「ゴホゴホ…えぇ……それでは、これより予選を始めます。これからの予選は1対1の個人戦。つまり、実戦形式の対戦とさせて頂きます。ちょうど24名ですし、合計12回戦行います。ゴホゴホ…すみません。その勝者が『第3の試験』に進出できるという事ですね」

 病弱忍者のハヤテさんが、手に持つルールブックに目を通しながら説明していく。俺や数人の奴らはそんなハヤテさんを見ているが、他の奴らは電光掲示板に出た二人の名前を見ている。まぁいきなり、あいつが戦うんだもんなぁ〜仕方ないか。

「基本的なルールはないですね。どちらかが死ぬか倒れるか…或いは負けを認めるまで戦って貰います。えぇ……死にたくなければすぐに負けを認めて下さいね。ただし、勝敗がハッキリしたと私が判断した場合、無闇に死体を増やしたくないので止めに入ったりなんかしますけど…」

 ルールがないって言う割には、ハヤテさんが今見ているのってルールブックなんですよね?それって……。

「そしてこれから、君達の命運を握るのは……」

 ハヤテさんが電光掲示板の方に顔を向ける。それに合わせて、ハヤテさんの方を見ていた数人と俺も電光掲示板へと顔を向ける。

「皆さんも見ているこの電光掲示板です。これに1回戦ごとに対戦者の名前を2名ずつ表示していくわけですね。では、早速ですが第1回戦の試合を始めたいと思いますので、表示されているお二人だけここに残って、あとの皆さんは上の方へ移動してください」

 電光掲示板に表示されている二人の名前は『ウチハ・サスケ』『アカドウ・ヨロイ』……ヨロイとかどんなキャラだったっけ?カブトの班の奴だったって事しか覚えてねぇや。まぁ、試合中にちょっとでもおかしな事をしようとしたら、試合とか関係なく潰せばいいし、大丈夫かな。

 ………やっぱ保険として大蛇丸に忠告してこようかな。ゆっくり観戦したいし。

「サスケ君、頑張ってね!私たくさん応援するから!!」

「サスケ、あんたが負けるわけないと思うけど、その…頑張れよ!」

 サスケに激励を送っているサクラと眼鏡女。サスケがそれにウザがってるのを尻目に、他の下忍と上忍達は階段の方へと足を運んでいく。俺もそんな下忍達と同じようにサスケに声を掛ける事無く、大蛇丸のいる方に向かう。

 その際にヒナタといのが何か言って来たけど、それを無視して進む。大蛇丸のところに行くんだから仕方ないよな。……でも、後が怖いなぁ…。戻ったら二人の機嫌取りしよう。

 そして大蛇丸のところに着いたわけだが……何でお前もいるんだよ、カブト。まぁけど、ちょうどいいか。こいつに話しかける振りして大蛇丸に接触すればいいんだし。

「同じ木ノ葉の里同士で恐縮ですけど、内のサスケは強いですよ〜先輩」
(大蛇丸、この試合でサスケに何かしようとしたら……分かるよな?俺は試合とか関係なくお前とそこのカブト、それから音の奴らを全員潰すぞ?)

「ヨロイだって強いよ。先輩として、そう簡単に勝たせてはあげられないね」
(へぇ……君がうずまきナルト君か。僕が大蛇丸様と繋がってるっていう情報は誰も知らない筈なんだけど。…まぁいいよ。君を怒らせると本当に厄介そうだからね。大蛇丸様もそれでいいですよね?)

