魔法少女リリカルなのは
                  Accel  Knight


















第13話 加速の鋼狼





自身を、クロノの制止を無視して転送したランは今、時の庭園に着いた。
その直後に地面が震動するのを感じる。
倒れる程ではないが、それなりに大きい。
しかも、震動と同時に感じるこの波動……おそらくあの時なのはとフェイトが起こした次元震と同じものだ。
それに感じる震動もじょじょに大きくなっている。

そして、今俺がいる場所は大きな廊下。
その奥には扉がある。
前回武装局員が転送された場所と同じところだろう。
彼らが使った後に俺がそのまま使ったので、転送場所が同じなのは当然だ。
俺は自身の中で猛る静かな怒りを制御しようと自分に言い聞かせる。

(クールだ。たとえ怒りに満ちているとしても、クールにいかねえと)

怒る事は大いに結構だ。
しかし、そこで焦ってはいけない。
行動は熱く、クールにもっていかないといけない。
そう思うと、俺はプレシアのいる場所を考える。

(以前ここに来た時と同じならプレシアは玉座の間にいる。だが、俺が前通った道とスタート地点、プレシアのいる場所が同じとは限らない。……ここは、記憶 を辿っていくよりも、魔力とこの震動の発生源を探った方が良さそうだな。…変身すれば、なんとかなるだろう)

「どちらにしろ進むか」

俺は変身は後回しにし、進む事を考える。
どの道進路はまだ一本道だ。
まだ迷う事も、行き先を特定する必要もない。
俺は廊下の奥まで、辿り着くと扉を開けた。
すると、大きな広間へ出た。
どうやら俺が以前通った場所とは違うらしい。

俺が広間に入り、広間の様子から現状を判断しようとしていたところで異変があった。
突然床から西洋の鎧兵が現れたのだ。
しかも、単体ではなく、複数で数が多い。
あっという間に前方の進路を塞がれる。
大きさはそれぞれ2m程で、手には斧や槍、剣などの武器を持っている。

「……どけ、潰すぞ」

俺は一番近くにいた前の鎧兵に宣告した。
しかし、声をかけられた傀儡兵は返事を全くしない。
その代わりに手に持っていた剣を俺に目掛けて振り下ろしてきた。
俺はそれを後ろに飛んでかわす。
振り下ろされた剣は俺という標的を失ったため、そのままの勢いで石の床を叩き割った。

「ちっ、反応はなしに加え、問答無用か。……どうやら、生物ではないらしい」

着地した俺は相手の反応と動きを見てそう判断した。
声がなく、問答無用までなら、単なる無口な奴で片付けられるだろう。
しかし、相手に生物特有の意思を感じないのだ。
例えば、人や動物の場合、相手を殺そうとする時には大小違いはあれど、殺気というものを放つ。
だが、今の攻撃した兵にはその意思が感じられなかった。
それに、動きに無駄がない。
これはAIなどの機械に見られる特有の動きだ。
だから、俺はこいつらを意思のない機械兵と判断する。
つまり。

「……時間稼ぎか」

プレシアはアルハザードへ行くと言っていた。
そこでアリシアを今度こそ蘇らせると。
それに、これだけの数の兵を含めて考慮すれば、この兵達は単なる足止めと時間稼ぎの役目を担っていると容易にわかった。

「……なるほどな。なら、今回は強行突破と行かせてもらう」

言うと、俺はドライバーを取り出した。
だが、前まで使っていたGドライバー・ダブルとは違う。
今取り出したのは、バイクのハンドルの形をしたドライバー。
俺の本当の相棒、ゲシュペンストドライバーVer.A(アクセル)。
メモリの装填口となるスロットはダブルと同じ二つ。
だが、使い方がダブルとは異なる。
俺は取り出したドライバー・アクセルを腰に装着した。
そして、メモリを取り出す。
右手に赤いアクセルのメモリ、左手には銀色のアイゼンメモリ。
それぞれのボタンを押す。

【ACCEL!】

【EISEN!】

「変…身」

俺はそれぞれのメモリをライトスロット、レフトスロットに装填する。
そして、ドライバーにある右のハンドル、パワースロットルを後ろ向きに思いっきり捻る。

ブウン!

エンジン音が鳴る。
その瞬間、まるでバイクのエンジンが点いたようにエンジン音が鳴り続ける。

【ACCEL!EISEN!】

ブン…ブンブンブンブウーン!!!

ドライバーからAとEの文字が現れ、高鳴るエンジン音と共にランは変身した。
身に纏うのは、ゲシュペンスト・ジョーカーなどとは違い、重厚なパワードスーツ。
頭部には、尖った赤い角、右腕にはリボルバーのシリンダーの先に付いた杭、左腕には三つの銃口からなる銃火器を装備している。
そして、その両肩は異様なまでに大きい。
これが、かつてランが愛機としていた機体、アクセルアイゼン。
これが、ランの持つもう一つの力にして、本来の持つ力であった。

変身が完了したランに傀儡兵の一体が襲いかかってくる。
だが、ランは斧が振り下ろされる寸前、一瞬で懐に入り込み、右手の杭『リボルビング・ステーク』で傀儡兵の頭部をアッパーと同時に撃ち抜いた。
軽々と2mの巨体を吹き飛ばしたアクセルアイゼンのパワーは使いこなせばスーパーロボット(特機)にも劣らない。
ランとアクセルアイゼンにとって、この結果は当然の事であった。
頭部を撃ち抜かれた兵は頭を軽々と吹っ飛ばされ、アッパーの勢いで吹っ飛んだ体が少し後に落下し、下にいた傀儡兵達を押し倒した。
その瞬間が合図となったように、他の傀儡兵がランに殺到する。
一瞬で、傀儡兵に取り付かれるアクセルアイゼン。
押し潰されたかと思われたが、次の瞬間数で押し潰そうとしていた傀儡兵達が吹き飛んだ。
アクセルアイゼンが持ち前のパワーで大きさで上回る傀儡兵達を腕で強引に振り払ったのだ。

