バレンタインデー

   それは某チョコレート……ゲフンゲフン……

   女の子の甘く切ない恋心をチョコと一緒に手渡す大切な儀式の日

   だが、我らが主人公、雄真にとってはその程度では終わらない。

   世の何事にも等価交換というものが存在する。

   そう、彼の幸せは彼自身の不幸と等価値である。




はぴねす!
〜Magic & Fairy Tale〜
Tale2 バレンタインデー
大暴走は受難の始まり




   「すまない、これも勝負の掟……。今日は俺の完全勝利だ、目覚まし君よ!!!」



   開口一番、勝利を高らかに宣言し、けたましい音がなる前に目覚ましを止める。

   いつもは朝は目覚ましをかけていてもすももに起こされるのだが、

   今日は目覚まし3分前という、雄真にしては異様に珍しい時間に目が覚めた。



   「ふむ、俺が目覚ましなしで起きるとは……。

    こう、得体の知れない悪寒を感じるのはなぜだろうか……。」



   何かの危機を感じているのか、雄真は両腕を抱えるように手を組む。

   武の道を行くものは時として、経験や第六感的なものから危機を察知することがある。

   雄真も例に漏れず、その何かを感じ取ったのだろうか?



   「「「おはようございます、マスター!!」」」



   そんなご主人様のことなど気にも留めず、頭上から元気な声が浴びせられる。

   雄真もこの悪寒は気のせいだと割り切ることにし、

   思考をすばやく切り替え、精霊たちと挨拶をかわす。



   「ああ、おはよう。」


   「今日からまた学校ですね。」


   「まったく、めんどくさいったりゃありゃしないよ。」


   「マスター、そんなことではいけません。」


   「わかってるって。」



   軽口をたたきながらさっさと着替えを済ます。

   精霊たちも彼の髪の中へと身を潜ませる。

   学校へ行く準備をすると雄真は部屋の扉を開き、一階へと降りていった。








   「昨日の夜からチョコを作っていることはわかっていたが……

    後片付けはしていないのか?ひどく甘ったるいな……。」



   一階に下りるとそこはなんともいえない甘い香りが漂っていた。

   もちろんそれはすももの仕業である。

   さらに言えば朝にもかかわらずこれほど香りを漂わせるほど

   音羽が放置しないはずだが、いかんせん姿が見えなかった。



   「あ〜〜〜、にいさんだ〜〜〜。

    おはよう……ございますっ!ごろごろ〜〜。」


   「すももよ……いったいどうしたんだ……?」



   リビングに足を進ませると、そこには猫化したすももがいた。

   いや、いっそのこと壊れた、と表現しても差し支えない。

   それほどにすももの状態は異常であった。



   「お、おい、すもも……おまえいったい……」


   「ん〜、何ですかぁ〜?」


   「何ですって……酒臭いぞ!?」


   「おろろ〜〜」



   ため息をつきながらすももを落ち着かせようとするが、

   不意にすももから酒の匂いがしたため、慌てて引き剥がした。

   某十字傷のある赤髪の剣士と同じ口癖を発しながら、すももはいったん雄真から離れる。




   「なにをどうしたらそんな風になるんだ……?」


   「えぇ〜、わたしはチョコを作ってただけですよ〜、ほかにはなにもしてませ〜ん。」


   「じゃなくて、何のチョコをつくてたんだ……?」


   「うにゃ〜〜。」



   雄真はすももに説明を求めるが、まともな説明ができるのか非常に怪しい。

   さらに、いくら文句を言われようとわが道を行くすもも。

   再び雄真に飛びつき、顔を擦り付けている。

   雄真も一応何のチョコを作っていたのかは予想できるが、

   すももの言葉を聞かないことには少々不安だった。

   もっとも、すももが料理に失敗することは万に一つにもないことは確信してはいるが……。

   ふと目を移すと、テーブルには空のブランデーがぽつんと置いてあった。



   「こら、すもも。まとわりついて顔を擦り付ける前に、

    このブランデー使って何を作っていたか説明しなさい。」


   「ええぇ〜、どうしてそんなこというんですかぁ〜?