(フフフ…分かったわ。『ここ』では何もしないと約束してあげる。でも、よく私だって気付いたわね?結構変化の術には自信があるのよ、私)

「先輩ってば『うちは』の強さ知らないんですか?今からやる試合でそれが嫌でも分かりますよ」
(ばぁか。お前ってばさっきの式の最中、俺のこと見てたろ。お前の視線ってば気持ち悪いからすぐに分かるんだよ)

(あら、気付いてたの。それなら少しはその素振りを見せて欲しかったわ)

「アハハハ。OK!分かったよ、楽しみにしてる」
(大蛇丸様にそんな口が利けるなんて…君か三代目火影くらいのモノだよ、ナルト君)

「それじゃ俺ってば戻るから」
(まぁ、そいつをブッ飛ばせるのなんて、俺を除いたら火影のじいさんか残りの三忍の二人くらいだろうしな。ま、そんな訳でくれぐれもさっきの約束は守れってくれよ)

(フフフ。えぇ、それじゃあね)

 俺は大蛇丸とカブトに背を向けて、皆のいる所に向かうべく階段に足を運ぶ。やっぱ大蛇丸って気持ち悪ぅ……サスケに何か言ってから行くか?……いや、止めよう。めんどくせぇし。

▼ ▼ ▼ ▼

 サスケの横を通る際に何かを期待する眼で見られたけど、それに気付かない振りをして階段を上がっていく。その途中、階段から下にいるサスケを見てみると、俺に激励をもらえると思った自分を恥じているのか、耳が赤くなっているのに気付いた。恥ずかしがってるサスケって……カワいい!

 っとと、サスケの事は置いといて、皆はどこにいんのかなぁ〜。ん?カカシとサクラが何か話してるみたいだな。邪魔すんのもあれだし、シカマル達を探すか。

 んで、いざシカマル達を探そうとしたら、今一番会いたくない奴に見つかるんだから、よく出来てるよな世界って。

「ナルトぉ!!あんた私たちの事無視してどこ行ってんのよ!!サスケ君の戦う相手の方に行くとか何考えてんのッ!!」

「い、いのちゃん。そ、そんなに大きな声出したら皆に注目されちゃうよぉ……」

 いのが腰に手を当てて体を前のめりに倒して俺に突っかかって来る。やっぱりいのを怒らせるとめんどくせぇなぁ。ヒナタはそんないのの後ろで、手を胸の前で組みながら周囲をしきりに気にしている。

 ヒナタ、それは止めた方がいいぞ。あそこにいる犬野郎がハァハァってヤバい事になってるからよ。ていうかキバ、お前は少し自重しろ。

「ヒナタ!あんたもそんな恥ずかしがってないで、ナルトに何か言ってやりなさいよ!!こいつは「はいはい、そこまでにしておこうぜ、いの」シカマル…」

 いのの肩に手を置いてシカマルが顔を出した。ナイスタイミングだぞ、シカマル!後で絶対何か奢る!!!勿論チョウジに!!

「いの、こいつが何も考えずにそんな事するわけねぇだろ?」

「…分かってるわよ、そんな事。私はナルトに無視された事を怒ってんの!!」

「…恥ずかしいよ……」

 …………と、そんなこんなしている間に試合が始まるみたいだ。中央で向かい合うサスケとヨロイとかいうモブキャラ。ハヤテはその間に立って審判役を務めるみたいだ。

「それでは……始めて下さい」

 そして、ハヤテの合図で第3の試験、予選第1試合が始まった。どちらも直ぐに動きはしない。

「サスケぇ〜負けたら承知しねぇからなぁ〜」

 っと、手すりに腕を乗せ、更にその腕の上に顎を乗せてやる気のない声を俺は下にいるサスケに掛ける。

「ナルト君。ちゃんと応援してあげた方がいいんじゃ……」

「そうか?なら…サスケぇ!!負けたら修行の内容もっとキツくするからなぁ!」

 隣にいるヒナタが困った顔でそんな事を言うから、大声で応援という名の脅しを掛けてやった。これでアイツも死ぬ気で頑張るだろ。

▼ ▼ ▼ ▼

 ビクッ…。

(ナルトの野郎ぉ……始まる前に声を掛けて行かなかっただけじゃなく、試験中に何て応援しやがる!?)

