第七班が大蛇丸達と戦闘を開始している頃、中忍選抜二次試験の補佐官を務めている中忍三人が、壁に地蔵が複数掘られている場所に集まっていた。

「1…2…3……仏が3つか」

「…これって何かの忍術だよな?」

「こりゃあ酷いな……」

 中忍の一人が唾を飲み込む。軽口を叩く中忍達だが、その表情は口調とは裏腹に厳しかった。

「いきなり問題発生かよ……ったく」

 後頭部を掻きながら面倒くさそうに言う一人の中忍。中忍達が見ている先にあるのは3つの惨殺死体。何れものっぺらぼうのように顔の皮が剥がされていた。

「二次試験官のアンコさんに知らせろ!」

「はいッ!」

 一人の中忍が同僚の言葉に返事を返すと瞬身の術で姿を消した。後に残ったのは二人の中忍と赤黒い液体を付けられた壁に掘られた地蔵、そして仏となった三体の死体だけ。

▼ ▼ ▼ ▼

「うん!団子にはやっぱりお汁粉ね♪さぁて……これを食べたら、私も突破者を塔で待つとするか!」

 缶のお汁粉で口の中にある団子を流し込む。本当にこの団子は美味しいわねぇ。お汁粉を缶で飲むことになったのはいただけないけど……。ピュっと食べ終わった団子の串を近くにある木に投げる。

「早い奴等は24時間もあれば、クリアするプログラムだからね……っと、木ノ葉マーク完成!!」

 木の幹には私が食べた約50本の団子の串が刺さっていて、最後の一本で木ノ葉マークが完成した。

 ここの団子って美味しいからついつい食べ過ぎちゃうのよねぇ〜。ま、いっか。私ってばまだ24だし♪そんな事を考えていたら、白煙と一緒に名前を忘れた中忍が現れた。

「大変です、アンコ様!!」

「…様付けで呼ぶなって言わなかったっけ?」

 はぁ……様付けで呼ばれる程、私は偉くも何ともないってのに…。

「死体ですッ三体の!」

「死体?」

 まだスタートして間もないってのに…もうドンパチを始めた奴がいるのか。最近の若い奴は血の気が多いのかしら?

「しかも妙なんです。兎に角来てください!」

 妙…ねぇ。団子を飲み込んで眼を細める。死体が出ただけでこんなに騒ぐ程こいつも中忍になって浅くなかったと思うけど…ま、行ってから考えるか。

「分かったわ。案内しなさい」

 それから直ぐに中忍に案内された場所に着いてみると、確かに三体の死体があった。一体の死体の傍に近付き、掛かっていた布を取り除いて状態を見てみる。

「持ち物や身分証からして、中忍選抜試験に登録されていた草隠れの忍びなんですが……」

 一体の死体の状態を確認した瞬間こそ思考から何から全て止まってしまったが、直ぐに他二体の死体の布を乱暴に取り除いた。

「見ての通り顔がないんです。まるで、溶かされたようにのっぺらぼうで…」

 ……間違いないわ、この術はアイツの…。でも何でアイツが今更この試験に……。思い出したくもないけど、頭の中にアイツの顔が浮かび上がって来る。私を捨てて、この里を去ったアイツの顔が。

「この草3人の証明写真を見せて!!」

「あ…はいッ!」

 案内を頼んだ中忍から写真を受け取る。そこには、髪の長い男の姿があった。こいつの顔を奪ったのか……。ッ!今は下忍達が森の中にいる。私は瞬時に何をすべきか判断し、ここに集まった中忍達に顔を向ける。

「えらい事になったわ。あなた達はこの事をすぐ火影様に連絡して!」

「え!?」

 ああもう!!説明している暇はないっての!怒りを抑えて、疑問の声を上げなかった他の中忍達に指示を出す。

「死の森へ暗部の出動要請を2部隊以上取り付けて!私は今から『こいつら』の顔を奪った奴らを追い掛けるから」

 そう言って直ぐに私は死の森へとフェンスを乗り越えて入っていく。アイツから下忍達を守らないと!!