    もしかしてわたしのこと、きらいになったんですかぁ〜?」


   「嫌いになったとかではなく、ブランデー使って何作ってたか説明しろ言うとんじゃ!!」



   なんの言い訳も通用しないのは酔っ払いの特権である。

   再三の説明を求めるが、わけのわからん言動を発し、ついにはむくれる始末。

   かくも、酔っ払いほど厄介なものはない、と世間の一般常識を体験することとなった。



   「むむむ〜、にいさんわがままですよ〜?わたし、どうしたらいんですか?」


   「どうもするな!えぇいとにかく、正気に戻れ!!」


   「えぇ〜?わたしはしょうきですよ〜?ほらぁ〜。」



   わがままなのはお前だ!という台詞を抑えつつ、とりあえず正気にもどるように諭す。

   が、雄真自身相当錯乱している。

   すももはというと、自分は正気ということ証明しようとするが、その足取りは千鳥。

   あっちへいたりこっちへいたり、足元はおぼつかないものだ。

   とても雷撃を手に収束し、一直線に突っ込めるような状態ではない。



   「どこが正気なんだ……ほんとに何を作ってたんだか……。」


   「ちょこれ〜とぼんぼんです〜」


   「チョコレートボンボンはチョコの中に酒詰めただけだろうが。

    何をどうしてそんな風になったんだか……。」


   「詰めただけじゃつまらないから、ちょっと工夫しようと思ったんですよ〜。

    それがなかなかうまくいかなくて、処分ばっかりしていたら

    なんだか楽しくなってきちゃいましたぁ〜、あはは〜〜♪」



   これでことの次第に納得のいった雄真。

   つまりはチョコレートボンボンの失敗作を食べているうちに酔っ払ってしまったのだ。

   もらう雄真としては失敗作でもかまわないのだが、

   それではすももが納得しないだろうことは容易に想像できた。

   といっても、ブランデーの瓶を一本丸々なくなってしまうほど使い切り、

   あまつさえ、飲んでもぴんぴんしているところをみると、

   妹は酒豪かもしれないと少々背中に冷や汗をかかずにはいられなかった。




   「ですが、にいさん。安心してください!

    試行錯誤の末、みごとここに完成したのでありますぅ〜〜!

    と、いうわけでにいさん、はっぴ〜ばれんたいんです!!」


   「あ、ああ。いつもすまないな。」


   「〜〜♪、あ、そうだにいさん。わたしがたべさせてあげますね♪」


   「いや、そこまでしてもらわなくても……ちゃんとあとで食べ……。」


   「はい、い〜はん、ひょほれ〜ほ♥(はい、にいさん、ちょこれ〜と♥)」



   数刻の間、まさに時は止まったままであった。

   気分的に言えば、某幽波紋の特殊能力で、長い時間停止していたような感覚である。

   もちろん、彼女がどういう状況であるか、説明せずともよかろう。

   雄真に関して言えば、絶体絶命の状況であるにもかかわらず、

   ひとつ間違えば確実に天国、という一石二鳥な状況だ。

   無論、すももに好意の感情を持つの男たちにばれたりしたら、

   マスクをかぶった怪人たちのように、嫉妬という名の炎に身を任せること請け合いだろう。



   「ちょ、ちょちょ、ちょっとまて、すもも……」


   「いひゃれす♥ふぁいひあへ〜ん♥(いやです♥まちませ〜ん♥)



   どこぞの罰ゲームのようにゆっくりと近づいていくすももの唇。

   少しづつ雄真に接近し、彼と彼女の唇の距離が

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ゼロになることはなかった。



  「って、ばかもの〜〜!!なんでそんな

   嬉し恥ずかし罰ゲームみたいなことをせなあかんのじゃ!!」



   「う〜〜、あはひのひょほがはえらえらいっていうんへふは〜〜!?