「クレイモア」

アクセルアイゼンが腰溜めに身構えると、大きな肩の前方のカバーが上下に開いた。
その中から硬質の金属の弾、ベアリング弾の散弾が一気に前方の体勢を崩された傀儡兵に向かって放たれる。
放たれたベアリング弾の散弾は前方にいた傀儡兵達を蜂の巣にし、一気に多数の傀儡兵を撃破する。
だが、傀儡兵の数はまだ多い。
ランは右腕のステークを構えて、傀儡兵の軍団に向けて一気に突っ込んだ。
























時の庭園の最深部。
そこは既に次元震で空間が歪み、その影響で壊れた床や壁の瓦礫が不自然に浮いている奇妙な空間。
そこにプレシアはいた。
彼女はあの通信の後、アルハザードへの扉を開くため、アリシアのポッドを魔法を使って自身と一緒に移動させた。

「……どうやら来たみたいね」

プレシアは苛立つ。
彼女は先ほどから次元震とは違う揺れを庭園内にて感じていた。
それを彼女は管理局の突入によるものだと推測した。
この時プレシアはまだ知らないが、その震動はランがアクセルアイゼンとなって派手に戦っている時のものだった。
だが、彼女が苛立っている理由はそれだけではない。

彼女のいる空間の下に見える黒い穴、虚数空間。
それはあらゆる魔法を無効化し、範囲内に入った対象を引きずり込む。
例えるなら一種のブラックホールのようなものだ。
彼女は娘のアリシアと共に、今最もその穴に近い場所にいるのだ。

これはプレシアがアリシアの蘇生を求めてアルハザードへの道を開くため、ジュエルシードを暴走させた時に生じたリスクだ。
もし、ジュエルシードの制御に失敗した場合、彼女は愛する娘と共にこの虚数空間に落ちる事になる。
落ちれば二度と出る事はできない。
そのもしの場合と管理局による再度の突入および妨害が彼女を苛立たせているのだった。
もちろん、前者はプレシアの推測であり、本当は突入しているのはまだランだけである。

だが、ここで失敗などしていられない。
愛する娘と再び本当の意味で会うために。
彼女は愛する娘の入っているポッドに手で触れる。

「もう少し……後少しだからね、アリシア……ゴホッ!ゴホッ!」

呟いていたプレシアが突然咳き込む。
口から吐き出されたのは血だった。
咄嗟に口を抑えた手が真っ赤に染まっている。
彼女の体は病に冒され、もう長くない。
だからこそ、自分が死ぬ前にせめて愛する娘だけでも救ってあげたい。
無力だった自分のせいで死なせてしまった娘のためにも。
どんな手を使ってでも。
その思いがプレシアを突き動かし、結果フェイトを突き放す事となっていた。
アリシアのポッドを支えにプレシアは呟く。

「あと少し…あと少しなのよ……。その時私達はアルハザードへ行ける。そして、今度こそ……」

アリシアを救う。
そう言いかけたが、その言葉を続ける事はできなかった。

ドゴオォォォォォン!!!

代わりに響いた轟音が続きの言葉を遮ったのだ。

「なっ!?」

突然の事態に背後を振り返るプレシア。
瓦礫と共に何かが壊された天井から落ちてくる。
生じた土煙でしばらく見えなかったが、しばらくして晴れた煙の中からアクセルアイゼン姿のランが現れた。
足元には、中でも巨大だった傀儡兵の残骸が転がっている。
ランは行く手を阻んできた大型の傀儡兵を撃破すると同時にその持ち前のパワーで強引にこの場所まで近道してきたのだ。
プレシアはランの姿を見て目を細める。

「……誰、あなた」

「一度会っているというのに、ひどいじゃねえか。ま、この姿ならわからないのも無理はないがな」

そう言ったランの声に、プレシアは聞き覚えがあった。
それは以前自分に突っ込んできた少年の声と似ている。
その少年はロボットのような機体に変身でき、その強さは驚くべきものがあった。
そして、今の目の前の人物はまるでロボットのような姿をしている。
それで、プレシアは目の前の人物が誰かわかった。

「あなた……あの時の……」

プレシアは不快そうに眉間に皺を寄せた。
彼が今管理局側にいるのは、無論知っている。

「思い出したようだな」

「何の用かしら。私は忙しいの。後にしてくれる?」

「無理だな。それにあの時言ったはずだ。あのままフェイトを傷つけるなら、俺が決着を付けるとな。だから、俺はてめえを潰す。その歪んだ目的諸共な」

その言葉にプレシアの不快感はさらに増大した。

「黙りなさい!!あんな役立たず、私の娘じゃないわ!!私の娘はアリシアだけよ!!」

その言葉に今度はランの中の怒りが増した。

「ふざけるな。何が役立たずだ、何が人形だ。親のエゴも大概にしろよ。おまえはフェイトの事を、あいつの気持ちを真剣に考えた事があるのか?」

「あなたこそ!!あなたに私の気持ちが、アリシアを失った私の気持ちの何が分かるというの!?私がどれほどアリシアを愛していたか!この子を失った時、ど れほど悲しみ、絶望したか!あなたに分かる訳がない!あなたのような小さな子供に!!」

プレシアは溜まりに溜まった負の感情を吐き出すように叫んだ。
その時、ランの表情が一瞬歪んだ。
だが、アクセルアイゼンとなっている今は他人に自分の表情はわからない。
だから、こう応えた。

