魔法少女リリカルなのは
                  Accel  Knight


















第4話 トリガーと初めての失敗





現在、ランとなのははジュエルシードの回収に勤しんでいた。
時刻は夜中である。
校庭にジュエルシードの反応が出たので、こうして封印作業に徹しているのだ。
今回は、なのはに経験を積ませるという意味で、俺は手を出さないでいる。

「リリカルマジカル!ジュエルシード、シリアル20!封印!」

「Sealing」

掲げたレイジングハートから光の帯が出て対象を封印した。

「お疲れ。ようやく様になってきたな」

「えへへ、そうかな?」

「ああ。だが、まだまだでもあるけどな」

そう言ってニカッとする俺に、なのははしゅんとする。

「頑張ります……」

「じゃあ、今日はもう帰ろう」

ユーノの言葉で封印を完了した俺達は帰路についた。
だが、帰路についた時からなのはが疲れたように杖であるレイジングハートを引きずっている。

「なのは、大丈夫?」

「うん……大丈夫だよ」

だが、どう見ても疲れている。
すると、なのはが倒れかけた。
そこを俺がとっさに下に入り、受け止める。

「大丈夫か?」

「あ、うん……ってこれって!?」

「このままおぶってやるよ」

そう言うと、俺は背中で受け止めていたなのはをおんぶして立ち上がる。

「ちょ、ラン君!恥ずかしいよ〜」

赤くなるなのはに俺は何でもないように言った。

「別に誰も見てないんだし、いいじゃねえか。それに、今日は頑張ったんだからご褒美だと思ってそのまましてな」

それで俺がやめる気がないとわかったなのはは俺に体重を預けた。

「うん……ありがと」

「後、根を詰めすぎだ。明日は休め。いつもの事だけどな。無理をしてたら元も子もないぞ」

「うん……」

「ユーノも明日はできるだけなのはに休むように徹底しておいてくれ。休める時に休まないといけないからな」

「うん、わかった」

こうして、俺はなのはを家に送ってからマンションの自室に帰った。
























ここら一週間で俺達はジュエルシードを5個集める事ができた。
しかし、後16個も残っており、まだまだ先は長い。
そんな中、今日は士郎さんのオーナー兼コーチを務めるサッカーチーム『翠屋JFC』の試合を見に来ていた。
もちろん、なのは、アリサ、すずかも一緒である。
なのはは本来休んだ方がいいのだが。

「がんばれ、がんばれー!」

「皆、頑張ってー!」

「ふわぁぁぁ……、寝よ」

アリサとすずかが応援している中、俺は欠伸をして草むらに横たわる。

「何しに来てんのよ、アンタ」

「何がおもしろくて、同じ男子の試合なんか見なくちゃならないんだよ。悪いが、寝る」

「ちょ、ラン!あんたねぇ!」

アリサが俺に何か言おうとしていたが、俺はそれを無視して目を閉じた。

(相変わらずだな〜、ラン君)

なのははランの様子を見て、思わず苦笑してしまうのだった。
























その後、試合は進み、2−1で試合は終了。
翠屋JFCの勝ちとなった。
そして、今は翠屋で勝ったお祝いとして、打ち上げをしている。

「しっかしあんた試合終わるまで、ほんとにずっと寝てたわね」

「まあな」

「褒めてないわよ」

「でも、勝ったんだし、良かったんじゃないかな?」

「そうだよね」

そんな感じで四人は外で雑談をしていた。
途中で、ユーノいじりになっていたが。
そんな中、サッカーチームの子達が店から出てくる。
俺は何気なくぼーっとその光景を見ていたが、キーパーだった男子がジュエルシードを取り出すのを見た。

(あれは……)

だが、俺は声にも出さず、表情にも出さず、その事態を傍観していた。
なのはが気づくのか、気づいていたらどうするのかを見たかったからだ。
と、そこでなのはも気づいたのかその男子を視線で追っている。
だが、何もする事はなかった。
そして……。

「はい、なのは!」

アリサが渡した手の中には、いじくりまわされて目を回しているユーノがいた。
その後、アリサとすずかは午後から用事があるという事で、それぞれ帰って行った。
俺は特に何もなかったので、士郎さんの許可を得てこのままなのはと一緒にいる事にした。


























そして、今俺はなのはん家のダイニングにいた。
なのはと楽しく雑談しながら、お茶とお菓子を頂いている。
そんなささやかな楽しい時間が過ぎていくと思われたが。

キィン!

