔法が関わる世界なんて、暴力が物を言う世界だ。違うか?」

「…ああ、その認識は間違っていない。」




 言いながらエヴァは考える。実際に魔法を使う人間で、千雨と同じ考えに至る人間がどれほどいるのかは知らないが、今の麻帆良の状況を見る限り、そう多くはないだろう。力は人を傷つける。どんな目的で使おうが、その本質は決して変わらない。コイツはその本質を、身をもって理解しているのだろう。




「だったら、そんな物騒な世界に何の関わりもない、平和に暮らしてる人間を巻き込むんじゃねぇよ。平和に暮らしてる人間は平和に過ごしてりゃいい。それを侵害していい道理なんて誰にもない。平穏に、楽しく、笑って毎日を過ごす。それ以上の幸せがあるってのか?わざわざ知らなくていい裏の世界見せて、無理やり巻き込むのが幸せだってのか?

 ―――ふざけんじゃねぇ。お前らの勝手な都合で、平穏に暮らしてた人間の人生、メチャクチャにしようとしてんじゃねぇ! 人の未来はソイツだけの物だ、勝手に道筋決めるな!」




 最後は声を荒げていた。人の未来を捻じ曲げること。かつて自分が行ってきたことでもあった。
 そしてそれはきっと―――――ヴァッシュ・ザ・スタンピードが、何よりも嫌うことでもあり、同時に、人の未来を信じることが、彼を動かす原動力であったのだろう。



「…なるほど、つまりだ、長谷川千雨。貴様の戦う理由は―――――」

「…ああ、そうだ。」










「私は、あいつらの未来を守る。あいつらが暴力の世界に晒されないよう、あいつらの身に降りかかる危機は、全て私がぶっ壊す。あいつらを絶対に魔法と関わらせない。それが、私の戦いだ。」










「何より、ここでこれを見逃したら、私が殺してきた人間達に申し訳が立たねぇよ。私が殺してきた人間も、こんな平和な世界を望んでいたはずなんだから。それが壊されるのを見逃すのは、そいつらへの冒涜でもある。」




 強く、気高いその覚悟。血で血を洗う戦場を知る者だからこその激高。幾多の屍を踏み越えた者にのみ許される誓言。



 エヴァは感嘆していた。本当に、私はどうかしていたようだ。こんな、これほどの強き人間の近くに居ながら、それに気付けなかったとは。もっと、もっと速く出会っていたかった。15年の学生生活、これほどまでにやり直したいと感じたのは初めてだ。茶々丸が羨ましい。今となっては、茶々丸の方がコイツの近くに居るのだから。




「…よく分かったよ長谷川千雨。貴様の覚悟も、誓いもな。それで?これからどうする気だ?」

「…分かりきったこと聞いてんじゃねぇよ、マクダウェル。」




 もちろん分かり切ったことだ。すでに全員、戦闘態勢に入っている。




「お前は吸血鬼騒ぎの犯人。お前が居る限り、ネギ先生はお前と戦い続ける。だがネギ先生じゃお前には勝てない。―――仮契約でもして、手駒を増やさない限りは、な。

 つまり、お前さえいなくなれば丸く収まる。吸血鬼事件は終わり、ネギ先生は強くなる術を失う。
 ―――――ネギ・スプリングフィールドの教師、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。3−Aの平穏なる未来のために―――――ここでくたばれ。」




 その言葉と共に、長谷川から殺気が吹きだす。無闇にまき散らしているのではなく、エヴァたち3人に狙いを絞ってぶつけた、鋭い威圧感。喉元に鋭利な刃物 を突き付けているような、そんな錯覚。まさしく、一流の戦闘者でしか出し得ないおぞましい空気が、3人を包んだ。その中にいながらエヴァは感動に打ち震え たような笑顔を浮かべている。



 ―――――素晴らしい。私の復活を飾る敵として、これほど相応しい奴はいない。



「茶々丸、チャチャゼロ。出し惜しみ無しだ。最初っから全力で行くぞ。」

「「了解!」」




 エヴァも殺気を漲らせて千雨に相対し、同時に魔力を全身にこめていく。茶々丸もブレードを展開し、チャチャゼロは鉈をブンブンと振り始めた。




「誰が誰を倒すだと?図に乗るなよ小娘。我こそは最強の悪の魔法使いにして不死身の吸血鬼―――エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。貴様ごときに後れを取ることはない。」

「ハッ―――何を偉そうに。お前が吸血鬼なら、こっちは魔人だ。世間知らずのお嬢ちゃんが。格の違いを見せてやるよ。」

「私のことを忘れてもらっては困ります、長谷川さん。あなたは私が倒すと決めたのですから。」

「ケケケケケ―――楽シイ殺シ合イニナリソウダゼ!」




 千雨はサックスを肩にかけたまま、両脇のホルスターから拳銃を取り出し、両手に構える。エヴァから漏れる魔力が、空気を凍らせていく。



 片や魔法界で名を馳せた、最強の悪の魔法使い。
 片や遥か未来の砂の星で、人智を超えた殺人集団に属していた殺人鬼。



 ここに時を越えて、化物(フリークス)吸血鬼(ノスフェラトゥ)がぶつかり合う。



「―――――跪いて頭を垂れろ、長谷川千雨。」


「―――――お前達のためのギグだ、存分に聞いて逝け。」















≪本編の雰囲気をぶち壊しにする今日の舞台裏≫



「あ、長瀬さんお帰りなさい。ネギ先生は運び終わったんですか?」

「…うむ、今送り届けてきたところでござるが…。ところで宮崎殿…?」

「何でしょう?ココアならまだ淹れてませんが。」

「…何故宮崎殿の足もとに神楽坂殿が気を失って倒れてるのでござるか…?」

「ふふふ♡何かに蹴躓いたんじゃないですか?脇目も振らずに必死で走ってると、足元がおろそかになっちゃいますから♡」

「…では、神楽坂殿のシャツの袖と靴下が縫い合わされている理由は…?」

「ふふふふふ♡」

「………………。」













(後書き)

 第12話。よろしいならば戦争だ回。12話は5分割してます。戦闘シーンは次回から。残念ながらネギ君は強制退場。じゃないと次回確実に死にます(笑)



 千雨の勘付いた『計画』は、まぁネギまの二次創作ではよく言われているヤツです。首謀者はもちろん学園長。ぶっちゃけ学園長がこの話のラスボスになります。ただし説教物にはしないつもりです。口で批判してる暇なぞありません。殺らなきゃ殺られるを地で行きます。別に宣言するようなことでも無いですが。



 なお前回書き忘れましたが、改造サックスの中にマシンガンは仕込まれてません。さすがにそれは作れないでしょう。というか、銃器仕込んであるのに普通以上に演奏出来るサックスって、ホントにどんな構造してるんだ…?



 サブタイは東方妖々夢より、Stage6ボス西行寺幽々子のラストスペルのテーマソング「ボーダーオブライフ」です。東方のサブタイも多分多くなります。使い勝手良さそうなので。



 次回は3話続けて千雨VSエヴァです。お楽しみに!

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