「……わかるさ、少しくらいならな。俺も、妹を死なせてるからな……。他ならない俺自身の手で」

「!…なんですって?」

プレシアはランの言葉に少なからず驚いた。
このランという少年も愛する大切な人を失っていたのだ。

「俺は妹を、ユキを…絶望の中で死なせてしまった。俺はその事を死ぬほど悔やんだし、そんな自分に絶望もした。……だが、だからこそ言える事がある。おま えの今している事は……間違っている!!」

「!!!だ、黙れぇぇぇぇぇええええ!!!」

怒りが治まりかけていたプレシアだったが、それがランの最後の言葉で一気に沸点に達した。
プレシアが杖を手に取り、雷光を発射する。
ランも床を蹴ってプレシアに突っ込む。
伝えなければならない。
自分と違って、彼女はまだ戻れる可能性があるという事を。
この戦いで彼女にそれを届かせる。

























一方、クロノやなのは達もランを追う形で時の庭園に来ていた。
既に戦闘態勢で、デバイスを起動させ、バリアジャケットも展開している。

「とりあえず勝手に先行した彼を追って、来てみたはいいが……」

そこで、クロノは言葉を切って周囲を見回した。
そして、一言呆れ気味に言う。

「随分と派手にやってくれたものだ」

彼らの周囲にはところどころ砕けた傀儡兵の残骸が転がっていた。
それだけではなく、壁には無数の穴が空いており、床もかなり損傷し、さらにかなり大きい薬莢までがごろごろと転がっている。
まるで嵐が過ぎ去ったような光景だ。
そして、そのおかげでクロノ達を阻む敵はもういない。

「ね、ねぇクロノ君。私達はどうするの?」

「そうだな……おそらく彼はプレシアを目指しただろうから、彼女は彼にまかせよう。彼の性格からして一対一の戦いを邪魔されるのは好むところではないだろ うし。僕等は駆動炉を封印しよう」

なのはの問いかけにクロノはそう答えた。
実はアルハザードの扉を開くために、プレシアは時の庭園の駆動炉も使用していた。
それもロストロギアであり、同様に暴走している。
だが、そのエネルギーを扉を開くためにプレシアは使用しているため、それを封印できれば、次元震を抑える事ができる。

「しっかしランも派手に暴れたねぇ」

アルフが感心したように呟いた。
その言葉に、皆も心中で同意する。
意図した事態ではないにしても、ランのおかげで無駄な戦闘が避けられたのは喜ぶべき事だが、この惨状は確かに凄い。

「確かに暴れたというのは正しいかもね。どれもこれも魔法で破壊された様子はない。それに、これを見てくれ」

クロノは屈んで掌サイズはある薬莢を拾うと、皆に見せる。

「クロノ君、これって?」

薬莢を知らないなのははクロノに尋ねた。

「薬莢だよ。主に質量兵器の銃火器に見られるものだね。弾丸を撃った後、金属の小さな筒のような物が飛び出るだろ?これがそうだ」

「……でも、なんでこれがここに?」

「おそらく彼が質量兵器を使用したからだろう。ただ、今まで質量兵器らしいものは使っていなかったから、おそらくまだ僕達に見せていなかった力じゃないか な」

「あ、なるほど」

そう言って、ポンと手を叩くなのは。
だが、そこでアルフが気まずそうにクロノに問いかける。

「でも、大丈夫なのかい?管理局では、質量兵器の使用は禁止しているんだろ?」

その言葉になのはは驚いた。

「え!?そうなの!?」

「ああ。だが、彼は事前に僕達に力の事で質量兵器の使用許可を求めてきていた。艦長はそれを特例で許可したから、問題はない」

「そっかぁ。良かったぁ…」

クロノの言葉になのははホッとした。

「でも、クロノ。いくらランでもこれだけの傀儡兵を相手したんだ。消耗しているかもしれない」

そこで、ランの状態を心配したユーノがクロノに話しかけた。
確かにランの力は凄まじいが、これだけの数が相手だったのだ。
消耗している事も十分あり得る。
クロノは顎に手を当てて考える。
そして、一つの案が浮かんだので、それを言う。

「二手に分かれよう。一方は僕と一緒に駆動炉の封印。残りはランの援護とプレシアの逮捕。と言っても、彼は断るかもしれないが、万が一のために 行ってもらう」

そこで、真っ先になのはが手を挙げた。
彼女はランが心配なのだろうし、プレシアにも憤りを感じているのだろう。
クロノはなのはの意図を察し、任命しようとしたが、それはできなかった。
言う前にこの場にいないはずの別の人物が先に声を発したからだ。

「私が行く」

クロノが声のした方を向くと、そこには長い金髪をまとめた少女、フェイトがいた。
彼女を見たアルフはフェイトに抱きつく。

「フェイト!」

「アルフ……心配かけてごめんね。ちゃんと自分で終わらせて、それから始めるよ……本当の私を」

フェイトはあの後、ショックで医務室に臥せていたのだが、どうやらなんとか自分の意思で立ち直ったようだ。
だが、彼女の事情を考えたクロノは止めようとする。

「いや、フェイト、君はやめといた方が……」

「大丈夫。私なら……大丈夫だから」

しかし、とクロノは止めようとしたが、途中でやめた。
フェイトを見た瞬間、彼女の瞳に強い意志が秘められていたからだ。

(やれやれ……どうして僕の周りには頑固者が多いんだか)

