魔法少女リリカルなのはA's
               Accel of the Rebellion




















第5話 蒐集…そして、始まり



俺こと北川乱がはやての家に移り住んでから数ヶ月が経とうとしていた。
だが、その日常の中であるひとつの転機が訪れる。
夏の暑さも引き、秋が深まってくる10月。
正確には10月末だが、はやてが倒れた。
原因は突発的な発作によるものだったが、俺が以前医学に携わっていたものだった事で対応が早かったのと救急車をすぐに呼んだ事が幸いし、大事には至らな かった。
しかし、ここで問題が既にあった。
はやての足の不自由は元からあった原因不明の神経系麻痺によるものだったのだが、それがここ数ヶ月で進行している事が担当医である石田先生から告げられた のだ。
元々俺は子供だったが、シグナムやシャマルと一緒に先生の話を聞いたのだ。
そして、はやてがこのままでは長くないという事も。
だが、俺ははやてが本当は病気ではない事を知っている。
闇の書がどういうものか、それを知ってしまっていたからだ。
もちろん知ってからは、それをどうにかするため魔法関連の技術を研究している。
だが、今言える事は俺がはやてにできる事はほとんどないという事だった。

俺は……なんて無力なんだ。
……だが、諦める事はしない。
まだ…希望はあるから。















それから数日……。
シグナム達は石田先生の話を聞いてからよく家を空けるようになった。

「皆、忙しくなってもうたなぁ」

「……だなぁ」

今俺とはやてしかいない家ではやてが思わずぼやいた。
それに俺も同意する、はやてとゲームをしながら。
ちなみにやっているのは対戦型のアクションゲーム。
俺の世界で流行っていたバーンブレードとかいうロボットゲームをこっちの世界向きに改造したゲームだ。
以前はやて達とやったら意外に好評でこうして時々プレイしている。
話を戻すが、俺はシグナム達が家を空ける理由をなんとなくわかっていた。
だが、それは言わずにゲームを続ける。

「でも、えぇの?ラン君は?」

「何が?」

はやての操作する機体の攻撃を避けながら俺は問い返す。

「だって、ラン君もその…裏世界の戦士とかいうのやったんやろ?その手の仕事とかもあるんちゃうん?」

「んなのねぇよ。今は情報屋稼業に専念してて、それはほとんどエイダにまかせてるしな。今は健全な小学生だ」

俺は言いながら、はやての機体をマシンガンで攻撃する。
もう少しなんだが、当たらない。

「それただの丸投げやん……」

「いいんだよ、元からそうだから。ってもらったぁ!」

「あ!」

俺の掛け声と共に俺の操る機体がはやての機体をソードで切り倒した。
俺の画面にYOU WIN!と表示される。

「あちゃ〜、やってもたぁ」

「油断は禁物だぜ、はやて」

「うぅ〜、今度は負けへんでぇ」

ニヤニヤしながら勝利宣言する俺にはやてが悔しそうに返してくる。
俺とはやてはもう一度機体選択に入り、操作する機体を選択し始める。
俺は、そうしながらも今日の夜、シグナム達が何をしているのか突き止めようと考えていた。

























そして、深夜の午前0時。

「よし、行くぞ」

「ああ、目標までまだまだだからな」

「急ぎましょう」

「うむ」

海鳴のとあるビルの屋上。
そこにヴォルケンリッターであるシグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラがいた。
それぞれはやてからデザインしてもらった騎士甲冑を身に纏っている。
そして、いつものごとく行動に入ろうとした彼女達だったが。

「待てよ」

「「「「!?」」」」

この場にいない者の声に止められた。
シグナム達が声のあった方に振り向くと、ちょうど屋上にあるフェンスの上に器用にしゃがんでいるランの姿があった。

「キ、キタガワ!?」

「どうしてここに!?」

「はやてが倒れて以来、おまえ達は連日家を空けている。そうなれば、嫌でも気になるさ」

シグナムとシャマルの驚きの声に、ランはあくまで冷静にそう告げるのだった。
























俺は立っていたフェンスから飛び降りて、屋上に立つ。
視線の先には驚いた表情のヴォルケンズ。
そして、その服装ははやてが以前デザインした騎士甲冑だった。
やはりとしか言えない。