ジュエルシードの魔力を感知した。

「気づいた?ラン君」

「ああ、急ごう」

そう言うと、俺達は家を出て反応のある場所へと走って向かう。
家を出る前に士郎さんが一緒に風呂に入るかとなのはを誘っていたが、なのははすんなりと断った。
つーか、まだ一緒に入ってたんですね……。
いや、普通なのか…?
そんな思考は置いておくとして……。
俺達は見通しのよい場所に行くためとあるマンションの屋上まで行く。
屋上に着いたなのははレイジングハートを上に放り投げた。

「レイジングハート、お願い!」

「Stand by Ready. Set up」

そして、なのはは魔法少女へと変身した。
俺達が屋上から下の様子を見ると、わかりやすい対象がそこにあった。
ビル街にでっかい木が生えている。
つーか、森だな。

「ひどい……」

「たぶん、人間が発動させちゃったんだ」

「なるほどな。人間は生き物の中で最も欲深い。それに反応して一番強い力を発揮したってところか」

「うん」

すると、そこでなのはがハッとした。
少し表情が陰る。

「こんな事になる前に……止められたかもしれないのに……」

どうやら原因に気が付いたようで、それを後悔しているようだった。

「後悔して止まるなら、おまえはそこまでだぜ。なのは」

「……え?」

俺の言葉でなのはが俯けていた顔を上げた。

「後悔なんていつでもできる。大切なのは、止まる事じゃなくて、今何をすべきか。それを考えて進む事じゃないのか?」

なのはに目を向けて、俺はそう言った。
なのははその言葉に頷く。

「そうだよね……。後悔なんて後でもできるよね……」

言ってから、彼女は顔を上げた。

「ユーノ君、こういう時どうすればいいの?」

「……封印するには接近しないと駄目だ。まずは元となっている部分を見つけないと。でも、これだけ広い範囲に広がっちゃうと、どうやって探していい か……」

「何だ、そういう事か」

俺は少し拍子抜けしていた。
そんな単純な方法なら、充分探せる。

「そんな事って……これだけ広い範囲を探せるのかい?」

俺は頷いた。

「ああ。できなくもないぜ。策敵するものをジュエルシードのみに絞って広範囲をサーチすればいい」

「でも、どうやって?」

「……今度はこいつを使ってみるか」

言って、俺はドライバーを腰に取り付け、懐からメモリを取り出した。
ただし、今度のは青色のメモリだ。
表面にはアルファベットでTの文字が書かれている。

「ラン君、それは?」

俺はなのはの言葉にフッと笑った。

「俺の持つ別種のメモリさ」

そう言うと、俺はメモリのスイッチを押す。

【TRIGGER!】

「変身」

掲げたメモリをレフトスロットにセットして、左に倒す。
すると、装甲が俺の周りに形成され、瞬く間に俺はそれを纏う。
俺は、青色のゲシュペンスト、ゲシュペンスト・トリガーに変身した。
装備しているのは、胸部にあるトリガー・マグナムと背部ウィングのスプリットミサイル。

「あ!青色のゲシュペンスト!」

なのはやユーノが驚いている。
それに対して俺は説明してやった。

「基本的にメモリを変えると能力と同時に色も変わるんだよ。ジョーカーは黒、トリガーは青って感じにな。……さて、索敵を始めるか。…なのは」

「え?」

「おまえもできるならサーチしてみてくれ。できればでいい」

「うん……わかった」

俺が索敵を始めると同時に、なのはも何かを掴んだのか、床に魔方陣を展開し、ジュエルシードを探し始めた。
俺はレーダーと目に表示される情報を照らし合わせて探していく。
そして、少し時間が経過したところで。