 だけどその私の願いは試験開始前に私がからかい、思いの外気にいった一人の下忍によって守られた事を私はこの時まだ知らなかった。

▼ ▼ ▼ ▼

 時間は過ぎ…ナルト達が大蛇丸を退けたあの時から既に反日が経過していた。そして、ナルト達のいる場所より比較的近いこの場所に、木ノ葉の下忍になって二年目のチームがいた。

「今日丸一日使って5日分の食料と水は確保出来たな」

 巨木の根に腰掛けて、今後の計画を相談しているのは日向ネジ。近くには携帯食料を食べてそれを聞いているロック・リー。そして、この班唯一の紅一点、テンテンはというと…。

「夜明けするまで今から約2時間。活動を休止しているチームが殆どだろう。予定通り、この時を狙う」

 クナイの柄。つまりは穴が空いている部分に指を引っ掛けてクルクルと回しながら、ネジの話に耳を傾けていた。

「いったん別々に分かれて、各自3時間偵察に向かうぞ。ただし、他のチームを見つけても見つけなくても……」

 ネジは言葉を続けながらショルダーから取り出したクナイを自分の座っている真下に突き刺した。

「この場所へ戻ってくる。良いな!」

「ラジャー!!」

「了〜解」

 リーは軍人がするような敬礼で以って元気良く返事をし、テンテンは笑顔で返事をする。その二人の様子を見てネジは口角を上げて笑みを浮かべると、最後に号令を掛ける。

「よし……散ッ!!!」

 一人は純粋な使命感で。一人は自分の勘が指し示す場所へ。一人はリーダーとしての自覚で。三人はネジの言葉で、それぞれ森の中へと散って行く。

▼ ▼ ▼ ▼

 俺達は大蛇丸を追い払って直ぐに、自分達が担当した食料を持ってあそこから移動してきた。木の根が盛り上がっている所に大きな葉を繋ぎ合わせて屋根を作り、ここを今日の拠点とする。

 拠点作りに関しては、三人が三人ともアカデミー時代に散々習っていたのもあって、そう時間を掛ける事なく仕上げる事が出来た。拠点を作り上げた後は、サクラは今日の晩飯を作り、俺は忍具の手入れ、サスケは俺が課した修行をしている。

 晩飯の内容は、俺が仕留めた熊と二人が取ってきた茸やら野草やらを入れて煮込んだ、なんちゃっての鍋だ。サクラの料理の腕は、今日までの任務を通して知っているのであまり心配はしてない。

 だが、『もしかしたら』というのもあるので横目で確認しつつ、俺達全員が今日使った忍具の手入れをしながら、サスケの修行に口を出すのも忘れない。

 今サスケにやらせているのは、チャクラを雷に形質変化させて、それを利き腕の左手に纏わせるといったもの。ぶっちゃければカカシのオリ術『千鳥』だ。

 原作を無視して俺がサスケにこれを教えている理由。それは何と言っても、サスケを原作よりも強くするという俺の我が儘からだ。

 最後の決めまでではないものの、カカシが途中まで発動させたこの術をサスケが見ていたのも理由としてある。この術を会得するのに必要な体捌き。それは波の国の任務から今日まで、サスケに重りを付けさせた状態で行動させていたことで何とかなった。

 リー程ではないにしろ、結構な重りを足首と手首に付けさせているので、重りを外したサスケは結構速いと思う。重りを外すタイミングは自分で決めろと言ってはあるが、こいつってば大蛇丸の手下を相手にする時にも外してなかったから、隠れマゾの毛質があるのかもしれない。

 まぁ、重りを外さないで勝てると判断したのであれば、こいつも少しは成長したって事かな。リーみたいな『修行大好き君』にならないか、それだけが心配ではあるけども。

「チャクラを掌全体に集中させるイメージでやれって何回言えば分かるんだ?」

「……そうは言うが、チャクラを変化させるところまでは俺にだって分かる。だが、この集中させるというのは…」

 確かに螺旋丸じゃないにしても、この術も会得難度高そうだもんなぁ。けど、お前には写輪眼っていうチートの目があるんだし、コツを掴んじゃえば簡単に出来るようになるだろうよ。ま、そんな事口が裂けても言わないけどさ。

「写輪眼を使えば何とか出来る。だが、通常の状態でやるとなると…」

「それはお前が本当の意味で、写輪眼を使いこなせていないって事だ。カカシは写輪眼を使ってこれをやってたけど、お前はその状態で出来るようになれ。お前はうちはの天才なんだろ?」

「ふ、フンッやってやる。俺はこんなところで立ち止まっているわけには行かないからな」

 全く、扱いやすい野郎だなぁ。ま、御陰でこいつってば順調に強くはなってるんだけどさ。ん?近くに誰か来たな。これは音の奴らか?一次試験の前に粗方覚えたチャクラの反応と同じだから間違いないな。