クロノは口に出さなかったが、他の者もその気持ちを理解しているようで、苦笑している。

「わかった。フェイトとアルフはプレシアのところへ。なのはとユーノは僕と一緒に駆動炉の封印だ。いいね?」

「うん!」

「わかった」

「まかせときな」

「ありがとう」

なのは、ユーノ、アルフ、フェイトがそれぞれ返事をする。
そして、皆が賛成したので、早速5人は二手に分かれた。

























そして、ランとプレシアのいる庭園最深部では激しい戦闘が行われていた。
足場の不安定な空間で、雷光が走り、赤い閃光がそれに呼応するように走る。

プレシアが杖を振るうと、彼女の周囲から雷光が走る。
アクセルアイゼン姿のランは、その雷撃を気にせずプレシアに突撃する。
ところどころに雷撃が被弾するが、突撃の勢いが治まる事はない。
一気に接近したアクセルアイゼンはステークをプレシアに向けて放つ。
だが、彼女は寸前で飛び退き、突き出されたステークを回避する。
標的からはずれたステークは足場となっていた瓦礫を易々と砕いた。

アクセルアイゼンの攻撃をかわしたプレシアは苛立っていた。
アリシアに被害が及ぶ事を危惧しているのではない。
何故か目の前のランは、アリシアから遠ざけようとしたプレシアの誘いに初めから乗っている。
つまり、彼にはアリシアを傷つけるという気は毛頭ない。
プレシアが苛立っているのは別の理由からだった。

(どうして…止まらない!?)

そう、彼女が苛立っている理由はアクセルアイゼンの接近を先ほどから何度も許している事だった。
プレシアは戦いの序盤にアクセルアイゼンのフィールドが接近戦にあると見抜き、遠距離戦を仕掛けようとしていた。
だが、目の前の赤い機兵は、こちらの魔法に被弾しても全く勢いを落とす事がない。
本当に効いているのか怪しいところだ。
それで、毎回の接近を許してしまっている。
それが彼女の苛立ちを増幅させていた。

アクセルアイゼンがステークを突き刺した体勢からすぐに左腕の三連マシンキャノンを連射してくる。
プレシアはすぐにプロテクションを展開。
迫ってくる弾丸を防ぐ。
プレシアは攻撃が止むと、お返しといわんばかりに魔法陣を足元に展開。
完成までのタイムラグはほぼないに等しい。

「サンダースマッシャー!」

雷撃を伴った閃光がアクセルアイゼンに向けて走る。
だが、アクセルアイゼンは自分のいる位置をずらす事でその雷撃を避けた。
この程度の行動なら機動力がなくても、十分にできる。
直後、背中のバーニアを一気に噴射して瞬く間にプレシアの眼前に迫る。

「なっ!?」

「遅え」

砲撃を撃って隙だらけだったプレシアにアクセルアイゼンの突き出したステークが入った。
プレシアの体がくの字に曲がり、その顔が歪む。
そして、アクセルアイゼンが右腕を振りぬくと同時にプレシアは後ろへ思いっきり吹っ飛ばされる。

「へぇ、刺したと思ったんだがな。咄嗟に自分の体の寸前でプロテクションを展開したか」

対するランは感心したように呟いた。
プレシアはステークが当たる前にプロテクションを自身の体の寸前に展開。
アクセルアイゼンのステークをそれで減衰し、そらしたのだ。

「だが、足りなかったな」

ランの言葉通り、それは咄嗟の防御で不完全だったため、プレシアはステークはそらしたものの、アクセルアイゼンの拳はまともに受ける事になってしまった。
鉄以上の硬度とかなりの加速を乗せた鉄拳だ。
ダメージはかなりのものだろう。

「まだ…まだぁ!」

だが、プレシアは立ち上がった。
持っていた杖を柄に変化させる。
そこから紫の魔力刃が形成され、一振りの魔力剣ができあがる。
そして、彼女はブリッツアクションを使って瞬く間にアクセルアイゼンに迫る。
左薙ぎに振るわれる剣。
しかし、アクセルアイゼンは腰の後ろに装備してあった剣『ドライバブレイド』を逆手のまま抜いて、振るわれた剣を防いだ。
互いの剣が擦れあって火花を飛び散らせる。

「……威力を見ると、どうやら非殺傷設定ではないみたいだな」

「当然よ。私とアリシアの幸せを邪魔する者を生かしておく理由がないわ」

言うと、プレシアは剣を振るってアクセルアイゼンのブレイドを弾いて間合いを取る。
アクセルアイゼンもそれに合わせて地面を蹴り、一旦間合いを取った。
アクセルアイゼンは持っていたブレイドを順手に持ち替える。
そこで、ランは口を開いた。

「……わからないな。そこまで娘思いのあんたが、何故フェイトにその愛情を向けてやらない?確かにあの子は作り出された存在かもしれないが、生み出したの はあんただ。なら、あんたの娘には違いないはずだ」

だが、ランの質問をプレシアは一笑にふした。

「娘ですって?冗談じゃないわ。私の娘はアリシアただ1人。あの子はその代わりにすらならなかった、ただの人形よ」

「何故そうやって考えを一つに絞る。フェイトは人形なんかじゃない。立派な一つの存在だ。そして、あんたがあの子を生み出したのなら、あの子を愛さなけれ ばならないという事が、何故わからない!」

アクセルアイゼンは灰色のメモリを取り出す。
そして、左手に持っているブレイドに付いているロックハンマーを引き、剣を折ると、そこから現れたメモリスロットにメモリを装填する。

【DRIVE!】

今装填したのはドライブバレットというメモリ。
俗に言うバレットメモリという種類の中の一つなのだが、これは単純に相当な量のエネルギーを蓄えているメモリだ。
メモリを装填したアクセルアイゼンはブレイドを元に戻し、左手に構える。
そして、人差し指で引き金を引く。

【JET】

アクセルアイゼンのブレイドにエネルギーが集中する。
プレシアもそれに対し、雷の特性を持った魔力弾を形成する。
そして、同時にアクセルアイゼンはエネルギーで形成した斬撃波、プレシアは魔力弾を放つ。
二つの攻撃がぶつかり合い、相殺された。
だが、その時には既にアクセルアイゼンは飛び出している。
突き出された右腕のステークをプレシアは魔力剣で防御し、やりすごす。
鍔迫り合いとなり、互いの武器から火花が散る。