    (う〜〜わたしのちょこがたべられないっていうんですか〜〜!?)」



   あわてて雄真はすももを引き剥がし、距離をとる。

   すももはすももで抗議の声を上げるが、

   もちろん雄真の思いなど知ったことではない。



   「すもも、おまえ酒癖最悪な〜……」


   「さ、さいあく……?わたし、さいあく……?」


   「勘違いするな?おまえが、じゃなくて酒癖のほうだぞ?」



   口にくわえていたチョコレートを落とし、よろよろと後ずさる。

   このとき雄真は頭の中で激しい警報がなっており、

   一応フォローはしたものの、すももの耳には届いていないらしい。

   よよよ、といつぞやのように床に座り込んでしまった。




   「うぅ、ぐすっ……。わたしのことさいあくだって……

    やっぱりくちでどういおうと、わたしのこときらいなんだ……そうにきまってます……ひっく……」


   「はぁ〜、いったい何を泣いているんだ……。」


   「うぅ。すん。だって、にいさんにきらわれたら……あたしなんて、あたしなんてぇ〜……」



   ついには泣き出してしまう。

   何かトラウマでもあるのだろうか、ひどく雄真に嫌われることにおびえているように見える。



   「だから、べつにきらってなんかないから……」


   「うそです、いつもにいさんはそうやって、わたしをきづかうんですっ!!」


   「気遣ってなんかいないって……ああ、もうめんどくさい……

    わかった、食べる、食べるからもう泣くな……。」



   ついに折れてしまう雄真。しかし、彼は気づいていない。

   それコトバを彼女が待っていたということに・・・・・・。

   某第一ドールのようにニヤリと口元を歪ませているような影が見えるのは、

   決して気のせいではないだろう。

   すばやく箱の中のチョコをとると、再び口へとくわえる。

   もちろん、さっきまでの泣きそうな顔は微塵もない。



   「んっ♥」


   「おぉい、ちょっとまて、嘘泣きか?コラ。」


   「ん〜〜、い〜はん、はやふ〜〜。 (ん〜〜、にいさん、はやく〜。)」


   「ったく、すももおまえってやつは……くっ、やるしか……ないのか……」



   こめかみにちょっと血管を浮き立たせながら、非難の言葉を浴びせるが、

   そんなことはおかまいなしに『口元のチョコレートを食べて♪』

   といわんばかりにせっついてくる。

   ため息をつきつつ、再び少しづつ今度は雄真のほうからすもものくちびるに接近し、

   彼と彼女の唇の距離が

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ゼロになることはなかった。




  「だ〜〜!!っんなことできるわけないだろう が!!!」


   「ああん、にいさんこんじょうなしですぅ〜」


  「そんな根性など丸めてどぶにすててしま え!!」



   すもものくちびるからチョコをすばやく掠め取ると、ひょい、と自分の口の中へ放り込む。

   すももの不満の声などなんのその、一呼吸で反論するほど、雄真のテンションは高まっていた。

   そのせいか、これから学校へ向かうことに、彼自身口にするまですっかり失念していた。



   「ったく、そんな酔っ払ったまんま学校なんかに行ったら……学校!?