 今日は雨隠れと大蛇丸と戦ったんだ。俺はともかくこの二人は無理だろうなぁ。サスケの野郎はそれを否定するだろうけど、今も修行するのが辛そうだし。……二人の経験値を稼ぐのにこいつらって丁度良い奴らなんだよなぁ…仕方ないか。

「サスケくぅ〜ん!ナルトぉ〜!ご飯出来たわよぉ!!」

 サクラも今日は頑張ったみたいだし、音の奴らは俺がブッ飛ばしますかね。

「デコ姫様がお呼びだ。飯行くぞサスケ」

「はぁ…はぁ…分かった」

 サスケが千鳥を霧散させて俺の方に歩いて来る。それを見て俺も立ち上がり、サクラの方にサスケと並んで向かう。さて、美味い飯であることを祈ろうかな。

▼ ▼ ▼ ▼

 サクラの美味くもなく不味くもない普通の飯を食べ終わっても、音の奴らが襲ってくる様子がない。……う〜ん、あいつら俺達が寝るのを待ってるのか?何とも気の長い…。ま、忍者ってそういうもんだけどさ。

「昼間襲ってきた人達が持ってた巻物って、私達と同じ『天の書』だったわねぇ」

「俺達が欲しいのは『地の書』だ。だが、これも使い道がない訳じゃない。そうだろ、ナルト」

 サスケが天の書を指に乗せながら話す。

「あぁ、サスケの言う通りだ。サクラお前は頭『だけ』はいいんだからもう少し考えろってばよ」

「うぅ…分かったわよ」

「サクラをイジメんのもこんくらいにして、明日も早いしもう寝ようぜ。今日は俺が見張りしてやっから、明日はサスケな。交代制にするからそのつもりでいろよ〜。あぁ、サクラ。勿論お前にもやらせるからそのつもりでいろよ」

 サクラの額をツンツンと指で突きながら言い聞かせる。こいつ、見張りなんてしたくないって顔してたからな。予め言っておけばこいつもちゃんとやるだろ。ま、こいつが見張りする時は影分身出しておけば大丈夫だろ。サクラが俺に信用されるようになるのっていつになるやら。

 俺の手を振り払って額を押さえて睨んでくるが、それを軽く流してシッシと手で早く寝ろと合図を送る。すると、サスケは疲れを取るためにさっさと横になり、サクラも渋々言う通りに横になった。

 さて、こいつらが寝たら音の奴らをボコりに行くとしますか。

▼ ▼ ▼ ▼

 ガサッ。ん?おお〜やっと出てきたか。見張りを開始してから約5時間。背後の茂みから物音が聞こえた。

 だが、そこから出て来たのはリスだった。………こいつってば背中に起爆札貼られてるのに、目の前で胡桃をカリカリ食べてるよ。可愛いは可愛いけど、違和感とか感じないのか?

 リスをスッと捕まえて、暴れるリスの背中から起爆札を剥がしてやった。流石にあんな小さいのが目の前で爆散する様なんて見たくねぇし。

「おい、そろそろ出てきたらどうだ?いい加減、俺も待ち草臥れてるんですけどぉ」

 やれやれと肩を竦ませながら音の奴らに背中を向けると、俺の背後で木の枝から飛び降りて来る音忍三人の気配がした。

「まさか気付かれていたとは。僕達の5時間は無駄だったという事でしょうか」

「いいじゃねぇかドス!俺は初めっからこんな作戦は好かなかったんだ!」

「油断すんじゃないよザク。あくまでも狙いはうちはだからね」

 包帯野郎に、ツンツン野郎。そんでもって普通女ね。さぁて、いっちょもんでやりますか!

▼ ▼ ▼ ▼

 ナルトが音忍と対峙している頃、ロック・リーはというと…。

 リーはネジの言う通りに『死の森』を駆け巡っていた。太い木の枝を次から次へと飛び移り、その中の1つに手を付けると遠心力を利用してクルンッと回転し、足でその枝に着地した。

 すると、その衝撃で落ちたのか、巨木から木の葉がヒラヒラと舞い落ちる。それを無言でリーは見る。

「…………」

 無言でその舞い落ちる木の葉を見ていたリーだが、まつ毛が三本だけ生えている丸い目を細めてガッツポーズを取る。何か思いついたのだろう。

(この舞い落ちる葉っぱ20枚。地面に落ちるまでに全て取れたら、サクラさんが僕の事を好きになる!!もし…もし、一枚でも取れなかったら、一生片思いで終わる。というか、「アンタ、ゲジゲジじゃん」とか言われ続ける)