 サスケは一瞬だけ体を震わせて、目の前の対戦相手に集中する。鼻から下を黒い布で隠し、眼は刳り抜かれたように真っ黒。そんな奴が自分の前で不敵に笑っているのを見て、更に気分を害していくサスケ。

(…だが、ナルトの言う事も尤もだ。こいつ程度に手古摺る様じゃ、ナルトに追いつく事なんて何時まで経っても無理だ。…なら、圧倒的に勝つまでだ!!!)

 サスケは瞬時にホルスターから数枚の手裏剣を取り出してヨロイに向かって投擲すると、右の方に移動しながら印を組んでいく。

 ヨロイは自分に向かってくるその手裏剣を弾く事無く、体を横にするだけで手裏剣を回避する。そしてヨロイは自分の両手に、視認できる程の禍々しい色をしたチャクラが宿し身構える。

 サスケの印もその時には組み終わり、口を大きく膨らませて両手を口元に持っていく。

(喰らいやがれ!!!)

≪火遁・豪火球の術!≫

▼ ▼ ▼ ▼

「あれって確か波の国で…」

「その通り。よく覚えてたなヒナタ。あれは、うちは一族が得意とする術で『火遁・豪火球の術』って術だな。まぁ、あんくらいまで大きなモノを出せるようになったんだから、サスケも強くなったなぁ」

 横にいるヒナタを見れば、顔を赤くしてモジモジしている。褒められた事がそんなに嬉しいなんて……紅さん、ヒナタの事をもっと褒めてあげてくれよ。

 まぁ、あの術はあいつが得意な火遁系の忍術だしその中でも威力が割りと高ぇからな。あいつに火遁系の術は教えてねぇけど、あれくらいは今のサスケならチャクラコントロールで何とかするだろうとは思っていた。というか、俺ってば千鳥しか教えてねぇし。

「サスケ君ってやっぱり凄いのねぇ………」

「だな。あいつはアカデミーでもずば抜けてたから、納得って言えば納得だ」

 いのとシカマルはサスケの術を見て、目を大きくしている。いやいや、そんなんで驚いてたらこの先の予選でお前ら口開いたまんまになんじゃねぇか?そんな事を俺が考えている間も下の戦いは続いていく。

▼ ▼ ▼ ▼

「フンッ!!」

 そんな掛け声と共にヨロイは自分に向かってくる自分よりも二回りも大きい火の球に向けて、右手を構えた。そして、火の玉がそのヨロイの構えた右手に当たったかと思った瞬間、その火の球はみるみる内にヨロイのその右手に喰われていった。

「何ッ!?」

「ほぉ…結構なチャクラだな」

 口は布で隠れて見えないが、笑っていると分かる口調で感想を漏らすヨロイ。

「ッチ!!!」

 サスケはそれに一つ舌を打ち、クナイを取り出してヨロイに向かって駆け出していく。

(あの馬鹿っ!!)

 ナルトがそう思うが既に事遅く、サスケはクナイをヨロイに向けて振り下ろす。だがそのサスケの振り下ろしは、ヨロイの左手によって阻まれてしまう。

 サスケのクナイがヨロイの手を突き刺して、ダメージを与えたように見えるそれは、実際には動き回るサスケをヨロイが捕まえたのだった。

「……捕まえたぞ」

 ヨロイは残していた右手でサスケの手首を掴む。すると、サスケの手首からヨロイに向けて何かが流れていく。

「何?…!?ち、力が……お前一体何をッ」

▼ ▼ ▼ ▼

「あぁ〜あ…サスケの奴こりゃ負けるかな」

「え?ど、どうしてそう思うの?」

「ヒナタの言う通りよ。今だってサスケ君があいつを追い込んでるじゃない」

 ヒナタといのが俺の漏らした呟きに反応する。俺だってさっきの豪火球を吸い込んだ?あれを見ていなかったら、ヒナタ達のようには思わないにしても、まだ大丈夫って見てられたが思い出したからなぁ……アイツの能力。

 ヨロイの能力とはチャクラ吸引術。掌を相手の身体に触れるだけで精神と身体のエネルギーを吸い出すチート級の術。てか、原作で術そのモノも吸引出来たっけか?いや、原作とか関係ねぇな。現にさっきこの目で見たからな。