やはり腹立たしい。
被弾率から言えば、アクセルアイゼンの方が圧倒的に多い訳だが、どうしてもペースを握られているような気がしてならない。
そして、その時彼女は気が付いた。
この目の前の相手は若いにも関わらず相当な場数を踏み、かつ圧倒的なまでの戦闘センスを持つという事を。
だから、突撃と接近戦という特化した戦法にも関わらず、ペースを握られる。
相手を自分のペースに引き込む異彩の感性、彼にはそれがある。
だが、それがやはりプレシアの苛立ちをさらに増幅させる。
こんな子供に、自分の願いが否定される事も。

「はあぁぁ!」

プレシアが渾身の力でアクセルアイゼンの突き出していたステークを振り払った。
右手がそれた事で、無防備となるアクセルアイゼン。
そこへプレシアはすかさず雷撃の魔力弾を連射し、撃ち込んだ。

「ぐあっ!」

ダメージはそれ程でもなかったが、衝撃で後方に吹っ飛ぶアクセルアイゼン。
さらに追撃として、プレシアは魔法陣を足元に展開し、攻撃を放つ。

「サンダースマッシャー!」

先ほどの攻撃よりもさらに大きい。
直撃すれば、さすがのアクセルアイゼンでも無傷ではすまない。
だが、吹っ飛んでいたアクセルアイゼンは体勢を立て直すと左手のブレイドの引き金を引く。

【ELECTRIC】

そして、迫る雷撃に向けて帯電したドライバブレイドを逆風に振るった。
真っ二つに割れる雷撃。
割られた雷撃は両脇の背後にある瓦礫を粉砕する。
だが、それは囮だった。
直後、プレシアが剣を鞭に変化させ、アクセルアイゼンに向けて放っていたのだ。
ブレイドを振った直後ですぐに的確な防御に入れないアクセルアイゼンは、空いた右手で鞭を防ごうとする。
放たれた鞭は、アクセルアイゼンの右腕に巻きついた。
直後、プレシアが鞭伝いに放った電撃がアクセルアイゼンを襲う。

「ぐうう…!くっそ…!」

体を襲う電撃にランは顔をしかめたが、すぐにブレイドで鞭を切り落とした。
それと同時に電撃も治まる。
プレシアは鞭を引っ込め、また剣を形成した。

「……そろそろ決めるか」

このままやり合っても埒が明かない。
彼女を説得してみようと話したが、やはり聞こうとしない。
というか、説得はあまり性分ではなかったりする。
それに元々自分は彼女を潰しに来たのだ。
なら、やる事は一つ。
そう決断したランはブレイドを腰の後ろに収納し、空いた左手でドライバーの左のハンドルにあるマキシマムクラッチを握ろうとした、その時だった。

「母さん!」

突如、この場にいないはずの人物の声が聞こえた。
聞き覚えのある声にランが振り向くと、背後にいたのは、フェイトとアルフだった。



















プレシアはこの最深部に入ってきたフェイトとアルフを見て問う。

「……何しに来たの?消えなさい。あなたにもう用はないわ」

プレシアはそう言ったが、フェイトはランの前に出て口を開いた。

「あなたに言いたい事があって来ました」

ランは一旦マキシマムクラッチにかけた手を下ろし、フェイトの様子を見守る。
フェイトは一度目を閉じる。

「私は……私はアリシア・テスタロッサじゃありません。あなたの作ったただの人形なのかもしれません……」

そして、その頃なのは達も駆動炉の封印を終えていた。
フェイトは続ける。

「だけど…私は、フェイト・テスタロッサは…あなたに生み出してもらい、育ててもらったあなたの娘です!」

フェイトはそう言い切った。
しかし、それを聞いたプレシアは笑い出す。

「フフフフ、アハハハ、アーハハハ!だから、何?今更あなたを娘と思えというの?」

「あなたが…それを望むなら、それを望むなら…世界中の誰からもどんな出来事からもあなたを守る。私が、あなたの娘だからじゃない!あなたが…私の母さん だから!」

フェイトは真っ直ぐな瞳でプレシアを見、一歩踏み出すと手を彼女に向けて差し出した。
彼女はそれを見て、笑ったが、拒否した。

「くだらないわ」

「え?」

フェイトの目が悲しみで揺らぐ。
プレシアは足元に巨大な魔法陣を展開すると、そこから青白い光を放出させた。

「……まずい!」

直感で危険を感じ取ったランが叫んだ。
直後、庭園自体が大きく揺れ始める。
次元震を抑えるため、遅れて来ていたリンディの足元にも亀裂が入り、バランスを崩したリンディの魔法陣は解除されてしまった。

『ダメです!艦長、庭園が崩れます!戻ってください!この規模の崩壊なら次元断層も起こりませんから!』

すると、エイミィはクロノ達にも警告してきた。

『クロノ君達も脱出して!崩壊までもう時間がないの!』

そして、それはラン達にも届いていた。

(……先ほどの光がトリガーになったか)