 頬を赤く染めたかと思うと直ぐに青くするといった変顔を披露してくれたリーは、次の瞬間丸い瞳に炎を灯して再びガッツポーズを決める。そして、次の瞬間木の枝を蹴って舞い落ちる木の葉に向かって一直線に跳んだ。

 バシュッ!!そんな音がリーの足元でしたその後「とお!!」と、まるで漫画に出てくるヒーロー被れのような声を出す。ロック・リー。本当に残念な少年である。

 リーは何時でも何処でも自分ルールで修行をする癖が付いていた。それは、こんな所でも発揮されてしまう。サクラがリーの事をこんな事で好きになる根拠がどこにあるのだろうか。サクラはこれを見ていないし、何よりサスケ一筋だ。リーには勝ち目なんてはじめからないのだ。

 パシパシパシパシパシパシ………次々と空中にある木の葉を両手だけで掴んでいくリーの顔は真剣そのもの。19枚目を掴んだ所で、「グォ!!」と体を木の枝にぶつけて、変な声を出してしまう。これを、ナルトやキバ、いのが見ていたら馬鹿笑いしていた事だろう。

 激突した衝撃を完全に無視して、地面に落ちる寸前の木の葉を探し、そして…地面に落ちそうな一枚の木の葉を見つけた。

(うぉおおおおあと1枚ッ!!)

 リーは直ぐに近くにあった枝を蹴り、地面すれすれの木の葉に手を伸ばす。

(届けぇ!!!!)

 リーのその無駄に熱い思いが届いたのか、パシッとその手に最後の一枚も収まった。

「やった………やりましたッ!やりましたよ、ガイ先生ぇええええ!!!!!!」

 リーのその雄叫びは、死の森中に響いたとか響かなかったとか……。それから、そこは担当上忍の名ではなく、叫ぶのであればサクラの名前を叫ぶべき事に気付かないリーは本当に流石だと言えるだろう。

▼ ▼ ▼ ▼

 同じ班の奴が、そんな馬鹿な事をやっているとは露知らず、日向ネジは死の森を歩いていた。

「……こそこそ隠れずに出て来たらどうだ」

 と、思ったのも束の間。ネジは左の茂みの方に向かって言葉を掛ける。ネジはリーと違って地面を歩いて偵察をしていたのだ。そして、ネジに見つけられた憐れな下忍とは誰か…。

(おい、どうするよ!めんどくせぇのに見つかっちまったぞ)

(ああ、もう!ナルトに何時になったら会えるのよぉ〜!!)

(僕…お腹減っちゃった……)

 いの、シカマル、チョウジの3人だった。三人はヒソヒソと話していたが、再度「出てこなければ、こっちから行くぞ」とネジに脅されて、シュパッと隠れていた茂みを跳び出した。

「何だ、お前達か…」

 ネジは丸っきり興味が無いと言うようにそう呟いた。そのネジの呟きを聞くや否や、三人はアイコンタクトを取ってこの場を脱すべく苦肉の策を取る。

「なぁ、あんた。去年のNo1ルーキーなんだろ?そんな奴が俺達ルーキーから巻物を取るのって体裁悪くなったりすんじゃねぇの?」

「そ、そうよ!だから、私達を見逃しなさい!!」

「いの〜こっちが上から目線じゃ駄目だよ」

「……去れ」

 ネジは一言だけそう言い残すと、三人の言葉など知った事ではないと言うように、背を向けて三人から離れて行く。それを見たいのが中指だけを立たせた手をネジに向ける。

「おい…今俺に向けているソレは、俺とやり合うって事か?」

「ばッ馬鹿いの!いいや!これはそんな心算じゃなくて……そ、そうッこいつ指が攣ったらしくてさ」

「シカマルあn「いいから!」それじゃ俺達はこの辺で!!」

 シカマルに口を押さえられたいのは最後までフガフガ何か言っていたが、チョウジとシカマルはそんないのを連れて、茂みの中へと飛び込んだ。

(フンッまるでゴキブリのような奴らだな)

 ネジは三人が飛び込んだ茂みを一度だけ見てから、再び偵察に戻った。そして、ネジに見逃してもらった三人はというと……。

「何であんな奴に尻尾振らないと行けないのよ!!」

「だぁかぁらぁ〜俺らは弱いの!だから、弱いなりに生きてかないといけねぇんだよ!」

「そんな事より早く朝ご飯にしようよ〜さっきから僕お腹減って死にそう……」

(はぁ……ナルト、俺もお前に無性に会いたくなったぜ。俺にはこいつら二人のお守はハッキリ言って……キツい)

 シカマルの苦悩など関係ないと言うように、いのは近くの巨木に拳を叩きつけ、チョウジはグゥ〜っと鳴るお腹を押さえながら地面に座り込む。この班、二次試験合格出来るのか?????