 サスケ、この試合俺達が思ってるより面倒みたいだぞ。

▼ ▼ ▼ ▼

 サスケの全身から力が、チャクラが、失われていく。掴まれている手にはクナイを握っているサスケだが、その手は既にクナイを握る力も入っていなかった。

 それを証明するかのように、クナイがサスケの手から離れて下に落ちる。ヨロイは血が流れるその左手でサスケの顔面を殴り、後ろに倒した。

(グァ……糞ったれ……幻術でも、毒でもない…一体何なんだこれは!?)

 サスケは肘で上体を起こしてヨロイを睨む。そこにヨロイが力任せに右手を拳に変えて、サスケの腹部辺りにその拳を突き下した。

「グぉ…」

 一瞬呼吸が出来なくなり、腹部を抑えてのた打ち回るサスケ。それをヨロイは、ククッと笑いながら見下ろしている。

「無様だな。さっきまでの威勢はどうした?」

「ふ、ふざけやがって……」

 腹部を抑えながら、立ち上がろうとするサスケ。だが、それを許す程ヨロイも馬鹿ではない。再び右手を構え、サスケに向かって突き出した。

「糞がっ!!!」

 サスケはそれに対して、右手で腹部を抑えながら左手でヨロイの手を上にかち上げ、更に渾身の力を込めた蹴りを放ち、ヨロイを後方に下がらせた。

「グッ…ククク。モルモット風情が…まだ、こんな力が残っているとはな」

 ヨロイは不敵な笑みを浮かべて、サスケを見る。それに比べてサスケは満身創痍の体をフラフラにしながら睨むだけ。だが、その眼はうちはだけが開眼出来る『写輪眼』となってヨロイを映していた。

▼ ▼ ▼ ▼

 やっとかよ……写輪眼の制御方法なんて俺が知るわけねぇから教えられなかったけどよ。幾らなんでもここまで追い詰められないと発動しないとか……。サスケ、この予選が終わったらカカシ先生に教えて貰えよ〜。

「ナルト、サスケのあの眼……」

「あぁ、あれは「写輪眼だよ」カカシ先生……」

 何でこんな時だけこっちに来るかなこの人は…。俺の言葉を遮って「よっ!」と声を掛けてくるし。それに付き従うようにサクラまでこっちに来るもんだから、ここの集まりがこの建物にいるどの集団よりも大きくなった。

 ここにいる奴らを教えておくと、俺にシカマル、ヒナタといの。それから、あぐらで座りながらポテチを食べているチョウジに、さっき来たカカシとサクラだ。チョウジが今まで何も話さなかったのは、5日も食べられなかったポテチを食べるのに集中していたからだったりする。

 こいつの食べ物に対する執念を改めて凄いって思ってるとこなんだよ実は。

 いの達の担当上忍であるアスマがどこにいるかと言うと、紅さんのとこだったりすんだよね〜これが。

 キバとシノも俺らの近くにいるから、まぁ二人だけって事。何かこうして見ると紅さんとアスマってお似合いかもって思う。波の国ん時にアスマにはもったいないとか思ったけど、実際お似合い何だから仕方ないよな。

 幸せにしてやるんだぞ絶対!!

 とと、話が変わってるな。今はカカシが写輪眼を知らないシカマル、いの、ヒナタ、序でにチョウジにも説明しているところ。

 俺はその間もサスケの試合を見ているが、あれからなぁんも発展なし。写輪眼を発動したサスケが手裏剣やらクナイをヨロイに向かって投擲してヨロイがそれを時には回避して、時には弾いている。