   「じゃあ、わたしはがっこうにいくじゅんびをしてきますね〜♪」



   そういって嬉々とした表情で自分の部屋へ向かおうとするすもも。

   時間を気にしながら、雄真は準備を進めるすももを止める。

   自分はどうとなってももいいが、妹の無様な姿など家の中で十分である。

   外に出ようものなら、すももどころか家族がどんな眼で見られることかわかったものではない。

   まぁ、音羽の言動や行動などを間近でかんじている近所の人ならば、

   『小日向家だし』ですむものなのかもしれない。

   と、近所の評価はともかく、酔った状態で学校へ行くと非常にマズイのは確かである。



   「くっ、しまった。もうこんな時間か……。俺としたことが、

    こんなことで気が動転してしまうとは……って、すもも、おまえは今日学校休め!!!」


   「えぇ〜、だいじょうぶですよぉ〜。

    ほんめいチョコはにいさんにわたしたやつです♥あとはぜんぶぎりで 〜す♪」


   「そんなことを心配しているんじゃない!!いいからお前は休め!!」



   彼らの会話は微塵もかみ合っていない。

   それでも雄真は妹の蛮行を押しとどめようと必死だ。

   そんな雄真の決死の覚悟が功を奏したのか、

   不承不承ながら、リビングへと戻ってきた。




   「もうぅ〜、わかりましたよぉ〜。それじゃあ、おやすみなさ〜い……すぅ〜。」


   「だああぁ〜、こんなとこで寝るな!部屋に戻れ!!歯を磨け!!!」


   「もうぅ〜、にいさん、わがままですぅ〜。ちょっとしずかにして……すぅ〜……。」


   「だからここで寝るな!!起きろおい、

   すもも!すももーーーーー!!!」



   どんなに叫ぼうが、彼女は既に夢の中。

   寝る前にする日常的な行為を提唱するが、

   睡魔に体をのっとられている彼女には何をしても無駄だった。



   その後の苦労は言わずもがなである。

   爆睡したすももを部屋まで運び、ベッドに寝かせる。

   さすがに着替えさせることはできないので、そのまま布団をかぶせた。

   再びリビングへ降りていき、すももの通う学校へと電話をかける。

   とりあえず、熱を出して休むということにしておいた。

   さすがに雄真でも『妹が酔ってしまって・・・・・・』などといえるはずもない。

   やるべきことが終わって時計を見ると、既にいつもは家を出ている時間であった。

   むしろもう完璧に遅刻じゃないのか?というくらいの時間帯である。

   それに気づいた雄真はすぐに家を飛び出した。もちろんかばんを持ち、鍵をかけてである。

   学校に着いたとき、彼は世界新記録顔負けの走りっぷりで、

   いすに座った瞬間真っ白に燃え尽きたことを追記しておく。



   彼の波乱の一日はまだ始まったばかりである。


TO  BE CONTINUED


    なかがきという名の座談会

みなさま大変長らくお待たせいたしました・・・・・・。
バレンタインデーの始まりです・・・・・・。

は〜い、みんなにハートブレイクショット♥
渡良瀬準で〜す♪ヨロシクね♪
今回のゲストはすももちゃんよ〜♪

って、ハートブレイクはいかんだろ・・・・・・

大丈夫です、兄さん
この小説は作者の硝子の心臓から出来ているのですから

いや、それじゃすぐ壊れちゃうだろう

大丈夫よ♪体はペンで出来ているし、血はインクだから♪
それになんといっても戦場では腐敗するし、配送されてくるから
必ず生きて戻ってくるわよ

本当に便利な能力ですね〜

いや、絶対ムリですから!?

大丈夫です♪

して、その心は?

だって、そうでないとこの小説、続かないじゃないですか

そ、それは・・・・・・
うん、まったくそのとおりよね

なんというか、真理だな

いやいやいや、お前らそれで理解できてるのか?

とまあ、無駄話はこれくらいで、
お便りのコーナーにいっちゃいましょう♪

俺ノ質問答エテナイヨネ?

さあ、キリキリいくぞ!!

ではまず一つ目ですね♪え〜と・・・・・・

このまま、頑張って欲しい。

だそうです

ありがとうございます、がんばらせていただきます。
さて、お次は?

そういえば、ハチさんが見当たりませんけど?

はいは〜い、お次は〜ってあら?

どうしたんだ?準?

今回はこれで終了みたい

う〜ん、この前はもう少しあったんですけどね〜

まあ、空けた時期もあったから仕方ないだろう

ということは、今回はこれで終了ですか!?

そういうことになるな

ええええええ!?私もう少しここでおしゃべりしたいです〜〜〜!!!

まあ、今回は仕方ないわね
ここ3ヶ月忙しくてサイトもあまり回ってなかったし

次回に期待だな

それでは感想のお礼をどうぞ

はい、今回も謝辞を述べさせていただきます。
感想を書いてくれたへたれ筋肉さん、龍の子供さん ありがとうございます!!
その他私の小説を読んで拍手をくれたみなさま
これからもがんばりますので
よろしくお願いします!!!!

で、次回だが、ついにアイツが来てくれたか

みんなも期待してくれてるのかなぁ、アイツ

どうでしょうか?というかアイツだけで話しても
誰かわからないんじゃないですか?

大丈夫だすもも、読者にはもうわかっている

そうだな、あれほどのいじられキャラは存在しないだろう

あたしもいじっていて楽しいし♪

そろそろ締めの時間だな

はあ、また待ちですか・・・・・・

大丈夫よ、すももちゃん♪
そこは作者がなんとかしてくれるわ♪

え!?

期待してますよ〜、月さん!!

すもも、無理難題言うのはやめておけ・・・・・・

グハッ!?

それでは今回はこのへんで

ばいば〜い♪

某月某日
瑞穂坂学園御薙鈴莉の研究室前より実況中継

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