「それは、前にはやてがデザインした騎士甲冑…だったな」

「…………」

返答はなし。
俺は勝手に続ける。

「やはり蒐集をしていたか……」

「「「「!」」」」

俺の言葉に全員がもれなく驚いた。
それは、俺にとって答えとしか言いようがない。

「どうして知っているかって理由は聞くなよ。あいにく、はやての容態を詳しく知っているのは石田先生だけじゃないんだ。そして、経過を聞いておまえ達が家 を頻繁に空ければそれぐらい察しが付く」

「ならば、何故ここに来た?」

シグナムの問いに俺は淡々と答える。
いや、答えるのではなく、俺の言い分を続けると言った方が正しいか。

「……蒐集ははやてに止められている。なのに、何故おまえ達はそれを行っている?」

「それは……」

「はやての命が危ない、からか?」

「……そうだ」

あまりの予想範囲内の答えに俺はため息を付かざるを得ない。

「じゃあ聞くが、それがどう蒐集とつながるんだ?」

「……今から話す事は主はやてには言わないでほしい」








そして、シグナムは話し始めた。
はやてのリンカーコアが未成熟な上に、闇の書の膨大な魔力をはやてが受け止めきれず結果闇の書がはやてを蝕んでいるという事。
はやてが力を得ないと、それ故に死んでしまうという事。
そして、ここ数日、それを防ぐためにただひだすら魔力生物、魔導士からページを集めるために蒐集していたという事。
それは、俺が調べた内容、推察とほとんど変わらないものだった。

「主はやては闇の書が蝕む限り長くない」

「…………」

「だから、我々は行かなければならないのだ」

シグナムはそう言う。
ヴィータはいつの間にかグラーフアイゼンを握り締めて、悔しそうに涙を流していた。

「だから、この事は黙っていてくれ。頼む、キタガワ」

話を聞いた俺は口を開いた。
答えは決まっていた。

「……わかった」

「……助かる。「ただし」!?」

「これから最低限人に迷惑をかけない。これを約束しろ。おまえ達がはやての命を救うと言っても、主であるはやての言った事は守れ。これは、お前達の義務 だ」

「わかった。約束しよう」

「それと……俺も蒐集に参加する」

「な!」

「なんだって!?」

俺の言葉にシグナムだけでなく、他の3人も驚いた様子を見せた。

まあ、無理もない。
これでも9歳の小学生なのだ、外見は。

「だ、大丈夫なのかよ?」

しかも、ヴィータは俺の強さを忘れていやがる。

「心配するな。これでも俺は強い。それはお前達が身をもって知っている。そうだろ?」

「あ、あぁ……」

それでヴィータも俺の実力がどういうものか思い出したようだった。

「それに、戦力にはなると思うぜ?」

ニヤリとした俺に、シグナムは微笑むと俺に近づいて手を差し出してきた。

「なら、よろしく頼む」

「こちらこそ、よろしく頼むぜ」

こうして、俺はシグナムと握手をかわし、シグナム達の蒐集を手伝う事となった。

だが、正直俺は罪な人間としか言いようがない。
はやてを助けるとはいえ、そうするためには流れに身をまかせるしかないのだから。
わかっているくせにそれしかできない、無力で最低な人間だ。
俺は心の中でシグナム達に謝る。

すまない……。

そして、この行動によって起きるであろう事。
それは……なのは達の敵になりうるという事だった。


























そして、それから1ヶ月程経った12月1日。
早朝の早い時間、俺は桜台でなのはの訓練に付き合っていた。
だが、前のような訓練ではなく、もう彼女の行う訓練様子を見学し、時にアドバイスをするというものだった。
と言っても、やる事に関しては一応指導している。

「じゃあ、今日の仕上げ、シュートコントロールだったか……。やってみな」

「うん」

「レイジングハートもカウント頼む」

「All right」

なのはが目を閉じる。

「リリカルマジカル……」

足元に魔法陣が出現。
なのはが前方に手を掲げる。

つーか、リリカルマジカルの掛け声いるのか?
俺なら恥ずかしくて絶対言わないけどな。

その後、なのはが詠唱していき、それにあわせるように魔力弾が大きくなる。
そして、なのはが空き缶を上へと投げた。

「ディバイン・シューター、シューット!」

そして、掲げた手を上に挙げたなのはの指先から魔力弾が射出された。
それが空き缶を弾く。

「……コントロール」

そして、なのはは魔力弾をコントロールして次々と空き缶に魔力弾をぶつけていく。
さらにそこから魔力弾のスピードを上げてぶつけていく。
レイジングハートはそれをもらさずカウントしていく。