「じゃあ、その写輪眼を発動したサスケ君は無敵って事じゃない!!いけるわこの試合!!!」

「いの!あんたがサスケ君の何を分かってるって言うのよ!!でも、ああなったサスケ君は本当に強いんだから!!」

「だが…」

 そう、カカシの言う通りだ。写輪眼を発動したのが遅すぎた。チャクラが少ない今、一撃で終わらせる術を出さないと……サスケは勝てない。

 だが、あいつにはその一撃で決められる術がある。そう、ここに来るまでにも修行していたあの術が……。

「ナルト、お前はどう思うよ?」

「正直、今のサスケが勝つ確率は限りなく少ないと思う」

 俺のその言葉を聞いてサクラが「何言ってんのよ!!」って顔を向けてくる。いいから、お前はサスケを見てろって。ヒナタもそんな不安そうな顔すんなって。

「でも、あいつは『うちはサスケ』だ。あいつは勝つ。じゃねぇと俺があいつに修行を付けた意味がねぇからな」

「「「修行??」」」っていう顔を向けてくるシカマル、いの、ヒナタの三人。サクラは気付いたのか「確かにあんな修行したんだもんね…」とか呟いている。

 カカシは、後で詳しく教えろって顔を向けて来た。ハハハ…考えておくよ、カカシ先生。

「だから、あいつを信じて見てろって」

▼ ▼ ▼ ▼

 サスケは機会を窺っていた。自分のチャクラ残量が残り少ない事は分っている。だから、次に繰り出す攻撃で決めなければならないという事も。

 そして、その術はナルトから教えてもらったモノ。

(こんだけ無様な試合をしちまったんだ。ナルトに許してもらうにはこれを決めるしかねぇ!!)

 そして、拾っては投げ拾っては投げをしていたクナイと手裏剣をヨロイに向かって再び投擲する。

 だが、それもヨロイには喰らわない。弾いて、避ける。

「フ…やっと諦めたか」

「それは……どうかな!!」

「何?…ッ!?これは!」

 ヨロイはサスケに向かうべく体を動かそうとするが、避けた姿勢のまま動く事が出来ない。ヨロイの体をよく見れば、キラッと光る線が見えてくる。

▼ ▼ ▼ ▼

「ワイヤーか……」

「何時の間にそんなもん仕掛けたんだ?」

「さっきからクナイと手裏剣を投げていただろう?その時に、ワイヤーを付けたものと一緒に投げていたんだだろう」

「成る程……ッケ!俺だったらあんな奴、牙通牙で一発だっての!!」

 キバとシノが言っているようにサスケはワイヤー付きのクナイを他のモノと一緒に投げていたのだ。それが、やっとヨロイの動きを奪う事に繋がった。

▼ ▼ ▼ ▼

(これを待ってたぜ!!)

 左手を下に構え、残り少なくなったチャクラをそこに集めていく。すると、この建物全体にチッチッチチチチチ……という音が響いていく。

 目に見えるほどに蒼く輝くチャクラ。それがサスケの左手を光り輝かせる。

『あれは!?』そう思ったのは木ノ葉の上忍、暗部、火影、数人いる中忍達だ。あの術を知る者達は、一斉にその術を開発した者に顔を向ける。

 だが、その向けられた者は自分の前にいる金髪の少年に目を向けていた。

 そんな事など知る由もないサスケは、ナルトに一度だけ目を向ける。

「やっちまえッ!!サスケぇ!!」

 そんな大きな声がサスケの耳に届く。自分の発動している術に負けないくらいの大きな声。それを聞くと口角を上げて笑みを浮かべる。

「はっ…分かってるっての!」

≪千鳥ッ!!!!≫

 コンクリートを削りながら、一直線にヨロイに向かって進んでいくサスケ。そして、その突きは吸い込まれるようにヨロイの胸を突き破った。

「ガハ!?グフ…」

 チチチチ……と鳴っていた千羽の鳥のような鳴き声が止む。サスケはヨロイの胸に突き刺した腕を抜き取り、先程までヨロイだったモノから背を向けて歩きだす。

 そして、ナルトのいる所の真下に着くと、血の付いた左手を拳に変えて天高く突き上げた。

「っへ。負けそうだった奴が偉そうに………まぁ、勝ったから何も言わねえよ。早く上がってこい」

「フンッ……」

(間違いなく…即死ですね……)
「第1回戦、勝者うちはサスケ…予選通過です!」

 ハヤテの判定を告げる言葉を聞いてやっとこの場にいる者達から歓声と、拍手がサスケに送られる。本来なら予選にそんな事をしなくていいのだが、この時ばかりは皆そうしなければならないと感じたのだ。