ランはそう分析すると、フェイトの方を向いて脱出を促す。

「フェイト、おまえはアルフと一緒に脱出しろ」

その声にフェイトがアクセルアイゼン姿のランを見た。

「その声……ラン?」

「ああ。ここはもう直崩れる。早く行け」

「でも…ランは?」

フェイトがランとプレシアを交互に見ながら心配そうに聞いた。
どちらも心配なのだろう。

「俺はまだプレシアとの決着をつけていない。俺にはまだ彼女に伝えないといけない事があるから、ここに残る」

「なら、私も…!」

「ダメだ。それに、おまえはもう言いたい事は言った。……後は俺の仕事だ。だから、行け」

「…………」

強く脱出するように促したランだったが、フェイトは俯き、脱出する様子がない。
ランはアルフの方に振り向いた。

「アルフ、フェイトを連れて脱出しろ!」

「きゃっ!」

そう言ってランは強引にフェイトのバリアジャケットの襟をつかむと、アルフにフェイトを投げてよこす。
投げ飛ばされたフェイトをアルフは受け止めた。

「あんたは!?」

「俺も後で脱出する!早く行け!」

その時、フェイトが叫んだ。

「……ラン!一つだけ約束して!…絶対、戻ってくるって!」

その言葉にランは笑った。

「……わかった。…行け!」

ランが叫ぶと、フェイトとアルフは意を決したようにこの最深部から出て行った。


















残ったのは、俺とプレシアだけだった。
既に周囲は崩れ始めている。
もう時間がない。
俺はプレシアに再び向き直り、決着をつける前に確認をした。

「最後に一つだけ確認させろ。おまえはアルハザードに行くって言っていたな。おまえはそこに行ってどうするつもりなんだ?」

「決まっているわ。取り戻すのよ、私とアリシアの過去と未来を!取り戻すの…こんなはずじゃなかった世界の全てを!」

プレシアは前に言った事と同じような事を断言した。
俺はそれを少し悲しく思う。

「こんなはずじゃなかった…か。それは誰にだって言える事さ。昔からずっとな……」

だが、俺にも言える事がある。

「そして、逃げるか立ち向かうかはそいつの自由だ。だがな……関係のない他人を巻き込むな。迷惑だ」

そう言うと、プレシアはぎりっと奥歯を噛んだ。
だが、表情を戻すと、彼女は唐突に話を変えてきた。

「そういえば、あなた、妹さんを亡くしたんですってね」

「……それがどうした」

内心僅かに生じた動揺を見せずに問い返す。

「なら、あなたも来ない?忘れられた都、アルハザードへ。そうすれば、あなたの妹さんを取り戻せるわよ?」

と、とんでもない提案を彼女はしてきた。
それは単なる気まぐれか、俺が実際は同類の人間だと示すためか、それとも同類の人間への哀れみか。
だが、俺はその提案を聞くと、内側に生じた僅かな動揺が消えるのがわかった。
俺は意図せず不敵に笑ってしまう。

「フッ……、折角の提案だが、俺にはできない相談だな。俺の求めるところは、おまえとは違う」

「そう、残念だわ……」

決裂した時点で、プレシアが杖を構えた。
足元にまた巨大な魔法陣が展開し、杖先に今までとは比較にならない魔力エネルギーが集中する。
だが、そこで彼女は血を吐いた。
集中していたエネルギーが弱まる。

「…無理すんなよ」

「……黙りなさい。あなたも、私を認める気がないのなら、全力で来なさい」

そう言うと、再び彼女の杖に魔力が集中し始めた。
俺はそれを見て、再びドライバーにある左ハンドルのマキシマムクラッチを握る。
今度こそ、力強く。

【ACCEL!MAXIMUM DRIVE!】

そして、右ハンドルのパワースロットルを二回捻った。
すると、エンジン音が鳴り始める。
俺が腰溜めに構えると同時に一気にエンジン音が高まり始めた。
一気に最高出力まで上がる。
そして、それを表すかのようにアクセルアイゼンの全身から炎が迸った。
瞬く間に俺は炎を纏う。
俺は右腕のステークを構えた。

「……行くぜ」

俺は言うと、背中のバーニア、肩のスラスターを全開にして、一気に飛び出した。
プレシアが杖を俺に向ける。

「サンダーバスター!!!」

「アクセルステーク!!!」

プレシアは充填していた魔力弾を一気に放ち、俺は全身に迸っていた熱エネルギーを全て右腕のステークに回して突き出した。
互いに全力で撃ち出した攻撃が激突し、周囲は光に包まれた。

























光が治まった後、立っていたのはアクセルアイゼン姿のランだった。
そして、その前に横たわるのはプレシア。
あの時、プレシアの雷撃をアクセルのマキシマムで貫いた俺は、そのままプレシアの体を貫いていた。
勝利したのは俺だった。
だが、心は晴れない。
血溜まりの上に仰向けに倒れていたプレシアが目線だけ俺に向けた。

「……どうやら、私の負けのようね」

「……そうだな」

話すプレシアはどこか憑き物が落ちたような顔をしていた。
俺は最後に話す。

「何故、あの時俺がおまえの誘いを断ったか教えてやろうか?」

「……?」

「それは、俺自身が妹の…ユキの蘇生を望まないからだ」

俺は驚いたプレシアの様子に構わず続けた。

「あんたは恐らく娘を失った事で、他の誰かを恨んだ事があるだろ?」

「……ええ」

「だが、俺は違う。俺が一番憎いのは……自分自身だ」

俺はその時自然と手を握り締めていた。
俺の言葉にプレシアがさらに驚いたような顔を見せた。

「ユキを死なせたのは、俺自身だからな。だから、あんたのように自分と大切な者の幸せを願う事なんてできない。俺自身がそれを望まない。だから、あんたの 求めたところに俺の求めるものはないんだよ。俺の望みは……妹を絶望させ、死なせた罪として、あがき苦しんで生きみっともなく死ぬ事にあるからな……」

「……そうだったのね」

(こんな子供が、そこまで重いものを背負っていたのね……)

俺はそう言うと、プレシアにちゃんと言葉で伝えたかった事を伝える事にする。

「だからこそ、言える事がある。あんたはフェイトをちゃんと愛してやるべきだった。あんたが本当にアリシアを求めたのなら……。確かにアリシアとフェイト は違う。だが、あんたが本当にアリシアを望んだのなら、その愛情をあの子に向けてやるべきだったんだ。そうすれば、フェイトはアリシアのように明るくて、 優しく笑う子にもなったはずだ。……親や周りの環境によって子供は成長し、時には変化していく。あんたは、失った娘を先に求めるよりも、その過程で得た娘 をもっと大事にしてやるべきだったんだ」