コントロール自体は悪くないが……もう少し集中力をつける必要があるかもな。

俺はそんな評価を下しながら魔力弾が空き缶に当たる様子を見上げる。
そして、ついに当たった回数が100回に達した。
レイジングハートのカウントを聞いたなのはが、一旦息を抜く。

「……ラスト!」

そして、落ちてきた空き缶をなのはは魔力弾でゴミ箱へと弾いた。
しかし、ゴミ箱へは入らず、空き缶はゴミ箱の端に当たって地面に落ちる。

「はぁ〜」

残念そうに息をはくなのは。

「Don't mind, My master」

良い出来ですよ、とレイジングハートが労いの言葉を入れる。

「あはは、ありがとうレイジングハート」

なのはは苦笑すると、俺に視線を向けた。

「ラン君、評価は?」

「60点」

ばっさりと言い切った俺の言葉を聞いて、落胆するなのは。
がっくし、とか聞こえてきそうな程俯く。

「コントロールは悪くないが、集中力の持続が問題だな。後、最後まで集中を乱すな。きっちり最後までできて100点だ。いいな?」

「はい……わかりました」

思いっきり落ち込んでいるなのはの様子に俺は苦笑する。

フォローを入れてやるか。

「ま、前より上手くなってるのは確かだ。自信は持っていいぜ」

「!あ、ありがとう!」

と言って、思いっきり手を握ってくるなのはに俺は驚いた。

「あ、ああ。とにかく、頑張れよ」

「うん!」

こうして、早朝の訓練は終わった。

しかし、眠い……。


























一方、その頃アースラの一室では、フェイトが机に置かれた写真立てを見て微笑んでいた。
そこには、なのは、ラン、アリサ、すずかが笑顔で写っている。
そして、その前にはなのはとランの送ったビデオメール(媒体はDVD)が置いてあった。

なのはとラン……今頃どうしてるかな?

私は半年前に別れた2人を思い出していた。
もう少しで会える、そう思うとどうしても嬉しくなる。
ただ、最近自分でも気になっている事があった。
ランの事を思い出すと、何故か心が暖かくなるのだ。
ビデオメールを見た時も、写真に写る彼を見た時も。

この気持ちは…何なんだろう?

なのはを思う時とは少し違う。
非常に言いにくいのだが、どこか違うのだ。
でも、それは悪い気分ではなかった。

「ランに聞けば……わかるかな?」

ふと口に出していた私。
本当に2人に会えるのが楽しみでしょうがなかった。



























そして、場所は戻り、翌日の夕方頃。

俺は別の次元世界で、シャマルと共に蒐集を行っていた。
広がる広大な砂漠の世界で現在戦闘中。

「おらぁ!」

「ギャアアアアア!」

今の相手は巨大なコブラ。
迫ってくる牙をかわし、俺はどてっぱらにパンチを打ち込む。
俺は今、ゲシュペンスト・ジョーカーで戦っていた。

「ったく、ちょろちょろと……」

「シャアアアアア!」

キレたコブラが俺を尻尾を薙ぎ払って吹き飛ばそうとする。
だが、俺はそれを片手で受け止めた。

「!?」

コブラがたじろぐ。

「うっとうしい…!」

「グガァ!」

俺は思いっきり蛇の尻尾を引き、頭がこちらへ飛んできたところへ、思いっきり顎を蹴りで打ち抜いた。
蛇が倒れる。

「さあ、お片づけだ」

俺はマキシマムスロットにジョーカーメモリをセットして叩く。

【JOKER!MAXIMUM DRIVE!】

「究極ぅ……」

蛇が起き上がろうとするが、俺が先に飛び上がった。
そのままエネルギーの集中した右足を突き出す。

「ゲシュペンストキィィィィック!!」

「───────────!!!!」

コブラは声にならない程の咆哮をあげ、どうと地面に倒れた。

「シャマル、終わったぞ。蒐集頼む」

「ええ、わかったわ」

シャマルはヴォルケンリッターの中で唯一戦闘タイプではない。
言うなれば、サポートに特化したタイプだ。
だから、シャマルは基本的に今の俺のように誰かと組んで蒐集を行う。
かく言う俺も別次元世界への移動手段を持たないので、シャマルと同じように誰かと組んで蒐集を行っている。

「どうだ?ページの方は」

「えっと……8ページ。まずまずね……」

「それで充分だ。……今日はここまででいいだろう。これ以上ははやても心配する」

「そうね……。……え!?」

すると、シャマルに念話が入ったのか、驚きの声を挙げる。

「どうしたんだ?」

俺も一応受信はできるが、今回はシャマルに繋げられたようで、聞こえないので、シャマルに聞く。

「ラン君、大変!ヴィータちゃんが魔導士の子供を襲ってるって!」

「何!?」

「どうもヴィータちゃんが焦ったらしいの。自分の蒐集分が少ないからって……」

ったく!
焦った上に、約束破るとはな!
まあ、いつかはそうなると思ってたが!