「「見つけた!」」

2人同時に対象を発見した。

「すぐ封印しないと!」

「ここからじゃ無理だよ!近づかなきゃ!」

確かにユーノの言った条件が前提ならこちらから対象であるジュエルシードに近づく必要がある。

「できるよ!大丈夫!」

言うと、なのははレイジングハートを掲げた。

「そうだよね?レイジングハート」

すると、なのはの意思に応えるようにレイジングハートが動いた。

「Shooting mode. Set up」

音声が発せられた瞬間、杖が伸び、先端の形状が変化した。
どうやら音声と形態から判断するに、遠距離用の形態らしい。

「なら、俺も手伝ってやる」

俺はトリガー・マグナムを握って取り出す。
そして、なのはに話しかける。

「なのは、俺が対象を攻撃して魔力を弱める。その後すぐに封印しろ」

「うん、わかった。……でも、中のあの子達はどうするの?」

なのはが心配そうに聞いてきた。
巻き込んでしまわないか心配なのだろう。
それに対して、外見ではわからないが俺は笑う。

「トリガーは威力がでかすぎるからな。マキシマムは使わない。通常でピンポイント攻撃をする」

「無茶だよ!そんな精密な射撃!」

ユーノが俺の提案を無茶だと思ったのか、警告してくる。
だが、俺はそれを鼻で笑った。

「フッ、その心配はいらない。こう見えても射撃はそれなりに出来るからな」

そう言って、俺は対象に向けて銃を構えた。

「準備はいいか、なのは」

「うん、いつでもいいよ」

なのはもレイジングハートを構える。

「それじゃあ、いくぞ」

言うと、俺は遠方にいる対象に照準を合わせる。

(狙いはジュエルシード……。威力は最小、貫通力は強)

照準が合った。

「狙い撃つ」

ドウン!!

トリガーから極細のビームが放たれた。
それは真っ直ぐ障害物を突き破り、ジュエルシードに激突する。
瞬間、ジュエルシードの魔力が弱まる。

「なのは!」

「うん!レイジングハート、行って!」

そして、なのはのレイジングハートからも魔力光が放たれる。
それは、見事にジュエルシードを包み込んだ。

「Stand by Ready」

「リリカルマジカル!ジュエルシード、シリアル10!封印!」

さらにレイジングハートから魔力光が放たれた。
それは、再びジュエルシードを正確に捉える。

「Sealing」

そして、周囲は光に包まれた。























そして、周りにあった森(?)はなくなった。
対象であったジュエルシードもなのはの元へ行き、レイジングハートに吸収される。

「Receipt number 10. Mode Release」

そして、レイジングハートは元の形態に戻った。

「ありがとう、レイジングハート」

「Good bye」

その音声と共に、なのはの変身も解けた。
俺もドライバーのスロットを立てて、メモリを取り出し、変身を解除する。

「ラン君……私、色んな人に迷惑かけちゃったね」

「…………」

黙って聞く俺に、なのはは話し続ける。

「私気づいてたんだ。あの子が持ってるって事。でも、気のせいだって思っちゃった」

そう言って、なのははしゃがみこむ。
その表情はとても悲しそうだった。

「なのは……」

ユーノはそんななのはに何も言えずにいる。
俺はそんななのはの前に行くと、同じようにしゃがんで両肩に手を置いた。
それで、なのはが俺を見る。

「なら、今度からは気をつけよう。それでいいじゃないか」

「………」

なのはが視線をそらす。

「いくら後悔しても起きてしまった事は変わらない。それが事実だからな。なら、また同じ失敗をしないように努力すればいい。そうする事で迷惑かけた分を返 せばいい。そうだろ?」

「ラン君……」

「なのはが思いつめてもしょうがない。それに、気づけなかった俺も悪いんだから、な?」

「うん…うん……」

そう言って、なのはは俺の胸に飛び込んできた。
俺はとっさの事で尻餅を着いてしまったが、なのはが静かに泣いているのを見て、出しかけていた声を止め、ただなのはの後悔と悲しみを受け止めてやる事にし た。
結局、俺はなのはに一つの嘘を付いた。
試すためとはいえ、それがなのはの枷になるのなら、俺は許されない事をした事になる。
でも、彼女は学ばなければならなかった。
自分が見逃せば、こういう事態にもなるのだという事を。
経験させる事で、なのはを成長させる必要が俺にはあった。
戦いの中に身を置いていた者として、その先輩として。
だから、もしもの時は俺がなのはを守ろう。
その償いとして、なのはを導く者の1人として。
そして、1人の友達として。