 こうして、予選第1試合は終わった。続く第2試合はどうなるのか、この後に試合をするのか、そんな思いを下忍達は若干名を除いて抱いたのだった。

▼ ▼ ▼ ▼

「雷切りとはな……さぁて、ナルト。お前がサスケに教えたのか?」

「え!?あの凄い術ってナルトが教えたの!?」

 あぁ五月蠅いなぁ・・・・気になるのは分かるけど、そんな詰め寄ってくんなって。それから、カカシ先生。

 こんなとこで、そんな事言っちゃ駄目だって。俺が目立つのは本戦でって考えてんだからさぁ〜。

「あの術雷切りっていうんだ…」

「チョウジ!?お前見てたのか?」

「シカマル〜僕だってただポテチを食べてるだけじゃないよ〜」

 いや、俺もそう思ったわ。チョウジの奴、ちゃんと見てたんだな。てか、何袋食ったんだ?チョウジの周りには数えきれないくらいのポテチの袋が散乱している。

「雷切り……凄い術「そうなのだ!あれはここにいるコピー忍者カカシの唯一のオリジナル術であり、その術で雷を切った事があることから、雷切りという名前が付いたのだ!!」……こ、こここ怖い…」

 ヒナタの呟きに反応したのは、全身緑タイツの厳ついおっさん。ぱっと見はリーの親父かと錯覚するほどよく似ている。

 そんなおっさんの名前は、マイト・ガイ。

 てか五月蠅ぇ……めんどくさい人来たから、離れようかなって思っていたら…。

「やっほ♪金髪君どこ行くの?」

「…先輩こそ、何時ここに来たんですか?」

「ん?ガイ先生が『カカシに話を聞きに行かねば!!』って言ってここに向かって行って、どうせなら金髪君もいるし私も行こうって思って♪」

「はぁ…そうですか……」

 そう。お団子を二つ頭に乗せたテンテンが俺の背中に負ぶさってきたのだ。背中に胸が当たってるんですけど…え?当ててる?あぁ〜態となんですか。そうですか。

「……ナルト君、この人は誰なのかな?」

「あぁ〜!!この女またナルトにくっ付いて!!!ヒナタ、この女一個上の先輩で森の中でもナルトにくっ付いてたのよ!!」

「あれ?金髪君ってば、いのちゃんだけじゃなくて、こ〜んな可愛い子にまで手ぇ出しちゃってたのかぁ〜いけないなぁ〜〜♪」

 …何だこのカオスな状況。ヒナタがいつもは浮かべない笑顔で俺を見ていて、いのはさっきよりもきぃー!ってなってるし、テンテンは腕を俺の首に巻きつけて、頬と頬を合わせて来た。

 そして、その他の奴らは徐々に俺達から離れていく。

 いや、お前ら離れるなって。シカマル、お前は俺の親友だろ?チョウジ、あとでお菓子でも焼肉でも好きなだけ奢ってやるから。カカシ先生、いきなりイチャイチャパラダイス読みださないで。サクラにサスケ、何二人でいい雰囲気になってやがるんだ!?

「そこの若人よ!!」

 あ…あんたは残ってくれたんだな。ガイ先生。

「ハーレムとはやるじゃないか!!青春してるなぁ!!!でも、大人になったら一人に絞りなさい」

 …この人に期待した俺がバカだったよ。

「ナルト君?」
「ナルト…」
「金髪君♪」

 頼むからゆっくり試合を見せてくれってばよ…。




あとがき
続けて更新です。この話は殆んど改訂してないです。細々としたところは変えていますけど、それに気付く人はいないんじゃないかと…。



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