「……わかってるわよ。あなたに会った時に、アリシアの夢を思い出したから……」

その言葉に俺は驚いた。
気づいていたのか。

「なら、どうして……」

「もう遅かったのよ……。私の病はもう既に末期症状で、先は長くない。そして、フェイトには既にあれだけの仕打ちをしていた。……今更母親として、あの子 に向き合える訳がないじゃない」

俺はその言葉に息を吐いた。

「……そんな事ねえよ。最後の最後にあんたはフェイトに優しく笑いかけるだけで良かったんだ。あの子に、一言でも「愛してる」って言えばよかったんだよ。 それで、人は意外と救われるものさ」

「……そう、ね。あなたの言う通りかもしれない」

そう言って、プレシアは微笑んだ。
このランという少年は本当に大人びた少年だ。
大人以上に人生経験をしているような感じすら覚える。
それだけ彼の生きてきた道は過酷なものだったのだろうか。
だが、それは本人しかわからない。

俺はそれを見て少しやるせない気分になった。

「結局、俺達は自分勝手な思い込みでとんでもない間違いをしてしまったみたいだな……」

プレシアはアリシアを求めすぎて、フェイトを見なかった。
俺は、そんなプレシアを見て、てっきり彼女が気づいていないと勘違いし、彼女と戦った。
その方があの状況を続けられるよりかはいいと思ったから。
しかし結局、それは俺の独善にすぎなかった。
互いに気づいていて打ち明けない事が、このような結果を残してしまった。

「ゴホッ、ゴホッ!」

その時、プレシアが血を吐いた。
俺は彼女から目を離さない。

「プレシア……」

「……一つ、約束しなさい」

彼女はもう助からない。
もう長く生きられなかった体に加えて、俺が結果とどめをさしたのだ。
それでも、彼女は続けた。

「あなたが、フェイトを思ってやれるのなら、私の代わりにあの子を見てあげて。私が…あの子にしてやれなかった分まで。あの子がいつか1人立ちできるよう に」

俺はその約束を聞き入れた。

「…わかった。俺がこの世界にいる間は、フェイトの友達として、俺が守ってやる。あんたの分まで、な」

「…そう、ありがとう」

「って言っても、俺がここから生きて出られたらの話だがな……」

俺はそう言って、天井を見上げた。
既に周囲は崩壊が進み、足場となる床もほとんどない有様だった。
出口となる道もほとんどなく、全てが空間に飲み込まれている。
そして、ここも既に瓦礫が落ち、既に崩れ落ちる寸前であった。

「そう…ね……そう…しなさい」

そう言って、彼女は、プレシアは目を閉じた。
俺は目を閉じた彼女を見ると、再び天井を見上げた。

「悪い……なのは、フェイト。俺はここまでみたいだ」

既に時遅しといったところで、脱出不可能。
時の庭園は完全に崩壊寸前だった。
あの時一緒に脱出するべきだったのかもしれない。
だが、それももう遅い。

そして、次の瞬間、ランの足元が崩れ、ランはプレシアとアリシアがいるポッドと一緒に虚数空間へと落ちて行った。






















あとがき


皆様、お久しぶりです。
春になって、そろそろ気温も暖かくなってきました。
ただし、気温がまだ不安定なので、一時期風邪を引いて寝込んでいましたが。
今では元気になって、こうして13話を更新する事ができました。
今回はランが自分の愛機を最後の最後で使い、自身の意思を貫くために戦うというお話でした。
無印のシリーズでは一番書きたかった場面です。
基本最初から最後までランが大暴れする回だったんですけどね。
ランは自分の過去から自分の肉親はちゃんと愛してあげるべきだという考えを持ち、それをプレシアに伝えるために戦うというものだったのです。
結果的にそれを伝える事ができず、互いに虚数空間へ落ちてしまうというかなり悲しい結果に終わってしまった訳なのですが。
ハッピーエンドを望んでいた人達には、非常に残念で納得のいかない結果になってしまったかもしれません。
ですが、この主人公はよくあるネタで死者蘇生とかいう凄い能力やチートな術は持っていません。
戦いでは結構なチートかもしれませんが(苦笑)
ですが、あくまで主人公が持っているのは戦うための力なので。
それにこの物語を書く時点である程度現実的に行こうと考えていたので。
コロッと考えが変わるような事はなしにしようと……。
まあ、次回でそれも覆されそうな気もしますが。
とにかく、今回はそういう趣向で書いた次第です。
ちなみに、この作品のタイトルの「Accel Knight」は、ライの愛機が『加速の鋼狼』アクセルアイゼンで、彼がそれを扱う者という所から来ています。
Knightというにはいささか不釣り合いな性格をしていますが(苦笑)

さて、次回はいよいよ最終回!
虚数空間に落ちてしまったランはこのまま終わってしまうのか?
そして、残された人々は?
ついにランの異世界で関わった初の事件が終焉を迎えます。
次回で、完結ですが、乞うご期待ください。

という訳でこの作品ももうすぐ完結という訳なのですが、ギアスとほぼ同時期って……。
物凄く複雑な気分です。
完結するのはいい事なのですが、何故か…ねぇ。
おそらく、話数が半分以下なのと、真剣さや原作の研究度合いが違うからこういう事になったんでしょうが……。
やはり微妙な心境です。
ですが、やった以上は終わらせるのが筋なので、ちゃんと完結させたいと思います。
今は気温が不安定な時期で体調を崩す方も多いでしょうが、気をつけてくださいね。
では、今回はこの辺で失礼させてもらいます。
あとがきの後に主人公の愛機の設定を載せていますので、良ければご覧ください。
それでは皆さん、また次回で!


