あとがき


期限まで終わらない6周年記念という事で、第4話でした。
先週の金曜に一部の課題が終わり、ようやく少しの余裕が持てたので、こうして続きを更新する事ができました。
まだ終わらない物もあるのですが、少しゆとりができてほっとしています。
ですが、まだまだ頑張らないといけない事が多いです、正直(汗)
さて、そんな状況の中、更新した第4話ですが、予告通り新フォームが出ました。
その名もゲシュペンスト・トリガー!
詳細はあとがきの後に載っているので、それを参考にしてくださいね。
ちなみに今回の話でトリガーをぶっ放していたランですが、威力は極限まで抑えて狙撃したので、発動者である子供に被害はありません。
トリガーは威力は大きいですが、制御次第では周囲に被害を出さずにする事も可能という訳なのです。
要するに無駄なパワーを込めない事で、周囲に攻撃の余波が及ばないようにしているという事です。
今回の話のタイトルであるトリガーと初めての失敗。
トリガーはランのゲシュペンストの新しい形態。
初めての失敗はなのはの魔導士としての初めて犯したミス。
この二つに焦点を当てたものとしてこのようなタイトルになりました。
次回は、ついにフェイトが登場します!
果たして、現れたもう一人の魔導士にランとなのははどうするのか!?
乞うご期待ください!
後、今回では出なかったトリガーの必殺技も出ますよ!
WEB拍手と感想をくれた方、ありがとうございました!
毎回更新する度にして頂けるのは、やはり嬉しいものです。
WEB拍手の感想の返事みたいな形になりますが、基本私の作品はアンチ風味にはならないと思います。
まだどのキャラが好きとか嫌いとか明確に定まっていないので。
ただ、ストーリー上でそうなってしまう場合は仕方ないので、そこは大目に見て頂けるとありがたいです。
まあ、確かにクロノの扱いは結構酷いのが多いですよね(苦笑)
ところで、感想を見ていて気づいたのですが、月村家の人は意外と人気高いのかな…?
最近それ関連の出番や絡みを希望する人が多いもので。
そこらへんってどうなんでしょうね?
と素朴な疑問はこの辺にしておいて、これからも感想などをお待ちしていますので、どしどし送ってくださいね!
しばらくは似たような感じの作風で続くので、長さ自体はそれほど長くなりませんので、そこはご容赦くださいね。
まあ、単に長ければいいってものでもないですけど……。
これからも応援して頂けるとありがたいです!
もうすぐクリスマスです!
子供たちにとっては楽しみな日の1つですよね。
私としても、それなりに楽しみな日の1つでもあります。
ですが、寒いのでその前に風邪などひかないよう注意してくださいね。
では、また次回で!






















設定(3)


トリガーメモリ

PTメモリの1つ。
射撃攻撃に特化したゲシュペンスト・トリガーの能力を内包したメモリ。
他の作用として、レーダーやセンサーなどの策敵能力も強化される。
色は青。
適合者はラン。


ゲシュペンスト・トリガー

ゲシュペンスト・ダブルの中の1形態。
ゲシュペンストの射撃能力を特化させた形態。
主に銃火器を利用した中・遠距離戦を得意とする。
武装は初期として、胸部に現れるトリガー・マグナムと背部のウイングに現れるスプリットミサイル。
使用者の意思に応じて、他の種類の火器を出現させる事ができ、それを追加装備とする。
他の形態よりもレーダーやセンサーの性能が高い。
この姿の色は青。
マキシマム使用時の必殺技は、使用銃器やマグナムのモードによって変化する。


トリガー・マグナム

ゲシュペンスト・トリガー専用のビーム銃。
マキシマムスロットを銃身に搭載し、モード変化による各状況に対応した弾の威力調整、発射形態変化の機能を持ち、状況に応じた攻撃が可能。
基本的には、ノーマルモード、マシンガンモード、スナイプモード、マキシマムモードの4つが存在。
細かい調整は、使用者の意思によって行う事ができる。
バレルを引き上げたマキシマムモードでも、それぞれのモードに対応した銃撃が可能であり、大出力ながらも状況に対応した攻撃ができ、必殺技もそれらの数だ けある。
一丁で何通りもの使い方ができる優れもの。



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