▼ ▼ ▼ ▼

 そして、第十班最後の一人、テンテンはと言うと…。

 テンテンは自分の勘を頼りに木から木へと飛び移ったり、地面を歩きながら自由気ままに偵察をしていた。鼻歌を歌いながら偵察とはこれ如何に……。

「フンフン〜♪今度はこっちに行ってみようかなぁ〜」

 女の勘という物は、存外に馬鹿に出来ない。科学的には証明出来ないが、なぜか男のそれよりも当たる確率は相当の物だ。物語や昔話、あらゆる創作物で女の勘という物は、主人公を窮地から悉く救ってきた。まぁ、最近ではその勘を敢えて当たらせない物も増えてきてはいるが…。

 そして、その勘の当たる女の中でも、このテンテンはそれがずば抜けて高った。会いたいと思っている少年に未だ会えずにいる少女がいる中、何となく会えるかなと思っていたテンテンの方が先に会えるくらいには…。

「ンン〜♪お!やっぱりあの金髪は目立つねぇ。えっと…他里の下忍達と戦ってるみたいだけど……。うちはの子と女の子の方は寝てるのかな?」

 テンテンは枝の上で屈んだ状態で、ナルトと音忍の戦闘を観察していた。音忍三人に対し、ナルトは一人。テンテンの視線の外れにはサスケとサクラが横になっている様子がチラチラと写っていた。

「へぇ〜金髪君ってあんなに強かったんだ」

 だが、テンテンがそう思ったのも束の間。今までは音忍達の攻撃を捌くか回避するかだけだったナルトの動きが急に変わったのだ。

 ツンツンに立たせた黒髪を蹴り飛ばし、クナイを振り下ろしてきた包帯男の頭を掴んで地面に叩きつけ、最後に女の腹部に拳を叩き込んでその戦闘は呆気なく終わった。

 そのどれもが一瞬の内に行われたのだ。テンテンが知覚出来たのは、その何れもがナルトによって無力化されたのだという結果のみ。

 音忍三人を倒した戦闘技術。それはテンテン自身、そして同じ班のネジとリーが束になっても勝てないのではないか。テンテンにそう思わせるのには十分の戦闘内容だった。

「あれ?先輩じゃないですか。どうしたんですこんなとこで?」

「ッ!?」

 テンテンがナルトに関する認識を改めていたそんな時に、その分析をしていた本人が急に目の前に現れたら、びっくりするのは仕方ない事だろう。

 それにテンテンがいるこの場所は、ナルトがいた場所から約300mは離れた場所だ。それを一瞬の内にこの場所へ移動し、尚且つテンテンの屈んでいる木の枝の、更に上にあった枝に足を掛けて逆さまになっているのだ。

 咄嗟の事で声が出せないテンテンに首を傾げるが、ナルトはふと何か思いついたらしく、驚きで何も出来ないテンテンに話しかけた。

「先輩達って朝ご飯食べました?」

「えッ!?ま、まだだけど……どうして?」

「なら、俺達と一緒しませんか。ちょうどあいつらの事を起こそうと思ってたところなんです。昨日ちょっとばかし大きな熊を狩って来たんですけど、俺達だけじゃ食べきれなかったんですよ。いやぁ〜先輩が来てくれて助かりました!」

 テンテンは目の前の少年がさっきまで戦っていた同じ少年だとは思えなかった。また、ナルトと自分は同じ里の忍びだが、今は中忍試験の最中であり敵同士なのだ。そんな自分を食事に誘うとは……。だが、一次試験の時と同じような笑顔を自分に向けられると、テンテンはそのどれもがどうでもよくなってきた。

「……しょうがないなぁ。可愛い後輩のお誘いだし、御呼ばれしようかな。あ、ウチの男どもも連れて来ていいかな。私達も一応食料は調達したんだけど、君の言った熊のお肉は食べたいと思うから。あ、でもこれであの時の貸しがなくなるとは思わない事だよ、金髪君♪」