設定(8)


ゲシュペンストドライバー・Ver.A(アクセル)

Gドライバー・ダブルと同様にランの父親が製作したバイクのハンドル型のドライバー。
アクセルアイゼンに変身する事ができる道具。
使用する事で、アクセルアイゼンと同等の能力を持つパワードスーツを着込んだ状態となる。
変身や使用の仕方、構造はGドライバーとほぼ変わりなく、スロットも同じく2つ。
しかし、組み換えなどの汎用性を重視したGドライバー・ダブルとは違い、オンリーであるアクセルとアイゼンの能力を最大限引き出すための特化仕様となって いる。
スロットの形を言うなら、Gドライバー・ダブルはダブルスロットなのに対し、こちらはツインスロットと言う二つの力を掛け合わせる特化形。
ゆえに対応したメモリもアクセルとアイゼンの2つのみ。
ただし、ドライバー専用に開発されたメモリであれば、例外的に使用可能。
マキシマムドライブは専用のマキシマムクラッチを握り、パワースロットルを捻る事で発動が可能。
専用のアタッチメントもベルトに搭載されている。


アクセルメモリ

PTメモリの1つ。
加速、速さ、各種エンジンのデータを持ち、加速力と突進力に特化したアクセルアイゼンの能力の一旦を内包したメモリ。
作用としては、超加速を含めたスピードの飛躍、運動性の最適化、ドライブ出力の飛躍など名前通りの効果をもたらす。
色は赤。
適合者はラン。
元々ラン専用のメモリでもあるため当然である。
このメモリにはあるブラックボックスが存在している。


アイゼンメモリ

PTメモリの1つ。
鉄、および金属の力を司り、アクセルの機能を発動していないアクセルアイゼンの基礎能力を内包したメモリ。
変身時には必ず使用しなければならない。
もたらす効果としては、装甲強度を上げる硬化や金属を操る事ができ、使用者に超越した身体能力を与える。
色は銀。
適合者はラン。
こちらもラン専用のメモリである。
PTメモリの中では、ジョーカーと同じく最もPTの基礎的な性能が内包されているメモリでもある。


アクセルアイゼン

ランの本来の愛機。
アクセルの加速と鉄(金属)の特性である硬化を持つアイゼンの力を合わせもつ事で、かなりの高火力、重装甲、突進力を誇る。
ランが持つ数ある形態の中で最も戦闘力が高い。
加えて突進力も最高で、そこから生み出されるパワーはゲシュペンスト・ダブルを遥かに凌ぐ。
得意とするのは確実にダメージを与える実弾兵器を中心とした近接・格闘戦。
ただし、遠距離戦にはめっぽう弱く、近づかないと案外話にならなかったりもするという弱点もある。
武装は頭部のヒートホーン、左腕の3連マシンキャノン、右腕のリボルビング・ステーク、両肩のスクエア・クレイモア、専用のドライバブレイド。
機体色は赤と白が中心。
この姿はランの最も信頼し、愛用している物だが、武装が実弾兵器故に加減がしにくいのと管理局の「質量兵器禁止法」に引っかかる事から今まで使用を避けて いた。
だからこそ、このアクセルアイゼンを使用する事はランがそれなりに本気である事を示している。
マキシマム使用時の必殺技は、マキシマムで生じた熱エネルギーを右腕のステークに集中させ放つ「アクセルステーク」。
これはステークだけでなく、他の部位にも使用可能であり、それに応じた多種多様な技が存在している。
加えて、アクセルだけでなく、アイゼンのマキシマムも使用可能であり、それに応じた技も存在している。




ランの機体紹介(本編では登場しない)part2

アクセルアイゼン 正式名称ゲシュペンストアクセル
形式番号:PTX-003AC
武装:ヒートホーン
    3連マシンキャノン
    リボルビング・ステーク
    スクエア・クレイモア
        ドライバブレード
備考:ゲシュペンスト第3期量産型の『ゲシュペンストMk-V』のプロトタイプの内の一機。
当時ゲシュペンストMk-Vの開発陣の1人であった北川博士が息子であるランのために、プロトタイプとして開発されていた2機の内1機を改良したパーソナ ルトルーパーである。
一機は正面突破を可能とするコンセプトを極限まで突き詰めた機体に対し、もう一機は量産化に向けた機体として武装が一回り小さく、またバランスをある程度 優先した仕様となっている。
改良したのは後者の方。
と言っても本来のコンセプトの「絶対的な火力を持って正面突破を可能とする」は充分に満たされており、近接・格闘戦では比類なき実力を発揮する。
改良点はシステムに「アクセルシステム」というものが加えられた事とドライバブレードというPT用の大型実体剣が追加された事である。
アクセルシステムとは、使う事で主に機体のスピードや出力などを飛躍的に上昇させる効果を持つシステムである。
これは、アクセルメモリにも搭載されており、アクセルの基礎システムとなっている。
ただし、この機体は機動性には優れておらず、横移動や細かい挙動などのスピードはあまり上がらないが、突進力と加速性は著しく上昇する。
もちろんメモリシステムも搭載しており、対応したアクセル、アイゼンなどの能力を使用する事ができる。
武装は近・中距離戦闘用の実弾兵器が中心。
追加されたドライバブレードもその例外ではない。
ただし、ドライブバレットという物をバレットスロットに装填する事でスチーム、ジェット、エレクトリック、フリーズといった様々な機能を使用する事ができ る。
これにより、斬艦刀にも匹敵する鋭い切れ味と硬度を持つブレードと様々な機能を併せ持った多機能型大型剣となる。
元々のコードネームであった「アルトアイゼン」を北川博士はこのシステムにちなんで「アクセルアイゼン」と名付け、正式名称も「ゲシュペンストアクセル」 と変更した。



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