「すぐに行くぞ。場所は?」

「海鳴市みたい。急ぎましょう!」

「ああ、頼む」

そして、シャマルはすぐに転移の魔法陣を展開し、俺とシャマルは転移した。
向かう場所は海鳴市。



























俺とシャマルが到着した頃には既に事態は進んでいた。

既に結界が張ってある。
急がなければならない。

「シャマルは、遠方のここで待機。ヴィータをとりあえず止めてから指示を出すからそれまで待っていてくれ」

「……そうね。その方がよさそう。お願いできる?」

「元よりそのつもりだ」

言って俺は転移した場所である建物から飛び出した。
レーダーの生体反応を頼りに現場まで急行する。
そして、程なくしてヴィータ達を見つけた。
反応は全部で7つ。

ヴィータ、シグナム、ザフィーラ、なのは、フェイト、ユーノ、アルフ。
これは……随分とややこしい状況だ。
俺にとっては。

そう思った俺は苦笑したが、そこで、シグナムのエネルギー反応が高まっているのに気づく。

「あいつ……何する気だ!」

俺は一気に背中のバーニアを吹かせて飛んだ。



























私は今、なのはを襲撃した謎の少女、女性、そして男性と対峙していた。
先ほどなのはに止めをさそうとしていた少女の攻撃を止めた後、バインドで拘束する事には成功したのだが、終わりと思った瞬間、増援であろう女性に襲撃され た。
同じようにアルフも男性に襲撃されている。

「くっ!」

「レヴァンテイン、カートリッジロード」

「Explorsion!」

女性のデバイスであろう剣から薬莢が排出された。
何……?
そう思った矢先、女性の剣に炎が纏わりつく。
いや、あれは魔力による炎だ!

「紫電一閃!」

「っ!」

「はあぁぁぁ!」

咄嗟に防御しようとデバイスであるバルディッシュを掲げる。
防御できるか!?そう思った時だった。
目前に何か割り込んだ。


バシィッ!!


その割り込んだ物は女性の炎の剣を素手、しかも片手で白羽取りし、私のバルディッシュをつかんで止める。

「「っ!」」

その光景に私も女性も驚いた。
そして、その目前に割り込んだ、いや、2人に割り込んだ者は、私がよく見知っている人だった。

「よせ、シグナム」

それは、幾度となく見たゲシュペンスト・ジョーカー。
私の友達である北川乱だった。
























あとがき


まさかの2話連続で、あとがきを書いているウォッカーです。
ここ最近はテイルズの最新作が出たという事ですが……私は買ってないんですよね。
22日発売の遊戯王Tag Force6を買うものですから。
今までの暇つぶしがアニメかゲームか、執筆活動だったもので、新しい暇つぶしとして楽しめたらいいな……。
ちなみに最近ちょっとはまっているのは、漫画の戦国ARMORSです。
二巻しか出なかったので、知らない人多いかも……(汗)

さて、私のどうでもいい話はここまでとして……。
今回はランの蒐集参加と、原作第2話の一歩手前あたりまできました。
特に言うような事もないのですが、ついに敵として邂逅したフェイトとラン。
一体どうなるのでしょうね?
ちなみにプレイするゲームとして表記していたバーンブレードですが、あれはスパロボOGでリュウセイがプレイしていて大会も開かれていたあのゲームです。
もし、タイトル違うとかあれば、教えてくださいね。
なにせ、うる覚えに近かったもので(汗)

さて、次回はいよいよ原作に突入。
今度は敵として、邂逅したランはどう動くのか?
そして、フェイトはそのランに対してどうするのか?
続編始めて、恐らく最初の目が離せない回となると思います。
乞うご期待ください!

今回は2話連続投稿ということで、内容的にもあまり書く事もないので短いです。
最近は台風やら何やらで色々と大変ですが、皆さん怪我しないように気をつけてくださいね。
では、また次回で!



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