「あらら、先輩からの貸しは思ってた以上に大きそうですね。まぁ、いいです。それじゃ、朝ご飯作りながら待ってますから」

 そう言ってナルトはクルッとその場で回転し、枝から地面に跳び降りて行った。ホント…不思議な後輩だなぁっと思いながら、クスっと笑みを溢してテンテンは集合地点へと引き返した。

 そういえば、ネジが3時間で戻って来いとか言ってたような……ま、いいか。何時ものことだし。と、ここに来た時同様に鼻歌を歌いながら、今度は自分が出せる最高速度の一歩手前のスピードで一路集合地点へと戻るテンテンなのであった。

▼ ▼ ▼ ▼

 リーよりも先にテンテンが俺達を見つけた、か。まぁ、原作を忘れてきてんのも事実だけどさ。大きな所以外はうろ覚えなんだよなぁ。ま、細かなとこは臨機応変で対応すれば大丈夫だろ。

「おい起きろぉ〜朝だぞ!」

 頭の中では違うことを考えながら二人を起こす。こいつらが寝た瞬間を利用して、幻術掛けた俺がいう事じゃないけど、サクラはまだしもサスケも幻術に掛りやすいのなぁ。写輪眼持ってる奴って幻術効きずらいんじゃなかったっけ?

「てか、いい加減起きろっての」

 中々起きようとしない二人の頭に拳骨を落とす。「ッ!!」「いたっ!」と、二人はそれぞれ反応して上半身を起こす。サスケは恨めしそうに睨んで来て、サクラは「また叩かれたぁ」とか言って泣きそうになってる。

「痛いもくそもねぇっての。もう朝だ。顔洗って目を覚ましてこいよ。あぁついでに、そこらで気絶してる奴らから巻物探してくれ。見つけ終わったら、そいつらを纏めておいてくれると助かる」

 二人は俺の指差したところへ顔を向けると、直ぐに表情を引き締め直した。寝て起きたら敵がいつの間にか来ていて、そんでもって自分達が知らない間にその戦闘さえ終わっていたらそうなるか。ま、こいつらが起きなかったのは無理ないけど。

 調理を始めて少ししたところでテンテンがリーとネジを連れてやって来た。それにサスケがいち早く警戒して身構えたが、俺が「客だ」と言うと構えを解きながらも、警戒は解かずにサクラの傍で三人を睨んでいる。

 自分が知らないところで、さっきの奴らが無力化されていたのが悔しいんだろう。サスケってば、起きてからこっちずっと集中してんだよなぁ。緩める時は緩めた方が良いのに……これも後で教えてやるか。

 そして、熊の焼き肉と熊肉の味噌汁という朝から何ともヘビーな朝食を食べようとしたところに新たな客が飛び込んできた。

「あぁああああああ!!!やっと見つけたぁああ!!!会いたかったよぉナルト〜〜〜!!」

 と、俺より薄い金髪を揺らしながらいのが俺に向かって走って来た。跳び込んで来たいのを体で受け止めるが、いのの他にいる筈の二人が見えない事に気付く。

「昨日と違って汚れたなぁ、いの。と、シカマルとチョウジはどうした?」

 俺の言葉にいのが自分がやって来た方に指を向けると、ヘトヘトボロボロユラユラという表現がふさわしい二人がこっちに歩いてくるのが見て取れた。

 歩くスピードも驚くほどに遅い。俺はいのをその場に座らせると、二人を迎えに行った。二人は俺の顔を見ると安堵の表情を浮かべて、電池が切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。

「あ、おい!しっかりしろって」

「ナルト……」

「ん?どうしたシカマル」

 シカマルが俺の名を呼んだので、一先ずチョウジは放置してシカマルに顔を向ける。すると、ブツブツと呟いていたので耳を寄せる。

「いののお守は任せた」

 は???何言ってんだこいつ?お守?いのの?てか、何俺はやり切ったぜみたいな顔してんだよ。はぁ……まずはこいつらを連れて行くか。

 俺はシカマルとチョウジの片足をそれぞれ持って引き摺りながら、朝食を囲んでいる奴らのところへと向かう。

『お前はこいつらに甘すぎるぞ。もう少し、突き放せと何度言えば……』

 あぁ、はいはい。いつもごめんな九尾。後で、構ってやるからもう少し待ってろって。

『な!!だ、誰が構って欲しいなぞ言った!大体お前がわしやミナトの言うことを少しでも守れば……』

 はいはい。ごめんごめん。

 俺の中で九尾が喚いているのを流し聞き、六人が囲っている場に急ぐ。ホント、退屈しないってばよ。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.